(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179138
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の管理方法および電池管理システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/367 20190101AFI20241219BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20241219BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20241219BHJP
G01R 31/378 20190101ALI20241219BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/378
H01M10/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097729
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】西 勇二
(72)【発明者】
【氏名】近藤 広規
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 厳
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA07
2G216BA41
2G216CB11
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF51
(57)【要約】
【課題】黒鉛系の負極活物質を含む負極を有するリチウムイオン二次電池のSOCを高精度に推定する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池の管理方法は、黒鉛系の負極活物質と、負極集電体21とを含む負極2を有するリチウムイオン二次電池であるバッテリ10を管理する。電池モデルは、各々がリチウムイオンの電荷移動反応の起こりやすさを表す、構造パラメータおよび材料物性パラメータのうちの少なくとも一方が互いに異なる複数種類の粒子によって負極活物質を表現する多粒子モデルである。管理方法は、対象とする粒子ごとに、反応電流密度に基づいて、当該粒子に含まれるリチウム量を算出するステップと、複数種類の粒子の各々におけるリチウム量の平均値をバッテリ10のSOCとして算出するステップとを含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛系の負極活物質と、負極集電体とを含む負極を有するリチウムイオン二次電池の管理方法であって、
前記リチウムイオン二次電池の内部状態を推定するための電池モデルを用いて、プロセッサが前記リチウムイオン二次電池のSOCを推定するステップを含み、
前記電池モデルは、各々がリチウムイオンの電荷移動反応の起こりやすさを表す、構造パラメータおよび材料物性パラメータのうちの少なくとも一方が互いに異なる複数種類の粒子によって前記負極活物質を表現する多粒子モデルであり、
前記構造パラメータは、前記負極活物質の粒子径、前記負極活物質と前記負極集電体との間の距離、前記負極の厚み、前記負極活物質の粒子の粗密、前記負極活物質の粒子径の頻度分布、および、前記負極に含まれる導電助剤の分布のうちの少なくとも1つを含み、
前記材料物性パラメータは、前記負極活物質および前記負極集電体の材料ごとの抵抗率を含み、
前記推定するステップは、
前記複数種類の粒子のうちの対象とする粒子ごとに、当該粒子に含まれるリチウム量に基づいて反応過電圧を算出するステップと、
前記対象とする粒子ごとに、前記反応過電圧に基づいて、当該粒子の反応電流密度を算出するステップと、
前記対象とする粒子ごとに、前記反応電流密度に基づいて、当該粒子に含まれるリチウム量を算出するステップと、
前記複数種類の粒子の各々における前記リチウム量の平均値を前記リチウムイオン二次電池のSOCとして算出するステップとを含む、リチウムイオン二次電池の管理方法。
【請求項2】
前記リチウム量を算出するステップは、前記対象とする粒子ごとに、前記リチウムイオンの固相拡散による前記リチウム量の時間変化を算出するステップを含む、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の管理方法。
【請求項3】
前記固相拡散は、前記リチウムイオンの拡散速度に応じた時定数を有する一次遅れの挙動を示す関係式により表される、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の管理方法。
【請求項4】
前記電池モデルでは、前記対象とする粒子により表現される前記構造パラメータまたは前記材料物性パラメータごとに重み付けを設定することによって、当該重み付けが設定されていない場合と比べて、粒子数が削減されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の管理方法。
【請求項5】
前記リチウムイオン二次電池は、正極活物質を含む正極を有し、
前記正極活物質は、SOC変化に伴う電位変化が微小な領域であるフラット領域が広い材料である、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の管理方法。
【請求項6】
前記正極活物質は、リン酸鉄リチウムを含む、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池の管理方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセッサを備える、電池管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン二次電池の管理方法および電池管理システムに関し、より特定的には、リチウムイオン二次電池の充電状態の推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008-243373号公報(特許文献1)は、二次電池の内部状態を電池モデルに従って推定する、二次電池の状態推定装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-243373号公報
【特許文献2】特開2019-144039号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hiroki Kondo, Tsuyoshi Sasaki, Pallab Barai and Venkat Srinivasan. Comprehensive Study of the Polarization Behavior of LiFePO4 Electrodes Based on a Many-Particle Model. Journal of The Electrochemical Society, Volume 165, Number 10 Published 6 July 2018.
【非特許文献2】Tsuyoshi Sasaki, Yoshio Ukyo and Petra Novak. Memory effect in a lithium-ion battery. Nature materials, Volume 12, June 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウムイオン二次電池の充電状態(SOC:State Of Charge)の高精度に推定する要求が常に存在する。たとえば特許文献1に開示されたような電池モデルを改良することによって、リチウムイオン二次電池のSOCの推定精度を向上させることが望ましい。本発明者らは、特にリチウムイオン二次電池の負極が黒鉛系の負極活物質を含む場合に、電池モデルを用いてSOCを高精度に推定することが容易でないことに着目した。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的の1つは、黒鉛系の負極活物質を含む負極を有するリチウムイオン二次電池のSOCを高精度に推定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示のある局面に係るリチウムイオン二次電池の管理方法は、黒鉛系の負極活物質と、負極集電体とを含む負極を有するリチウムイオン二次電池を管理する。管理方法は、リチウムイオン二次電池の内部状態を推定するための電池モデルを用いて、プロセッサがリチウムイオン二次電池のSOCを推定するステップを含む。電池モデルは、各々がリチウムイオンの電荷移動反応の起こりやすさを表す、構造パラメータおよび材料物性パラメータのうちの少なくとも一方が互いに異なる複数種類の粒子によって負極活物質を表現する多粒子モデルである。構造パラメータは、負極活物質の粒子径、負極活物質と負極集電体との間の距離、負極の厚み、負極活物質の粒子の粗密、負極活物質の粒子径の頻度分布、および、負極に含まれる導電助剤の分布のうちの少なくとも1つを含む。材料物性パラメータは、負極活物質および負極集電体の材料ごとの抵抗率を含む。推定するステップは、第1~第4のステップを含む。第1のステップは、複数種類の粒子のうちの対象とする粒子ごとに、当該粒子に含まれるリチウム量に基づいて反応過電圧を算出するステップである。第2のステップは、対象とする粒子ごとに、反応過電圧に基づいて、当該粒子の反応電流密度を算出するステップである。第3のステップは、対象とする粒子ごとに、反応電流密度に基づいて、当該粒子に含まれるリチウム量を算出するステップである。第4のステップは、複数種類の粒子の各々におけるリチウム量の平均値をリチウムイオン二次電池のSOCとして算出するステップである。
【0008】
詳細は後述するが、リチウムイオン二次電池の負極が黒鉛系の負極活物質を含む場合、黒鉛のステージ構造に起因する傾き変化がSOC-OCVカーブが現れる。この傾き変化は、リチウムイオン二次電池の充放電の仕方(後述する開始SOCおよび電流レート)に応じて異なる。そのようなSOC-OCVカーブを従来の電池モデルでは再現することが困難であった。これに対し、上記(1)の方法によれば、SOC-OCVカーブにおいて、黒鉛のステージ構造に起因する傾き変化を実際の傾き変化に忠実に再現できる。よって、黒鉛系の負極活物質を含む負極を有するリチウムイオン二次電池のSOCを高精度に推定できる。
【0009】
(2)リチウム量を算出するステップは、対象とする粒子ごとに、リチウムイオンの固相拡散によるリチウム量の時間変化を算出するステップを含む。(3)固相拡散は、リチウムイオンの拡散速度に応じた時定数を有する一次遅れの挙動を示す関係式により表される。
【0010】
上記(2),(3)の方法によれば、固相拡散を考慮することによって、傾き変化の位置ずれ(SOC-OCVカーブのSOC方向へのシフト)を、より忠実に再現することが可能になる。よって、リチウムイオン二次電池のSOCの推定精度を一層向上させることができる。
【0011】
(4)電池モデルでは、対象とする粒子により表現される構造パラメータまたは材料物性パラメータごとに重み付けを設定することによって、当該重み付けが設定されていない場合と比べて、粒子数が削減されている。
【0012】
上記(4)の方法によれば、構造パラメータまたは材料物性パラメータごとに重み付けを設定することによって、全ての粒子が互いに異なる構造パラメータまたは材料物性パラメータを有すると仮定する場合と比べて、粒子数が削減される。よって、プロセッサの演算負荷を低減できる。
【0013】
(5)リチウムイオン二次電池は、正極活物質を含む正極を有する。正極活物質は、SOC変化に伴う電位変化が微小な領域であるフラット領域が広い材料である。(6)正極活物質は、リン酸鉄リチウムを含む。
【0014】
リン酸鉄リチウムなどの正極活物質では、フラット領域が広いため、黒鉛のステージ構造に起因する傾き変化の影響が大きい。すなわち、SOCの推定精度が低下しやすい。よって、上記(5),(6)の方法によれば、そのような正極活物質に対して本開示に係るリチウムイオン二次電池の管理方法が適用されるため、SOCを高精度に推定可能な効果が特に顕著になる。
【0015】
(7)本開示の他の局面に係る電池管理システムは、上記プロセッサを備える。
【0016】
上記(7)の構成によれば、上記(1)の方法と同様に、黒鉛系の負極活物質を含む負極を有するリチウムイオン二次電池のSOCを高精度に推定できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、黒鉛系の負極活物質を含む負極を有するリチウムイオン二次電池のSOCを高精度に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施の形態に係る電池管理システムが搭載された車両の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】セルの構成の一例を概略的に示す斜視図である。
【
図4】多粒子モデルを説明するための概念図である。
【
図5】多粒子モデルに含まれる複数の粒子を説明するための概念図である。
【
図6】多粒子モデルにおけるパラメータ間の関係の概要を説明するための図である。
【
図7】本実施の形態におけるSOC推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】リチウム量-負極OCPカーブの一例を示す図である。
【
図9】黒鉛のステージ構造を説明するための図である。
【
図10】SOC-OCVカーブの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0020】
以下では、本開示に係る電池管理システム(BMS:Battery Management System)が電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)に搭載された構成を例に説明する。しかし、本実施の形態に係る電池管理システムは、走行用のリチウムイオン二次電池が搭載される車両全般に適用可能である。すなわち、本実施の形態に係る電池管理システムは、ハイブリッド車(HEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Electric Vehicle Electric Vehicle)などにも搭載され得る本開示に係る電池管理システムの用途は車両用に限定されず、たとえば定置用であってもよい。
【0021】
[実施の形態]
<全体構成>
図1は、本開示の実施の形態に係る電池管理システムが搭載された車両の全体構成を概略的に示す図である。車両900は電池管理システム100を備える。電池管理システム100は、電池パックであって、バッテリ10と、監視ユニット20と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)30と、電池ECU(Electronic Control Unit)40とを含む。車両900は、インレット91と、電力変換装置92と、充電リレー93と、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)94と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)95と、動力伝達ギヤ96と、駆動輪97と、統合ECU98とをさらに備える。
【0022】
バッテリ10は、MG95を駆動するための電力を蓄え、PCU94を通じてMG95へ電力を供給する。また、バッテリ10は、MG95の発電時にPCU94を通じて発電電力を受けて充電される。バッテリ10は、1以上の電池モジュールを含む組電池である。1以上の電池モジュールの各々は複数のセル50を含む。各セル50は、本実施の形態ではリチウムイオン二次電池である。セル50の構成については
図2および
図3にて説明する。
【0023】
監視ユニット20は、バッテリ10の状態を監視するための各種センサを含む。具体的には、監視ユニット20は、電圧センサ201と、電流センサ202と、温度センサ203ととを含む。電圧センサ201は、バッテリ10(各セル)の電圧Vを検出する。電流センサ202は、バッテリ10に充放電される電流Iを検出する。温度センサ203は、バッテリ10の温度Tを検出する。各センサは、その検出結果を示す信号を電池ECU40に出力する。
【0024】
SMR30は、バッテリ10とPCU94とを結ぶ電力線上に電気的に接続されている。SMR30は、電池ECU40からの制御指令に応じて閉成(オン)/開放(オフ)される。SMR30が閉成されている場合にバッテリ10の充放電が可能になる。
【0025】
電池ECU40は、プロセッサ401と、メモリ402とを含む。プロセッサ401は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ402は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含む記憶装置である。メモリ402には、OS(Operating System)を含むシステムプログラムと、コンピュータ読み取り可能なコードを含む制御プログラムと、バッテリ10を管理するための各種パラメータとが格納されている。プロセッサ401は、システムプログラム、制御プログラムおよびパラメータを読み出してメモリ402に展開して実行することで様々な処理を実現する。本実施の形態においてプロセッサ401により実行される主要な処理は、バッテリ10(組電池内の各セル)のSOC(State Of Charge)を推定する処理)を含む。この処理を「SOC推定処理」とも称し、後に詳細に説明する。
【0026】
インレット91は、充電ケーブルの先端に設けられた充電コネクタ(図示せず)を機械的な連結を伴って接続することが可能に構成されている。インレット91と充電コネクタとが接続されることで、車両900と充電設備(図示せず)との間の電気的な接続が確保される。
【0027】
電力変換装置92は、たとえばAC/DC変換器である。電力変換装置92は、充電設備から充電ケーブルを介して供給される交流電力を、バッテリ10を充電するための直流電力に変換する。車両900は、DC充電が可能に構成されていてもよい。
【0028】
充電リレー93は、SMR30とPCU94とを結ぶ電力線に電気的に接続されている。充電リレー93が閉成され、かつSMR30が閉成されると、インレット91とバッテリ10との間での電力伝送が可能となる。
【0029】
PCU94は、SMR30とMG95との間に電気的に接続されている。PCU94は、コンバータおよびインバータ(いずれも図示せず)を含み、統合ECU98からの指令に従ってMG95を駆動する。
【0030】
MG95は、交流回転電機であって、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。MG95の出力トルクは、動力伝達ギヤ96を通じて駆動輪97に伝達され、車両900を走行させる。また、MG95は、車両900の制動動作時には、駆動輪97の回転力によって発電する。MG95による発電電力は、PCU94によってバッテリ10の充電電力に変換される。
【0031】
統合ECU98は、プロセッサ981と、メモリ982とを含む。プロセッサ981は、様々なセンサから受ける信号ならびにメモリ982に記憶されたプログラムおよびマップに基づいて、車両900を所望の状態に制御するための各種制御を実行する。たとえば、統合ECU98は、電池ECU40と協調しながらPCU94を制御することによってバッテリ10の充放電を制御する。
【0032】
<セル構成>
図2は、セル50の構成の一例を概略的に示す斜視図である。
図2にはセル50の内部を透視した図が示されている。セル50は、この例では密閉型の角型電池ある。セル50の形状は円筒型であってもよい。セル50は、電極体60と、電池ケース70と、電解液80とを含む。電池ケース70は、正極端子71と、負極端子72とを含む。
【0033】
電極体60は、たとえば扁平直方体の外径形状を有する。電極体60は、電池ケース70に収容されている。電池ケース70は、たとえば、アルミニウム(Al)合金等の金属により構成され得る。電池ケース70は、Alラミネートフィルム等のパウチであってもよい。電解液80は、電池ケース70に注入されて電極体60に含浸している。電解液80の液面を1点鎖線で示す。
【0034】
図3は、電極体60の構成の一例を示す図である。
図2および
図3を参照して、電極体60は、正極1と負極2とが、その間にセパレータ3を挟みつつ交互に積層および捲回されることにより形成されている。
図3には捲回途中の分解図が示されている。
【0035】
正極1は、シート状であって、正極集電体11と、正極合材層12とを含む。正極集電体11は、正極端子71に電気的に接続されている。正極集電体11は、たとえばアルミニウム(Al)箔、Al合金箔等であり得る。
【0036】
正極合材層12は、この例では正極集電体11の表面および裏面の両面に形成されている。しかし、正極合材層12は、正極集電体11の表面(いずれか一方の面)にのみ形成されていてもよい。正極合材層12は、正極活物質121(
図4参照)と、導電材(図示せず)と、バインダ(図示せず)とを含む。正極活物質121は、たとえばLiFePO
4(リン酸鉄リチウム、LFP)である。正極活物質121は、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、Li(NiCoMn)O
2およびLi(NiCoAl)O
2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。導電材は、たとえば、カーボンブラック(アセチレンブラック等)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。バインダは、たとえば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0037】
負極2は、シート状であって、負極集電体21と、負極合材層22とを含む。負極集電体21は、負極端子72に電気的に接続されている。負極集電体21は、たとえば銅(Cu)箔であり得る。
【0038】
負極合材層22は、この例では負極集電体21の表面および裏面の両面に形成されている。しかし、負極合材層22は、負極集電体21の表面(いずれか一方の面)にのみ形成されていてもよい。負極合材層22は、負極活物質221と、バインダ(図示せず)とを含む。負極活物質221は、たとえば、天然黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素ハードカーボン等の黒鉛系の材料である。バインダは、たとえば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルアルコール(PVA)からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0039】
セパレータ3は帯状のフィルムである。セパレータ3は、正極1と負極2との間に配置され、正極1と負極2とを電気的に絶縁する。セパレータ3の材料は、たとえば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルムであってもよいし、ナイロンおよび芳香族ポリアミド(アラミド)等のポリアミド系樹脂であってもよいし、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、メチルセルロースなどからなる織布または不織布であってもよい。
【0040】
電解液80は、リチウム(Li)塩および溶媒を少なくとも含む。Li塩は、溶媒に溶解した支持電解質であって、たとえばLiPF6であり得る。溶媒は非プロトン性である。溶媒は、たとえば環状カーボネートおよび鎖状カーボネートの混合物であり得る。電解液80は、Li塩および溶媒に加えて、公知の機能性添加剤をさらに含んでもよい。
【0041】
<多粒子モデル>
本実施の形態においては、バッテリ10のSOCを高精度に推定すべく、多粒子モデル(MPM:Multi Particle Model)が採用される。
【0042】
図4は、多粒子モデルを説明するための概念図である。1粒子モデルでは、正極活物質が1粒子として模式的に表されるとともに、負極活物質が1粒子として模式的に表される。これに対し、多粒子モデルでは、正極および/または負極が、電子的およびイオン的に互いに接続された多数の粒子により構成されていると仮定する。本実施の形態における多粒子モデルでは、負極活物質221が多粒子として模式的に表される。負極合材層22には多くの負極活物質粒子が含有されているところ、それらの粒子の間では、バッテリ10の構造に関するパラメータ(以下「構造パラメータ」と略す)および/またはバッテリ10の材料物性に関するパラメータ(以下「材料物性パラメータ」と略す)に応じて、電荷移動反応(リチウムの挿入/脱離反応)のしやすさが異なる。多粒子モデルは、そのような電荷移動反応のしやすさの差異(分布)を粒子によって表現するものである。正極活物質121は、この例では1粒子として模式的に表されるが、正極活物質121も多粒子として表され得る。
【0043】
なお、
図4にはバッテリ10の充電時の様子が示されている。バッテリ10の充電時には、正極活物質121からリチウムイオン(Li
+で示す)が脱離する一方で、負極活物質221にリチウムイオンが挿入される。このとき、バッテリ10には電流(後述する総電流I)が流れる。図示しないが、バッテリ10の放電時には、電流の向きが
図4に示した向きとは逆になる。
【0044】
図5は、多粒子モデルに含まれる複数の粒子を説明するための概念図である。粒子の種類を互いに区別するための記号をjとする。j=1~Nである。Nが大きいほど演算量が増大するため、Nは電池ECU40(プロセッサ401)の演算処理能力に応じて定められ得る。この例ではN=10である。
【0045】
多粒子モデルの全ての粒子は球形であると仮定される。N種類の粒子は互いに異なる粒子径(半径)を有する。粒子j(j番目の粒子)の粒子径をrjと記載する。jが小さいほど、粒子径rjが小さい。
【0046】
粒子の表面積Sj=4πrjは、負極活物質の反応面積に相当する。粒子の体積Vj=(4πrj
3)/3は、負極活物質の容量に相当する。そうすると、粒子の表面積/体積=Sj/Vjは、負極活物質の反応面積/容量に対応する。粒子径rjが小さい粒子ほど、当該粒子の反応面積/容量が大きいため、当該粒子内のリチウム量(リチウム濃度)が変化しやすい。すなわち、リチウムイオンの挿入/脱離にともなう電流が流れやすい。したがって、粒子径rjが小さい粒子ほど、抵抗が低く、抵抗の逆数であるコンダクタンス(導電度)Gjが高い。
【0047】
ここでは分かりやすさのため、コンダクタンスGjが粒子径rj(粒子集合体のサイズ)によって決まる状況を例に説明した。粒子径は構造パラメータの一例である。構造パラメータの他の例としては、たとえば、負極活物質221と負極集電体21との間の距離(以下「集電タブ距離」とも記載する)、負極2の厚み、負極活物質の粒子の粗密、負極活物質の粒子径の頻度分布、負極2に含まれる導電助剤の分布などが挙げられる。材料物性パラメータとしては、たとえば、負極2(負極活物質221および負極集電体21)の材料ごとの固有の抵抗率が挙げられる。これらの構造パラメータおよび/または材料物性パラメータも電荷移動反応のしやすさを決定付ける。したがって、コンダクタンスGjは、構造パラメータおよび材料物性パラメータに含まれる複数のパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて定められる。コンダクタンスGjの値は、それら少なくとも1つのパラメータを様々な値に振って適合的に定めることが望ましい。
【0048】
このように、本実施の形態では、粒子径rj、集電タブ距離などの構造パラメータおよび/または材料物性パラメータを考慮した粒子jの個数(頻度と呼んでもよい)がnj個であると設定される。粒子数njの分布は、理論的には、使用する電極体60の仕様(負極活物質の粒度分布の仕様、負極集電体21および負極合材層22の形状など)に応じて定められ得る。しかし、現実の電極体60から粒子数njの分布を求めることは煩雑であるため、実際上は粒子数njの分布も適合的に定められ得る。この例では、粒子番号が小さいほど粒子数njが多い。粒子番号ごとに粒子数njを設定することは、構造パラメータおよび/または材料物性パラメータに応じて各粒子に異なる重み付けを与えることに相当する(後述するS107における平均化処理を参照)。
【0049】
図6は、多粒子モデルにおけるパラメータ間の関係の概要を説明するための図である。多粒子モデルによれば、各粒子を流れる電流は、当該粒子の反応過電圧η
jに応じて定まる。反応過電圧η
jとは、活性化過電圧とも呼ばれ、電荷移動反応に関連する過電圧である。粒子jの反応過電圧η
jは、負極電位Φと負極開放電位U
jとによって定まる。全ての粒子の負極電位(閉回路電位)は互いに等しい(φ
1=φ
2=・・・=Φ)。一方、負極開放電位U
jは、粒子に含まれるリチウム量θ
jに依存するため、粒子ごとに異なり得る。
【0050】
粒子jのリチウム量θ
jは式(1)のように定義される。c
jは、粒子jの表面(すなわち、負極活物質表面)におけるリチウム濃度であって、対象セルの充放電にともなって変化する可変値である。一方、c
maxは、負極活物質表面における最高リチウム濃度(限界リチウム濃度)であって、固定値である。したがって、リチウム量θ
jは、0から1までの範囲内の値である。
【数1】
【0051】
粒子jを流れる電流Ijは、当該粒子の反応電流密度ijおよび表面積Sjから求まる。電流Ijを全ての粒子について足し合わせたものが対象セルを流れる総電流Iである。
【0052】
<処理フロー>
図7は、本実施の形態におけるSOC推定処理の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、あらかじめ定められた条件の成立時(たとえばあらかじめ定められた周期ごと)に実行される。各ステップは、電池ECU40(プロセッサ401)によるソフトウェア処理により実現されるが、電池ECU40内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。
【0053】
この例ではセルごとにSOC推定処理が実行される。SOC推定処理の対象とされるセルを「対象セル」と記載する。SOC推定処理は繰り返し実行される。今回のSOC推定処理における値(今回値)を参照符号に(t)を付して表し、前回のSOC推定処理における値(前回値)を参照符号に(t-1)を付して表す。ステップをSと略す。
【0054】
S101において、電池ECU40は、今回のSOC推定処理に用いられる各種変数(パラメータ)をセンサから取得するか、あるいはメモリ402から読み出す。
【0055】
S102において、電池ECU40は、粒子ごとに、負極電位Φから負極開放電位(負極OCP)U
jを差し引くことによって反応過電圧η
jを算出する(式(2)参照)。
【数2】
【0056】
負極電位Φは、たとえば、予め定められた負極の平衡電位(固定値)に、前回のSOC推定処理における全ての粒子の過電圧ηj(t-1)の平均値を加算することによって算出される。セル50に参照電極(図示せず)が設けられている場合には、負極電位Φは、参照電極の電位を基準とした負極電位(測定値)であってもよい。
【0057】
負極OCPであるUjは、リチウム量と負極OCPとの対応関係を示すカーブ(リチウム量-負極OCPカーブ)を用いて算出される。リチウム量-負極OCPカーブは、事前に準備されてメモリ402に格納されている。
【0058】
図8は、リチウム量-負極OCPカーブの一例を示す図である。横軸はリチウム量θを表し、縦軸は負極OCP(U)を表す。このようなカーブが実験により準備されてマップまたはテーブルの形式で電池ECU40のメモリ402に格納されている。電池ECU40は、当該カーブを参照することによってリチウム量θからU
jを算出する。より具体的には、電池ECU40は、当該カーブにおいて、リチウム量(θ
j(t)+Δθ
j(t))に対応する負極OCPをU
j(t)として算出する。このリチウム量は、前回のSOC推定処理により算出された値である。
【0059】
図7を再び参照して、S103において、電池ECU40は、粒子ごとに、S102にて算出された反応過電圧η
jに基づいて反応電流密度i
jを算出する。反応電流密度i
jは、たとえば下記のバトラー・ボルマー(Butler-Volmer)式(3)に従って算出される。G
jは、
図5にて説明したコンダクタンスであり、シミュレーションまたは実験によりあらかじめ定められた固定値である。Fはファラデー定数である。Rは気体定数である。Tは温度センサにより測定される温度である。
【数3】
【0060】
S104において、電池ECU40は、粒子ごとに、粒子jを流れる電流I
j(t)を算出する。粒子jを流れる反応電流I
j(t)は、反応電流密度i
jに表面積S
jを乗算したものである(式(4)参照)。
【数4】
【0061】
S105において、電池ECU40は、各粒子を流れる電流I
jの総和をとることによって、対象セルを流れる総電流Iを算出する(式(5)参照)。S105の処理は省略してもよい。
【数5】
【0062】
S106において、電池ECU40は、粒子ごとに、リチウムイオンの固相拡散(粒子の表面と内部との間における拡散)を考慮したリチウム量を算出する。一般に、負極OCPは、負極活物質の粒子表面におけるリチウム濃度と、電解液のリチウム濃度と、に応じて定まる。そのため、本実施の形態では、リチウムイオンの固相拡散による粒子表面のリチウム量の時間変化を考慮することで、負極OCPを忠実に再現することが可能になる。
【0063】
今回のSOC処理における粒子jのリチウム量θ
j(t)は、たとえば式(6)に示す漸化式を用いて表される。右辺第2項のΔθ
j(t)が固相拡散によるリチウム量の変化を示す成分である。
【数6】
【0064】
より詳細には、固相拡散成分Δθ
j(t)は、一定の時定数を有する一次遅れの挙動を示す。時定数は、電気化学反応におけるリチウムイオンの拡散速度等に依存する。具体的に、固相拡散成分Δθ
j(t)は、たとえば式(7)に従って算出される。
【数7】
【0065】
αは、0から1までの値に設定される忘却係数である。αが大きいほど、(1-α)が小さくなり、前回のSOC推定処理による固相拡散成分Δθj(t-1)の影響を示す右辺第1項が小さくなる。βは、リチウムイオンの固相拡散の影響をリチウム量に反映させるための係数である。βが大きいほど、リチウムイオンの固相拡散の影響が大きくなる。αおよびβは、事前の実験またはシミュレーションにより適合的に定められる。S106にて算出されたリチウム量は、続くS107にて用いられるとともに、次回のSOC推定処理(S102の処理)に用いられる。
【0066】
なお、特許文献1に記載されているように、各粒子を複数の層に分割し、隣り合う層間におけるリチウムイオンの拡散を拡散方程式を解くことで表現してもよい。一方、式(6)および式(7)によれば、より簡易化した手法によりリチウムイオンの固相拡散が表現されるので、電池ECU40の演算負荷を低減できる。
【0067】
S107において、電池ECU40は、全ての粒子のリチウム量θ
jの平均値を、対象セルのSOCとして算出する(式(8)参照)。平均値の算出に際しては、粒子番号ごとの粒子数n
jも当然に考慮される。
【数8】
【0068】
本実施の形態における多粒子モデルでは、前述のとおり、たとえば、粒子径rjが小さかったり、負極集電体21に近かったりする粒子ほど、コンダクタンスGjが高く、リチウム量θjが変化しやすい。リチウム量θjの分布には、電荷移動反応の起こりやすさの違いに応じて、各粒子においてリチウムイオンの移動がどの程度進んだのかが反映されている。リチウム量θjの平均値は、対象セル全体のリチウムイオンの移動状況を示すパラメータであって、対象セルのSOCに相当するといえる。
【0069】
S108において、電池ECU40は、全てのセルのSOC推定が完了したかどうかを判定する。SOCが推定されていないセルが残っている場合(S108においてNO)、電池ECU40は、処理をS101に戻し、次のセルに対してS101~S107の処理を実行する。全てのセルのSOC推定が完了すると(S108においてYES)、電池ECU40は処理を終了する。
【0070】
<黒鉛のステージ構造>
前述のとおり、バッテリ10には、黒鉛(グラファイト)系の負極活物質が用いられている。負極活物質中の黒鉛結晶は、グラフェンシート(GS:graphene sheets)が積層されることにより形成されている。リチウムイオンは、グラフェンシート間の隙間に挿入(吸蔵)される。リチウムイオンの挿入に関し、黒鉛がステージ構造を有することが知られている。
【0071】
図9は、黒鉛のステージ構造を説明するための図である。横軸はSOCを表し、縦軸は電位を表す。黒鉛は、リチウムイオンの挿入量(すなわちSOC)に応じて4種類のステージ構造をとる。第nステージ構造(n=1~4)とは、リチウムイオンが挿入された2層間にリチウムイオンが挿入されていない層が(n-1)層存在するときの構造を指す。リチウムイオンの挿入量が増加するにつれて、ステージ構造は、第4ステージ構造(St
4)、第3ステージ構造(St
3)、第2ステージ構造(St
2)、第1ステージ構造(St
1)の順に遷移する。このような黒鉛のステージ構造が、バッテリ10のSOCとOCVとの対応関係を示す「OCVカーブ」の形状に反映され得る。
【0072】
図10は、OCVカーブの一例を示す図である。横軸はSOCを表し、縦軸は電圧(電位)を表す。
図10には、OCVカーブが実線で示さるとともに、比較のため、負極OCPカーブを上下方向に反転かつオフセットさせたものが一点鎖線で示されている。
【0073】
実際のバッテリでは、連続するステージ間で、負極OCPカーブの傾き(変化の割合)が異なる。この傾きの変化がOCVカーブに「段差」として現れる。そして、段差の位置および大きさが、バッテリの充電または放電の開始時のSOC(開始SOC)と、バッテリを流れる電流の大きさ(電流レート)とに応じて異なり得る。より具体的には、開始SOCが低いほど、段差の位置ずれ(
図10の例では低SOC側へのシフト)が大きくなる。また、電流レートが小さいほど、段差の大きさ(傾き変化の急峻さ)が大きくなる。
【0074】
正極活物質がリン酸鉄リチウム(LFP)等である場合、OCVカーブは広いフラット領域(SOC変化に伴うOCV変化が微小な領域)を有する。そのため、負極活物質の黒鉛による負極OCPカーブの形状の特徴がOCVカーブに強く反映され、上記の段差の問題が特に顕著になり得る。
【0075】
従来の電池モデルである単一粒子モデルでは、黒鉛系の負極活物質を用いた場合のOCVカーブ、より特定的には上記「段差」を再現することが困難である。特に、開始SOCおよび充電レートの違いに起因する段差の位置および大きさの違いを再現できない。そのため、SOC推定精度に改善の余地があった。
【0076】
これに対し、本実施の形態おいては、構造パラメータおよび材料物性パラメータのうちの少なくとも一方が互いに異なる複数の粒子を含む多粒子モデルが負極活物質に適用される。これにより、黒鉛のステージ構造間における反応面積および容量の差異などをOCVカーブに反映して、段差の大きさを再現することが可能になる。その結果、バッテリ10のSOCの推定精度を向上させることができる。その上で、固相拡散を考慮することによって(式(6)および式(7)参照)、段差の位置ずれ(SOC方向のシフト)を再現することも可能になる。よって、バッテリ10のSOCの推定精度を一層向上させることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、同じ構造パラメータおよび/または同じ材料物性パラメータを有する粒子が複数存在すると仮定される。
図5にて説明したように粒子ごとに粒子数n
jを設定することは、構造パラメータおよび/または材料物性パラメータごとに重み付けを設定することに相当する。これにより、全ての粒子が互いに異なる構造パラメータおよび互いに異なる材料物性パラメータを有すると仮定する場合と比べて、粒子の種類が削減される。その結果、電池ECU40の演算負荷を低減できる。
【0078】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
100 電池管理システム、1 正極、11 正極集電体、12 正極合材層、121 正極活物質、2 負極、21 負極集電体、22 負極合材層、221 負極活物質、3 セパレータ、10 バッテリ、20 監視ユニット、201 電圧センサ、202 電流センサ、203 温度センサ、40 電池ECU、401 プロセッサ、402 メモリ、50 セル、60 電極体、70 電池ケース、71 正極端子、72 負極端子、80 電解液、91 インレット、92 電力変換装置、93 充電リレー、94 PCU、95 モータジェネレータ、96 動力伝達ギヤ、97 駆動輪、98 統合ECU、981 プロセッサ、982 メモリ、900 車両。