(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179110
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】光源装置及び膜厚調整機構
(51)【国際特許分類】
G21K 5/08 20060101AFI20241219BHJP
G21K 1/00 20060101ALI20241219BHJP
H01J 35/10 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G21K5/08 X
G21K1/00 X
H01J35/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097665
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直樹
(57)【要約】
【課題】速い回転数においても液体原料を一定の膜厚で塗布すること。
【解決手段】本技術に係る光源装置では、エネルギービームが照射される照射面に当接部材が当接される。当接部材は照射面に直交する方向に移動可能に支持され、照射面に対して押圧される。また当接部材は、照射面と平行な面における断面積が、当接部材及び照射面の当接位置から当接部材側に向かうにつれて増加する。これにより、速い回転数においても液体原料を一定の膜厚で塗布することが可能となる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギービームの照射を利用して液体原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置であって、
前記エネルギービームを照射するビーム源と、
前記液体原料が付着する面であり、かつ前記エネルギービームが照射される面である照射面を有する第1の回転体と、
前記照射面に当接する当接部材と、
前記当接部材を前記照射面に直交する方向に移動可能に支持する支持部材と
を有し、前記当接部材は、前記照射面に対して押圧され、前記照射面と平行な面における断面積が、前記当接部材及び前記照射面の当接位置から前記当接部材側に向かうにつれて増加する膜厚調整機構と
を具備する光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記当接部材は、前記当接部材が移動可能な方向の軸を中心軸とする第2の回転体である
光源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光源装置であって、
前記当接部材は、球状の形状を有する
光源装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光源装置であって、
前記当接部材は、砲弾型の形状を有し、先端が前記照射面に当接する
光源装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記当接部材は、円柱形状を有し、側面が前記照射面に当接する
光源装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記支持部材は、前記当接部材を前記照射面に対して押圧する弾性体を有する
光源装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記支持部材は、前記当接部材を重力方向に移動可能に支持し、
前記当接部材は、前記当接部材の自重により前記照射面に対して押圧される
光源装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記第1の回転体は、円形状の第1の面、前記第1の面の反対側の面である円形状の第2の面、及び側面からなる円盤形状を有する
光源装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光源装置であって、
前記照射面は、前記第1の面である
光源装置。
【請求項10】
請求項8に記載の光源装置であって、
前記照射面は、前記側面である
光源装置。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記照射面には、溝部が構成され、
前記エネルギービームは、前記溝部に照射され、
前記当接部材は、前記溝部に当接する
光源装置。
【請求項12】
請求項11に記載の光源装置であって、
前記溝部は、前記当接部材と同一の形状を有する
光源装置。
【請求項13】
請求項11に記載の光源装置であって、
前記溝部の断面は、前記当接部材の断面と異なる形状を有する
光源装置。
【請求項14】
請求項11に記載の光源装置であって、
前記溝部は、断面が三角形状、矩形状、半円形状、台形状の少なくとも1つの形状を有する
光源装置。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記当接部材は、前記第1の回転体の回転方向と垂直な面における断面積が、前記回転の下流側に向かうにつれて増加する
光源装置。
【請求項16】
請求項15に記載の光源装置であって、
前記当接部材は、前記第1の回転体の回転の上流側に、平面形状のテーパ面を有する
光源装置。
【請求項17】
請求項15に記載の光源装置であって、
前記当接部材は、前記第1の回転体の回転の上流側に、曲面形状のテーパ面を有する
光源装置。
【請求項18】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記当接部材は、前記第1の回転体の回転に伴って回転する
光源装置。
【請求項19】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記支持部材は、円筒状の形状を有する
光源装置。
【請求項20】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、さらに、
前記液体原料を収容可能な収容部を具備し、
前記回転体は、前記収容部に収容された前記液体原料に浸漬される
光源装置。
【請求項21】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記エネルギービームは、レーザ光である
光源装置。
【請求項22】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記放射線は、極端紫外光又はX線である
光源装置。
【請求項23】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記液体原料は、スズ、リチウム、ガドリニウム、テルビウム、ガリウム、ビスマス、インジウム、又はこれらの材料のうちの少なくとも1つを含む合金である
光源装置。
【請求項24】
液体原料が付着する面である付着面を有する第1の回転体と、
前記付着面に当接する当接部材と、
前記当接部材を前記付着面に直交する方向に移動可能に支持する支持部材と
を具備し、前記当接部材は、前記付着面に対して押圧され、前記付着面と平行な面における断面積が、前記当接部材及び前記付着面の当接位置から前記当接部材側に向かうにつれて増加する
膜厚調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線や極端紫外光等を発生させる光源装置、及び液体原料の膜厚を調整する膜厚調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線は、医療用用途、工業用用途、研究用用途に用いられてきた。医療用分野においては、X線は、胸部X線写真撮影、歯科X線写真撮影や、CT(Computer Tomogram)といった用途に用いられる。工業用分野においては、X線は、構造物や溶接部などの物質内部を観察する非破壊検査、断層非破壊検査といった用途に用いられる。研究用分野においては、X線は、物質の結晶構造を解析するためのX線回折、物質の構成元素を分析するためのX線分光(蛍光X線分析)といった用途に用いられる。
【0003】
X線のうち比較的波長の長い軟X線領域にある波長13.5nmの極端紫外光(以下、「EUV(Extreme Ultra Violet)光」ともいう)は、近年露光光として使用されている。ここで、微細パターンが構成されているEUVリソグラフィ用のマスクの基材は、積層構造として、低熱膨張性ガラスから成る基板の上に、EUV光を反射させるための多層膜(例えば、モリブデンとシリコン)が設けられてなる反射ミラーである。そして、多層膜上に波長13.5nmの放射線を吸収する材料をパターニングすることで、EUVマスクが構成される。
【0004】
また、EUVマスクにおける許容できない欠陥の大きさは、従来のArFマスクの場合に比べると大幅に小さくなっており検出することが困難となっている。そこで、EUVマスクの検査として、通常はアクティニック検査(Actinic inspection)と呼ばれる、リソグラフィの作業波長と一致する波長の放射線を用いた検査が行われる。例えば、波長13.5nmの放射線を用いて検査を行うと、波長以下の分解能で欠陥を検出することが可能となる。
【0005】
一般にEUV光源装置としては、DPP(Discharge Produced Plasma)光源装置、LDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)光源装置、及びLPP(Laser Produced Plasma)光源装置が挙げられる。
【0006】
DPP光源装置は、EUV放射種を含む気体状のプラズマ原料(放電ガス)が供給された電極間に高電圧を印加して、放電により高密度高温プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用するものである。
【0007】
LDP光源装置は、DPP光源装置が改良されたものであり、例えば、放電を発生させる電極(放電電極)表面にEUV放射種を含む液体状の高温プラズマ原料(例えば、Sn(スズ)やLi(リチウム)等)を供給し、当該原料に対してエネルギービーム(例えば、電子ビームやレーザビーム等)を照射して当該原料を気化し、その後、放電によって高温プラズマを生成するものである。
【0008】
LPP光源装置は、EUV放射種をレーザビーム等により励起して高温プラズマを生成するものである。この方式の光源装置としては、EUV放射用ターゲット材料である微小な液滴状に噴出されたスズ(Sn)、または、リチウム(Li)等のドロップレットに対して、レーザ光を集光することにより当該ターゲット材料を励起してプラズマを発生させるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えば特許文献1の光源装置では、光量を得るためにエネルギービームの周波数を変化させる必要がある。しかしながらこの場合、照射により発生する熱量もまた増加するため、熱を逃がす方策が必要となる。そこで、例えば回転体の回転を速くすることで、回転体の各々の領域が短いスパンでプラズマ原料に浸漬されるようにし、冷却効率を向上させるという対策が取られる。
【0011】
しかしながら、回転体の回転速度が速くなると原料の膜厚変動が大きくなる。これに対して、例えば回転体の表面に溝を設けるといった対策が考えられるが、それでも原料の膜厚変動を十分に抑えることができない場合もある。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、速い回転数においても液体原料を一定の膜厚で塗布することが可能な光源装置及び膜厚調整機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る光源装置は、エネルギービームの照射を利用して液体原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置であって、ビーム源と、第1の回転体と、膜厚調整機構とを具備する。
前記ビーム源は、前記エネルギービームを照射する。
前記第1の回転体は、前記液体原料が付着する面であり、かつ前記エネルギービームが照射される面である照射面を有する。
前記膜厚調整機構は、当接部材と、支持部材とを有する。
前記当接部材は、前記照射面に当接する。
前記支持部材は、前記当接部材を前記照射面に直交する方向に移動可能に支持する。
前記当接部材は、前記照射面に対して押圧され、前記照射面と平行な面における断面積が、前記当接部材及び前記照射面の当接位置から前記当接部材側に向かうにつれて増加する。
【0014】
この光源装置では、エネルギービームが照射される照射面に、当接部材が当接される。当接部材は照射面に直交する方向に移動可能に支持され、照射面に対して押圧される。また当接部材は、照射面と平行な面における断面積が、当接部材及び照射面の当接位置から当接部材側に向かうにつれて増加する。これにより、速い回転数においても液体原料を一定の膜厚で塗布することが可能となる。
【0015】
前記当接部材は、前記当接部材が移動可能な方向の軸を中心軸とする第2の回転体であってもよい。
【0016】
前記当接部材は、球状の形状を有してもよい。
【0017】
前記当接部材は、砲弾型の形状を有し、先端が前記照射面に当接してもよい。
【0018】
前記当接部材は、円柱形状を有し、側面が前記照射面に当接してもよい。
【0019】
前記支持部材は、前記当接部材を前記照射面に対して押圧する弾性体を有してもよい。
【0020】
前記支持部材は、前記当接部材を重力方向に移動可能に支持してもよい。この場合、前記当接部材は、前記当接部材の自重により前記照射面に対して押圧されてもよい。
【0021】
前記第1の回転体は、円形状の第1の面、前記第1の面の反対側の面である円形状の第2の面、及び側面からなる円盤形状を有してもよい。
【0022】
前記照射面は、前記第1の面であってもよい。
【0023】
前記照射面は、前記側面であってもよい。
【0024】
前記照射面には、溝部が構成されてもよい。この場合、前記エネルギービームは、前記溝部に照射されてもよい。また、前記当接部材は、前記溝部に当接してもよい。
【0025】
前記溝部は、前記当接部材と同一の形状を有してもよい。
【0026】
前記溝部の断面は、前記当接部材の断面と異なる形状を有してもよい。
【0027】
前記溝部は、断面が三角形状、矩形状、半円形状、台形状の少なくとも1つの形状を有してもよい。
【0028】
前記当接部材は、前記第1の回転体の回転方向と垂直な面における断面積が、前記回転の下流側に向かうにつれて増加してもよい。
【0029】
前記当接部材は、前記第1の回転体の回転の上流側に、平面形状のテーパ面を有してもよい。
【0030】
前記当接部材は、前記第1の回転体の回転の上流側に、曲面形状のテーパ面を有してもよい。
【0031】
前記当接部材は、前記第1の回転体の回転に伴って回転してもよい。
【0032】
前記支持部材は、円筒状の形状を有してもよい。
【0033】
前記光源装置は、さらに、前記液体原料を収容可能な収容部を具備してもよい。この場合、前記回転体は、前記収容部に収容された前記液体原料に浸漬されてもよい。
【0034】
前記エネルギービームは、レーザ光であってもよい。
【0035】
前記放射線は、極端紫外光又はX線であってもよい。
【0036】
前記液体原料は、スズ、リチウム、ガドリニウム、テルビウム、ガリウム、ビスマス、インジウム、又はこれらの材料のうちの少なくとも1つを含む合金であってもよい。
【0037】
本技術の一形態に係る膜厚調整機構は、第1の回転体と、当接部材と、支持部材とを具備する。
前記第1の回転体は、液体原料が付着する面である付着面を有する。
前記当接部材は、前記付着面に当接する。
前記支持部材は、前記当接部材を前記付着面に直交する方向に移動可能に支持する。
前記当接部材は、前記付着面に対して押圧され、前記付着面と平行な面における断面積が、前記当接部材及び前記付着面の当接位置から前記当接部材側に向かうにつれて増加する。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、速い回転数においても液体原料を一定の膜厚で塗布することが可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光源装置の構成例を示す模式図である。
【
図2A】回転体及びスキマーの構成例を示す模式図である。
【
図2B】回転体及びスキマーの構成例を示す模式図である。
【
図8】回転体及びスキマーの構成例を示す断面図である。
【
図9】LDP光源装置の構成例を示す模式図である。
【
図11】LDP光源装置の構成例を示す模式図である。
【
図14】当接部材のバリエーションを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0041】
<第1の実施形態>
[光源装置の基本構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光源装置の構成例を示す模式図である。
光源装置100は、LPP方式の光源装置である。すなわち光源装置100は、エネルギービームEBの照射を利用してプラズマ原料1をプラズマ化して放射線Rを取り出す光源装置である。
なお、本開示において、放射線Rには、EUV光等の軟X線領域の光や、よりエネルギーの高い硬X線等、プラズマPから放射される光(電磁波)が含まれる。
【0042】
放射線RとしてEUV光が出射される場合は、プラズマ原料1としてEUV原料が用いられる。EUV光を放出するための原料としては、例えば、液体状のスズ(Sn)やリチウム(Li)が用いられる。Sn、Liは常温では固体であるが、エネルギービームEBに照射される場合には、液体の状態で用いられる。
放射線RとしてX線が出射される場合は、プラズマ原料1としてX線原料が用いられる。X線原料は例えば常温で液体状である金属であり、例えば、ガリウム(Ga)や、ガリウム合金、Sn化合物等を用いることができる。
プラズマ原料1は、本技術に係る液体原料の一実施形態に相当する。
【0043】
図1は、光源装置100を設置面から所定の高さの位置で水平方向に沿って切断した場合の模式的な断面を、上方から見た場合の図である。
図1では、光源装置100の構成及び動作を理解しやすいように、断面の構成等を説明する必要のない部分については、断面の図示を省略している。
以下、X方向を左右方向(X軸の正側が右側、負側が左側)、Y方向を前後方向(Y軸の正側が前方側、負側が後方側)、Z方向を高さ方向(Z軸の正側が上方側、負側が下方側)として説明を行う場合がある。もちろん本技術の適用について、光源装置100が使用される向き等が限定される訳ではない。
【0044】
光源装置100は、筐体2と、真空チャンバ3と、エネルギービーム入射チャンバ4と、放射線出射チャンバ5と、プラズマ生成機構6と、制御部7と、原料供給装置30とを含む。なお、
図1では、原料供給装置30を破線の枠により模式的に図示している。
【0045】
図1に示す例では、筐体2は、おおよその外形が立方体形状となるように構成される。なお筐体2の形状は立方体形状に限定されず、任意の立体形状が用いられてよい。
筐体2は、前方面に形成される出射孔2aと、右側面に形成される入射孔2bと、後方面に形成される貫通孔2cと、左側面に形成される貫通孔2dとを有する。
筐体2の材料は限定されず、例えば金属製の筐体が用いられる。
【0046】
本実施形態では、前方面の出射孔2aを通り、Y方向(前後方向)に延在するように、放射線Rの出射軸EAが設定される。X線やEUV光等の放射線Rは、出射軸EAに沿って取り出され、出射孔2aから前方側に向かって放出される。
また本実施形態では、右側面の入射孔2bから、後方側に向かって左斜めに延在するように、エネルギービームEBの入射軸IAが設定される。
図1に示すように、筐体2の外部に、エネルギービームEBを出射するビーム源8が設置される。ビーム源8は、入射軸IAに沿ってエネルギービームEBが筐体2の内部に入射するように設置される。
エネルギービームEBとしては、電子ビームやレーザビームを使用することが可能である。ビーム源8の構成としては、これらのエネルギービームEBを出射可能な任意の構成が採用されてよい。
【0047】
光源装置100には、複数のチャンバを含むチャンバ部Cが設けられる。具体的には、チャンバ部Cは、真空チャンバ3、エネルギービーム入射チャンバ(以下、単に入射チャンバという)4、及び放射線出射チャンバ(以下、単に出射チャンバという)5を有する。真空チャンバ3、入射チャンバ4および出射チャンバ5は、互いに空間的に接続される。すなわち、真空チャンバ3と入射チャンバ4とは互いに連結される。同様に、真空チャンバ3と出射チャンバ5とは互いに連結される。
【0048】
入射チャンバ4は、エネルギービームEBの入射軸IA上に位置するように形成され、出射チャンバ5は、放射線Rの出射軸EA上に位置するように形成される。また真空チャンバ3には、プラズマPを発生させる機構が設けられる。
【0049】
本実施形態では、チャンバ本体9と、チャンバ本体9の前方面から前方側に突出する外側突出部9aと、チャンバ本体9の内周面から内部側に突出する2つの内側突出部9b及び9cとにより、チャンバ部C(真空チャンバ3、入射チャンバ4、及び出射チャンバ5)が構成される。
チャンバ部Cを構成する、チャンバ本体9、外側突出部9a、及び2つの内側突出部9b及び9cの材料としては、金属材料が用いられる。
【0050】
チャンバ本体9は、おおよその外形が直方体形状となるように構成され、前後左右の各面が、筐体2の前後左右の各面とそれぞれ対向するように配置される。
また、チャンバ本体9は、前方面と右側面との間の右前角部が、エネルギービームEBの入射軸IA上に位置するように配置される。
【0051】
図1に示すように、チャンバ本体9の前方面には、出射孔9dが形成される。出射孔9dは、放射線Rの出射軸EA上で、筐体2の前方面の出射孔2aと並ぶ位置に形成される。
チャンバ本体9の出射孔9dの周縁部から、前方側に突出するように外側突出部9aが構成される。外側突出部9aは、筐体2の出射孔2aに内接するように、筐体2の出射孔2aよりも前方側に大きく突出するように構成される。
また、チャンバ本体9の内部側において、出射孔9dの周縁部から内部側に突出するように、内側突出部9bが構成される。なお、内側突出部9bの構成は必須ではなく、チャンバ部Cに外側突出部9aのみが設けられてもよい。
外側突出部9a及び内側突出部9bに囲まれた空間が、出射チャンバ5として機能する。出射チャンバ5を構成する部材である外側突出部9a及び内側突出部9b自体を、出射チャンバと呼ぶことも可能である。
外側突出部9a及び内側突出部9bは、チャンバ本体9と一体的に形成されてもよいし、別個に形成された後にチャンバ本体9に接続されてもよい。
【0052】
出射チャンバ5は、放射線Rの出射軸EAを中心軸として、コーン形状となるように構成される。出射チャンバ5は、放射線Rの出射軸EAの方向において、中央部分の断面積が大きく、前後の端部に近づくにつれて断面積が小さくなるように構成される。すなわち、出射チャンバ5は、前後の端部に近づくにつれて絞られるような形状である。また出射チャンバ5には、前後の端部に放射線Rを通す開口部(アパーチャー)が設けられる。
【0053】
出射チャンバ5の前方側の端部(外側突出部9aの前方側の端部)には、マスク検査装置等の利用装置が接続される。
図1に示す例では、利用装置の一部をなすチャンバとして、アプリケーションチャンバ10が接続される。アプリケーションチャンバ10内の圧力は大気圧であってもよい。またアプリケーションチャンバ10の内部は、必要に応じてガス注入路よりガス(例えば、不活性ガス)が導入され、パージされてもよい。またアプリケーションチャンバ10の内部のガスは、図示を省略した排気手段により排気されてもよい。
【0054】
出射チャンバ5とアプリケーションチャンバ10との間には、プラズマPが生成される領域とアプリケーションチャンバ10とを、物理的に分離するフィルタ膜11が設けられる。フィルタ膜11は、放射線を透過可能な構造で構成され、プラズマPの発生に伴って飛散するプラズマ原料1やデブリのアプリケーションチャンバ10への進入を防止する。
【0055】
出射チャンバ5の内部には、出射チャンバ5の内に入射した放射線Rを利用装置内(アプリケーションチャンバ10内)に導光して集光するためのコレクタ(集光鏡)12が配置されている。
図1では、出射チャンバ5に入射し集光される放射線Rの成分がハッチングにて図示されている。
【0056】
また出射チャンバ5の内部には、遮蔽部材(中央掩蔽)13が配置される。遮蔽部材13は、放射線Rの出射軸EA上にて、チャンバ本体9の出射孔9d、筐体2の出射孔2a、及びフィルタ膜11と並ぶように配置される。本実施形態では、遮蔽部材13により、コレクタ12により集光されない放射線成分を遮光することが可能である。
【0057】
チャンバ本体9の右前角部には、入射窓14が形成される。入射窓14は、エネルギービームEBの入射軸IA上で、筐体2の右側面の入射孔2bと並ぶ位置に形成される。
また、チャンバ本体9の右前角部の内部側において、入射窓14を囲む位置からエネルギービームEBの入射軸IAの方向に沿って突出するように、内側突出部9cが構成される。
チャンバ本体9の内部空間のうち、内側突出部9cに囲まれた空間が、入射チャンバ4として機能する。入射チャンバ4を構成する内側突出部9c及びチャンバ本体9の右前角部の部分自体を、入射チャンバと呼ぶことも可能である。
内側突出部9cは、チャンバ本体9と一体的に形成されてもよいし、別個に形成されたのちにチャンバ本体9に接続されてもよい。
【0058】
入射チャンバ4は、エネルギービームEBの入射軸IAを中心軸として、コーン形状となるように構成される。入射チャンバ4は、エネルギービームEBの入射軸IAの方向において、チャンバ本体9の内部側の端部に近づくにつれて断面積が小さくなるように構成される。すなわち入射チャンバ4は、内部側の端部に近づくにつれて絞られるような形状である。また入射チャンバ4は、内部側の端部にエネルギービームEBを通す開口部(アパーチャー)が設けられる。
【0059】
入射チャンバ4の内部には、飛散したプラズマ原料1やデブリを捕捉するための捕捉機構が配置される。
図1に示す例では、捕捉機構として、エネルギービームEBを透過し、プラズマ原料1やデブリを捕捉する板状の回転部材である回転式窓15が配置される。回転式窓15を回転させることで、回転式窓15のビーム透過領域の実質的な面積が増大し、回転式窓15の交換頻度を低減することが可能となる。
【0060】
また、
図1に示すように、出射チャンバ5及び入射チャンバ4には、ガス注入路16a及び16bがそれぞれ設けられ、図示を省略したガス供給装置から、出射チャンバ5及び入射チャンバ4の内部にガスが供給される。出射チャンバ5には、放射線Rに対して透過率の高いガスが供給される。また入射チャンバ4には、エネルギービームEBに対して透過率の高いガスが供給される。
【0061】
出射チャンバ5及び入射チャンバ4に供給されるガスは同じ種類のガスであってもよいし、異なる種類のガスであってもよい。例えばアルゴンやヘリウムは、エネルギービームEB及び放射線Rの両方に対して透過率の高いガスとして用いることが可能である。この他、出射チャンバ5及び入射チャンバ4に供給されるガスの種類は限定されない。
ガスを供給することで、出射チャンバ5及び入射チャンバ4の内部圧力を真空チャンバ3の内部圧力よりも高い圧力に設定し、デブリ等の侵入を抑制することが可能となる。
【0062】
チャンバ本体9の内部空間のうち、出射チャンバ5として機能する内側突出部9bの内部空間、及び入射チャンバ4として機能する内側突出部9cの内部空間を除く空間が、真空チャンバ3として機能する。真空チャンバ3を構成する部分自体を、真空チャンバと呼ぶことも可能である。
【0063】
図1に示すように、チャンバ本体9は、筐体2の左側面の貫通孔2dから筐体2の外部に突出する部分を有し、その先端が排気用ポンプ17に接続される。排気用ポンプ17の具体的な構成は限定されず、真空ポンプ等の任意のポンプが用いられてよい。
排気用ポンプ17により真空チャンバ3内が排気され、真空チャンバ3が減圧される。これにより、真空チャンバ3内にて生成される放射線Rの減衰が抑制される。
真空チャンバ3内は、入射チャンバ4及び出射チャンバ5に対して減圧雰囲気であればよく、必ずしも真空雰囲気でなくてもよい。また、真空チャンバ3内に不活性ガスが供給されていてもよい。
【0064】
本実施形態では、入射軸IAと出射軸EAとの間の領域に向けて左右方向に延在するようにガスノズル18が設置される。ガスノズル18は、チャンバ本体9の右側面に、シール部材等を介して設置される。ガスノズル18は、図示を省略したガス供給装置に接続され、チャンバ本体9内にガスを供給する。なお、ガスノズル18の構成は必須ではなく、ガスノズルを介さない形でガスの供給が行われてもよい。
図1に示す例では、ガスノズル18から、入射軸IAと出射軸EAとの間の領域の右側から左右方向に沿って左側に向かってガスが吹き付けられる。これにより、プラズマPから放出されるデブリを、入射軸IA及び出射軸EAから遠ざかる方向に移動させることが可能となる。
【0065】
プラズマ生成機構6は、真空チャンバ3内にてプラズマPを生成し、放射線R(X線、EUV光)を放出するための機構である。
プラズマ生成機構6は、原料供給用の円盤状の回転体20、及び液体状のプラズマ原料1を収容する原料コンテナ21を含む。回転体20及び原料コンテナ21は、真空チャンバ3の内部に配置される。
【0066】
図1に示すように、円盤状の回転体20には、エネルギービームEBが入射する。回転体20は、エネルギービームEBの照射位置Iが入射軸IAと出射軸EAとの交点の位置に配置されるように、真空チャンバ3内に配置される。なお、回転体の形状は円盤形状に限定されず、例えば多角形形状の回転体等が用いられてもよい。
【0067】
原料コンテナ21は、回転体20が浸漬するように設けられ、回転体20に液体状のプラズマ原料1を供給する。例えば回転体20は、原料コンテナ21内の液体状のプラズマ原料1に浸漬した状態で回転可能に保持され、回転体20の表面にはプラズマ原料1が付着する。この状態で回転体20が回転することにより、回転体20の照射位置Iにプラズマ原料1が供給される。そして回転体20の照射位置IにエネルギービームEBが入射することで、プラズマPが生成される。
【0068】
このように、原料コンテナ21は、真空チャンバ3内に設けられ、液体状のプラズマ原料1を貯留して、エネルギービームEBの照射位置Iに液体状のプラズマ原料1を供給する。原料コンテナ21は、本技術に係る液体原料を収容可能な収容部の一実施形態に相当する。この他、プラズマ生成機構6の構成については、後に詳しく説明する。
【0069】
制御部7は、光源装置100が有する各構成要素の動作を制御する。
例えば、制御部7により、ビーム源8や排気用ポンプ17の動作が制御される。また制御部7により、後に説明する各種モータ、原料供給装置30等の動作が制御される。
制御部7は、例えばCPUやメモリ(RAM、ROM)等のコンピュータに必要なハードウェア回路を有する。CPUがメモリに記憶されている制御プログラムをRAMにロードして実行することにより、種々の処理が実行される。
制御部7として、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)、その他ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデバイスが用いられてもよい。
図1では、制御部7が機能ブロックとして模式的に図示されているが、制御部7が構成される位置等は任意に設計されてよい。
【0070】
また
図1に示すように、本実施形態では、チャンバ本体9の前面側にて、真空チャンバ3と空間的に接続される領域に放射線診断部19が構成される。放射線診断部19は、放射線Rの出射軸EAとは異なる方向に放射される放射線Rが入射する位置に構成される。
放射線診断部19は、プラズマPからの放射線Rの状態を測定する。ここで放射線Rの状態とは、放射線Rの強度、波長、スペクトルといった放射線Rの物理的状態である。例えば、放射線Rの有無を検出する検出器や、放射線の出力を測定する測定器により放射線診断部19が構成される。
放射線診断部19による測定結果は、放射線Rの診断や、以下で説明する原料供給装置30の動作制御に用いられる。
【0071】
原料供給装置30は、原料コンテナ21内にプラズマ原料1を供給する。原料供給装置30の具体的な構成、及び原料供給装置30によるプラズマ原料1の供給タイミング等は限定されない。
【0072】
[スキマー]
図2は、回転体20及びスキマー40の構成例を示す模式図である。
図2Aには、回転体20を
図1の紙面奥側(Z方向の負側)から、若干斜めに俯瞰した状態が示されている。
図2Bには、回転体20を
図1の矢印Aの方向(Y方向の正側)から見た状態が示されている。
図3は、
図2BのB-B線での断面図である。
図3には、回転体20の断面を
図2Bの矢印Bの方向(
図1の紙面奥側、Z方向の負側)から見た状態が示されている。
【0073】
回転体20は円盤部44と軸部45とを有する。円盤部44は円盤形状を有し、円形状の表面41、表面41の反対側の面である円形状の裏面42、及び側面43からなる。回転体20は、表面41及び裏面42が概ねXZ平面と平行になるように配置される。また表面41はY方向の正側に位置し、裏面42はY方向の負側に位置する。
【0074】
軸部45は細長い円柱形状を有し、円形状の面(上面又は下面)が回転体20の裏面42の中央に当接するように配置される。
図2A及び3には、回転体20の回転軸Hが破線で示されている。また
図2Bには、回転軸Hが黒丸で示されている。回転軸HはY軸に平行であり、軸部45は回転軸Hに沿って延在する。軸部45が回転軸Hを中心として回転することにより、回転体20(円盤部44と軸部45)が一体的に回転する。
【0075】
図2A及びBには、回転体20の回転の向きが矢印で示されている。このように回転体は、Y方向の正側から見た場合に反時計回りに回転する。この向きは、
図3においては回転体20の右側が奥側に向かい、左側が手前側に向かう回転の向きに相当する。
【0076】
回転体20は、例えば金属等の剛性を有する材料により構成される。あるいはプラズマ原料1やエネルギービームEB、放射線Rとの反応による劣化を防止するために、これらとの反応性が低い材料が適宜用いられてもよい。その他回転体20の具体的な構成は限定されない。例えば本技術を実現可能な範囲であれば、回転体20が多角形形状である構成や、回転の向きが時計回りである構成等も採用可能である。
【0077】
回転体20は、本技術に係る第1の回転体の一実施形態に相当する。
表面41は、本技術に係る第1の面の一実施形態に相当する。
裏面42は、本技術に係る第2の面の一実施形態に相当する。
【0078】
図3には、円盤部44に付着したプラズマ原料1が網掛け模様で模式的に図示されている。このように本実施形態では、円盤部44の全体に所定の膜厚でプラズマ原料1が付着する。なお
図3には、模式的に膜厚がどの位置でも概ね同じ大きさで示されているが、実際にはプラズマ原料1の付着位置によって膜厚の大きさは異なる。
【0079】
表面41のうち原料コンテナ21に浸漬されていない部分は、プラズマ原料1が付着する面である付着面の一実施形態に相当する。また、プラズマ原料1が付着する面であり、エネルギービームEBが照射される面である照射面の一実施形態に相当する。
【0080】
さらに本実施形態では、回転体20に対してスキマー40が設けられる。
図3には、スキマー40が破線の矩形にて示されている。スキマー40は、球体46、筒体47、弾性体48及び球体抑え49を有する。
【0081】
球体46は球状の形状を有し、例えば金属等の材料により構成される。球体46の材料や径等は限定されない。筒体47は円筒状の形状を有し、筒の径が球体46の径以上となるように構成される。本実施形態では、筒体47の径及び球体46の径は概ね同じ大きさであり、筒体47の内部に球体46が概ね隙間なく収納される。その他筒体47の材料、径、長さ等の具体的な構成は限定されない。例えば本技術を実現可能な範囲であれば、筒体47が多角形の筒状の形状である構成等も採用可能である。
【0082】
弾性体48は弾性を有する部材である。本実施形態では、弾性体48としてばねが用いられる。
図2Bに示すように、本実施形態ではZ方向に沿って2つのばねが並べて配置されるが、弾性体48の個数や配置は限定されない。また弾性体48の種類や弾性力等の具体的な構成も限定されない。
球体抑え49は、板状の形状を有する部材である。
【0083】
図3に示すように、本例では筒体47がY方向に沿って延在するように配置され、内部には上側から順に弾性体48、球体抑え49、球体46が収納される。なお図示を省略しているが、例えば筒体47の上面は塞がれた状態となっており、当該上面に弾性体48の上端が固定される。
【0084】
弾性体48により、球体46が表面41に対して押圧される。具体的には、球体46は球体抑え49を介して弾性体48の弾性力(下向きの力)を受け、表面41に対して押圧された状態となる。これにより、回転体20が回転していない状態においては、球体46の下端は表面41に当接した状態となる。
【0085】
球体46は、本技術に係る当接部材の一実施形態に相当する。
筒体47、弾性体48、及び球体抑え49は、本技術に係る支持部材の一実施形態に相当する。
回転体20及びスキマー40は、本技術に係る膜厚調整機構の一実施形態に相当する。
【0086】
[膜厚の調整]
球体46は、筒体47、弾性体48、及び球体抑え49により、Y方向に移動可能に支持される。具体的には、回転体20が回転した場合には、表面41に付着したプラズマ原料1による液圧が、球体46の下部に対して作用する。これにより球体46は
図3における上向きの力を受ける。一方で球体46は弾性体48から下向きの力を受けており、プラズマ原料1の上向きの力が弾性体48の下向きの力を超えた時に、球体46は上側に移動する。弾性体48の下向きの力は、球体46が上側に移動するにつれて徐々に大きくなるため、やがてプラズマ原料1の力と弾性体48の力が釣り合う位置で球体46は静止する。
【0087】
すなわち回転中は、球体46が表面41に当接せず若干浮きあがり、その間にプラズマ原料1が流入した状態となる。逆に回転が止まった場合には、球体46に対してプラズマ原料1による上向きの力は働かなくなるため、球体46は表面41に当接して静止した状態となる。このように球体46は、回転体20の回転に伴って上下方向に移動する。一方で球体46は筒体47により固定されているため、左右方向や奥行方向に動くことはない。
【0088】
球体46が移動可能に支持される方向(Y方向)は、照射面(表面41、すなわちXZ平面に平行な面)に直交する方向の一実施形態に相当する。
なお筒体47がY方向に対して斜めに配置され、球体46が斜めに移動する場合も、球体46がY方向に移動可能に支持されていることに含まれる。すなわち球体46がY方向の成分を含む方向に移動可能である場合が、本技術の範囲に含まれる。球体46がスムーズに動くようにするために、球体46と筒体47との間にベアリング機構が設けられてもよい。
【0089】
球体46が弾性体48から受ける力が大きい場合には、球体46と表面41との隙間は小さくなる。例えば弾性体48であるばねのばね定数が大きい場合にこのような状態となり得る。逆に球体46が弾性体48から受ける力が小さい場合には、隙間は小さくなる。
【0090】
また球体46がプラズマ原料1から受ける力が小さい場合には、隙間は小さくなる。例えば回転体20の回転が遅い場合に液圧が低下し、このような状態となり得る。逆に回転体20の回転が速い場合には、隙間は大きくなる。
【0091】
その他、回転体20やスキマー40を構成する各部材の形状、材料、あるいはプラズマ原料1の材料等に依存して、隙間の大きさが決まることとなる。すなわちこれらの構成を適宜決定することにより、隙間の大きさを所望の値に制御することが可能である。言い換えれば、スキマー40の位置においてプラズマ原料1の膜厚を所望の値に調整することが可能である。
【0092】
本実施形態では、回転の中心と球体46の先端との距離、及び回転の中心と照射位置Iとの距離が概ね等しくなるように光源装置100が構成される。従って表面41のうちスキマー40の位置にあった部分は、回転体20の回転により照射位置Iに移動する。すなわち、当該部分で所望の膜厚に調整されたプラズマ原料1が、照射位置Iに移動する。
【0093】
これにより照射位置Iにおいて、所望の膜厚で付着したプラズマ原料1にエネルギービームEBが照射される。なお回転の途中で遠心力等により膜厚が増加することも考えられるが、その場合は膜厚の増加量を考慮してあらかじめスキマー40の位置における膜厚を小さめに調整することにより、いずれにしろ照射位置Iにおいては所望の膜厚を得ることが可能である。膜厚の増加量は回転体20の回転速度等に依存して決まるため、それらの値を考慮した計算や試行によって求めることが可能である。
【0094】
[当接部材の形状]
図4は、球体46の近傍の拡大図である。
本実施形態では、表面41に当接する当接部材は、表面41と平行な面における断面積が、当接部材及び表面41の当接位置から当接部材側に向かうにつれて増加する。
【0095】
図4Aには、平面52が破線で図示されている。平面52はXZ平面に平行な面であり、表面41と平行な面に相当する。また平面52と表面41との距離はd
1となっている。
図4Aには、球体46を平面52で切った場合の断面が斜線模様で示されている。当該断面の断面積はS
1となっている。
【0096】
同様に
図4Bでは、平面52と表面41との距離はd
1より大きいd
2となっている。ここで
図4Bにおける断面積S
2は、
図4Aにおける断面積S
1よりも大きい値となる。すなわち表面41と平面52との距離が増加すれば、球体46を平面52で切った場合の断面積もまた増加する。
【0097】
従って球体46は、平面52が当接位置から当接部材側(球体46側、Y方向の正側)に向かうにつれて断面積が増加する性質を持つ。以下簡単のために当該性質を断面積増加の性質と記載する場合がある。本例では当接部材として球体46が用いられているが、断面積増加の性質を持つ任意の形状の当接部材が採用されてよい。
【0098】
図5は、砲弾型の当接部材の断面図である。
本例では当接部材が砲弾型の形状を有し、先端が表面41に当接する。
図5に示す砲弾体55もまた断面積増加の性質を持つため、このような形状の当接部材が用いられてもよい。
【0099】
あるいは、先端のみが球状である円錐形状や角錐形状、先端が平面であるが断面積増加の性質を持つ形状等が採用されてもよく、当接部材の具体的な形状は限定されない。なお球体46を用いた例では、球体46の上半分においてはY方向の正側に向かうにつれて断面積が減少するが、このように当接位置の近傍のみにおいて断面積増加の性質を持つ場合も本技術の範囲に含まれる。同様に砲弾体55も途中から断面積が変化しなくなるが、このような当接部材も本技術の範囲に含まれる。
【0100】
当接部材は、当接部材が移動可能な方向の軸を中心軸とする回転体であってもよい。
図2~5の例では、当接部材が移動可能な方向はY方向である。球体46や砲弾体55はいずれもY軸を中心軸とする回転体であるため、当接部材が移動可能な方向の軸を中心軸とする回転体である。これらに限定されず、例えば円錐や円錐台等も上記の回転体となり得る。
球体46及び砲弾体55は、本技術に係る第2の回転体の一実施形態に相当する。
【0101】
以上、本実施形態に係る光源装置100では、エネルギービームEBが照射される回転体20の表面41に、当接部材が当接される。当接部材は表面42に直交する方向に移動可能に支持され、表面41に対して押圧される。また当接部材は、表面41と平行な面における断面積が、当接部材及び表面41の当接位置から当接部材側に向かうにつれて増加する。これにより、速い回転数においても液体原料を一定の膜厚で塗布することが可能となる。
【0102】
EUV光源装置においては、高出力を得るためにエネルギービームEBの周波数を高くする必要がある。しかしながらこの場合、照射により発生する熱量もまた増加するため、熱を逃がす何らかの対策が必要となる。例えば回転体20の回転を速くすることで、回転体20の各々の領域が短いスパンでプラズマ原料1に浸漬されるようになるため、冷却効率が上昇する。
【0103】
このような回転体の速度としては、10m/sec以上の値が望ましいとされている。しかしながらこういった大きい速度で回転体20が回転する場合、プラズマ原料1が当接部材に高速で衝突するようになる。また回転体20により原料コンテナ21から持ち上げられるプラズマ原料1の量も多くなるため、より多くのプラズマ原料1が当接部材に衝突するようになる。これら2つの要因によりプラズマ原料1がスキマーに与える液圧が増加する。
【0104】
液圧が増加するとスキマーが大きく動いてしまい、膜厚の制御が困難となる。また最悪の場合にはスタッキングが起こり、光源装置100の機能が停止してしまうといったこともあり得る。
【0105】
本実施形態では、当接部材として断面積増加の性質を持つ部材が用いられる。これにより、当接部材によりプラズマ原料1が徐々に押しのけられるようになるため、当接部材がプラズマ原料1から受ける液圧が相対的に小さくなる。従って、スキマー40が動いてしまう、あるいはスタッキングが起こってしまうといった問題を解消することが可能となる。
【0106】
例えば当接部材として平板形状の部材(断面積増加の性質を持たない部材)が用いられた場合には、当接部材のうちプラズマ原料1が向かってくる方向の面(
図3の手前側の面)は平面であるため、平面の全面にプラズマ原料1が衝突することとなる。すなわち当接部材が受ける液圧は大きくなる。
【0107】
一方で本実施形態では、プラズマ原料1が球体46の先端以外の部位に避けながら押しのけられるため、平板形状の部材を用いる時に比べて当接部材が受ける液圧が小さくなり、液圧に起因する不具合を防止することが可能となる。
【0108】
また当接部材として球体46や砲弾体55が用いられることにより、プラズマ原料1に接する部位が点になるため、一か所の膜厚を精度よく調整することが可能となる。その他先端が点で接する様々な当接部材においてこのような効果を得ることが可能であり、適宜任意の形状を採用することが可能である。この構成はエネルギービームEBの照射面積が比較的小さいLPP方式の光源装置において特に有効である。一例として、LPP方式では照射面が数十~数百μm程度の径の円となり、膜厚が調整される部分は1mm以下の径の円となる。もちろん照射面及び膜厚が調整される部分の形状がこれらに限定されるわけではない。
【0109】
先端が球状である当接部材が用いられることにより、先端に働く摩擦力等の力が軽減され、当接部材の損耗を抑制することが可能となる。もちろん先端が鋭利な当接部材を用いる場合が本技術の範囲から排除されるわけではない。
【0110】
本実施形態では、円筒状の筒体47により当接部材が支持され、当接部材としては当接部材が移動可能な方向の軸を中心軸とする回転体が用いられる。すなわち当接部材が回転軸の方向以外の方向には動かないように支持される。これにより液圧の影響による球体46のぶれが抑制される。
【0111】
本実施形態では、当接部材が弾性体48により押圧される。これにより、当接部材を安定して動作させることが可能となる。さらに当接部材に対して一定の力が働くようになるため、膜厚をさらに高精度に調整することが可能となる。
【0112】
本実施形態では、回転体20として円盤形状の部材が用いられ、円形状の表面41にエネルギービームEBが照射される。また原料コンテナ21が配置され、原料コンテナ21に収容されたプラズマ原料1に回転体20が浸漬される。これによりLPP方式の高品質な光源装置100を実現することが可能となる。
【0113】
<第2の実施形態>
本技術に係る光源装置100について、さらに詳細な実施形態を第2の実施形態として説明する。これ以降の説明では、上記の実施形態で説明した光源装置100における構成及び作用と同様な部分については、その説明を省略又は簡略化する。
【0114】
[溝部]
図6は、溝部の構成例を示す模式図である。
図6Aには、円盤部44のうちスキマー40の近傍を、
図2Aにおける右手前側から斜めに俯瞰した状態が示されている。
図6Bは
図3と同様の、Z方向の正側から見た断面図である。
【0115】
本例では、円盤部44の表面41及び裏面42に溝部58が構成され、エネルギービームEBが溝部58に照射され、当接部材が溝部58に当接する。溝部58は所定の幅を有し、円盤部44に垂直な方向(Y方向)から見た場合には、回転体20の回転軸Hを中心とするリング形状を有する。溝部58は球体46の当接位置及びエネルギービームEBの照射位置Iのいずれにも重なる位置に構成される。
【0116】
従って球体46により、溝部58の内部に付着するプラズマ原料1の膜厚が調整され、回転体20が回転し、当該溝部58のプラズマ原料1にエネルギービームEBが照射される。
【0117】
球体46は
図3等の例と同様に、筒体47、弾性体48、及び球体抑え49により支持される。なお
図6においては弾性体48及び球体抑え49の図示は省略されている。さらに本例では筒体47が固定部材59により固定される。固定部材59は矩形の3辺からなる枠状の形状を有し、3辺で円盤部44を挟み込むように配置される。固定部材59の上部及び下部には開口が構成され、2つの開口にそれぞれ筒体47が嵌め込まれることにより筒体47が固定される。固定部材59を用いることにより、筒体47や球体46を安定して保持することが可能となる。その他固定部材59の具体的な形状や材料は限定されない。また筒体47を固定する方法も、固定部材59を用いた方法に限定されない。
【0118】
図6Bに示すように、本例では溝部58の断面は矩形状となる。球体46は溝部58の底部に当接できるような径を有し、さらに球体46が溝部58の底部に当接した時に、球体46は溝部の境界(
図6Bにおける、上側の溝部58の左上及び右上の角、及び下側の溝部58の左下及び右下の角)にも同時に当接する。これにより、球体46の先端と溝部58の底部との当接位置における膜厚が、所望の値に調整される。そして当該位置にエネルギービームEBが照射される。このような構成を実現可能なように、溝部58並びに球体46の形状、及びエネルギービームEBの照射角度等の構成が適宜選択される。
【0119】
なお球体46の径が小さい場合には、球体46が溝部58の底部に当接するものの、境界には当接しない場合も考えられる。このような場合でも溝部58の底部の膜厚が調整されることに変わりはなく、問題は生じない。
【0120】
円盤部44の表面41に溝部58が構成されることにより、球体46のすわりが良くなり、位置安定性を向上させることが可能となる。これにより、球体46が想定外の方向に移動してしまうといったことがなくなる。
【0121】
[溝部のバリエーション]
図7は、溝部のバリエーションを示す模式図である。
溝部62は、XY平面で切った場合の断面が三角形状を有する。
溝部63は、
図6Bに示す溝部58と同様に、断面が矩形状を有する。溝部63の断面は、正方形状又は長方形状のいずれであってもよい。
溝部64は、断面が半円形状を有する。断面が半円の一部に相当する形状(例えば120度の弧及び弦に囲まれた形状等)であってもよい。
溝部65は、断面が台形状を有する。本例では上底の幅が下底の幅よりも小さくなっているが、上底の幅が下底の幅より大きくてもよい。
図7には、溝部62の幅W及び深さDが矢印で示されている。各々の溝部62~65の幅W及び深さDの値は、球体46の大きさ等に合わせて適宜選択されてよい。
【0122】
このうち溝部64は、球体46と同一の形状を有する。すなわち溝部64は半球形状を有し、球体46の下方側もまた半球形状を有する。これにより、球体46の位置安定性をさらに向上させることが可能となる。なお、溝部64が大きい半球形状で球体46が小さい半球形状である場合等、同一形状でサイズが違う構成であってもよい。
【0123】
また溝部62、63、及び65の断面は、球体46の断面と異なる形状を有する。すなわちいずれの溝部の断面も、球体46の断面(半円形状)とは異なる形状となっている。これにより、球体46により押しのけられない部位の原料がバッファとなり、膜厚を一定にするのにより効果の高い構成となりうる。例えば回転体20の回転数が高い場合に、プラズマ原料1の膜厚が薄くなり、量が不足する場合がある。このような場合に、球体46の形状と溝部の形状とが異なる構成を用いることで、球体46により押しのけられないプラズマ原料1が多くなるため、その分がバッファとなり、不足するプラズマ原料1の量を補う効果を得ることが可能となる。
【0124】
その他、溝部58の具体的な形状は限定されない。なお例えば溝部62の形状が採用される場合には、球体46と溝部62との当接位置は三角形の斜めの辺上となるため、当該位置に対して斜めにエネルギービームEBが照射される。これに限らず、例えば三角形の中央の底部に溜まったプラズマ原料1に対してエネルギービームEBが照射されてもよい。この場合、底部に所望の膜厚でプラズマ原料1が溜まるように球体46や溝部62の形状が調整される。このように当接位置と照射位置とが厳密には微妙に異なる場合も、本技術の範囲に含まれる。
【0125】
<第3の実施形態>
[自重による押圧]
図8は、回転体20及びスキマー40の構成例を示す断面図である。本例では。回転体20及びスキマー40が重力方向(Z方向)に対して斜めに配置される。具体的には、回転軸HがZ軸を基準としてY軸側におよそ45度の角度をなすように、回転体20等が配置される。もちろん配置角度はこの値に限定されない。
【0126】
砲弾体55は筒体47により重力方向に移動可能に支持される。本例では砲弾体55は矢印Cの方向(斜め45度の方向)に移動可能となるが、この方向は重力方向の成分を含む方向であるため、重力方向に移動可能であると言える。また砲弾体55にはZ軸の負方向に重力が働くため、そのうち斜め45度の成分の力(矢印Cの右下方向の力)により、砲弾体55の先端は円盤部44の表面41に対して押圧される。すなわち砲弾体55は、砲弾体55の自重により表面41に対して押圧される。
【0127】
この場合、例えば砲弾体55の材料として密度の高い材料を選択することにより、砲弾体55に働く自重が大きくなり、調整後の膜厚を小さくすることが可能である。逆に密度の低い材料を選択することにより、膜厚を大きくすることも可能である。また回転体20の角度を変化させることで、砲弾体55に働く自重の斜め成分の大きさが変化し、膜厚もまた変化する。その他砲弾体55の大きさ等の種々の構成を適宜選択することにより、所望の膜厚を得ることが可能となる。
これにより、当接部材を表面41に対して押圧するための弾性体48、球体抑え49といった機構が不要となり、簡易な構成で光源装置100を実現することが可能となる。
【0128】
<第4の実施形態>
[LDPへの応用]
図9は、LDP光源装置の構成例を示す模式図である。
図10Aは、
図9のD-D線での断面図である。
図10Bは、
図10Aの拡大図である。
【0129】
本例では、光源装置としてLDP方式の光源装置が用いられる。
図9には、LDP方式の光源装置におけるプラズマ生成機構67が図示されている。プラズマ生成機構67は2つの回転体68及び69を有する。回転体68は円盤部70と軸部71とを有する。また回転体69は円盤部72と軸部73とを有する。回転体68及び69の構成は、
図2等に示すLPP方式の光源装置100における回転体20の構成と同様であるが、もちろんこのような構成に限定されない。
【0130】
回転体68は
図9の右側に配置され、回転体69は左側に配置される。また回転体68は原料コンテナ79に浸漬され、回転体69は原料コンテナ80に浸漬される。
図10Aには、
図9のD-D線に沿った断面を上側(Z方向の正側)から見た状態が図示されている。
図10Aに示すように、回転体68は回転軸を反時計回りの方向に若干傾けて配置される。同様に、回転体69は回転軸を時計回りの方向に若干傾けて配置される。
【0131】
円盤部70の右側にはスキマー74が配置される。また円盤部72の左側にはスキマー66が配置される。以下、右側のスキマー74の構成について説明する。スキマー66の構成はスキマー74の構成と同様である。
図10Bは、スキマー74(
図10Aの破線の矩形部分)の拡大図である。
【0132】
スキマー74は、
図2等に示すスキマー40と同様に、球体75、筒体76、固定部材77、弾性体、及び球体抑えを有する。なお
図10Bでは弾性体及び球体抑えの図示は省略されている。固定部材77は矩形の3辺からなる枠状の形状を有し、3辺で円盤部70を挟み込むように配置される。本例では固定部材77の、円盤部70の側面78に対向する位置に開口が構成され、開口に筒体76が嵌め込まれることにより筒体76が固定される。さらに筒体76には球体75が挿入され、球体75の先端が円盤部70の側面78に当接する。
【0133】
これにより、側面78に付着したプラズマ原料1の膜厚が、球体75により所望の値に調整される。LDP方式の光源装置においては、回転体の表面ではなく側面に対してエネルギービームEBが照射される。このような場合においても本技術の構成が適用可能であり、膜厚を精度よく調整することが可能となる。
本例において、側面78のうち原料コンテナ21に浸漬されていない部分は、本技術に係る、プラズマ原料1が付着する面であり、エネルギービームEBが照射される照射面の一実施形態に相当する。なお側面78に溝部が構成されてもよい。
【0134】
<第5の実施形態>
[ローラーによる膜厚調整]
図11は、LDP光源装置の構成例を示す模式図である。
図12は、スキマーの拡大図である。
【0135】
図11には、回転体68及び原料コンテナ79が示されている。本例でも光源装置はLDP方式であり、円盤部70の側面78にスキマー81が配置される。
図12Aは、スキマー81(
図11の破線の矩形部分)の拡大図である。
図12Bは、
図12Aの固定部材84を透明にした拡大図である。
【0136】
スキマー81は、ローラー82、弾性体83、及び固定部材84を有する。ローラー82は円柱形状を有し、円形状の上面、底面及び側面85を有する。また、上面及び底面の中心に突出部86を有する。
弾性体83は、本例では2つのばねである。
【0137】
固定部材84は矩形の3辺からなる枠状の形状を有し、3辺で円盤部70を挟み込むように配置される。固定部材84の2つの側部(XZ平面に平行な面)には開口87が構成され、内部には弾性体83が横向きに(軸がX方向に延在するように)配置される。さらに開口87の左端にはローラー82の突出部86が嵌め込まれ、突出部86は弾性体83により左側に押圧される。
【0138】
すなわちローラー82全体が弾性体83による左向きの力を受け、円盤部70の側面78に対して押圧される。これにより、ローラー82の側面85が円盤部70の側面78に当接するように配置される。
【0139】
このような構成によっても膜厚を調整することが可能である。ローラー82を用いることにより、広い面積の膜厚を精度よく調整することが可能となる。LDP方式の光源装置は発光面積が広い(広い範囲に対してエネルギービームEBが照射される)ため、ローラー82を用いた構成はLDP方式の光源装置において特に効果的である。
【0140】
なお、ローラー82の大きさ等の具体的な構成は限定されない。一例として、ローラー82の厚み(Y方向の長さ)は、円盤部70の厚みよりも若干大きく設定される。また円盤部70の側面78に溝部が構成される場合、大きな溝部に対して溝部よりも小さいローラー82が当接し、溝の内部とローラー82との当接位置の膜厚が調整されてもよい。一方で、小さな溝部に対して溝部よりも大きいローラー82が当接し、
図7の三角形の溝部62と同様に、溝部の内部に溜まったプラズマ原料1に対してエネルギービームEBが照射されてもよい。また、円盤部70の表面に対してローラー82が配置される構成が採用されてもよい。
ローラー82は、本技術に係る当接部材の一実施形態に相当する。
【0141】
<第6の実施形態>
[当接部材のバリエーション]
図13Aは、
図2BのE-E線での断面図である。
図13B及びCは、
図13Aにおける当接部材の近傍の拡大図である。
本例では当接部材90の断面は、左下及び右下の角が丸い長方形状を有する。
【0142】
当接部材90は、回転体20の回転方向と垂直な面における断面積が、回転の下流側に向かうにつれて増加する。回転体20の回転方向は
図13における左右方向であり、回転方向と垂直な面とはZ軸に垂直な面、すなわちXY平面に相当する。
図13B及びCには、XY平面91が実線及び破線で示されている。
【0143】
図13Bには、当接部材90の左端の近傍をXY平面91で切った時の断面が破線で示されている。また
図13Cには、
図13Bの場合よりも若干右側をXY平面91で切った時の断面が破線で示されている。ここで当接部材90の断面は左下の角が丸くなっているため、
図13Cの断面積S
4は
図13Bの断面積S
3よりも大きくなる。回転体20の回転の向きは左から右に向かう向きであるため、回転の下流側は右側である。従って、当接部材90の断面積は、回転の下流側に向かうにつれて増加していると言える。
【0144】
なお本例では、当接部材90の中央部では断面積が変化せず、右端では回転の下流側に向かうにつれて断面積が減少するが、このように当接部材90の左端のみにおいて断面積が増加する場合も本技術の範囲に含まれる。
【0145】
これにより、当接部材90に向かってくるプラズマ原料1が、当接部材90の左端で少しずつ押しのけられながら進行するため、平板形状の当接部材を用いる時に比べて当接部材90が相対的に受ける液圧が小さくなり、液圧に起因する不具合を防止することが可能となる。
【0146】
さらに本例では、当接部材90は、回転体20の回転の上流側に曲面形状のテーパ面を有する。
図13B及びCに示す左下の角の丸い部分が、当該テーパ面92となる。ここで回転の上流側とは左側であるため、当接部材90は回転の上流側にテーパ面92を有していると言える。
【0147】
これにより、当接部材90が受ける液圧がさらに小さくなる。なお一例として、プラズマ原料1の流入前(当接部材90より左側)の膜厚は数百μm、流入後(右側、膜厚調整後)の膜厚は数十μmとなる。この場合、テーパ面92の上端の位置は流入前の膜厚よりも高い位置にあることが望ましい。すなわち、テーパ面92の上端と円盤部44の表面41との距離が数百μmよりも大きいことが望ましい。これにより、プラズマ原料1の全体がテーパ面92に触れながら流入することとなり、さらに高い効果が発揮される。もちろんこれらの寸法はあくまで一例であり、具体的な値は限定されない。またテーパ面92の具体的な形状も限定されない。
【0148】
図14は、当接部材のバリエーションを示す模式図である。
当接部材95には、当接部材90と同様に左下にテーパ面92が構成されるが、右下にはテーパ面が構成されない。
当接部材96~99は、回転体20の回転の上流側(左側)に平面形状のテーパ面110を有する。当接部材96及び97のテーパ面110は高さが小さいテーパ面、当接部材98及び99のテーパ面110は左側の側面の全体に渡るテーパ面となっている。また当接部材96及び98では右側にも左側と同じ形状のテーパ面が構成され、当接部材97及び99では右側にテーパ面は構成されない。
【0149】
平面形状のテーパ面110が構成されることにより、当接部材90が受ける液圧がさらに小さくなる。また右側にテーパ面を有しない構成とすることにより、当接部材の加工に要する時間やコストを削減することが可能となる。その他本例以外にも任意の形状の当接部材が用いられてよい。
【0150】
<その他の実施形態>
本技術は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
[当接部材の回転]
当接部材は、回転体20の回転に伴って回転してもよい。例えば
図12Aにおいて円盤部70が反時計回りに回転した場合には、連動してローラー82が時計回りに回転する。また
図3においても、球体46が転がる構成、転がらない構成のいずれも採用することが可能である。当接部材が回転することにより、当接部材と円盤部44の表面41との間に発生する摩擦力が小さくなり、当接部材や円盤部44の摩耗が抑制される。また、回転体20をスムーズに回転させることが可能となる。
【0151】
[プラズマ原料の種類]
プラズマ原料1としては、スズ、リチウム、ガドリニウム、テルビウム、ガリウム、ビスマス、インジウム、又はこれらの材料のうちの少なくとも1つを含む合金を用いることが可能である。例えば放射線RとしてEUV光が取り出され、当該EUV光が顕微鏡に用いられる場合には、材料としてビスマスが用いられる。また放射線RとしてX線が生成される場合には、材料としてインジウムが用いられる。これらの材料を用いることにより、高品質な放射線Rを生成することが可能となる。その他プラズマ原料1の具体的な種類は限定されない。例えばプラズマ原料1は金属同士の潤滑剤としての役割も有するため、その役割が考慮された上でプラズマ原料1の種類が決定されてもよい。
【0152】
[エネルギービーム及び放射線の種類]
エネルギービームEB及び放射線Rの具体的な種類は限定されない。例えばエネルギービームEBとしてレーザ光を用いることが可能である。これにより高品質な放射線Rを生成することが可能となる。また例えば、放射線Rとして極端紫外光(EUV光)又はX線が生成される。これにより放射線Rを効率良く利用することが可能となる。
【0153】
各図面を参照して説明した光源装置、プラズマ原料、プラズマ生成機構、回転体、スキマー、当接部材、筒体、弾性体、砲弾体、溝部、テーパ面の各構成はあくまで一実施形態であり、本技術の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本技術を実施するための他の任意の構成等が採用されてよい。
【0154】
本開示において、「略」という文言が使用される場合、これはあくまで説明の理解を容易とするための使用であり、「略」という文言の使用/不使用に特別な意味があるわけではない。すなわち、本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「三角形状」「矩形状」「正方形状」「長方形状」「多角形形状」「円形状」「半円形状」「台形状」「平面形状」「曲面形状」「円柱形状」「円錐形状」「角錐形状」「円盤形状」「立方体形状」「直方体形状」「球状の形状」「円筒状の形状」「砲弾型の形状」「リング形状」「コーン形状」「枠状の形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に三角形状」「実質的に矩形状」「実質的に正方形状」「実質的に長方形状」「実質的に多角形形状」「実質的に円形状」「実質的に半円形状」「実質的に台形状」「実質的に平面形状」「実質的に曲面形状」「実質的に円柱形状」「実質的に円錐形状」「実質的に角錐形状」「実質的に円盤形状」「実質的に立方体形状」「実質的に直方体形状」「実質的に球状の形状」「実質的に円筒状の形状」「実質的に砲弾型の形状」「実質的にリング形状」「実質的にコーン形状」「枠状の形状」等を含む概念とする。例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に三角形状」「完全に矩形状」「完全に正方形状」「完全に長方形状」「完全に多角形形状」「完全に円形状」「完全に半円形状」「完全に台形状」「完全に平面形状」「完全に曲面形状」「完全に円柱形状」「完全に円錐形状」「完全に角錐形状」「完全に円盤形状」「完全に立方体形状」「完全に直方体形状」「完全に球状の形状」「完全に円筒状の形状」「完全に砲弾型の形状」「完全にリング形状」「完全にコーン形状」「完全に枠状の形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。従って、「略」の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」を付加して表現される概念が含まれ得る。反対に、「略」を付加して表現された状態について、完全な状態が排除される訳ではない。
【0155】
本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含まない概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aより大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。また「Aより小さい」は、「A未満」に限定されず、「A以下」も含む。本技術を実施する際には、上記で説明した効果が発揮されるように、「Aより大きい」及び「Aより小さい」に含まれる概念から、具体的な設定等を適宜採用すればよい。
【0156】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0157】
1…プラズマ原料
6、67…プラズマ生成機構
8…ビーム源
20、68、69…回転体
21、79、80…原料コンテナ
40、66、74、81…スキマー
41…表面
43、85…側面
44、70、72…円盤部
46…球体
47、76…筒体
48、83…弾性体
52…平面
55…砲弾体
58、62~65…溝部
82…ローラー
90、95~99…当接部材
91…XY平面
92、110…テーパ面
100…光源装置