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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179103
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】防振装置及びカメラ支持装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/56 20210101AFI20241219BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20241219BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G03B17/56 A
G03B15/00 S
H04N5/222 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097651
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】代田 信吾
【テーマコード(参考)】
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H105AA06
2H105AA52
5C122DA03
5C122DA11
5C122EA41
5C122GD01
5C122GD05
5C122GE04
5C122GE07
5C122GE11
(57)【要約】
【課題】鉛直方向の振動を低減するとともに水平方向の傾きを低減することができる防振装置を提供する。
【解決手段】防振装置10は、下部リンク機構30と、下部リンク機構30に接続された固定部材と、固定部材に水平方向に移動自在な可動部材であるスライダ45と、固定部材に支持され、スライダ45の水平方向への移動を妨げるようにスライダ45を付勢する弾性部材であるコイルばね46,47と、固定部材及び可動部材45に接続され、鉛直方向に伸縮自在な第2伸縮部材である上部リンク機構50と、上部リンク機構50に接続された天板22とを備え、天板22に対して荷重が印加されたときに、第1伸縮部材30及び第2伸縮部材50が鉛直方向に短縮し、スライダ45が水平方向に移動する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1支持部材(21)と、
前記第1支持部材(21)に接続され、鉛直方向に伸縮自在な第1伸縮部材(30)と、
前記第1伸縮部材(30)に接続された固定部材(41,42,43)と、
前記第1伸縮部材(30)に接続され、前記固定部材(41,42,43)に対して水平方向に移動自在な可動部材(45)と、
前記固定部材(41,42,43)に支持され、前記可動部材(45)の水平方向への移動を妨げるように前記可動部材(45)を付勢する弾性部材(46,47)と、
前記固定部材(41,42,43)及び前記可動部材(45)に接続され、鉛直方向に伸縮自在な第2伸縮部材(50)と、
前記第2伸縮部材(50)に接続された第2支持部材(22)と
を備え、
前記第2支持部材(22)に対して荷重が印加されたときに、前記第1伸縮部材(30)及び前記第2伸縮部材(50)が鉛直方向に短縮し、前記可動部材(45)が水平方向に移動する防振装置。
【請求項2】
前記第1伸縮部材(30)は、第1リンク機構を有し、
前記第2伸縮部材(50)は、第2リンク機構を有し、
前記固定部材(41,42,43)は、前記可動部材(45)の移動方向に沿って延びるガイド(42)を有し、
前記可動部材(45)は、前記ガイド(42)を摺動するスライダ(45)を有する請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記固定部材(41,42,42)は、前記ガイド(42)を保持する第1保持部材(41)を有し、
前記弾性部材(46,47)は、前記ガイド(42)の延びる方向に沿って設けられたコイルばね(46,47)の形態を成し、
前記スライダ(45)は、前記第1保持部材(41)との間で前記コイルばね(46,47)を圧縮する方向に移動する請求項2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記固定部材(41,42,43)は、少なくとも2個の前記ガイド(42)を有する請求項2又は3に記載の防振装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の防振装置(10)と、
前記防振装置(10)に接続された固定部(73)と、
前記固定部(73)に接続された旋回部(74)と、
前記旋回部(74)に設けられたカメラ(75)と
を備えるカメラ支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は防振装置及びカメラ支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラ等を旋回可能に支持する従来のカメラ支持装置の例として、例えば特許文献1に記載されたカメラ支持装置が知られている。このカメラ支持装置は、固定部の鉛直方向上部に、カメラが取り付けられた旋回部が旋回自在に設置されている。
【0003】
また、従来の防振装置の例として、例えば特許文献2に記載された防振装置が知られている。この防振装置は、構造体の上部に設置した床部の鉛直方向の振動を低減するために、構造体と床部との間に設置された鉛直方向に延びるコイルばねにより床部を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-279755号公報
【特許文献2】特開2022-15144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたカメラ支持装置において、カメラが取り付けられた旋回部の振動を低減するために、旋回部と固定部との間に特許文献2に記載されているような鉛直方向に延びるコイルばねを設けると、旋回部の鉛直方向の振動を低減するが、鉛直方向に延びるコイルばねは水平方向に加えられた力に対する復元力が十分でないため、旋回部の水平方向の傾斜を十分に低減することができず、カメラがロール方向に振動して撮影した映像の質が低下するといういう問題点があった。
【0006】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、鉛直方向の振動を低減するとともに水平方向の傾きを低減することができる防振装置及びカメラ支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る防振装置は、第1支持部材と、第1支持部材に接続され、鉛直方向に伸縮自在な第1伸縮部材と、第1伸縮部材に接続された固定部材と、第1伸縮部材に接続され、固定部材に対して水平方向に移動自在な可動部材と、固定部材に支持され、可動部材の水平方向への移動を妨げるように可動部材を付勢する弾性部材と、固定部材及び可動部材に接続され、鉛直方向に伸縮自在な第2伸縮部材と、第2伸縮部材に接続された第2支持部材とを備え、第2支持部材に対して荷重が印加されたときに、第1伸縮部材及び第2伸縮部材が鉛直方向に短縮し、可動部材が水平方向に移動する。
【0008】
また、第1伸縮部材は、第1リンク機構を有し、第2伸縮部材は、第2リンク機構を有し、固定部材は、可動部材の移動方向に沿って延びるガイドを有し、可動部材は、ガイドを摺動するスライダを有してもよい。
また、固定部材は、ガイドを保持する第1保持部材を有し、弾性部材は、ガイドの延びる方向に沿って設けられたコイルばねの形態を成し、スライダは、第1保持部材との間でコイルばねを圧縮する方向に移動してもよい。
また、固定部材は、少なくとも2個のガイドを有してもよい。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係るカメラ支持装置は、上記の本発明に係る防振装置と、防振装置に接続された固定部と、固定部に接続された旋回部と、旋回部に設けられたカメラとを備える。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る防振装置は、鉛直方向に伸縮自在な第1伸縮部材と、第1伸縮部材に接続された固定部材と、第1伸縮部材に接続され、固定部材に対して水平方向に移動自在な可動部材と、固定部材に支持され、可動部材の水平方向への移動を妨げるように可動部材を付勢する弾性部材と、固定部材及び可動部材に接続され、鉛直方向に伸縮自在な第2伸縮部材と、第2伸縮部材に接続された第2支持部材とを備え、第2支持部材に対して荷重が印加されたときに、第1伸縮部材及び第2伸縮部材が鉛直方向に短縮し、可動部材が水平方向に移動するため、鉛直方向の振動を低減するとともに水平方向の傾きを低減することができる。
【0011】
また、この発明に係るカメラ支持装置は、上記の本発明に係る防振装置と、防振装置に接続された固定部と、固定部に接続された旋回部と、旋回部に設けられたカメラとを備えるため、カメラの鉛直方向の振動を低減するとともに水平方向の傾きを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1に係る防振装置の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る防振装置の正面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る防振装置の平面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るカメラ支持装置の概略図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る防振装置の使用例の概略図である。
【0013】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る防振装置を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態1に係る防振装置の斜視図であり、図2は、本実施の形態1に係る防振装置の正面図である。防振装置10は、例えば建物の屋上や柱の上部に設置された既知の図示しない旋回式監視カメラに設けられている。
【0014】
防振装置10は、旋回式監視カメラの固定部を保持する保持盤の下側に取り付けられており、例えば鋼鉄等の金属で形成された平板状の底板21を有している。底板21の上側には、水平方向に延びるように形成されたリンク取付部23が形成されており、リンク取付部23には下部リンク機構30が取り付けられている。ここで、防振装置10における上側及び下側とは、防振装置10を旋回式監視カメラに設置した際の鉛直方向上側及び鉛直方向下側をそれぞれ指す。なお、底板21は第1支持部材を構成している。
【0015】
下部リンク機構30は、底板21のリンク取付部23に形成されたジョイントに一端部が接続された第1リンク31と、底板21のリンク取付部23に形成されたジョイントに一端部が接続され、第1リンク31に略平行に延びる第2リンク32と、第2リンク32の略中央部に形成されたジョイントに一端部が接続され、第2リンク32とは異なる方向に延びる第3リンク33とを有している。下部リンク機構30の上側には、水平方向へ伸縮自在に構成された水平伸縮部材40が接続されている。すなわち、下部リンク機構30は、底板21と水平伸縮部材40とを接続している。第1リンク31、第2リンク32及び第3リンク33は例えば鋼鉄等の金属で形成されている。なお、下部リンク機構30は第1伸縮部材を構成している。
【0016】
水平伸縮部材40は、水平方向に沿って延びる筒状保持部材41と、筒状保持部材41の外周部に一端部が接続されることで、筒状保持部材41に保持され水平方向に沿って延びる棒状のガイド42と、ガイド42の他端部に配置され、ガイド42を保持する輪状保持部材43と、筒状保持部材41から輪状保持部材43まで延びるシャフト44とを有する。シャフト44は、筒状保持部材41の内部に収容されて保持され、シャフト44の一端部は筒状保持部材41の端部付近に配置されている。また、シャフト44の他端部は、輪状保持部材43に保持されている。ガイド42は、シャフト44を挟んで2本平行に設けられている。筒状保持部材41、ガイド42、輪状保持部材43及びシャフト44は、例えば鋼鉄等の金属で形成されている。なお、筒状保持部材41、ガイド42、輪状保持部材43及びシャフト44は固定部材を構成している。また、筒状保持部材41は第1保持部材を構成しており、輪状保持部材43は第2保持部材を構成している。
【0017】
筒状保持部材41と輪状保持部材43との間には、輪状形状を有するスライダ45が設けられている。スライダ45は、中心部にシャフト44が貫通し、径方向外側にシャフト44を中心に対称に2個設けられたフック部45aがガイド42とそれぞれ接続している。これにより、スライダ45はシャフト44及びガイド42に沿って摺動可能に形成されている。筒状保持部材41の内部から、スライダ45までの間のシャフト44には、コイルばね46が取り付けられている。また、筒状保持部材41の外周部に接続されている、ガイド42の一端部からスライダ45のフック部45aが接続されている位置までの間のガイド42には、コイルばね47が取り付けられている。なお、スライダ45は可動部材を構成している。また、コイルばね46及びコイルばね47は弾性部材を構成している。
【0018】
第1リンク31の他端部は、筒状保持部材41にジョイントを介して接続されており、第2リンク32の他端部は、輪状保持部材43にジョイントを介して接続されている。第3リンク33の他端部は、ジョイントを介してスライダ45に接続されている。
【0019】
水平伸縮部材40の上部には、上部リンク機構50が設けられている。上部リンク機構50は、水平伸縮部材40と、上部リンク機構50の上方に設けられている天板22とを接続している。水平伸縮部材40は、天板22のリンク取付部23に形成されたジョイントに一端部が接続された第1リンク51と、天板22のリンク取付部23に形成されたジョイントに一端部が接続され、第1リンク51に略平行に延びる第2リンク52と、第2リンク52の略中央部に形成されたジョイントに一端部が接続され第2リンク32とは異なる方向に延びる第3リンク53とを有している。第1リンク51、第2リンク52及び第3リンク53は、例えば鋼鉄等の金属で形成されている。また天板22は、例えば鋼鉄等の金属で形成されている。なお、上部リンク機構50は第2伸縮部材を構成しており、天板22は第2支持部材を構成している。
【0020】
第1リンク51の他端部は、筒状保持部材41にジョイントを介して接続されており、第2リンク52の他端部は、輪状保持部材43にジョイントを介して接続されている。第3リンク53の他端部は、ジョイントを介してスライダ45に接続されている。
【0021】
上述した通り、下部リンク機構30は、底板21のリンク取付部23に一端部が接続され、水平伸縮部材40の筒状保持部材41の外周部に他端部が接続された第1リンク31と、底板21のリンク取付部23に一端部が接続され、水平伸縮部材40の輪状保持部材43に他端部が接続された第2リンク32と、第2リンク32の略中央部に一端部が接続され、スライダ45に他端部が接続された第3リンク33とを有している。そのため、下部リンク機構30は、固定部材である筒状保持部材41及び輪状保持部材43に対して、可動部材であるスライダ45がシャフト44及びガイド42に沿って移動することで、鉛直方向に沿って伸縮可能なパンタグラフジャッキ状のリンク機構を構成している。
【0022】
また、上述した通り、上部リンク機構50は、天板22のリンク取付部23に一端部が接続され、水平伸縮部材40の筒状保持部材41の外周部に他端部が接続された第1リンク51と、天板22のリンク取付部23に一端部が接続され、水平伸縮部材40の輪状保持部材43に他端部が接続された第2リンク52と、第2リンク52の略中央部に一端部が接続され、スライダ45に他端部が接続された第3リンク53とを有している。そのため、上部リンク機構50は、固定部材である筒状保持部材41及び輪状保持部材43に対して、可動部材であるスライダ45がシャフト44及びガイド42に沿って移動することで、鉛直方向に沿って伸縮可能なパンタグラフジャッキ状のリンク機構を構成している。
【0023】
図3は、本実施の形態1に係る防振装置10の平面図である。なお図3においては、説明の便宜のため天板22の記載を省略している。水平伸縮部材40の各側方部には、側方部リンク機構60が形成されている。側方部リンク機構60は、水平伸縮部材40の各側方に設けられたリンク取付部23に形成されたジョイントに一端部が接続された第1リンク61と、リンク取付部23に形成されたジョイントに一端部が接続され、第1リンク61に略平行に延びる第2リンク62と、第2リンク62の略中央部に形成されたジョイントに一端部が接続され、第2リンク62とは異なる方向に延びる第3リンク63とをそれぞれ有している。
【0024】
第1リンク61の他端部は、筒状保持部材41にジョイントを介して接続されており、第2リンク62の他端部は、輪状保持部材43にジョイントを介して接続されている。第3リンク63の他端部は、ジョイントを介してスライダ45に接続されている。各側方部リンク機構60は、固定部材である筒状保持部材41及び輪状保持部材43に対して、可動部材であるスライダ45がシャフト44及びガイド42に沿って移動することで、シャフト44の延びる方向に対して垂直な方向且つ水平方向に沿って伸縮可能なパンタグラフジャッキ状のリンク機構を構成している。
【0025】
図4は、本実施の形態1に係るカメラ支持装置の概略図である。カメラ支持装置70は、船舶等の移動体、建物の屋上、柱又は監視塔等に設置された基台71に配設され、カメラ75を支持している。カメラ支持装置70及びカメラ75は、船舶等の移動体への搭載用途、河川監視及び交通監視等の各種監視用途等に用いることができる。また、カメラ支持装置70は、基台71の上側に設けられた保持盤72と、保持盤72の上側に設けられた固定部73と、図示しないモータを有し鉛直方向に延びる旋回軸Aを中心に旋回自在に構成された旋回部74と、旋回部74に取り付けられ、旋回部74とともに旋回するカメラ75とを有している。保持盤72と基台71との間には、図1及び図2に示す防振装置10が保持盤72の周方向に沿って複数設けられている。
【0026】
次に、本実施の形態1に係る防振装置10の動作について説明する。図4に示す防振装置10は、底板21(図2参照)が基台71に取り付けられ、天板22が保持盤72に取り付けられている。このとき、各防振装置10には鉛直方向にカメラ支持装置70の荷重が加えられる。
【0027】
防振装置10に鉛直方向にカメラ支持装置70の荷重が加えられると、図2に示すように、天板22に鉛直方向に荷重が加えられるため、上部リンク機構50及び下部リンク機構30が鉛直方向に縮められる。これにより、上部リンク機構50及び下部リンク機構30の各第3リンク33、53に押圧され、スライダ45が筒状保持部材41に近づく方向に移動する。スライダ45と筒状保持部材41との間のシャフト44にはコイルばね46が配置され、スライダ45と、ガイド42の筒状保持部材41への接続部分との間のガイド42には、コイルばね47が配置されている。そのため、スライダ45の筒状保持部材41に接近する方向に移動しようとする力と、コイルばね46及びコイルばね47の付勢力とが釣り合う位置でスライダ45が停止する。
【0028】
この状態で、図4に示すカメラ75を所望の撮像方向に向けるため旋回部74が旋回した場合には、旋回部74に設けられたモータの振動及び旋回部74に生じる摩擦の影響で、旋回部74が鉛直方向に振動する。また、旋回部74外部から衝撃が加わった場合にも、旋回部74が鉛直方向に振動する。旋回部74の鉛直方向の振動により、保持盤72が鉛直方向に振動し、この振動により図2に示す底板21に対して天板22が鉛直方向に振動して、上部リンク機構50及び下部リンク機構30が伸縮する。そして、上部リンク機構50及び下部リンク機構30の伸縮により、スライダ45が水平方向に移動する。
【0029】
このとき、スライダ45の筒状保持部材41に近づく方向への移動速度及び移動距離は、コイルばね46及びコイルばね47の付勢力により減衰される。また、スライダ45の筒状保持部材41に近づく方向への移動速度及び移動距離が減衰されることにより、反作用によりスライダ45の筒状保持部材41から離れる方向への移動速度及び移動距離も減衰される。また、第3リンク33、53に接続されたスライダ45の水平方向の移動速度が減衰されることで、第3リンク33を有する下部リンク機構30と第3リンク53を有する上部リンク機構50の伸縮速度及び伸縮距離が低減される。これにより、下部リンク機構30に接続された底板21と上部リンク機構50に接続された天板22との間の鉛直方向の振動が減衰され、低減される。そのため、カメラ支持装置70及びカメラ75の鉛直方向の振動が低減される。
【0030】
また、カメラ支持装置70は、重心位置がカメラ支持装置70の旋回軸Aの位置からずれている場合があることや、カメラ支持装置70に当たる風の影響等により、水平方向に傾斜する場合がある。従来用いられていた鉛直方向に延びるコイルばね又は防振ゴムによる防振装置では、水平方向への復元力が不足するため、このような旋回部の水平方向の傾斜を十分に低減することができない。一方、本実施の形態に係る防振装置10は、底板21と水平伸縮部材40との間に下部リンク機構30が設けられ、天板22と水平伸縮部材40との間に上部リンク機構50が設けられ、水平伸縮部材40のスライダ45はシャフト44に沿って摺動可能に設けられており、スライダ45の移動速度はコイルばね46及びコイルばね47により減衰される。よって、水平方向の傾斜のうち、防振装置10のシャフト44に沿う方向の成分は、シャフト44、下部リンク機構30及び上部リンク機構50の剛性によって低減されるため、カメラ支持装置70の水平方向へ傾斜のうちシャフト44に沿う方向の水平方向の成分の傾斜が低減される。
【0031】
また、本実施の形態に係る防振装置10は、底板21と水平伸縮部材40との間に下部リンク機構30が設けられ、天板22と水平伸縮部材40との間に上部リンク機構50が設けられ、さらに水平伸縮部材40の各側方部には、側方部リンク機構60が形成されている。よって、水平方向の傾斜のうち、防振装置10のシャフト44に垂直な方向の成分は、下部リンク機構30、上部リンク機構50及び側方部リンク機構60の剛性によって低減されるため、カメラ支持装置70の水平方向の傾斜のうち、シャフト44に垂直な方向の成分の傾斜が低減される。
【0032】
また、従来のコイルばねを用いた防振装置では、鉛直方向の振動を減衰するために、鉛直方向に沿って長いストロークを確保する必要があり、そのために、比較的長い全長を有するコイルばねを用いる必要があった。ゆえに、コイルばねを用いた防振装置をカメラ支持装置に設置するときに、鉛直方向に沿って長い設置スペースを確保する必要があり、さらに、コイルばねが鉛直方向に沿って長い全長を有するために、コイルばねが水平方向に傾斜しやすいという問題点があった。
【0033】
一方、本実施の形態に係る防振装置10は、底板21に対する天板22の鉛直方向へのストロークが、下部リンク機構30及び上部リンク機構50を介して水平伸縮部材40のスライダ45の水平方向のストロークとなる。このため、防振装置10の底板21から天板22までの鉛直方向長さ及びストロークを短く構成し、水平方向への傾斜を低減することができる。
【0034】
これにより、防振装置10の水平方向への傾斜が低減されるため、カメラ支持装置70及びカメラ75の水平方向の傾斜が低減される。
【0035】
また、本実施の形態1に係る防振装置10は、スライダ45の移動速度及び移動距離を減衰するためにコイルばね46及びコイルばね47を有しているが、天板22に加わる振動の強度に応じて、適当な付勢力を有するコイルばね46及びコイルばね47に交換することで、防振装置10による鉛直方向の振動の減衰力を適切に調整することができる。
【0036】
このように、本実施の形態1に係る防振装置は、底板21と、底板21に接続され、鉛直方向に伸縮自在な第1伸縮部材である下部リンク機構30と、下部リンク機構30に接続された固定部材である筒状保持部材41、ガイド42及び輪状保持部材43と、下部リンク機構30に接続され、筒状保持部材41、ガイド42及び輪状保持部材43に対して水平方向に移動自在な可動部材であるスライダ45と、筒状保持部材41、ガイド42及び輪状保持部材43に支持され、スライダ45の水平方向への移動を妨げるようにスライダ45を付勢する弾性部材であるコイルばね46,47と、筒状保持部材41、ガイド42、輪状保持部材43及び可動部材45に接続され、鉛直方向に伸縮自在な第2伸縮部材である上部リンク機構50と、上部リンク機構50に接続された天板22とを備え、天板22に対して荷重が印加されたときに、第1伸縮部材30及び第2伸縮部材50が鉛直方向に短縮し、スライダ45が水平方向に移動するため、カメラ支持装置70の鉛直方向の振動を低減するとともに水平方向の傾きを低減することができる。
【0037】
また、第1伸縮部材は、下部リンク機構30を有し、第2伸縮部材は、上部リンク機構50を有し、固定部材は、スライダ45の移動方向に沿って延びるガイド42を有し、可動部材は、ガイド42を摺動するスライダ45を有するため、防振装置10の鉛直方向長さを低減することができる。
【0038】
また、固定部材は、ガイド42を保持する筒状保持部材41を有し、弾性部材は、ガイド42の延びる方向に沿って設けられたコイルばね46,47の形態を成し、スライダ45は、筒状保持部材41との間でコイルばね46,47を圧縮する方向に移動するため、低減すべき振動の強度に合わせて適当な付勢力を有するコイルばね46,47を用いることにより、防振装置10による鉛直方向の振動の減衰力を適切に調整することができる。
【0039】
また、固定部材は、少なくとも2個のガイド42を有するため、スライダ45が安定して移動することができる。
【0040】
また、本実施の形態1に係るカメラ支持装置70は、防振装置10と、防振装置10に接続された固定部73と、固定部73に接続された旋回部74と、旋回部74に設けられたカメラ75とを備えるため、カメラ75の鉛直方向の振動及び水平方向への傾斜が低減される。
【0041】
なお、本実施の形態1においては、底板21、天板22、第1リンク31、第2リンク32及び第3リンク33、筒状保持部材41、ガイド42、輪状保持部材43及びシャフト44は、例えば鋼鉄等の金属で形成されていたが、必要な強度及び剛性を確保することが可能であれば、例えば樹脂等の非金属材料により形成されていてもよい。
【0042】
また、本実施の形態1においては、弾性部材としてコイルばね46及びコイルばね47が設けられていたが、スライダ45の移動速度及び移動距離を適切に低減することができればゴム等の他の種類の弾性部材を用いてもよい。
【0043】
また、本実施の形態1においては、ガイド42は2本設けられていたが、ガイド42の本数は適当な数に変更されてもよい。
【0044】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る防振装置を示す。本実施の形態2に係る防振装置は、実施の形態1のカメラに設けられていた防振装置に対して、機械装置に設けられているものである。
図5は、本実施の形態に係る防振装置の使用例の概略図である。実施の形態2に駆る防振装置10は、例えばプレス機や空調装置等の機械装置80を保持する保持盤82の鉛直方向下側と、床部81に設置された基台83の鉛直方向上側との間に複数設置されており。防振装置10が機械装置80の動作によって発生する振動を低減することで、床部81に伝達される振動を低減する。
【0045】
このように、機械装置80の下部に防振装置10を設けることで、床部81に伝達される、機械装置80により発生する振動を低減することができる。
【0046】
なお、本発明の実施の形態1及び2に含まれる構成要素及びその変形例に含まれる構成要素は、適当に組み合わせて用いることができる。
【0047】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0048】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0049】
(付記1)
第1支持部材(21)と、
前記第1支持部材(21)に接続され、鉛直方向に伸縮自在な第1伸縮部材(30)と、
前記第1伸縮部材(30)に接続された固定部材(41,42,43)と、
前記第1伸縮部材(30)に接続され、前記固定部材(41,42,43)に対して水平方向に移動自在な可動部材(45)と、
前記固定部材(41,42,43)に支持され、前記可動部材(45)の水平方向への移動を妨げるように前記可動部材(45)を付勢する弾性部材(46,47)と、
前記固定部材(41,42,43)及び前記可動部材(45)に接続され、鉛直方向に伸縮自在な第2伸縮部材(50)と、
前記第2伸縮部材(50)に接続された第2支持部材(22)と
を備え、
前記第2支持部材(22)に対して荷重が印加されたときに、前記第1伸縮部材(30)及び前記第2伸縮部材(50)が鉛直方向に短縮し、前記可動部材(45)が水平方向に移動する防振装置。
(付記2)
前記第1伸縮部材(30)は、第1リンク機構を有し、
前記第2伸縮部材(50)は、第2リンク機構を有し、
前記固定部材(41,42,43)は、前記可動部材(45)の移動方向に沿って延びるガイド(42)を有し、
前記可動部材(45)は、前記ガイド(42)を摺動するスライダ(45)を有する付記1に記載の防振装置。
(付記3)
前記固定部材(41,42,42)は、前記ガイド(42)を保持する第1保持部材(41)を有し、
前記弾性部材(46,47)は、前記ガイド(42)の延びる方向に沿って設けられたコイルばね(46,47)の形態を成し、
前記スライダ(45)は、前記第1保持部材(41)との間で前記コイルばね(46,47)を圧縮する方向に移動する付記2に記載の防振装置。
(付記4)
前記固定部材(41,42,43)は、少なくとも2個の前記ガイド(42)を有する付記2又は3に記載の防振装置。
(付記5)
付記1~4のいずれか1項に記載の防振装置(10)と、
前記防振装置(10)に接続された固定部(73)と、
前記固定部(73)に接続された旋回部(74)と、
前記旋回部(74)に設けられたカメラ75と
を備えるカメラ支持装置。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る防振装置は、底板21と、底板21に接続され、鉛直方向に伸縮自在な第1伸縮部材である下部リンク機構30と、下部リンク機構30に接続された固定部材である筒状保持部材41、ガイド42及び輪状保持部材43と、下部リンク機構30に接続され、筒状保持部材41、ガイド42及び輪状保持部材43に対して水平方向に移動自在な可動部材であるスライダ45と、筒状保持部材41、ガイド42及び輪状保持部材43に支持され、スライダ45の水平方向への移動を妨げるようにスライダ45を付勢する弾性部材であるコイルばね46,47と、筒状保持部材41、ガイド42、輪状保持部材43及び可動部材45に接続され、鉛直方向に伸縮自在な第2伸縮部材である上部リンク機構50と、上部リンク機構50に接続された天板22とを備え、天板22に対して荷重が印加されたときに、第1伸縮部材30及び第2伸縮部材50が鉛直方向に短縮し、スライダ45が水平方向に移動し、カメラ支持装置70の鉛直方向の振動を低減するとともに水平方向の傾きを低減することができるため、旋回部に取り付けられたカメラを有するカメラ支持装置に使用する用途に適している。
【符号の説明】
【0051】
10 防振装置
21 底板(第1支持部材)
22 天板(第2支持部材)
30 下部リンク機構(第1伸縮部材)
41 筒状保持部材(固定部材,第1保持部材)
42 ガイド(固定部材)
43 輪状保持部材(固定部材)
45 スライダ(可動部材)
46 コイルばね(弾性部材)
47 コイルばね(弾性部材)
50 上部リンク機構(第2伸縮部材)
73 固定部
74 旋回部
75 カメラ
図1
図2
図3
図4
図5