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特開2024-179111電極基材、電極基材積層体、電極及び二次電池、並びにその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179111
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電極基材、電極基材積層体、電極及び二次電池、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1391 20100101AFI20241219BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241219BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M4/1391
H01M4/62 Z
H01M4/131
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/1397
H01M10/052
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/136
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097669
(22)【出願日】2023-06-14
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 健太
(72)【発明者】
【氏名】谷内 洋
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 博一
(72)【発明者】
【氏名】中澤 郁郎
(72)【発明者】
【氏名】政田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】青谷 貴治
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ03
5H050AA02
5H050AA12
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA29
5H050CB12
5H050DA13
5H050EA01
5H050EA23
5H050FA02
5H050GA03
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】活物質粒子の体積変動を緩和しつつイオン電導性に優れ、出力の低下を抑制することができる電極基材、電極基材積層体、電極及び二次電池、並びにその製造方法の提供。
【解決手段】電極の製造に用いられる電極基材であって、該電極基材は、樹脂基材、活物質粒子及び固体電解質粒子を含み、該活物質粒子の平均円相当径をraとし、該固体電解質粒子の平均円相当径をreとしたとき、re/raが特定の範囲であり、該固体電解質粒子のうち、特定の粒径を超える粒径の粒子を第一固体電解質粒子とし、特定の粒径以下の粒子を第二固体電解質粒子としたとき、該活物質粒子と該第一固体電解質粒子とが隣接して配置され、該粒子層の断面観察において、該第二固体電解質粒子のうち80個数%以上が、特定の位置の基準線に対して該樹脂基材と接触する側又は反対側に偏在して配置されていることを特徴とする、電極基材。
【選択図】図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極の製造に用いられる電極基材であって、
該電極基材は、
樹脂基材と、該樹脂基材上の活物質粒子及び固体電解質粒子を含み、
該樹脂基材上に、該活物質粒子及び該固体電解質粒子を含む粒子層が形成され、
該活物質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を該活物質粒子の平均円相当径raとし、該固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を該固体電解質粒子の平均円相当径reとしたとき、
該平均円相当径raに対する、該平均円相当径reの比の値(re/ra)が0.01以上2.0以下であり、
該固体電解質粒子のうち、
該固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布において小粒径側から個数基準で累積10%粒径を超える粒径の粒子を第一固体電解質粒子とし、
該累積10%粒径以下の粒子を第二固体電解質粒子としたとき、
該粒子層において、
該活物質粒子と、該第一固体電解質粒子とが隣接して配置され、
該粒子層の断面観察において、該第二固体電解質粒子のうち80個数%以上が、基準線に対して、該粒子層の該樹脂基材と接触する側、又は該樹脂基材側の反対側に偏在して配置され、
該基準線は、該粒子層における該活物質粒子の該樹脂基材及び該粒子層の積層方向の分布のピーク位置を示す、
ことを特徴とする、電極基材。
【請求項2】
前記第一固体電解質粒子が、Li-B酸化物系の電解質粒子を含み、
前記活物質粒子が、Li-Co酸化物系の活物質粒子を含む、請求項1に記載の電極基材。
【請求項3】
前記第二固体電解質粒子が、Li-B酸化物系の電解質粒子を含む、請求項1に記載の電極基材。
【請求項4】
前記第一固体電解質粒子が、Li-B酸化物系の電解質粒子を含み、
前記活物質粒子が、Li-PO酸化物系の活物質粒子を含む、請求項1に記載の電極基材。
【請求項5】
前記第二固体電解質粒子が、Li-B酸化物系の電解質粒子を含む、請求項1に記載の電極基材。
【請求項6】
前記樹脂基材の表面における、前記活物質粒子及び前記固体電解質粒子によるカバー率が、60%以上99%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の電極基材。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の電極基材を複数積層した、電極基材積層体。
【請求項8】
請求項7に記載の電極基材積層体であって、
該電極基材積層体の断面において、前記樹脂基材と前記粒子層とが交互に存在する、電極基材積層体。
【請求項9】
二次電池の電極であって、請求項1に記載の電極基材の焼結体である電極。
【請求項10】
前記固体電解質粒子が、Li-B酸化物系の固体電解質粒子を含み、
前記活物質粒子が、Li-Co酸化物系の活物質粒子を含む、請求項9に記載の電極。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の電極と、該電極に隣接する電解質層とを含む二次電池。
【請求項12】
電極の製造に用いられる請求項1~5のいずれか一項に記載の電極基材の製造方法であって、
該製造方法は、
粘着部を備えた前記樹脂基材を準備する工程と、
該粘着部の表面に、前記活物質粒子及び前記第一固体電解質粒子を配置する工程と、
該粘着部の表面に配置された前記第一固体電解質粒子及び前記活物質粒子を該粘着部に沈降させる粒子沈降工程と、
沈降させた前記第一電解質粒子及び前記活物質粒子の間の該粘着部に、第二固体電解質粒子を配置する工程と、を有する電極基材の製造方法。
【請求項13】
電極の製造に用いられる電極基材の製造方法であって、
該電極基材は、
該樹脂基材上の活物質粒子及び固体電解質粒子を含み、
該樹脂基材上に、該活物質粒子と該固体電解質粒子とを含む粒子層が形成され、
該活物質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を該活物質粒子の平均円相当径raとし、該固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を該固体電解質粒子の平均円相当径reとしたとき、
該平均円相当径raに対する、該平均円相当径reの比の値(re/ra)が0.01以上2.0以下であり、
該固体電解質粒子が、固体電解質粒子P2と固体電解質粒子P3を含み、
該固体電解質粒子P2の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50)は、固体電解質粒子P3の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50)よりも大きく、
該製造方法は、
表面に粘着部を備えた該樹脂基材を準備する工程と、
該粘着部の表面に、該活物質粒子及び該固体電解質粒子P2を隣接して配置する工程と、
該粘着部の表面に配置された該固体電解質粒子P2及び該活物質粒子を該粘着部に沈降させる粒子沈降工程と、
沈降させた該固体電解質粒子P2及び該活物質粒子の間の該粘着部に、該固体電解質粒子P3を配置する工程と、
を有する電極基材の製造方法。
【請求項14】
電極の製造方法であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電極基材を複数積層し、積層体を成形する工程と、
該積層体から前記樹脂基材を除去し、立体物を得る工程と、
前記立体物を加圧し、電極を得る工程と、を有する電極の製造方法。
【請求項15】
二次電池の製造方法であって、
該製造方法は、
請求項14に記載の電極の製造方法により電極を準備する工程と、
該電極、集電体及び電解質を積層する工程と、
を有する二次電池の製造方法。
【請求項16】
二次電池の製造方法であって、
該製造方法は、
請求項14に記載の電極の製造方法により電極を準備する工程と、
該電極に隣接する固体電解質を設ける工程と、を有する二次電池の製造方法。
【請求項17】
二次電池の製造方法であって、
該製造方法は、請求項9又は10に記載の電極及び該電極に隣接する固体電解質を一括して設ける工程を有する二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極基材、電極基材積層体、電極及び二次電池、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、二次電池は、電極(正極や負極)及び電解質で構成され、電極間で電解質を介したイオンの移動が生じることで、充電や放電を行う。このような二次電池は、携帯電話などの小型機器から電気自動車などの大型機器まで、幅広い用途で使用されている。そのため、二次電池の性能のさらなる向上が求められている。
【0003】
近年は電解質に無機の固体電解質を使用した、所謂全固体電池の研究開発が進んでいる。全固体電池は従来の有機電解液を固体電解質に置き換えることにより、二次電池の安全性や高容量高出力化が期待されている。
一方、全固体電池は電極におけるイオンの脱挿入過程において、活物質粒子の体積変動に伴い、電極内、とりわけ電極と集電体間、電極と電解質間の伝導パスが切断されやすい。その結果、充電と放電を繰り返した際の劣化が生じやすくなり、いわゆるサイクル特性が低下しやすい。そこで、電極内部に前記体積変動の影響を緩和する緩和部を設ける技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、電極活物質あるいは固体電解質材料のセラミック結晶粒子を複数有し、その結晶同士の粒界に、空隙を有すカーボン粒子の凝集体を備えた電極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-002482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によると、空隙を有すカーボン粒子の凝集体は、大粒径のセラミック結晶粒子同士の界面に形成されやすいのに対し、凝集しやすい小粒径のセラミック結晶粒子同士の界面には、前記凝集体が形成されにくい傾向がある。すなわち、セラミック結晶粒子同士の界面において、空隙を有すカーボン粒子の凝集体が形成される部分と、凝集体が形成されない部分とがまばらに存在するため、電極内部に均一な緩和部を設けることが難しく、体積変動の影響の緩和が十分ではないことがわかってきた。一方、緩和のためにセラミック結晶粒子に対する前記凝集体の比率を上げると、イオン伝導が阻害されやすく、出力が低下しやすくなる課題があることがわかってきた。
【0007】
したがって、本開示の目的は、活物質粒子の体積変動の影響を緩和しつつイオン電導性に優れ、出力の低下を抑制することができる電極基材、電極基材積層体、電極及び二次電池、並びに、電極基材、電極基材積層体、電極及び二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の少なくとも一つの態様によれば、
電極の製造に用いられる電極基材であって、
該電極基材は、
樹脂基材と、該樹脂基材上の活物質粒子及び固体電解質粒子を含み、
該樹脂基材上に、該活物質粒子及び該固体電解質粒子を含む粒子層が形成され、
該活物質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を該活物質粒子の平均円相当径raとし、該固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を該固体電解質粒子の平均円相当径reとしたとき、
該平均円相当径raに対する、該平均円相当径reの比の値(re/ra)が0.01以上2.0以下であり、
該固体電解質粒子のうち、
該固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布において小粒径側から個数基準で累積10%粒径を超える粒径の粒子を第一固体電解質粒子とし、
該累積10%粒径以下の粒子を第二固体電解質粒子としたとき、
該粒子層において、
該活物質粒子と、該第一固体電解質粒子とが隣接して配置され、
該粒子層の断面観察において、該第二固体電解質粒子のうち80個数%以上が、基準線に対して、該粒子層の該樹脂基材と接触する側、又は該樹脂基材側の反対側に偏在して配置され、
該基準線は、該粒子層における該活物質粒子の該樹脂基材及び該粒子層の積層方向の分布のピーク位置を示す、ことを特徴とする電極基材が提供される。
【0009】
本開示の少なくとも一つの態様によれば、上記電極基材を複数積層した、電極基材積層体が提供される。
【0010】
本開示の少なくとも一つの態様によれば、二次電池の電極であって、上記電極基材の焼結体であることを特徴とする電極が提供される。また、上記電極基材を複数積層した電極基材積層体の焼結体であることを特徴とする電極が提供される。
【0011】
本開示の少なくとも一つの態様によれば、上記電極基材の焼結体である電極と、該電極に隣接する電解質層とを含むことを特徴とする二次電池が提供される。
【0012】
本開示の少なくとも一つの態様によれば、
電極の製造に用いられる電極基材の製造方法であって、
該製造方法は、
粘着部を備えた前記樹脂基材を準備する工程と、
該粘着部の表面に、前記活物質粒子及び前記第一固体電解質粒子を配置する工程と、
該粘着部の表面に配置された前記第一固体電解質粒子及び前記活物質粒子を該粘着部に沈降させる粒子沈降工程と、
沈降させた前記第一電解質粒子及び前記活物質粒子の間の該粘着部に、第二固体電解質粒子を配置する工程と、を有する電極基材の製造方法が提供される。
【0013】
また、電極の製造に用いられる電極基材の製造方法であって、
該電極基材は、
該樹脂基材上の活物質粒子及び固体電解質粒子を含み、
該樹脂基材上に、該活物質粒子と該固体電解質粒子とを含む粒子層が形成され、
該活物質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を該活物質粒子の平均円相当径raとし、該固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を該固体電解質粒子の平均円相当径reとしたとき、
該平均円相当径raに対する、該平均円相当径reの比の値(re/ra)が0.01以上2.0以下であり、
該固体電解質粒子が、固体電解質粒子P2と固体電解質粒子P3を含み、
該固体電解質粒子P2の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50)は、固体電解質粒子P3の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50)よりも大きく、
該製造方法は、
表面に粘着部を備えた該樹脂基材を準備する工程と、
該粘着部の表面に、該活物質粒子及び該固体電解質粒子P2を隣接して配置する工程と、
該粘着部の表面に配置された該固体電解質粒子P2及び該活物質粒子を該粘着部に沈降させる粒子沈降工程と、
沈降させた該固体電解質粒子P2及び該活物質粒子の間の該粘着部に、該固体電解質粒子P3を配置する工程と、
を有する電極基材の製造方法が提供される。
【0014】
また、本開示の少なくとも一つの態様によれば、電極の製造方法であって、
上記電極基材を複数積層し、積層体を成形する工程と、
該積層体から前記樹脂基材を除去し、立体物を得る工程と、
前記立体物を加圧し、電極を得る工程と、を有する電極の製造方法が提供される。
さらに、本開示の少なくとも一つの態様によれば、二次電池の製造方法であって、
該製造方法は、
上記電極の製造方法により電極を準備する工程と、
該電極、集電体及び電解質を積層する工程と、を有する二次電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本開示の少なくとも一つの態様によれば、活物質粒子の体積変動を緩和しつつイオン電導性に優れ、出力の低下を抑制することができる電極基材、電極及び二次電池、並びに、電極基材、電極及び二次電池の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】電極基材の製造方法を示すイメージ図。
図2】粒子配置装置1の構成を模式的に示す図。
図3】充填装置の構成を模式的に示す図。
図4】第1の基材上で搬送される充填剤の模式図。
図5】第1の基材の表面近傍の拡大図。
図6】担持材としてブラシ繊維を用いた場合の充填装置の構成を模式的に示す図。
図7】転写部の構成を模式的に示す図。
図8】第2の充填装置による充填プロセスにおける第2の基材の表面近傍の拡大図。
図9】第1の粒子P1及び第2の粒子P2が転写された後の第2の基材を模式的に示す図。
図10】粒子配置装置2の構成を模式的に示す図。
図11】電極基材の製造方法における、第3、4工程の各装置を模式的に示す図
図12】基材上の粒子の沈降を説明するための、基材断面の模式図。
図13】電極基材の製造方法の第3工程後の基材の上方(粒子層側)からの模式図。
図14】電極基材の製造方法の第4工程後の基材の上方(粒子層側)からの模式図。
図15】ベルト装置を用いない第3の充填装置を模式的に示す図。
図16】充填装置の動作を説明する模式図。
図17】電極の製造方法を示すイメージ図。
図18】積層体成形装置の構成を模式的に示す図。
図19】焼結処理装置の構成を模式的に示す図。
図20】電極の製造方法の各工程における、積層体及び立体物のSEM画像。
図21】積層造形システムの全体構成を模式的に示す図。
図22】表面に凹凸パターンを形成した第1の基材の構造を模式的に示す図。
図23】実施例1の電極基材のSEM画像。
図24】比較例2の電極基材のSEM画像。
図25】比較例5の電極基材のSEM画像。
図26】実施例1の電極基材を用いて製造した電極断面のBIB-SEM画像。
図27】実施例1の電極基材を用いて製造した電極基材の模式図。
図28】比較例2の電極基材を用いて製造した電極断面のBIB-SEM画像。
図29】比較例5の電極基材を用いて製造した電極断面のBIB-SEM画像。
図30】電極基材上面(粒子層側)を撮影したSEM画像の例を示す図。
図31】カバー率の算出に用いる画像の例を示す図。
図32】電子顕微鏡により撮影した電極基材の断面画像の例を示す図。
図33】raの算出に用いる画像の例を示す図。
図34】reの算出に用いる画像の例を示す図。
図35】BIB-SEM画像及び活物質粒子の分布のピークの例を示す図。
図36】第二固体電解質粒子の中央の位置及び基準線の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」及び「XX~YY」との記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されているときは、各数値範囲の上限及び下限の任意の組み合わせをも開示しているものである。
【0018】
電解質に無機の固体電解質を使用した場合、活物質と電解質とが固体同士の状態で接触することとなるため十分な接触面積が得られにくく、界面を構築しにくくなる。特に、活物質の凝集が生じると、凝集した活物質は固体電解質にさらに接触しにくくなり、イオン伝導性が低下しやすくなる。
また、上述の通り、活物質粒子はイオンの脱挿入過程において体積変動が生じる。この体積変動に伴い、電極内、とりわけ電極と集電体間、電極と電解質間の伝導パスが切断されやすく、サイクル特性が低下しやすくなる。
【0019】
上述の課題を解決するにあたり、本発明者らは、電極内部に活物質の体積変動の影響を緩和する層を設けつつ、活物質と電解質との間に良好な界面を形成できる構成とすることを検討した。検討の結果、電極内部に均一な空隙部を設けることで活物質の体積変動の影響を緩和しながら、その近傍に均一な緻密部を設けることで活物質と電解質とを十分に接触させ、イオン伝導性を保つことが重要であることがわかった。
具体的には、電極内部において特定の電解質粒子が偏在して配置されるように、電極基材における各粒子の配置を制御することが重要であると考えられる。電極基材において特定の電解質粒子を偏在して配置することで、電極基材の基材側又は基材と反対側に電解質粒子の均一な緻密部が設けられ、該緻密部の反対側には均一な空隙部が設けられている構造とすることができる。
このような構成とした電極基材を用いて電極を製造することにより、電極内部の活物質粒子の体積変動の影響を緩和しつつ、活物質粒子から電解質へイオンが伝導しやすくなる。また、このような電極を用いた二次電池においては、充電と放電を繰り返した場合であっても出力の低下を抑制することができる。
【0020】
本開示では、活物質粒子及び固体電解質粒子を本開示の特徴を有して樹脂基材上に配された電極基材を用いることで、前記形態を実現している。電極基材は、複数積層して電極基材積層体とすることもできる。また電極基材及び電極基材積層体は、電極の材料として用いることができる。
本開示においては、体積変動の緩和を、便宜的に試作電池の「サイクル特性」という指標を用いて評価し、イオン伝導性を、便宜的に試作電池の「レート特性」という指標を用いて評価する。
以下に、電極基材、電極基材積層体、電極及びそれらを用いた二次電池、並びにその製造方法について詳述する。
【0021】
本開示の電極基材は、二次電池の電極の製造に用いることができる。以下、正極活物質粒子を用いた正極基材を例に挙げて説明するが、本開示の電極基材は、正極、負極のいずれにも用いることができる。
電極基材は、樹脂基材と、樹脂基材上の活物質粒子と及び固体電解質粒子を含む。樹脂基材上には、活物質粒子及び固体電解質粒子を含む粒子層が形成される。
【0022】
樹脂基材は、樹脂を含む材料で形成された基材である。基材として樹脂などの有機材料で形成された基材を用いることで、後述する電極基材の製造工程において加熱による基材の除去を容易にすることができる。
樹脂基材の材料に含まれる樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、並びに、ナイロンなどのポリアミドなどを用いることができる。なかでも、分解温度や熱分解時に発生する気体の低有害性の観点から、PETを用いることが好ましい。
【0023】
活物質粒子としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。例えば、リチウムを含む複合酸化物などを用いることができる。具体的には、例えばLiCoOなどのLi-Co酸化物系の活物質粒子、LiMO(Mは、Ni、Mn、Coからなる群から選択される一の元素)などの活物質粒子、Li-PO酸化物系の活物質粒子、リチウムバナジウム化合物(Li(PO、LiVOPO)、オリビン型リン酸塩系化合物(LiMPO(Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、V、Nb、Ti、Al、Zrからなる群から選択される一以上の元素))などが挙げられる。また、リチウムを含有していない正極活物質を使用してもよい。具体的には、例えば金属酸化物(MnO、Vなど)やフッ化物(FeF、VFなど)が挙げられる。リチウムを含有していない正極活物質を使用する場合は、負極活物質としてリチウムを含有する金属リチウムやリチウムイオンをドープした負極活物質を配置し、放電から開始することにより使用可能である。
【0024】
上記正極活物質粒子の中でも、Li-Co酸化物系の活物質粒子を用いることで正極活物質粒子の表面積が増大し、二次電池の出力特性が改善することが、本発明者らによって明らかになっている(特開2020-198301号公報)。また、Li-PO4酸化物系の活物質粒子は、P-O間の共有結合が強く、酸素の放出が抑制されるため非常に安定である。このため、上記正極活物質粒子の中でも、Li-Co酸化物系の活物質粒子、Li-PO4酸化物系の活物質粒子を含むことが好ましい。
【0025】
活物質粒子は、市販品を用いてもよく、材料として別途調製したものを用いてもよい。
Li-Co酸化物系の活物質粒子としては、例えばセルシードCー5H(商品名、日本化学工業株式会社製)(LiCoO)などを用いることができる。また、LiMO(Mは、Ni、Mn、Coからなる群から選択される一の元素)としては、セルシードNMC(商品名、日本化学工業株式会社製)(LiNi(1-x-y)MnCo)な
どを用いることができる。Li-PO酸化物系の活物質粒子としては、LiFePO(株式会社豊島製作所製)などを用いることができる。
また、LiFePOのように電子伝導性が低い活物質粒子を用いる場合は、一般的な手法で粒子表面にカーボンコートして使用してもよい。
なお、活物質粒子は、1種で使用されてもよく、又は2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0026】
固体電解質粒子としては、特に限定されず、全固体電池に通常使用されるイオン伝導性固体を用いることができる。例えば、Li-B酸化物系の固体電解質粒子、Li-Yb酸化物系の固体電解質粒子、ナシコン型の固体電解質粒子(LiAlTi(PO、LiAlGe(POなど)、Li-P-O系の固体電解質粒子(LiPO、LiPON(LiPOのOの一部をNで置換した粒子)など)が挙げられる。上記固体電解質粒子の中でも、Li-B酸化物系の固体電解質粒子、Li-Yb酸化物系の固体電解質粒子は、比較的低温(700℃以下)で焼結することができるため、焼結時の正極活物質粒子との反応を抑制し、イオン伝導性を保つことができる。このため、上記固体電解質粒子の中でも、Li-B酸化物系の固体電解質粒子、Li-Yb酸化物系の固体電解質粒子を含むことが好ましい。
【0027】
固体電解質粒子は、市販品を用いてもよく、材料として別途調製したものを用いてもよい。
Li-B酸化物系の固体電解質粒子としては、例えばLiBO(株式会社豊島製作所製)や、LiBOのOの一部をCで置換した粒子などを用いることができる。また、Li-Yb酸化物系の固体電解質粒子としては、例えばLi5.9Yb0.81La0.09Zr0.1(BOなどを用いることができる。
【0028】
活物質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を活物質粒子の平均円相当径raとする。また、固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を固体電解質粒子の平均円相当径reとする。
円相当径とは、粒子の体積(面積)に等しい体積(面積)を有する球(円)の直径を指す。なお、ra及びreは、Arによるブロードイオンビーム(BIB)で断面を加工し、その断面を走査型電子顕微鏡により二次元像を求める。以下、前述の二次元像の観察方法をBIB-SEMと呼ぶ。測定方法の詳細は後述する。
【0029】
電極基材において、固体電解質粒子のうち、固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布において小粒径側から個数基準で累積10%粒径(re10)を超える粒径の粒子を第一固体電解質粒子とする。また、累積10%粒径以下の粒子を第二固体電解質粒子とする。
すなわち、第二固体電解質粒子は、固体電解質粒子全体の中で、第一固体電解質粒子よりも一次粒子の円相当径が小さい粒子群である。第一固体電解質粒子及び第二固体電解質粒子を、後述の方法により電極基材中の特定の領域にそれぞれ配置することで、電極内部に均一な空隙部と均一な緻密部を設けることができる。その結果、電極内部の活物質粒子の体積変動の影響を緩和しつつ、活物質粒子から電解質へイオンが伝導しやすくなる。
【0030】
第一固体電解質粒子の一次粒子の円相当径は、特に限定されないが、例えば1~100μmであることが好ましく、2~50μmであることがより好ましい。
第二固体電解質粒子の一次粒子の円相当径は、第一固体電解質粒子よりも小さければ特に限定されないが、例えば第一固体電解質粒子の円相当径の1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましい。
第一固体電解質粒子の一次粒子の円相当径に対する、第二固体電解質粒子の一次粒子の
円相当径の比(第二固体電解質粒子の円相当径/第一固体電解質粒子の円相当径)の値は、特に限定されないが、例えば0.50以下であることが好ましく、0.30以下であることがより好ましい。
【0031】
電極基材は、樹脂基材上に、活物質粒子と固体電解質粒子と含む粒子層が形成されている。また、粒子層において、活物質粒子と第一固体電解質粒子とが隣接して配置されている。このような配置とすることにより、活物質粒子と固体電解質粒子との均一な緻密部が設けられ、活物質粒子と固体電解質粒子とを十分に接触させることができる。その結果、イオン伝導性を向上することができる。
例えば、後述の方法により、電極基材の材料としての樹脂基材上に、活物質粒子としての第1の粒子P1、及び第一固体電解質粒子に相当しうる第2の粒子P2を配置する。これにより、電極基材において活物質粒子と第一固体電解質粒子とが隣接して配置されるよう制御することができる。電極基材において粒子層が形成されていることや、活物質粒子と第一固体電解質粒子とが隣接して配置されていることは、例えばSEMによる観察などで確認することができる。
【0032】
また、粒子層の断面観察において、第二固体電解質粒子のうち80個数%以上が、基準線に対して、上述の粒子層の樹脂基材と接する側(粒子層における樹脂基材及び粒子層の積層方向の一方の側)、又は樹脂基材側の反対側(粒子層における樹脂基材及び粒子層の積層方向の他方の側)に偏在して配置されている。基準線は、粒子層における活物質粒子の樹脂基材及び樹脂層の積層方向の分布のピーク位置を示す。基準線の定め方及び偏在の判定方法については、後述する。
例えば、電極基材を断面から観察した際に、電極基材の下方側(粒子層が形成されていない側)から樹脂基材、偏在する第二固体電解質粒子、活物質粒子及び第一固体電解質粒子の順に配置されている。また、電極基材の下方側(粒子層が形成されていない側)から樹脂基材、活物質粒子及び第一固体電解質粒子、偏在する第二固体電解質粒子の順に配置されていてもよい。
すなわち、電極基材中の粒子層において、樹脂基材と接する側、又は樹脂基材側の反対側に固体電解質粒子の緻密部が設けられ、該緻密部の反対側には均一な空隙部が設けられている。このような構成とすることにより、活物質粒子の体積変動の影響を緩和することができる。好ましくは、第二固体電解質粒子のうち80個数%以上が、樹脂基材側の反対側に偏在して配置されている。
【0033】
例えば、後述の方法により、電極基材の材料としての樹脂基材上に、第二固体電解質粒子に相当しうる第3の粒子P3を配置する。これにより、電極基材において第二固体電解質粒子が上記のような状態で偏在するよう制御することができる。
なお、本開示においては、電極基材において、樹脂基材上に存在する第二固体電解質粒子を同定し、同定された粒子群の80個数%以上が樹脂基材と接する側、又は樹脂基材側の反対側に存在する場合、第二固体電解質粒子が偏在して配置されていると判断する。第二固体電解質粒子の同定方法及び偏在の判定方法については後述する。
【0034】
活物質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を活物質粒子の平均円相当径raとする。固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を固体電解質粒子の平均円相当径reとする。このとき、平均円相当径raに対する、平均円相当径reの比の値(re/ra)が、0.01以上2.0以下である。
【0035】
活物質粒子は、固体電解質粒子に比べて電子伝導性が高い場合が多く、活物質粒子同士の接触の程度は、電極内の電子伝導性に影響しやすい。
re/raが0.01以上であることは、固体電解質粒子の一次粒子の平均円相当径r
eが活物質粒子の平均円相当径raに対して適度に大きいことを示す。その結果、固体電解質粒子の凝集力及び付着力を適切な範囲に抑えることができる。
固体電解質粒子の凝集力が過剰とならない適切な範囲に抑えることで、後述する担持体と撹拌した場合にも適切に混合しやすくなる。また、付着力が過剰とならない適切な範囲に抑えることで、固体電解質粒子が電極基材上に配置された活物質粒子の上部を被覆することを抑制できる。そのため、活物質粒子同士の接触が妨げられず、電極内の電子伝導性が高く保たれる。
【0036】
re/raが2.0以下であることは、固体電解質粒子の一次粒子の平均円相当径reが活物質粒子の平均円相当径raに対して過度に大きくなく、適切な範囲であることを示す。その結果、活物質粒子の接触が妨げられることなく、電極基材上により多くの活物質粒子を配置することができる。
上述の通り、固体電解質粒子及び活物質粒子は、樹脂基材上に配置される。re/raが2.0以下であることで、基材表面の凹凸が小さくなる。そのため、後述の方法で電極基材を積層した際に基材積層方向における活物質粒子と固体電解質粒子、又は活物質粒子同士、固体電解質粒子同士の接触が妨げられることなく、十分に接触することができる。これにより、電池のイオン伝導性を高く保ち、レート特性を向上できる。また、電極基材上により多くの活物質粒子を配置できるため、体積エネルギー密度の高い電池を製造することができる。
【0037】
re/raは、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.10以上であり、さらに好ましくは0.50以上である。また、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.0以下である。例えば、好ましくは0.05~1.8、0.10~1.5、0.50~1.0の範囲が挙げられる。
【0038】
raは、特に限定されないが、好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは0.5~20μmであり、さらに好ましくは1~10μmである。
reは、特に限定されないが、好ましくは0.01~50μmであり、より好ましくは0.05~10μmであり、さらに好ましくは0.1~5μmである。
【0039】
<電極基材の製造方法>
以下、図面を参照して、電極基材の製造方法の一例を詳細に説明する。以下、正極活物質粒子を用いた正極基材を例に挙げて説明するが、正極、負極問わず、電極基材の製造方法として、以下に記載の製造方法を用いることができる。
【0040】
電極基材の製造方法は、下記の工程を有する。
(1)粘着部を備えた樹脂基材を準備する準備工程。
(2)前記粘着部の表面に第1の粒子P1を配置する第1工程(図1中、S101)。
(3)前記粘着部の表面に第2の粒子P2を配置する第2工程(図1中、S102)。
(4)前記第1の粒子P1及び第2の粒子P2を、前記粘着部に沈降させる第3工程(図1中、S103)。
(5)沈降させた第1の粒子P1又は第2の粒子P2と接する、第1の粒子P1及び第2の粒子P2よりも平均円相当径が小さい第3の粒子P3を配する第4工程(図1中、S104)。
【0041】
(準備工程)
準備工程として、粘着部を備えた樹脂基材を準備する。なお、本開示において、「粘着部を備えた」とは、樹脂基材の表面の一部又は全体に粘着部が設けられていることを示す。
樹脂基材としては、上述の樹脂を含む基材を用いることができる。粘着部を設ける方法
は特に限定されないが、樹脂基材の表面に粘着剤を塗布する方法などが好ましい。
粘着剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、アクリル系粘着剤や、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤であってもよいし、熱や光などの外乱により粘着力が変化する熱可塑性樹脂や光硬化性樹脂などであってもよい。
【0042】
(第1工程及び第2工程)
第1工程は、樹脂基材の粘着部の表面に第1の粒子P1を配置する工程である。また、第2工程は、樹脂基材の粘着部の表面に第2の粒子P2を配置する工程である。
なお、図1においては第1工程(S101)に続く形で第2工程(S102)を図示しているが、第1工程及び第2工程の順番は特に制限されない。すなわち、粘着部の表面に第2の粒子P2を配置する工程を行った後に、第1の粒子P1を配置する工程を行ってもよい。
【0043】
第1の粒子P1は、活物質粒子である。例えば、上述の活物質粒子を第1の粒子P1として用いることができる。
第1の粒子P1の一次粒子の粒径は、特に限定されないが、例えば体積基準の粒度分布における累積10%粒径(r10)が、0.1~10.0μmであることが好ましく、1.0~7.0μmであることがより好ましい。また、体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50)が、0.5~20.0μmであることが好ましく、2.0~10.0μmであることがより好ましい。さらに、体積基準の粒度分布における累積90%粒径(r90)が、2.0~20.0μmであることが好ましく、3.0~15.0μmであることがより好ましい。
【0044】
第2の粒子P2は固体電解質粒子であり、電極基材において第一固体電解質粒子に相当しうる粒子である。固体電解質粒子としては、上述の材料を用いることができる。
第2の粒子P2の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50)は、後述する第3の粒子P3の一次粒子のr50よりも大きい。
【0045】
第2の粒子P2の一次粒子の粒径は、第3の粒子P3よりも大きければ特に限定されない。例えば、第2の粒子P2は、一次粒子の体積基準の粒度分布における累積10%粒径(r10)が、0.5~10.0μmであることが好ましく、1.0~7.0μmであることがより好ましい。また、体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50)が、1.0~20.0μmであることが好ましく、5.0~15.0μmであることがより好ましい。また、体積基準の粒度分布における累積90%粒径(r90)が、5.0~50.0μmであることが好ましく、10.0~30.0μmであることがより好ましい。
【0046】
第1の粒子P1の一次粒子の粒径と、第2の粒子P2の一次粒子の粒径の比は、特に限定されない。
例えば、第2の粒子P2の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50(P2))に対する、第1の粒子P1の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50(P1))の比{(r50(P1))/(r50(P2))}の値が、0.05~20.0であることが好ましく、0.1~2.0であることがより好ましい。
【0047】
上述の通り、第1の粒子P1は活物質粒子である。また、第2の粒子P2は、製造後の電極基材において第一固体電解質粒子に相当しうる粒子である。すなわち、電極基材の製造方法において、第1工程及び第2工程は、粘着部の表面に、活物質粒子及び第一固体電解質粒子を配置する工程と換言することもできる。
第1工程及び第2工程は、粒子配置装置を用いて、樹脂基材の粘着部に粒子を配置する。以下、粒子配置装置について、使用することが可能な粒子配置装置1、粒子配置装置2
を順に説明する。
【0048】
[粒子配置装置1]
図2は、粒子配置装置1の構成を模式的に示す図である。
粒子配置装置1は、第1の基材11aを格納供給する第1の格納容器21aと、前記第1の基材11aを搬送する第1のベルト装置22aと、第1の基材11a上に凹凸パターンを形成するパターン形成装置23と、を有する。
粒子配置装置1は、第1の基材11a上に形成された凹凸パターンの凹部に第1の粒子P1を配置する、第1の充填装置24aを有する。粒子配置装置1は、第2の基材11bを格納供給する第2の格納容器21bと、第2の基材11bを搬送する第2のベルト装置22bと、を有する。粒子配置装置1は、第1のベルト装置22aと第2のベルト装置22bがそれぞれ有するローラ223が対向した転写部25aを有しており、転写部25aにおいて第1の基材11aから第2の基材11bへと第1の粒子P1が転写される。
【0049】
さらに、粒子配置装置1は、第2の基材11b上の非転写部に第2の粒子P2を配置する第2の充填装置24bを有する。なお、本件の効果を説明する上で関連性の低い装置、例えば転写後の第1の基材11aを第1のベルト装置22aから剥離回収するための剥離回収装置や各クリーニング装置などは、図示及び詳細説明を省略する。
【0050】
粒子配置装置1においては、パターン形成装置23、第1の充填装置24a、及び転写部25aが、第2の基材11b上に第1の粒子P1をパターン状に配置する第1の配置手段に相当する。また、第2の充填装置24bが、第2の基材11b上の第1の粒子P1が配置されていない領域に第2の粒子P2を配置する第2の配置手段に相当する。
【0051】
以下、粒子配置装置1による基材11上への粒子の配置方法を、プロセスごとに流れに沿って説明する。
まず、供給手段(不図示)によって第1の格納容器21aから第1のベルト装置22aに第1の基材11aが供給される。
パターン形成装置23(後述)によって紫外線硬化性の液体が塗布される場合には、第1の基材11aの少なくとも表面の材質は、紫外線硬化性の液体の濡れ性が高い材料で構成されていることが好ましい。また、第1の基材11aの表面は、平滑であることが好ましい。
【0052】
第1の基材11aとしては、使用する紫外線硬化性の液体(水系又は油系)に合わせて親水処理又は親油処理が施されたポリエステルなどの樹脂製のシートを用いることができる。なお、第1の基材11aは、カット紙のように個別に切り離された基材を用いてもよいし、ロール紙のようにロール状に巻かれた連続した基材や、連続用紙のように交互に折りたたまれた連続した基材を用いてもよい。
【0053】
第1のベルト装置22aは、供給された第1の基材11aをパターン形成装置23のパターン形成位置へと搬送する。第1のベルト装置22aは、駆動ローラ221a及び222a、加圧ローラ223aと、それらに懸架されたベルト状の搬送部材224aと、を有する。その際、加圧ローラ223aは、従動で回転している。
【0054】
搬送部材224aは、樹脂製や金属製などから選択されることが好ましく、例えば、ポリイミド製の樹脂ベルトを用いることができる。駆動ローラ221a及び222aは、金属製の金属ローラを用いることが好ましく、例えば、ステンレス製の金属ローラを用いることができる。加圧ローラ223aは、表層に弾性層を有するソフトローラを用いることが好ましく、例えば、ステンレス製の芯金の表面にシリコーンゴムの弾性層を設けたソフトローラを用いることができる。
【0055】
なお、図2においては、第1の基材11aを搬送する搬送装置として第1のベルト装置22aを用いているが、ベルト装置の代わりにローラ装置を用いることもできる。後述する第2のベルト装置22bについても同様である。
【0056】
パターン形成装置23は、パターン形成位置へと搬送された第1の基材11aに微細な凹凸パターンを形成する。凹凸パターンを形成する方法としては、UVインプリント方式、熱インプリント方式、UVインクジェット方式、印刷方式、レーザーエッチング方式などを用いることができる。
【0057】
パターン形成装置23がUVインプリント方式によって凹凸パターンを形成する場合には、パターン形成装置23は、第1の基材11a上に紫外線硬化性の液体を塗布する塗布手段を有する。紫外線硬化性の液体としては、例えば紫外線硬化性液状シリコーンゴムなどの紫外線硬化性樹脂を使用することができる。また、パターン形成装置23は、表面に凹凸パターンが形成されたモールドを第1の基材11a上の紫外線硬化性の液体に押印する押印手段と、紫外線硬化性の液体に紫外線を照射する光源と、を有する。典型的には、紫外線硬化性の液体としては、紫外線硬化型液状シリコーンゴム(PDMS)や樹脂を用い、モールドとしてはフィルムモールドを用い、光源としてはUVランプを用いることができる。
【0058】
第1の充填装置24aが、第1の粒子P1を担持した担持材S1を用いて第1の粒子P1を第1の基材11a上の凹部に充填する場合、第1の基材11a上の凹凸パターンの凹部の開口径(幅)は、第1の粒子P1の体積基準の累積50%粒径(メジアン径)よりも大きいことが好ましい。また、凹部の開口径(幅)は、担持材S1の平均サイズよりも小さいことが好ましい。ここで、凹凸パターンの凹部の開口径は、凹部の短手方向の開口径であることが好ましく、凹部の短手方向の最大開口径であることがより好ましい。
凹部の幅は、第1の粒子P1及び担持材S1の粒径などにより適宜調整することができる。凹部の幅は特に限定されないが、例えば0.2~30μmとすることが好ましく、2~15μmとすることが好ましい。
【0059】
凹凸パターンの凹部の開口径を上述のように設定することにより、第1の粒子P1は凹凸パターンの凹部の底部や側面部(典型的には底面)に接触することができる。一方で、担持材S1は凹部の底部や側面部には接触することができない。これにより、凹部の底部や側面部に接触した第1の粒子P1を凹凸パターンで捕捉することができ、一方で、担持材S1は凹凸パターンで捕捉しないようにすることができる。なお、換言すれば、第1の粒子P1は凹凸パターンの凹部の底部や側面部に接触でき、第1の担持材S1は凹凸パターンの凹部の底部や側面部に接触できないことが好ましい。
【0060】
なお、パターン形成装置23によって第1の基材11a上に凹凸パターンを形成するが、表面に凹凸パターンが予め形成された基材を第1の基材11aとして用いてもよい。また、第1のベルト装置22aの搬送部材224aの表面に直接、パターン形成装置23によって凹凸パターンを形成してよいし、搬送部材224aとしてその表面に凹凸パターンを有する搬送部材を用いてもよい。この場合は、耐久性を鑑みて、ステンレスやアルミニウムなどの金属ベルトを用い、レーザーエッチングやウェットエッチング、ドライエッチングなどの微細加工技術により表面に凹凸パターンを形成することが好ましい。
【0061】
表面に凹凸パターンが形成された第1の基材11aは、第1のベルト装置22aによって第1の充填装置24aの充填位置へと搬送される。
図3は、充填装置の構成を模式的に示す図である。以下、第1の充填装置24aの構成について説明するが、第2の充填装置24bについても同様である。
【0062】
第1の充填装置24aは、充填剤241aを収容する充填容器242a、充填剤241aを撹拌搬送する撹拌スクリュー部材243a、充填剤を回収する回収部材244aと、磁性部材247aと、を有する。
【0063】
充填剤241aは、第1の粒子P1と、第1の粒子P1を担持する担持材S1と、を有する。充填剤241aは、複数の第1の粒子P1によって構成される粉体と、複数の担持材S1によって構成される粉体と、を含む複数の粉体の混合物である。充填容器242aに収容された充填剤241aは、撹拌スクリュー部材243aによって撹拌、搬送される際に十分に混ざり合う。これにより、担持材S1の表面に第1の粒子P1が担持される。担持される際の粒子間に作用する力は、摩擦帯電等による静電気力の他にも、ファンデルワールス力や液架橋力などが挙げられる。
【0064】
担持材S1は、磁性粒子である。担持材S1は、フェライトコア粒子や磁性体が分散された樹脂粒子の表面を、樹脂組成物で被覆した粒子であることが好ましい。例えば、磁性粒子である標準キャリア(日本画像学会製 標準キャリアP02)などを用いることができる。担持材S1の粒径や材質は、第1の粒子P1の粒径や材質に合わせて適宜選択される。これにより、第1の粒子P1を安定して担持することができる。また、第1の粒子P1が小粒径等で凝集し易い場合にも、担持材S1との攪拌、搬送によりほぐす役割を果たす。
担持材S1の粒径は、凹部のサイズ(面積、幅、深さ)により適宜調整することができる。例えば、体積基準の累積50%粒径(メジアン径)が、50~100μmであることが好ましい。
【0065】
回収部材244aは、図中の矢印d2方向に回転可能なローラ245aと、ローラ245aの内部に配置され、充填容器242aに対して固定された磁石246aと、を有している。また、磁性部材247aは、搬送部材224aを介して充填容器242aと対向して配置されており、その内部に磁石248aを有している。
【0066】
磁石246aは、回収部材244aの回転方向に沿って交互に配置された複数のN極とS極を有している。磁石248aは、搬送部材224aの搬送方向に沿って交互に配置された複数のN極とS極を有している。また、磁石246aは、磁石248aの最下流の磁極(図3におけるS1極)と最も近接して対向する位置に異極の磁極(図3におけるN1極)を有しており、最下流の位置でN1極と同極のN2極が配置されている。
なお、磁石246a及び磁石248aは複数の磁石から構成されていてもよく、磁石246a及び磁石248aを構成する磁石の種類は特に限定はされない。例えば、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石などの希土類磁石、プラスチック磁石等の永久磁石や、電磁石などの磁界を発生する手段を用いることができる。なお、磁石248aは、第1の基材11aの搬送方向又はその逆方向に移動可能に構成してもよい。
【0067】
なお、回収部材244aの、搬送部材224aの搬送方向の上流又は下流に、第1の基材11a上の充填剤241aを規制する規制部材や、回収部材244aによって回収しきれない充填剤241aを再度回収する回収部材を設けても構わない。再度回収する回収部材としては、回収部材244aと同様の部材のほか、固定磁石や規制部材のような簡易な部材からエアブローによる回収を行う回収部材などを用いることができる。
【0068】
次に、第1の充填装置24aによって第1の基材11a上の凹部に第1の粒子P1を充填するプロセスについて、図3~5を用いて説明する。
第1の搬送部材224aが図3中の実線矢印d1方向に移動することにより、第1の搬送部材224aによって担持搬送されている第1の基材11aが搬送され、第1の充填装
置24aの充填位置へと搬送される。
【0069】
撹拌スクリュー部材243aにより、充填剤241aが搬送され、第1の基材11a上に供給される(図3中点線a)。このとき、磁性部材247aと回収部材244aによって磁界が形成されており、磁性粒子である担持材S1を含む充填剤241aはその磁界によって第1の基材11a上で複数の磁気穂を形成する。第1の基材11a上に供給された充填剤241aは、第1の基材11aの移動に伴い、磁気穂を形成した状態で第1の基材11a上で搬送される(図3中点線b)。
【0070】
図4A、4B、4Cは、第1の基材11a上で搬送される充填剤241aの模式図である。説明上、一本の磁気穂を形成している充填剤以外の充填剤241aは、図示を省略している。第1の基材11a上の充填剤241aは、上述のとおり、形成されている磁界の磁力線に沿って磁気穂を形成しており、第1の基材11aの移動に伴って図4A図4B図4Cのように磁気穂の形状を変えながら搬送される。このとき、磁石248aの近傍では特に強い磁気力が作用するため、充填剤241aの搬送速度v2は、充填剤241aが磁極から遠ざかる場合には第1の基材11aの移動速度v1よりも小さく、その逆の場合は大きくなる。すなわち、第1の基材11a上の充填剤241aは第1の基材11aに対して0ではない相対速度を有する。
【0071】
図5は、図4A~Cにおける第1の基材11aの表面近傍の拡大図である。図4A~Cでは図示を省略したが、図5に示すように第1の基材11a上には凹凸パターン111aが形成されている。凹凸パターンは、ハニカムパターンやラインパターンなど所望のパターンとして形成することができる。
充填剤241aは、この凹凸パターン111aに接触し、第1の基材11aの表面に対して垂直な方向への磁力(図中実線Fm)を受けながら、第1の基材11aに対して0ではない相対速度を有しつつ、第1の基材11aと共に搬送される。これにより、担持材S1に担持された第1の粒子P1は第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aに摺擦されながら搬送される。
【0072】
このとき、第1の粒子P1の粒径は凹凸パターン111aの凹部の開口径よりも小さく、第1の担持材S1の粒径は凹部の開口径よりも大きいため、凹凸パターン111aの凹部の底面(底部)や側面部には、第1の粒子P1は接触できるが、担持材S1は接触できない。すなわち、充填剤241aの中で第1の粒子P1のみが選択的に凹部の底面や側面部に接触する。
【0073】
凹部に接触した第1の粒子P1は、凹凸パターン111aの構造による物理的な拘束力や、第1の基材11a及び凹凸パターン111aを構成する構造材料との静電的付着力や粘着力等の非静電的付着力により強く拘束され、担持材S1から脱離する。なお、図5は説明上、担持材S1の表面に第1の粒子P1が担持されているが、充填剤241aの攪拌時、供給時や搬送時において、担持材S1に担持されない第1の粒子P1が存在していても構わない。
【0074】
磁性部材247aの下流には、図3に示すように、回収部材244aが第1の搬送部材224aと間隙を有して配置されている。第1の基材11aの移動に伴い、磁石248aの最下流の磁極(S1極)の近傍に搬送された充填剤241aは、磁石246aによって形成される磁界の影響を受けて、第1の基材11aから回収部材244aへと移動し、回収される(図3中点線c)。
【0075】
以上のように搬送過程(図3中点線a,b,c)において、第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aの凹部は、複数の充填剤241aと十分に接触する。そのため、回
収部材244aによって充填剤241aが回収された後の凹凸パターン111aの凹部には第1の粒子P1が選択的に緻密に配置される。
【0076】
なお、図4A~4C及び図5では第1の粒子P1をすべて同一の粒径で図示しているが、実際には粒度分布があり、さらに、材料によっては凝集した二次粒子を形成している場合もある。また、図示のような球形状でない場合もある。このような場合でも、凹凸パターン111aの凹部に接触できる粒子のみが選択的に緻密に充填されるため、粒子の配置工程に悪影響を及ぼし得る粗粉や二次粒子などは除外されやすい。
【0077】
このように、凹凸パターン111aの凹部への第1の粒子P1の充填量は、凹凸パターンのサイズ(面積、幅、高さ)と第1の粒子P1の粒径により制御可能となる。具体的には、凹部の面積が略充填面積になり、充填された第1の粒子P1の層厚は凸部の高さで決定される。
凸部のピッチは、特に制限されないが、例えば1.0~20μmが好ましく、2.0~15μmがより好ましい。
凸部の高さは、特に制限されないが、例えば0.1~20.0μmが好ましく、1.0~10.0μmがより好ましい。
凹部の面積率(凹凸パターンの面積に対する凹部の割合)は、特に制限されないが、例えば50%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0078】
例えば、基材面積に対し50%の薄層(単層)を得るためには、凹部の面積比(凹凸パターンの全体に対する凹部の面積率)を50%、凹部の深さを第1の粒子P1の粒径以下に制御すればよい。このとき、凹部の開口幅は、第1の粒子P1のメジアン径よりも大きく、担持材S1の平均サイズ(ここでは平均粒径)よりも小さくする。
【0079】
なお、第1の粒子P1は広い粒度分布(ブロードな粒度分布)を有していてもよいが、担持材S1は狭い粒度分布を有していることが好ましく、単分散であることがより好ましい。これにより、担持材S1を、凹部の底部(又は底面)や側面部に接触させないようにしやすい。凹部の底部や側面部に担持材S1が接触できる場合、凹部に担持材S1も拘束され充填されてしまう恐れがある。
【0080】
さらに、凹凸パターン111aの凹部の開口幅は、第1の粒子P1の粒径の4倍より小さいことが好ましい。開口幅を第1の粒子P1の粒径の4倍より小さくすることで、第1の粒子P1が凹凸パターン111aの凹部の底面及び側面の2か所に接触する確率を高めることができる。このように、凹凸パターン111aの凹部と多点接触した第1の粒子P1は凹凸パターン111aに強く拘束されるため、凹凸パターン111aへの第1の粒子P1の充填の効率を高めることができる。
なお、後述する第2の粒子P2の粒径と、第2の基材上に第1の粒子P1によって形成される凹凸パターンの凹部のサイズについても同様である。また、担持材としてブラシ繊維を用いる場合には、上述の説明における「担持材の平均粒径」は「担持材の平均繊維径」となる。
【0081】
回収部材244aによって回収された充填剤241aは、回転する回収部材であるローラ244aにより搬送される(図3中点線d)。ローラ244aによって搬送された充填剤241aは、隣接し、反発しあう2つの同極の磁極(N1、N2)による磁界、及び重力の影響によって充填容器242a中に落下する(図3中点線e)。その後、再び撹拌スクリュー部材243aにより撹拌搬送されて、以後これを繰り返す。
【0082】
充填容器242a内における充填剤241a中の第1の粒子P1と担持材S1の質量比は、電子写真装置で一般的な、透磁率を用いて測定するインダクタンスセンサや、基材上
等の反射濃度を測定して予測するパッチ濃度センサ等により決定される。そして、必要に応じて補給手段(不図示)によって第1の粒子P1及び担持材S1の少なくとも一方が補給される。これにより、長期にわたり安定した充填が可能となる。
【0083】
充填剤241a中の第1の粒子P1の質量%(充填剤241a全体の質量に対する、第1の粒子P1の質量の割合)は、磁性粒子(担持材)の表面積に対する、担持される第1の粒子P1による被覆率S1を用いて、下記式(1)で表される。被覆率S1は、磁性粒子(担持材)の表面積に対する、第1の粒子P1の断面積の合計が占める割合を示す。
充填剤241a中の第1の粒子P1の質量%=(400×ρP1×rP1×S1)/(100×ρ×r+4×ρP1×rP1×S1) 式(1)
(式(1)中の記載はそれぞれ以下を示す。ρP1:第1の粒子P1の真密度、rP1:第1の粒子P1の粒径(r50)、ρ:磁性粒子の真密度、r:磁性粒子の粒径(r50)、S1:磁性粒子の表面積に対する、第1の粒子P1による被覆率)
【0084】
充填剤241a中の第1の粒子P1の質量%は、特に制限されないが、好ましくは5~40質量%、10~30質量%の範囲が挙げられる。
また、上記式(1)中の被覆率S1が30~200面積%になるように調整されることが好ましく、50~100面積%になるように調整されることがより好ましい。
第1の粒子P1及び磁性粒子(担持材)の粒径(r50)は、レーザ回析散乱式粒子径分布測定により求めることができる。また、第1の粒子P1及び磁性粒子(担持材)の真密度は、ピクノメーター法で求めることができる。
【0085】
なお、ここでは磁性粒子を担持材として用いて、いわゆる磁気ブラシを形成することで粒子材料を凹部に充填する方式の充填装置について説明したが、充填装置の方式はこれに限定はされない。担持材として、ブラシ繊維を用いることもできる。あるいは、担持材として、少なくとも表面が弾性体で構成された弾性材を用いることもできる。
【0086】
図6Aは、担持材としてブラシ繊維を用いた場合の充填装置24cの構成を模式的に示す図である。
充填装置24cは、表面にブラシ繊維を有するローラ2410を有する。ローラ2410は、その表面にブラシ繊維が植毛された、いわゆるブラシローラである。ローラ2410の有するブラシ繊維を構成する繊維の材質は、例えば、ナイロン、レーヨン、アクリル、ビニロン、ポリエステル、塩化ビニルなどを用いることができる。帯電性や剛性を調整する目的で、繊維の表面に表面処理を施してもよい。
【0087】
充填装置24cは、ローラ2410に充填剤241aを供給する供給部材を有する。なお、充填剤241aは、第1の粒子P1を含む粉体を含んでおり、充填容器242aに収容されている。またこの例において、充填剤241aは磁性粒子である担持材S1は含まない。充填剤241aは、撹拌スクリュー部材243aによって撹拌、搬送され、供給部材249に供給される。
【0088】
供給部材249は、充填剤241aをローラ2410に供給する部材であり、その構成は特に限定はされない。供給部材249は、例えば、少なくとも表面が、弾性を有する多孔性の発泡材で構成されたローラを用いることができる。典型的には、発泡骨格構造を有し、比較的低硬度なポリウレタンフォームを芯金上に形成した弾性スポンジローラを用いることができる。なお、発泡材の材質としては、ウレタン以外にも、ニトリルゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴムなどの各種ゴム材料を用いることができる。
【0089】
供給された充填剤241aは、供給部材249の表面の発泡材に充填され、ローラ24
10と接触する供給部まで搬送される。供給部において、発泡材に充填された充填剤241aはローラ2410の有するブラシ繊維との接触により帯電し、ローラ2410の有するブラシ繊維に担持される。さらに、供給部材249は、ローラ2410に残留する充填剤241aを剥ぎ取り、リフレッシュする機能を兼ね備えてもよい。ローラ2410に供給された充填剤241aはブラシ繊維の移動により、第1の基材11aと接触する。
【0090】
このとき、第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aの凹部の底面や側面部には、充填剤241a中の第1の粒子P1は接触できるが、ブラシ繊維は接触できないようにしておく。すなわち、ブラシ繊維の繊維径を凹凸パターン111aの凹部の開口幅よりも大きくしておく。なお、ブラシ繊維の繊維径は、ローラ2410の表面にガラスを当て、光学顕微鏡によってガラス越しに取得されたブラシ繊維の画像から測定することができる。このとき、100本程度のブラシ繊維の繊維径を測定し、繊維径の分布を計測して、平均径を算出する。
【0091】
搬送部材224aの移動、及びローラ2410の回転によってローラ2410のブラシ繊維は第1の基材11aの表面に摺擦される。これにより、ブラシ繊維に担持されていた第1の粒子は第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aの凹部に緻密に配置される。
【0092】
図6Bは、担持材として弾性材を用いた場合の充填装置24dの構成を模式的に示す図である。
充填装置24dは、充填装置24cと同様の構成を有するが、ブラシ繊維を有するローラ2410の代わりに弾性材を有するローラ2411を用いる点で異なる。ローラ2411は、表面に弾性層が形成されたローラである。
【0093】
弾性層は、シリコーンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどのゴム材料などの弾性を有する材料で形成されている。弾性層は、球形状樹脂などの微粒子を添加して、表面形状が制御されていてもよい。
弾性層が表面に凸部を有する場合、弾性層の凸部のサイズは凹凸パターン111aの凹部のサイズよりも大きくしておく。弾性層の凸部のサイズは、上述のブラシ繊維の繊維径と同様の方法で測定することができる。
【0094】
搬送部材224aの移動、及びローラ2411の回転によってローラ2411の表面の弾性材は第1の基材11aの表面に摺擦される。これにより、弾性材に担持されていた第1の粒子は第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aの凹部に緻密に配置される。
【0095】
図6A図6Bのように担持材としてブラシ繊維や弾性材を用いることで、充填剤中に磁性粒子を含ませる必要がなくなる。また、充填装置の構成を簡便化することができる。一方で、図3のように担持材として磁性粒子を用いる場合には、ブラシ繊維や弾性材の場合よりも担持材のサイズや形状の自由度が高い。また、磁性粒子の場合には基材上における担持材の移動の自由度が高い。
【0096】
これらの理由により、磁性粒子を担持材として用いた場合には、第1の粒子P1等の粒子を基材上により効率的に供給して、基材上の凹部により効率的に充填することができる。また、担持材として磁性材料を用いた場合には、プロセスの途中で担持材が劣化した場合にも、プロセスを止めずに担持材を補充したり入れ替えたりすることもできる。
【0097】
粒子を担持させた担持材を摺擦することによって凹部に粒子を充填する方法によれば、ブレードなどの規制部材による充填方法に比べて、分散させた粒子を凹部により多く供給することができ、安定的かつ緻密に充填を行うことができる。このメリットは、充填する
粒子の粒径が小さいほど、粒子が凝集しやすくなるために顕著になる。
【0098】
第1の充填装置24aによって凹凸パターン111aの凹部に第1の粒子P1が充填された第1の基材11aは、第1のベルト装置22aによって、転写部25aへと搬送される。
ここで、第2のベルト装置22bは図2に示すように、第1のベルト装置22aと同様に、駆動ローラ221b,222bと、加圧ローラ223bと、それらに懸架されたベルト状の搬送部材224bと、を有する。このとき、加圧ローラ223bは従動で回転している。転写部25aでは、第1のベルト装置22aの加圧ローラ223aと第2のベルト装置22bの加圧ローラ223bとが対向している。
【0099】
第2のベルト装置22bには、第2の格納容器21bより第2の基材11bが供給され、図2中の矢印方向に搬送される。供給された第2の基材11bは、第1の基材11aが転写部25aに搬送されるタイミングに合わせて搬送される。転写部25aでは、第1の基材11aに充填された第1の粒子P1が第2の基材11bへと転写される。
【0100】
すなわち、第1の基材11aは、第2の基材11bへと第1の粒子P1を転写するための転写用基材と言うこともできる。また、第1の基材11aの表面に形成されている凹凸パターンは、転写用凹凸パターンと言うこともできる。以下、この転写プロセスについて、図7を参照して説明する。
【0101】
図7は、転写部25aの構成を模式的に示す図である。転写部25aは、第1のベルト装置22aの加圧ローラ223a及び搬送部材224aと、第2のベルト装置22bの加圧ローラ223b及び搬送部材224bと、で構成されている。上述のように、加圧ローラ223a及び223bは従動で回転し、2つのローラは搬送部材224a及び224bを介して接触している。加圧ローラ223a及び223bの少なくとも一方は、表層に弾性層を有するソフトローラであり、2つのローラが接触した部分にはニップ部が形成されている。
【0102】
第1の充填装置24aにより第1の粒子P1が充填された第1の基材11aと第2の基材11bは、それぞれの搬送部材(224a及び224b)によって略等速で搬送され、加圧ローラ223a、223bが接触して形成されるニップ部に侵入する。ニップ部において、第1の基材11a上の第1の粒子P1は第2の基材11bと接触し、第2の基材11b上に転写される。
【0103】
第2の基材11bは、第1の粒子P1に対する付着力が、第1の基材11aの第1の粒子P1に対する付着力よりも大きな基材である。換言すれば、第1の粒子P1の、第2の基材11bに対する付着力は、第1の粒子P1の、第1の基材11aに対する付着力よりも大きい。これにより、ニップ部において、第1の基材11a上の第1の粒子P1は、第2の基材11b上へと転写される。
【0104】
第2の基材11bの材質は特に限定はされず、第1の基材11aと同様の材質の基材を用いることができる。なお、第2の基材11bも第1の基材11aと同様に、カット紙のように個別に切り離された基材であってもよいし、ロール紙のようにロール状に巻かれた連続した基材や、連続用紙のように交互に折りたたまれた連続した基材であってもよい。
【0105】
第2の基材11bは、接触した第1の粒子P1を転写するために、付着力を高めるための表面処理が施されていることが好ましい。例えば、第2の基材11bは、その表面に粘着剤が塗布された粘着部を有していることが好ましい。粘着部を備えた樹脂基材を準備する準備工程として、例えば第2の基材11bを準備する。第2の基材の厚みは特に制限さ
れないが、例えば1~10μmであることが好ましい。また、粘着部の厚みは特に制限されないが、例えば0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。
【0106】
さらに、第2の基材11bの裏面(第1の粒子P1が転写されていない面)も、表面と同じ粘着剤が塗布された粘着部を有し、さらにその表面を保護フィルム等で被覆されていることが好ましい。これにより、後述する積層する際に基材間のずれを防止できるとともに、基材間の活物質粒子や固体電解質粒子が上下面(積層方向)で挟まれ、強く固定されるその結果、電極基材の積層時、積層体の保管時、熱処理時や加圧時における粒子の移動が抑制され、所望の電極が成形できる。
【0107】
粘着剤としては、特に限定されず、上述の粘着剤などを用いることができる。また、粒子配置装置1は、搬送中の第2の基材11bの表面に粘着剤を塗布するディスペンサーやインクジェットヘッド、スピンコーターやバーコーターなどの塗布手段を有していてもよい。
粘着剤の種類や塗布量は、使用する凹凸パターンの形状や材質、第1の粒子P1及び第2の粒子P2の粒径や材質などによって適宜調整されるが、凹凸パターン111aに比べて粘着剤の粘着力が大きいことが好ましい。粘着力の比較は、ナノインデンターを用いる一般的な手法により測定可能である。
【0108】
ニップ部において、第1の粒子P1は第2の基材11bとの間に生じる付着力によって拘束される。ニップ部を過ぎて両搬送部材224a及び224bが離間すると、第1の基材11a上にあった第1の粒子P1は、第2の基材11bへと転写される。
【0109】
第1の粒子P1が転写された第2の基材11bは、搬送部材224bによって第2の充填装置24bの充填位置へと搬送される。
第2の充填装置24bは、充填容器242a中に、第1の粒子P1と担持材S1を有する充填剤241aの代わりに第2の粒子P2と担持材S2を有する充填剤241bが収容されている点以外は、第1の充填装置24aと同様の構成及び機能を有する。
【0110】
第2の充填装置24bは、第2の基材11b上の、第1の粒子P1が配置されていない部分に、第2の粒子P2を充填する。上述のように、転写部25aを通過した第2の基材11b上には第1の粒子P1が配置されているが、第1の粒子P1が配置されていない部分には粘着部が露出し、いわば凹部が形成されている。第2の充填装置24bは、この凹部(粘着部)に、第1の充填装置24aと同様のプロセスで、第2の粒子P2を充填する。
【0111】
このように、第2の基材11b上の第1の粒子P1が配置されていない空隙部に充填可能な第2の粒子P2が選択的に充填されることで、粒子による基材のカバー率が向上する。
第2の粒子P2は、第1の粒子P1間の空隙部の開口幅以下のメジアン径であることが好ましい。なお、ここでは担持材として磁性粒子を用いる場合について説明するが、第1の充填装置24aと同様に、ブラシ繊維や弾性材を担持材として用いてもよい。
【0112】
充填剤241bは、第2の粒子P2と、第2の粒子P2を担持する担持材S2と、を有する。充填剤241bは、複数の第2の粒子P2によって構成される粉体と、複数の担持材S2によって構成される粉体と、を含む複数の粉体の混合物である。担持材S2は、担持材S1と同様のものを用いても、異なっていても構わない。第2の粒子P2の粒径や材質や、上述した空隙部の開口幅に合わせて適宜選択される。
【0113】
図8は、第2の充填装置24bによる充填プロセスにおける第2の基材11bの表面近傍の拡大図である。第2の基材11b上には、第1の粒子P1が配置されて形成された凸部と、第1の粒子P1が配置されていない凹部と、を有する凹凸パターンが形成されている。第2の基材11b上の、第1の粒子P1が配置されていない凹部には、粘着部13bが露出している。第2の充填装置24bによる充填プロセスにおいては、第2の基材11bの表面上の粘着部13bに、第2の粒子P2を配置する。第2の充填装置24bによる充填プロセス後、第2の基材11bの粘着部の表面には、第1の粒子P1及び第2の粒子P2が隣接して配置されている。すなわち、第2の基材11b上の、第1の粒子P1が配置されていない部分に第2の粒子P2を配置することで、第1の粒子P1と第2の粒子P2を隣接して配置することができる。また、必ずしもすべての第1の粒子P1の隣に第2の粒子P2が配置されていなくてもよく、第1の粒子P1同士、又は第2の粒子P2同士が隣接していてもよい。
【0114】
充填剤241bは、この凹凸パターンに接触し、第2の基材11bの表面に対して垂直な方向への磁力(図中実線Fm)を受けながら、第2の基材11bに対して0ではない相対速度を有しつつ、第2の基材11bと共に搬送される。これにより、担持材S2に担持された第2の粒子P2は第2の基材11bの表面の凹凸パターンに摺擦されながら搬送される。
【0115】
充填剤241b中の第2の粒子P2の質量%(充填剤241b全体の質量に対する、第2の粒子P2の質量の割合)は、磁性粒子(担持材)の表面積に対する、担持される第2の粒子P2による被覆率S2を用いて、下記式(2)で表される。被覆率S2は、磁性粒子(担持材)の表面積に対する、第2の粒子P2の断面積の合計が占める割合を示す。
充填剤241b中の第2の粒子P2の質量%=(400×ρP2×rP2×S2)/(100×ρ×r+4×ρP2×rP2×S2) 式(2)
(式(2)中の記載はそれぞれ以下を示す。ρP2:第2の粒子P2の真密度、rP2:第2の粒子P2の粒径(r50)、ρ:磁性粒子の真密度、r:磁性粒子の粒径(r50)、S2:磁性粒子の表面積に対する、第2の粒子P2による被覆率)
【0116】
充填剤241b中の第2の粒子P2の質量%は、特に制限されないが、好ましくは5~40質量%、10~30質量%の範囲が挙げられる。
また、上記式(2)中の被覆率S2が30~200面積%になるようで調整されることが好ましく、50~100面積%になるように調整されることがより好ましい。
第2の粒子P2及び磁性粒子(担持材)の粒径(r50)は、レーザ回析散乱式粒子径分布測定により求めることができる。また、第2の粒子P2及び磁性粒子(担持材)の真密度は、ピクノメーター法で求めることができる。
【0117】
このとき、凹凸パターンの凹部の開口幅を、凹部に第2の粒子P2は接触できるが、担持材S2は接触できないサイズとしておく。すなわち、第2の基材11b上の凹凸パターンの凹部の開口径は、第2の粒子P2の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(メジアン径)よりも大きいことが好ましい。また、凹部の開口径は、担持材S2の平均サイズよりも小さいことが好ましい。ここで、凹凸パターンの凹部の開口径は、凹部の短手方向の開口径であることが好ましく、凹部の短手方向の最大開口径であることがより好ましい。これにより、充填剤241bの中で第2の粒子P2のみが選択的に凹部に接触することができる。
【0118】
凹部に接触した第2の粒子P2は、凹凸パターンの構造による物理的な拘束力や、第2の基材11b及び凹凸パターンを構成する構造材料(ここでは第1の粒子P1)との静電的付着力や粘着力により強く拘束され、担持材S2から脱離する。なお、図8は説明上、担持材S2の表面に第2の粒子P2が担持されているが、充填剤241bの攪拌時、供給
時や搬送時において、担持材S2に担持されない第2の粒子P2が存在していても構わない。
【0119】
図9Aは、転写部25aによって第1の粒子P1が転写された後の第2の基材11bを模式的に示す図であり、第2の基材11bを基材面に垂直な方向から見た図である。図9Aに示すように、第2の基材11b上には、正六角形状に第1の粒子P1が配置された配置領域が整列したハニカムパターンが形成されている。
【0120】
この正六角形の領域内には第1の粒子P1が緻密に配置されており、それ以外の部分(図9Aの白地部分)には第1の粒子P1は配置されておらず、第2の基材11bの表面の粘着部が露出している。かかる第1の粒子P1が保持される正六角形の領域は、第一のパターン部と換言される。また、第2の粒子P2が保持され、第一のパターン部の間隙に相当するハニカムパターンの領域は第二のパターン部であると換言される。
【0121】
図9Bは、第2の充填装置24bによって第2の粒子P2を充填した後の第2の基材11bを模式的に示す図であり、第2の基材11bを基材面に垂直な方向から見た図である。図9Bに示すように、第1の粒子P1が配置されず粘着部が露出していた領域には、第2の粒子P2が緻密に配置されている。また、第1の粒子P1が配置されている領域と第2の粒子P2が配置されている領域との間の境界部においても、第1の粒子P1と第2の粒子P2とが緻密に配置されている。なお、第1の粒子P1間の僅かな隙間にも同様の方法で粒子を充填することができる。この場合、第1の粒子P1間の隙間に相当する粒径の粒子を含む充填剤を用いて、上述の同様の方法で充填することが可能であり、さらに緻密な薄膜を形成することができる。
【0122】
[粒子配置装置2]
図10は、粒子配置装置2の構成を模式的に示す図である。粒子配置装置2は、基材11に粒子層12を形成する装置であって、基材11を格納供給する格納容器21と、基材11を搬送するベルト装置22と、を有する。また、粒子配置装置2は、基材11に粘着部を設けるための液体を配置する液体付与装置201を有してもよい。その際、基材11に粒子を密に配置するためには、基材11にパターン状に液体を配置することが好ましい。
【0123】
液体付与装置201としては、インクジェット方式で液体を吐出する装置や液体を塗布する装置を用いることができるが、フレキソ版などの有版方法を用いることもできる。なかでも、液体付与装置としては、インクジェット方式で液体を吐出する装置を用いることが好ましい。
インクジェット方式で液体を吐出する装置は、例えば、サーマルタイプ、ピエゾタイプ、静電タイプ、コンティニュアスタイプなど、さまざまな吐出方法の装置を用いることができる。
【0124】
液体付与装置201が付与する液体としては、第1の粒子P1を付着できる材料を含むものであれば、水性であっても油性であってもよい。第1の粒子P1と反応しない材料を選択するなど適宜選択される。また、液体付与装置201は、複数種の液体によってパターンL1を形成してもよい。例えば、液体付与装置201は、基材11で反応させて粘着性を高めるような2種の液体を付与してもよい。第1の粒子P1を付着できる材料としては、アクリル樹脂などの樹脂が挙げられる。
【0125】
粉末付与装置202は、液体がパターン状に配置された基材11に、第1の粒子P1を含む粉末を付与する。これにより、基材11上の材料によって第1の粒子P1が固定され、パターンL1に対応したパターン状に第1の粒子P1が固定される。
【0126】
粉末付与装置202による粉末の付与手段は、粉末を基材11に向けて吹き付ける手段や、振りかける手段を用いることができる。粉末付与装置202は、基材11に固定されなかった第1の粒子P1を、振動、遠心や送風、吸引などの手段で除去する手段をさらに備えていてもよい。
【0127】
粒子配置装置2は、液体付与装置201によって付与された液体の少なくとも一部を蒸発させて、基材11上の材料の量やパターンL1の厚さなどを制御する乾燥装置をさらに有していてもよい。この乾燥装置は、液体付与装置201の下流側であって、粉末付与装置202の上流側に設ければよい。乾燥後の基材上の材料は、液体、固形分を含む液体又は固形分のみでも構わない。
【0128】
基材11に第1の粒子P1を固定配置した後に、液体付与装置203によって、少なくとも第1の粒子P1が配置されなかった領域に粘着部を設けるための液体を配置する。液体付与装置203は、液体付与装置201と同様の機能を有す。液体付与装置203によって、液体を付与された基材11は、第2の充填装置24を用いて、第2の粒子P2が配置される。その結果、基材11上に緻密な粒子層12が成形される。
【0129】
また、粒子配置装置2は、粒子配置装置1と同様に、転写部を有していても構わない。この場合、粉末付与装置202の下流側に転写部を設ける。基材11から粘着部を有する別の基材に第1の粒子P1を転写する。第1の粒子P1が転写された基材において、第1の粒子P1が配置されず粘着部が露出している領域に、第2の充填装置24を用いて、第2の粒子P2を配置させることができる。これにより、樹脂基材の粘着部上に緻密に第1の粒子P1及び第2の粒子P2を配置させることが可能となる。
【0130】
上述の粒子配置装置1又は粒子配置装置2により、図1の第1工程(図1中、S101)で樹脂基材の粘着部に第1の粒子P1を配置し、図1の第2工程(図1中、S102)で同樹脂基材上の粘着部に第2の粒子P2を配置する。
【0131】
(第3工程及び第4工程)
第3工程は、樹脂基材上の粘着部の表面に配置された第1の粒子P1及び第2の粒子P2を粘着部に沈降させる粒子沈降工程である。粒子沈降工程により、沈降させた第1の粒子P1及び第2の粒子P2の間に新たに粘着部が露出する。
第4工程は、上記の沈降させた第1の粒子P1及び第2の粒子P2の間の粘着部に、第3の粒子P3を配置して電極基材を得る工程である。以下、工程の順に沿って説明する。
【0132】
第3の粒子P3は固体電解質粒子であり、電極基材において第二固体電解質粒子に相当しうる粒子である。固体電解質粒子としては、上述の材料を用いることができる。
また、第3の粒子P3の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50)は、第2の粒子P2のr50よりも小さい。
【0133】
第3の粒子P3の粒径は、第2の粒子P2よりも小さければ特に限定されない。
例えば、第3の粒子P3は、一次粒子の体積基準の粒度分布における累積10%粒径(r10)が、0.10~1.5μmであることが好ましく、0.20~1.0μmであることがより好ましい。また、体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50)が、0.30~3.0μmであることが好ましく、0.50~1.5μmであることがより好ましい。さらに、体積基準の粒度分布における累積90%粒径(r90)が、0.5~20.0μmであることが好ましく、1.0~15.0μmであることがより好ましい。
【0134】
例えば、第2の粒子P2の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r
50(P2))に対する、第3の粒子P3の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50(P3))の比{(r50(P3))/(r50(P2))}の値が、0.01~1.0であることが好ましく、0.01~0.5であることがより好ましい。
【0135】
第1の粒子P1の一次粒子の粒径と、第3の粒子P3の一次粒子の粒径の比は、特に限定されない。
例えば、第1の粒子P1の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50(P1))に対する、第3の粒子P3の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50(P3))の比{(r50(P3))/(r50(P1))}の値が、0.01~1.0であることが好ましく、0.01~0.5であることがより好ましい。
【0136】
上述の通り、第1の粒子P1は活物質粒子である。第2の粒子P2は、製造後の電極基材における第一固体電解質粒子に相当しうる粒子である。第3の粒子P3は、製造後の電極基材における第二固体電解質粒子に相当しうる粒子である。
すなわち、電極基材の製造方法において、第3工程は、粘着部の表面に配置された第一固体電解質粒子及び活物質粒子を粘着部に沈降させる粒子沈降工程と換言することもできる。また、第4工程は、沈降させた第一電解質粒子及び活物質粒子の間の粘着部に、第二固体電解質粒子を配置する工程と換言することもできる。
【0137】
図11は第3、4工程の各装置を模式的に示す図である。粒子配置装置1又は粒子配置装置2により、粒子層12を形成した基材11は、図11のベルト装置に移される。
ベルト装置には、上流側に粒子沈降装置25、その下流に第3の粒子P3を配置するための第3の充填装置24が設けられている。粒子沈降装置25は、加圧ローラ223c、223dと、を有し、加圧ローラ223dは従動で回転している。加圧ローラ223c、223dの少なくとも一方は、表層に弾性層を有するソフトローラを用いることが好ましく、例えば、ステンレス製の芯金の表面にシリコーンゴムやフッ素ゴムの弾性層を設けたソフトローラを用いることができる。また、加圧ローラ223c、223dの少なくとも一方の内部には、不図示の加熱ヒーターが内蔵されていてもよい。
【0138】
基材11は、ベルト装置により加圧ローラ223c、223d間の加圧部に搬送される。基材11が加圧ローラ223c、223dにより加圧されると、基材上の粘着部の表面に配置された第1の粒子P1及び第2の粒子P2は基材上の粘着部に沈降する。このとき、上述した加熱ヒーターにより、基材上の粘着部に粒子が沈降しやすくしても構わない。また、基材上の粘着部を加熱するために、粒子沈降装置25の上流部に加熱源を設けても構わない。
【0139】
加圧ローラ223cは、基材上の粒子層12と接触するため、粒子の付着を抑制するために、表面をフッ素等の離型性の良い材料でコーティングするのが好ましい。また、加圧ローラ223cに付着した粒子を除去するクリーニング機構を設けても構わない。粒子層12を保護材(不図示)で被覆した状態で加圧するのがさらに好ましい。
このとき、使用する保護材は、離型性の良い材料が好ましく、樹脂であればフッ素シート、金属であればニクロム箔などが好ましい。保護材を用いる場合は、粒子沈降装置25の下流、且つ第3の充填装置24の上流側に保護材を除去する除去機構(不図示)を設ける。
【0140】
粒子沈降装置25は、他に公知の加圧装置でも構わない。例えば、等方圧加圧装置(CIP/HIP)、一軸加圧装置、さらには重しやマグネットを利用して加圧しても構わない。また、粒子の比重が大きい場合、粒子の自重で沈降させても構わない。この場合、オ
ーブン等の加温下に粒子を配置した基材を保管することで、粒子の沈降を促進させるのが好ましい。
【0141】
粒子を配置した基材を加温下に保管する場合、温度や保管時間は、粒子や粘着材の物性(形状、粒径や比重、粘着性や粘弾性)に合わせて適宜調整される。温度や保管時間が足りないと、粒子の沈降が不十分で、粘着部が粒子間の隙間から表面に露出しない。一方、温度や保管時間が過剰な場合、粒子の沈降と共に、面方向にも粒子が移動し、粒子の緻密性が大きく低下してしまう。温度は、10~90℃が好ましく、40~80℃がより好ましい。保管時間は、1~24時間が好ましく、3~15時間がより好ましい。
【0142】
公知の加圧装置以外に、磁性粒子による摺擦により加圧しても構わない。つまり、粒子沈降装置25は、第4の充填装置24が担う。第4の充填装置には、充填剤の代わりに、磁性粒子のみが収容されている。第4の充填装置により、基材11上を磁性粒子が摺擦することにより、基材上の粒子P1、P2は基材上の粘着部に沈降する。
【0143】
また、このとき磁性粒子による基材上の第1の粒子P1及び第2の粒子P2の再配置の効果もある。再配置とは、基材上の粘着部に固定されていない余剰な粒子を、粒子間の隙間に配置又は除去したり、粘着部に不安定に固定された粒子を移動や回転させたりすることで、第1の粒子P1及び第2の粒子P2がより安定に固定され、基材上の粒子の緻密化が進行することを指す。すなわち、再配置により、樹脂基材上の粒子層をより緻密なものとすることができる。
【0144】
図12A及びBは、粒子沈降装置25による基材11上の粒子の沈降を説明するための、基材11断面の模式図である。図12Aは、基材11上の粘着部13に第1の粒子P1、第2の粒子P2を沈降させる第3工程前、図12Bは、第3工程後を示す。なお、図12A及びBにおいては、説明上、第1の粒子P1及び第2の粒子P2は球状、且つ同一の粒径で記載している。
【0145】
図12Aのように、第3工程前は、粒子の沈降は限定されている。一方、第3工程後は、粒子の沈降が大きく進み、粒子の沈降により押し出された粘着部13は粒子間の隙間から表面に露出する。例えば、粒子沈降工程により、粘着部を表面側に露出させる。図13は、第3工程後の基材11の上方(粒子層側、すなわち第1の粒子P1及び第2の粒子P2が配置されている側)からの模式図である。第3工程後の基材11の断面は、図12Bに示されている。第1の粒子P1及び第2の粒子P2が粘着部13に沈降したことで、粘着部13が粒子間の隙間から粒子層の上方表面に露出し、粒子間には底面に粘着部を有す微小な凹部(例えば図13のA)が作られる。
【0146】
第3工程後の基材11(図12B及び図13)は、第4工程として、ベルト装置により第3の粒子P3を配置するための第3の充填装置24の充填位置に搬送される。第3の充填装置24は、第1、2の充填装置と同様に、磁性粒子、ブラシ繊維や弾性材を担持材として用いて充填する方式の充填装置である。以下、担持材として磁性粒子を用いた構成で説明する。
【0147】
第3の充填装置に収容される充填剤241cは、第3の粒子P3と、第3の粒子P3を担持する担持材S3とを含む。ここで、第3の粒子P3は第二固体電解質粒子に相当しうる。第3の粒子P3(第二固体電解質粒子)は、第2の粒子P2(第一固体電解質粒子に相当しうる)よりも一次粒子の平均円相当径が小さい。このため、充填剤の摺擦により、上述の粘着部を有す微小な凹部に第3の粒子P3が選択的に充填される。このとき、担持材S3は、上述の粘着部を有す微小な凹部の開口幅に対して十分大きいため、充填されない。担持材S3は、上述の担持材S1及びS2と同様のものを用いても、異なっていても
構わない。
【0148】
充填剤241c中の第3の粒子P3の質量%(充填剤241c全体の質量に対する、第3の粒子P3の質量の割合)は、磁性粒子(担持材)の表面積に対して、担持される粒子第3のP3による被覆率S3を用いて、下記式(3)で表される。被覆率S3は、磁性粒子(担持材)の表面積に対する、第3の粒子P3の断面積の合計が占める割合を示す。
充填剤241c中の第3の粒子P3の質量%=(400×ρP3×rP3×S3)/(100×ρ×r+4×ρP3×rP3×S3) 式(3)
(式(3)中の記載はそれぞれ以下を示す。ρP2:粒子P3の真密度、rP2:粒子P3の粒径(r50)、ρ:磁性粒子の真密度、r:磁性粒子の粒径(r50)、S3:磁性粒子の表面積に対する、第3の粒子P3による被覆率)
【0149】
充填剤241c中の第3の粒子P3の質量%は、特に制限されないが、好ましくは0.1~20質量%、1~10質量%の範囲が挙げられる。
また、上記式(3)の被覆率S3が30~200面積%になるように調整されることが好ましく、50~100面積%になるように調整されることがより好ましい。
第3の粒子P3及び磁性粒子(担持材)の粒径(r50)は、レーザ回析散乱式粒子径分布測定により求めることができる。また、第3の粒子P3及び磁性粒子(担持材)の真密度は、ピクノメーター法で求めることができる。
【0150】
図14は、第4工程後の基材11の上方、すなわち粒子層が形成されている領域を基材鉛直方向から観察した場合の模式図である。上述した微小な凹部に第3の粒子P3が配置される。なお、説明上、第3の粒子P3は球状、且つ同一の粒径で記載しているが、凹部の開口に合わせて、複数の不定形の粒子第3の粒子P3を配置することができる。
【0151】
第3の充填装置24として、ベルト装置を用いない簡易な装置を用いることもできる。図15は装置の一例である。第3の充填装置24は、充填容器242、撹拌スクリュー部材243、磁性部材247、磁石248、規制部材250を有する。
【0152】
図16は、充填装置の動作を説明する模式図である。撹拌スクリュー部材243により十分攪拌された充填剤241は、ホームポジションより移動した磁性部材247(図の矢印a)および規制部材250の規制により、適量が供給される。供給された充填剤241は、磁性部材247の往復移動(図16の矢印b)に伴い、基材11上で摺擦される。
所望の回数摺擦後、磁性部材247は、基材上の充填剤241に作用する磁気力が十分弱まる遠方のホームポジションまで移動する(図16の矢印c)。基材上の充填剤241は、重力で下方に落下し、不図示の回収容器に回収される。このとき、エアブローや振動を利用するとさらに好ましい。また、図のように傾斜面で摺擦せずに、平坦面で摺擦して、充填剤241を回収後に、再度磁性部材247の往復移動により、基材上に残留した充填剤241を回収しても構わない。このとき、各回収時にエアブローや振動を利用するとさらに好ましい。なお、簡易な同装置により、第1の粒子P1、第2の粒子P2を同様に配置することもできる。
【0153】
電極基材において、活物質粒子及び固体電解質粒子による樹脂基材表面のカバー率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
本開示において、樹脂基材表面のカバー率とは、樹脂基材表面の全体の面積に対する、活物質粒子及び固体電解質粒子により被覆された面積の割合(面積%)を示す。活物質粒子及び固体電解質粒子による基材表面のカバー率は、粒子層が形成されている領域を基材鉛直方向から光学顕微鏡により撮影し、活物質粒子及び固体電解質粒子により被覆されている領域の面積の割合を画像処理ソフトによって算出することで測定できる。測定方法の
詳細は後述する。
【0154】
カバー率の上限は特に限定されないが、99%以下であることが好ましく、98%以下であることがより好ましい。例えば、活物質粒子及び固体電解質粒子による樹脂基材表面のカバー率は、好ましくは60~99%、70~99%、80~99%。60~98%、70~98%、80~98%の範囲である。
カバー率が上記範囲であることで、基材上に緻密な粒子層が形成され、電極内の粒子の緻密性を向上できる。その結果、イオン伝導性を向上できる。
【0155】
<電極の製造方法>
以下、図面を参照して、電極の製造方法の一例を詳細に説明する。以下、正極活物質粒子を用いた正極を例に挙げて説明するが、正極、負極問わず、電極の製造方法として、以下に記載の製造方法を用いることができる。
【0156】
電極の製造方法は、下記の3つの工程(第1工程、第2工程、及び第3工程)を有する。
(1)電極基材を複数積層し、積層体を成形する第1工程(図17中、S201)
(2)前記積層体から樹脂基材を除去し、立体物を得る第2工程(図17中、S202)(3)前記立体物を加圧し、電極を得る第3工程(図17中、S203)
【0157】
すなわち、電極は、電極基材を複数積層し、積層体を成形する工程と、該積層体から樹脂基材を除去し、立体物を得る工程と、該立体物を加圧する工程と、を含む製造方法により製造された電極である。例えば、上述の電極基材の焼結体を電極として用いることができる。
以下、電極の製造方法の各工程について詳細を説明する。
【0158】
(第1工程)
第1工程は、電極基材を複数積層し、積層体を成形する工程である。積層数は、特に限定されず、所望の電極容量に応じて決定される。例えば、上述の電極基材を3枚以上積層することなどが好ましい。また、積層する電極基材は同一であってよく、異なる電極基材を積層してもよい。
【0159】
すなわち、電極基材は、電極基材を複数積層した電極基材積層体として用いることもできる。上述の通り、電極基材は、樹脂基材と樹脂基材上に形成された粒子層とを有する。電極基材を積層する際は、電極基材積層体が樹脂基材と粒子層とを交互に有するように積層することが好ましい。すなわち、電極基材積層体は、電極基材積層体の断面において、樹脂基材と粒子層とが交互に存在する構成とすることが好ましい。例えば、電極基材積層体の焼結体を電極として用いることができる。
また、積層体は、基盤としての電極集電体上に成形されることが好ましい。すなわち、電極は基盤を有することが好ましい。電極集電体としては、Al箔、SUS箔、Cu箔、Cu-Ni箔や白金、金箔などの公知の集電体を用いることができる。基盤として、電解質を用いても構わない。
【0160】
このとき、電解質は、別途作製された固体電解質シートや、同様の基材上に固体電解質粒子のみから成る電解質基材でも構わない。すなわち、電解質として固体電解質を用いることができる。また、前記固体電解質シートや電解質基材は、正極基材の積層面と逆側に負極や負極基材が形成されていても構わない。
【0161】
図18は、積層体成形装置の構成を模式的に示す図である。積層体成形装置は、粒子層12が形成された基材11を搬送する搬送装置31と、不図示のアクチュエータによって
垂直方向に早退移動可能なステージ32と、を有する。
【0162】
搬送装置31は、粒子配置装置を用いて形成された粒子層12を有する基材11を受け取って、ステージ32へと搬送する。基材11を搬送可能な搬送装置31として、例えば、ベルトコンベア、ローラ、ロボットアームなどが挙げられる。
搬送装置31によって基材11がステージ32に搬送されると、ステージ32は基材11及び粒子層12の厚さ分、垂直方向に移動する。搬送装置31による搬送とステージ32の移動とを繰り返すことで、粒子層12がそれぞれ形成された複数の基材11が積層され、積層体15が成形される。
【0163】
このとき、粒子層12が形成された基材11の裏側の面に粘着部を有していることが好ましい。この粘着部により、基材同士が付着し、積層体の強度が上がり、第1工程以降も基材間のずれを抑制できる。さらに基材間の粒子層12は、上下の粘着部により挟まれることにより、工程時や積層体の保管時にも配置のずれを抑制できる。なお、前記粘着部は、積層前に不図示の塗工装置により塗工されてもよいし、予め塗工された基材を用い、積層前に塗工面に被覆された保護フィルムを剥離して積層してもよい。
【0164】
なお、積層体15が成形される直前に、基材を除電する除電工程を有することが好ましい。粒子配置装置を用いて形成された粒子層12や基材11は、帯電されやすく、積層する際に基材と基材との間に静電的な反発力が生じる。そのため、第1工程で積層する際に、基材が剥がれたり、基材と基材との間に空隙ができやすくなったりする。除電工程では、静電気除電ブロアー等により非接触で除電することが好ましい。
また、積層体15が成形された後に、基材間の空隙を軽減するために、積層体を脱気する脱気工程を有することが好ましい。脱気工程では、真空包装機等により脱気することが好ましい。
【0165】
(第2工程)
第2工程は、積層体を焼結して、積層体から樹脂基材を除去する工程である。
図19は、焼結処理装置の構成を模式的に示す図である。焼結処理装置は、積層体15を搬送する搬送装置41と、積層体15を加熱する加熱炉42と、を有する。
【0166】
搬送装置41は、積層体形成装置から積層体15を受け取って加熱炉42へと搬送する。搬送装置41は、搬送装置31と同様に、積層体15を搬送可能な装置であることが好ましい。積層体15を搬送可能な装置として、例えば、ベルトコンベア、ローラ、ロボットアームなどが挙げられる。
【0167】
加熱炉42は、積層体15を加熱する炉である。加熱炉42は、加熱手段421と、加圧手段422と、雰囲気調整手段423と、を有する。加熱炉42としては、セラミックなどの焼成に用いられる焼成炉を用いることができる。加圧手段422は、加熱炉42において加熱されている積層体15を加圧したり、加熱前後の積層体15を加圧したりする。
【0168】
なお、加圧手段422は、積層体15を加圧する加圧部が気体を通過させやすい多孔質体で形成されていることが好ましい。雰囲気調整手段423は、雰囲気ガス供給手段423a及び減圧手段423bを有し、加熱炉42の処理空間内の雰囲気ガスの調整を行う。
雰囲気ガスとしては、酸化雰囲気(O)、不活性雰囲気(Ar、N等)や還元雰囲気(Ar-H)を用いることができるが、大気下で焼結を行ってもよい。
【0169】
積層体を焼結処理する際に、積層体15中の基材11の熱分解温度以上の温度で加熱することが好ましく、積層体15中の各粒子層の熱分解温度未満の温度で加熱することが好
ましい。積層体を加熱する温度としては、200℃以上1000℃以下であることが好ましく、400℃以上800℃以下であることがさらに好ましい。焼結温度にて30分以上維持することが好ましく、1時間以上維持することがより好ましい。
熱分解温度とは、焼結処理装置における加熱の際の雰囲気下で温度を徐々に上げていった場合に、その材料の重量減少が始まる温度のことである。したがって、基材11の熱分解温度以上の温度で積層体を加熱することで、積層体中の基材11を分解してその重量を減らすことができ、積層体から樹脂基材を除去することができる。
【0170】
加熱温度は、基材11の熱分解温度以上の温度であることが好ましいが、熱分解温度よりもさらに高い温度で加熱することが好ましい。具体的には、焼結処理装置における加熱の際の雰囲気(典型的には空気)下で室温(25℃)から5℃/分の割合で昇温させて熱重量分析を行った場合に、初期質量の70質量%となるときの温度以上の温度で加熱することが好ましい。具体的には、例えば385℃以上であることが好ましい。
【0171】
また、同様に熱重量分析を行ったときに、初期質量の50質量%となるときの温度以上の温度で加熱することがより好ましく、初期質量量の20質量%となるときの温度以上の温度で加熱することがさらに好ましい。具体的には、例えば400℃以上であることが好ましく、450℃以上であることがより好ましい。これにより、樹脂基材の除去に要する時間を短縮したり、樹脂基材の除去率を高めたりすることができる。
【0172】
このように、焼結処理装置が加熱により基材11を除去する場合には、活物質粒子や固体電解質粒子が、基材11よりも高い熱分解温度を有することが好ましい。一般に、無機材料は有機材料よりも熱分解温度が高い傾向にあるため、活物質粒子や固体電解質粒子は無機材料であり、基材11の材質は樹脂などの有機材料であることが好ましい。また、焼結処理装置が加熱により基材11を除去する場合には、活物質粒子は、基材11の熱分解温度より高い軟化点温度を有することが好ましい。
【0173】
焼結処理装置は、加熱により、積層体15中の樹脂基材の90質量%以上を消失させることが好ましく、95質量%以上を消失させることがより好ましく、97質量%以上を消失させることがさらに好ましい。その際、樹脂基材は燃焼又はガス化して気体として外部に放出されることが好ましい。このとき、熱分解によってガス化した樹脂基材が気体として積層体の外部に放出される際に、樹脂基材上に形成された粒子層を押し上げて形状を乱すことがある。
このため、樹脂基材の厚みを薄くして、粒子層への影響を軽減することが好ましい。
【0174】
具体的には、樹脂基材の厚み(μm)は、樹脂基材上の粒子層の厚みの10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましい。ここで、粒子層の厚みとは、電極基材において、樹脂基材面を(x、y)、樹脂基材の積層方向を(z)としたとき、樹脂基材上に配置された各粒子が存在する領域(x、y、z)における、zの最大値と最小値の差の値を示す。
樹脂基材の厚みは、1μm以上1mm以下であることが好ましい。粒子層の厚みは、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0175】
樹脂基材上の粒子層の厚みは、BIB-SEMにより、積層体15の断面をSEM観察し、樹脂基材面をx、樹脂基材の積層方向をzとしたとき、粒子の存在領域(x、z)を画像処理ソフトにより求め、zの最大値と最小値の差を求めて、算出される。ここで、BIB-SEMの撮影条件、必要な画像領域や画像処理方法については、上述の条件と同様である。
【0176】
樹脂基材の厚みは、活物質粒子の粒径と同様にBIB-SEMから求めてもよく、デジ
タル厚みゲージ等を用いて測定してもよい。また、BIB-SEMを用いたSEM観察において、活物質粒子、固体電解質粒子、基材、粘着部をそれぞれ特定する方法としては、EDSにより元素組成分析する方法などが挙げられる。
【0177】
焼結処理装置は、減圧手段423bによって、放出された気体を加熱炉42の外部に排気することが好ましい。雰囲気ガス供給手段423aなどによって、加熱炉42の内部を酸化雰囲気、すなわち、空気などの酸素ガスを含む雰囲気としておくことで、樹脂基材を燃焼させて除去することができる。一方、用いる活物質粒子や固体電解質粒子によっては、酸化雰囲気での焼結により分解や組成変化を引き起こす場合がある。このような場合には、不活性雰囲気(Ar、N等)や還元雰囲気(Ar-H)で焼結することが好ましい。
【0178】
上述の通り、積層体15から樹脂基材が熱分解によってガス化して気体として放出されると、積層体15中の各粒子層が押し上げられて形状が変化してしまうことがある。そのため、加熱炉42において加熱を行う際には、加熱の前又は加熱中に、加圧手段422によって積層体15を加圧しても構わない。
【0179】
図20Aは、第1工程後の積層体断面のBIB-SEM画像である。基盤14上に、粒子層12が形成された第2の基材11bが6枚積層された積層体15である。図20Bは、第2工程後の立体物16(正極)のBIB-SEM画像である。積層体15から樹脂基材が除去され、6層の粒子層からなる立体物16である。図20Cは、立体物16の上方のSEM画像である。第1工程で第2の基材11b上に周期的に配置した第1の粒子P1、第2の粒子P2が、第2工程後も維持されている。
【0180】
(第3工程)
第3工程は、樹脂基材を除去した立体物16を加圧する工程である。
加圧する方法として、加熱後の冷却又は放熱中に、加圧手段422によって立体物16を加圧することができる。また、焼結処理装置により樹脂基材を除去した後、別途加圧装置で加圧してもよい。具体的な加圧方法は、真空脱気、等方圧加圧や、一般的な油圧プレス機やローラ加圧機により行うことが好ましい。なかでも、真空脱気と等方圧加圧を組み合わせて加圧することが好ましい。
【0181】
加圧は、5MPaから500MPaで行うことが好ましい。これにより、樹脂基材が除去された立体物内の空隙が埋まり、立体物の緻密性や強度が向上する。第3工程後に、立体物を再度焼結処理装置で加熱して、焼結しても構わない。また、導電助剤やバインダー樹脂等が溶剤に分散した溶液を積層体に染み込ませて、積層体内に各材を分散させても構わない。
【0182】
上述の工程を含む製造方法により、電極を製造することができる。
電極は、基盤と、活物質粒子及び固体電解質粒子を含む粒子層を有することが好ましい。また、粒子層中に空隙が存在することが好ましい。
このような構成とすることで、電極内におけるイオン伝導性と、活物質粒子の体積変動を緩和することができる。
【0183】
図21は、積層造形システムの全体構成を模式的に示す図である。積層造形システム100は、制御ユニットU1と、粒子層形成ユニットU2と、積層ユニットU3と、除去ユニットU4と、後処理ユニットU5と、を有する。
【0184】
制御ユニットU1は、積層造形システム100の各部の制御などを担う。
粒子層形成ユニットU2では、上述の粒子配置装置(図2)を用いて基材11上に粒子
層12を形成する。
積層ユニットU3は、上述の積層体成形装置(図18)を用いて、粒子層形成ユニットU2でそれぞれ粒子層12が形成された複数の基材11を積層し、複数の粒子層12と複数の基材11とを含む積層体15を形成する。
除去ユニットU4は、上述の焼結処理装置(図19)を用いて、積層ユニットU3で形成された積層体15から、基材11を除去して立体物16(電極)を形成する。
後処理ユニットU5は、除去ユニットU4で形成された立体物16の後処理を行う。
なお、図21に示したユニット構成はあくまでも一例であり、他の構成を採用しても構わない。以下、各ユニットの構成と動作について説明する。
【0185】
[制御ユニット]
制御ユニットU1は、積層造形システム100の各部、具体的には、粒子層形成ユニットU2、積層ユニットU3、除去ユニットU4、及び、後処理ユニットU5の制御などを担う。
制御ユニットU1は、外部装置(例えばパソコンなど)から積層造形システム100によって形成する立体物の3次元形状データの入力を受け付ける、3次元形状データ入力部を備えていてもよい。3次元形状データとしては、3次元CAD、3次元モデラー、3次元スキャナなどで作成・出力されたデータを用いることができる。そのファイル形式は問わないが、例えば、STL(StereoLithography)ファイル形式を好ましく用いることができる。
【0186】
制御ユニットU1は、3次元形状データを所定のピッチでスライスして各層の断面形状を計算し、その断面形状を基に粒子層形成ユニットU2で像形成に用いる画像データ(「スライスデータ」と称する)を生成する、スライスデータ計算部を備えていてもよい。
【0187】
詳しくは後述するが、本実施形態の粒子層形成ユニットU2は複数種の材料を用い、それぞれの材料がパターニングされた材料層を形成可能である。そのため、スライスデータとしてはそれぞれの材料の像に対応するデータが生成されてもよい。スライスデータのファイル形式としては、例えば、多値の画像データ(各値が材料の種類を表す)やマルチプレーンの画像データ(各プレーンが材料の種類に対応する)を用いることができる。
【0188】
また、図示しないが、制御ユニットU1は、操作部、表示部、記憶部も備える。操作部は、ユーザからの指示を受け付ける機能である。例えば、電源のオン/オフ、装置の各種設定、動作指示などの入力が可能である。表示部は、ユーザへの情報提示を行う機能である。例えば、各種設定画面、エラーメッセージ、動作状況などの提示が可能である。記憶部は、3次元形状データ、スライスデータ、各種設定値などを記憶する機能である。
【0189】
制御ユニットU1は、ハードウエア的には、CPU(中央演算処理装置)、メモリ、補助記憶装置(ハードディスク、フラッシュメモリなど)、入力デバイス、表示デバイス、各種I/Fを具備したコンピュータにより構成することができる。上述した各機能は、補助記憶装置などに格納されたプログラムをCPUが読み込んで実行し、必要なデバイスを制御することで実現されるものである。ただし、上述した機能のうちの一部又は全部をASICやFPGAなどの回路で構成したり、あるいは、クラウドコンピューティングやグリッドコンピューティングなどの技術を利用して他のコンピュータに実行させたりしてもよい。
【0190】
[粒子層形成ユニット]
粒子層形成ユニットU2は、基材11上に粒子層12を形成するユニットである。粒子層形成ユニットU2としては、上述の粒子配置装置(図2)を用いることができる。
積層造形システム100は、粒子層形成ユニットU2を複数有していてもよい。これに
より、基材11上への粒子層12の形成を同時並行的に行うことができ、積層体、及び立体物の形成のスループットをさらに向上させることができる。また、立体物を構成する材料の種類が多数である場合などには、材料種ごと、あるいは材料種のグループごとに粒子層形成ユニットU2を設けることで、粒子層形成ユニットU2内での材料種やプロセスの切り替えを省略することもできる。これにより、立体物の製造を連続的に行うことができる。
【0191】
[積層ユニット]
積層ユニットU3は、粒子層形成ユニットU2でそれぞれ粒子層12が形成された複数の基材11を積層し、複数の粒子層12と複数の基材11とを含む積層体15を形成するユニットである。上述の積層体成形装置(図18)を用いることができる。
積層ユニットU3は、形成された積層体15を除去ユニットU4などへと搬送する搬送装置33や、積層体15を積層方向に加圧する加圧装置(不図示)をさらに有していてもよい。搬送装置33は、搬送装置31と同様の構成であってもよい。
【0192】
[除去ユニット]
除去ユニットU4は、積層ユニットU3で形成された積層体15から、基材11を除去して立体物16を形成するユニットである。上述の焼結処理装置(図19)を用いることができる。
【0193】
[後処理ユニット]
後処理ユニットU5は、除去ユニットU4で形成された立体物16の後処理を行うユニットである。
後処理ユニットU5が行う後処理の種類は特に限定されないが、例えば、立体物16をさらに加熱して焼結を行う処理が挙げられる。なお、後処理ユニットU5が後処理として加熱処理を行う場合には、除去ユニットU4がその機能を兼ねていてもよい。立体物16を焼結することにより、各粒子層中及び粒子層間の粒子同士を焼結することができる。
【0194】
また、樹脂基材の消失時に発生する一酸化炭素等の還元ガスにより、使用する活物質粒子や固体電解質粒子によっては、組成変化し、イオン伝導性が低下する場合がある。その場合、後処理ユニットU5による焼結(酸化)で再度組成を変化させて、イオン伝導性を改善することができる。もちろん、後処理ユニットU5による焼結では、酸素濃度を制御した酸化雰囲気以外にも、ArやN等の不活性雰囲気やArH等の還元雰囲気で焼結しても構わない。
【0195】
焼結以外の後処理の例として、導電助剤やバインダー樹脂等が溶剤に分散した溶液を積層体に染み込ませて、積層体内に各材を分散させる処理が挙げられる。分散後に溶剤の揮発やバインダーの固着のための乾燥工程や加圧工程が含まれていてもよい。
【0196】
二次電池は、電極(正極及び負極)と、電極に隣接する電解質層と、必要に応じて集電体とを有する。
例えば、正極として、上述の電極基材を用いて製造した電極を用いることができる。電極は、例えば、上述の方法などにより製造できる。
また、負極としては、特に限定されることなく公知の材料を用いることができる。例えば、リチウム金属、インジウム、スズ、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムのようなリチウム合金層を形成する金属箔、グラファイト粒子(黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなど)、シリコーン粒子、チタン酸リチウム粒子などを含む負極などが挙げられる。
【0197】
電解質層としては、特に限定されることなく公知の材料を用いることができる。例えば、Li1.5Al0.5Ge1.512(以下、LAGPとも表記する)、Li
.3Al0.3Ti1.712(以下、LATPとも表記する)、Li5.9Yb0.81La0.09Zr0.1(BO(以下、LYbBOとも表記する)、LiBO(以下、LBOとも表記する)、Li6.25LaZrAl0.2512(以下、LLZとも表記する)、Li0.33La0.55TiO(以下、LLTとも表記する)などを用いることができる。また、電解質は、材料を加圧装置などでペレット成形し焼結した電解質シートなどを用いてもよい。
集電体としては、特に限定されることなく公知の材料を用いることができる。例えば、正極集電体としてアルミニウム、ステンレス、白金、金などを用いることができる。また、負極集電体として銅、銅ニッケル、白金、金などを用いることができる。集電体として用いることができる上記金属は、金属箔として用いてもよい。
【0198】
<二次電池の製造方法>
上述の積層造形システム100を用いた二次電池の製造方法は複数取り得るが、幾つか例を挙げる。正極又は負極の製造方法として用いる場合について説明する。集電体又は別手段で成形された電解質を基盤として、正極又は負極、もしくは両極を本システムにより製造することができる。
【0199】
二次電池は、電極、集電体及び電解質を積層し、必要に応じてアルミラミネートフィルムなどで梱包し、成形、加圧することにより製造できる。すなわち、二次電池の製造方法は、電極、集電体及び電解質を積層する工程を含んでもよい。電極としては、上述の電極を用いることができる。
また、二次電池の製造方法は、上述の電極の製造方法により電極を準備する工程と、電極に隣接する固体電解質を設ける工程とを含んでもよい。また、上述の電極と、電極に隣接する固体電解質を一括して設ける工程を含んでもよい。すなわち、電極と固体電解質とは、別の工程でそれぞれを準備してもよく、同一の工程で一括して準備してもよい。
【0200】
ここで、電解質を成形する別手段とは、公知の手段で、例えば固体電解質粒子を一軸加圧装置等でペレット成形し、電気炉等で焼結するなどが挙げられる。電解質は、電解質シートなどを用いてもよい。
製造された各部材を正極集電体、正極、電解質、負極、負極集電体の順で積層することで、ラミネートフィルム内に梱包するラミネート型二次電池や、コインケース内に梱包するコイン型二次電池を製造できる。
【0201】
正極、電解質、負極を構成する各粒子は、焼結時に適正な温度や雰囲気が異なる場合がある。このような材料を取り扱う際には、それぞれの部材である正極、電解質、負極を別途製造し、電池として組立てることが好ましい。また、負極としてリチウム金属やインジウムを用いる場合は、負極は金属箔として用いたり、スパッタ等の真空プロセスにより、集電体や電解質に成形されることが好ましい。リチウム金属は還元力が強いため、固体電解質種によっては、分解されやすい。その場合、電極と電解質間に緩衝層を設けてもよい。緩衝層としては、ポリマー電解質等を使用することが好ましい。
【0202】
上記例は、積層造形システム100を用いて、正極又は負極の積層体を成形し、電極を製造した例であるが、二次電池を主に構成する、正極集電体、正極、電解質、負極、負極集電体の2種以上を含む積層体を成形し、立体物として製造することもできる。
【0203】
例えば、それぞれの基材を粒子層形成ユニットU2により作製する。つまり、正極集電体基材、正極基材、電解質基材、負極基材、負極集電体基材である。それぞれの基材は、正極基材のように複数種(正極活物質粒子と固体電解質粒子)の粒子を含んでもよく、単種類の粒子のみを含むものでも構わない。単種類の粒子のみを含む場合、充填装置24a、24bにそれぞれ同種の充填剤を充填することで、基材上に単種類の粒子のみを含む緻
密な粒子層を形成することができる。
【0204】
電解質基材は、少なくとも固体電解質粒子を含む粒子層で形成される。負極基材は、少なくとも負極活物質粒子を含む粒子層で形成される。集電体基材は、少なくとも導電粒子を含む粒子層で形成される。これらの基材を積層ユニットU3により正極集電体基材、正極基材、電解質基材、負極基材、負極集電体基材の順で積層した積層体を作製し、除去ユニットU4及び後処理ユニットU5により二次電池を製造することができる。さらに、集電体基材の両面側に電極基材を積層したバイポーラ型の二次電池を製造することもできる。
【実施例0205】
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の実施例において、特に断りのない限り、部数は質量部基準である。
【0206】
上述の積層造形システム100を用いて、二次電池の正極を成形した。
具体的には、図21に示す粒子層形成ユニットU2を用いて樹脂基材上に粒子層を形成し、積層ユニットU3を用いて粒子層が形成された基材を集電体(Al箔)上に積層(積層数3枚)して積層体を成形した。その後、除去ユニットU4を用いて、積層体から樹脂基材を加熱により除去し、加圧することで立体物である正極を成形した。なお、焼結雰囲気、焼結温度(1h維持)は後述の表4の通りである。
【0207】
電解質は、Li1.5Al0.5Ge1.512(以下、LAGPとも表記する)粉末を一軸加圧装置でペレット成形し、電気炉で焼結(850℃/12h)した電解質シート(厚み260μm)を成形したものを用いた。負極は、インジウム箔(厚み50μm)を用いた。
正極集電体として、アルミニウム箔(厚み20μm)を用いた。また、負極集電体として、銅箔(厚み20μm)を用いた。
上述の材料を、正極集電体、正極、電解質、負極、負極集電体の順で積層し、予め集電体に溶接した取出し電極用のタブリードをラミネート外部に配置するように、アルミラミネートフィルム内に梱包し、真空包装機によりラミネートセル型に成形し、等方圧加圧装置で加圧(196MPa)して全固体二次電池を作製した。
【0208】
第1の基材11aとしては、ポリエステル(PET)製のシートを用いた。第1の基材11a上には、パターン形成装置23によってハニカムパターン状の凹凸パターンを形成した。
まず、第1の基材11a上に紫外線硬化性樹脂(紫外線硬化性液状シリコーンゴム、PDMS、信越化学工業株式会社製)を塗工した。その後、第1の基材11a上の紫外線硬化性樹脂に、形成したい凹凸パターンに対応した、ハニカムパターン状の凹凸パターンを表面に有するフィルムモールド(標準モールド、綜研化学株式会社製)を押し当てた。フィルムモールドを押し当てた状態で、UVランプによって紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させて、フィルムモールドを離型した。
【0209】
表面に凹凸パターン111aを形成した第1の基材11aの構造を図22A及び22Bに示す。図22Aは第1の基材11aの上面図であり、図22B図22AのA-A断面図である。図22A及びBに示すように、第1の基材11aの表面には、六角形の枠状の凸部を有する、ハニカムパターン状の凹凸パターンが形成されている。
ここで、図22Bに示すように、隣接する凸部の幅をk(μm)、隣接する凸部のピッチをs(μm)、凸部の高さをd(μm)とする。なお、以下の実施例において、凹凸パターンの形状測定は、非接触表面・層断面形状計測システム(菱化システム社製 Ver
tScan2.0)を用いて行った。
【0210】
第2の基材11bとしては、表裏面にアクリル系粘着剤を塗布したポリエステル(PET)製のシートを用いた。使用した第2の基材11bの厚みは3μmであった。第2の基材11bの表裏面にアクリル系粘着剤を塗布し、粘着部を形成した。形成された粘着部の厚みは1μmであった。
【0211】
第1の粒子P1は、活物質粒子であるLiCoO(以下、LCOとも表記する)、LiMO(Mは、Ni、Mn、Coからなる群から選択される一の元素。以下、NMCとも表記する)、LiFePO(以下、LFPとも表記する)のいずれかを用いた。第2の粒子P2及び第3の粒子P3は、固体電解質粒子であるLiBO(以下、LBOとも表記する)、Li5.9Yb0.81La0.09Zr0.1(BO(自社製。以下、LYbBOとも表記する)のいずれかを用いた。なお、LCOは日本化学工業株式会社製(セルシードCー5H)、NMCは日本化学工業株式会社製(セルシードNMC)、LFPは株式会社豊島製作所製、LiBOは株式会社豊島製作所製のものを用いた。
【0212】
さらに、上述の固体電解質粒子は、粉砕、分級処理(日清エンジニアリング株式会社)を行い、7水準の粒度分布(小粒径側:A1品/A2品/A3品/B1品/B2品/B3品:大粒径側)に分離した。それぞれの粒径を表2に示す。
第1の粒子P1の担持材S1、第2の粒子P2の担持材S2及び第3の粒子P3の担持材S3は、いずれも磁性粒子である標準キャリア(日本画像学会製 標準キャリアP02)を用いた。標準キャリアの体積基準の粒径分布における累積50%粒径(メジアン径)は、81μmであった。
【0213】
<電極基材1の製造方法>
LCO(第1の粒子P1)及び標準キャリア(担持材S1)を撹拌・混合し、充填剤241aを得た。同様の方法により、LBO(B2品)(第2の粒子P2)及び標準キャリア(担持材S2)を撹拌・混合し、充填剤241bを得た。また、LBO(第3の粒子P3)及び標準キャリア(担持材S3)を撹拌・混合し、充填剤241cを得た。
得られた充填剤241a~cを用いて、粒子層形成ユニットU2により樹脂基材上に粒子層1を形成し、電極基材1を得た。このとき、第1の基材11a上の凹凸パターン111aは、凹部の幅kが6μm、凸部のピッチsが7.5μm、凸部の高さdが5.5μmとなるよう制御した。得られた電極基材1を実施例1とした。
【0214】
<電極基材2~7の製造方法>
第2の粒子P2の種類、第3の粒子P3の種類、及び第1の基材11a上の凹凸パターン111aの凸部のピッチsを表1に示すように変更した以外は粒子層1と同様の条件にて、粒子層2~7を形成し、電極基材2~7を得た。得られた電極基材2~7を比較例1~6とした。
【0215】
電極基材1~7の製造工程において、粒子層形成ユニットU2を用いて樹脂基材上に粒子層を形成した際に使用した充填剤241a、241b、241cの組成、及び第1の基材11a上の凹凸パターン111aの形状を表1に示す。
【表1】
充填剤241a中の担持材S1、充填剤241b中の担持材S2、充填剤241c中の担持材S3は、全て上述の標準キャリアを用いた。
表中、粒子の質量%は、各充填剤中における各粒子の質量%を示す。
【0216】
表2は、充填剤241a~c中の各粒子の一次粒子の粒径を示す。表2に示す粒径は、粒子層を形成する前の、充填剤中に含まれる材料としての粒径である。各粒子の粒径(r10、r50、r90)は、一次粒子の体積基準の粒径分布における累積分布の粒径であり、r10は累積10%、r50は累積50%、r90は累積90%の粒径である。すなわち、r50はメジアン径である。なお、粒径の測定は、レーザ回析散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製 LA-960)を用いて行った。
【表2】
担持材S1、S2及びS3として用いた標準キャリアのr10は60μm、r50は81μm、r90は113μmであった。
【0217】
図23Aは、実施例1の電極基材1の上方(粒子層が形成されている側)のSEM画像である。電極基材面内において、粒子P1であるLCOが周期的に分散配置され、その粒子間に粒子P2及びP3であるLBOが配置されている。すなわち、図23A~Cにおいて、P1は電極基材の活物質粒子を示し、P2は電極基材の第一固体電解質粒子を示し、P3は電極基材の第二固体電解質粒子を示す。
図23Bは、図23Aの拡大画像である。LBOは、粒径の大きい粒子群である粒子P2と、粒径の小さい粒子群である粒子P3を含む。
【0218】
図23Cは、電極基材1の断面のBIB-SEM画像である。電極基材1の樹脂基材(第2の基材11b)上には、粒子P1、粒子P2及び粒子P3を含む粒子層が形成されていた。また、粒子層において、粒子P1であるLCOと隣接して、粒子P2である固体電解質粒子LBO(B2品)が配置されていた。
粒子P3である固体電解質粒子LBO(A2品)は、粒子P2よりも小さく、粒子層の上方部(第2の基材11bの反対側)に偏在して配置されていた。後述する方法により偏在の判定を行ったところ、粒子P3(固体電解質粒子LBO(A2品))のうち80個数%以上が、樹脂基材に接する側の反対側に偏在していた。これは上述したように、樹脂基材上の粘着部に粒子P1及び粒子P2を沈降させて、新たに表面に露出する粘着部に粒子P3を配置する第3、4工程(図1中、S103、S104)により実現する(図12A図12B図13及び図14)。
【0219】
図24Aは、比較例2の電極基材2の上方(粒子層が形成されている側)のSEM画像(拡大)である。LCOの粒子間に粒子P2及び粒子P3であるLBO(A2品)が配置されている。図24Bは、電極基材2の断面のBIB-SEM画像である。粒子P1であるLCOと隣接するように、粒子P2及び粒子P3であるLBO(A2品)が配置されているが、粒子P2及び粒子P3の粒径が同じであるため、それぞれが樹脂基材上に同じように配置されていることがわかる。すなわち、比較例2においては、実施例1のような粒子P3の偏在が確認されなかった。
【0220】
図25Aは、比較例5の電極基材5の上方(粒子層が形成されている側)のSEM画像(拡大)である。LCOの粒子間に粒子P2及び粒子P3であるLBO(B2品)が配置されている。図25Bは、電極基材5の断面のBIB-SEM画像である。粒子P1であるLCOと隣接するように、粒子P2及び粒子P3であるLBO(B2品)が配置されているが、比較例2と同様に、粒子P2及び粒子P3の粒径が同じであるため、それぞれが樹脂基材上に同じように配置されていることがわかる。すなわち、比較例5においては、実施例1のような粒子P3の偏在が確認できなかった。
同様に、比較例1、3、4及び6においても、粒子P2及び粒子P3の粒径が同じであるため、実施例1のような粒子P3の偏在が確認できなかった。
【0221】
表3は、実施例1及び比較例1~6の評価結果を示す。評価方法について説明する。
【表3】
表中において、「カバー率」は、樹脂基材の表面における活物質粒子及び固体電解質粒子によるカバー率を示す。「re」「ra」は、樹脂基材の表面における固体電解質粒子
、活物質粒子の一次粒子の平均円相当径を示す。「re10」は、樹脂基材の表面における固体電解質粒子において、個数基準でreの累積10%(小粒径側から)となる円相当径を示す。「re10比率」は、樹脂基材上の、固体電解質粒子の個数基準で累積10%以下の粒子(第二固体電解質粒子)のうち、後述する基準線よりも樹脂基材遠方側に存在する比率を示す。すなわち、re10比率が0.80以上であれば、第二固体電解質粒子が粒子層において樹脂基材と反対側に偏在していることを示す。また、「偏在の有無」は、粒子層における第二固体電解質粒子の偏在の有無を示す。偏在の具体的な判定方法は後述する。
実施例1の固体電解質粒子の一次粒子の平均円相当径reは1.1μmであり、個数基準でreの累積10%となる円相当径は0.48μmであった。すなわち、第2の粒子P2が電極基材における第一固体電解質粒子に相当し、第3の粒子P3が電極基材における第二固体電解質粒子に相当することが確認できた。
【0222】
以下に、電極基材の評価方法及び各指標の算出方法について説明する。
【0223】
<カバー率>
カバー率を算出するための画像は、SEM観察によって取得した。SEM観察は電子顕微鏡(S-4800:日立製作所製)により、電極基材上面(粒子層が形成されている側)を鉛直方向より撮影した。撮影したSEM画像の例を、図30に示す。撮影は以下の条件で行った。
検出器:ESB(反射電子像)
観察条件:加速電圧2kV
倍率:1000倍
フィルター:ESBフィルターに1500Vのバイアス印加
【0224】
次に、SEM―EDX(AMETEK社製 PV77-47190ME)により、樹脂基材上の各粒子の元素、組成分析を行い、活物質粒子17と、固体電解質粒子18とを識別した。図30において、活物質粒子は白色の粒子として、固体電解質粒子は灰色の粒子としてそれぞれ示されている。
活物質粒子と固体電解質粒子の識別は、具体的には以下の方法で行う。樹脂基材をX線回折(XRD)等で分析し、樹脂基材を構成する物質の同定を行う。その後、活物質粒子及び固体電解質粒子に含まれる特有の元素をそれぞれSEM―EDXで検出し識別することができる。活物質粒子である第1の粒子P1としてLCOを用い、固体電解質粒子である第2の粒子P2及び第3の粒子P3としてLBOを用いた場合、CoをSEM-EDXで検出することにより活物質粒子を識別し、BをSEM-EDXで検出することにより固体電解質粒子を識別する。
【0225】
カバー率は、上述の方法により得たSEM画像の全画面において、粒子が存在する部分の割合を求めることで算出した。具体的には、以下のような画像処理によって算出した。
画像処理にはopenCVを用い、解析はpythonにて行った。得られたSEM画像を平均明度100、標準偏差±30となるように正規化した。正規化した画像を、明度60を閾値として2値化し、すべての粒子が白画素で現わされる画像を用意した。用意した画像の例を図31に示す。画像を構成する全画素のうち、白画素で表されている割合を解析し、粒子のカバー率として算出した。例えば、図31におけるカバー率は96.3%である。
【0226】
<BIB-SEMの撮影方法>
re及びraの算出、並びに粒子の偏在の判定においては、BIB-SEM画像を用いた。
以下にBIB-SEMの撮影条件について説明する。
基盤(Al箔)上に樹脂基材を3枚積層し、真空包装及び等方圧加圧したサンプルを準備した。サンプルをワイヤーソー(DWS3400/ワイヤー径170μm・ダイヤモンド径30μm)で切断し、切断面に対してArによるブロードイオンビームで断面加工(JEOL製SM-09010 Cross Section Polisher)した。断面加工の条件は、電圧6kV、電流150~200mAとした。BIB-SEM画像として、樹脂基材及び該粒子層の積層方向の断面を得て、断面観察を行う。
【0227】
断面部を電子顕微鏡(ULTRA55)により以下の条件で撮影した。撮影領域は、断面部の中央部より、後述する方法で固体電解質粒子が1枚当たり100個カウントされた画像を5枚撮影し、固体電解質粒子が計500個カウントされるようにした。撮影した画像の例を図32に示す。
検出器:ESB(反射電子像)
観察条件:加速電圧3kV
倍率:1000倍
フィルター:ESBフィルターに1500Vのバイアス印加
【0228】
次に、SEM-EDX(Bruker社製 XFlash Detector 630M)により、樹脂基材上の各粒子の元素、組成分析を行い、活物質粒子17と、固体電解質粒子18とを識別した。
活物質粒子と固体電解質粒子の識別は、上述の方法により行う。樹脂基材をX線回折(XRD)等で分析し、樹脂基材を構成する物質の同定を行う。その後、活物質粒子及び固体電解質粒子に含まれる特有の元素をそれぞれ上述の方法によりSEM―EDXで検出し、識別する。
【0229】
<re/ra>
BIB-SEM画像を用いた、re/raの算出方法を説明する。
<raの算出方法>
上述の条件により撮影したBIB-SEM画像から、活物質粒子を検出した。検出には、画像の境界検出法であるWatershed法を用いた。
はじめにBIB-SEM画像を平均明度100、標準偏差±30となるように正規化した。樹脂基材上の活物質粒子をカウントするために、上記正規化した画像から樹脂基材上の粒子層のみを表す画像を、画像中の全粒子を含むように切り出す。切り出した画像の例を、図33Aに示す。
切り出した画像を、明度120を閾値として2値化し、活物質粒子のみが白画素で表されている画像を得た。得られる画像の例を図33Bに示す。
次に、ノイズ除去の目的で、白画素で囲まれた領域を白で塗りつぶした後、モルフォロジー変換のオープニング処理をカーネルサイズ3×3画素にて行い、ノイズ除去後の画像を得た。ノイズ除去後の画像の例を図33Cに示す。
Watershed法を実行するために、画像中の確実に背景である部分、確実に前景(ここでは活物質粒子)である部分、どちらか判断できない部分を決定する。得られた画像に白部の膨張処理を行い、黒部分を背景として決定する。続いて、前景と背景の距離を求め、背景からの距離が20%以上離れている部分を確実に前景(活物質粒子)である部分とした。また、前景と背景の間を境界領域と定義し、Watershed法を適用することにより各粒子を検出した。粒子を検出した後の画像の例を図33Dに示す。例えば、図33Dからは、21個の粒子が検出される。
【0230】
検出された各粒子の画素数を面積としてカウントし、その面積と同等になる円の径を算出した。1画素の大きさを元画像のスケールから計算することで、画素数から計算した円の径を実際の径に変換し、一次粒子の円相当径を算出した。具体的には、raは以下のように算出することができる。
ra=(検出された粒子の画素数)×(SEM画像1画素当たりの長さ(μm))
算出した各活物質粒子の一次粒子の円相当径の、小粒径側から個数基準で累積50%の粒子の粒径を、活物質粒子の平均円相当径raとした。
例えば、図33Dにおいては、ra=64.7(画素)×0.04(μm)=2.6(μm)であった。
【0231】
<reの算出方法>
上述の方法によりBIB-SEM画像を正規化し、正規化した画像から樹脂基材上の粒子層の画像を切り出した。切り出した画像を、明度120を閾値として2値化し、活物質粒子のみが白画素で表されている画像を得た。得られる画像の例を図33Bに示す。
また、切り出した画像を、明度90を閾値として2値化し、固体電解質粒子及び活物質粒子の両方を白画素で表す画像を得た。得られる画像の例を、図34Aに示す。
固体電解質粒子及び活物質粒子の両方が白画素で表されている画像より、活物質粒子のみが白画素で表されている画像の白画素部を引くことにより、固体電解質粒子のみを白画素で表す画像が得られる。得られる画像の例を、図34Bに示す。
次に、ノイズ除去の目的で、白画素で囲まれた領域を白で塗りつぶした後、モルフォロジー変換のオープニング処理をカーネルサイズ3×3画素にて行い、ノイズ除去後の画像を得た。得られる画像の例を、図34Cに示す。
【0232】
続いて、Watershed法を実行するために、画像中の確実に背景である部分、確実に前景(ここでは固体電解質粒子)である部分、どちらか判断できない部分を決定する。得られた画像に白部の膨張処理を行い、黒部分を背景として決定する。得られる画像の例を、図34Dに示す。
続いて、前景と背景の距離を求め、背景からの距離が10%以上離れている部分を確実に前景(固体電解質粒子)である部分とした。また、前景と背景の間を境界領域と定義した。境界領域を示す画像の例を、図34Eに示す。この画像に対しWatershed法を適用することにより、各粒子を検出した。粒子を検出した後の画像の例を図34Fに示す。例えば、図34Fからは、28個の粒子が検出される。
【0233】
検出された各粒子の画素数を面積としてカウントし、その面積と同等になる円の径を算出した。1画素の大きさを元画像のスケールから計算することで、画素数から計算した円の径を実際の径に変換し、一次粒子の円相当径を算出した。具体的には、reは以下のように算出することができる。
re=(検出された粒子の画素数)×(SEM画像1画素当たりの長さ(μm))
算出した各固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の、小粒径側から個数基準で累積50%の粒子の粒径を、固体電解質粒子の平均円相当径reとした。
例えば、図34Fにおいては、ra=16.9(画素)×0.04(μm)=0.68μmであった。よって、図33D及び34Fに示される例においてはre/ra=0.68/2.6=0.26であり、0.01以上2.0以下となっていることが確認できる。
【0234】
<偏在の判定>
固体電解質粒子の偏在の判定は、以下の方法により行った。
以下に、偏在の基準線の決定方法、及び累積10%粒径に当たる固体電解質粒子の位置と基準線との関係を確認し、偏在を判定する方法を示す。BIB-SEMを用いた粒子層の断面観察において、偏在を判定する。BIB-SEM画像を得る手段は上述した通りである。
【0235】
<偏在の基準線決定>
初めに、偏在の基準線を決定する。以下に一例として図35示すBIB-SEM画像における偏在の基準線決定方法を説明する。
偏在の基準線は、樹脂基材上の活物質粒子のz軸方向(樹脂基材及び粒子層の積層方向)における分布をとり、そのピーク位置を基準線とした。以下に手順を示す。
上述の方法により得たBIB-SEM画像を、平均明度100、標準偏差±30となるように正規化した後、明度の閾値120にて2値化した。このとき、白画素で表されている粒子が活物質粒子である。z軸方向に並んでいる各ラスタの白画素数をカウントすることで、樹脂基材上の粒子層における活物質粒子の樹脂基材及び粒子層の積層方向の分布が得られる。樹脂基材上の粒子層において、活物質粒子の分布がピークとなる位置を偏在の基準線とした。すなわち、z軸方向において活物質粒子の分布がピークとなる位置で、z軸方向に垂直な基準線を引く。
BIB-SEM画像及び活物質粒子の分布のピークの例を、図35に示す。図35は、電極基材を3枚積層した電極基材積層体の断面のBIB-SEM画像を示す図である。図35の下側(z軸の基点側)から、樹脂基材、粒子層の順に形成された電極基材が、3枚積層された様子が示されている。基準線は、それぞれの電極基材において活物質粒子の分布がピークとなる位置を特定し定める。例えば、図35では、右側(活物質分布)のピークと点線が重なっている位置での点線が基準線を示す。
【0236】
<偏在の判定方法>
次に、BIB-SEM画像における、固体電解質粒子の偏在の判定方法を説明する。
上述の方法により、SEM画像上において樹脂基材上の固体電解質粒子を検出し、円相当径を算出した。得られた固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布において、小粒径側から個数基準で累積10%粒径以下の粒子を抽出し、第二固体電解質粒子を特定した。
特定した第二固体電解質粒子の各粒子において、樹脂基材の表面からのz軸方向における最短距離を最小値min、最長距離を最大値maxとする。なお、最長距離は、z軸方向において樹脂基材の表面から第二固体電解質粒子の最も遠い部分の位置である。そしてminとmaxの平均値を第二固体電解質粒子の中央の位置として求め、これを第二固体電解質粒子の位置とした。
例えば、図36においては、図中に示す19(円で囲まれた部分の中心)が第二固体電解質粒子中央の位置、すなわち粒子の位置である。また、図中に示す破線が、上述の方法により決定した基準線である。
【0237】
上述の方法により撮影した電子顕微鏡画像(固体電解質粒子が計500個カウントされるように撮影した画像)において、第二固体電解質粒子の位置と偏在の基準線とを比較する。5枚の画像中のすべての第二固体電解質粒子について、上述の方法で粒子の位置を決定する。また、各画像において上述の方法で基準線を定める。
次に、各画像において、80個数%以上の第二固体電解質粒子が基準線よりも樹脂基材と接触する側又は樹脂基材側の反対側に位置するかを確認する。5枚の画像中のすべての第二固体電解質粒子計500個に対して、1回の判定を行う。
上述の通り、第二固体電解質粒子の位置は、粒子の中央の位置をもとに判断する。すなわち、第二固体電解質粒子のうち、80個数%以上の第二固体電解質粒子の中央の位置が基準線よりも樹脂基材側又は樹脂基材と反対側に位置している場合、第二固体電解質粒子が偏在していると判断する。例えば、図36においては、80個数%以上の第二固体電解質粒子が、基準線よりも樹脂基材の遠方に存在することを確認できる。
同定された第二固体電解質粒子のうち、80個数%以上が、基準線よりも樹脂基材側又は樹脂基材と反対側に位置している場合に、第二固体電解質粒子が偏在していると判断する。
【0238】
上述の通り、電極基材は、電極基材を積層した電極基材積層体として用いることもできる。すなわち、樹脂基材上に粒子層が形成された電極基材において、粒子層上にさらに別の樹脂基材が存在していてもよい。その場合においては、粒子層における任意の一方を樹脂基材側とし、他方を樹脂基材と反対側として、上述の方法により偏在を判定することが
できる。
また、本開示では、電極基材は、樹脂基材、粒子層及び樹脂基材がこの順に積層された態様であってもよい。この場合も、上記と同様、一方を樹脂基材側とし、他方を反対側として、上述の方法により偏在を判定することができる。
【0239】
実施例1及び比較例1~6の電極基材から電極(正極)を作製し、上述の方法にて全固体電池を組立てた。実施例1の電極基材を用いて製造した全固体電池1、及び比較例1~6の電極基材を用いて製造した比較全固体電池1~6について、レート特性及びサイクル特性の評価結果を示す。
【表4】
表中において、「AIR」は大気下で焼結を行ったことを示す。上述の通り、実施例1のみがレート特性及びサイクル特性の評価がともにAであり、優れたイオン伝導性と体積変動の緩和を両立できることが確認された。
【0240】
以下、レート特性及びサイクル特性の評価方法について説明する。
<レート特性>
電極基材の単位面積当たりの活物質粒子質量M(g/cm)から、電極の活物質粒子質量(M×積層枚数×電極面積(cm))を算出し、電流レートを決定する。
単位面積当たりの活物質粒子質量Mは、以下のようにして求める。
第1の充填装置により第1の粒子P1を充填した後の第1の基材11aの重量を測定する。次に、上述の第1の基材11a上の粒子P1を第2の基材11bへ転写した後の、第1の基材11aの重量を測定する。その差分を測定し、第1の基材11aの面積(凹凸領域の面積)で割ることで単位面積当たりの活物質粒子質量Mを算出できる。本開示においては、上記の方法により単位面積当たりの活物質粒子質量Mを算出した。
別の算出方法として、ICP発光分光分析法を用いる方法もある。予め上述の方法等で、単位面積当たりの活物質粒子質量M(g/cm)が明らかになっている3水準の第1の基材11aを準備する。これらの第1の基材11aをマイクロウェーブによる酸分解(ETHOS PRO)で溶解して、酸分解液を超純水で希釈してICP-AES測定(CIROS CCD)を行い、Co元素の定量化を行う。得られた元素濃度に対する単位面積当たりの活物質粒子質量M(g/cm)の検量線が得られる。検量線より活物質粒子質量M(g/cm)を求めることができる。
なお、LCOの実容量は、120mAh/gとし、カットオフ電圧(対Li)は、4.2V(充電)/2.6V(放電)とした。充放電装置(バイオロジック社製)により、各レートで充放電測定(定電流モード)を行い、容量維持率(放電容量/充電容量×100
%)を測定する。容量維持率が80%以上のレートの最大値Rを求め、下記の評価基準で評価した。
A:R≧0.4C
B:0.4C>R≧0.3C
C:0.3C>R
【0241】
<サイクル特性>
上記のレート特性評価で求めたレートRでサイクル評価(定電流モードの繰り返し充放電測定)を行った。初期の容量維持率に対して、80%以下の容量になるまで繰り返し充放電測定を行い、その回数nを求め、下記の評価基準で評価した。
A:n≧10
B:10>n≧5
C:5>n
【0242】
上記レート特性及びサイクル特性の評価がともにAである場合に、優れたイオン伝導性と体積変動の緩和を両立できていると判断した。その結果、実施例1のみがレート特性及びサイクル特性の評価がともにAであり、優れたイオン伝導性と体積変動の緩和を両立できることが確認された。
【0243】
図26は、実施例1の電極基材1を用いて製造した電極断面のBIB-SEM画像である。焼結により基材が除去されており、粒子の焼結が進んでいる。基盤14の正極集電体(Al箔)上には、第1の粒子P1であるLCO、第2の粒子P2であるLBO(B2品)と第3の粒子P3であるLBO(A2品)が配置されており、LCOの周囲に空隙が確認される。また、空隙は、LCO粒子の基盤14側(基材除去前における樹脂基材側)に偏在している。これは、基材上の粒子配置により実現されている。
【0244】
図27は、実施例1の電極基材1を用いて製造した電極基材の模式図である。説明上、粒子P1、P2、P3は球状、且つ同一の粒径で記載している。
上述の通り、実施例1の電極基材11は、粒子P3が樹脂基材側と反対側の位置に偏在し、緻密な領域を形成している。一方、基材側には、粒子P1、P2の粒子間に空隙(例えば図27のSP部)が一様に分布している。焼結により基材が除去されても、各基材の緻密な領域と一様な空隙は維持され、図27に示される構造が実現されていると考えられる。
【0245】
実施例1の電極基材1を用いて製造した電極においては、活物質粒子の周囲に空隙が設けられ、且つ前記空隙は、活物質粒子及び固体電解質粒子を含む粒子層において、基盤としての集電体14側に偏在している。さらに粒子層の集電体側と反対側には、緻密な領域が形成されている。このため、電極内におけるイオン伝導と活物質粒子の体積変動の緩和を両立できていると考えられる。
【0246】
図28は、比較例2の電極基材3を用いて製造した電極断面のBIB-SEM画像である。図26(実施例1)のようなLCOの周囲に存在する空隙は確認されない。
図29は、比較例5の電極基材6を用いて製造した電極断面のBIB-SEM画像である。LCOの周囲に空隙が確認できるが、粒子層全体に空隙が多く、緻密性が低い。
【0247】
<電極基材9~13の製造方法>
第2の粒子P2の種類、第3の粒子P3の種類、及び第1の基材11a上の凹凸パターン111aの凸部のピッチsを表5に示すように変更した以外は粒子層1と同様の条件にて、粒子層9~13を形成し、電極基材9~13を得た。得られた電極基材9~13を実施例2~6とした。
表5は、実施例1~6で使用した充填剤241a、241b、241cと第1の基材11a上の凹凸パターン111aを示す。
【表5】
充填剤241a中の担持材S1、充填剤241b中の担持材S2、充填剤241c中の担持材S3は、全て上述の標準キャリアを用いた。
表中、粒子の質量%は、各充填剤中における各粒子の質量%を示す。
【0248】
表6は、実施例1~6において用いた充填剤中の各粒子の粒径を示す。
【表6】
担持材S1、S2及びS3として用いた標準キャリアのr10は60μm、r50は81μm、r90は113μmであった。
【0249】
表7は、実施例1~6の評価結果を示す。
【表7】
【0250】
実施例1~6の電極基材から電極(正極)を作製し、上述の方法により全固体電池を組立てた。表8は、実施例1~6の電極基材を用いて作成した全固体電池1~6について、
レート特性及びサイクル特性の評価結果を示す。
【表8】
表中において、「Ar-H」は、還元雰囲気(Ar-H)下で焼結を行ったことを示す。
【0251】
なお、実施例1~6のレート特性及びサイクル特性の評価において、各正極活物質の実容量は、LCOは120mAh/g、NMCは130mAh/g、LFPは150mAh/gとした。カットオフ電圧は、LCOは4.2V/2.6V、NMCは4.2V/2.6V、LFPは3.8V/2.5Vとした。
【0252】
実施例1~6においては、同一の正極基材を3枚積層した積層体を用いたが、本開示の構成を有する複数種の正極基材を積層した積層体を用いることもできる。また、電極基材は、従来公知の製造方法である塗工プロセス(積層コンデンサーMLCC製造技術含む)や粉体加圧プロセスに用いる材料として使用されても構わない。
【0253】
本開示は、以下の構成及び方法に関する。
(構成1)
電極の製造に用いられる電極基材であって、
該電極基材は、
樹脂基材と、該樹脂基材上の活物質粒子及び固体電解質粒子を含み、
該樹脂基材上に、該活物質粒子及び該固体電解質粒子を含む粒子層が形成され、
該活物質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を該活物質粒子の平均円相当径raとし、該固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を該固体電解質粒子の平均円相当径reとしたとき、
該平均円相当径raに対する、該平均円相当径reの比の値(re/ra)が0.01以上2.0以下であり、
該固体電解質粒子のうち、
該固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布において小粒径側から個数基準で累積10%粒径を超える粒径の粒子を第一固体電解質粒子とし、
該累積10%粒径以下の粒子を第二固体電解質粒子としたとき、
該粒子層において、
該活物質粒子と、該第一固体電解質粒子とが隣接して配置され、
該粒子層の断面観察において、該第二固体電解質粒子のうち80個数%以上が、基準線に対して、該粒子層の該樹脂基材と接触する側、又は該樹脂基材側の反対側に偏在して配置され、
該基準線は、該粒子層における該活物質粒子の該樹脂基材及び該粒子層の積層方向の分布のピーク位置を示す、
ことを特徴とする、電極基材。
(構成2)
前記第一固体電解質粒子が、Li-B酸化物系の電解質粒子を含み、
前記活物質粒子が、Li-Co酸化物系の活物質粒子を含む、構成1に記載の電極基材。
(構成3)
前記第二固体電解質粒子が、Li-B酸化物系の電解質粒子を含む、構成1又は2に記載の電極基材。
(構成4)
前記第一固体電解質粒子が、Li-B酸化物系の電解質粒子を含み、
前記活物質粒子が、Li-PO酸化物系の活物質粒子を含む、構成1に記載の電極基材。
(構成5)
前記第二固体電解質粒子が、Li-B酸化物系の電解質粒子を含む、構成1又は4に記載の電極基材。
(構成6)
前記樹脂基材の表面における、前記活物質粒子及び前記固体電解質粒子によるカバー率が、60%以上99%以下である、構成1~5のいずれかに記載の電極基材。
(構成7)
構成1~6のいずれかに記載の電極基材を複数積層した、電極基材積層体。
(構成8)
構成7に記載の電極基材積層体であって、
該電極基材積層体の断面において、前記樹脂基材と前記粒子層とが交互に存在する、電極基材積層体。
(構成9)
二次電池の電極であって、構成1~6のいずれかに記載の電極基材の焼結体である電極。
(構成10)
前記固体電解質粒子が、Li-B酸化物系の固体電解質粒子を含み、
前記活物質粒子が、Li-Co酸化物系の活物質粒子を含む、構成9に記載の電極。
(構成11)
構成9又は10に記載の電極と、該電極に隣接する電解質層とを含む二次電池。
(方法1)
電極の製造に用いられる構成1~6のいずれかに記載の電極基材の製造方法であって、
該製造方法は、
粘着部を備えた前記樹脂基材を準備する工程と、
該粘着部の表面に、前記活物質粒子及び前記第一固体電解質粒子を配置する工程と、
該粘着部の表面に配置された前記第一固体電解質粒子及び前記活物質粒子を該粘着部に沈降させる粒子沈降工程と、
沈降させた前記第一電解質粒子及び前記活物質粒子の間の該粘着部に、第二固体電解質粒子を配置する工程と、を有する電極基材の製造方法。
(方法2)
電極の製造に用いられる電極基材の製造方法であって、
該電極基材は、
該樹脂基材上の活物質粒子及び固体電解質粒子を含み、
該樹脂基材上に、該活物質粒子と該固体電解質粒子とを含む粒子層が形成され、
該活物質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を該活物質粒子の平均円相当径raとし、該固体電解質粒子の一次粒子の円相当径の分布から算出される累積50%粒径(個数基準)を該固体電解質粒子の平均円相当径reとしたとき、
該平均円相当径raに対する、該平均円相当径reの比の値(re/ra)が0.01以上2.0以下であり、
該固体電解質粒子が、固体電解質粒子P2と固体電解質粒子P3を含み、
該固体電解質粒子P2の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50)は、固体電解質粒子P3の一次粒子の体積基準の粒度分布における累積50%粒径(r50)よりも大きく、
該製造方法は、
表面に粘着部を備えた該樹脂基材を準備する工程と、
該粘着部の表面に、該活物質粒子及び該固体電解質粒子P2を隣接して配置する工程と、
該粘着部の表面に配置された該固体電解質粒子P2及び該活物質粒子を該粘着部に沈降させる粒子沈降工程と、
沈降させた該固体電解質粒子P2及び該活物質粒子の間の該粘着部に、該固体電解質粒子P3を配置する工程と、
を有する電極基材の製造方法。
(方法3)
電極の製造方法であって、
構成1~6のいずれかに記載の電極基材を複数積層し、積層体を成形する工程と、
該積層体から前記樹脂基材を除去し、立体物を得る工程と、
前記立体物を加圧し、電極を得る工程と、を有する電極の製造方法。
(方法4)
二次電池の製造方法であって、
該製造方法は、
方法3に記載の電極の製造方法により電極を準備する工程と、
該電極、集電体及び電解質を積層する工程と、
を有する二次電池の製造方法。
(方法5)
二次電池の製造方法であって、
該製造方法は、
方法3に記載の電極の製造方法により電極を準備する工程と、
該電極に隣接する固体電解質を設ける工程と、を有する二次電池の製造方法。
(方法6)
二次電池の製造方法であって、
該製造方法は、構成9又は10に記載の電極及び該電極に隣接する固体電解質を一括して設ける工程を有する二次電池の製造方法。
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