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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179120
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H05B6/12 308
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097687
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 直也
(72)【発明者】
【氏名】星野 晃一
(72)【発明者】
【氏名】及川 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】吉元 信夫
(72)【発明者】
【氏名】横井川 裕司
(72)【発明者】
【氏名】林 伸明
(72)【発明者】
【氏名】森合 史朗
(72)【発明者】
【氏名】南雲 一樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直也
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA13
3K151BA15
(57)【要約】
【課題】基板に導体を巻回することで形成された誘導加熱調理器において、加熱ムラが生じることを抑制する。
【解決手段】誘導加熱調理器は、絶縁性を有する多層の基板と、基板が有する2層にまたがって導体が巻回されて形成された内方コイルと、基板が有する2層にまたがって導体が巻回されて形成され、内方コイルの最外周より外側に形成された外方コイルと、内方コイルと、外方コイルとが独立して接続される電力供給基板と、を備える。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する多層の基板と、
前記基板が有する2層にまたがって導体が巻回されて形成された内方コイルと、
前記基板が有する2層にまたがって導体が巻回されて形成され、前記内方コイルの最外周より外側に形成された外方コイルと、
前記内方コイルと、前記外方コイルとが独立して接続される電力供給基板と、を備える
誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記内方コイルは、
前記基板の第1層に導体が巻回されて形成された第1コイルと、
前記第1コイルと電気的に接続し、前記基板の第2層に導体が巻回されて形成された第2コイルと、を含み、
前記外方コイルは、
前記第1層に導体が巻回されて形成されたコイルであって、前記第1コイルの外周部より外側に形成された第3コイルと、
前記第2層に導体が巻回されて形成されたコイルであって、前記第3コイルと電気的に接続し、前記第3コイルの外周部より外側に形成された第4コイルと、を含む
請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記基板は、
第1基板と、
前記第1基板の下方に設けられた第2基板と、を有し、
前記第1層は、前記第1基板の上面に形成された層であり、
前記第2層は、前記第1基板と前記第2基板の間に形成された層である
請求項2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記基板は、
第1基板と、
前記第1基板の下方に設けられた第2基板と、を有し、
前記第1層は、前記第1基板の上面に形成された層であり、
前記第2層は、前記第2基板の下面に形成された層である
請求項2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記内方コイルと前記電力供給基板と接続する内方接続端子は、前記外方コイルの外周部よりも外側に配置されている
請求項1~4の何れか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記外方コイルと前記電力供給基板と接続する外方接続端子は、前記外方コイルの外周部よりも外側に配置されている
請求項1~4の何れか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
4つの前記外方コイルを有し、
それぞれの前記外方コイルは、前記内方コイルの四方に1つずつ配置されている
請求項1~4の何れか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記基板は、
前記内方コイルと前記外方コイルの間に形成されたスリットを有する
請求項1~4の何れか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項9】
前記基板に設けられ、磁束を被加熱物方向に誘導するフェライトを更に備え、
前記基板は、
前記外方コイルの外周部よりも外側に形成された位置決め穴、を更に有し、
前記フェライトは、前記スリット及び前記位置決め穴に挿入された治具によって前記基板における取付位置が定められる
請求項8に記載の誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、加熱調理を行う誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板となる絶縁体の表面に金属薄膜を巻回することでコイルを形成した誘導加熱調理器が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の誘導加熱調理器は、加熱部の中心部と周縁部とに、それぞれコイルを設けることで、被加熱物を効率良く加熱することを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-043697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の誘導加熱調理器では、中心部と周縁部とに設けられたコイルが接続されているため、独立して制御をすることができない。したがって、特許文献1の誘導加熱調理器では、被加熱物の大きさ及び配置等によっては、加熱ムラが生じることがある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、基板に導体を巻回することで形成されたコイルを有する誘導加熱調理器において、加熱ムラが生じることを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る誘導加熱調理器は、絶縁性を有する多層の基板と、基板が有する2層にまたがって導体が巻回されて形成された内方コイルと、基板が有する2層にまたがって導体が巻回されて形成され、内方コイルの最外周より外側に形成された外方コイルと、内方コイルと、外方コイルとが独立して接続される電力供給基板と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の誘導加熱調理器によれば、内方コイルと外方コイルとが電力供給基板に独立して接続されている。したがって、誘導加熱調理器は、内方コイルと外方コイルとを独立して駆動させることができるため、加熱ムラが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の斜視図である。
図2】実施の形態1の誘導加熱調理器における本体ケース内の構成を説明するための図である。
図3】実施の形態1に係る誘導加熱調理器における内部の構成を示す模式図である。
図4】実施の形態1に係る誘導加熱ユニットとトッププレートとの位置関係を説明するための図である。
図5】実施の形態1に係る誘導加熱ユニットの構成を説明するための図である。
図6】実施の形態1に係る基板を上から視た図である。
図7】実施の形態1に係る基板を下から視た図である。
図8】実施の形態1に係る内方接続端子を示す図である。
図9】実施の形態1に係る内方接続端子とリード線との接続方法を説明するための図である。
図10】実施の形態1に係る基板を右から視た図である。
図11】実施の形態1に係る基板の構造を説明するための図である。
図12】実施の形態1に係る基板の上層を示す図である。
図13】実施の形態1に係る基板の中層を示す図である。
図14】実施の形態1に係る基板の下層を示す図である。
図15】電力供給基板20による電力供給の系統を説明するための図である。
図16】実施の形態2に係る基板を上から視た図である。
図17】実施の形態2に係る基板を下から視た図である。
図18】実施の形態2に係る基板を右から視た図である。
図19】実施の形態2に係る基板の上層を示す図である。
図20】実施の形態2に係る基板の中層を示す図である。
図21】実施の形態2に係る基板の下層を示す図である。
図22】実施の形態3に係る基板を上から視た図である。
図23】実施の形態3に係る基板を下から視た図である。
図24】実施の形態3に係る基板を右から視た図である。
図25】実施の形態3に係る基板の上層を示す図である。
図26】実施の形態3に係る基板の中層を示す図である。
図27】実施の形態3に係る基板の下層を示す図である。
図28】電力供給基板20による電力供給の系統を説明するための図である。
図29】実施の形態4に係る基板を上から視た図である。
図30】実施の形態4に係る基板を下から視た図である。
図31】実施の形態4に係る基板およびフェライトを示す断面図である。
図32】実施の形態4に係る基板およびフェライトを示す断面図である。
図33】実施の形態4に係る基板および治具を示す図である。
図34】実施の形態4に係る治具にセットされた基板を示す図である。
図35】実施の形態4に係る治具にセットされた基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器1の斜視図である。図1に示すように、実施の形態1における誘導加熱調理器1は、電磁誘導を利用して、加熱対象である調理容器および被加熱物(調理物)を加熱する加熱調理器である。誘導加熱調理器1の本体ケース2は、加熱調理を行う機器を収納する。なお、以下の各図では、適宜方向を表す矢印を示している。X方向は、誘導加熱調理器1が設置された状態における右方向である。Y方向は、誘導加熱調理器1が設置された状態における上方向である。Z方向は、誘導加熱調理器1が設置された状態における前方向である。
【0010】
天板となるトッププレート3は、本体ケース2の上部に設置され、被加熱物を入れた金属製の調理容器が載置される。トッププレート3は、例えば、赤外線を透過させる結晶化ガラスを素材とする。実施の形態1におけるトッププレート3は、後述する誘導加熱ユニット10に対応し、トッププレート3の表面に載置された調理容器および被加熱物(以下、これらを被加熱物とする)を誘導加熱できる領域となる2つの加熱エリア4を有する。加熱エリア4は、トッププレート3の裏面に印刷された円形模様により、加熱可能な境界が使用者に示される。
【0011】
また、実施の形態1における誘導加熱調理器1は、操作表示パネル7を上面前部に有する。操作表示パネル7は、各種の調理条件を設定するための操作を受け付け、調理条件の設定値および異常を示す情報を表示する。さらに、実施の形態1における誘導加熱調理器1は、正面から見て左下部にグリル調理器5を有する。グリル調理器5は、誘導加熱調理器1の前面部の左側に設置され、グリル庫5a(図3参照)の開閉を行うグリル扉6を有する。
【0012】
図2は、実施の形態1の誘導加熱調理器1における本体ケース2内の構成を説明するための図である。図2は、トッププレート3を外したものである。誘導加熱調理器1の本体ケース2は、グリル調理器5のグリル庫5aなどに送る空気を外部から取り込むための吸気口8を後部に有する。また、本体ケース2は、グリル庫5a内の被加熱物から発生する煙などを空気とともに排出するための排気口9を有する。
【0013】
また、実施の形態1における誘導加熱調理器1は、2つの誘導加熱ユニット10を有する。誘導加熱ユニット10は、後述するコイルを有し、トッププレート3の加熱エリア4に載置された被加熱物を誘導加熱する。ここで、誘導加熱調理器1が有する誘導加熱ユニット10の数については、2つに限定するものではない。
【0014】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器1における内部の構成を示す模式図である。図3は、誘導加熱調理器1を正面から見たときの内部構成を示す。本体ケース2内には、電力供給基板20が設置される。電力供給基板20は、半導体集積回路、抵抗器、コンデンサー、トランジスタなどの部品が固定され、部品間を銅箔で配線して形成された回路を有する。
【0015】
電力供給基板20は、商用電源(図示せず)から誘導加熱ユニット10に電力を供給する。具体的に、電力供給基板20は、まず商用電源(図示せず)から供給された交流電力を、直流電力に変換して、整流する。そして、変換された直流電力を、操作表示パネル7を介して設定された調理条件の設定値に基づく周波数の交流電力に変換し、リード線12を介して誘導加熱ユニット10に供給する。リード線12は、撚線を絶縁被覆した線である。
【0016】
図4は、実施の形態1に係る誘導加熱ユニット10とトッププレート3との位置関係を説明するための図である。図4では、空気の流れを矢印で示している。誘導加熱ユニット10は、弾性体であるバネ(図示せず)に裏面から支えられ、バネの弾力でトッププレート3の裏面側に押しつけられ、固定される。このとき図4に示すように、誘導加熱ユニット10は、スペーサー11によって、トッププレート3と一定の間隔を保った位置に固定される。スペーサー11は、ゴムなどの弾性部材である。ここで、特に限定するものではないが、例えば、基板102とトッププレート3との間の距離は、約3mm~約4mmである。基板102とトッププレート3との間に隙間を設けることで、加熱された被加熱物からの熱が後述する基板102上のコイルに及ぼす影響を抑えることができる。さらに、吸気口8から流入した空気が基板102に設けられたコイルの上を通過することで、コイルを冷却させることができる。また、基板102から突出したネジなどの突起物によってトッププレート3の裏面に施された印刷が損傷することを抑制することができる。そして、スペーサー11は、被加熱物の温度を計測するためのセンサー(図示せず)とトッププレート3との距離を安定させることができ、温度の検出精度を向上させることができる。
【0017】
図5は、実施の形態1に係る誘導加熱ユニット10の構成を説明するための図である。図5は、誘導加熱ユニット10を分解して示した図である。実施の形態1における誘導加熱ユニット10は、防磁部材101、基板102、フェライト103、保持部材104、および固定ネジ105を有する。
【0018】
防磁部材101は、内方コイル30および外方コイル40(図6参照)において発生した磁気が加熱エリア4外に漏れないようにする非磁性体金属の板状部材である。防磁部材101は、誘導加熱ユニット10の外郭を構成し、内方コイル30および外方コイル40を露出させた形状である。また、防磁部材101は、保持部材104と基板102を挟み、基板102の反りを抑制する。なお、防磁部材101は、必ず取り付けなければならない部材ではない。
【0019】
基板102は、印刷によって形成された内方コイル30および外方コイル40(図6参照)が設けられたプリント基板である。基板102は、絶縁体を材料としている。基板102は、被加熱物からの輻射熱を受けるため、耐熱性を有する基板102である。基板102にソルダーレジストを付すことにより、内方コイル30および外方コイル40などを保護してもよい。以下の説明では、誘導加熱調理器1が設置された状態を基準にして、板状部材である基板102の上側を向いている面を表面とし、表面の反対側の面を裏面とする。
【0020】
図6図10を用いて基板102、ならびに内方コイル30および外方コイル40の外観について簡単に説明する。図6は、実施の形態1に係る基板102を上から視た図である。図7は、実施の形態1に係る基板102を下から視た図である。図6に示すように、基板102には、内方コイル30および外方コイル40が設けられている。内方コイル30および外方コイル40は、銅箔などの薄膜導体であって、基板102に渦巻き状に巻回されている。内方コイル30および外方コイル40は、印刷によって形成されるため、製造する際に銅線を巻く治具を必要とせず、作製できるコイル形状の自由度が高い。内方コイル30および外方コイル40は、リード線12を介して電力供給基板20から電力が供給されることで磁界を発生させ、電磁誘導による渦電流を形成する。内方コイル30は、基板102の表面の中央部に配置されている。外方コイル40は、内方コイル30と同心円状に形成されている。外方コイル40の最内周は、内方コイル30の最外周よりも基板102の表面の外側に配置されている。
【0021】
図7に示すように、基板102の裏面には、接続部50~52が設けられている。接続部50は、銅箔などの薄膜導体からなる。接続部50は、詳細は後述するが、内方コイル30と電気的に接続している。また接続部50には、リード線12が接続される内方接続端子300がハンダなどによって取り付けられている。内方接続端子300は、金属製であり、リード線12と接続部50との間を接続して、電力供給基板20から内方コイル30に電気を流すための入力用の端子である。
【0022】
ここで、内方接続端子300とリード線12との接続方法について図8及び図9を用いて説明する。図8は、実施の形態1に係る内方接続端子300を示す図である。図9は、実施の形態1に係る内方接続端子300とリード線12との接続方法を説明するための図である。内方接続端子300は、図8に示すように、中央部にネジ穴300aが形成されている。図9に示すように、内方接続端子300と、リード線12の端部に接続された端子部12aのネジ穴(図示せず)とに端子用ネジ12bを締めることで、タブ端子が内方接続端子300に固定される。これにより、リード線12と内方接続端子300とが電気的に接続される。これに伴って、電力供給基板20と内方コイル30との間が電気的に接続される。
【0023】
図7に戻り、接続部51は、銅箔などの薄膜導体からなる。接続部51は、詳細は後述するが、外方コイル40と電気的に接続している。また接続部51には、リード線12が接続される外方接続端子400がハンダなどによって取り付けられている。外方接続端子400は、金属製であり、リード線12と接続部51との間を接続して、電力供給基板20から外方コイル40に電気を流すための入力用の端子である。外方接続端子400の構成、および外方接続端子400とリード線12との接続方法については、内方接続端子300と同様であるため、説明を省略する。このように、内方コイル30および外方コイル40は、電力供給基板20に対して独立して接続している。
【0024】
接続部52は、銅箔などの薄膜導体からなる。接続部52は、詳細は後述するが、内方コイル30および外方コイル40と電気的に接続している。また接続部52には、リード線12が接続される共通接続端子500がハンダなどによって取り付けられている。共通接続端子500は、金属製であり、リード線12と接続部52との間を接続して、内方コイル30および外方コイル40から電力供給基板20に電気を流すためのものであって、内方コイル30と外方コイル40とで共用する端子である。共通接続端子500の構成、および共通接続端子500とリード線12との接続方法については、内方接続端子300および外方接続端子400と同様であるため、説明を省略する。
【0025】
図10は、実施の形態1に係る基板102を右から視た図である。図7および図10に示すように、内方接続端子300、外方接続端子400、および共通接続端子500は、基板102の同じ辺に沿って並んで配設される。内方接続端子300と、外方接続端子400と、共通接続端子500とを並んで配設することで、リード線12の接続作業を効率よく行うことができる。また、表面に設けられた外方コイル40を裏面に投影した場合、内方接続端子300、外方接続端子400、および共通接続端子500は、いずれも外方コイル40の最外周よりも外側に位置する。これにより、リード線12を内方コイル30および外方コイル40の下方に引き回さずとも電力供給基板20と、内方接続端子300、外方接続端子400、および共通接続端子500とを接続することができる。よって、内方コイル30および外方コイル40に冷却風を効率よくあてることができる。
【0026】
図5に戻り、フェライト103は、内方コイル30および外方コイル40において発生する磁気による磁束を、トッププレート3を介して誘導加熱ユニット10の上側に位置する被加熱物に導く磁性体である。また、フェライト103は、内方コイル30および外方コイル40の下方への磁束漏れを抑制する。フェライト103が磁束漏れを抑制することで、各種の基板および制御装置(図示せず)が磁気によって誤動作することを防ぐ。実施の形態1では、8つのフェライト103が、それぞれの長手方向が基板102の径方向に沿うように設けられている。
【0027】
保持部材104は、基板102、および基板102との間で挟まれたフェライト103を保持する部材である。また、保持部材104は、固定ネジ105で、基板102と固定され、熱による基板102の反りを抑制する。
【0028】
また、内方接続端子300、外方接続端子400、および共通接続端子500は、保持部材104に形成された貫通孔(図示せず)によって、誘導加熱ユニット10の下部に露出し、リード線12の接続が可能な状態になる。
【0029】
固定ネジ105は、基板102、保持部材104および防磁部材101を固定する。固定ネジ105で締結して基板102、保持部材104および防磁部材101を固定することで、誘導加熱ユニット10を製造する際に、基板102を固定する接着剤を必要としなくてよいため、分解などを容易に行うことができる。ここで、固定ネジ105は、非磁性体である。
【0030】
ここで、図11~14を用いて、内方コイル30および外方コイル40、ならびにこれらを各接続端子に接続するための接続部の導体パターンの詳細な説明を行う。図11は、実施の形態1に係る基板102の構造を説明するための図である。図11は、基板102の上下方向の断面を示している。基板102は、図11に示すように、第1基板102a、および第1基板102aの下方に設けられた第2基板102bを有する。第1基板102aおよび第2基板102bは、多層基板である基板102の非導電性の絶縁層である。また、第1基板102aの表面に形成される導体層を上層111と称し、第2基板102bの裏面に形成される導体層を下層113と称し、第1基板102aと第2基板102bとの間に形成される導体層を中層112と称する。なお、導体層とは、絶縁層の片面の層に形成された導体パターンの全体をいう。図11に示すように、内方コイル30は、上述の上層111および中層112にまたがって形成されている。また、内方コイル30を各接続端子に接続するための接続部50および52が下層113に形成されている。図示は省略するが、外方コイル40についても内方コイル30と同様である。つまり、外方コイル40も上層111および中層112にまたがって形成されている。また、外方コイル40を各接続端子に接続するための接続部51および52が下層113に形成されている。実施の形態1では、上層111が本開示の「第1層」に相当し、中層112が本開示の「第2層」に相当する。
【0031】
各層の内方コイル30および外方コイル40と接続部とは、ビアによって接続される。ビアは、基板102を貫通する開口部であって、開口を囲む部分が金属によってメッキ加工されたものである。図11で示されたビアV1~V3は、ビアの種類を示すものである。第1基板102aおよび第2基板102bを貫通するビアV1は、上層111の導体と下層113の導体とを電気的に接続する。第1基板102aのみを貫通するビアV2は、上層111の導体と中層112の導体とを電気的に接続する。第2基板102bのみを貫通するビアV3は、中層112の導体と下層113の導体とを電気的に接続する。
【0032】
図12は、実施の形態1に係る基板102の上層111を示す図である。図13は、実施の形態1に係る基板102の中層112を示す図である。図14は、実施の形態1に係る基板102の下層113を示す図である。図12~14は、何れも基板102を上から視た場合の図面を示している。以下では各層に形成されている構成、およびそれらの電気的な接続について説明する。
【0033】
まずは、上層111から順に各層に形成されている構成を説明する。図12に示すように、上層111には、内方コイル30の一部である第1コイル31が、薄膜導体が巻回されて形成されている。第1コイル31は、ビア311からビア312に向かって巻回されている。ビア311は、上層111と下層113とを接続するビアV1の1つである。ビア312は、上層111と中層112とを接続するビアV2の1つである。また、上層111には、外方コイル40の一部である第3コイル41が、薄膜導体が巻回されて形成されている。第3コイル41は、ビア411からビア412に向かって巻回されている。ビア411は、上層111と下層113とを接続するビアV1の1つである。ビア412は、上層111と中層112とを接続するビアV2の1つである。
【0034】
図13に示すように、中層112には、内方コイル30の一部である第2コイル32が、薄膜導体が巻回されて形成されている。第2コイル32は、ビア312からビア313に向かって巻回されている。ビア313は、中層112と下層113とを接続するビアV3の1つである。また、中層112には、外方コイル40の一部である第4コイル42が、薄膜導体が巻回されて形成されている。第4コイル42は、ビア412からビア413に向かって巻回されている。ビア413は、中層112と下層113とを接続するビアV3の1つである。
【0035】
図14に示すように、下層113には、接続部50~52が形成されている。接続部50は、前後方向に長い形状であって、上述の内方接続端子300と、ビア311とを接続する。接続部51は、ほぼ四角形の形状であって、上述の内方接続端子300と、ビア411とを接続する。接続部52は、前後方向に長い形状であって、上述の共通接続端子500と、ビア313と、ビア413とを接続する。
【0036】
次に、電気の流れに沿って、各層に形成されている構成の電気的な接続について説明する。なお、括弧内には、各導体が何れの導体層を構成しているかを示している。内方コイル30に関しては、電力供給基板20から供給された電力が、内方接続端子300、接続部50(下層113)、ビア311、第1コイル31(上層111)、ビア312、第2コイル32(中層112)、ビア313、接続部52(下層113)、共通接続端子500の順に流れる。外方コイル40に関しては、電力供給基板20から供給された電力が、外方接続端子400、接続部51(下層113)、ビア411、第3コイル41(上層111)、ビア412、第4コイル42(中層112)、ビア413、接続部52(下層113)、共通接続端子500の順に流れる。
【0037】
図15は、電力供給基板20による電力供給の系統を説明するための図である。図15に示すように、内方コイル30と外方コイル40とは、リード線12によって個別に電力供給基板20に接続され、個別に電力が供給される。このため、誘導加熱調理器1は、内方コイル30および外方コイル40の一方を駆動させ、他方を停止させることができる。例えば、被加熱物が小さい場合は、内方コイル30のみによって加熱し、被加熱物が大きい場合は、内方コイル30および外方コイル40のみによって加熱するようにして、被加熱物を均一に加熱するようにしてもよい。または、誘導加熱調理器1は、一方を高周波駆動させ、他方を低周波駆動させることができる。このように、誘導加熱調理器1は、内方コイル30と外方コイル40とを独立して駆動させることができる。
【0038】
以上のように、実施の形態1の誘導加熱調理器1によれば、内方コイル30と外方コイル40とが電力供給基板20に独立して接続されている。したがって、誘導加熱調理器1は、内方コイル30と外方コイル40とを独立して駆動させることができる。このため、誘導加熱調理器1は、加熱ムラが生じることを抑制することができる。
【0039】
実施の形態2.
実施の形態2の誘導加熱調理器1は、内方コイル30Aおよび外方コイル40Aの導体パターンが実施の形態1と相違する。以下では、実施の形態1との相違点について説明し、共通点についての説明を省略する。
【0040】
まずは、図16図18を用いて、実施の形態2の基板102、ならびに内方コイル30Aおよび外方コイル40Aの外観について簡単に説明する。図16は、実施の形態2に係る基板102を上から視た図である。図17は、実施の形態2に係る基板102を下から視た図である。図16に示すように、基板102には、内方コイル30Aおよび外方コイル40Aが設けられている。
【0041】
図17に示すように、基板102の裏面には、内方コイル30A、外方コイル40A、ならびに接続部53~55が設けられている。接続部53は、銅箔などの薄膜導体からなる。接続部53は、詳細は後述するが、内方コイル30Aと電気的に接続している。また接続部53には、リード線12が接続される内方接続端子300がハンダなどによって取り付けられている。
【0042】
接続部54は、銅箔などの薄膜導体からなる。接続部54は、詳細は後述するが、外方コイル40Aと電気的に接続している。また接続部54には、リード線12が接続される外方接続端子400がハンダなどによって取り付けられている。
【0043】
接続部55は、銅箔などの薄膜導体からなる。接続部55は、詳細は後述するが、外方コイル40Aおよび内方コイル30Aと電気的に接続している。また接続部55には、リード線12が接続される共通接続端子500がハンダなどによって取り付けられている。
【0044】
図18は、実施の形態2に係る基板102を右から視た図である。図17および図18に示すように、内方接続端子300、外方接続端子400、および共通接続端子500は、基板102の同じ辺に沿って並んで配設される。また、内方接続端子300、外方接続端子400、および共通接続端子500は、いずれも外方コイル40Aの最外周よりも外側に位置する。
【0045】
ここで、図19~21を用いて、内方コイル30A、および外方コイル40A、ならびにこれらを各接続端子に接続するための接続部の導体パターンの詳細な説明を行う。図19は、実施の形態2に係る基板102の上層111を示す図である。図20は、実施の形態2に係る基板102の中層112を示す図である。図21は、実施の形態2に係る基板102の下層113を示す図である。図19~21は、何れも基板102を上から見た場合の図面を示している。以下では各層に形成されている構成、およびそれらの電気的な接続について説明する。
【0046】
まずは、上層111から順に各層に形成されている構成を説明する。図19に示すように、上層111には、内方コイル30Aの一部である第1コイル31Aが、薄膜導体が巻回されて形成されている。第1コイル31Aは、ビア322からビア323に向かって巻回されている。ビア322は、上層111と中層112とを接続するビアV2の1つである。ビア323は、上層111と下層113とを接続するビアV1の1つである。また、上層111には、外方コイル40Aの一部である第3コイル41Aが、薄膜導体が巻回されて形成されている。第3コイル41Aは、ビア421からビア422に向かって巻回されている。ビア421は、上層111と下層113とを接続するビアV1の1つである。ビア422は、上層111と下層113とを接続するビアV1の1つである。
【0047】
図20に示すように、中層112には、接続部53aおよび53bが形成されている。接続部53aは、前後方向に長い形状であって、ビア321と、ビア322とを接続する。ビア321は、中層112と下層113とを接続するビアV3の1つである。接続部53bは、前後方向に長い形状であって、ビア324と、ビア325とを接続する。ビア324は、中層112と下層113とを接続するビアV3の1つである。ビア325は、中層112と下層113とを接続するビアV3の1つである。
【0048】
図21に示すように、下層113には、内方コイル30Aの一部である第2コイル32Aが、薄膜導体が巻回されて形成されている。第2コイル32Aは、ビア323からビア324に向かって巻回されている。また、中層112には、外方コイル40Aの一部である第4コイル42Aが、薄膜導体が巻回されて形成されている。第4コイル42Aは、ビア412から接続部55に向かって巻回されている。さらに、下層113には、接続部53~55が形成されている。接続部53は、ほぼ四角形の形状であって、内方接続端子300と、ビア321とを接続する。接続部54は、ほぼ四角形の形状であって、外方接続端子400と、ビア421とを接続する。接続部55は、左右方向に長い形状であって、共通接続端子500と、外方コイル40Aと、ビア325とを接続する。
【0049】
次に、電気の流れに沿って、各層に形成されている構成の電気的な接続について説明する。なお、括弧内には、各導体が何れの導体層を構成しているかを示している。内方コイル30Aに関しては、電力供給基板20から供給された電力が、内方接続端子300、接続部53(下層113)、ビア321、接続部53a(中層112)、ビア322、第1コイル31A(上層111)、ビア323、第2コイル32A(下層113)、ビア324、接続部53b(中層112)、ビア325、接続部55(下層113)、共通接続端子500の順に流れる。外方コイル40Aに関しては、電力供給基板20から供給された電力が、外方接続端子400、接続部54(下層113)、ビア421、第3コイル41A(上層111)、ビア422、第4コイル42A(下層113)、接続部55(下層113)、共通接続端子500の順に流れる。
【0050】
実施の形態2においても、内方コイル30Aと外方コイル40Aとは、リード線12によって個別に電力供給基板20に接続され、個別に電力が供給される。このため、誘導加熱調理器1は、内方コイル30Aおよび外方コイル40Aの一方を駆動させ、他方を停止させることができる。または、誘導加熱調理器1は、一方を高周波駆動させ、他方を低周波駆動させることができる。このように、誘導加熱調理器1は、内方コイル30Aと外方コイル40Aとを独立して駆動させることができる。
【0051】
以上のように、実施の形態2の誘導加熱調理器1によれば、実施の形態1と同様に、内方コイル30Aと外方コイル40Aとが電力供給基板20に独立して接続されている。したがって、誘導加熱調理器1は、内方コイル30Aと外方コイル40Aとを独立して駆動させることができるため、加熱ムラが生じることを抑制することができる。
【0052】
また実施の形態2によれば、内方コイル30Aおよび外方コイル40Aが、上層111および下層113、つまり第1基板102aの表面および第2基板102bの裏面に設けられている。このため、発熱量の大きい内方コイル30Aおよび外方コイル40Aを、内方コイル30Aおよび外方コイル40Aが中層112に設けられた場合と比較して効率よく冷却することができる。
【0053】
なお実施の形態2の内方コイル30Aおよび外方コイル40Aは、上層111および下層113にまたがって形成されている。このため、実施の形態2では、上層111が本開示の「第1層」に相当し、下層113が本開示の「第2層」に相当する。
【0054】
実施の形態3.
実施の形態3の誘導加熱調理器1は、内方コイル30、後方コイル60、前方コイル70、左方コイル80および右方コイル90を有する点で実施の形態1と相違する。以下では、実施の形態1との相違点について説明し、共通点についての説明を省略する。
【0055】
まずは、図22図24を用いて、実施の形態3の基板102、ならびに内方コイル30、後方コイル60、前方コイル70、左方コイル80および右方コイル90の外観について簡単に説明する。図22は、実施の形態3に係る基板102を上から視た図である。図23は、実施の形態3に係る基板102を下から視た図である。図22に示すように、基板102には、内方コイル30、後方コイル60、前方コイル70、左方コイル80および右方コイル90が設けられている。内方コイル30は、実施の形態1と同様の位置に設けられ、同様の導体パターンを有する。後方コイル60は、内方コイル30の後方に設けられている。前方コイル70は、内方コイル30の前方に設けられている。左方コイル80は、内方コイル30の左方に設けられている。右方コイル90は、内方コイル30の右方に設けられている。後方コイル60、前方コイル70、左方コイル80および右方コイル90は、いずれも内方コイル30の最外周よりも基板102の外側に設けられている。このため、後方コイル60、前方コイル70、左方コイル80および右方コイル90は、いずれも本開示の「外方コイル40」の一形態である。つまり、実施の形態3では、4つの外方コイル40が設けられている。
【0056】
図23に示すように、基板102の裏面には、接続部50、および接続部56~58が設けられている。接続部50は、実施の形態1と同様の構成である。接続部56は、銅箔などの薄膜導体からなる。接続部56は、詳細は後述するが、後方コイル60および前方コイル70と電気的に接続している。また接続部56には、リード線12が接続される前後接続端子600がハンダなどによって取り付けられている。前後接続端子600は、金属製であり、リード線12と接続部56との間を接続して、電力供給基板20から後方コイル60および前方コイル70に電気を流すための入力用の端子である。前後接続端子600の構成、および前後接続端子600とリード線12との接続方法については、実施の形態1の内方接続端子300と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
接続部57は、詳細は後述するが、左方コイル80および右方コイル90と電気的に接続している。また接続部57には、リード線12が接続される左右接続端子800がハンダなどによって取り付けられている。左右接続端子800は、金属製であり、リード線12と接続部57との間を接続して、電力供給基板20から左方コイル80および右方コイル90に電気を流すための入力用の端子である。左右接続端子800の構成、および左右接続端子800とリード線12との接続方法については、実施の形態1の内方接続端子300と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
接続部58は、銅箔などの薄膜導体からなる。接続部58は、詳細は後述するが、内方コイル30、後方コイル60、前方コイル70、左方コイル80、および右方コイル90と電気的に接続している。また接続部58には、リード線12が接続される共通接続端子500がハンダなどによって取り付けられている。共通接続端子500は、金属製であり、リード線12と接続部58との間を接続して、内方コイル30、後方コイル60、前方コイル70、左方コイル80、および右方コイル90から電力供給基板20に電気を流すためのものである。共通接続端子500は、内方コイル30と、後方コイル60と、前方コイル70と、左方コイル80と、右方コイル90とで共用する端子である。共通接続端子500の構成、および共通接続端子500とリード線12との接続方法については、実施の形態1の内方接続端子300と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
図24は、実施の形態3に係る基板102を右から視た図である。図23および図24に示すように、内方接続端子300、前後接続端子600、左右接続端子800、および共通接続端子500は、基板102の同じ辺に沿って並んで配設される。また、表面に設けられた後方コイル60、前方コイル70、左方コイル80、および右方コイル90を裏面に投影した場合、内方接続端子300、前後接続端子600、左右接続端子800、および共通接続端子500は、いずれも後方コイル60、前方コイル70、左方コイル80、および右方コイル90の最外周よりも外側に位置する。
【0060】
ここで、図25~27を用いて、内方コイル30、後方コイル60、前方コイル70、左方コイル80、および右方コイル90、ならびにこれらを各接続端子に接続するための接続部の導体パターンの詳細な説明を行う。図25は、実施の形態3に係る基板102の上層111を示す図である。図26は、実施の形態3に係る基板102の中層112を示す図である。図27は、実施の形態3に係る基板102の下層113を示す図である。図25~27は、何れも基板102を上から見た場合の図面を示している。以下では各層に形成されている構成、およびそれらの電気的な接続について説明する。なお、内方コイル30については、実施の形態1と同一であるため、説明を省略する。
【0061】
まずは、上層111から順に各層に形成されている構成を説明する。図25に示すように、上層111には、後方コイル60の一部である第5コイル61が、薄膜導体が巻回されて形成されている。第5コイル61は、ビア611からビア612に向かって巻回されている。ビア611は、上層111と下層113とを接続するビアV1の1つである。ビア612は、上層111と中層112とを接続するビアV2の1つである。また上層111には、前方コイル70の一部である第7コイル71が、薄膜導体が巻回されて形成されている。第7コイル71は、ビア711からビア712に向かって巻回されている。ビア711は、上層111と下層113とを接続するビアV1の1つである。ビア712は、上層111と中層112とを接続するビアV2の1つである。また上層111には、左方コイル80の一部である第9コイル81が、薄膜導体が巻回されて形成されている。第9コイル81は、ビア811からビア812に向かって巻回されている。ビア811は、上層111と下層113とを接続するビアV1の1つである。ビア812は、上層111と中層112とを接続するビアV2の1つである。上層111には、右方コイル90の一部である第11コイル91が、薄膜導体が巻回されて形成されている。第11コイル91は、ビア911からビア912に向かって巻回されている。ビア911は、上層111と下層113とを接続するビアV1の1つである。ビア912は、上層111と中層112とを接続するビアV2の1つである。
【0062】
図26に示すように、中層112には、後方コイル60の一部である第6コイル62が、薄膜導体が巻回されて形成されている。第6コイル62は、ビア612からビア613に向かって巻回されている。ビア613は、中層112と下層113とを接続するビアV3の1つである。また中層112には、前方コイル70の一部である第8コイル72が、薄膜導体が巻回されて形成されている。第8コイル72は、ビア712からビア713に向かって巻回されている。ビア713は、中層112と下層113とを接続するビアV3の1つである。また中層112には、左方コイル80の一部である第10コイル82が、薄膜導体が巻回されて形成されている。第10コイル82は、ビア812からビア813に向かって巻回されている。ビア813は、中層112と下層113とを接続するビアV3の1つである。中層112には、右方コイル90の一部である第12コイル92が、薄膜導体が巻回されて形成されている。第12コイル92は、ビア912からビア913に向かって巻回されている。ビア913は、中層112と下層113とを接続するビアV3の1つである。
【0063】
図27に示すように、下層113には、接続部56~58が形成されている。接続部56は、前後方向に長い形状であって、内方接続端子300と、ビア611と、ビア711とを接続する。接続部57は、基板102の後部から右部及び前部を経由して左部に延びる形状であって、左右接続端子800と、ビア811と、ビア911とを接続する。接続部58は、基板102の中央部から後部、左部、及び前部を経由して右部に延びる形状であって、共通接続端子500と、ビア313と、ビア613と、ビア713と、ビア813と、ビア813とを接続する。
【0064】
次に、電気の流れに沿って、各層に形成されている構成の電気的な接続について説明する。なお、括弧内には、各導体が何れの導体層を構成しているかを示している。内方コイル30に関しては、実施の形態1と同一であるため、説明を省略する。後方コイル60に関しては、電力供給基板20から供給された電力が、前後接続端子600、接続部56(下層113)、ビア611、第5コイル61(上層111)、ビア612、第6コイル62(中層112)、ビア613、接続部58(下層113)、共通接続端子500の順に流れる。前方コイル70に関しては、電力供給基板20から供給された電力が、前後接続端子600、接続部56(下層113)、ビア711、第7コイル71(上層111)、ビア712、第8コイル72(中層112)、ビア713、接続部58(下層113)、共通接続端子500の順に流れる。
【0065】
左方コイル80に関しては、電力供給基板20から供給された電力が、左右接続端子800、接続部57(下層113)、ビア811、第9コイル81(上層111)、ビア812、第10コイル82(中層112)、ビア813、接続部58(下層113)、共通接続端子500の順に流れる。右方コイル90に関しては、電力供給基板20から供給された電力が、左右接続端子800、接続部57(下層113)、ビア911、第10コイル82(上層111)、ビア912、第11コイル91(中層112)、ビア913、接続部58(下層113)、共通接続端子500の順に流れる。
【0066】
図28は、電力供給基板20による電力供給の系統を説明するための図である。図28に示すように、内方コイル30と、後方コイル60および前方コイル70と、左方コイル80および右方コイル90とは、リード線12によって個別に電力供給基板20に接続され、個別に電力が供給される。このため、誘導加熱調理器1は、内方コイル30、後方コイル60および前方コイル70、または左方コイル80および右方コイル90の何れかを駆動させ、残りを停止させることができる。または、誘導加熱調理器1は、内方コイル30、後方コイル60および前方コイル70、または左方コイル80および右方コイル90の何れかを高周波駆動させ、残りを低周波駆動させることができる。このように、誘導加熱調理器1は、内方コイル30と、後方コイル60および前方コイル70と、左方コイル80および右方コイル90とを独立して駆動させることができる。
【0067】
以上のように、実施の形態3の誘導加熱調理器1によれば、実施の形態1と同様に、内方コイル30と、後方コイル60および前方コイル70と、左方コイル80および右方コイル90とが電力供給基板20に独立して接続されている。したがって、誘導加熱調理器1は、内方コイル30と、後方コイル60および前方コイル70と、左方コイル80および右方コイル90とを独立して駆動させることができるため、加熱ムラが生じることを抑制することができる。
【0068】
また実施の形態3の誘導加熱調理器1によれば、後方コイル60、前方コイル70、左方コイル80および右方コイル90を有するため、被加熱物を加熱する位置を細かく調整することができる。したがって、加熱ムラが生じることをより抑制することができる。
【0069】
実施の形態4.
実施の形態4の誘導加熱調理器1は、基板102にスリット120および位置決め穴130が形成されている点で実施の形態1と相違する。以下では、実施の形態1との相違点について説明し、共通点についての説明を省略する。
【0070】
図29は、実施の形態4に係る基板102を上から視た図である。図30は、実施の形態4に係る基板102を下から視た図である。図29および図30に示すように、基板102には、複数のスリット120、および複数の位置決め穴130が形成されている。スリット120は、内方コイル30と外方コイル40との間に形成され、基板102を上下方向に貫通する。複数のスリット120によって、内方コイル30が囲まれている。スリット120は、内方コイル30のほぼ全周を囲むが、内方コイル30および外方コイル40が位置する部分、およびフェライト103が配置される部分には、形成されていない。位置決め穴130は、外方コイル40の最外周よりも外側に形成され、基板102を上下方向に貫通する。位置決め穴130は、後述する治具106の突出部150が概ね嵌合する形状である。
【0071】
図31および図32は、実施の形態4に係る基板102およびフェライト103を示す断面図である。図31は、図30の基板102およびフェライト103をA-A断面で切断した断面を示したものである。つまり、図31は、スリット120を含む断面である。図32は、図30の基板102およびフェライト103をB-B断面で切断した断面を示したものである。つまり、図32は、位置決め穴130を含む断面である。図31および図32に示すように、フェライト103は、シリコーン140によって基板102に接着される。詳細は後述するが、基板102に対するフェライト103の接着位置は、フェライト103の側部に位置するスリット120の端部、および全ての位置決め穴130に治具106が挿入されることで決定される。このため、図31に示すように、各フェライト103の両側部には、スリット120の端部が位置している。また、図32に示すように、各フェライト103の両側部には、位置決め穴130が形成されている。
【0072】
ここで、図33図35を用いて、フェライト103を基板102に接着する手順について説明する。図33は、実施の形態4に係る基板102および治具106を示す図である。図33に示すように、治具106は、底面の寸法が基板102の面とほぼ同じ寸法であって、底面から四方にへりが持ち上がった形状である。治具106には、複数の突出部150が設けられている。突出部150は、フェライト103を接着する位置に対応して設けられる。具体的に、フェライト103は、治具106に基板102をはめ込んだ後、両側部が基板102の径方向に異なる2つの位置で挟みこまれるようにして接着位置が決定される。このため、2つの突出部150を組として、8つのフェライト103に対応する8組が治具106に環状に設けられている。図33では、組の1つを破線P1で示している。また、これらの8組の突出部150のそれぞれの外側に、更に8組の突出部150が治具106に設けられている。図33では、P1の外側に設けられた組を破線P2で示している。
【0073】
図34および図35は、実施の形態4に係る治具106にセットされた基板102を示す図である。図34は、基板102に治具106が挿入された状態での図31と同様の断面を示したものである。図35は、基板102に治具106が挿入された状態での図32と同様の断面を示したものである。第1の接着手順として、基板102の表面が治具106の底面に接するように、基板102を治具106にセットする。このとき、図34に示すように、複数の突出部150が、対向するスリット120に挿入される。スリット120に挿入された突出部150は、スリット120の端部に位置する。また、図35に示すように、複数の突出部150が、対向する位置決め穴130に挿入される。第2の接着手順として、基板102のフェライト103を接着する位置にシリコーン140を塗布する。そして第3の接着手順として、フェライト103をシリコーン140の上に配置する。これにより、フェライト103が基板102の裏面に接着される。スリット120と位置決め穴130とが基板102の径方向において異なる位置に形成されているため、スリット120および位置決め穴130に挿入された複数の突出部150によって、フェライト103の接着位置がずれることが抑制されている。
【0074】
以上のように、実施の形態4の誘導加熱調理器1によれば、実施の形態1と同様に、内方コイル30と外方コイル40とが電力供給基板20に独立して接続されている。したがって、誘導加熱調理器1は、内方コイル30と外方コイル40とを独立して駆動させることができるため、加熱ムラが生じることを抑制することができる。
【0075】
また実施の形態4によれば、基板102にはスリット120が形成されている。このため、基板102の裏面から表面にファンから送風された空気が抜けやすく、基板102の表面の冷却効率を向上させることができる。
【0076】
また実施の形態4によれば、基板102にはスリット120および位置決め穴130が形成されている。スリット120および位置決め穴130に治具106を挿入することで、フェライト103の取付位置を定めることができる。
【0077】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0078】
(付記1)
絶縁性を有する多層の基板と、
前記基板が有する2層にまたがって導体が巻回されて形成された内方コイルと、
前記基板が有する2層にまたがって導体が巻回されて形成され、前記内方コイルの最外周より外側に形成された外方コイルと、
前記内方コイルと、前記外方コイルとが独立して接続される電力供給基板と、を備える
誘導加熱調理器。
(付記2)
前記内方コイルは、
前記基板の第1層に導体が巻回されて形成された第1コイルと、
前記第1コイルと電気的に接続し、前記基板の第2層に導体が巻回されて形成された第2コイルと、を含み、
前記外方コイルは、
前記第1層に導体が巻回されて形成されたコイルであって、前記第1コイルの外周部より外側に形成された第3コイルと、
前記第2層に導体が巻回されて形成されたコイルであって、前記第3コイルと電気的に接続し、前記第3コイルの外周部より外側に形成された第4コイルと、を含む
付記1に記載の誘導加熱調理器。
(付記3)
前記基板は、
第1基板と、
前記第1基板の下方に設けられた第2基板と、を有し、
前記第1層は、前記第1基板の上面に形成された層であり、
前記第2層は、前記第1基板と前記第2基板に挟まれた層である
付記2に記載の誘導加熱調理器。
(付記4)
前記基板は、
第1基板と、
前記第1基板の下方に設けられた第2基板と、を有し、
前記第1層は、前記第1基板の上面に形成された層であり、
前記第2層は、前記第2基板の下面に形成された層である
付記2に記載の誘導加熱調理器。
(付記5)
前記内方コイルと前記電力供給基板と接続する内方接続端子は、前記外方コイルの外周部よりも外側に配置されている
付記1~4の何れか1つに記載の誘導加熱調理器。
(付記6)
前記外方コイルと前記電力供給基板と接続する外方接続端子は、前記外方コイルの外周部よりも外側に配置されている
付記1~5の何れか1つに記載の誘導加熱調理器。
(付記7)
4つの前記外方コイルを有し、
それぞれの前記外方コイルは、前記内方コイルの四方に1つずつ配置されている
付記1~6の何れか1つに記載の誘導加熱調理器。
(付記8)
前記基板は、
前記内方コイルと前記外方コイルの間に形成されたスリットを有する
付記1~7の何れか1つに記載の誘導加熱調理器。
(付記9)
前記基板に設けられ、磁束を被加熱物方向に誘導するフェライトを更に備え、
前記基板は、
前記外方コイルの外周部よりも外側に形成された位置決め穴、を更に有し、
前記フェライトは、前記スリット及び前記位置決め穴に挿入された治具によって前記基板における取付位置が定められる
付記8に記載の誘導加熱調理器。
【符号の説明】
【0079】
1 誘導加熱調理器、2 本体ケース、3 トッププレート、4 加熱エリア、5 グリル調理器、5a グリル庫、6 グリル扉、7 操作表示パネル、8 吸気口、9 排気口、10 誘導加熱ユニット、11 スペーサー、12 リード線、12a 端子部、12b 端子用ネジ、20 電力供給基板、30、30A 内方コイル、31、31A、 第1コイル、32、32A 第2コイル、40、40A 外方コイル、41、41A 第3コイル、42、42A 第4コイル、50~52、53、53a、53b、54、55、56、57、58 接続部、60 後方コイル、61 第5コイル、62 第6コイル、70 前方コイル、71 第7コイル、72 第8コイル、80 左方コイル、81 第9コイル、82 第10コイル、90 右方コイル、91 第11コイル、92 第12コイル、101 防磁部材、102 基板、102a 第1基板、102b 第2基板、103 フェライト、104 保持部材、105 固定ネジ、106 治具、111 上層、112 中層、113 下層、120 スリット、130 位置決め穴、140 シリコーン、150 突出部、300 内方接続端子、300a ネジ穴、311~313、321~325 ビア、400 外方接続端子、411~413、421、422 ビア、500 共通接続端子、600 前後接続端子、611~613 ビア、711~713 ビア、800 左右接続端子、811~813 ビア、911~913 ビア、V1~V3 ビア。
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