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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017913
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/449 20210101AFI20240201BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20240201BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240201BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240201BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240201BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240201BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20240201BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240201BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240201BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/46
H01M10/04 Z
H01M10/058
H01M50/103
H01M50/15
H01G11/52
H01M50/489
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120872
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】伊勢田 泰助
(72)【発明者】
【氏名】西田 晶
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H021
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA03
5E078AB02
5E078AB13
5E078CA10
5H011AA09
5H021BB11
5H021CC04
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH10
5H028AA05
5H028AA07
5H028CC04
5H028CC08
5H028CC11
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL11
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ05
5H029DJ04
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】内部抵抗の低減された電池を提供する。
【解決手段】ここに開示される電池100は、正極活物質層22aを備える正極22と、負極24と、セパレータ70とを含む電極体20を備える。セパレータ70は正極22と対向する面に接着層74を備える。接着層74は、正極活物質層22aと対向するように設けられた第1形成領域74Mと、電池100の上下方向Zまたは長辺方向において、正極活物質層22aの一方の端部よりも外側にはみ出すように設けられた第2形成領域74Uとを有し、第1形成領域74Mの目付が第2形成領域74Uよりも小さい。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層を備える正極と、負極活物質層を備える負極と、セパレータとを含む電極体と、前記電極体を収容する直方体形状の電池ケースと、を備えた電池であって、
前記セパレータは、少なくとも前記正極と対向する面に接着層を備え、
前記接着層は、
前記正極活物質層と対向するように設けられた第1形成領域と、
前記電池の上下方向または長辺方向において、対向する前記正極活物質層の一方の端部よりも外側にはみ出すように設けられた第2形成領域と、
を有し、
前記第1形成領域における前記接着層の目付が、前記第2形成領域における前記接着層の目付よりも小さい、電池。
【請求項2】
前記第2形成領域が、前記正極活物質層と当接している、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記接着層は、前記電池の上下方向または長辺方向において、対向する前記正極活物質層の他方の端部よりも外側にはみ出すように設けられた第3形成領域をさらに有し、
前記第1形成領域における前記接着層の目付が、前記第3形成領域における前記接着層の目付よりも小さい、
請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記第3形成領域が、前記正極活物質層と当接している、
請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記電池ケースが、
開口と、前記開口と対向する底壁と、前記底壁の縁辺から前記開口に向かって延びる側壁と、有する外装体と、
前記開口を封口する封口板と、を有し、
前記電極体は、前記第2形成領域が前記封口板側に位置し、前記第3形成領域が前記底壁側に位置するように、前記電池ケースの内部に配置されており、
前記電池の上下方向において、前記第3形成領域の幅が前記第2形成領域の幅よりも大きい、
請求項3に記載の電池。
【請求項6】
前記第2形成領域が、前記電池の上下方向に沿って間欠的に形成されている、
請求項1または2に記載の電池。
【請求項7】
前記電池ケースが、
開口と、前記開口と対向する底壁と、前記底壁の縁辺から前記開口に向かって延びる側壁と、有する外装体と、
ガス排出弁を備え、前記開口を封口する封口板と、を有し、
前記ガス排出弁の鉛直方向下方に、前記第2形成領域が形成されていない部分が位置している、
請求項6に記載の電池。
【請求項8】
前記電池ケースが、
開口と、前記開口と対向する底壁と、前記底壁の縁辺から前記開口に向かって延びる側壁と、有する外装体と、
電解液の注液孔を備え、前記開口を封口する封口板と、を有し、
前記注液孔の鉛直方向下方に、前記第2形成領域が形成されていない部分が位置している、
請求項6に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極活物質層を備える正極と、負極活物質層を備える負極と、セパレータとを含む電極体と、上記電極体を収容する直方体形状の電池ケースと、を備えた電池が知られている。例えば特許文献1には、セパレータの表面全体に接着剤を塗布し、セパレータを正極および負極の少なくとも一方と一体化させた電極体、および当該電極体を備えた電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5328034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らの検討によれば、セパレータの表面全体にべったり接着剤が塗布されていると、背反として、電極体の内部に電解液が含浸しにくくなったり、接着剤の厚みの分、かえって正負極間の極間距離が広がったりして、内部抵抗が増大する課題があることが判明した。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、接着層を形成することのデメリットが抑えられ、内部抵抗の低減された電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明により、正極活物質層を備える正極と、負極活物質層を備える負極と、セパレータとを含む電極体と、上記電極体を収容する直方体形状の電池ケースと、を備えた電池が提供される。上記セパレータは、少なくとも上記正極と対向する面に接着層を備える。上記接着層は、上記正極活物質層と対向するように設けられた第1形成領域と、上記電池の上下方向または長辺方向において、対向する上記正極活物質層の一方の端部よりも外側にはみ出すように設けられた第2形成領域と、を有し、上記第1形成領域における上記接着層の目付が、上記第2形成領域における上記接着層の目付よりも小さい。
【0006】
正極活物質層と対向する第1形成領域の目付を、正極活物質層の端部よりも外側にはみ出した第2形成領域の目付よりも小さくすることで、セパレータに接着層を形成することのデメリットを抑えることができる。すなわち、セパレータの表面全体にべったり接着剤を塗布する場合に比べて、電極体(特には正極活物質層)の電解液の含浸性を向上すると共に、正負極間の極間距離を狭くして、相対的に内部抵抗を低減できる。
【0007】
また、第2形成領域の目付を相対的に大きくすることにより、セパレータに接着層を形成することのメリットを享受できる。例えば、セパレータの接着層が正極と接着されることで、セパレータがめくれにくくなり、電池の構築時の作業性を向上できる。さらに、セパレータと正極との間に異物が混入することを抑制できる。これにより、とりわけ充電時に正極の電位の上昇によって溶解して負極上で析出する金属異物に起因した微短絡の発生を抑制できる。また、電池の使用時に振動や落下等の衝撃を受けてもセパレータの配置がずれにくくなり、振動耐性を向上できる。したがって、ここに開示される技術によれば、接着層を形成することのデメリットを抑えつつ、接着層を形成することのメリットを享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3図1のIII-III線に沿う模式的な横断面図である。
図4図2のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。
図5】第1実施形態に係る捲回電極体の構成を示す模式図である。
図6】正極と負極とセパレータとの界面を模式的に示す拡大図である。
図7】セパレータの正極と対向する側の表面を示す平面図である。
図8】電池ケースに収容された正極の上端部を表す模式図である。
図9】電池ケースに収容された正極の下端部を表す模式図である。
図10】第2実施形態に係る電池の図2対応図である。
図11】第2実施形態に係る捲回電極体の構成を示す図6対応図である。
図12】第1変形例に係るセパレータの図7対応図である。
図13】第2変形例に係るセパレータの図7対応図である。
図14】第3変形例に係るセパレータの図7対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここで開示される技術のいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」の意と共に、「Aを超える」および「B未満」の意を包含するものとする。
【0010】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して正極と負極の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般をいう。電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。かかる二次電池は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)等も包含する。以下では、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る電池100を模式的に示す斜視図である。電池100は、二次電池であることが好ましく、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池であることがより好ましい。図2は、図1中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。図3は、図1中のIII-III線に沿う模式的な横断面図である。図4は、図2中のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表す。また、図面中の符号Xは、電池100の短辺方向を示し、符号Yは、電池100の長辺方向を示し、符号Zは、電池100の上下方向を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0012】
図1図3に示すように、電池100は、電池ケース10(図1参照)と、複数の捲回電極体20(図2図3参照)と、正極端子30(図1図2参照)と、負極端子40(図1図2参照)と、正極集電部50(図2参照)と、負極集電部60(図2参照)と、を備えている。図示は省略するが、電池100は、ここではさらに電解液を備えている。電池100は非水電解液二次電池である。以下、電池100の具体的な構成について説明する。
【0013】
電池ケース10は、捲回電極体20を収容する筐体である。図1に示すように、電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。図2に示すように、電池ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを封口する封口板(蓋体)14と、を備えている。外装体12および封口板14は、捲回電極体20の収容数(1つまたは複数。ここでは、複数。)や、サイズ等に応じた大きさを有している。
【0014】
外装体12は、図1図2から分かるように、上面に開口12hを有する有底かつ角型の容器である。外装体12は、図1に示すように、底壁12aと、底壁12aの長辺から上方に延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aの短辺から上方に延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。底壁12aは、略矩形状である。底壁12aは、開口12h(図2参照)と対向している。長側壁12bおよび短側壁12cは、「側壁」の一例である。封口板14は、外装体12の開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられた平面略矩形の板状部材である。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、略矩形状である。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。これによって、電池ケース10は気密に封止(密閉)されている。
【0015】
図2に示すように、封口板14には、注液孔15と、ガス排出弁17と、端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後、電池ケース10の内部に電解液を注液するための貫通孔である。注液孔15は、電解液の注液後に封止部材16によって封止されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。
【0016】
電解液としては、従来公知の電池において使用されているものを特に制限なく使用できる。一例として、非水系溶媒に支持塩を溶解させた非水電解液が挙げられる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。電解液は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。
【0017】
正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(図1図2の左端部)に取り付けられている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(図1図2の右端部)に取り付けられている。正極端子30および負極端子40は、端子引出孔18、19に挿通され、封口板14の外側の表面に露出している。正極端子30は、電池ケース10の外側において、板状の正極外部導電部材32と電気的に接続されている。負極端子40は、電池ケース10の外側において、板状の負極外部導電部材42と電気的に接続されている。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、バスバー等の外部接続部材を介して、他の二次電池や外部機器と接続される。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等で構成されている。ただし、正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0018】
図3図4に示すように、本実施形態の電池100では、電池ケース10内に複数個(具体的には2個)の捲回電極体20が収容されている。ただし、1つの外装体12の内部に配置される捲回電極体の数は特に限定されず、3個以上(複数)であってもよいし、1個であってもよい。捲回電極体20の詳しい構造については後述するが、図2に示すように、捲回電極体20の上部には、正極タブ群25と負極タブ群27とが突出している。電池100は、捲回電極体20の上方に正極タブ群25と負極タブ群27とが位置する、所謂、上タブ構造である。図4に示すように、正極タブ群25は正極集電部50と接合された状態で湾曲されている。図示は省略するが、同様に負極タブ群27は、負極集電部60と接合された状態で湾曲されている。
【0019】
正極集電部50は、捲回電極体20の正極タブ群25と正極端子30とを電気的に接続している。正極集電部50は、図2に示すように、封口板14の内側面に沿って長辺方向Yに延びる板状の導電部材である。正極集電部50の一方(図2の右側)の端部は、正極タブ群25と電気的に接続されている。正極集電部50の他方(図2の左側)の端部は、正極端子30の下端部30cと電気的に接続されている。正極端子30および正極集電部50は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましく、例えばアルミニウムやアルミニウム合金で構成されている。
【0020】
負極集電部60は、捲回電極体20の負極タブ群27と負極端子40とを電気的に接続している。負極集電部60は、図2に示すように、封口板14の内側面に沿って長辺方向Yに延びる板状の導電部材である。負極集電部60の一方(図2の左側)の端部は、負極タブ群27と電気的に接続されている。負極集電部60の他方(図2の右側)の端部は、負極端子40の下端部40cと電気的に接続されている。負極端子40および負極集電部60は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましく、例えば銅や銅合金で構成されている。
【0021】
電池100では、捲回電極体20と電池ケース10との導通を防止するために、種々の絶縁部材が用いられている。例えば、図1に示すように、正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、外部絶縁部材92によって封口板14と絶縁されている。また、図2に示すように、封口板14の端子引出孔18、19には、それぞれガスケット90が装着されている。これによって、端子引出孔18、19に挿通された正極端子30および負極端子40が封口板14と導通することを防止できる。また、正極集電部50および負極集電部60と、封口板14の内面側との間には、内部絶縁部材94が配置されている。これにより、正極集電部50および負極集電部60が封口板14と導通することを防止できる。なお、後述する第2実施形態にも示す通り、内部絶縁部材94は、捲回電極体20に向かって突出する突出部を備えていてもよい。
【0022】
さらに、複数の捲回電極体20は、絶縁性の樹脂シートからなる電極体ホルダ29(図3参照)に覆われた状態で、外装体12の内部に配置されている。これによって、捲回電極体20が外装体12と直接接触することを防止できる。なお、上述した各々の絶縁部材の材質は、所定の絶縁性を有している限りにおいて特に限定されない。そのような材質の一例として、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂等の合成樹脂材料が挙げられる。
【0023】
図5は、捲回電極体20の構成を示す模式図である。図5に示すように、捲回電極体20は、帯状の正極22と帯状の負極24とが2枚の帯状のセパレータ70を介して絶縁された状態で積層され、捲回軸WLを中心として長手方向に捲回されて構成されている。なお、図5等における符号LDは、帯状に製造される捲回電極体20およびセパレータ70の長手方向(即ち、搬送方向)を示している。符号WDは、長手方向LDと略直交する方向であり、捲回電極体20およびセパレータ70の捲回軸方向(幅方向でもある)を示している。本実施形態において、捲回軸方向WDは、上記した電池100の上下方向Zと略平行である。
【0024】
捲回電極体20は、ここでは外形が扁平形状である。捲回電極体20は、扁平形状であることが好ましい。扁平形状の捲回電極体20は、例えば筒状に捲回した電極体(筒状体)を扁平にプレス成形することによって形成し得る。扁平形状の捲回電極体20は、図3に示すように、外表面が湾曲した一対の湾曲部20rと、一対の湾曲部20rを連結する外表面が平坦な一対の平坦部20fと、を有している。
【0025】
電池100において、捲回電極体20は、捲回軸方向WDが上下方向Zと略一致するように電池ケース10の内部に収容されている。言い換えれば、捲回電極体20は、捲回軸方向WDが、長側壁12bおよび短側壁12cと略平行になり、かつ底壁12aおよび封口板14と略直交する向きで、電池ケース10の内部に配置されている。図3に示すように、一対の湾曲部20rは、外装体12の一対の短側壁12cと対向している。一対の平坦部20fは、外装体12の長側壁12bと対向している。捲回電極体20の端面(すなわち、正極22と負極24とが積層された積層面、図5の捲回軸方向WDの両端部)は、底壁12aおよび封口板14と対向している。
【0026】
図6は、捲回電極体20の正極22と負極24とセパレータ70との界面を模式的に示す拡大図である。なお、図6における符号MDは、捲回電極体20の積層方向を示し、上記した電池100の短辺方向Xと略平行になる方向である。以下、本実施形態における捲回電極体20の具体的な構成について説明する。
【0027】
正極22は、図5に示すように、帯状の部材である。正極22は、帯状の正極集電体22cと、正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を備えている。正極22は、図6に示すように、セパレータ70の接着層74と対向している。正極22の少なくとも一部は、セパレータ70と接着されている。正極活物質層22aは、電池性能の観点から、正極集電体22cの両面に形成されていることが好ましい。
【0028】
正極22を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、正極集電体22cは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなることが好ましく、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0029】
正極22では、図5に示すように、捲回軸方向WDの一方の端辺から外側(図5の上側)に向かって複数の正極タブ22tが突出している。正極タブ22tが突出する方向は、捲回軸方向WDと略同じ方向である。複数の正極タブ22tは、長手方向LDに沿って所定の間隔を空けて(間欠的に)設けられている。正極タブ22tは、ここでは正極22の一部である。正極タブ22tは、正極活物質層22aが形成されていない領域である。正極タブ22tの一部には、ここでは正極保護層22pが設けられている。ただし、正極タブ22tには正極保護層22pが設けられていなくてもよい。正極タブ22tの少なくとも一部には正極集電体22cが露出している。正極タブ22tは正極22と別の部材であってもよい。
【0030】
複数の正極タブ22tは、ここではそれぞれ台形状である。ただし、正極タブ22tの形状はこれに限定されない。また、複数の正極タブ22tのサイズも特に限定されない。正極タブ22tの形状やサイズは、例えば正極集電部50に接続される状態を考慮し、その形成位置等によって、適宜調整することができる。複数の正極タブ22tは、正極22の捲回軸方向WDの一方の端部(図5の上端部)で積層され、正極タブ群25を構成している(図2参照)。
【0031】
正極活物質層22aは、図5に示すように、正極集電体22cの長手方向LDに沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aの幅(捲回軸方向WDの長さ。以下同じ)は、負極活物質層24aの幅よりも小さい。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物であることが好ましく、なかでもNiを含むものがより好ましい。Niを含むリチウム遷移金属複合酸化物の一例として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が挙げられる。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、導電材、各種添加成分等を含んでいてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質に加えて、バインダと導電材とを含むことが好ましい。バインダは、典型的には樹脂製であり、なかでもポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂が好ましい。導電材としては、アセチレンブラック(AB)等の炭素材料が好ましい。
【0032】
正極保護層22pは、正極活物質層22aよりも電気伝導性が低くなるように構成された層である。正極保護層22pは、図5に示すように、正極集電体22cの長手方向LDに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、捲回軸方向WDにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの捲回軸方向WDの一方の端部、具体的には、正極タブ22tのある側の端部(図5の上端部)に設けられている。正極保護層22pを備えることで、セパレータ70が破損した際に正極22が負極活物質層24aと直接接触して電池100が内部短絡することを防止できる。
【0033】
正極保護層22pは、絶縁性の無機フィラーを含んでいる。無機フィラーの一例として、アルミナ等のセラミック粒子が挙げられる。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、バインダ、導電材、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダおよび導電材は、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0034】
負極24は、図5に示すように、帯状の部材である。負極24は、帯状の負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を備えている。負極24は、図6に示すように、ここではセパレータ70の基材層72と対向している。負極24は、セパレータ70の基材層72と接着されていてもよい。負極活物質層24aは、電池性能の観点から、負極集電体24cの両面に形成されていることが好ましい。
【0035】
負極24を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、負極集電体24cは、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなることが好ましく、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0036】
負極24では、図5に示すように、捲回軸方向WDの一方の端辺から外側(図5の上側)に向かって負極タブ24tが突出している。複数の負極タブ24tは、長手方向LDに沿って所定の間隔を空けて(間欠的に)設けられている。捲回軸方向WDにおいて、負極タブ24tは正極タブ22tと同じ側の端部に設けられている。負極タブ24tは、ここでは負極24の一部である。負極タブ24tは、ここでは負極活物質層24aが形成されておらず、負極集電体24cが露出した領域である。ただし、負極活物質層24aの一部が負極タブ24tにまではみ出して付着してもよい。また、負極タブ24tは負極24とは別の部材であってもよい。
【0037】
複数の負極タブ24tは、ここではそれぞれ台形状である。ただし、複数の負極タブ24tの形状やサイズは、正極タブ22tと同様に適宜調整することができる。複数の負極タブ24tは、負極24の捲回軸方向WDの一方の端部(図5の上端部)で積層され、負極タブ群27を構成している(図2参照)。
【0038】
負極活物質層24aは、図5に示すように、負極集電体24cの長手方向LDに沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aの幅は、正極活物質層22aの幅よりも大きい。なお、負極活物質層24aの幅とは、厚みが略一定である部分の捲回軸方向WDの長さをいい、例えば負極活物質層24aの一部が負極タブ24tにまではみ出して付着していても、負極タブ24tの部分を含まないものとする。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質を含んでいる。負極活物質は、例えば、黒鉛等の炭素材料や、シリコン材料が好ましい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、導電材、各種添加成分等を含んでいてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質に加えて、バインダを含むことが好ましい。バインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類や、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を含むことが好ましい。負極活物質層24aは、必要に応じて導電材として炭素材料を含んでもよい。
【0039】
セパレータ70は、図5に示すように、帯状の部材である。セパレータ70は、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁シートである。セパレータ70の幅は、負極活物質層24aの幅よりも大きい。正極22と負極24との間にセパレータ70を介在させることによって、正極22と負極24との接触を防止すると共に、正極22と負極24との間に電荷担体(例えばリチウムイオン)を移動させることができる。
【0040】
セパレータ70は、ここでは1つの捲回電極体20に2枚使用されている。セパレータ70は、本実施形態のように1つの捲回電極体20に2枚、すなわち、第1セパレータおよび第2セパレータを含むことが好ましい。ここに開示される技術は、第1セパレータおよび第2セパレータのうちの少なくとも一方に適用されており、両方に適用されていることが好ましい。また、ここでは2枚のセパレータが同様の構成であるが、それぞれ異なる構成であってもよい。
【0041】
図6に示すように、セパレータ70は、基材層72と、基材層72の正極22と対向する面に形成された接着層74と、を備えている。ここではさらに、基材層72と接着層74との間に耐熱層73を備えている。接着層74は、正極22と対向する側の最表面を構成している。セパレータ70は、例えば加熱やプレス成形等によって、接着層74が正極22と接着(例えば圧着)されることにより、正極22と一体化されている。これにより、セパレータ70がめくれにくくなり、電池100の構築時の作業性を向上できる。また、セパレータ70と正極22との間に異物が混入することを抑制でき、金属異物に起因した微短絡の発生を抑制できる。さらに、電池100の使用時に振動や落下等の衝撃を受けてもセパレータ70の配置がずれにくくなり、振動耐性を向上できる。
【0042】
セパレータ70は、負極24と対向する面に、耐熱層73および/または接着層74を備えていてもよいし、負極24と対向する面に耐熱層73および/または接着層74を備えていなくてもよい。セパレータ70は、図6に示すように、ここでは負極24と対向する面に耐熱層73および接着層74を備えていない。基材層72は、ここでは負極24と対向する側の最表面を構成している。負極24は、基材層72と対向していることが好ましい。セパレータ70は、例えば基材層72を介して負極24と接着されていてもよい。
【0043】
基材層72としては、従来公知の電池のセパレータに用いられる微多孔膜を特に制限なく使用できる。基材層72は、多孔質のシート状部材であることが好ましい。基材層72は、単層構造であってもよく、2層以上の構造、例えば3層構造であってもよい。基材層72は、少なくとも負極24と対向する面が、ポリオレフィン樹脂からなることが好ましい。基材層72は、全体がポリオレフィン樹脂からなることがより好ましい。これによって、セパレータ70の柔軟性を充分に確保し、捲回電極体20の作製(捲回およびプレス成形)を容易に実施できる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはこれらの混合物が好ましく、PEからなることがさらに好ましい。
【0044】
特に限定されるものではないが、基材層72の厚み(積層方向MDの長さ。以下同じ)は、3~25μmが好ましく、3~18μmがより好ましく、5~14μmがさらに好ましい。基材層72の透気度は、30~500sec/100ccが好ましく、30~300sec/100ccがより好ましく、50~200sec/100ccがさらに好ましい。基材層72は、例えば加熱やプレス成形等によって負極活物質層24aと接着される程度の接着性を有していてもよい。
【0045】
耐熱層73は、基材層72の上に設けられている。耐熱層73は、基材層72の上に形成されていることが好ましい。耐熱層73は、基材層72の表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して基材層72の上に設けられていてもよい。ただし、耐熱層73は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。耐熱層73は、ここでは基材層72の正極22と対向する面全体に設けられている。これにより、セパレータ70の熱収縮をより的確に抑え、電池100の安全性の向上に貢献できる。耐熱層73は、例えば加熱やプレス成形等によって正極活物質層22aと接着される程度の接着性を有していない。耐熱層73の目付は、ここではセパレータ70の長手方向LDおよび捲回軸方向WDに均質である。特に限定されるものではないが、耐熱層73の厚みは、0.3~6μmが好ましく、0.5~6μmがより好ましく、1~4μmがさらに好ましい。耐熱層73は、無機フィラーと耐熱層バインダとを含むことが好ましい。
【0046】
無機フィラーとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できる。無機フィラーは、絶縁性のセラミック粒子を含むことが好ましい。なかでも、耐熱性、入手容易性等を考慮すると、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア等の無機酸化物や、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、ベーマイト等の粘土鉱物が好ましく、アルミナ、ベーマイトがより好ましい。また、セパレータ70の熱収縮を抑制する観点からは、特にアルミニウムを含む化合物が好ましい。耐熱層73の総質量に対する無機フィラーの割合は、85質量%以上が好ましく、90質量%以上、さらには95質量%以上がより好ましい。
【0047】
耐熱層バインダとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できる。具体例として、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。なかでもアクリル系樹脂が好ましい。
【0048】
接着層74は、正極22と対向する面に設けられ、正極22と当接している。接着層74は、図6に示すように、少なくともセパレータ70の正極22側の面に形成されていることが好ましい。これにより、上記したような効果がより良く発揮される。接着層74は、例えば加熱や押圧(典型的にはプレス成形)等によって、正極22と接着されている。
【0049】
接着層74は、ここでは耐熱層73の上に設けられている。接着層74は、耐熱層73の上に形成されていることが好ましい。接着層74は、耐熱層73の表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して耐熱層73の上に設けられていてもよい。また、基材層72の表面に直接設けられていてもよいし、耐熱層73以外の層を介して基材層72の上に設けられていてもよい。接着層74の構成は特に限定されず、従来公知のものと同様であってよい。接着層74は、電解液との親和性が、例えば耐熱層73と比べて相対的に高く、電解液を吸収して膨潤する層であり得る。接着層74は、接着層バインダを含んでいる。
【0050】
接着層バインダとしては、正極22に対して一定の粘性を有する従来公知の樹脂材料を特に制限なく使用できる。具体例として、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。なかでも、高い柔軟性を有し、正極22に対する接着性をより好適に発揮できることから、フッ素系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。接着層バインダの種類は、耐熱層バインダと同じであってもよく、異なっていてもよい。接着層74の総質量に対する耐熱層バインダの割合は、20質量%以上が好ましく、50質量%以上、さらには70質量%以上がより好ましい。これにより、正極22に対して所定の接着性が的確に発揮されるとともに、プレス成形においてセパレータ70が変形しやすくなる。
【0051】
接着層74は、接着層バインダに加えて、他の材料(例えば、耐熱層73の成分として挙げた無機フィラー等)を含んでいてもよい。接着層74が無機フィラーを含む場合、接着層74の総質量に対する無機フィラーの割合は、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0052】
図7は、セパレータ70の正極22と対向する側の表面を示す平面図である。図7に示すように、接着層74は、平面視において、耐熱層73よりも小さい面積で形成されている。すなわち、耐熱層73は、セパレータ70の正極22側の面の一部に露出している。図6図7に示すように、接着層74は、ここでは捲回軸方向WDにおいて3つの領域に区分けされている。接着層74は、捲回軸方向WDの中央部に設けられた第1形成領域74Mと、捲回軸方向WDの一方の端部(図6図7の上端部)に設けられた第2形成領域74Uと、捲回軸方向WDの他方の端部(図6図7の下端部)に設けられた第3形成領域74Dと、を有する。捲回軸方向WDにおいて、第3形成領域74Dは第2形成領域74Uと反対側の端部に設けられている。ただし、第3形成領域74Dは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。また、他の実施形態において、第2形成領域74Uを捲回軸方向WDの下端部に設けることもできる。
【0053】
第1形成領域74Mは、図7に示すように、捲回軸方向WDにおいて、第2形成領域74Uと第3形成領域74Dとの間に設けられている。第1形成領域74Mは、セパレータ70の長手方向LDに沿って線状(帯状)に形成されている。第1形成領域74Mにおいて、接着層74の表面はフラット(所謂、ベタ塗り)であってもよいが、凸凹である(部分的に厚みが異なっている)ことが好ましい。第1形成領域74Mにおいて、接着層74自体は部分的に形成されていてもよい。接着層74は、平面視で、ドット状、ストライプ状、波状、帯状(筋状)、破線状又はこれらの組み合わせ等の形状に形成されていることが好ましい。これにより、捲回電極体20の内部への電解液の含浸性を向上できる。なお、本明細書において、「形成領域が線状に形成されている」とは、形成領域として線状であることをいい、接着層74自体はドット状等であってもよいことをいう。
【0054】
第1形成領域74Mは、図6に示すように、正極活物質層22aの少なくとも一部と対向するように設けられている。第1形成領域74Mの幅Aは、ここでは正極活物質層22aの幅よりも小さい。特に限定されるものではないが、正極活物質層22aの幅に対する第1形成領域74Mの幅の比は、0.9~1.1であることが好ましく、0.95~1.05であることがより好ましい。これにより、上記したような効果、例えば、セパレータ70のめくれを抑制する効果、および振動耐性を向上する効果、のうちの少なくとも1つを、高いレベルで発揮できる。また、セパレータ70と正極活物質層22aとの間に異物が混入することを高いレベルで抑制する観点からは、第2形成領域74Uと正極活物質層22aの端部とが略重なることが好ましく、上記比が、0.9~1.0であることが好ましく、0.95~1.0であることがより好ましい。
【0055】
ここに開示される技術では、第1形成領域74Mにおける接着層74の目付が、第2形成領域74Uにおける接着層74の目付よりも小さい。さらにここでは、第1形成領域74Mにおける接着層74の目付が、第3形成領域74Dにおける接着層74の目付よりも小さい。接着層74の目付を、「第1形成領域74M<第2形成領域74U」とすることで、捲回電極体20(特には正極活物質層22a)の電解液の含浸性を向上すると共に、正極22と負極24と間の極間距離を狭くして、内部抵抗を低減できる。
【0056】
第1形成領域74Mにおける接着層74の目付は、0.005g/m以上が好ましく、0.01g/m以上がより好ましく、0.02g/m以上がさらに好ましい。また、2.0g/m以下が好ましく、1.0g/m以下がより好ましく、0.05g/m以下がさらに好ましい。これにより、上記した効果をより高いレベルで発揮できる。なお、本明細書において「目付」とは、接着層74の質量を形成領域の面積で割った値(接着層74の質量/形成領域の面積)をいう。
【0057】
第2形成領域74Uは、図7に示すように、第1形成領域74Mよりも捲回軸方向WDの上端側に設けられている。第2形成領域74Uは、セパレータ70の長手方向LDに沿って線状に(連続的に)形成されている。第2形成領域74Uは、第1形成領域74Mと平行に形成されている。第2形成領域74Uは、第1形成領域74Mの上端から連続的に形成されている。第2形成領域74Uは、第1形成領域74Mに接し、捲回軸方向WDにおいて、第1形成領域74Mと第2形成領域74Uとの間に隙間は空いていない。第2形成領域74Uにおいて、接着層74の表面はフラット(所謂、ベタ塗り)であってもよいし、凸凹であってもよい。第2形成領域74Uにおいて、接着層74は、平面視で、ドット状、ストライプ状等の形状に形成されていてもよい。第2形成領域74Uは、「対向する正極活物質層22aの一方の端部よりも外側にはみ出すように設けられた第2形成領域」の一例である。
【0058】
第2形成領域74Uは、図6に示すように、ここでは第1形成領域74Mの上端よりも上方に位置している。第2形成領域74Uは、捲回電極体20において、第1形成領域74Mおよび第3形成領域74Dよりも正極タブ群25に近い側に配置される。第2形成領域74Uは、セパレータ70のタブ側端部を構成している。第2形成領域74Uは、電池100において、第1形成領域74Mおよび第3形成領域74Dよりも封口板14に近い側に配置される。
【0059】
第2形成領域74Uは、少なくとも、対向する正極活物質層22aの上端よりも上方(外側)にはみ出すように設けられている。第2形成領域74Uは、例えば正極集電体22c(詳しくは、正極タブ22t)と対向するように設けられている。第2形成領域74Uは、ここでは正極活物質層22aの端部と正極保護層22pと正極集電体22cとに対向している。第2形成領域74Uは、正極活物質層22aと当接していることが好ましい。これにより、上記したような効果、例えば、セパレータ70のめくれを抑制する効果、異物の混入を防止する効果、振動耐性を向上する効果、のうちの少なくとも1つを、高いレベルで発揮でき、特には振動耐性を向上する効果を高められる。
【0060】
第2形成領域74Uは、正極活物質層22aの捲回軸方向WDの上端を覆うように設けられていることが好ましい。また、第2形成領域74Uは、積層方向MDの位置が、負極活物質層24aと重なるように設けられていることが好ましい。言い換えれば、第2形成領域74Uの上端が、負極活物質層24aの上端よりも上方(外側)に位置していることが好ましい。第2形成領域74Uの幅は、ここでは第1形成領域74Mの幅よりも小さい。特に限定されるものではないが、第2形成領域74Uの幅は、正極活物質層22aの上端から負極活物質層24aの上端までの間隔I1(図6参照)を1(基準)とした場合、例えば、0.5~2.5、好ましくは0.8~2.3、より好ましくは1.0~2.0の範囲であるとよい。
【0061】
第2形成領域74Uにおける接着層74の目付は、第1形成領域74Mにおける接着層74の目付よりも大きい。これにより、セパレータ70が縮もうとすることを好適に抑制できる。第2形成領域74Uにおける接着層74の目付は、0.005g/m以上が好ましく、0.01g/m以上がより好ましく、0.02g/m以上がさらに好ましい。また、2.0g/m以下が好ましく、1.0g/m以下がより好ましく、0.05g/m以下がさらに好ましい。また、第1形成領域74Mの目付に対する第2形成領域74Uの目付の比(第2形成領域74U/第1形成領域74M)は、1.01~50が好ましく、1.10~30がより好ましく、1.50~10がさらに好ましい。これにより、上記した効果をより高いレベルで発揮できる。
【0062】
第3形成領域74Dは、図7に示すように、第1形成領域74Mよりも捲回軸方向WDの下端側に設けられている。第3形成領域74Dは、セパレータ70の長手方向LDに沿って線状に(連続的に)形成されている。第3形成領域74Dは、第1形成領域74Mと平行に形成されている。第3形成領域74Dは、第1形成領域74Mの下端から連続的に形成されている。第3形成領域74Dは、第1形成領域74Mに接し、捲回軸方向WDにおいて、第1形成領域74Mと第3形成領域74Dとの間に隙間は空いていない。第3形成領域74Dにおいて、接着層74の表面はフラット(所謂、ベタ塗り)であってもよいし、凸凹であってもよい。第3形成領域74Dにおいて、接着層74は、平面視で、ドット状、ストライプ状等の形状に形成されていてもよい。第3形成領域74Dは、「対向する正極活物質層22aの他方の端部よりも外側にはみ出すように設けられた第3形成領域」の一例である。
【0063】
第3形成領域74Dは、図6に示すように、ここでは第1形成領域74Mの下端よりも下方に位置している。第3形成領域74Dは、電池100において、第1形成領域74Mおよび第2形成領域74Uよりも底壁12aに近い側(言い換えれば、封口板14とは反対側)に配置される。第3形成領域74Dは、セパレータ70の底壁側端部を構成している。第3形成領域74Dを有することで、セパレータ70の底壁側端部にコシを持たせて、弾性を高めることができる。これにより、第3形成領域74Dが捲回電極体20のクッションとして機能し、振動耐性をさらに向上できる。
【0064】
第3形成領域74Dは、少なくとも、対向する正極活物質層22aの下端よりも下方(外側)にはみ出すように設けられている。第3形成領域74Dは、例えば正極22を介在させずに別のセパレータ70と直接対向するように設けられている。第3形成領域74Dは、ここでは正極活物質層22aの端部と別のセパレータ70とに対向している。第3形成領域74Dは、正極活物質層22aと当接していることが好ましい。これにより、上記したような効果、例えば、セパレータ70のめくれを抑制する効果、異物の混入を防止する効果、振動耐性を向上する効果、のうちの少なくとも1つを、高いレベルで発揮でき、特には振動耐性を向上する効果を高められる。
【0065】
第3形成領域74Dは、正極活物質層22aの捲回軸方向WDの下端を覆うように設けられていることが好ましい。また、第3形成領域74Dは、積層方向MDにおいて、負極活物質層24aと重なるように設けられていることが好ましい。言い換えれば、第3形成領域74Dの下端が、負極活物質層24aの下端よりも上方(外側)に位置していることが好ましい。第3形成領域74Dの幅は、ここでは第1形成領域74Mの幅よりも小さい。第3形成領域74Dの幅は、ここでは第2形成領域74Uの幅と略同じである。ただし、後述する変形例にも記載するように、第3形成領域74Dの幅は、第2形成領域74Uの幅より大きくてもよい。また、第2形成領域74Uの幅より小さくてもよい。第3形成領域74Dの幅は、正極活物質層22aの下端から負極活物質層24aの下端までの間隔I2(図6参照)を1(基準)とした場合、例えば、0.5~2.5、好ましくは0.8~2.3、より好ましくは1.0~2.0の範囲であるとよい。
【0066】
第3形成領域74Dにおける接着層74の目付は、第1形成領域74Mにおける接着層74の目付よりも大きい。これにより、セパレータ70が縮もうとすることを好適に抑制できる。また、このような目付の第3形成領域74Dを備えることで、上記したような効果、例えば、セパレータ70のめくれを抑制する効果、異物の混入を防止する効果、振動耐性を向上する効果、のうちの少なくとも1つを、高いレベルで発揮できる。第3形成領域74Dにおける目付は、第2形成領域74Uにおける接着層74の目付と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0067】
第3形成領域74Dにおける接着層74の目付は、0.005g/m以上が好ましく、0.01g/m以上がより好ましく、0.02g/m以上がさらに好ましい。また、2.0g/m以下が好ましく、1.0g/m以下がより好ましく、0.05g/m以下がさらに好ましい。また、第1形成領域74Mの目付に対する第3形成領域74Dの目付の比(第3形成領域74D/第1形成領域74M)は、1.01~50が好ましく、1.10~30がより好ましく、1.50~10がさらに好ましい。これにより、上記した効果をより高いレベルで発揮できる。
【0068】
図6図7に示すように、セパレータ70のタブ側端部(図6図7の上側の端部)において、第2形成領域74Uよりも上方(外側)には、接着層74が形成されずに耐熱層73が露出した未形成部N1が設けられている。第2形成領域74Uよりも上方に未形成部N1を設けることで、捲回電極体20のガス抜け性を向上して、ガス噛みの発生を抑制できる。未形成部N1の幅B1は、ここでは第2形成領域74Uの幅よりも小さい。特に限定されるものではないが、未形成部N1の幅B1(図6参照)は、概ね5mm以下、例えば1~3mmであるとよく、ここでは1.7mmである。
【0069】
ここで、図6に示すように、負極活物質層24aの上端からセパレータ70の未形成部N1の上端までの幅、言い換えれば、セパレータ70のうち、対向する負極活物質層24aの上端よりも上側(タブ側端部の側)にはみ出したタブ側端部の出代をC1とする。出代C1は、セパレータ70の負極活物質層24aと対向していない領域である。このとき、未形成部N1の幅B1と出代C1とは、0<B1≦C1を満たすことが好ましい。また、対向する正極活物質層22aの上端から未形成部N1の上端までの幅をD1とする。幅D1は、セパレータ70の正極活物質層22aと対向していない領域である。このとき、幅C1と幅D1は、典型的にはC1<D1を満たしている。また、幅B1と幅D1は、0<B1≦D1を満たすことが好ましい。また、正極活物質層22aの上端から負極活物質層24aの上端までの間隔I1は、ここでは未形成部N1の幅B1よりも大きい。特に限定されるものではないが、間隔I1は、概ね5mm以下、例えば1~3mmであるとよく、ここでは2mmである。
【0070】
また、図6図7に示すように、セパレータ70の底壁側端部(図6図7の下側の端部)において、第3形成領域74Dよりも下方(外側)には、接着層74が形成されずに耐熱層73が露出した未形成部N2が設けられている。第3形成領域74Dよりも下方に未形成部N2を設けることで、電解液の含浸性を高められる。未形成部N2の幅B2は、ここでは第3形成領域74Dの幅よりも小さい。未形成部N2の幅B2は、ここではタブ側端部の側の未形成部N1の幅B1よりも小さい。特に限定されるものではないが、未形成部N2の幅B2は、概ね5mm以下、例えば1~3mmであるとよく、ここでは1.6mmである。
【0071】
ここで、図6に示すように、負極活物質層24aの下端からセパレータ70の未形成部N2の下端までの幅、言い換えれば、セパレータ70のうち、対向する負極活物質層24aの下端よりも下側(底壁側端部の側)にはみ出した底壁側端部の出代をC2とする。出代C2は、セパレータ70の負極活物質層24aと対向していない領域である。出代C2は、ここではタブ側端部の出代C1と略同じ長さである。ただし、出代C2は、出代C1よりも長くてもよいし、短くてもよい。またこのとき、未形成部N2の幅B2と出代C2は、0<B2≦C2を満たすことが好ましい。また、対向する正極活物質層22aの下端から未形成部N2の下端までの幅をD2とする。幅D2は、セパレータ70の正極活物質層22aと対向していない領域である。このとき、幅C2と幅D2は、典型的にはC2<D2を満たしている。また、幅B2と幅D2は、0≦B2≦D2を満たすことが好ましい。また、正極活物質層22aの下端から負極活物質層24aの下端までの間隔I2は、ここでは未形成部N2の幅よりも大きい。特に限定されるものではないが、間隔I2は、概ね5mm以下、例えば1~3mm、ここでは1.6mmである。
【0072】
図8は、電池ケース10に収容された正極22の上端部を表す模式図である。図8に示すように、セパレータ70のタブ側端部は、例えば電池100の構築時に正極タブ群25を湾曲させたり、封口板14あるいは封口板14と捲回電極体20との間に介在される内部絶縁部材94等と接触したりすることで、電池ケース10内において折り曲げられた状態であり得る。ここでは、対向する2枚のセパレータ70のタブ側端部が、正極活物質層22aの側にそれぞれ折り曲げられ、領域A1で対向する正極集電体22cと接着されている。正極活物質層22aの上端は、2枚のセパレータ70で覆われていることが好ましい。相対的に目付が大きい第2形成領域74U同士が正極集電体22cを介して接着されることで、セパレータ70のタブ側端部に強いコシを持たせることができる。これにより、振動や落下等の衝撃を受けても正極活物質層22aが封口板14や内部絶縁部材94と干渉しにくくなり、正極活物質層22aの損傷を抑制できる。
【0073】
図9は、電池ケース10に収容された正極22の下端部を表す模式図である。図9に示すように、セパレータ70の底壁側端部は、例えば電池100の構築時に電極体ホルダ29を介して外装体12の底壁12aに押し付けられたり、捲回電極体20の自重が負荷されたりして、電池ケース10内において折り曲げられた状態であり得る。ここでは、対向する2枚のセパレータ70の底壁側端部が、正極活物質層22aの側にそれぞれ折り曲げられ、対向する第3形成領域74D同士が領域A2で接着されている。正極活物質層22aの下端は、2枚のセパレータ70で覆われていることが好ましい。相対的に目付が大きい第3形成領域74D同士が接着されることで、セパレータ70の底壁側端部に強いコシを持たせて、弾性を高めることができる。これにより、振動や落下等の衝撃を受けても正極活物質層22aが底壁12aと干渉しにくくなり、正極活物質層22aの損傷を抑制できる。
【0074】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態に係る電池200の図2対応図である。図10に示すように、電池200は、捲回電極体20にかえて捲回電極体120を備えている。電池200では、捲回電極体120の配置が第1実施形態とは異なっている。ゆえに、電池200は、正極タブ群25および負極タブ群27にかえて、正極タブ群125および負極タブ群127を備えている。電池200は、正極集電部50および負極集電部60にかえて、正極集電部150および負極集電部160を備えている。電池200は、内部絶縁部材94にかえて内部絶縁部材194を備えている。電池200は、これらのこと以外、上記した第1実施形態の電池100と同様であってよい。
【0075】
捲回電極体120は、ここでは捲回軸方向WDが長辺方向Yと略一致するように電池ケース10の内部に収容されている。言い換えれば、捲回電極体120は、捲回軸方向WDが、底壁12aおよび封口板14と略平行になり、かつ長側壁12bおよび短側壁12cと略直交する向きで、電池ケース10の内部に配置されている。一対の湾曲部は、外装体12の底壁12aおよび封口板14と対向している。一対の平坦部は、外装体12の長側壁と対向している。捲回電極体120の端面(すなわち、正極22と負極24とが積層された積層面)は、一対の短側壁12cと対向している。なお、捲回電極体120を構成する各部の材質、構成等は、第1実施形態の捲回電極体20と同様であってよい。
【0076】
第1実施形態とは異なり、正極タブ群125は、長辺方向Yの一方の端部(図10の左端部)に設けられている。負極タブ群127は、長辺方向Yの他方の端部(図10の右端部)に設けられている。負極タブ群127は、長辺方向Yにおいて、正極タブ群125と反対側の端部に設けられている。電池200は、捲回電極体120の左右に正極タブ群125および負極タブ群127が位置する、所謂、横タブ構造である。正極タブ群125には正極集電部150が付設されている。正極タブ群125は、正極集電部150を介して正極端子30と電気的に接続されている。負極タブ群127には負極集電部160が付設されている。負極タブ群127は、負極集電部160を介して負極端子40と電気的に接続されている。
【0077】
図11は、捲回電極体120の構成を示す図6対応図である。なお、図11における符号WDは、電池200の長辺方向Yと略平行である。セパレータ170は接着層174を備えている。セパレータ170の構成は、上記した第1実施形態のセパレータ70と同様であってよい。ただし、本実施形態では捲回電極体120が横向きに収容されているため、第1実施形態と区別するために異なる符号を付している。接着層174は、ここでは長辺方向Yに区分けされている。接着層174は、長辺方向Yの中央部に設けられた第1形成領域174Mと、長辺方向Yの一方の端部(図11の左端部)に設けられた第2形成領域174Lと、長辺方向Yの他方の端部に設けられた第3形成領域174R(図11の左端部)と、を有する。
【0078】
第2形成領域174Lは、ここでは正極タブ群125の側の端部に設けられている。第2形成領域174Lは、第1実施形態と同様に、正極活物質層22aと当接していることが好ましい。第3形成領域174Rは、ここでは負極タブ群127の側の端部に設けられている。第3形成領域174Rは、第1実施形態と同様に、正極活物質層22aと当接していることが好ましい。第3形成領域174Rの幅は、第1実施形態と同様に、第2形成領域174Lの幅と略同じであってもよい。第3形成領域174Rの幅は、第2形成領域174Lの幅より小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0079】
セパレータ170は、長辺方向Yの第2形成領域174Lが設けられた側の端部、言い換えれば正極タブ群125(図10)側の端部に、未形成部N11を有することが好ましい。また、セパレータ170は、長辺方向Yの第3形成領域174Rが設けられた側の端部、言い換えれば負極タブ群127(図10)側の端部に、未形成部N12を有することが好ましい。未形成部N11および/または未形成部N12を有することで、接着層174を形成する際に接着層バインダがセパレータ170からはみ出して、塗布装置の周囲に飛散することを抑制できる。また、第1実施形態と同様に、捲回電極体20のガス抜け性および電解液の含浸性のうち少なくとも一方を向上できる。
【0080】
セパレータ170のうち、負極活物質層24aの正極タブ群125の側の端部よりも外側(図11の左側)にはみ出した正極タブ群側端部の出代をEとし、負極活物質層24aの負極タブ群127の側の端部よりも外側(図11の右側)にはみ出した負極タブ群側端部の出代をFとする。出代E、Fは、セパレータ170の負極活物質層24aと対向していない領域である。出代Eは、ここでは出代Fよりも長い。ただし、出代Eは、出代Fよりも短くてもよいし、出代Fと略同じ長さであってもよい。
【0081】
内部絶縁部材194は、封口板14の内側面から捲回電極体120に向かって突出する突出部を備えている。これによって、上下方向Zにおける捲回電極体120の移動が規制される。そのため、振動や落下等の衝撃を受けても捲回電極体120が封口板14と干渉しにくくなり、捲回電極体120の損傷を抑制できる。
【0082】
<電池の用途>
電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。電池100は、電池反応のバラつきが低減されているため、組電池の構築に好適に用いることができる。
【0083】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0084】
<第1変形例>
例えば、上記した図7では、セパレータ70の接着層74において、第2形成領域74Uが第1形成領域74Mの上端から連続的に形成され、第1形成領域74Mと第2形成領域74Uとの間に隙間は空いていなかった。また、第3形成領域74Dが第1形成領域74Mの下端から連続的に形成され、第1形成領域74Mと第3形成領域74Dとの間に隙間は空いていなかった。しかし、これには限定されない。第1変形例において、第1形成領域74Mと第2形成領域74Uとの間、および/または、第1形成領域74Mと第3形成領域74Dとの間には、接着層74が形成されていない接着層未形成領域が設けられていてもよい。
【0085】
図12は、第1変形例に係るセパレータ270の図7対応図である。セパレータ270の接着層274は、第1形成領域274Mと第2形成領域274Uと第3形成領域274Dとを備える。セパレータ270では、第1形成領域274Mと第2形成領域274Uとの間、および第1形成領域274Mと第3形成領域274Dとの間に、それぞれ間隙G1、G2が設けられている。セパレータ270は、このこと以外、上記したセパレータ70と同様であってよい。間隙G1および/または間隙G2を設けることで、電解液の浸透性および/またはガス抜け性を向上できる。間隙G1、G2は、セパレータ270の長手方向LDに沿って線状(帯状)に形成されている。特に限定されるものではないが、間隙G1、G2の幅は、それぞれ、5mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましい。間隙G1、G2の幅は、それぞれ、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。
【0086】
<第2変形例>
例えば、上記した図7では、第3形成領域74Dの幅が第2形成領域74Uの幅と略同じであった。しかし、これには限定されない。図13は、第2変形例に係るセパレータ370の図7対応図である。セパレータ370の接着層374は、第1形成領域374Mと第2形成領域374Uと第3形成領域374Dとを備える。セパレータ370において、第3形成領域374Dの幅w2は、第2形成領域374Uの幅w1より大きい。セパレータ370は、このこと以外、上記したセパレータ70と同様であってよい。第3形成領域274Dの幅を大きくすることで、セパレータ370の底壁側端部の弾性が高まり、より優れた振動耐性を実現できる。特に限定されるものではないが、幅w1に対する幅w2の比(W2/w1)は、概ね1.2~3.0、例えば1.5~2.0程度であるとよい。
【0087】
<第3変形例>
例えば、上記した図12図13では、第2形成領域274U、374Uがセパレータ270、370の長手方向LDに沿って連続的に形成されていた。しかし、これには限定されない。図14は、第3変形例に係るセパレータ470の図7対応図である。セパレータ470の接着層474は、第1形成領域474Mと第2形成領域474Uと第3形成領域474Dとを備える。セパレータ470において、第2形成領域474Uは、長手方向LDに沿って所定の間隔H1を空けて(間欠的に)形成されている。間隔H1は、第2形成領域474Uが設けられていない接着層未形成領域である。間隔H1では、耐熱層73が露出している。セパレータ470は、このこと以外、上記したセパレータ70と同様であってよい。特に限定されるものではないが、長手方向LDにおいて、間隔H1の長さは、例えば5mm以上、あるいは10mm以上であるとよい。
【0088】
一例において、間隔H1は、電池ケース10にセパレータ470が収容された際、ガス排出弁17の鉛直方向下方(真下)に配置される部分に設けられている。これにより、ガス排出弁17に向かってガスが流れやすくなり、電池ケース10内のガスを迅速に外部に排出できる。したがって安全性を向上できる。また、他の一例において、間隔H1は、電池ケース10にセパレータ470が収容された際、注液孔15の鉛直方向下方(真下)に配置される部分に設けられている。これにより、電解液の含浸性を向上できる。また、他の一例において、間隔H1は、扁平形状の捲回電極体20が作製された際、湾曲部20rに配置される部分に設けられている。これにより、プレス成形後に湾曲部20rから生じる弾性作用が小さく抑えられ、円筒形状に復元しようとする力(所謂、スプリングバック)を抑制できる。
【0089】
<第4変形例>
例えば、上記した第1実施形態の図6では、第2形成領域74Uおよび第3形成領域74Dが、正極活物質層22aとそれぞれ当接していた。しかし、これには限定されない。例えば第2形成領域74Uは、正極活物質層22aと当接していなくてもよい。この場合、振動耐性を向上する効果を高められると共に、捲回電極体20のガス抜け性を向上してガス噛みの発生を抑制できる。さらに電解液の含浸性を高められる。また、第3形成領域74Dは、正極活物質層22aと当接していなくてもよい。この場合、振動耐性を向上する効果を高められると共に、電解液の含浸性を高められる。
【0090】
また、上記した第2実施形態の図11では、第2形成領域174Lおよび第3形成領域174Rが、正極活物質層22aと当接していた。しかし、これには限定されない。第2形成領域174Lおよび/または第3形成領域174Rは、正極活物質層22aと当接していなくてもよい。この場合、電解液の含浸性を高められると共に、捲回電極体120のガス抜け性を向上してガス噛みの発生を抑制できる。
【0091】
<第4変形例>
上記した第1実施形態および第2実施形態では、電極体20が、帯状の正極22と帯状の負極24とを用いた捲回型(捲回電極体)であった。しかし、これには限定されない。電極体は、方形状の正極板と方形状の負極板とが、典型的には複数枚ずつ、絶縁された状態で積み重ねられてなる積層型(積層電極体)とすることもできる。
【0092】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:正極活物質層を備える正極と、負極活物質層を備える負極と、セパレータとを含む電極体と、上記電極体を収容する直方体形状の電池ケースと、を備え、上記セパレータは、少なくとも上記正極と対向する面に接着層を備える。上記接着層は、上記正極活物質層と対向するように設けられた第1形成領域と、上記電池の上下方向または長辺方向において、対向する上記正極活物質層の一方の端部よりも外側にはみ出すように設けられた第2形成領域と、を有し、上記第1形成領域における上記接着層の目付が、上記第2形成領域における上記接着層の目付よりも小さい、電池。
項2:上記第2形成領域が、上記正極活物質層と当接している、項1に記載の電池。
項3:上記接着層は、上記電池の上下方向または長辺方向において、対向する上記正極活物質層の他方の端部よりも外側にはみ出すように設けられた第3形成領域をさらに有し、上記第1形成領域における上記接着層の目付が、上記第3形成領域における上記接着層の目付よりも小さい、項1または2に記載の電池。
項4:上記第3形成領域が、上記正極活物質層と当接している、項3に記載の電池。
項5:上記電池ケースが、開口と、上記開口と対向する底壁と、上記底壁の縁辺から上記開口に向かって延びる側壁と、有する外装体と、上記開口を封口する封口板と、を有し、上記電極体は、上記第2形成領域が上記封口板側に位置し、上記第3形成領域が上記底壁側に位置するように、上記電池ケースの内部に配置されており、上記電池の上下方向において、上記第3形成領域の幅が上記第2形成領域の幅よりも大きい、項3または4に記載の電池。
項6:上記第2形成領域が、前記電池の上下方向に沿って間欠的に形成されている、項1から5のいずれか1つに記載の電池。
項7:上記電池ケースが、開口と、上記開口と対向する底壁と、上記底壁の縁辺から上記開口に向かって延びる側壁と、有する外装体と、ガス排出弁を備え、上記開口を封口する封口板と、を有し、上記ガス排出弁の鉛直方向下方に、上記第2形成領域が形成されていない部分が位置している、項6に記載の電池。
項8:上記電池ケースが、開口と、上記開口と対向する底壁と、上記底壁の縁辺から上記開口に向かって延びる側壁と、有する外装体と、電解液の注液孔を備え、上記開口を封口する封口板と、を有し、上記注液孔の鉛直方向下方に、上記第2形成領域が形成されていない部分が位置している、項6または7に記載の電池。
【符号の説明】
【0093】
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板
20 捲回電極体
22 正極
22a 正極活物質層
22c 正極集電体
24 負極
24a 負極活物質層
24c 負極集電体
70、170、270、370、470 セパレータ
72 基材層
73 耐熱層
74、174、274、374、474 接着層
74M、174M、274M、374M、474M 第1形成領域
74U、174L、274U、374U 第2形成領域
74D、174R、274D、374D 第3形成領域
100 電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14