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特開2024-179135中敷設計装置、中敷設計方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179135
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】中敷設計装置、中敷設計方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A43B 17/00 20060101AFI20241219BHJP
   A43D 1/02 20060101ALI20241219BHJP
   A43D 1/06 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A43B17/00 Z
A43D1/02
A43D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097723
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波多野 元貴
(72)【発明者】
【氏名】谷口 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】高島 慎吾
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050NA88
(57)【要約】
【課題】中敷が装着されている履物に対して、当該中敷と交換して履物に装着する中敷を設計する中敷設計装置、中敷設計方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】中敷設計装置1は、履物の中敷1Aを設計する。中敷設計装置1は、データを受け付ける入力部と、入力部で受け付けたデータに基づいて中敷1Aの設計データを求める演算部と、演算部で求めた設計データを出力する出力部と、を備える。入力部で受け付けるデータは、ユーザの足の形状に関する第1データと、履物の内部に関する第2データとを少なくとも含む。演算部は、第1データと第2データとに基づき、設計データを求める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物の中敷を設計する中敷設計装置であって、
データを受け付ける入力部と、
前記入力部で受け付けた前記データに基づいて中敷の設計データを求める演算部と、
前記演算部で求めた前記設計データを出力する出力部と、を備え、
前記入力部で受け付ける前記データは、ユーザの足の形状に関する第1データと、前記履物の内部に関する第2データとを少なくとも含み、
前記演算部は、前記第1データと前記第2データとに基づき、前記設計データを求める、中敷設計装置。
【請求項2】
前記第2データは、前記履物の内部と中敷とが接する部分のデータを含み、
前記演算部は、前記第2データに基づいて前記履物の内部と接する中敷の輪郭の前記設計データを求める、請求項1に記載の中敷設計装置。
【請求項3】
前記第2データは、中敷が装着された前記履物の内部を走査または撮像したデータ、および前記履物に装着されている中敷の形状を走査または撮像したデータを含む、請求項1に記載の中敷設計装置。
【請求項4】
前記第2データを製品情報に紐づけて記憶する記憶部をさらに備え、
前記演算部は、前記入力部で受け付けた前記履物の製品情報に基づいて前記第2データを前記記憶部から読み出す、請求項1に記載の中敷設計装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記入力部で受け付けた前記履物のサイズと、前記記憶部に記憶されている前記第2データにおける前記履物のサイズとが異なる場合、前記第2データにおける前記履物のサイズを補正する、請求項4に記載の中敷設計装置。
【請求項6】
前記入力部は、前記ユーザが履物に求める特性を示す第1特性パラメータと、前記ユーザが選択した履物の特性を示す第2特性パラメータと、をさらに受け付け、
前記演算部は、前記入力部で受け付けた前記第1特性パラメータと前記第2特性パラメータとの差分に基づき、前記設計データを調整する、請求項1に記載の中敷設計装置。
【請求項7】
前記第1特性パラメータおよび前記第2特性パラメータは、クッション性、安定性、グリップ性、屈曲性、フィット性、耐久性、通気性、軽量性、反発性、切り返し特性、およびアーチサポートのうち少なくとも1つを含む、請求項6に記載の中敷設計装置。
【請求項8】
前記設計データは、材料、構造、部位別のカップ高、中敷の縮率、部位別の厚み、アーチ位置、および底面形状のうち少なくとも1つを含む、請求項6に記載の中敷設計装置。
【請求項9】
前記演算部は、前記第1特性パラメータに対して所定値以上の差を有する前記第2特性パラメータの値を、前記第1特性パラメータの値に近づくように前記設計データを調整する、請求項6に記載の中敷設計装置。
【請求項10】
前記演算部は、前記ユーザが選択した前記第1特性パラメータに対して前記第2特性パラメータの値が、前記第1特性パラメータの値以上となるように前記設計データを調整する、請求項6に記載の中敷設計装置。
【請求項11】
前記演算部は、前記第1データから無荷重状態における前記ユーザの足の形状を予測し、予測した前記足の形状に基づいて中敷の前記設計データを求める、請求項1に記載の中敷設計装置。
【請求項12】
前記設計データは、三次元メッシュ構造体を含む中敷に関するデータである、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の中敷設計装置。
【請求項13】
履物の中敷を設計する中敷設計方法であって、
ユーザの足の形状に関する第1データと、前記履物の内部に関する第2データとを少なくとも受け付けるステップと、
受け付けた前記第1データと前記第2データとに基づいて中敷の設計データを求めるステップと、
求めた前記設計データを出力するステップと、を含む、中敷設計方法。
【請求項14】
データを受け付ける入力部と、前記入力部で受け付けた前記データに基づいて中敷の設計データを求める演算部と、前記演算部で求めた前記設計データを出力する出力部と、を備え、履物の中敷を設計する中敷設計装置の前記演算部で実行されるプログラムであって、
前記プログラムは、
ユーザの足の形状に関する第1データと、前記履物の内部に関する第2データとを少なくとも前記入力部で受け付けるステップと、
前記入力部で受け付けた前記第1データと前記第2データとに基づいて中敷の設計データを求めるステップと、
求めた前記設計データを前記出力部から出力するステップと、を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中敷設計装置、中敷設計方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
靴やサンダルなどを含む履物のフィット性を高めるため、足の形状に合わせてオーダーメイドの中敷(インソール)が作製される。たとえば、国際公開第2017/057388号(特許文献1)では、足の形状(足型データ)と靴データとに基づいて、靴の内部空間に配置された足の状態を算出して、靴の内周面と足との間にできる三次元形状の隙間に基づいてインソールを設計する中敷設計装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/057388号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第2017/057388号(特許文献1)に開示された中敷設計装置は、靴とインソールとを組み合わせたときに足が所望の状態に保持されることを目的としてインソールを設計しており、靴のフィット性を向上することを目的としている。しかし、ユーザが靴に求める特性は、フィット性に限られない。また、国際公開第2017/057388号(特許文献1)は、インソールが装着されていない靴の内部空間に基づいて、新たに装着するインソールを設計することが前提である。
【0005】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、中敷が装着されている履物に対して、当該中敷と交換して履物に装着する中敷を設計する中敷設計装置、中敷設計方法、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従う中敷設計装置は、履物の中敷を設計する中敷設計装置である。中敷設計装置は、データを受け付ける入力部と、入力部で受け付けたデータに基づいて中敷の設計データを求める演算部と、演算部で求めた設計データを出力する出力部と、を備える。入力部で受け付けるデータは、ユーザの足の形状に関する第1データと、履物の内部に関する第2データとを少なくとも含む。演算部は、第1データと第2データとに基づき、設計データを求める。
【0007】
本開示のある局面に従う中敷設計方法は、履物の中敷を設計する中敷設計方法である。中敷設計方法は、ユーザの足の形状に関する第1データと、履物の内部に関する第2データとを少なくとも受け付けるステップと、受け付けた第1データと第2データとに基づいて中敷の設計データを求めるステップと、求めた設計データを出力するステップと、を含む。
【0008】
本開示のある局面に従うプログラムは、データを受け付ける入力部と、入力部で受け付けたデータに基づいて中敷の設計データを求める演算部と、演算部で求めた設計データを出力する出力部と、を備える中敷設計装置の演算部で実行されるプログラムである。プログラムは、ユーザの足の形状に関する第1データと、履物の内部に関する第2データとを少なくとも入力部で受け付けるステップと、入力部で受け付けた第1データと第2データとに基づいて中敷の設計データを求めるステップと、求めた設計データを出力部から出力するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、第1データと第2データとに基づいて中敷の設計データを求めるので、中敷が装着されている履物に対して、当該中敷と交換して履物に装着する中敷を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る中敷設計装置を含むシステムの構成を示す概略図である。
図2】実施の形態に係る中敷設計装置の構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態に係る中敷の使用態様を説明するための模式図である。
図4】実施の形態に係る中敷設計装置が実行する設計処理を示すフローチャートである。
図5】実施の形態に係る中敷設計装置が実行する設計処理により設計された中敷の輪郭を説明するための模式図である。
図6】実施の形態に係る中敷の部位別のカップ高を説明するための模式図である。
図7】実施の形態に係る中敷の部位別の厚みを説明するための模式図である。
図8】実施の形態に係る中敷のアーチ位置を説明するための模式図である。
図9】三次元メッシュ構造体で作製された中敷を示す模式図である。
図10図9に示す中敷の基層部が有する立体構造を説明するための模式図である。
図11】実施の形態に係る中敷設計装置が実行する調整処理を示すフローチャートである。
図12】実施の形態に係る中敷設計装置で設計データを調整する実施例1を説明するための模式図である。
図13】履物特性と中敷の設計データとの関連性を説明するための図である。
図14】プロネーションを説明するための模式図である。
図15】実施の形態に係る中敷設計装置で設計データを調整する実施例2を説明するための模式図である。
図16】実施の形態に係る中敷設計装置で設計データを調整する実施例3を説明するための模式図である。
図17】実施の形態に係る中敷設計装置で設計データを調整する実施例4を説明するための模式図である。
図18】無荷重状態における被測定者の足の形状を予測する予測処理を示すフローチャートである。
図19】荷重足形データの一例を示す図である。
図20】無荷重足形データの一例を示す図である。
図21】被測定者データと第1サンプルデータとの差分の算出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一の構成には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。また、以下の実施形態の説明において、内側又は内足側は、足幅方向における足の第1趾側を指し、外側又は外足側は、足幅方向における足の第5趾側を指す。
【0012】
図1は、実施の形態に係る中敷設計装置1を含むシステムの構成を示す概略図である。図2は、実施の形態に係る中敷設計装置1の構成を示すブロック図である。図3は、実施の形態に係る中敷1Aの使用態様を説明するための模式図である。靴屋などの店舗、イベント会場などにおいて、オーダーメイドの中敷1Aを作製する場合がある。ここで、中敷1Aは、図3に示すように、たとえば靴である履物100に装着されて使用される。履物100は、ソール110およびアッパー120を備えており、使用に際しては、中敷1Aが、アッパー120に設けられた履き口121を介して履物100の内部に挿入される。これにより、中敷1Aは、その下面が履物100の内底面に面するように当該内底面上に載置されることになり、これによって中敷1Aが履物100に装着されることになる。なお、以下の説明において、中敷1Aは、履物100に装着されて使用されると説明するが、履物100は靴、サンダルなどを含む。
【0013】
中敷1Aは、ユーザが履物100を着用したとき、ユーザの足裏が上面上に配置されることになる。そのため、中敷1Aは、履物100のソール110とユーザの足裏によって挟み込まれることになり、これによって中敷1Aは、ユーザの足を支持することになる。また、履物100の内部空間にユーザの足が配置される状態において、中敷1Aは、履物100の内部空間と足との間に形成される隙間を埋め、履物100のフィット性を向上させることができる。
【0014】
中敷1Aは、フィット性を向上させるため、履物100の内部で移動しないように、履物100の内部と中敷1Aの輪郭M1とが一致していることが好ましい。履物100の内部と中敷1Aの輪郭M1とを一致させるために、たとえば履物100のサイズごとに中敷1Aを用意することが考えられる。しかし、個々の履物100によって内部の形状が異なるため、履物100の内部と中敷1Aの輪郭M1とを一致させることは難しい。また、手作業で中敷1Aの外周をカットして履物100の内部と中敷1Aの輪郭M1とを一致させるには、熟練したスキルが必要となる。特に、中敷1Aが後述するように三次元メッシュ構造体で作製されている場合、中敷1Aの外周をカットするとカットした端部の単位構造(図10参照)が途中で破壊されることがあり、何らかの処理をカットした端部に施す必要がある。そこで、実施の形態に係る中敷設計装置1では、ユーザの足の形状に関する足型データ(第1データ)と、履物100の内部に関する内部データ(第2データ)とに基づいて、履物100の内部と接する輪郭M1を含む中敷1Aの設計データを求める。
【0015】
また、中敷設計装置1は、履物100のフィット性を向上させる中敷1Aを設計するだけでなく、履物100の特性(たとえば、クッション性、安定性、グリップ性など)を変更するために、中敷1Aの設計データ(たとえば、材料、構造、部位別のカップ高、厚みなど)を調整する。これにより、中敷設計装置1は、ユーザが履物100に求める特性(履物特性)を得ることができる中敷1Aを設計することができる。なお、中敷設計装置において、履物100の特性を変更するために中敷1Aの設計データを調整することは必須ではなく、少なくとも履物100の内部と接する輪郭M1を含む中敷1Aの設計データを求めることができればよい。
【0016】
[中敷作製システムの構成]
具体的に、中敷設計装置1で設計した中敷1Aを作製する中敷作製システム10について説明する。中敷作製システム10は、図1に示すように、中敷設計装置1と、測定装置2と、3Dプリンタ3と、情報端末4とを備える。なお、中敷1Aを作製する装置は、3Dプリンタ3に限られず、たとえばNC工作機械などの装置であってもよい。また、本実施の形態では、中敷1Aの設計データを専用の設計装置である中敷設計装置1で生成すると説明しているが、オーダーメイドの履物を作製するための設計装置に本開示の技術を適用して中敷1Aの設計データを生成させてもよい。
【0017】
測定装置2は、たとえば、レーザ測定による3次元の足型スキャナであり、天板21と、天板を挟み込むように設置されたレーザ測定部22とを備える。被測定者(ユーザ)が立位姿勢で天板21に足を載せると、被測定者の体重によって足から天板21に対して荷重がかかる。すなわち、被測定者の足に荷重がかかった状態になる。測定装置2は、被測定者の足に荷重がかかった状態で、レーザ測定部22によって足のつま先から踵まで移動しながら足の形状を測定する。測定装置2は、レーザ測定部22によって取得した被測定者の足の形状データ(足型データ)を含む被測定者データを、中敷設計装置1に出力する。なお、被測定者データは、測定装置2によって取得された足の形状データを少なくとも含んでいればよく、その他のデータ(たとえば、被測定者の性別または年齢などの個人データ)を含んでいてもよい。
【0018】
被測定者の足の形状データだけでなく、さらに履物100の内部に関する内部データを情報端末4で取得する。情報端末4は、LiDAR(Light Detection And Ranging)等の技術を利用した三次元スキャナ機能やフォトグラメトリ(Photogrammetry)等の画像合成処理により測定対象の形状を生成する機能を含む。そのため、情報端末4は、図1に示すように履物100に装着してある中敷(履物100の購入時に装着してある中敷)の形状を走査または撮像したデータを取得する。中敷の形状を走査または撮像したデータは、履物100の内部と中敷とが接する部分のデータ、つまり履物100の内部と接する中敷の輪郭の形状データを含む。
【0019】
履物100に装着してある中敷を取り出して、情報端末4で中敷の形状を走査または撮像することにより履物100の内部と接する中敷の輪郭の形状データを簡単に取得することができる。一方、情報端末4で中敷が装着された履物100の内部を走査または撮像して、履物100の内部と接する中敷の輪郭の形状データを取得してもよい。また、中敷きの形状を走査または撮像する際に、既知の大きさの用紙やマットに中敷きを乗せておく、または拡張現実ツールを使用するなどして、形状取得精度を向上させることを行なってもよい。情報端末4は、ユーザ自身が操作してもよいし、店舗の店員が操作してもよい。また、情報端末4は、店舗が保有する端末(たとえば、スマートフォンやタブレット端末など)であってもよいし、ユーザ自身が保有する端末(たとえば、スマートフォンやタブレット端末など)であってもよい。情報端末4のハードウェア情報から、カメラパラメータを取得することで、走査または撮像したデータの歪みを補正してもよい。なお、履物100の内部と接する中敷の輪郭の形状データを取得する装置は情報端末4に限られず、履物100の内部断面を撮像することができるX線CT装置、履物100の内部に樹脂などを充填して採った型を計測する三次元計測装置などでもよい。
【0020】
中敷設計装置1は、測定装置2から足の形状データ(足型データ)を受け付け、情報端末4から履物100の内部に関する内部データを受け付けて、足の形状データと内部データとに基づき中敷1Aの設計データを求める。さらに、中敷設計装置1は、ユーザが求める履物100の特性を得る中敷1Aを設計するために設計データを調整する調整処理を行うことができるが、当該調整処理については後述する。中敷設計装置1は、生成した中敷1Aの設計データを3Dプリンタ3などに出力する。3Dプリンタ3は、中敷1Aの設計データに基づいて中敷1Aを作製する。
【0021】
このように、中敷作製システム10は、測定装置2で得た被測定者(ユーザ)の足の形状(足型データ)と、情報端末4で得た内部データとに基づき、履物100の内部と接する中敷1Aの輪郭を含む中敷1Aの設計データを中敷設計装置1で求め、求めた設計データに基づいて3Dプリンタ3で中敷1Aを作製する。これにより、中敷作製システム10は、中敷設計装置1で履物100の内部と中敷1Aの輪郭M1とが一致する中敷1Aを設計し、3Dプリンタ3で中敷1Aを容易に作製することができる。
【0022】
なお、本開示において、中敷設計装置1と、測定装置2と、3Dプリンタ3と、情報端末4とを備える中敷作製システム10で中敷1Aを作製すると説明したが、装置の構成はこれに限られない。中敷作製システム10の装置構成は、中敷設計装置1と、測定装置2と、3Dプリンタ3とが一体であっても、測定装置2と、3Dプリンタ3とが一体であってもよい。さらに、本開示において、中敷1A全体を3Dプリンタ3で作製すると説明したが、中敷の一部分を3Dプリンタ3で作製してもよい。つまり、作り置きのパーツと3Dプリンタ3で作製したパーツとを組み合わせてオーダーメイドの中敷を作製してもよい。さらに、作り置きのパーツを個人の足の形状など情報に基づいて選択できるようにしてもよい。
【0023】
[中敷設計装置の構成]
中敷設計装置1の構成についてさらに詳しく説明する。中敷設計装置1は、図2に示すように、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、インターフェース14と、メディア読取装置15と、通信装置16とを備える。これらの各構成は、プロセッサバス17を介して接続されている。
【0024】
プロセッサ11は、「演算部」の一例である。プロセッサ11は、ストレージ13に記憶されたプログラム(たとえば、設計プログラム130、予測プログラム131、およびOS(Operating System)132)を読み出し、読み出したプログラムをメモリ12に展開して実行するコンピュータである。プロセッサ11は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはMPU(Multi Processing Unit)などで構成される。なお、プロセッサ11は、演算回路(Processing Circuitry)で構成されていてもよい。
【0025】
メモリ12は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリ、あるいは、ROM(Read Only Memory)またはフラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどで構成される。
【0026】
ストレージ13は、「記憶部」の一例である。ストレージ13は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性記憶装置などで構成される。ストレージ13は、設計プログラム130などのプログラム以外に、荷重足形データ133、無荷重足形データ134、および製品情報データベース135なども記憶する。
【0027】
設計プログラム130は、足の形状データと内部データとに基づき、中敷1Aの設計データを求める処理(後述する図4に示す設計処理)、およびユーザが履物100に求める特性を得ることができる中敷1Aとなるように設計データを調整する処理(後述する図11に示す調整処理)を実行するためのプログラムである。
【0028】
予測プログラム131は、無荷重状態または荷重状態より荷重が小さい低荷重状態(以下、単に無荷重状態ともいう)におけるユーザの足の形状を予測する場合に実行されるプログラムである。予測プログラム131は、測定装置2によって取得された荷重状態におけるユーザの足の形状に基づき、中敷設計装置1が無荷重状態におけるユーザの足の形状を予測する処理(後述する図18に示す予測処理)を実行するためのプログラムである。
【0029】
荷重足形データ133は、無荷重状態におけるユーザの足の形状を予測する場合に用いられるデータである。荷重足形データ133は、「第1サンプルデータ」の一例で、荷重状態における複数のサンプルの足の形状データから算出されたデータを含む。荷重足形データ133については、図19を用いて後述する。
【0030】
無荷重足形データ134は、無荷重状態におけるユーザの足の形状を予測する場合に用いられるデータである。無荷重足形データ134は、「第2サンプルデータ」の一例で、無荷重状態における複数のサンプルの足の形状データから算出されたデータを含む。無荷重足形データ134については、図20を用いて後述する。
【0031】
製品情報データベース135は、履物100の内部に関する内部データを履物100の製品情報(製品名、型番など)に紐づけて記憶してあるデータベースである。なお、製品情報データベース135は、ストレージ13に記憶されている必要はなく、通信装置16を介してネットワークで接続された別のコンピュータやクラウドサーバなどに記憶されていてもよい。
【0032】
インターフェース14は、「入力部」または「出力部」の一例である。インターフェース14は、中敷設計装置1の操作者によるキーボード、マウス、およびタッチデバイスなどの入力操作を受け付ける、ディスプレイなどに中敷設計装置1で設計した設計データを出力する。
【0033】
メディア読取装置15は、リムーバブルディスク18などの記憶媒体を受け入れ、リムーバブルディスク18に格納されているデータを取得する。
【0034】
通信装置16は、「入力部」または「出力部」の一例である。通信装置16は、有線通信または無線通信を行うことによって、他の装置との間でデータを送受信する。たとえば、通信装置16は、測定装置2および情報端末4と通信することで、足の形状データを測定装置2から受け付けたり、内部データを情報端末4から受け付けたりする。また、通信装置16は、3Dプリンタ3と通信することによって、中敷1Aを作製するために用いる中敷1Aの設計データを3Dプリンタ3に出力する。
【0035】
なお、中敷設計装置1は、足の形状データ、内部データなどのデータを通信装置16を介して受け付ける構成に限られず、たとえば、足の形状データ、内部データなどのデータをインターフェース14を介して受け付けてもよい。あるいは、中敷設計装置1は、メディア読取装置15によってリムーバブルディスク18に記憶された足の形状データ、内部データなどのデータを読み取ってもよい。
【0036】
なお、中敷設計装置1のプロセッサ11が実行するプログラムを記憶する媒体としては、CD-ROMやDVD(Digital Versatile Disc)などのリムーバブルディスク18に限られず、ICカード、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)などの半導体メモリであってもよい。
【0037】
また、中敷設計装置1のプロセッサ11が実行するプログラムは、リムーバブルディスク18に記録されたプログラムに限られず、ストレージ13に記憶されたプログラムをRAMにロードして実行するようにしてもよい。この場合、通信装置16を介してネットワークに接続された他のコンピュータが、ストレージ13に記憶されたプログラムを書換える、または、新たなプログラムを追加して書き込むようにしてもよい。さらに、中敷設計装置1が、通信装置16を介してネットワークに接続された他のコンピュータからプログラムをダウンロードして、そのプログラムをストレージ13に記憶するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、中敷設計装置1のプロセッサ11が直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0038】
[中敷の設計データの生成]
図4を参照しながら、中敷設計装置1で中敷1Aの設計データを生成する設計処理について説明する。図4は、実施の形態に係る中敷設計装置1が実行する設計処理を示すフローチャートである。図4に示す各ステップ(以下、「S」で示す。)は、中敷設計装置1のプロセッサ11が設計プログラム130を実行することによって実現される。
【0039】
図4に示すように、中敷設計装置1は、測定装置2によって取得された足型データを受け付ける(S101)。中敷設計装置1は、中敷1Aを装着する履物100の製品情報(製品名、型番など)を受け付ける(S102)。中敷設計装置1は、履物100の内部に関する内部データを履物100の製品情報に紐づけて記憶してある製品情報データベース135を有している。そのため、中敷設計装置1は、S102において既に製品情報データベース135で内部データを記憶している履物100であるか否かを照会するために履物100の製品情報の入力を受け付ける。
【0040】
中敷設計装置1は、受け付けた製品情報の履物100について、製品情報データベース135に当該履物100の内部に関する内部データが記憶されているか否かを照会する(S103)。製品情報データベース135に内部データが記憶されている場合(S103でYES)、中敷設計装置1は、製品情報データベース135から、受け付けた製品情報の履物100の内部データを読み出す(S104)。一方、製品情報データベース135に内部データが記憶されていない場合(S103でNO)、中敷設計装置1は、履物100に装着されている中敷の形状を情報端末4で走査または撮像した内部データを新たに取得する(S105)。なお、中敷設計装置1は、新たに取得した内部データを履物100の製品情報に紐づけて製品情報データベース135に記憶する。これにより、次回以降、新たに取得した内部データの履物100と同じ製品であれば再度内部データを取得する必要がない。
【0041】
また、中敷設計装置1は、受け付けた製品情報の履物100のサイズと製品情報データベース135に記憶している内部データの履物100のサイズとが異なる場合、内部データをたとえば相似変換して内部データの履物100のサイズを補正することが可能である。なお、異なるサイズの場合に行う内部データのデータ変換は、相似変換に限られず、それぞれのデータに縮率を与えるような方法など公知の方法を利用することができる。これにより、製品情報データベース135は、同じ製品の履物100について、すべてのサイズの内部データを記憶しておく必要がなく、1つのサイズの内部データを記憶しておけば足りる。
【0042】
中敷設計装置1は、履物100の内部データに基づき中敷1Aの輪郭M1の設計データを求める(S106)。つまり、中敷設計装置1は、履物100の内部と中敷1Aの輪郭M1とが一致するように中敷1Aの輪郭M1を設計する。具体的に、図5は、実施の形態に係る中敷設計装置1が実行する設計処理により設計された中敷の輪郭M1を説明するための模式図である。中敷設計装置1は、図5に示すように、履物100のサイズに応じて標準的な中敷1Aの輪郭Mを選択し、履物100の内部データに基づき輪郭Mが履物100の内部と一致するように変形して輪郭M1を設計する。なお、輪郭Mが履物100の内部と一致するか否かの評価は、たとえば輪郭Mと履物100の内部との距離の平均値などで可視化して行う。
【0043】
次に、中敷設計装置1は、S101で受け付けた足型データに基づき中敷1Aの設計データを生成する(S107)。ここで、生成する中敷1Aの設計データは、足型データの形状にあわせて中敷1Aの形状を最適化した設計データであり、後述するように履物特性にあわせて調整した中敷1Aの設計データではない。なお、S107の処理では、公知の方法を用いて足の形状にフィットさせた中敷1Aの設計データを生成している。
【0044】
中敷設計装置1は、後述する調整処理を行わない場合、生成した中敷1Aの設計データを3Dプリンタ3(またはNC工作機械)に出力する(S108)。3Dプリンタ3(またはNC工作機械)は、生成した中敷1Aの設計データに基づき中敷1Aを作製する。
【0045】
[調整パラメータ]
履物100のフィット性を向上させる中敷1Aを設計するだけであれば、中敷1Aの長さや幅などの形状を最適化することで足りる。しかし、履物100に中敷1Aを装着することで履物100の特性(たとえば、クッション性、安定性、グリップ性など)を変更するには、中敷1Aの材料、構造、部位別のカップ高、厚みなどを最適化する必要がある。ここで、中敷1Aの設計データに含まれるパラメータは、中敷1Aの長さや幅などの形状に関する形状パラメータと、材料、構造、部位別のカップ高、厚みなどの履物の特性に影響を与える調整パラメータとに大別することができる。以下、図6図10を参照しながら、調整パラメータについて説明する。なお、中敷1Aの設計データにおいて、材料、構造、部位別のカップ高、中敷の縮率、部位別の厚み、アーチ位置、底面形状などのうち少なくとも1つのパラメータを調整パラメータとして調整することで、履物100の特性を変更することができる。
【0046】
中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータのうち、材料は、中敷1Aに使用する材料を示している。材料を調節することによって、クッション性、グリップ性、屈曲性、耐久性、反発性、軽量性を必要に応じて、付与することができる。中敷1Aに使用する材料を樹脂製とする場合には、たとえばポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド系熱可塑性エラストマ(TPA、TPAE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマ(TPEE)とすることができる。中敷1Aに使用する材料をゴム製とする場合には、たとえばブタジエンゴム(BR)とすることができる。中敷1Aに使用する材料をポリマー組成物に含有させるポリマーとする場合には、たとえばオレフィン系エラストマやオレフィン系樹脂等のオレフィン系ポリマーとすることができる。オレフィン系ポリマーとしては、たとえばポリエチレン(たとえば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、1-ブテン-4-メチル-ペンテン、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、プロピレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体のポリオレフィン等が挙げられる。
【0047】
また、上記ポリマーは、たとえばアミド系エラストマやアミド系樹脂等のアミド系ポリマーであってもよい。アミド系ポリマーとしては、たとえばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610等が挙げられる。
【0048】
また、上記ポリマーは、たとえばエステル系エラストマやエステル系樹脂等のエステル系ポリマーであってもよい。エステル系ポリマーとしては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0049】
また、上記ポリマーは、たとえばウレタン系エラストマやウレタン系樹脂等のウレタン系ポリマーであってもよい。ウレタン系ポリマーとしては、たとえばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0050】
また、上記ポリマーは、たとえばスチレン系エラストマやスチレン系樹脂等のスチレン系ポリマーであってもよい。スチレン系エラストマとしては、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS))、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS))、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン(SBSB)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン-スチレン(SBSBS)等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、たとえばポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)等が挙げられる。
【0051】
また、上記ポリマーは、たとえばポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系ポリマー、ウレタン系アクリルポリマー、ポリエステル系アクリルポリマー、ポリエーテル系アクリルポリマー、ポリカーボネート系アクリルポリマー、エポキシ系アクリルポリマー、共役ジエン重合体系アクリルポリマーならびにその水素添加物、ウレタン系メタクリルポリマー、ポリエステル系メタクリルポリマー、ポリエーテル系メタクリルポリマー、ポリカーボネート系メタクリルポリマー、ポリエステル系ウレタンアクリレート、ポリカーボネート系ウレタンアクリレート、ポリエーテル系ウレタンアクリレート、エポキシ系メタクリルポリマー、共役ジエン重合体系メタクリルポリマーならびにその水素添加物、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン系エラストマ、ブタジエンゴム、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等であってもよい。
【0052】
なお、中敷1Aの材料は、生分解性の素材、複合材料(たとえば、炭素繊維、ガラス繊維とゴム、樹脂の複合材料)など材料を採用してもよい。また、中敷1Aの材料は、中敷1A全体を同じ1つの材料で作製しても、部位別に硬度異なる同一材料、または異なる材料で作製してもよい。
【0053】
中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータのうち、部位別のカップ高は、各部位における中敷1Aの内底面からの中敷1Aの側壁の高さを示している。部位別のカップ高を調節することによって、フィット性、安定性、切り返し特性、アーチサポートを必要に応じて、付与することができる。図6は、実施の形態に係る中敷1Aの部位別のカップ高を説明するための模式図である。図6に示すように、中敷1Aは、中敷1Aの内底面h0から外側前足部の側壁の高さをh1、中敷1Aの内底面h0から外側中足部の側壁の高さをh2、中敷1Aの内底面h0から外側後足部の側壁の高さをh3とする。さらに、中敷1Aは、中敷1Aの内底面h0からヒール後方の側壁の高さをh4、中敷1Aの内底面h0から内側アーチ部の側壁の高さをh5とする。
【0054】
中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータのうち、部位別の厚みは、各部位における中敷1Aの厚みを示している。部位別の厚みを調節することによって、クッション性、屈曲性、フィット性、軽量性、反発性、切り返し特性を必要に応じて、付与することができる。図7は、実施の形態に係る中敷1Aの部位別の厚みを説明するための模式図である。図7に示すように、中敷1Aは、中敷1Aの外側前足部の厚みをD1、中敷1Aの外側中足部の厚みをD2、中敷1Aの外側後足部の厚みをD3とする。さらに、中敷1Aは、中敷1Aの内側後足部の厚みをD4、中敷1Aの内側中足部の厚みをD5、中敷1Aの内側前足部の厚みをD6とする。
【0055】
中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータのうち、アーチ位置は、足のアーチをサポートする中敷1Aのアーチ部分の位置を示している。図8は、実施の形態に係る中敷1Aのアーチ位置を説明するための模式図である。図8に示すように、中敷1Aは、後足側にアーチ部分を設けるアーチ位置をL1、中足側にアーチ部分を設けるアーチ位置をL2、前足側にアーチ部分を設けるアーチ位置をL3とする。なお、図8では、アーチ位置を分かりやすく説明するため、アーチ位置をL1~L3の3つの位置を図示しているが、実際のアーチ位置は、ユーザの足形から予測変換された足形状を元にアーチトップの位置を決定した上で、アーチ位置を計算して特定する。
【0056】
中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータのうち、構造は、中敷1Aが平板で形成されているのかラティス構造(三次元メッシュ構造体)、ジャイロイドなどの面構造で形成されているのかなどを示している。構造を調節することによって、クッション性、安定性、グリップ性、屈曲性、耐久性、通気性、軽量性、反発性、切り返し特性を必要に応じて、付与することができる。図9は、三次元メッシュ構造体で作製された中敷1Aを示す模式図である。図9に示すように、三次元メッシュ構造体で形成されている中敷1Aは、基層部25および上層部26からなる2層構造を有している。なお、中敷1Aを形成する三次元メッシュ構造体は、光造形方式などの三次元積層造形法で作製することができる。
【0057】
基層部25は、立体格子構造を単位構造としかつ当該単位構造が繰り返し複数配列されてなる三次元メッシュ構造体にて構成されている。図10は、図9に示す中敷の基層部が有する立体構造を説明するための模式図である。図10に示すように、中敷1Aの基層部25は、立体格子構造からなる単位構造4Aが繰り返し複数配列されてなる三次元メッシュ構造体3Aにて構成されている。より具体的には、複数の単位構造4Aは、幅方向(図中に示すX方向)、奥行き方向(図中に示すY方向)および高さ方向(図中に示すZ方向)の各々に沿って規則的にかつ連続的に繰り返し配列されている。図10においては、幅方向、奥行き方向および高さ方向においてそれぞれ隣接する3つの単位構造4Aのみを抜き出して示しており、その破断面には、濃い色を付している。
【0058】
立体格子構造からなる単位構造4Aは、所定方向に沿って延在する複数の柱が相互に接続されてなる立体的形状を有している。単位構造4Aとしては、様々な構造のものが利用でき、たとえば直方体格子、ダイヤモンド格子、八面体格子、ダブルピラミッド格子、あるいは、これら格子に各種のサポートが付加されたもの等、各種の構造の適用が可能である。なお、図示する単位構造4Aは、直方体格子に中央サポートが付加されたものである。
【0059】
このように構成された基層部25を中敷1Aの下部側の部分に配置することにより、中敷1Aに高い変形能をもたせることが可能になるため、緩衝性能に優れた履き心地のよい中敷きとすることができるとともに、着用時の安定性が高められた中敷きとすることも可能になる。また、基層部25が上記構成を有していることにより、その大きさに比して軽量の中敷きとすることもでき、さらには、通気性に優れた中敷きとすることもできる。
【0060】
中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータのうち、中敷の縮率がある。中敷の縮率を調節することによって、安定性、フィット性、アーチサポートの特性を需要に応じて、付与することができる。中敷の縮率は、足形状と中敷1Aの内底面によって作られる空間の圧縮率を示していて、完全に埋まっている状態を100%とする。また、本開示で示した中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータは、一例であって、これらのパラメータに限定されない。
【0061】
さらに、中敷1Aの設計データに含まれる形状パラメータとして、底面形状を含めることができる。底面形状は、中敷1Aの外底面に形成される凹凸などの形状である。なお、中敷1Aを用いる履物100が決まると当該履物100の内底面に対応して中敷1Aの底面形状が決まる。ただし、底面形状は、製造上や利便性の理由から、中敷1Aの端部に曲面を設けてもよい。
【0062】
[中敷の設計データの調整]
図11図17を参照しながら、中敷設計装置1で中敷1Aの設計データを調整する調整処理について説明する。図11は、実施の形態に係る中敷設計装置1が実行する調整処理を示すフローチャートである。図11に示す各ステップ(以下、「S」で示す。)は、中敷設計装置1のプロセッサ11が設計プログラム130を実行することによって実現される。
【0063】
図11に示すように、中敷設計装置1は、図4に示す設計処理で生成した中敷1Aの設計データを受け付ける(S201)。ここで、生成する中敷1Aの設計データは、足型データに基づいて中敷1Aの長さや幅などの形状を最適化し、内部データに基づいて中敷1Aの輪郭M1が履物100の内部と一致するように最適化した設計データである。具体的に、中敷1Aの設計データは、取得した内部データに基づき履物100の内部のカーブ形状に最も近い中敷1Aのベースモデルを選択し、足型データに基づいて当該ベースモデルを拡大・縮小し、さらに輪郭M1のカーブ形状を複数の制御点に分割して、各々の制御点と履物100の内部との距離が最短となるように当該ベースモデルを変形してモデリングされている。なお、中敷1Aの輪郭M1と履物100の内部とは完全に一致している場合だけでなく、少し余裕空間を設けて中敷1Aの輪郭M1と履物100の内部とを一致させてもよい。
【0064】
さらに、装着することで履物100の特性を変更できるような中敷1Aの設計を行う。そのためには、受け付けた中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータを調整する必要がある。なお、以下の説明では、特にアッパーの材質および弾性率などを考慮せずに中敷1Aの設計を行うが、もちろんアッパーの材質および弾性率など履物100の内部空間に関係するパラメータを考慮して中敷1Aの設計を行ってもよい。そこで、中敷設計装置1は、さらにユーザが希望する履物特性(第1特性パラメータ)を受け付ける(S202)。履物特性は、たとえば、クッション性、安定性、グリップ性、屈曲性、フィット性、耐久性、通気性、軽量性、反発性、切り返し特性、アーチサポートなどのうち少なくとも1つの特性パラメータを含んでいればよい。なお、本開示で示した履物特性に含まれる特性パラメータは、一例であって、これらのパラメータに限定されない。
【0065】
履物特性に含まれる特性パラメータについて、詳しく説明する。なお、履物特性に含まれる特性パラメータは、履物の設計・開発時において事前に各パラメータが設定されている場合がある。まず、履物特性に含まれる特性パラメータのうちクッション性は、履物100を履いて着地した際、衝撃を吸収する履物100の性能を示す特性パラメータである。クッション性は、たとえば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが履物100を履いて着地した際に感じる衝撃の大きさをユーザの感覚に基づいて5段階で評価したり、履物100または身体に取り付けたセンサや、測定器を用いてユーザが履物100を履いて着地した際、当該センサに加わる力を計測して評価したりしてもよい。
【0066】
履物特性に含まれる特性パラメータのうち安定性は、履物100を履いて着地した際の接地面に対する水平方向へのずれや、前額面における傾きなどの履物100の性能を示す特性パラメータである。安定性は、たとえば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが履物100を履いて着地した際に感じる水平方向へのずれや、前額面における傾きなどの大きさを5段階で評価したり、履物100または身体に取り付けたセンサや、画像解析などでユーザが履物100を履いて着地した際の水平方向へのずれや、前額面における傾きなどの大きさを変位量や角度、地面反力の変化などにより計測して評価したりしてもよい。
【0067】
履物特性に含まれる特性パラメータのうちグリップ性は、履物100を履いて走行した際の接地面と履物100、または履物100内部とユーザの足部との摩擦の大きさを示す特性パラメータである。グリップ性は、たとえば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが履物100を履いて走行した際に感じる接地面と履物100との摩擦の大きさを5段階で評価したり、ユーザが履物100を履いて走行した際の接地面と履物100との摩擦の大きさを測定器で計測して評価したりしてもよい。
【0068】
履物特性に含まれる特性パラメータのうち屈曲性は、履物100を履いて走行した際の履物100の曲げやすさを示す特性パラメータである。屈曲性は、たとえば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが履物100を履いて走行した際に感じる履物100の曲げやすさを5段階で評価したり、履物100に荷重を加えた際の履物100の曲がり具合を測定器で計測して評価したりしてもよい。
【0069】
履物特性に含まれる特性パラメータのうち通気性は、履物100を通過する空気の量を示す特性パラメータである。通気性は、たとえば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが履物100を履いた際に感じる空気の通りやすさを5段階で評価したり、履物100を通過する空気の量や温度および湿度を測定器で計測して評価したりしてもよい。
【0070】
履物特性に含まれる特性パラメータのうち軽量性は、履物100の重さを示す特性パラメータである。軽量性は、たとえば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが感じる履物100の重さを5段階で評価したり、履物100の重さを測定器で計測して評価したりしてもよい。
【0071】
履物特性に含まれる特性パラメータのうち反発性は、履物100を履いて着地した際、押し戻す力の大きさを示す特性パラメータである。反発性は、たとえば、圧縮時の荷重変位応答などの設計上の性能評価結果のほか、ユーザが履物100を履いて着地した際に感じる押し戻す力の大きさをユーザの感覚に基づいて5段階で評価したり、履物100のソールに錘を一定の高さから落とし、跳ね返り高さ率(最大跳ね返り高さ/初期高さ)を計測して評価したりしてもよい。
【0072】
履物特性に含まれる特性パラメータのうち切り返し特性は、履物100を履いて左右方向に移動する際の安定感を示す特性パラメータである。切り返し特性は、たとえば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが履物100を履いて左右方向に移動する際に感じる安定感を5段階で評価したり、画像解析などでユーザが履物100を履いて左右方向に移動する際の履物100の左右方向の変形の大きさや地面反力を計測して評価したりしてもよい。
【0073】
履物特性に含まれる特性パラメータのうちアーチサポートは、履物100を履いた際に足のアーチのサポート感を示す特性パラメータである。アーチサポートは、たとえば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが履物100を履いた際に感じる足のアーチのサポート感を5段階で評価したり、足のアーチのサポート部分の大きさや硬さを測定器で測定して評価したりしてもよい。
【0074】
前述のように、履物特性を評価する評価指標および、その評価方法について説明したが、あくまでも評価指標および評価方法は一例であり、これらに限定されるものではない。また、前述した履物特性に含まれる特性パラメータも一例であり、一般的な履物の特性を示す他の特性パラメータを採用してもよい。
【0075】
中敷設計装置1は、履物特性(第1特性パラメータ)を入力する場合、単純に各々の履物特性の値を入力するだけでなく、ユーザが履物を使用する用途、競技、性別、年齢、体重、プロネーション、平均走速度、平均走行距離、走路面、受傷歴などの情報を入力することで個人の使用習慣に適した推奨の履物特性が自動的に入力されるようにできる。また、中敷設計装置1は、ストレージ13に予めユーザの注文履歴の履物特性を記憶しておき、ユーザが過去に注文した履物特性に基づき改善したい履物特性の値のみを入力できるように入力サポートを行ってもよい。
【0076】
また、中敷設計装置1は、ストレージ13に予め有名選手が使用する履物特性を記憶しておき、履物特性を入力する際に有名選手が使用する履物特性を提示する入力サポートを行ってもよい。さらに、中敷設計装置1は、ユーザがインターネットで入手した他の選手が使用する履物特性を読み込むことで、履物特性を入力できるようにしてもよい。また、中敷設計装置1は、ストレージ13に様々な使用習慣の人が入力した履物特性を予め記憶しておき、ユーザが入力した使用習慣に近い履物特性を読み出して履物特性を入力できるようにしてもよい。さらに、中敷設計装置1は、SNS(Social Networking Service)サイト、購入サイトなどに投稿されている個人が選んだ履物特性などの情報を参照することができるようにして、履物特性の入力サポートを行ってもよい。
【0077】
次に、中敷設計装置1では、中敷1Aを使用する履物100の履物データ(第2特性パラメータ)を受け付ける(S203)。履物データには、S202で受け付けた履物特性と対比できるように、たとえば、クッション性、安定性、グリップ性、屈曲性、フィット性、耐久性、通気性、軽量性、反発性、切り返し特性、アーチサポートなどのうち少なくとも1つの特性パラメータを含んでいればよい。なお、本開示で示した履物データに含まれる特性パラメータは、一例であって、これらのパラメータに限定されない。中敷設計装置1では、履物100の履物データを、履物100のメーカから提供を受けてあらかじめストレージ13に記憶してある。もちろん、ストレージ13に記憶されていない履物100の履物データについては、ユーザが中敷設計装置1に履物データを直接入力してもよく、また店舗などで履物100を評価して、中敷設計装置1に履物データを入力してもよい。
【0078】
中敷設計装置1は、S202で受け付けたユーザが希望する履物特性と、S203で受け付けた履物データとの差分値を求める(S204)。中敷設計装置1は、S204で求めた差分値が所定値以上となる履物特性のパラメータがあるか否かを判断する(S205)。所定値以上となる履物特性のパラメータがある場合(S205でYES)、中敷設計装置1は、ユーザが希望する履物特性のパラメータへ変更するため中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータを調整する(S206)。
【0079】
具体的に、中敷設計装置1は、履物100の履物データをユーザが希望する履物特性に近づくように、中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータを調整する実施例について説明する。図12は、実施の形態に係る中敷設計装置1で設計データを調整する実施例1を説明するための模式図である。実施例1では、ユーザの購入した履物100がランニングシューズで、この履物100を使用する用途、競技がたとえばテニス、バスケットなどの高い切り返し特性が必要な競技に使用したい場合に、履物特性を変更することができる中敷1Aを中敷設計装置1で設計する例を説明する。
【0080】
まず、ユーザが希望するテニス、バスケットなどの競技に必要な履物特性を中敷設計装置1で受付ける(S202)。必要な履物特性は、図12に示すように、安定性およびグリップ性が”4”、軽量性および切り返し特性が”5”である。なお、履物特性は、5段階評価として”1”が低評価、”5”が高評価とし、履物特性の用途に応じて無関係なパラメータは”n/a”と記載し評価から除外する。図12に示す例では、テニス、バスケットなどの競技の用途に必要な履物特性においてクッション性、耐久性などは評価から除外している。
【0081】
一方、ユーザの購入した履物100の型番などを中敷設計装置1に入力して、当該型番の履物100の履物データをストレージ13から読み出して、中敷設計装置1で受付ける(S203)。受け付けた履物100の履物データは、図12に示すように、安定性およびグリップ性が”3”、軽量性が”4”、および切り返し特性が”2”である。なお、履物100の履物データは、今回の用途に関係なく図12に示すように、すべてのパラメータに評価値が入力されている。
【0082】
必要な履物特性と履物100の履物データとの差分値を中敷設計装置1で求める(S204)。求めた差分値は、図12に示すように、安定性、グリップ性および軽量性が”1”、切り返し特性が”3”である。中敷設計装置1は、差分値が”2”(所定値)以上である履物特性のパラメータを変更する必要がある履物特性のパラメータと判断する(S205)。図12に示すように、切り返し特性の差分値が”3”となり、所定値以上であるため変更する必要がある履物特性のパラメータと判断される。なお、差分値が所定値以上である場合に、変更する必要がある履物特性のパラメータと判断することは一例であり、たとえば、差分値がマイナスで、かつ差分値の絶対値が”2”(所定値)以上である場合に、変更する必要がある履物特性のパラメータと判断してもよい。
【0083】
中敷設計装置1は、履物特性のパラメータをユーザが希望する履物特性に近づくように、中敷1Aの設計データを調整する(S206)。図12に示すように、履物100の切り返し特性を”2”から”5”へと近づけるため、中敷1Aの設計データのうち、構造、部位別のカップ高、および部位別の厚みを調整する。中敷設計装置1は、切り返し特性を向上するため、履物100の外倒れを防止すべく、硬めの構造にし、外側のカップ高(h1~h3)を高く、外側の厚みをやや厚く設定した中敷1Aの設計データに調整する。
【0084】
中敷設計装置1では、履物特性のパラメータを変更するには、どの中敷1Aの設計データを調整する必要があるのかについて関係性があらかじめストレージ13に記憶してある。図13は、履物特性と中敷の設計データとの関連性を説明するための図である。図13に示す関連性は一例であり、たとえば、履物特性のパラメータのクッション性を変更するには、中敷1Aの設計データの材料、構造、部位別の厚みのうち、少なくとも1つのパラメータを調整する必要がある。また、履物特性のパラメータの安定性を変更するには、中敷1Aの設計データの構造、部位別の厚み、中敷きの縮率のうち、少なくとも1つのパラメータを調整する必要がある。なお、中敷設計装置1は、ユーザの性別、年齢、体重など、また平均走速度、平均走行距離、走路面、受傷歴などを考慮して調整するパラメータの量を変更してもよい。
【0085】
次に、実施例2では、ユーザの足のプロネーションと、履物100のプロネーションとが異なる場合に、履物特性を変更することができる中敷1Aを中敷設計装置1で設計する例を説明する。まず、図14は、プロネーションを説明するための模式図である。プロネーションとは、着地の衝撃を分散するために、着地時にかかとが内側に倒れ込むように動く人体の自然な動きである。具体的に、プロネーションは、図14に示すように、着地前のかかと201から延びる線202が、着地時、内側に倒れ込むことでかかと201から延びる線が線203のようになる。プロネーションには、線202に対する線203の角度が大きいオーバープロネーション、線202に対する線203の角度が適度な角度であるニュートラルプロネーション、線202に対する線203の角度が小さいであるアンダープロネーションに分類することができる。そのため、オーバープロネーションの足のユーザが、ニュートラルプロネーションの履物100を履いた場合、ひざの関節など脚に過度な負担がかかったり、衝撃緩衝の効果が不充分なために、痛みや怪我につながったりすることがある。
【0086】
図15は、実施の形態に係る中敷設計装置1で設計データを調整する実施例2を説明するための模式図である。図15では、走り方としてオーバープロネーションのユーザが、ニュートラルプロネーションの履物100を履く場合に、履物100に装着することで履物特性をオーバープロネーションに変更することができる中敷1Aを中敷設計装置1で設計する例を説明する。
【0087】
まず、オーバープロネーションの履物特性を、ユーザが希望する履物特性として中敷設計装置1で受付ける(S202)。必要な履物特性は、図15に示すように、クッション性が”4”、安定性が”5”、およびアーチサポートが”3”である。なお、履物特性は、5段階評価として”1”が低評価、”5”が高評価とし、履物特性の用途に応じて無関係なパラメータは”n/a”と記載し評価から除外する。
【0088】
一方、ユーザの購入した履物100の型番などを中敷設計装置1に入力して、当該型番の履物100の履物データをストレージ13から読み出して、中敷設計装置1で受付ける(S203)。受け付けた履物100の履物データは、図15に示すように、クッション性が”5”、安定性が”3”、およびアーチサポートが”2”である。なお、履物100の履物データは、今回の用途に関係なく図15に示すように、すべてのパラメータに評価値が入力されている。
【0089】
必要な履物特性と履物100の履物データとの差分値を中敷設計装置1で求める(S204)。求めた差分値は、図15に示すように、クッション性が”-1”、安定性が”2”、およびアーチサポートが”1”である。中敷設計装置1は、差分値が”2”(所定値)以上である履物特性のパラメータを変更する必要がある履物特性のパラメータと判断する(S205)。図15に示すように、安定性の差分値が”2”となり、所定値以上であるため変更する必要がある履物特性のパラメータと判断される。
【0090】
中敷設計装置1は、履物特性のパラメータを変更するため、中敷1Aの設計データを調整する(S206)。図15に示すように、履物100の安定性を”3”から”5”へと近づけるため、中敷1Aの設計データのうち、構造、部位別のカップ高、および中敷の縮率を調整する。中敷設計装置1は、着地時、かかとが内側に倒れ込むのを防止すべく、内側の構造を硬めにし、内側アーチ部のカップ高(h5)を高く、内側の中敷の縮率をやや高く設定した中敷1Aの設計データに調整する。なお、中敷設計装置1は、ユーザの性別、年齢、体重など、また平均走速度、平均走行距離、走路面、受傷歴などを考慮して調整するパラメータの量を変更してもよい。
【0091】
次に、実施例3では、ユーザが日々のランニングに使用するために購入した履物100が競技用の履物でオーバースペックとなっている場合に、履物特性を変更することができる中敷1Aを中敷設計装置1で設計する例を説明する。図16は、実施の形態に係る中敷設計装置1で設計データを調整する実施例3説明するための模式図である。まず、ランニング用途の履物特性を、ユーザが希望する履物特性として中敷設計装置1で受付ける(S202)。必要な履物特性は、図16に示すように、クッション性が”4”、安定性が”3”、グリップ性が”3”、屈曲性が”4”、フィット性が”3”、耐久性が”3”、通気性が”4”、軽量性が”3”、反発性が”3”、およびアーチサポートが”4”である。なお、履物特性は、5段階評価として”1”が低評価、”5”が高評価とし、履物特性の用途に応じて無関係なパラメータは”n/a”と記載し評価から除外する。
【0092】
一方、ユーザの購入した履物100の型番などを中敷設計装置1に入力して、当該型番の履物100の履物データをストレージ13から読み出して、中敷設計装置1で受付ける(S203)。受け付けた履物100の履物データは、図16に示すように、クッション性が”2”、安定性が”2”、グリップ性が”4”、屈曲性が”4”、フィット性が”3”、耐久性が”2”、通気性が”5”、軽量性が”5”、反発性が”4”、およびアーチサポートが”3”である。なお、履物100の履物データは、ランニング用途のため切り返し特性は”n/a”と記載し評価から除外している。
【0093】
必要な履物特性と履物100の履物データとの差分値を中敷設計装置1で求める(S204)。求めた差分値は、図16に示すように、クッション性が”2”、安定性が”1”、グリップ性が”-1”、屈曲性が”0”、フィット性が”0”、耐久性が”1”、通気性が”-1”、軽量性が”-2”、反発性が”-1”、およびアーチサポートが”1”である。中敷設計装置1は、差分値が”2”(所定値)以上である履物特性のパラメータを変更する必要がある履物特性のパラメータと判断する(S205)。図16に示すように、クッション性の差分値が”2”となり、所定値以上であるため変更する必要がある履物特性のパラメータと判断される。
【0094】
中敷設計装置1は、履物特性のパラメータを変更するため、中敷1Aの設計データを調整する(S206)。図16に示すように、履物100のクッション性を”2”から”4”へと近づけるため、中敷1Aの設計データのうち、材料、構造、および部位別の厚みを調整する。中敷設計装置1は、クッション性を良くするため、弾力性のある材料に変更したり、ラティス構造を採用したり、全体的な厚みを1mm厚く設定した中敷1Aの設計データを調整する。なお、差分値がマイナスで、かつ差分値の絶対値が”2”(所定値)以上である軽量性を、変更する必要がある履物特性のパラメータと判断してもよい。この場合、中敷1Aの設計データのうち、材料、構造、および部位別の厚みをさらに調整してもよい。なお、中敷設計装置1は、ユーザの性別、年齢、体重など、また平均走速度、平均走行距離、走路面、受傷歴などを考慮して調整するパラメータの量を変更してもよい。
【0095】
次に、実施例4では、購入した履物100に対して、ユーザが選択した履物特性をより高くすることを希望した場合に、履物特性を変更することができる中敷1Aを中敷設計装置1で設計する例を説明する。図17は、実施の形態に係る中敷設計装置1で設計データを調整する実施例4説明するための模式図である。まず、ユーザが選択した履物特性を、ユーザが希望する履物特性として中敷設計装置1で受付ける(S202)。必要な履物特性は、図17に示すように、クッション性が”5”、および安定性が”5”である。なお、履物特性は、5段階評価として”1”が低評価、”5”が高評価とし、ユーザが選択していない履物特性を無関係なパラメータとして”n/a”と記載し評価から除外する。
【0096】
一方、ユーザの購入した履物100の型番などを中敷設計装置1に入力して、当該型番の履物100の履物データをストレージ13から読み出して、中敷設計装置1で受付ける(S203)。受け付けた履物100の履物データは、図17に示すように、クッション性が”4”、安定性が”3”、グリップ性が”3”、屈曲性が”4”、フィット性が”3”、耐久性が”3”、通気性が”4”、軽量性が”3”、反発性が”3”、切り返し特性が”2”、およびアーチサポートが”4”である。
【0097】
必要な履物特性と履物100の履物データとの差分値を中敷設計装置1で求める(S204)。求めた差分値は、図17に示すように、クッション性が”1”、および安定性が”2”である。なお、図17では、ユーザが選択した履物特性のパラメータにハッチングを付している。中敷設計装置1は、差分値が”1”(所定値)以上である履物特性のパラメータを変更する必要がある履物特性のパラメータと判断する(S205)。図17に示すように、クッション性の差分値が”1”および安定性の差分値が”2”となり、所定値以上であるため変更する必要がある履物特性のパラメータと判断される。
【0098】
中敷設計装置1は、履物特性のパラメータを変更するため、中敷1Aの設計データを調整する(S206)。図17に示すように、履物100のクッション性を”4”から”5”へと近づけるため、中敷1Aの設計データのうち、材料、構造、および部位別の厚みを調整する。また、履物100の安定性を”3”から”5”へと近づけるため、中敷1Aの設計データのうち、構造、部位別の厚み、および中敷の縮率を調整する。中敷設計装置1は、クッション性を良くするため、弾力性のある材料に変更したり、ラティス構造を採用したり、全体的な厚みを1mm厚く設定した中敷1Aの設計データに調整する。さらに、中敷設計装置1は、安定性を良くするため、内側アーチ部のカップ高(h5)を高くしたり、中敷の縮率を60%から70%に変更したりした中敷1Aの設計データに調整する。なお、中敷設計装置1は、ユーザの性別、年齢、体重など、また平均走速度、平均走行距離、走路面、受傷歴などを考慮して調整するパラメータの量を変更してもよい。
【0099】
図11に戻って、中敷設計装置1は、S206の処理により履物特性のすべてのパラメータにおいて差分値が所定値未満となるように変更した場合、所定値以上となる履物特性のパラメータがないと判断し(S205でNO)、調整後の中敷1Aの設計データを3Dプリンタ3(またはNC工作機械)に出力する(S207)。3Dプリンタ3(またはNC工作機械)は、調整後の中敷1Aの設計データで中敷1Aを作製することで、中敷1Aを装着した履物100の履物特性をユーザが希望する履物特性に近づけることができる。
【0100】
[足の形状の予測]
図4に示すS107では、中敷設計装置1が、S101で受け付けた足型データに基づいて、中敷1Aの設計データを生成する。S101で受け付けた足型データは、被測定者(ユーザ)の足に荷重がかかった状態で、レーザ測定部22によって測定された足型データである。しかし、足の形状に適した中敷1Aを作製するためには、荷重による足の変形がない無荷重状態または荷重状態より荷重が小さい低荷重状態における足型データであることが望ましい。しかし、無荷重状態における足の形状を測定するには、石膏包帯を用いるなど作業が必要で簡単に測定することが難しい。そこで、中敷設計装置1では、荷重状態における足型データから無荷重状態における足の形状を予測する予測処理を行うことが可能である。
【0101】
図18図21を参照しながら、中敷設計装置1による無荷重状態における被測定者の足の形状の予測処理について説明する。図18は、無荷重状態における被測定者の足の形状を予測する予測処理を示すフローチャートである。図19は、荷重足形データの一例を示す図である。図20は、無荷重足形データの一例を示す図である。図21は、被測定者データと第1サンプルデータとの差分の算出を説明するための図である。図18に示す各ステップ(以下、「S」で示す。)は、中敷設計装置1のプロセッサ11が予測プログラム131を実行することによって実現される。
【0102】
図18に示すように、中敷設計装置1は、測定装置2によって取得された荷重状態における被測定者の足の形状の測定データ(足型データ)を含む被測定者データを取得する(S301)。中敷設計装置1は、被測定者データに基づき、相同モデルを作製し、被測定者データの特徴量(この例では、アーチ高率,踵の傾斜角度)を抽出する(S302)。中敷設計装置1は、被測定者データの特徴量に基づき、被測定者の足の足形タイプを選択する(S303)。たとえば、中敷設計装置1は、被測定者の足のアーチタイプおよび踵の傾斜タイプに基づいて分類される図19に示す足形タイプから一の足形タイプを選択する。
【0103】
中敷設計装置1は、ストレージ13に記憶している荷重足形データ133から、S303で選択した被測定者の足形タイプに合った荷重状態における第1サンプルデータを抽出する(S304)。抽出された第1サンプルデータは、被測定者の足形タイプに合った荷重状態における平均的な足の形状データ(相同モデル)を含む。
【0104】
図19に示すように、荷重足形データは、足の形状に関する少なくとも1つの特徴量に基づき、荷重状態における複数のサンプルの足の形状の測定データ(具体的には測定データに基づき作製された相同モデル)を複数の足形タイプごとに分類したデータを含む。図19に示す例では、少なくとも1つの特徴量として、アーチ高率および踵の傾斜角度(踵の内側への倒れ込み角度)が用いられている。そして、アーチ高率に基づいて分類された3種類のアーチタイプと、踵の傾斜角度に基づいて分類された3種類の踵傾斜タイプとによって、荷重足形データは、計9種類の足形タイプに分類される。
【0105】
さらに、中敷設計装置1は、ストレージ13に記憶している無荷重足形データ134から、S303で選択した被測定者の足形タイプに合った無荷重状態における第2サンプルデータを抽出する(S305)。抽出された第2サンプルデータは、被測定者の足形タイプに合った無荷重状態における平均的な足の形状データ(相同モデル)を含む。
【0106】
図20に示すように、無荷重足形データは、足の形状に関する少なくとも1つの特徴量に基づき、無荷重状態における複数のサンプルの足の形状の測定データ(具体的には測定データに基づき作製された相同モデル)を複数の足形タイプごとに分類したデータを含む。図20に示す例では、少なくとも1つの特徴量として、アーチ高率および踵の傾斜角度が用いられている。そして、アーチ高率に基づいて分類された3種類のアーチタイプと、踵の傾斜角度に基づいて分類された3種類の踵傾斜タイプとによって、無荷重足形データは、計9種類の足形タイプに分類される。
【0107】
中敷設計装置1は、S304で抽出した荷重状態における第1サンプルデータの足長および直交足幅を、被測定者データに基づき作製された相同モデルの足長および直交足幅に合わせる(S306)。これにより、第1サンプルデータに対応する荷重状態における平均的な足のカーブ線が、被測定者の足長および直交足幅に合わせて変更される。
【0108】
さらに、中敷設計装置1は、S305で抽出した無荷重状態における第2サンプルデータの足長および直交足幅を、被測定者データに基づき作製された相同モデルの足長および直交足幅に合わせる(S307)。これにより、第2サンプルデータに対応する無荷重状態における平均的な足のカーブ線が、被測定者の足長および直交足幅に合わせて変更される。
【0109】
中敷設計装置1は、被測定者データおよびS306で変更された第1サンプルデータの各々に基づき、足のカーブ線を算出し、被測定者データにおける足のカーブ線と、S306で変更された第1サンプルデータに対応する荷重状態における足のカーブ線とを比較することによって、両者の差分を算出する(S308)。
【0110】
具体的には、図21に示すように、中敷設計装置1は、実線で表される被測定者データにおける足のカーブ線と、点線で表される第1サンプルデータに対応する荷重状態における足のカーブ線とを比較することによって、足長方向における両者のカーブ線の差分を算出する。
【0111】
ここで、荷重状態における第1サンプルデータの足のカーブ線および被測定者データの足のカーブ線は、それぞれ測定装置2によって取得された足裏の形状から算出すればよい。具体的には、荷重状態であっても、輪郭線、内側接地線、および外側接地線が判別可能であるため、輪郭線、内側接地線、および外側接地線に基づき、荷重状態における第1サンプルデータの足のカーブ線および被測定者データの足のカーブ線を算出すればよい。なお、第1サンプルデータの足のカーブ線は、無荷重状態における第2サンプルデータの足のカーブ線を用いてもよい。たとえば、最下線からある高さを通る線と足の内側または外側における外形との交点を用いて、内側接地線および外側接地線を算出し、算出した内側接地線および外側接地線を用いて第2サンプルデータの足のカーブ線を算出し、算出したカーブ線を第1サンプルデータの足のカーブ線としてもよい。
【0112】
中敷設計装置1は、算出したカーブ線の差分に基づき、S306で変更された第2サンプルデータに対応する無荷重状態における足の曲がり度合い(カーブ線)を変更することによって、無荷重状態における被測定者の足の形状(相同モデル)を算出する(S309)。その後、中敷設計装置1は、本処理を終了する。
【0113】
具体的には、中敷設計装置1は、第2サンプルデータにおける足の断面の外形に沿って配置された複数の構成点を、S308で算出した差分を相殺する方向に移動させる。すなわち、中敷設計装置1は、第2サンプルデータにおける足のカーブ線を、被測定者データにおける足のカーブ線に一致させるように、第2サンプルデータにおける足の断面の外形に沿って配置された複数の構成点を移動させる。中敷設計装置1は、このような複数の構成点の移動を、足長方向に沿って所定間隔(たとえば、1mmごと)で実行する。
【0114】
これにより、中敷設計装置1は、測定装置2によって取得された荷重状態における被測定者の足の形状の測定データから、無荷重状態における被測定者の足の形状のデータ(相同モデル)を予測することができる。荷重状態における足の形状の測定データから、無荷重状態における足の形状のデータを予測する方法は、前述の方法に限定されない。たとえば、中敷設計装置1は、訓練用データを用いて機械学習による訓練で予測モデルを生成し、訓練済みの予測モデルを用いて測定データから無荷重状態における被測定者の足の形状を予測してもよい。
【0115】
[変形例]
本開示は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本開示に適用可能な変形例について説明する。
【0116】
実施の形態に係る中敷設計装置1は、図11に示すように、受け付けた履物特性(第1特性パラメータ)と履物データ(第2特性パラメータ)との差分が所定値以上の値を、変更する履物特性のパラメータを判断していたが、これに限られない。
【0117】
たとえば、中敷設計装置1は、受け付けた履物特性(第1特性パラメータ)と履物データ(第2特性パラメータ)との差分に係数を掛けて所定値と比較したり、差分を所定の関数に代入し演算を行ったりすることで、変更する履物特性のパラメータを判断してもよい。
【0118】
中敷設計装置1は、測定装置2が設置された店舗内に設置されてもよいし、クラウド上のサーバ装置として存在してもよい。さらに、クラウド上のサーバ装置として存在する中敷設計装置1は、複数の店舗の各々に設置された測定装置2と通信可能に接続され、各測定装置2から取得した足形データに基づき、中敷1Aの設計データを生成してもよい。
【0119】
[態様]
(1)本開示に係る中敷設計装置は、履物の中敷を設計する中敷設計装置であって、
データを受け付ける入力部と、
入力部で受け付けたデータに基づいて中敷の設計データを求める演算部と、
演算部で求めた設計データを出力する出力部と、を備え、
入力部で受け付けるデータは、ユーザの足の形状に関する第1データと、履物の内部に関する第2データとを少なくとも含み、
演算部は、第1データと第2データとに基づき、設計データを求める。
【0120】
これにより、中敷設計装置は、第1データと第2データとに基づいて中敷の設計データを求めるので、中敷が装着されている履物に対して、当該中敷と交換して履物に装着する中敷を設計することができる。
【0121】
(2)(1)に記載の中敷設計装置において、第2データは、履物の内部と中敷とが接する部分のデータを含み、
演算部は、第2データに基づいて履物の内部と接する中敷の輪郭の設計データを求める。
【0122】
(3)(1)または(2)に記載の中敷設計装置において、第2データは、中敷が装着された履物の内部を走査または撮像したデータ、および履物に装着されている中敷の形状を走査または撮像したデータを含む。
【0123】
(4)(1)~(3)のいずれか1項に記載の中敷設計装置において、第2データを製品情報に紐づけて記憶する記憶部をさらに備え、
演算部は、入力部で受け付けた履物の製品情報に基づいて第2データを記憶部から読み出す。
【0124】
(5)(4)に記載の中敷設計装置は、演算部において、入力部で受け付けた履物のサイズと、記憶部に記憶されている第2データにおける履物のサイズとが異なる場合、第2データにおける履物のサイズを補正する。
【0125】
(6)(1)~(5)のいずれか1項に記載の中敷設計装置において、入力部は、ユーザが履物に求める特性を示す第1特性パラメータと、ユーザが選択した履物の特性を示す第2特性パラメータと、をさらに受け付け、
演算部は、入力部で受け付けた第1特性パラメータと第2特性パラメータとの差分に基づき、設計データを調整する。
【0126】
(7)(6)に記載の中敷設計装置において、第1特性パラメータおよび第2特性パラメータは、クッション性、安定性、グリップ性、屈曲性、フィット性、耐久性、通気性、軽量性、反発性、切り返し特性、およびアーチサポートのうち少なくとも1つを含む。
【0127】
(8)(6)または(7)に記載の中敷設計装置において、設計データは、材料、構造、部位別のカップ高、中敷の縮率、部位別の厚み、アーチ位置、および底面形状のうち少なくとも1つを含む。
【0128】
(9)(6)~(8)のいずれか1項に記載の中敷設計装置において、演算部は、第1特性パラメータに対して所定値以上の差を有する第2特性パラメータの値を、第1特性パラメータの値に近づくように設計データを調整する。
【0129】
(10)(6)~(9)のいずれか1項に記載の中敷設計装置において、演算部は、ユーザが選択した第1特性パラメータに対して第2特性パラメータの値が、第1特性パラメータの値以上となるように設計データを調整する。
【0130】
(11)(1)~(10)のいずれか1項に記載の中敷設計装置において、演算部は、第1データから無荷重状態におけるユーザの足の形状を予測し、予測した足の形状に基づいて中敷の設計データを求める。
【0131】
(12)(1)~(11)のいずれか1項に記載の中敷設計装置において、設計データは、三次元メッシュ構造体を含む中敷に関するデータである。
【0132】
(13)本開示に係る中敷設計方法は、履物の中敷を設計する中敷設計方法であって、
ユーザの足の形状に関する第1データと、履物の内部に関する第2データとを少なくとも受け付けるステップと、
受け付けた第1データと第2データとに基づいて中敷の設計データを求めるステップと、
求めた設計データを出力するステップと、を含む。
【0133】
(14)本開示に係るプログラムは、データを受け付ける入力部と、入力部で受け付けたデータに基づいて中敷の設計データを求める演算部と、演算部で求めた設計データを出力する出力部と、を備え、履物の中敷を設計する中敷設計装置の演算部で実行されるプログラムであって、
プログラムは、
ユーザの足の形状に関する第1データと、履物の内部に関する第2データとを少なくとも入力部で受け付けるステップと、
入力部で受け付けた第1データと第2データとに基づいて中敷の設計データを求めるステップと、
求めた設計データを出力部から出力するステップと、を含む。
【0134】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0135】
1 中敷設計装置、1A 中敷、2 測定装置、3 3Dプリンタ、4 情報端末、10 中敷作製システム、11 プロセッサ、12 メモリ、13 ストレージ、14 インターフェース、15 メディア読取装置、16 通信装置、17 プロセッサバス、18 リムーバブルディスク、21 天板、22 レーザ測定部、100 履物、110 ソール、120 アッパー、121 履き口、130 設計プログラム、131 予測プログラム、132 OS、133 荷重足形データ、134 無荷重足形データ、h0 内底面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21