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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179116
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20241219BHJP
   B65D 85/86 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/86 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097680
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田鹿 紗代
【テーマコード(参考)】
3E096
5F131
【Fターム(参考)】
3E096AA06
3E096BA16
3E096BB04
3E096CA01
3E096CB03
3E096CC02
3E096DA23
3E096DB06
3E096DB08
3E096DC01
3E096EA02X
3E096FA09
3E096FA18
3E096GA03
5F131AA02
5F131BA00
5F131CA09
5F131GA12
5F131GA33
5F131GA53
5F131GA69
(57)【要約】
【課題】 例え損傷し易い基板を収納しても、基板に割れや欠け等が発生するおそれを払拭できる基板収納容器を提供する。
【解決手段】 上部が開口した外箱1と、外箱1に収納される筒形カセット10と、外箱1の開口上部に嵌合される上蓋20と、筒形カセット10に収納された割れ易い薄ウェーハTWの周縁部を保持するリテーナとを備えた基板収納容器であり、リテーナを、薄ウェーハTWの周縁下部を保持する下部リテーナ30と、薄ウェーハTWの周縁上部を保持する上部リテーナ30Aとし、下部リテーナ30と上部リテーナ30Aに薄ウェーハTWを挟持させて筒形カセット10から浮上させる。筒形カセット10から薄ウェーハTWを離隔させるので、衝撃が下部リテーナ30と上部リテーナ30Aに吸収される。したがって、例え基板収納容器に衝撃が作用しても、優れた耐衝撃性を確保でき、薄ウェーハTWに割れや欠けの発生するおそれがない。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口した外箱と、この外箱に収納される基板収納用の筒形カセットと、外箱の開口した上部に嵌め合わされる上蓋と、樹脂含有の成形材料により成形されて筒形カセットに収納された易損傷性の基板の周縁部を保持するリテーナとを含んでなる基板収納容器であって、
リテーナは、外箱の内部下方に取り付けられて筒形カセットに収納された基板の周縁下部を保持する下部リテーナと、上蓋の内部に取り付けられて筒形カセットに収納された基板の周縁上部を保持する上部リテーナとを含み、これら下部リテーナと上部リテーナとの間に基板を挟んで筒形カセットから浮かせるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
下部リテーナは、外箱の内部下方に取り付けられる枠体と、この枠体の両側部にそれぞれ略逆L字形に形成されて基板の周縁下部を保持する変形可能な複数の屈曲保持材とを含み、この複数の屈曲保持材の長片をそれぞれ枠体の内方向に伸長してその先端部同士を40mm以上55mm以下の隙間をおいて対向させ、屈曲保持材の長片の先端部に、基板の周縁下部に嵌まる溝を形成した請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
上部リテーナは、上蓋の内部天井に取り付けられる枠体と、この枠体の両側部にそれぞれ略L字形に形成されて基板の周縁上部を保持する変形可能な複数の屈曲保持材とを含み、この複数の屈曲保持材の長片をそれぞれ枠体の内方向に伸長してその先端部同士を40mm以上55mm以下の隙間をおいて対向させ、屈曲保持材の長片の先端部に、基板の周縁上部に嵌まる溝を形成した請求項1又は2記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷し易い薄いシリコンウェーハ等からなる基板用の基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における基板収納容器は、図3ないし図6に示すように、上部が開口した外箱1と、この外箱1に収納される筒形カセット10と、外箱1の開口した上部に嵌合される上蓋20と、筒形カセット10に収納されたシリコンウェーハSWの周縁上部を保持するリテーナ40とを備え、シリコンウェーハSWの保管、搬送、輸送に使用される(特許文献1参照)。
【0003】
外箱1は、図3ないし図5に示すように、樹脂含有の成形材料により有底筒形のトップオープンボックスに成形されている。この外箱1は、開口した上部に、パッキン用の取付溝2がエンドレスに形成され、この取付溝2に、上蓋20に圧接されて変形する弾性のパッキンが嵌合されており、両側壁の外面には、上蓋20用の被係止突起3がそれぞれ複数形成されている。
【0004】
筒形カセット10は、図3図5図6に示すように、樹脂含有の成形材料により上下部がそれぞれ開口した硬質の筒形に成形され、複数枚のシリコンウェーハSWを立てて整列収納する。この筒形カセット10は、両側壁板11の内面に、上下方向に伸びる一対の整列片13が対向して形成され、この一対の整列片13が前後方向に所定の間隔をおいて複数配列されており、隣接する整列片13と整列片13との間にシリコンウェーハSWが嵌挿される。各側壁板11は、中央部付近から下部に亘る部分が筒形カセット10の内方向に半円弧形に湾曲形成され、下部の内面にシリコンウェーハSWの周縁下部が支持される。シリコンウェーハSWは、例えば725μm前後の厚みを有するφ200mmのタイプが25枚収納される。
【0005】
上蓋20は、図3ないし図5に示すように、樹脂含有の成形材料により背の低い箱形に成形され、両側壁の下部に、外箱1の被係止突起3に嵌合係止する係止片22がそれぞれ形成されている。
【0006】
リテーナ40は、図3ないし図6に示すように、上蓋20の内部に装着される枠体41と、この枠体41の両側部にそれぞれ屈曲形成されてシリコンウェーハSWの周縁上部を保持する一対の屈曲保持材42とを備え、所定のエラストマーにより成形されている。このリテーナ40の一対の屈曲保持材42は、先端部43同士が80mm程度の隙間Gをおいて対向し、各屈曲保持材42に可撓性が付与されており、先端部43には、シリコンウェーハSWの周縁上部に嵌合する溝44が形成されている。
【0007】
このような基板収納容器は、厚さ725μm前後の肉厚のシリコンウェーハSWの収納を前提に構成されており、筒形カセット10の両側壁板11の下部内面とリテーナ40の屈曲保持材42の先端部43との間にシリコンウェーハSWを挟持させ、この挟持させた状態でシリコンウェーハSWの保管や搬送等に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09‐107026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年の基板収納容器には、オン抵抗の抑制、材料の大幅な節約、電子機器の小型化等の要請により、割れ易い基板の収納が求められることがある。例えば、厚さ100μm以下(厚さ100μm、厚さ50μm等)の薄いシリコンウェーハ、複数の元素を材料にした化合物半導体ウェーハ、ガラスウェーハの収納が求められることがある。
【0010】
しかしながら、従来における基板収納容器は、割れや欠けの生じにくい肉厚のシリコンウェーハSWの収納を前提にした構造に構成されているので、割れ易い基板の収納に対応するのは容易なことではない。例えば、割れ易い基板を収納した基板収納容器に衝撃が作用すると、耐衝撃性が充分ではないので、基板に割れや欠けの発生するおそれが高まったり、筒形カセット10の下部内面と基板とが強く衝突して実際に基板に割れや欠けが発生するという問題がある。
【0011】
本発明は上記に鑑みなされたもので、例え損傷し易い基板を収納しても、基板に割れや欠け等が発生するおそれを払拭することのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明においては上記課題を解決するため、上部が開口した外箱と、この外箱に収納される基板収納用の筒形カセットと、外箱の開口した上部に嵌め合わされる上蓋と、樹脂含有の成形材料により成形されて筒形カセットに収納された易損傷性(損傷し易い)の基板の周縁部を保持するリテーナとを含んでなるものであって、
リテーナは、外箱の内部下方に取り付けられて筒形カセットに収納された基板の周縁下部を保持する下部リテーナと、上蓋の内部に取り付けられて筒形カセットに収納された基板の周縁上部を保持する上部リテーナとを含み、これら下部リテーナと上部リテーナとの間に基板を挟んで筒形カセットから浮かせるようにしたことを特徴としている。
【0013】
なお、下部リテーナは、外箱の内部下方に取り付けられる枠体と、この枠体の両側部にそれぞれ略逆L字形に形成されて基板の周縁下部を保持する変形可能な複数の屈曲保持材とを含み、この複数の屈曲保持材の長片をそれぞれ枠体の内方向に伸長してその先端部同士を40mm以上55mm以下の隙間をおいて対向させ、屈曲保持材の長片の先端部に、基板の周縁下部に嵌まる溝を形成することができる。
【0014】
また、上部リテーナは、上蓋の内部天井に取り付けられる枠体と、この枠体の両側部にそれぞれ略L字形に形成されて基板の周縁上部を保持する変形可能な複数の屈曲保持材とを含み、この複数の屈曲保持材の長片をそれぞれ枠体の内方向に伸長してその先端部同士を40mm以上55mm以下の隙間をおいて対向させ、屈曲保持材の長片の先端部に、基板の周縁上部に嵌まる溝を形成することができる。
【0015】
また、下部リテーナの表面硬度値を筒形カセットの表面硬度値よりも低くし、下部リテーナの曲げ弾性率を上部リテーナの曲げ弾性率よりも高くするとともに、下部リテーナの表面硬度値を上部リテーナの表面硬度値よりも高くすることもできる。
【0016】
また、筒形カセットは、曲げ弾性率がJIS K7171に準拠して測定した場合に2200MPa以上2400MPa以下、表面硬度値がタイプDのデュロメータで測定した場合に100以上120以下であり、
下部リテーナは、曲げ弾性率がJIS K7171に準拠して測定した場合に1200MPa以上1300MPa以下、表面硬度値がタイプDのデュロメータで測定した場合に70以上80以下であり、
上部リテーナは、曲げ弾性率がJIS K7171に準拠して測定した場合に400MPa以上600MPa以下、表面硬度値がタイプDのデュロメータで測定した場合に60以上70以下であることが好ましい。
【0017】
ここで、特許請求の範囲における易損傷性の基板には、少なくとも厚さ100μm以下でφ125mm、150mm、200mmのシリコンウェーハ、化合物半導体ウェーハ、矩形のガラスウェーハやマスクウェーハ等が含まれる。また、筒形カセット、下部リテーナ、及び上部リテーナの硬度値は、厚み、形状、材料の変更により適宜設定することができる。下部リテーナと上部リテーナとは、同じ成形材料で成形しても良いし、異なる成形材料で成形しても良い。また、同じ大きさに形成しても良いし、異なる大きさに形成しても良い。さらに、本発明に係る基板収納容器の上下前後左右方向は、図面を基準にした方向であり、必要に応じ、適宜変更することができる。
【0018】
本発明によれば、下部リテーナと上部リテーナに易損傷性の基板を挟んで筒形カセットから浮き上がらせ、筒形カセットと基板との接触面積を減少させるので、衝撃が筒形カセットから基板に伝搬することが少なくなり、衝撃が下部リテーナと上部リテーナに吸収される。したがって、基板を収納した基板収納容器に衝撃が作用しても、優れた耐衝撃性を確保することができるので、基板に損傷の発生するおそれが減少する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、下部リテーナと上部リテーナの間に基板を挟んで筒形カセットから浮かせるので、例え損傷し易い基板を収納しても、基板に割れや欠け等が発生するおそれを有効に払拭することができるという効果がある。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、下部リテーナの複数の屈曲保持材の先端部間の隙間が40mm以上55mm以下の範囲内なので、屈曲保持材が上下方向に過剰に動き、耐衝撃性の低下を招くのを防止することができる。また、下部リテーナの基板周縁下部を保持する屈曲保持材の先端部が従来よりも基板の中心部寄りなので、衝撃吸収性を向上させることができる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、上部リテーナの複数の屈曲保持材の先端部間の隙間が40mm以上55mm以下の範囲内なので、屈曲保持材が上下方向に過剰に動き、耐衝撃性の低下を招くのを防止することができる。また、上部リテーナの基板周縁上部を保持する屈曲保持材の先端部が従来よりも基板の中心部寄りなので、衝撃吸収性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態における薄ウェーハを収納した状態を示す断面説明図である。
図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態における下部リテーナと上部リテーナとを模式的に示す斜視説明図である。
図3】基板収納容器を示す全体斜視図である。
図4】基板収納容器を示す平面図である。
図5】従来における基板収納容器のシリコンウェーハを収納した状態を示す断面説明図である。
図6】従来における基板収納容器のリテーナを示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図3に示すように、上部が開口した外箱1と、この外箱1に収納される筒形カセット10と、外箱1の開口した上部に着脱自在に嵌合されて筒形カセット10の上部を被覆保護する上蓋20と、筒形カセット10に収納された割れ易い薄ウェーハTWの周縁部を保持するリテーナとを備えた収納容器であり、リテーナを、薄ウェーハTWの周縁下部を保持する下部リテーナ30と、薄ウェーハTWの周縁上部を保持する上部リテーナ30Aとに分割し、これら下部リテーナ30と上部リテーナ30Aとに薄ウェーハTWを挟持させて筒形カセット10から浮かせることにより、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0024】
外箱1は、図1図3(シリコンウェーハSWとリテーナ40を除く)に示すように、熱可塑性樹脂含有の成形材料により上部の開口した有底角筒形のトップオープンボックスに射出成形され、筒形カセット10を着脱自在に収納する。この外箱1を成形する成形材料の熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等があげられる。成形材料は、上記熱可塑性樹脂だけでも良いが、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質、アニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤、剛性を向上させるガラス繊維や炭素繊維、紫外線吸収剤等が必要に応じて添加される。
【0025】
外箱1は、やや上げ底に形成され、開口した上部の周縁部分に、パッキン用の取付溝2がエンドレスの枠形に凹み形成されており、この取付溝2に、上蓋20に圧接されて弾性変形する枠形のパッキンが交換可能に嵌合される。また、外箱1の両側壁の外面上部には、上蓋20用の被係止突起3がそれぞれ複数並べて形成される。
【0026】
筒形カセット10は、図1に示すように、熱可塑性樹脂含有の成形材料により上下部がそれぞれ開口した角筒形に射出成形され、複数枚の薄ウェーハTWを立てて整列収納してその周縁下部と周縁上部とを露出させる。この筒形カセット10を成形する成形材料の熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等があげられる。成形材料は、上記熱可塑性樹脂だけでも良いが、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質、アニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤、剛性を向上させるガラス繊維や炭素繊維、紫外線吸収剤等が必要に応じて添加される。
【0027】
筒形カセット10は、図1に示すように、外箱1の正面側に水平に位置する正面バーと、この正面バーの両側部に接続されて外箱1の後方向(図1の奥方向)に伸びる左右一対の側壁板11と、この一対の側壁板11の間に架設されて薄ウェーハTWに対向する背面板12とを備え、一対の側壁板11が相互に対向する。この一対の側壁板11の内面には、上下方向に伸びる一対の整列片13が対向して突出形成され、この一対の整列片13が筒形カセット10の前後方向に所定の間隔をおいて複数配列されており、隣接する整列片13と整列片13との間の整列溝に薄ウェーハTWの周縁側部が縦に嵌挿される。各整列溝は、断面U字形あるいは断面V字形に形成される。
【0028】
筒形カセット10の各側壁板11は、中央部付近から下部に亘る部分がカセット10の内方向に半円弧形に湾曲形成されて略鉛直の最下部に連接し、下部の内面に薄ウェーハTWの周縁下部が支持される。薄ウェーハTWは、例えば厚さ100μm以下の薄く脆く割れ易いφ200mmのシリコンウェーハからなり、25枚が収納される。
【0029】
筒形カセット10の曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定した場合に2200MPa以上2400MPa以下、好ましくは2250MPa以上2350MPa以下、より好ましくは2300MPa前後が良い。また、筒形カセット10の表面硬度値は、JIS K6253‐3に基づいたタイプDのデュロメータで測定した場合に100以上120以下、好ましくは105以上115以下、より好ましくは110前後が最適である。筒形カセット10のアイゾット衝撃値は、JIS K7110に準拠して衝撃試験機により測定した場合に37J/m以上42J/m以下、好ましくは39J/m以上41J/m以下が最適である。
【0030】
上蓋20は、図1図3(シリコンウェーハSWとリテーナ40を除く)に示すように、熱可塑性樹脂含有の成形材料により背の低い透明の略箱形に射出成形され、開口した下部の周面には、外箱1のパッキンに嵌入して変形させる嵌合溝21がエンドレスの枠形に凹み形成される。この上蓋20を成形する成形材料の熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリカーボネート樹脂やポリプロピレン樹脂等があげられる。上蓋20の両側壁の下部には、外箱1の被係止突起3に嵌合係止する横長の係止片22がそれぞれ屈曲可能に一体形成され、各係止片22がストライプ模様に形成される。
【0031】
下部リテーナ30は、図1図2に示すように、熱可塑性樹脂含有の成形材料で弾性のエラストマー構造体に射出成形される。この下部リテーナ30を成形する成形材料の熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば変質したポリブチレンテレフタレート樹脂等が該当する。
【0032】
下部リテーナ30は、外箱1の平坦な内底面に着脱自在に装着される平面枠形の枠体31と、この枠体31の両側部にそれぞれ正面略逆L字形に屈曲形成されて薄ウェーハTWの周縁下部を弾発的に保持する変形可能な一対の屈曲保持材32とを備え、この一対の屈曲保持材32の向かい合う先端部34同士が40mm以上55mm以下の隙間Gをおいて対向する。一対の屈曲保持材32は、枠体31の左右両側部からそれぞれ横長の短辺が起立し、各短辺の先端部に枠体31の内方向に伸びる横長の長辺が屈曲形成されるとともに、各短辺の先端部から長辺の先端部にかけて切り欠き溝が切り欠かれ、この切り欠き溝が下部リテーナ30の前後方向に所定の間隔で複数配列されて変形可能な複数(本実施形態では25本)の長片33が分岐することで形成される。
【0033】
一対の屈曲保持材32の先端部34同士は、従来よりも狭い40mm以上55mm以下、好ましくは44mm以上54mm以下、より好ましくは48mm以上52mm以下の隙間Gをおいて対向すると良い。これは、一対の屈曲保持材32の先端部34同士間の隙間Gが40mm以上55mm以下の範囲から外れる場合には、屈曲保持材32の長片33が上下方向に過剰に揺動したり、揺動範囲が狭くなり、耐衝撃性の低下を招くからである。
【0034】
各屈曲保持材32は、弾性変形可能なよう可撓性が付与され、上下方向に揺動可能な長片33が従来よりも枠体31の内方向に細長く略水平に伸長形成されて薄ウェーハTWの中心線を通る垂直線に接近し、この長片33の表面先端部34に、薄ウェーハTWの周縁下部に嵌合する断面U字形の溝35が複数のリブ片36の対向配列により区画形成される。長片33の先端部34の近傍には、薄ウェーハTWの周縁下部に非接触で対向する複数の対向リブ37が形成され、各対向リブ37が略三角形や略台形等の多角形に形成されて薄ウェーハTWの位置ずれを防止する。
【0035】
下部リテーナ30の曲げ弾性率は、基板収納容器全体の耐衝撃性を向上させる観点から、JIS K7171に準拠して測定した場合に1200MPa以上1300MPa以下、好ましくは1220MPa以上1280MPa以下、より好ましくは1240MPa以上1260MPa以下、さらに好ましくは1245MPa以上1255MPa以下が良い。この曲げ弾性率は、屈曲保持材32の厚さや材質、溝35の形状の変更等により調整することができる。
【0036】
下部リテーナ30の表面硬度値は、筒形カセット10の内面に薄ウェーハTWの周縁下部が接触するのを防止し、基板収納容器の耐衝撃性を向上させる観点から、JIS K6253‐3に基づいたタイプDのデュロメータで測定した場合に70以上80以下、好ましくは72以上78以下、より好ましくは73以上77以下、さらに好ましくは74以上76以下が良い。この表面硬度値は、屈曲保持材32の厚さや材質、溝35の形状の変更等により調整することができる。また、下部リテーナ30のアイゾット衝撃値は、JIS K7110に準拠して衝撃試験機により測定した場合に30J/m以上50J/m以下、好ましくは35J/m以上45J/m以下、より好ましくは37J/m以上43J/m以下が最適である。
【0037】
上部リテーナ30Aは、図1図2に示すように、熱可塑性樹脂含有の成形材料で弾性のエラストマー構造体に射出成形される。この上部リテーナ30Aを成形する成形材料の熱可塑性樹脂としては、特に制約されるものではないが、例えば変質した別のポリブチレンテレフタレート樹脂等が該当する。
【0038】
上部リテーナ30Aは、成形材料の熱可塑性樹脂やその組成等が異なる場合もあるが、基本的には下部リテーナ30と略同様に構成される。すなわち、上部リテーナ30Aは、上蓋20の内部天井に着脱自在に装着される平面枠形の枠体31と、この枠体31の両側部にそれぞれ正面略L字形に屈曲形成されて薄ウェーハTWの周縁上部を弾発的に保持する変形可能な一対の屈曲保持材32とを備え、この一対の屈曲保持材32の向かい合う先端部34同士が40mm以上55mm以下の隙間Gをおいて対向する。
【0039】
一対の屈曲保持材32は、枠体31の左右両側部からそれぞれ横長の短辺が垂下し、各短辺の先端部に枠体31の内方向に伸びる横長の長辺が屈曲形成されるとともに、各短辺の先端部から長辺の先端部にかけて切り欠き溝が切り欠かれ、この切り欠き溝が上部リテーナ30Aの前後方向に所定の間隔で複数配列されて変形可能な複数(本実施形態では25本)の長片33が分岐することで形成される。
【0040】
一対の屈曲保持材32の先端部34同士は、従来よりも狭い40mm以上55mm以下、好ましくは44mm以上54mm以下、より好ましくは48mm以上52mm以下の隙間Gをおいて対向すると良い。これは、一対の屈曲保持材32の先端部34同士間の隙間Gが40mm以上55mm以下の範囲から外れる場合には、屈曲保持材32の長片33が上下方向に過剰に揺動したり、揺動範囲が狭くなり、耐衝撃性が低下するからである。
【0041】
各屈曲保持材32は、弾性変形可能なよう可撓性が付与され、上下方向に揺動可能な長片33が従来よりも枠体31の内方向に長く略水平に伸長形成されて薄ウェーハTWの中心線を通る垂直線に近接し、この長片33の表面先端部34には、薄ウェーハTWの周縁上部に嵌合する断面U字形の溝35が複数のリブ片36の対向配列により区画形成される。長片33の先端部34の近傍には、薄ウェーハTWの周縁上部に非接触で対向する複数の対向リブ37が形成され、各対向リブ37が略三角形や略台形等の多角形に形成されて薄ウェーハTWの位置ずれを防止する。
【0042】
上部リテーナ30Aの曲げ弾性率は、基板収納容器全体の耐衝撃性を向上させる観点から、JIS K7171に準拠して測定した場合に400MPa以上600MPa以下、好ましくは460MPa以上540MPa以下、より好ましくは480MPa以上520MPa以下、さらに好ましくは485MPa以上515MPa以下が良い。この曲げ弾性率は、屈曲保持材32の厚さや材質、溝35の形状の変更等により調整可能である。
【0043】
上部リテーナ30Aの表面硬度値は、筒形カセット10の内面に薄ウェーハTWの周縁下部が接触するのを防止し、耐衝撃性を向上させるため、JIS K6253‐3に基づいたタイプDのデュロメータで測定した場合に60以上70以下、好ましくは62以上68以下、より好ましくは63以上67以下、さらに好ましくは64以上66以下が良い。この表面硬度値は、屈曲保持材32の厚さや材質、溝35の形状の変更等により調整される。また、上部リテーナ30Aのアイゾット衝撃値は、JIS K7110に準拠して衝撃試験機により測定した場合に70J/m以上80J/m以下、好ましくは71J/m以上79J/m以下、より好ましくは73J/m以上77J/m以下が最適である。
【0044】
以上の記載から明らかなように、下部リテーナ30は、表面硬度値が筒形カセット10の表面硬度値よりも低く設定され、曲げ弾性率が上部リテーナ30Aの曲げ弾性率よりも高く設定されており、表面硬度値が上部リテーナ30Aの表面硬度値よりも高く設定される。下部リテーナ30の表面硬度値が筒形カセット10の表面硬度値よりも低いのは、表面硬度値が高い場合には、基板収納容器の耐衝撃性が従来と変わらないので、耐衝撃性の向上が図れず、加えて、薄ウェーハTWの回転を規制することが困難になるからである。また、下部リテーナ30の表面硬度値が上部リテーナ30Aの表面硬度値よりも高いのは、表面硬度値が低く硬い場合には、筒形カセット10の内面に薄ウェーハTWの周縁下部が接触して割れや欠けが生じるおそれがあるからである。
【0045】
また、上部リテーナ30Aは、表面硬度値が筒形カセット10の表面硬度値よりも低く設定され、曲げ弾性率が下部リテーナ30の曲げ弾性率よりも低く設定されるとともに、表面硬度値が下部リテーナ30の表面硬度値よりも低く設定されて薄ウェーハTWの回転を規制する。
【0046】
上記構成において、薄ウェーハTWを基板収納容器に収納して保管したり、搬送する場合には、複数枚の薄ウェーハTWを筒形カセット10に順次収納して整列させ、この筒形カセット10を下部リテーナ30付きの外箱1に収納し、外箱1の開口した上部に上部リテーナ30A付きの上蓋20をパッキンを介して嵌合した後、外箱1の複数の被係止突起3に上蓋20の係止片22をそれぞれ嵌合係止すれば、薄ウェーハTWを基板収納容器に収納して保管したり、搬送することができる。
【0047】
この際、薄ウェーハTWは、下部リテーナ30の屈曲保持材32と上部リテーナ30Aの屈曲保持材32とに挟持されるが、これら30・30Aの曲げ弾性率と表面硬度値が異なるので、押し上げられて筒形カセット10の両側壁板11の下部内面から僅かに浮上し、両側壁板11の下部内面との間に隙間を区画する。したがって、基板収納容器の落下時等に発生する衝撃が筒形カセット10から薄ウェーハTWに伝搬するのを大幅に低減することができる。
【0048】
上記構成によれば、硬質の筒形カセット10の下部内面と上部リテーナ30Aとに割れ易い薄ウェーハTWを挟持させるのではなく、表面硬度の異なる下部リテーナ30と上部リテーナ30Aとに薄ウェーハTWを挟持させて筒形カセット10から浮上させ、筒形カセット10から薄ウェーハTWを離隔させるので、衝撃が下部リテーナ30と上部リテーナ30Aに吸収されることとなる。したがって、薄ウェーハTWを収納した基板収納容器に衝撃が作用しても、優れた耐衝撃性を確保することができるので、薄ウェーハTWに割れや欠けの発生するおそれがなく、薄ウェーハTWに割れや欠けが実際に発生するのを防止することができる。
【0049】
また、薄ウェーハTWの周縁部を保持する屈曲保持材32の長片33の先端部34が従来よりも薄ウェーハTWの中心部寄りなので、衝撃吸収性を向上させることができる。さらに、筒形カセット10の表面硬度値よりも下部リテーナ30と上部リテーナ30Aの表面硬度値が低いので、薄ウェーハTWの回転を規制することができる。したがって、薄ウェーハTWの回転に伴う擦れでパーティクルが発生するのを有効に防止することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では厚さ100μm以下の薄ウェーハTWを示したが、何らこれに限定されるものではなく、化合物半導体ウェーハ(例えば、GaAsウェーハ、InPウェーハ、GeEpiウェーハ等)を収納しても良い。また、厚さ50μmの石英ガラスを収納しても良い。また、上記実施形態では上蓋20、下部リテーナ30、及び上部リテーナ30Aの成形材料を上記熱可塑性樹脂のみとしたが、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質、アニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤、剛性を向上させるガラス繊維や炭素繊維、紫外線吸収剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0051】
また、下部リテーナ30と上部リテーナ30Aの枠体31を長方形の枠体31としたが、何らこれに限定されるものではなく、必要に応じ、他の多角形の枠体に変更しても良い。また、各屈曲保持材32を、L字形に屈曲して一列に配列された複数の屈曲保持材32とすることもできる。さらに、屈曲保持材32の長片33の先端部34に、断面U字形の溝35を区画形成したが、断面V字形や断面Y字形等に区画形成することもできる。
【実施例0052】
以下、本発明に係る基板収納容器の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、図3に示す8インチ用の基板収納容器〔信越ポリマー株式会社製:製品名ウェハーケースMW200N〕を用意し、この基板収納容器にφ200mmの薄いシリコンウェーハを収納することとした。基板収納容器は、上部が開口したポリプロピレン樹脂製の外箱と、この外箱に収納されて25枚のシリコンウェーハを整列収納可能なポリプロピレン樹脂製の筒形カセットと、外箱の開口した上部に嵌合されるポリカーボネート樹脂製の透明の上蓋とを備えた構成であり、寸法サイズが縦270mm×横270mm×高さ241mmである。
【0053】
筒形カセットの曲げ弾性率をJIS K7171に準拠して測定したところ、2300MPaであった。この曲げ弾性率の測定には、精密万能試験機〔株式会社島津製作所製:製品名AG‐IS〕を用い、以下も同様に用いた。また、筒形カセットの表面硬度値をJIS K6253‐3に基づいたタイプDのデュロメータで測定したところ、110であった。このタイプDのデュロメータとしては、アスカーゴム硬度計D型〔高分子計器株式会社製:製品名〕を用い、以下も同様に用いた。筒形カセットのアイゾット衝撃値をJIS K7110に準拠して衝撃試験機により測定したところ、40J/mであった。このアイゾット衝撃値は、アイゾット衝撃試験機〔株式会社安田精機製作所製:製品名シャルピー衝撃試験機No258〕で測定し、以下も同様に測定した。
【0054】
φ200mmのシリコンウェーハとして、厚さ100μmの薄く割れ易いシリコンウェーハを用意した。このシリコンウェーハは、厚さ725μmのシリコンウェーハの周縁部を3mm残存させ、その他の部分を研削して100μmの厚さとしたウェーハである。
【0055】
次いで、基板収納容器の外箱の内底面に、シリコンウェーハの周縁下部を保持可能な下部リテーナを装着し、上蓋の内部天井に、シリコンウェーハの周縁上部を保持可能な上部リテーナを装着した。下部リテーナは、変質したポリブチレンテレフタレート樹脂により図2に示す弾性のエラストマー構造体に射出成形した。この下部リテーナは、115mm×185mmの大きさに成形され、枠体から長片までの高さが17mm、一列に並んだ25本の長片の配列長さが157mm、長辺と長片の厚さがそれぞれ2mmである。
【0056】
下部リテーナの変形可能な一対の屈曲保持材の向かい合う先端部同士の隙間を測定したところ、50mmであった。また、下部リテーナの曲げ弾性率をJIS K7171に準拠して測定したところ、1250MPaであった。下部リテーナの表面硬度値をタイプDのデュロメータで測定したところ、75であった。また、下部リテーナのアイゾット衝撃値をJIS K7110に準拠して衝撃試験機により測定したところ、41J/mであった。
【0057】
上部リテーナは、変質したポリブチレンテレフタレート樹脂により図2に示す弾性のエラストマー構造体に射出成形し、下部リテーナと同じ大きさとした。この上部リテーナの変形可能な一対の屈曲保持材の向かい合う先端部同士の隙間を測定したところ、50mmであった。また、上部リテーナの曲げ弾性率をJIS K7171に準拠して測定したところ、500MPaであった。上部リテーナの表面硬度値をタイプDのデュロメータで測定したところ、65であった。また、上部リテーナのアイゾット衝撃値をJIS K7110に準拠して衝撃試験機により測定したところ、75J/mであった。
【0058】
次いで、薄いシリコンウェーハを筒形カセットに1枚縦に収納し、この筒形カセットを下部リテーナ付きの外箱に収納し、外箱の開口した上部に上部リテーナ付きの上蓋をパッキンを介して嵌合した後、外箱の複数の被係止突起に上蓋の係止片をそれぞれ嵌合係止することにより、シリコンウェーハを基板収納容器に収納した。こうしてシリコンウェーハを基板収納容器に収納したら、基板収納容器を200mmの高さから落下させた後、基板収納容器からシリコンウェーハを取り出してその状態を確認した。シリコンウェーハの状態を確認したところ、シリコンウェーハに割れや欠けは確認されなかった。
【0059】
〔実施例2〕
基本的には実施例1と同様であるが、下部リテーナの一対の屈曲保持材の向かい合う先端部同士の隙間を47mmに変更し、上部リテーナの一対の屈曲保持材の先端部同士の隙間も47mmに変更した。
【0060】
実施例1と同様、シリコンウェーハを基板収納容器に1枚収納したら、基板収納容器を200mmの高さから落下させた後、基板収納容器からシリコンウェーハを取り出してその状態を目視により確認した。シリコンウェーハの状態を確認したところ、シリコンウェーハに割れや欠けは確認されなかった。
【0061】
〔実施例3〕
基本的には実施例1と同様であるが、下部リテーナの一対の屈曲保持材の向かい合う先端部同士の隙間を52mmに変更し、上部リテーナの一対の屈曲保持材の先端部同士の隙間も52mmに変更した。
【0062】
実施例1と同様、シリコンウェーハを基板収納容器に1枚収納したら、基板収納容器を200mmの高さから落下させた後、基板収納容器からシリコンウェーハを取り出してその状態を目視により確認した。シリコンウェーハの状態を確認したところ、シリコンウェーハに割れや欠けは確認されなかった。
【0063】
〔比較例〕
先ず、図3に示す8インチ用の基板収納容器〔信越ポリマー株式会社製:製品名ウェハーケースMW200N〕を用意し、この基板収納容器にφ200mmの薄いシリコンウェーハを収納することとした。基板収納容器は、実施例1と同様、外箱、筒形カセット、及び上蓋を備えた構造であり、筒形カセットの曲げ弾性率、表面硬度値、及びアイゾット衝撃値も実施例1と同様である。また、φ200mmのシリコンウェーハについても、実施例1と同様のウェーハとした。
【0064】
次いで、基板収納容器の外箱の内底面に下部リテーナを装着するのを省略し、基板収納容器の上蓋の内部天井に、シリコンウェーハの周縁上部を保持可能な従来のリテーナを装着した。このリテーナは、一般的なポリブチレンテレフタレート樹脂により図6に示すエラストマー構造体に射出成形した。このリテーナは、160mm×185mmの大きさに成形され、枠体から長片までの高さが17mm、一列に並んだ25本の長片の配列長さが157mm、長辺と長片の厚さがそれぞれ2mmである。リテーナの一対の屈曲保持材の向かい合う先端部同士の隙間を測定したところ、80mmであった。
【0065】
次いで、薄いシリコンウェーハを筒形カセットに1枚縦に収納し、この筒形カセットを外箱に収納し、この外箱の開口した上部にリテーナ付きの上蓋をパッキンを介して嵌合した後、外箱の複数の被係止突起に上蓋の係止片をそれぞれ嵌合係止することにより、シリコンウェーハを基板収納容器に収納した。こうしてシリコンウェーハを基板収納容器に収納したら、基板収納容器を200mmの高さから落下させた後、基板収納容器からシリコンウェーハを取り出してその状態を目視により確認した。シリコンウェーハの状態を確認したところ、シリコンウェーハに複数の割れや欠けが確認され、実用性に深刻な疑義が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る基板収納容器は、電気、電子、半導体の製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0067】
1 外箱
10 筒形カセット
20 上蓋
30 下部リテーナ
30A 上部リテーナ
31 枠体
32 屈曲保持材
33 長片
34 先端部
35 溝
36 リブ片
37 対向リブ
40 リテーナ
G 隙間
TW 薄ウェーハ(易損傷性の基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6