(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179118
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】固定子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/12 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H02K15/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097684
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】白井 中庸
(72)【発明者】
【氏名】久戸瀬 裕一
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 伸男
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 寛士
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615PP01
5H615SS24
5H615SS33
5H615SS35
5H615SS42
(57)【要約】
【課題】固定子巻線においてガラス転移点が互いに異なる複数の絶縁樹脂により絶縁層を形成する場合に、その絶縁層を適正に形成する。
【解決手段】固定子巻線には、ガラス転移点が互いに異なる絶縁樹脂からなる第1絶縁層と第2絶縁層とが形成されており、第1絶縁層はガラス転移点の高い方の第1絶縁樹脂からなり、第2絶縁層はガラス転移点の低い方の第2絶縁樹脂からなる。固定子の製造方法として、固定子巻線に対して第1絶縁樹脂を塗布し、かつ当該絶縁樹脂をそのガラス転移点よりも高い温度で硬化させて第1絶縁層を形成する第1工程と、第1工程の後に、固定子巻線に対して第2絶縁樹脂を塗布し、かつ当該絶縁樹脂をそのガラス転移点よりも高い温度で硬化させて第2絶縁層を形成する第2工程と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線材(40)が巻回されてなる巻線(30)を有する固定子(13)の製造方法であって、
前記巻線には、ガラス転移点が互いに異なる絶縁樹脂からなる第1絶縁層(61)と第2絶縁層(62)とが形成されており、前記第1絶縁層はガラス転移点の高い方の第1絶縁樹脂からなり、前記第2絶縁層はガラス転移点の低い方の第2絶縁樹脂からなり、
前記巻線に対して前記第1絶縁樹脂を塗布し、かつ当該絶縁樹脂をそのガラス転移点よりも高い温度で硬化させて前記第1絶縁層を形成する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記巻線に対して前記第2絶縁樹脂を塗布し、かつ当該絶縁樹脂をそのガラス転移点よりも高い温度で硬化させて前記第2絶縁層を形成する第2工程と、
を有する固定子の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程では、前記巻線の加熱を行い、
前記第2工程では、前記第1工程において前記巻線の加熱及び前記第1絶縁樹脂の塗布が行われた後、前記巻線の温度が、前記第2絶縁樹脂のガラス転移点よりも高温でありかつ当該第2絶縁樹脂の硬化が可能な温度で維持されている状態で、前記巻線に対して前記第2絶縁樹脂を塗布する、請求項1に記載の固定子の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程での前記第1絶縁樹脂の塗布後に、保温部材(75)により前記巻線の温度低下を抑制する状態とする、請求項1又は2に記載の固定子の製造方法。
【請求項4】
前記第1工程において、前記巻線に対して加熱を行っている加熱中に、当該巻線に前記第1絶縁樹脂を塗布する、請求項1又は2に記載の固定子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機の固定子において、固定子巻線の表層側に絶縁樹脂からなる絶縁層を形成する技術が知られている。具体的には、固定子コアに対する固定子巻線の固着強度を高めることを目的として、絶縁樹脂であるワニスにより絶縁層を形成する技術や、固定子巻線の溶接部等を絶縁することを目的として、絶縁樹脂である粉体樹脂により絶縁層を形成する技術が知られている。
【0003】
絶縁樹脂により絶縁層を形成する際には、固定子巻線に対して絶縁樹脂が塗布され、その絶縁樹脂が所定の高温状態下で硬化される。例えば、特許文献1に記載の技術では、固定子巻線の溶接部(具体的には導体セグメントどうしが溶接により接続された溶接部)に対して先に粉体樹脂により絶縁層が形成されるとともに、その後に、固定子コアに対する固定子巻線の組み付け部分にワニスにより絶縁層が形成される構成となっており、それら各絶縁層の形成に際し、それぞれ樹脂材を高温状態で硬化させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固定子巻線において、ガラス転移点が互いに異なる複数の絶縁樹脂により絶縁層が各々形成される場合に、前工程でガラス転移点が相対的に低い絶縁樹脂により絶縁層が形成され、かつ後工程でガラス転移点が相対的に高い絶縁樹脂により絶縁層が形成されるようになっていると、後工程での絶縁層の形成時に、前工程で用いた絶縁樹脂にとって必要以上の加熱が行われ、絶縁層の破損が生じることが懸念される。例えば、後工程で用いられるワニスのガラス転移点が、前工程で用いられる粉体樹脂のガラス転移点よりも高温であると、後工程において粉体樹脂にとって必要以上の加熱により硬化後温度が高くなる。これにより、冷却後応力が大きくなり、絶縁層の割れや剥がれが生じることが懸念される。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、固定子巻線においてガラス転移点が互いに異なる複数の絶縁樹脂により絶縁層を形成する場合に、その絶縁層を適正に形成することができる固定子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について説明する。
【0008】
手段1は、
導線材が巻回されてなる巻線を有する固定子の製造方法であって、
前記巻線には、ガラス転移点が互いに異なる絶縁樹脂からなる第1絶縁層と第2絶縁層とが形成されており、前記第1絶縁層はガラス転移点の高い方の第1絶縁樹脂からなり、前記第2絶縁層はガラス転移点の低い方の第2絶縁樹脂からなり、
前記巻線に対して前記第1絶縁樹脂を塗布し、かつ当該絶縁樹脂をそのガラス転移点よりも高い温度で硬化させて前記第1絶縁層を形成する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記巻線に対して前記第2絶縁樹脂を塗布し、かつ当該絶縁樹脂をそのガラス転移点よりも高い温度で硬化させて前記第2絶縁層を形成する第2工程と、
を有する。
【0009】
固定子の製造時には、先の第1工程において、ガラス転移点の高い方の第1絶縁樹脂が巻線に塗布され、第1絶縁樹脂のガラス転移点よりも高い温度での硬化により第1絶縁層が形成される。また、後の第2工程において、ガラス転移点の低い方の第2絶縁樹脂が巻線に塗布され、第2絶縁樹脂のガラス転移点よりも高い温度での硬化により第2絶縁層が形成される。この場合、後工程(第2工程)での第2絶縁樹脂の硬化時には、前工程(第1工程)での第1絶縁樹脂の硬化時よりも過剰に高い温度にする必要が無く、第1絶縁層の破損等の不都合を抑制できる。その結果、固定子巻線においてガラス転移点が互いに異なる複数の絶縁樹脂により絶縁層を形成する場合に、その絶縁層を適正に形成することができる。
【0010】
手段2では、前記第1工程では、前記巻線の加熱を行い、前記第2工程では、前記第1工程において前記巻線の加熱及び前記第1絶縁樹脂の塗布が行われた後、前記巻線の温度が、前記第2絶縁樹脂のガラス転移点よりも高温でありかつ当該第2絶縁樹脂の硬化が可能な温度で維持されている状態で、前記巻線に対して前記第2絶縁樹脂を塗布する。
【0011】
巻線の加熱と第1絶縁樹脂の塗布とが行われた後には巻線の温度が徐々に低下するが、第1絶縁樹脂のガラス転移点が第2絶縁樹脂のガラス転移点よりも高温であると、第1絶縁樹脂の硬化途中又は硬化終了後の巻線温度が、第2絶縁樹脂の硬化に要する硬化温度よりも高いことが考えられる。したがって、第2絶縁樹脂を塗布する際に巻線の再加熱を行わなくても、第2絶縁樹脂により第2絶縁層の形成が可能となる。この場合、第2工程での巻線の再加熱が不要となり、絶縁層形成に要する時間の短縮や、コスト低減を図ることができる。
【0012】
手段3では、前記第1工程での前記第1絶縁樹脂の塗布後に、保温部材により前記巻線の温度低下を抑制する状態とする。
【0013】
前工程においてガラス転移点が相対的に高い第1絶縁樹脂の加熱硬化を行う際に、保温部材により巻線の保温を行うようにした。この場合、巻線の加熱停止後における温度低下が緩やかになる。そのため、第1工程での巻線の加熱温度の低減や、第1絶縁樹脂の硬化に要する時間の短縮が可能となる。
【0014】
また、後工程において、巻線の再加熱を行わずに第2絶縁樹脂の塗布及び硬化を行わせる場合に、巻線温度が所望の温度よりも意図せず低下してしまい第2絶縁樹脂の硬化が適正に行われなくなるといった不都合を抑制できる。
【0015】
手段4では、前記第1工程において、前記巻線に対して加熱を行っている加熱中に、当該巻線に前記第1絶縁樹脂を塗布する。
【0016】
前工程において、巻線の加熱中に巻線に第1絶縁樹脂を塗布するようにした。これにより、第1絶縁樹脂の塗布時における巻線の温度低下を抑制し、ひいては第1絶縁樹脂の硬化時間を短縮することができる。第1絶縁樹脂の硬化時間が短くなることで、第1絶縁樹脂が意図しない領域まで流れ落ちるといった不都合を抑制でき、後工程での第2絶縁樹脂の塗布に影響を及ぼすことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】固定子コアに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図。
【
図5】固定子巻線の被覆部の形成に関する構造工程を示すフローチャート。
【
図6】被覆部の形成時における巻線温度の推移を示すタイムチャート。
【
図7】第1被覆部を形成する工程を説明するための図。
【
図8】第2被覆部を形成する工程を説明するための図。
【
図9】保温部材により固定子を保温する状態を示す図。
【
図10】被覆部の形成時における巻線温度の推移を示すタイムチャート。
【
図11】被覆部の形成時における巻線温度の推移を示すタイムチャート。
【
図12】被覆部の形成時における巻線温度の推移を示すタイムチャート。
【
図13】被覆部の形成時における巻線温度の推移を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る回転電機の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態の回転電機としてのモータは、例えば車両用の電動機や、飛行体用の電動機として用いられる。本実施形態の回転電機は、永久磁石同期電動機をはじめ、巻線界磁型や誘導機に適用できるものであり、3相巻線を有する回転電機である。なお、以下の実施形態及び変形例相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0019】
図1に示すように、回転電機10は、回転軸11に固定された回転子12と、回転子12を包囲する位置に設けられる固定子13と、これら回転子12及び固定子13を収容するハウジング14とを備えている。回転電機10は、インナロータ型の回転電機であり、固定子13の径方向内側に、回転子12が回転可能な状態で配置されている。本実施形態において、軸方向とは、回転軸11の軸方向のことを示し、径方向とは、回転軸11に直交する方向のことを示し、周方向とは、回転軸11を中心とする周回方向のことを示す。
【0020】
ハウジング14は、有底筒状の一対のハウジング部材14a,14bを有し、ハウジング部材14a,14bが開口部どうしで接合された状態でボルト15の締結により一体化されている。ハウジング14には軸受16,17が設けられ、この軸受16,17により回転軸11及び回転子12が回転自在に支持されている。回転子12は、固定子13の内周側に対して径方向に対向する外周側に、周方向に所定距離を隔てて極性が交互に異なるように配置された複数の磁極を有する。これらの磁極は、回転子12の所定位置に埋設された複数の永久磁石により形成されている。
【0021】
次に、固定子13について説明する。
図2及び
図3に示すように、固定子13は、周方向に複数のスロット21を有する円環状の固定子コア20と、固定子コア20の各スロット21に巻装された固定子巻線30とを備えている。固定子巻線30は、相ごとの相巻線としてU相巻線、V相巻線及びW相巻線を有している。固定子巻線30において、軸方向に固定子コア20に重複する範囲がコイルサイドCSである。また、軸方向一端側及び他端側において固定子コア20よりも軸方向外側となる部分が第1コイルエンドCE1、第2コイルエンドCE2である。
【0022】
固定子コア20は、円環状のバックヨーク23と、バックヨーク23から径方向内方へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース24とを有し、隣り合うティース24の間にスロット21が形成されている。スロット21は、径方向を長手として延びる開口形状をなし、固定子コア20において周方向に等間隔に設けられている。そして、そのスロット21に巻装された状態で固定子巻線30が設けられている。固定子コア20は、例えば磁性体である電磁鋼板からなるコアシートが軸方向に積層されたコアシート積層体として構成されている。
【0023】
固定子巻線30は、3相巻線がY結線(星形結線)により接続されることにより構成されている。固定子巻線30は、不図示のインバータを介して電源から電力(交流電力)が供給されることで磁束を発生する。固定子巻線30は、略矩形断面(平角断面)の一定太さの電気導体を略U字状に成形した分割導体としての複数の導体セグメント40を用いて構成されている。導体セグメント40が「導線材」に相当する。以下、固定子巻線30のセグメント構造について詳しく説明する。
【0024】
図3に示すように、導体セグメント40は、略U字状をなしており、直線状をなす一対の直線部41と、一対の直線部41どうしを繋ぐように屈曲形成されたターン部42とを有している。一対の直線部41は、固定子コア20の軸方向の厚さよりも長い長さを有している。導体セグメント40は、横断面が矩形状をなす導体51を絶縁被膜52により被覆した平角導線を用いて構成されており、各直線部41の先端部である端末部43は、絶縁被膜52が切除されることで導体51が露出した導体露出部となっている。
【0025】
固定子コア20のスロット21には、複数の導体セグメント40が径方向に一列に並べられた状態で挿入されている。本実施形態では、スロット21内に、導体セグメント40の各直線部41を8層に積層した状態で収容する構成としている。導体セグメント40において、一対の直線部41は所定のコイルピッチを隔てた2つのスロット21にそれぞれ収容される。直線部41のうち、スロット21内に収容された部分がコイルサイドCSに相当する。スロット21内には、固定子コア20と固定子巻線30(導体セグメント40)との間を電気絶縁する絶縁シート26が設けられている。絶縁シート26は、スロット21内に挿入される複数の導体セグメント40をまとめて囲むように折り曲げられ、スロット21内において固定子コア20の内周面(内壁面)と導体セグメント40との間に挟まれた状態で設けられている。
【0026】
導体セグメント40の一対の直線部41は、2つのスロット21において径方向位置を1つずらしてそれぞれ収容されている。例えば一方の直線部41が径方向奥側(バックヨーク側)からn番目の位置に収容される場合、他方の直線部41は径方向奥側からn+1番目の位置に収容されるようになっている。
【0027】
固定子コア20のスロット21に対する各導体セグメント40の挿入に際し、各導体セグメント40の直線部41は、固定子コア20の軸方向両端の第1端側及び第2端側のうち第1端側から挿入され、その直線部41の端末部43が第2端側から突出する。この場合、固定子コア20の第1端側では、導体セグメント40のターン部42により第1コイルエンドCE1が形成される。また、固定子コア20の第2端側では、各直線部41の反ターン部側が周方向に屈曲され、かつ互いに異なる導体セグメント40の端末部43どうしが溶接等により接合されることで、第2コイルエンドCE2が形成される。
【0028】
固定子13では、固定子巻線30に対して絶縁被覆が施されており、その構成を以下に説明する。具体的には、固定子巻線30において、各コイルエンドCE1,CE2とコイルサイドCSにそれぞれ絶縁被覆が施されており、その概要を
図4に示す。
図4は、固定子13の正面図である。
【0029】
図4において、固定子コア20の軸方向両側のうち導体セグメント40のターン部42側が第1コイルエンドCE1、導体セグメント40の端末部43側が第2コイルエンドCE2、軸方向において固定子コア20に重複する範囲がコイルサイドCSである。固定子巻線30には、各導体セグメント40において端末部43の溶接部分を除く部位に第1被覆部61が形成されるとともに、端末部43の溶接部分に相当する部位に第2被覆部62が形成されている。換言すれば、第1被覆部61は、第1コイルエンドCE1及びコイルサイドCSの全域と、第2コイルエンドCE2において端末部43の溶接部以外の部分とを覆うように形成されている。なお、第1被覆部61は、少なくとも第1コイルエンドCE1及びコイルサイドCSを含む範囲で形成されているとよい。また、第2被覆部62は、第2コイルエンドCE2において端末部43の溶接部を覆うように形成されている。
【0030】
第1被覆部61は、例えば、固定子巻線30を固定子コア20に固着させて機械的強度を高めたり、固定子巻線30に耐水性や耐腐食性を付与したりすることを目的として形成されている。第1被覆部61に用いられる第1樹脂材(第1絶縁樹脂)は、一般にワニスと称される樹脂材である。第1樹脂材としては、例えばエポキシ系、フェノール系、ポリエステル系、シリコーン系など任意の合成樹脂を用いることが可能である。
【0031】
また、第2被覆部61は、導体セグメント40の端末部43において溶接部の保護や、端末部43の導体露出部分の絶縁性付与を目的として形成されている。第2被覆部62に用いられる第2樹脂材(第2絶縁樹脂)は、例えば粉体樹脂であり、具体的にはエポキシ系、ポリエステル系の樹脂成分を主成分とするものであるとよい。
【0032】
第1被覆部61と第2被覆部62とは、ガラス転移点が互いに異なる樹脂材からなる絶縁被覆層として形成されている。本実施形態において、第1被覆部61に用いられる第1樹脂材はガラス転移点が相対的に高い樹脂材であり、第2被覆部62に用いられる第2樹脂材はガラス転移点が相対的に低い樹脂材である。すなわち、第1樹脂材のガラス転移点Tg1と、第2樹脂材のガラス転移点Tg2は、Tg1>Tg2の関係となっている。例えば、第1樹脂材であるワニスのガラス転移点Tg1は170℃であり、第2樹脂材である粉体樹脂のガラス転移点Tg2は130℃である。第1被覆部61が「第1絶縁層」に相当し、第2被覆部62が「第2絶縁層」に相当する。
【0033】
以下に、固定子13の製造手順を説明する。
図5は、固定子13の製造方法のうち固定子巻線30の各被覆部61,62の形成に関する製造工程を示すフローチャートである。また、
図6は、各被覆部61,62の形成時における固定子巻線30の温度の推移を示すタイムチャートである。なおここでは、固定子13において、固定子コア20に対する導体セグメント40の組み付けや、導体セグメント40の端末部43の溶接が完了した後の手順を説明する。
【0034】
図5では、固定子巻線30に対して先に第1樹脂材により第1被覆部61を形成し、その後、第2樹脂材により第2被覆部62を形成することとしている。
図5において、工程S1~S3は、固定子巻線30に第1被覆部61を形成する工程であり、工程S4~S5は、固定子巻線30に第2被覆部62を形成する工程である。なお、工程S1~S3が「第1工程」に相当し、工程S4~S5が「第2工程」に相当する。
【0035】
第1被覆部61の形成工程(S1~S3)では、
図7に示す治具71に固定子13が装着され、その状態で、ディスペンサ72から供給される第1樹脂材により第1被覆部61が形成される。第1樹脂材は例えばワニスである。
図7では、固定子13は、第1コイルエンドCE1側を上方、第2コイルエンドCE2側を下方とし、かつ中心軸が鉛直方向に対して斜めに傾くようにして治具71に装着されている。
【0036】
工程S1では、固定子巻線30が、第1樹脂材のガラス転移点Tg1よりも高い所定温度に加熱される(加熱工程)。このとき、固定子巻線30が所定の通電条件で通電されることにより、固定子巻線30が所定温度に加熱される。通電条件として、通電電流の大きさや通電時間が予め定められているとよい。なお、温度センサ等により固定子巻線30の温度を検出し、その検出温度が所定の目標温度になるまで通電による加熱を行うことも可能である。
【0037】
工程S2では、固定子巻線30の第1コイルエンドCE1に対して、ディスペンサ72から液状の第1樹脂材が塗布される(第1塗布工程)。このとき、治具71が回転軸73を中心に回転することにより治具71と共に固定子13が回転する状態で、ディスペンサ72から第1樹脂材が時間当たり所定量ずつ滴下される。これにより、第1コイルエンドCE1に対して周方向に第1樹脂材が塗布される。固定子巻線30の第1コイルエンドCE1に第1樹脂材が塗布されると、その第1樹脂材は導体セグメント40を伝ってスロット21内(コイルサイドCS)に流れ込み、さらに逆側の第2コイルエンドCE2側に流出する。つまり、固定子巻線30には、軸方向において第1コイルエンドCE1から第2コイルエンドCE2にかけての範囲で第1樹脂材による薄層が形成される。なお、第1樹脂材は、少なくとも第1コイルエンドCE1からコイルサイドCSに至るまでの範囲で塗布されるとよい。このとき、第2コイルエンドCE2を下側として固定子13を水平な向きとし、その状態で第1樹脂材を第1コイルエンドCE1側から第2コイルエンドCE2側に伝わらせるとよい。
【0038】
その後、工程S3では、固定子巻線30が所定の硬化温度となる状態下で第1樹脂材が硬化する(第1硬化工程)。つまり、固定子巻線30の表面が第1樹脂材により覆われた状態で第1樹脂材が固まり、第1被覆部61が形成される。具体的には、第1樹脂材の塗布後において、固定子巻線30の温度が徐々に低下する際に、第1樹脂材の硬化により第1被覆部61が形成される。
【0039】
図6のタイムチャートにおいて、期間T1では、固定子巻線30の加熱により、第1樹脂材のガラス転移点Tg1よりも高い所定の昇温温度Thまで固定子巻線30が昇温される。続いて期間T2では、固定子巻線30の第1コイルエンドCE1に対して第1樹脂材が塗布され、その後、期間T3では、第1樹脂材のガラス転移点Tg1よりも高い所定の硬化温度となっている高温環境下で第1樹脂材が硬化する。これにより、第1被覆部61が形成される。
【0040】
図5において、第1被覆部61の形成後には、第2樹脂材による第2被覆部62の形成処理が引き続き行われる。第2被覆部62の形成工程(S4~S5)では、第1樹脂材よりもガラス転移点が低い第2樹脂材を用いて第2被覆部62が形成されるようになっており、第1被覆部61の形成工程の後に残る固定子巻線30の熱を用いて第2樹脂材の硬化が行われる。つまり本実施形態では、第2被覆部62の形成工程において固定子巻線30の再加熱が行われないものとなっている。
【0041】
工程S4では、固定子巻線30の第2コイルエンドCE2の軸方向先端部(溶接部)に対して第2樹脂材が塗布される(第2塗布工程)。第2樹脂材は例えば粉体樹脂である。具体的には、
図8に示すように、液状の第2樹脂材を浸漬槽74に充填させておき、その浸漬槽74内に第2コイルエンドCE2の溶接部を浸漬させることで、溶接部の表面に第2樹脂材を付着させる。工程S4では、ガラス転移点が相対的に高い第1樹脂材による第1被覆部61の形成後において、巻線温度が、ガラス転移点が相対的に低い第2樹脂材のガラス転移点よりも低温になる前に、第2樹脂材が固定子巻線30に塗布される。
【0042】
その後、工程S5では、第2コイルエンドCE2を浸漬槽74から引き上げ、第2樹脂材のガラス転移点Tg2よりも高い温度域において第2樹脂材が硬化する(第2硬化工程)。これにより、第2コイルエンドCE2の溶接部において第2樹脂材により第2被覆部62が形成される。
【0043】
図6のタイムチャートにおいて、期間T4では、固定子巻線30が、第1被覆部61の形成工程(S1~S3)の後の残熱により第2樹脂材のガラス転移点Tg2よりも高い所定温度になっている状態下で、第2コイルエンドCE2の溶接部に対して第2樹脂材が塗布される。その後、期間T5では、第2樹脂材の硬化により第2被覆部62が形成される。なお、第2樹脂材の塗布は、第1樹脂材の硬化途中、及び硬化終了後のいずれかで行われるとよい。
【0044】
ここで、仮に低Tgの第2樹脂材により第2被覆部62を先に形成し、その後に高Tgの第1樹脂材により第1被覆部61を形成する場合には、第1被覆部61の形成時に、第2被覆部62(第2樹脂材)が過剰に再加熱される。そのため、第2被覆部62において冷却後応力が大きくなり、割れ等の不都合が懸念される。この点、本実施形態では、高Tgの第1樹脂材により第1被覆部61を先に形成し、その後に低Tgの第2樹脂材により第2被覆部62を形成するようにしたため、第2被覆部62(第2樹脂材)が過剰に加熱されることはなく、冷却後の応力が低減される。
【0045】
第1被覆部61の形成工程(S1~S3)では、第1樹脂材(ワニス)のガラス転移点Tg1と、加熱後の環境下における巻線温度の温度降下速度(単位時間当たりの温度降下量)と、ガラス転移点Tg1よりも高い硬化温度で第1樹脂材の硬化に要する硬化時間とに応じて、巻線加熱時の昇温温度Thが定められているとよい。また、巻線加熱時の昇温温度Thと、第1樹脂材の硬化時間とに応じて、加熱後における巻線温度の温度降下速度(温度降下環境)が定められているとよい。
【0046】
また、第2被覆部62の形成工程(S4~S5)では、第2樹脂材(粉体樹脂)のガラス転移点Tg2と、巻線温度の温度降下速度と、ガラス転移点Tg2よりも高い硬化温度で第2樹脂材の硬化に要する硬化時間とに応じて、第2樹脂材を塗布するタイミングが定められているとよい。これにより、各被覆部61,62の形成時の加工条件を適正に定めることができる。
【0047】
第1被覆部61の形成工程(S1~S3)において、保温部材により、固定子巻線30の温度低下が抑制されるようになっていてもよい。具体的には、
図9に示すように、固定子13に保温部材としての保温カバー75が被せられるとよい。この場合、
図10に示すように、工程S1の固定子巻線30の加熱後において巻線温度の低下が抑制される。なお、
図10には、保温カバー75を用いていない場合の巻線温度の変化を一点鎖線で示している。保温カバー75を用いない場合には、固定子巻線30が昇温温度Thまで昇温されるのに対し、保温カバー75を用いる場合には、固定子巻線30が昇温温度Thaまで昇温される。
【0048】
図10では、期間T1において、固定子巻線30が昇温温度Thaまで昇温された後、巻線温度が比較的緩やかに低下する。そのため、固定子巻線30の昇温温度の低減が可能となっている。なお、
図10では、巻線温度の低下が緩やかになることを見込んで昇温温度をThよりも低温のThaにしているが、昇温温度をThのままにする場合には、巻線温度がより高い温度で保持されるため、第1樹脂材の硬化に要する時間の短縮が可能となる。
【0049】
保温部材は、保温カバー75以外の構成であってもよく、保温部材として、固定子13を収容する保温ボックスを用いることも可能である。
【0050】
また、
図11に示すように、固定子巻線30に第1樹脂材を塗布する期間T2(第1塗布工程)において、固定子巻線30の加熱を継続的に行うようにしてもよい。つまり、固定子巻線30の加熱期間と第1樹脂材の塗布期間とを一部重複させてもよい。これにより、第1樹脂材の塗布時における固定子巻線30の温度低下が抑制され、ひいては第1樹脂材の硬化時間の短縮が可能になっている。
【0051】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0052】
固定子13の製造時には、前工程(S1~S3)において、ガラス転移点の高い方の第1樹脂材が固定子巻線30に塗布され、第1樹脂材のガラス転移点Tg1よりも高い温度での硬化により第1被覆部61が形成される。また、後工程(S4~S5)において、ガラス転移点の低い方の第2樹脂材が固定子巻線30に塗布され、第2樹脂材のガラス転移点Tg2よりも高い温度での硬化により第2被覆部62が形成される。この場合、後工程での第2樹脂材の硬化時には、前工程での第1樹脂材の硬化時よりも過剰に高い温度にする必要が無く、第1被覆部61の破損等の不都合を抑制できる。その結果、固定子巻線30においてガラス転移点が互いに異なる複数の樹脂材により絶縁層(被覆部61,62)を形成する場合に、その絶縁層を適正に形成することができる。
【0053】
固定子巻線30の加熱と第1樹脂材の塗布とが行われた後には固定子巻線30の温度が徐々に低下するが、第1樹脂材のガラス転移点Tg1が第2樹脂材のガラス転移点Tg2よりも高温であると、第1樹脂材の硬化途中又は硬化終了後の巻線温度が、第2樹脂材の硬化に要する硬化温度よりも高いことが考えられる。したがって、第2樹脂材を塗布する際に固定子巻線30の再加熱を行わなくても、第2樹脂材により第2被覆部62の形成が可能となる。この点を鑑み、第1樹脂材が塗布された後の巻線温度の低下途中において、巻線温度が、第2樹脂材のガラス転移点Tg2よりも高温でありかつ第2樹脂材の硬化が可能な温度で維持されている状態で、固定子巻線30に対して第2樹脂材を塗布するようにした(
図6参照)。この場合、後工程での固定子巻線30の再加熱が不要となり、絶縁層形成に要する時間の短縮や、コスト低減を図ることができる。
【0054】
前工程(S1~S3)においてガラス転移点が相対的に高い第1樹脂材の加熱硬化を行う際に、保温カバー75により固定子巻線30の保温を行うようにした(
図9、
図10参照)。この場合、固定子巻線30の加熱停止後における温度低下が緩やかになる。そのため、第1工程での固定子巻線30の加熱温度の低減や、第1樹脂材の硬化に要する時間の短縮が可能となる。
【0055】
また、後工程(S4~S5)において、固定子巻線30の再加熱を行わずに第2樹脂材の塗布及び硬化を行わせる場合に、巻線温度が所望の温度よりも意図せず低下してしまい第2樹脂材の硬化が適正に行われなくなるといった不都合を抑制できる。
【0056】
前工程(S1~S3)において、固定子巻線30の加熱中に巻線に第1樹脂材を塗布するようにした(
図11参照)。これにより、第1樹脂材の塗布時における固定子巻線30の温度低下を抑制し、ひいては第1樹脂材の硬化時間を短縮することができる。第1樹脂材の硬化時間が短くなることで、第1樹脂材が意図しない領域まで流れ落ちるといった不都合を抑制でき、後工程での第2樹脂材の塗布に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0057】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0058】
・
図12に示すように、前工程(S1~S3)では、保温カバー75を用いて巻線温度の低下を抑制するとともに、後工程(S4~S5)では、保温カバー75を用いず巻線温度の低下を抑制しないようにしてもよい。この場合、前工程での樹脂硬化時と後工程での樹脂硬化時とで巻線温度の低下の傾きが相違し、後者の方が巻線温度の低下の傾きが大きい。したがって、前工程では、後工程での第2樹脂材の硬化のための熱需要を見込んで固定子巻線30の放熱を抑止しつつ、後工程では、第2樹脂材の硬化後に、巻線温度を早く常温まで低下させることができる。これにより、被覆部形成に要する時間短縮を図ることができる。
【0059】
・
図13に示すように、第1被覆部61の形成工程と、第2被覆部62の形成工程とにおいてそれぞれ固定子巻線30の加熱を行うようにしてもよい。
【0060】
図13において、期間T11では、固定子巻線30の加熱により、第1樹脂材(ワニス)のガラス転移点Tg1よりも高い所定の昇温温度Th1まで固定子巻線30が昇温される。続いて期間T12では、第1樹脂材の塗布が行われ、期間T13では、第1樹脂材のガラス転移点Tg1よりも高温の温度環境下で第1樹脂材が硬化する。これにより、第1被覆部61が形成される。
【0061】
その後、期間T14では、固定子巻線30の再加熱により、第2樹脂材(粉体樹脂)のガラス転移点Tg2よりも高い所定の昇温温度Th2まで固定子巻線30が昇温される。続いて期間T15では、第2樹脂材の塗布が行われ、期間T16では、第2樹脂材のガラス転移点Tg2よりも高温の温度環境下で第2樹脂材が硬化する。これにより、第2被覆部62が形成される。
【0062】
なお、第2被覆部62の形成工程(期間T4~T6)では、第2樹脂材のガラス転移点Tg2と、再加熱後の環境下における巻線温度の温度降下速度(単位時間当たりの温度降下量)と、ガラス転移点Tg2よりも高い硬化温度で第2樹脂材の硬化に要する硬化時間とに応じて、巻線加熱時の昇温温度Th2が定められているとよい。
【0063】
・上記実施形態では、固定子巻線30を通電により加熱する構成としたが、これを変更してもよい。例えば、加熱装置(熱風炉)内において固定子巻線30を加熱したり、電磁加熱により固定子巻線30を加熱したりすることも可能である。
【0064】
・上記実施形態では、ガラス転移点が相対的に高いワニスとガラス転移点が相対的に低い粉体樹脂とを用い、ワニスを第1樹脂材(第1絶縁樹脂)、粉体樹脂を第2樹脂材(第2絶縁樹脂)としたが、これを変更してもよい。ガラス転移点が相対的に高い粉体樹脂とガラス転移点が相対的に低いワニスとを用いる場合には、粉体樹脂を第1樹脂材(第1絶縁樹脂)、ワニスを第2樹脂材(第2絶縁樹脂)とするとよい。この場合、前工程では、第1絶縁樹脂である粉体樹脂により第1絶縁層(例えば
図4の第2被覆部62に相当)を形成し、後工程では、第2絶縁樹脂であるワニスにより第2絶縁層(例えば
図4の第1被覆部61に相当)を形成するとよい。
【0065】
・2つの絶縁樹脂の組み合わせはワニスと粉体樹脂とに限られない。例えば、2つの絶縁樹脂として、互いにガラス転移点が異なる2種類のワニスを用いたり、互いにガラス転移点が異なる2種類の粉体樹脂を用いたりすることも可能である。
【0066】
・固定子13において、3種類の絶縁樹脂を用いて絶縁層を形成する構成としてもよい。この場合、3種類の絶縁樹脂のうち少なくとも2種類の絶縁樹脂においてガラス転移点が互いに異なっているとよい。この場合にも上記同様、ガラス転移点の高い絶縁樹脂により絶縁層が形成された後に、ガラス転移点の低い絶縁樹脂により別の絶縁樹脂が形成されるとよい。
【0067】
・上記実施形態では、固定子13においてセグメント構造の固定子巻線30を用いる構成としたが、これに限定されず、セグメント構造以外の固定子巻線を用いる構成であってもよい。
【0068】
上述の実施形態から抽出される技術思想を以下に記載する。
[構成1]
導線材(40)が巻回されてなる巻線(30)を有する固定子(13)の製造方法であって、
前記巻線には、ガラス転移点が互いに異なる絶縁樹脂からなる第1絶縁層(61)と第2絶縁層(62)とが形成されており、前記第1絶縁層はガラス転移点の高い方の第1絶縁樹脂からなり、前記第2絶縁層はガラス転移点の低い方の第2絶縁樹脂からなり、
前記巻線に対して前記第1絶縁樹脂を塗布し、かつ当該絶縁樹脂をそのガラス転移点よりも高い温度で硬化させて前記第1絶縁層を形成する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記巻線に対して前記第2絶縁樹脂を塗布し、かつ当該絶縁樹脂をそのガラス転移点よりも高い温度で硬化させて前記第2絶縁層を形成する第2工程と、
を有する固定子の製造方法。
[構成2]
前記第1工程では、前記巻線の加熱を行い、
前記第2工程では、前記第1工程において前記巻線の加熱及び前記第1絶縁樹脂の塗布が行われた後、前記巻線の温度が、前記第2絶縁樹脂のガラス転移点よりも高温でありかつ当該第2絶縁樹脂の硬化が可能な温度で維持されている状態で、前記巻線に対して前記第2絶縁樹脂を塗布する、構成1に記載の固定子の製造方法。
[構成3]
前記第1工程での前記第1絶縁樹脂の塗布後に、保温部材(75)により前記巻線の温度低下を抑制する状態とする、構成1又は2に記載の固定子の製造方法。
[構成4]
前記第1工程において、前記巻線に対して加熱を行っている加熱中に、当該巻線に前記第1絶縁樹脂を塗布する、構成1~3のいずれかに記載の固定子の製造方法。
【符号の説明】
【0069】
13…固定子、30…固定子巻線、40…導体セグメント、61…第1被覆部、62…第2被覆部。