(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179109
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】板金加工方法及び板金加工用金型
(51)【国際特許分類】
B21D 28/10 20060101AFI20241219BHJP
B21D 28/14 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B21D28/10 Z
B21D28/14 A
B21D28/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097661
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】武田 知里
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓也
【テーマコード(参考)】
4E048
【Fターム(参考)】
4E048CA02
4E048CA05
4E048CA08
4E048EA03
4E048FA03
4E048FA07
(57)【要約】
【課題】切り出した製品の水平移動を規制する移動規制突起を形成する板金加工において、製品の生産効率が低下しにくい板金加工方法を提供する。
【解決手段】板金加工方法は、板金(W)から切り出す製品(WP)の輪郭を一部を残して切断し、一部で残材(WS)と連結した製品中間体(WR)を形成する切断工程と、残材(WS)に、持ち上がった状態の製品中間体(WR)における隣接する二辺の端面と当接可能な移動規制突起部(Wf)を形成する移動規制突起部形成工程と、残材(WS)に、製品中間体(WR)を持ち上げると共にその下側に延出して製品中間体(WR)を支持する支持突起部(We)を形成する支持突起部形成工程と、残した一部を切断して製品中間体(WR)を製品(WP)として残材(WS)から切り出す製品分離工程と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金から切り出す製品の輪郭を一部を残して切断し、前記一部で残材と連結した製品中間体を形成する切断工程と、
前記残材に、持ち上がった状態の前記製品中間体における隣接する二辺の端面と当接可能な移動規制突起部を形成する移動規制突起部形成工程と、
前記残材に、前記製品中間体を持ち上げると共にその下側に延出して前記製品中間体を支持する支持突起部を形成する支持突起部形成工程と、
前記一部を切断して前記製品中間体を製品として前記残材から切り出す製品分離工程と、
を備えた板金加工方法。
【請求項2】
前記移動規制突起部を、
前記板金の表面から上方に突き上げられた突起頂部と、
前記突起頂部と前記残材とを連結し、平面視において所定の角度で離隔して形成され前記二辺の端面とそれぞれ当接する少なくとも二つの腕部と、を有するものとする請求項1記載の板金加工方法。
【請求項3】
前記所定の角度を90°とする請求項2記載の板金加工方法。
【請求項4】
前記腕部を四つとした請求項3記載の板金加工方法。
【請求項5】
板金から切り出され、残材に対し持ち上げられた状態で下面を支持された板状の製品の水平移動を規制する移動規制突起部を前記残材に形成する板金加工用金型であって、
平坦な天面に十字形状の第1貫通孔を有するダイエジェクタと、前記第1貫通孔に挿通可能な十字形状の第1突出部を有するダイ本体部とを有し、前記第1突出部が前記第1貫通孔に挿通されて組み合わされた移動規制突起形成ダイと、
平坦な下面に十字形状の第2貫通孔を有するパンチチップと、前記第2貫通孔に挿通可能な十字形状の第2突出部を有するパンチエジェクタとを有し、前記第2突出部が前記第2貫通孔に挿通されて組み合わされた移動規制突起形成パンチとを備え、
前記第1突出部は、十字形状の径方向の縁部に抉り部が形成されており、
前記天面と前記下面との間に前記残材を挟んだ状態で前記ダイ本体部を上昇させることで、前記残材における、前記第1突出部に対応した部分が突きあげられて形成された突起頂部と、前記抉り部に対応した部分で形成され前記突起頂部と前記残材とを連結する四つの腕部とを有し、前記腕部に前記製品の端面が当接して前記製品の水平移動を規制する移動規制突起部が得られる板金加工用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板金加工方法及び板金加工用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
板金に対しパンチ加工とレーザ加工との両方の加工を行う複合加工機が知られている。この複合加工機を用い、板金に対して切り出す製品の一部が残材の下側に潜り込むことを防止する形状を形成する金型、及びその金型を用いて板金を加工する板金加工方法が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された金型は、製品の輪郭における所定位置の縁部を板厚以上に持ち上げる押上部と、その所定位置に対応した残材の縁部に、持ち上げた製品の縁部の下側に潜り込んで製品を支持する突起(以下、支持突起)をコイニング加工で形成するコイニング部とを有する。
【0003】
この支持突起を形成する加工を、製品の輪郭に沿って複数箇所行うことで、製品は支持突起の上に乗った状態で安定維持されるので、残材の下側に潜り込むことが防止される。これにより、切り出した製品を、搬送装置によって吸着して持ち上げて次工程へ搬送する作業を確実に実行できる。このように、残材に対し製品の下側に突出し切り出す製品を支持するための支持突起を形成する金型を、以下、支持突起部形成金型と称する。また、特許文献1(
図15参照)には、切り出した製品の、残材に対する水平方向の移動を規制するために残材に上方に向けて突出するブリッジ状の突起(以下、移動規制突起)を形成することが記載されている。特許文献2には、そのブリッジ状の移動規制突起と製品の下側を支持する支持突起とを併せ持つ突起を形成する金型が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-075289号公報
【特許文献2】特開2021-146341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の移動規制突起は、切り出した製品の一辺の端面に当接して切り出した製品の、水平方向の一つの向きのみの移動を規制するものである。従って、切り出した製品の回転移動と平行移動とを含む水平方向の移動を完全に規制するには、多数の移動規制突起を形成する必要があり、加工時間がかかり生産効率が低下する。そのため、切り出した製品の水平方向の移動を規制する移動規制突起を形成する板金加工において、製品の生産効率を低下しにくくする工夫が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の一態様は次の構成を有する。
板金から切り出す製品の輪郭を一部を残して切断し、前記一部で残材と連結した製品中間体を形成する切断工程と、前記残材に、持ち上がった状態の前記製品中間体における隣接する二辺の端面と当接可能な移動規制突起部を形成する移動規制突起部形成工程と、前記残材に、前記製品中間体を持ち上げると共にその下側に延出して前記製品中間体を支持する支持突起部を形成する支持突起部形成工程と、前記一部を切断して前記製品中間体を製品として前記残材から切り出す製品分離工程と、備えた板金加工方法である。これにより、製品の2つの向きの移動を一つの移動規制突起部で規制できるので、形成する移動規制突起部の数が少なくてすみ生産効率が向上する。
【0007】
また、第2の一態様は次の構成を有する。板金から切り出され、残材に対し持ち上げられた状態で下面を支持された板状の製品の水平移動を規制する移動規制突起部を前記残材に形成する板金加工用金型であって、平坦な天面に十字形状の第1貫通孔を有するダイエジェクタと、前記第1貫通孔に挿通可能な十字形状の第1突出部を有するダイ本体部とを有し、前記第1突出部が前記第1貫通孔に挿通されて組み合わされた移動規制突起形成ダイと、平坦な下面に十字形状の第2貫通孔を有するパンチチップと、前記第2貫通孔に挿通可能な十字形状の第2突出部を有するパンチエジェクタとを有し、前記第2突出部が前記第2貫通孔に挿通されて組み合わされた移動規制突起形成パンチとを備え、前記第1突出部は、十字形状の径方向の縁部に抉り部が形成されており、前記天面と前記下面との間に前記残材を挟んだ状態で前記ダイ本体部を上昇させることで、前記残材における、前記第1突出部に対応した部分が突きあげられて形成された突起頂部と、前記抉り部に対応した部分で形成され前記突起頂部と前記残材とを連結する四つの腕部とを有し、前記腕部に前記製品の端面が当接して前記製品の水平移動を規制する移動規制突起部が得られる板金加工用金型。これにより、製品の2つの向きの移動を一つの移動規制突起部で規制できるので、形成する移動規制突起部の数が少なくてすみ生産効率が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、切り出した製品の水平移動を規制する移動規制突起を形成する板金加工において、製品の生産効率が低下しにくい、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る板金加工方法を実行する板金加工システムSTを示す図である。
【
図2】
図2は、板金加工システムSTが備える制御装置2のブロック図である。
【
図3】
図3は、板金加工システムSTのパンチ加工部12が備える移動規制突起部形成金型K89の動作を説明するための断面図である。
【
図4A】
図4Aは、移動規制突起部形成金型K89が備えるダイ本体部81の二面図であり、
図4A(a)が上面図、
図4A(b)が側面図である。
【
図4B】
図4Bは、移動規制突起部形成金型K89が備えるダイエジェクタ82の図であり、
図4B(a)は上面図、
図4B(b)は
図4B(a)におけるS4B-S4B位置での断面図である。
【
図4C】
図4Cは、移動規制突起部形成金型K89が備えるパンチエジェクタ91の図であり、
図4C(a)は斜視図、
図4C(b)は下面図である。
【
図4D】
図4Dは、移動規制突起部形成金型K89が備えるパンチチップ92の図であり、
図4D(a)は下面図、
図4D(b)は
図4D(a)におけるS4D-S4D位置での断面図である。
【
図5A】
図5Aは、移動規制突起部形成金型K89で形成した移動規制突起部Wfの図であり、
図5A(a)が平面図、
図5A(b)が
図5A(a)におけるS5A-S5A位置での断面図である。
【
図6】
図6は、移動規制突起部Wfを製品WPの角部Wmaに対応して形成したときの形成態様を説明するための図であり、
図6(a)は、角部WmaがR付角部Wma1の場合、
図6(b)は、角部WmaがC面付角部Wma2の場合、
図6(c)は、角部Wmaが直角部Wma3の場合を示している。
【
図7】
図7は、板金加工システムSTのパンチ加工部12が備える支持突起部形成金型K56で形成する支持突起部Weの図であり、
図7(a)は平面図、
図7(b)は、
図7(a)におけるS7-S7位置での断面図である。
【
図8】
図8は、移動規制突起部Wfによって製品WPの移動を規制している状態を説明するための斜視図である。
【
図9A】
図9Aは、ワークWに対する移動規制突起部Wfの割り付け態様を説明するための模式図である。
【
図9B】
図9Bは、移動規制突起部Wfの効果を説明するための従来の移動規制突起部Pfの割り付け態様を示す模式図である。
【
図10A】
図10Aは、ワークWAから製品WPを切り出す方法を説明するための第1工程図である。
【
図10B】
図10Bは、ワークWAから製品WPを切り出す方法を説明するための第2工程図である。
【
図10C】
図10Cは、ワークWAから製品WPを切り出す方法を説明するための第3工程図である。
【
図10D】
図10Dは、ワークWAから製品WPを切り出す方法を説明するための第4工程図である。
【
図11】
図11は、移動規制突起部Wfの変形例である移動規制突起部Wgを示す図であり、
図11(a)は第1の向きに形成された場合、
図11(b)は第2の向きに形成された場合を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る板金加工用金型及び板金加工方法について、板金加工システムSTが実行する板金加工により説明する。説明において、
図1~
図8を参照する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る板金加工方法を実行する板金加工システムSTを示す図である。
図2は、板金加工システムSTが備える制御装置2のブロック図である。
図3は、板金加工システムSTのパンチ加工部12が備える移動規制突起部形成金型K89の動作を説明するための断面図である。
図4Aは、移動規制突起部形成金型K89が備えるダイ本体部81の二面図であり、
図4A(a)が上面図、
図4A(b)が側面図である。
図4Bは、移動規制突起部形成金型K89が備えるダイエジェクタ82の図であり、
図4B(a)は上面図、
図4B(b)は
図3B(a)におけるS4B-S4B位置での断面図である。
図4Cは、移動規制突起部形成金型K89が備えるパンチエジェクタ91の図であり、
図4C(a)は斜視図、
図4C(b)は下面図である。
図4Dは、移動規制突起部形成金型K89が備えるパンチチップ92の図であり、
図4D(a)は下面図、
図4D(b)は
図4D(a)におけるS4D-S4D位置での断面図である。
図5Aは、移動規制突起部形成金型K89で形成した移動規制突起部Wfの図であり、
図5A(a)が平面図、
図5A(b)が
図5A(a)におけるS5A-S5A位置での断面図である。
図5Bは、移動規制突起部Wfの斜視図である。
図6は、移動規制突起部Wfを製品WPの角部Wmaに対応して形成したときの形成態様を説明するための図であり、
図6(a)は、角部WmaがR付角部Wma1の場合、
図6(b)は、角部WmaがC面付角部Wma2の場合、
図6(c)は、角部Wmaが直角部Wma3の場合を示している。
図7は、板金加工システムSTのパンチ加工部12が備える支持突起部形成金型K56で形成する支持突起部Weの図であり、
図7(a)は平面図、
図7(b)は、
図7(a)におけるS7-S7位置での断面図である。
図8は、移動規制突起部Wfによって製品WPの移動を規制している状態を説明するための斜視図である。
【0012】
まず、
図1を参照して板金加工システムSTの全体構成について説明する。説明の便宜上、上下左右の各方向を
図1に示された矢印の方向で規定する。前後方向は紙面表裏方向であり、前方が紙面手前、後方が紙面奥方向となる。また、左右方向をX方向、前後方向Y方向、上下方向をZ方向と称する。
【0013】
板金加工システムSTは、複合加工機1,制御装置2,及び搬送装置3を備えている。複合加工機1は、ワークテーブル11,パンチ加工部12,及びレーザ加工部13を有する。ワークテーブル11の上部には、板金であるワークWが載置される。ワークWはクランパ(不図示)によって掴まれX方向に移送される(矢印DR1参照)。ワークWは
図1に示される位置から左方に移送されてパンチ加工部12に供給される。
【0014】
パンチ加工部12は、下部タレット121及び上部タレット122を有する。
下部タレット121には、ダイ金型KDが装着され、上部タレット122にはダイ金型KDと組を成すパンチ金型KPが装着される。また、下部タレット121には、支持突起形成ダイ5及び移動規制突起形成ダイ8も装着され、上部タレット122には支持突起形成パンチ6及び移動規制突起形成パンチ9も装着される。
【0015】
ダイ金型KD及びパンチ金型KPの金型の組は、下部タレット121と上部タレット122との間に供給されたワークWに対し、パンチ駆動部(不図示)の動作によって協働して打ち抜き加工を行う。
【0016】
支持突起形成ダイ5及び支持突起形成パンチ6は、金型の組として支持突起部形成金型K56を構成する。支持突起部形成金型K56は、下部タレット121と上部タレット122との間に供給されたワークWのスリットWmの縁部に、パンチ駆動部(不図示)の動作によって
図7に示される支持突起部Weを形成する。スリットWmは、後述のように、切り出す製品WPの輪郭の一部としてレーザビームLSによって形成される。
【0017】
移動規制突起形成ダイ8及び移動規制突起形成パンチ9は、金型の組として移動規制突起部形成金型K89を構成する。移動規制突起部形成金型K89は、下部タレット121と上部タレット122との間に供給されたワークWに対し、パンチ駆動部(不図示)の動作によって、
図5A及び
図5Bに示される移動規制突起部Wfを形成する。移動規制突起部形成金型K89は、以下、単に金型K89と称する場合もある。
【0018】
パンチ加工部12での加工時には、ワークWはX方向とY方向の両方に移動し、選択された金型の組によってワークWの任意の位置に打ち抜きなどの加工が行われる。
【0019】
レーザ加工部13は、ワークテーブル11の上方に配置され、Y方向に移動可能なレーザ加工ヘッド131を有する。レーザ加工ヘッド131は、下端部からワークテーブル11に向けてレーザビームLSを射出する。ワークWがワークテーブル11上でX方向に移動し、レーザ加工ヘッド131がY方向に移動することで、ワークWの任意の位置にレーザ加工が行われる。
【0020】
搬送装置3は、ワークテーブル11に対し、パンチ加工部12及びレーザ加工部13とは反対側に設置されている。この例において、ワークテーブル11に対し、パンチ加工部12及びレーザ加工部13は左側に設置され、搬送装置3は右側に設置されている。
【0021】
搬送装置3は、アーム31及び吸着部32を有する。アーム31はX方向(矢印DR2参照)及びZ方向(矢印DR3)に移動する。吸着部32はアーム31の下方先端に取り付けられており、水平方向の2次元状に並設されて下方を指向する複数の吸盤部321を有する。搬送装置3は、吸盤部321の先端から空気を吸引する吸引装置(不図示)を備えている。
【0022】
搬送装置3は、ワークテーブル11上のワークWを複数の吸盤部321によって吸引保持し、アーム31の昇降及び水平移動によってワークWを所定の位置に搬出する。また、同様の動作で、加工に供するワークWを外部から搬入し、ワークテーブル11上に載置する。
【0023】
図2に示されるように、制御装置2は、制御部21,統括割付部7,入力部73,及び出力部74を有する。制御部21は、板金加工システムSTの全体の動作を制御する。統括割付部7は、ワークWに対し、切り出す製品WPの輪郭に対し、支持突起部形成金型K56及び移動規制突起部形成金型K89などによる加工位置の割り付けを統括して行う。入力部73は、外部機器との通信を行う通信部と、作業者による直接入力を可能とする入力端末とを有する。出力部74は、ディスプレイなどの出力機器を備え、板金加工システムSTの動作状況、設定情報、などを出力する。
【0024】
統括割付部7は、中央処理装置71〔以下、CPU(Central Processing Unit)71〕及び記憶部72を有するコンピュータである。CPU71は、割付部711を有する。記憶部72は、金型データ格納部724及び製品情報格納部727を有する。割付部711は、記憶部72に予め記憶された割付プログラムに従い、パンチ加工部12に装着された金型の情報及び切り出す製品の輪郭などを、それぞれ金型データ格納部724及び製品情報格納部727に格納された情報から得て、それらの情報に応じて金型による加工位置の割り付けを自動で実行する。金型の加工位置の割り付けは、入力部73を介して作業者が手動で実行してもよい。
【0025】
次に、金型K89について、
図3及び
図4A~
図4Dを参照して詳述する。上述のように、金型K89は、移動規制突起形成ダイ8と移動規制突起形成パンチ9とを有する。
図3に示されるように、移動規制突起形成ダイ8は、ダイ本体部81とダイエジェクタ82とを有する。移動規制突起形成パンチ9は、パンチエジェクタ91とパンチチップ92とを有する。
【0026】
図4Aに示されるように、ダイ本体部81は、円盤状の基部811と、基部811からその軸線上に突出する突出部812とを有する。突出部812は、上面視で十字状に形成され、その上面である天頂部812aは十字状の平面とされている。天頂部812aの十字状の先端角部である径方向の縁部は、逆R状に抉られた抉り部812bとされている。突出部812は、以下、第1突出部812とも称する。
【0027】
図4Bに示されるように、ダイエジェクタ82は、円盤状で上縁部がなだらかにR付けされている基部821を有する。基部821は、下穴部82a及び貫通孔82bを有する。下穴部82aは、下面から上方に向け矩形に抉られた穴である。貫通孔82bは、上下に延びる軸線CL82を中心として形成され、下穴部82aに連接して上面視で各腕が同寸法の矩形となる十字形状に形成されている。下穴部82aは、下面視で貫通孔82bを包含する大きさで形成されている。基部821の上面は、貫通孔82bの開口部を包含する範囲が軸線CL82に直交する平面の天面82cとなっている。貫通孔82bは、以下、第1貫通孔82bとも称する。
【0028】
図4Cに示されるように、パンチエジェクタ91は、円柱状の基体911と、基体911の下面から下方に延出する横断面形状が十字形状となる突出部912とを有する。突出部912の下端面912bは、十字形状の平面となっている。突出部912は、以下第2突出部912とも称する。
【0029】
図4Dに示されるように、パンチチップ92は、下方が小径となる段付きの円盤状に形成された基体92aを有する。基体92aは、上下に延びる軸線CL92に沿う十字形状の貫通孔92bを有する。上面視において、十字形状を形成する四つの溝腕部92dのそれぞれの根元は、R付けされた連接部92eで連接されている。また、溝腕部92dそれぞれの下側の出口縁部は、外方に広がる面取り部92cとされている。基体92aの下面92fは、軸線CL92に直交する平面となっている。貫通孔92bは、以下、第2貫通孔92bとも称する。
【0030】
図3に示されるように、ダイ本体部81とダイエジェクタ82とは、ダイエジェクタ82の貫通孔82bに、下方側からダイ本体部81の突出部812がほぼ遊びなく上下動可能に進入して組み合わされ、移動規制突起形成ダイ8とされる。移動規制突起形成ダイ8は下部タレット121(
図3では不図示)に装着される。
【0031】
パンチエジェクタ91とパンチチップ92とは、パンチチップ92の貫通孔92bに、上方側からパンチエジェクタ91の突出部912がほぼ遊びなく上下動可能に進入して組み合わされ、移動規制突起形成パンチ9とされる。移動規制突起形成パンチ9は上部タレット122(
図3では不図示)に装着される。
【0032】
不図示のパンチ駆動部の動作によって移動規制突起形成ダイ8と移動規制突起形成パンチ9とは協働し、板金のワークWの下面及び上面を、それぞれダイエジェクタ82の天面82c、及びパンチチップ92の下面92fで挟み込む。挟み込まれて維持される範囲は、ダイエジェクタ82の天面82cにおける、十字形状の貫通孔82bを除く範囲である。
【0033】
次いで、挟み込んだワークWに対し下側からダイ本体部81が上昇し、突出部812の天頂部812aとパンチエジェクタ91の突出部912の下端面912bとの間で挟んだ十字形状の部分を突き上げて切り起こす。この動作により、ワークWに、
図5A及び
図5Bに示される移動規制突起部Wfが形成される。
【0034】
移動規制突起部Wfは、ワークWの母材と平行に持ち上げられた十字形状の平面部位である突起頂部Wf1と、突起頂部Wf1から上面視で周方向に所定の角度θとして90°ピッチに形成されて母材に連結する四つの突起腕部Wf2とを有する。突起頂部Wf1は、ダイ本体部81の天頂部812aに対応した形状で形成される。突起腕部Wf2は、ダイ本体部81の抉り部812bに対応した形状で形成される。移動規制突起部Wfの平面視形状は、90°回転させると一致する4回対称とする。
【0035】
図5Bに示されている、突起腕部Wf2の根元を繋ぐ部分である突起入隅部Wf3と突起入隅部Wf3が切り起こされて形成された母材側のコーナー部WSaとは、パンチチップ92の連接部92eに概ね対応した形状でせん断によって形成される。連接部92eは下面視でR付けされた円弧形状なので、ワークWの平板部分に移動規制突起部Wfを形成した場合、突起入隅部Wf3は連接部92eの形状を反映して概ね円弧形状となる。
【0036】
ワークWから製品WPを切り出す加工において、移動規制突起部Wfは、平板部分ではなく、レーザビームLSによって予め形成されたスリットWmの残材側の縁部のコーナー部に割り付けられて形成される。そのコーナー部に対応した突起入隅部Wf3の形状は、
図6(a)~(c)に例示されるように、同じ金型K89を用いても、スリットWmのコーナーである角部Wmaの形状に応じたものとなる。
【0037】
図6(a)は、スリットWmの角部Wmaが、半径rで中心位置Pmの四分円の円弧で形成されたR付角部Wma1である場合を示している。この場合、四分円の円弧の半径rは、移動規制突起部Wfの突起腕部Wf2の腕長である距離Df以下である。突起腕部Wf2の腕長は、第1方向に延びる突起腕部Wf2の先端の位置Pt1と、隣接する突起腕部Wf2における位置Pt1側の縁部の位置Pt2との間の、第1方向の距離である。そして、金型K89の割り付け位置である金型K89の加工中心位置Pwを、角部Wma1の円弧の中心位置Pmを通り45°傾いた径線LN61上とし、突起腕部Wf2が製品WPの直交する2辺に沿う位置に設定する。これにより形成される移動規制突起部Wfにおいて、突起入隅部Wf3は、R付角部Wma1に概ね対応した円弧形状に形成される。
【0038】
図6(b)は、角部Wmaが45°でC面取り付けされたC面付角部Wma2である場合を示している。この場合、C面寸法は、移動規制突起部Wfの突起腕部Wf2の先端から根元までの距離Df以下である。そして、加工中心位置Pwを、C面付角部Wma2の中央位置で直交する45°の傾斜線LN62上とし、突起腕部Wf2が製品Wpの直交する2辺に沿う位置に設定する。これにより形成される移動規制突起部Wfにおいて、突起入隅部Wf3は、C面付角部Wma2に概ね対応したC面形状に形成される。
【0039】
図6(c)は、角部Wmaが直角の直角部Wma3である場合を示しており、この場合、移動規制突起部Wfの突起入隅部Wf3も直角形状に形成される。
【0040】
突起入隅部Wf3の形状は、移動規制突起部Wfの支持突起部Weによって概ね板厚分だけ持ち上げられて支持された製品WPの水平方向の移動の規制には寄与しない。すなわち、本発明の板金加工方法の一態様は、一種類の移動規制突起部形成金型K89によって、形状が異なる角部Wmaに対応する移動規制突起部Wfを形成して、製品WPの水平移動を規制できるので、汎用性が高い。
【0041】
本発明の板金加工方法の一態様で形成する支持突起部We及び移動規制突起部Wfの製品WPへの作用について、
図7及び
図8を参照して説明する。
支持突起部Weは、特許文献1に記載されているものであり、
図7(a),(b)に示されるように、残材WSにおけるスリットWmの縁部の加工中心位置Pwsに支持突起部形成金型K56の加工中心を位置決めしてコイニング加工を実行することで形成される。
【0042】
具体的には、わずかな部位を母材(残材WS)と連結させ、スリットWmにより大部分の輪郭が切り出された製品中間体WRを形成する。そして、製品中間体WRを板厚分だけ持ち上げながら、残材WSにおけるスリットWmの縁部に、圧痕Wdを形成するようコイニング加工を実行する。このコイニング加工の塑性流動によって、持ち上げた製品中間体WRの下に入り込んで製品中間体WRを支持する支持突起部Weが形成される。支持突起部Weは、その後、輪郭の全部がレーザビームによって切断されて切り出された製品WPも同様に支持する。
【0043】
図8に示されるように、製品中間体WRの角部Wmaに対応して形成された移動規制突起部Wfは、支持突起部Weで概ね板厚分持ち上げられて支持された製品WPが、水平に直交する2つの向き(矢印DR4及びDR5参照)に移動しようとしたとき、隣接する二つの突起腕部Wf2の端部にそれぞれ当接して移動が規制される。すなわち、一つの移動規制突起部Wfによって、製品WPの、水平方向に直交する二つの向きの移動を規制できる。
【0044】
本発明の板金加工方法の一態様は、上述の支持突起部We及び移動規制突起部WfをワークWに割り付けて形成し、切り出した製品WPの水平移動を効果的に防止できる。この割り付け態様について、
図9A及び
図9Bを参照して説明する。
図9Aは、ワークWに対する移動規制突起部Wfの割り付け態様を説明するための模式図である。
図9Bは、移動規制突起部Wfの効果を説明するための従来の移動規制突起部Pfの割り付け態様を示す模式図である。
【0045】
図9Aに示される板金のワークWには、左右に長い概ね長方形であって、内側に切り込まれた四つの隅部WRa~WRdを有する輪郭の製品WPとなる部分がレイアウトされている。そして、
図9Aでは、製品WPの輪郭線を、最後に切断する最終切断線Ta及びその一つ前に切断する最終前切断線Tbを残してレーザビームによって切断し、スリットWm1及びスリットWm2を形成した状態が示されている。すなわち、スリットWm1,Wm2によって、製品WPの輪郭のうち、最終切断線Ta及び最終前切断線Tbのみが残材WSとなる部位に連結した製品中間体WRが形成されている。
【0046】
残材WSには、スリットWm1に沿う縁部に、支持突起部Weを形成する部位として支持突起形成部Pが、この例では二箇所左右方向に離隔して割り付けられている。また、スリットWm2に沿う縁部にも、支持突起形成部Pがこの例では2箇所左右方向に離隔して割り付けられている。隅部WRa~WRdにおける残材WS側が入隅となる部位には、移動規制突起部Wfが割り付けられている。すなわち、残材WSの、左後,右後,右前,及び右前の入隅部位に、それぞれ移動規制突起部WfA,WfB,WfC,WfDの形成位置が割り付けられている。
【0047】
これにより、最終切断線Ta及び最終前切断線TbをレーザビームLSで切断して切り出された製品WPは、支持突起部Weによって持ち上げられて支持された状態で、水平方向の移動がわずかに4つの移動規制突起部Wfによって規制できる。詳しくは、製品WPの左向きの移動が移動規制突起部WfA,WfDで規制され、右向きの移動が移動規制突起部WfB,WfCで規制される。また、製品WPの後向きの移動が移動規制突起部WfA,WfBで規制され、前向きの移動が移動規制突起部WfC,WfDで規制される。移動規制突起部WfA~WfDは、製品WPの四隅に形成されている。これにより、製品WPの水平方向の平行移動のみならず回転移動も良好に規制されて製品WPの水平方向の移動が完全に規制される。
【0048】
図9Bは、同じ形状の製品WPの水平方向の移動を、平面視で十字状の移動規制突起部Wfではなく、従来の、平面視で直線状の移動規制突起部Pfで規制した場合の割り付け態様を示した図である。移動規制突起部Pfは、
図12A及び
図12Bに示されるように、残材WSにおけるスリットWmの縁部に切り起こされる平面視で直線状の突起であって、製品WPの水平方向の一つの向き(矢印DRc)の移動のみを規制する。従って、移動規制突起部Pfは、スリットWm1
Wm2の隅部(4箇所)それぞれに2箇所ずつの合計八箇所に形成する必要がある。このように、本発明の板金加工方法の一態様は、一つの突起で二つの向きの移動を規制できる移動規制突起部Wfを形成することで、移動規制突起部の形成時間が従来の概ね半分で済む。これにより製品WPの生産効率が低下しにくい。
【0049】
次に、本発明の板金加工方法の一態様を用い、複合加工機1による制御装置2の制御の下、ワークWから製品WPを切り出す全工程を、
図10A~
図10Dを参照して説明する。
図10Aは、ワークWAから製品WPを切り出す方法を説明するための第1工程図である。
図10Bは、ワークWAから製品WPを切り出す方法を説明するための第2工程図である。
図10Cは、ワークWAから製品WPを切り出す方法を説明するための第3工程図である。
図10Dは、ワークWAから製品WPを切り出す方法を説明するための第4工程図である。
【0050】
図10Aに示されるように、複合加工機1(
図1参照)にセットした板金のワークWAを、レーザ加工部13から射出したレーザビームLSによって切断し、ステップS1からステップS2の経路でスリットWm1を形成する。同様に、ステップS3からステップS4の経路でスリットWm2を形成する。スリットWm1,Wm2は、製品WPの輪郭の一部に対応しており、スリットWm1は製品WPの後辺に該当し、スリットWm2は製品WPの前辺に該当している。また、スリットWm1とスリットWm2との間の左端部及び右端部には、二点鎖線で示され最終段階で切断する最終切断線Taとその前に切断する最終前切断線Tbが設定される。スリットWm1,Wm2と、最終切断線Ta及び最終前切断線Tbとで囲まれた領域が製品中間体WRであって、完全切断後に製品WPとなる。
【0051】
スリットWm1,Wm2を形成したら、ステップS5として、
図2に示される制御装置2の統括割付部7によって予め割り付けられた移動規制突起部Wfの形成位置に、金型K89によって移動規制突起部Wfを形成する。この例において、二つの移動規制突起部WfB,WfDを形成する。
【0052】
統括割付部7による、移動規制突起部Wfを形成する位置の割り付けは、記憶部72に記憶された割付プログラムに従って行われる。例えば、スリットWm1,Wm2の形状から、製品WPの輪郭線の対角の隅部、又は対角の隅部に相当する一対の隅部を抽出する。次いで、抽出した各隅部に、
図6を参照して説明したように形成する移動規制突起部Wfの位置を割り付ける。これにより、
図10Bに示される隅部WRb及び隅部WRdが抽出され、それぞれ移動規制突起部WfB及び移動規制突起部WfDの形成位置が割り付けられる。移動規制突起部Wfの形成位置の割り付けは、統括割付部7による自動割り付けによらず、作業者が手動で行ってもよい。
【0053】
次いで、統括割付部7によって予め割り付けられた支持突起部Weの形成位置に、支持突起部形成金型K56により、ステップ6として支持突起部Weを形成する。支持突起部Weを形成する位置の割り付けは、記憶部72に記憶された割付プログラムに従って行われる。例えば、スリットWm1,Wm2それぞれにおいて、最終切断線Taと最終前切断線Tbとの間の左右方向の距離に応じた等分数で分割し、その分割位置を基準に設定する。この例では、
図10Cに示されるように、スリットWm1,Wm2それぞれに三箇所ずつ割付けられた支持突起形成部Pに、支持突起部Weを形成する。
【0054】
形成された支持突起部Weによって製品中間体WRは板厚分だけ持ち上げられて支持される。その後に、
図10Dに示されるように、ステップS7として最終前切断線Tbを切断し、次いでステップS8として最終切断線Taを切断する。これにより、支持突起部Weで持ち上げられた製品中間体WRは、母材である残材WSから分離されて製品WPとなる(切り出される)。
【0055】
図10Dに示されるように、製品WPは、移動規制突起部WfBにより、右向きの移動MR及び後向きの移動MBが規制され、移動規制突起部WfDにより、左向きの移動ML及び前向きの移動MFが規制される。また、製品WPは、二つの移動規制突起部WfB,WfDによって時計回り及び反時計回りの回転も規制される。すなわち、製品WPは、移動規制突起部WfB,WfDによって、水平方向の平行移動及び回転移動が完全に規制される。
【0056】
このように、本発明の板金加工方法の一態様によれば、製品WPの水平移動を、わずか二つの移動規制突起部Wfによって規制できるので、移動規制突起部Wfの形成時間は短くて済み、製品WPの生産効率が低下しにくい。
【0057】
移動規制突起部Wfは、平面視で十字形状をしているので、
図4Dに示されるように、移動規制突起部WfBと移動規制突起部WfDとを形成する際に、金型K89の向きは変える必要がない。すなわち、パンチ加工部12において金型K89の向きを90°変える工程が不要なので、この点においても製品WPの生産における効率低下が抑制される。
【0058】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0059】
平面視で十字状の移動規制突起部Wfは、平面視で直角V字状の移動規制突起部Wgに置き換えることができる。移動規制突起部Wgも、製品の直交する二つの向きの移動を規制することができるので、
図11(a),(b)を参照して説明する。
図11は、移動規制突起部Wfの変形例である移動規制突起部Wgを示す図であり、
図11(a)は第1の向きに形成された場合、
図11(b)は第2の向きに形成された場合を示す平面図である。
【0060】
移動規制突起部Wgは、
図11(a)に示されるように
図10Dの移動規制突起部WfBに置き換えて製品WPの移動MB,MRが規制できる。また、
図11(b)に示される向きで
図10Dの移動規制突起部WfDに置き換えて製品WPの移動ML,MFが規制できる。ただし、この場合、一方を加工した後、他方を加工する前に金型の向きを180°回動させる必要がある。移動規制突起部Wgは、平面視で直角V字状であって、平面視が十字状である移動規制突起部Wfよりも占有面積が少ないので、ワークWAのレイアウトでスペースが少ない場合に有効である。
【0061】
移動規制突起部Wfにおける隣接する腕部Wf2の所定の角度θは90°に限定されない。所定の角度θは、製品WPの外形形状である輪郭に応じて、隣接する辺に当接するように適宜設定してよい。
【0062】
以上詳述のように、本発明の第1の一態様である板金加工方法は、板金Wから切り出す製品WPの輪郭を一部を残して切断し、前記一部で残材WSと連結した製品中間体WRを形成する切断工程と、前記残材WSに、持ち上がった状態の前記製品中間体WRにおける隣接する二辺の端面と当接可能な移動規制突起部Wfを形成する移動規制突起部形成工程と、前記残材WSに、前記製品中間体WRを持ち上げると共にその下側に延出して前記製品中間体WRを支持する支持突起部Weを形成する支持突起部形成工程と、前記一部を切断して前記製品中間体WRを製品WPとして前記残材WSから切り出す製品分離工程と、を備えている。
【0063】
これにより、製品WPの2つの向きの移動MR,MBを一つの移動規制突起部WfBで規制できるので、形成する移動規制突起部Wfの数が少なくてすみ生産効率が低下しにくい。
【0064】
また、第1の一態様において、前記移動規制突起部Wfを、前記板金Wの表面から上方に突き上げられた突起頂部Wf1と、前記突起頂部Wf1と前記残材WSとを連結し、平面視において所定の角度θで離隔して形成され前記二辺の端面とそれぞれ当接する少なくとも二つの腕部Wf2と、を有するものとしてもよい。
【0065】
これにより、製品WPの水平移動の規制が、その端面が、スリットWmの角部Wmaの形状に影響されない形状の腕部Wf2に当接して行われるので、製品WPの水平移動の規制がより確実に実行できる。
【0066】
さらに、前記所定の角度θを90°としてもよい。
【0067】
これにより、製品WPの水平移動をより確実に規制することができる。
【0068】
さらに、前記所定の角度θを90°として前記腕部Wf2を四つとしてもよい。
【0069】
これにより、複数の移動規制突起部Wfを、金型の軸線まわりの向きを変えることなく形成することができ、製品WPの生産効率がより低下しにくい。
【0070】
本発明の第2の一態様である板金加工用金型は、板金Wから切り出され、残材WSに対し持ち上げられた状態で下面を支持された板状の製品WPの水平移動を規制する移動規制突起部Wfを前記残材WSに形成する板金加工用金型K89であって、平坦な天面82cに十字形状の第1貫通孔82bを有するダイエジェクタ82と、前記第1貫通孔82bに挿通可能な十字形状の第1突出部812を有するダイ本体部81とを有し、前記第1突出部812が前記第1貫通孔82bに挿通されて組み合わされた移動規制突起形成ダイ8と、平坦な下面92fに十字形状の第2貫通孔92bを有するパンチチップ92と、前記第2貫通孔92bに挿通可能な十字形状の第2突出部912を有するパンチエジェクタ91とを有し、前記第2突出部912が前記第2貫通孔92bに挿通されて組み合わされた移動規制突起形成パンチ9とを備え、前記第1突出部812は、十字形状の径方向の縁部に抉り部812bが形成されており、前記天面82cと前記下面92fとの間に前記残材WSを挟んだ状態で前記ダイ本体部81を上昇させることで、前記残材WSにおける、前記第1突出部812に対応した部分が突きあげられて形成された突起頂部Wf1と、前記抉り部812bに対応した部分で形成され前記突起頂部Wf1と前記残材WSとを連結する四つの腕部Wf2とを有し、前記腕部Wf2に前記製品WPの端面が当接して前記製品WPの水平移動を規制する移動規制突起部Wfが得られるものである。
【0071】
これにより、製品WPの2つの向きの移動MR,MBを一つの移動規制突起部WfBで規制できるので、形成する移動規制突起部Wfの数が少なくてすみ生産効率が低下しにくい。
【符号の説明】
【0072】
1 複合加工機
11 ワークテーブル
12 パンチ加工部
121 下部タレット
122 上部タレット
13 レーザ加工部
131 レーザ加工ヘッド
2 制御装置
21 制御部
3 搬送装置
31 アーム
32 吸着部
321 吸盤部
5 支持突起形成ダイ
6 支持突起形成パンチ
7 統括割付部(コンピュータ)
71 中央処理装置(CPU)
711 割付部
72 記憶部
724 金型データ格納部
727 製品情報格納部
73 入力部
74 出力部
8 移動規制突起形成ダイ
81 ダイ本体部
811 基部
812 突出部(第1突出部)
812a 天頂部
812b 抉り部
82 ダイエジェクタ
821 基部
82a 下穴部
82b 貫通孔(第1貫通孔)
82c 天面
9 移動規制突起形成パンチ
91 パンチエジェクタ
911 基体
912 突出部(第2突出部)
912b 下端面
92 パンチチップ
92a 基体
92b 貫通孔(第2貫通孔)
92c 面取り部
92d 溝腕部
92e 連接部
92f 下面
CL82,CL92 軸線
Df 距離(腕長)
KD ダイ金型
KP パンチ金型
K56 支持突起部形成金型
K89 移動規制突起部形成金型(金型)
LN61 径線
LS レーザビーム
MR,MB,ML,MF 移動
P 支持突起形成部
Pf 移動規制突起部
Pm 中心位置
Pt1,Pt2 位置
Pw,Pws 加工中心位置
ST 板金加工システム
Ta 最終切断線
Tb 最終前切断線
W ワーク(板金)
Wd 圧痕
We 支持突起部
Wf,WfA~WfD,Wg 移動規制突起部
Wf1 突起頂部
Wf2 突起腕部
Wf3 突起入隅部
Wm,Wm1,Wm2 スリット
Wma 角部
Wma1 R付角部
Wma2 C面付角部
Wma3 直角部
WP 製品
WR 製品中間体
WRa~WRd 隅部
WS 残材
Wsa コーナー部
θ 角度