(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179142
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】中継地点決定装置及び中継地点決定方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/083 20240101AFI20241219BHJP
【FI】
G06Q10/083
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097736
(22)【出願日】2023-06-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】松尾 一毅
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴廣
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA16
5L049CC51
(57)【要約】
【課題】荷物配送システムで用いられる飛行体に対して荷物の受け渡しを行う中継地点の位置を適切に決定することが可能な中継地点決定装置及び中継地点決定方法を提供する。
【解決手段】中継地点決定装置は、地形と地上に設置された建物とを含む地上地物情報111Aを記録する地上地物記録部111と、飛行体の機体情報を記録する機体情報記録部112と、機体情報記録部112に記録された前記機体情報に含まれる、前記飛行体の離着陸に関わる性能に基づいて、地上地物記録部111に記録された地上地物情報111Aから複数の着陸可能地点を抽出し、所定の環境条件に基づいて、前記複数の着陸可能地点の中から前記中継地点を選択する地上地物影響演算部102と、地上地物影響演算部102で選択された前記中継地点の位置を出力するユーザーインターフェース101とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物配送システムで用いられる飛行体に対して荷物の受け渡しを行う中継地点の位置を決定する中継地点決定装置において、
地形と地上に設置された建物とを含む地上地物情報を記録する地上地物記録部と、
前記飛行体の機体情報を記録する機体情報記録部と、
前記機体情報記録部に記録された前記機体情報に含まれる、前記飛行体の離着陸に関わる性能に基づいて、前記地上地物記録部に記録された前記地上地物情報から複数の着陸可能地点を抽出し、所定の環境条件に基づいて、前記複数の着陸可能地点の中から前記中継地点を選択する地上地物影響演算部と、
前記地上地物影響演算部で選択された前記中継地点の位置を出力するユーザーインターフェースとを備える
ことを特徴とする中継地点決定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の中継地点決定装置において、
前記所定の環境条件には、前記複数の着陸可能地点における通信回線の安定度と、前記複数の着陸可能地点から電線網までの距離と、前記複数の着陸可能地点から他荷物配送システムの配送路までの距離とが含まれる
ことを特徴とする中継地点決定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の中継地点決定装置において、
前記所定の環境条件には、前記複数の着陸可能地点の周囲の人口と、前記複数の着陸可能地点の周囲に存在する、人が滞在可能な施設の数と、前記複数の着陸可能地点の周囲に存在する、飛行を避けるべき施設の数とが含まれる
ことを特徴とする中継地点決定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の中継地点決定装置において、
前記所定の環境条件には、前記複数の着陸可能地点における、前記飛行体以外の手段を用いた配送にかかるコストが含まれる
ことを特徴とする中継地点決定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の中継地点決定装置において、
前記地上地物影響演算部は、選択した前記中継地点から所定の範囲内に、中継ポートとして設置可能な施設が存在する場合は、前記施設の位置を前記中継地点として選択し直す
ことを特徴とする中継地点決定装置。
【請求項6】
荷物配送システムで用いられる飛行体に対して荷物の受け渡しを行う中継地点の位置を決定する中継地点決定方法において、
前記飛行体の離着陸に関わる性能に基づいて、地形と地上に設置された建物とを含む地上地物情報から複数の着陸可能地点を抽出する第1ステップと、
所定の環境条件に基づいて、前記複数の着陸可能地点の中から前記中継地点を選択する第2ステップとを備える
ことを特徴とする中継地点決定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の中継地点決定方法において、
前記所定の環境条件には、前記複数の着陸可能地点における通信回線の安定度と、前記複数の着陸可能地点から電線網までの距離と、前記複数の着陸可能地点から他荷物配送システムの配送路までの距離とが含まれる
ことを特徴とする中継地点決定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の中継地点決定方法において、
前記所定の環境条件には、前記複数の着陸可能地点の周囲の人口と、前記複数の着陸可能地点の周囲に存在する、人が滞在可能な施設の数と、前記複数の着陸可能地点の周囲に存在する、飛行を避けるべき施設の数とが含まれる
ことを特徴とする中継地点決定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の中継地点決定方法において、
前記所定の環境条件には、前記複数の着陸可能地点における、前記飛行体以外の手段を用いた配送にかかるコストが含まれる
ことを特徴とする中継地点決定方法。
【請求項10】
請求項6に記載の中継地点決定方法において、
前記第2ステップで選択した前記中継地点から所定の範囲内に、中継ポートとして設置可能な施設が存在する場合は、前記施設の位置を前記中継地点として選択し直す
ことを特徴とする中継地点決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物配送システムで用いられる飛行体に対して荷物の受け渡しを行う中継地点の位置を決定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンと呼ばれる小型無人航空機の社会実装が進んでいる。それに伴って、ドローンを用いた荷物配送の検討が行われている。ドローンでは指定した地点間の空を飛ぶことで荷物配送を実現できるため、荷物配送における必要な人員の削減に貢献し、トラックドライバーの人手不足などの問題の解決することが期待されている。
【0003】
ここで、ドローンを用いた荷物配送に必要な要素として、地上の他荷物配送手段との荷物の授受を行う中継地点が挙げられる。この中継地点においてドローンの充電や荷物の積み込みを行う。中継地点を各地に設置することによって、ドローンを用いた荷物配送が可能な領域を広げることが可能となる。例えば、特許文献1には、ドローンを含めた複数の物流において、荷物の配送経路を迅速に決定する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドローン等の飛行体を用いた荷物配送システムを効率的に社会実装するためには、中継地点の位置を適切に設計する必要がある。
【0006】
同様の機能を持つ中継地点を近接した位置に配置した場合は、配送可能な領域が重複するため、中継地点ごとの荷物配送の効率が低下する。一方、中継地点同士を離した距離に置いた場合、配置によっては配送用飛行体の航続距離以上の中継地点間距離になる可能性がある。よって、複数の中継地点を設置する場合は、互いの中継地点の間合いを適切に設定するべきである。
【0007】
中継地点そのものの性能に影響を与える近隣環境の要素も考慮する必要がある。例として、中継地点近隣の人口、常に人が存在する施設の有無、公共施設などの設置を避けるべき区域、他配送システムとの荷物授受のための輸送路やその拠点、通信回線の基地局などが挙げられる。
【0008】
一方、これらの要素を考慮し、具体的に飛行体を用いた荷物配送システムのための中継地点を新たに配置する検討方法は存在していなかった。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、荷物配送システムで用いられる飛行体に対して荷物の受け渡しを行う中継地点の位置を適切に決定することが可能な中継地点決定装置及び中継地点決定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、荷物配送システムで用いられる飛行体に対して荷物の受け渡しを行う中継地点の位置を決定する中継地点決定装置において、地形と地上に設置された建物とを含む地上地物情報を記録する地上地物記録部と、前記飛行体の機体情報を記録する機体情報記録部と、前記機体情報記録部に記録された前記機体情報に含まれる、前記飛行体の離着陸に関わる性能に基づいて、前記地上地物記録部に記録された前記地上地物情報から複数の着陸可能地点を抽出し、所定の環境条件に基づいて、前記複数の着陸可能地点の中から前記中継地点を選択する地上地物影響演算部と、前記地上地物影響演算部で選択された前記中継地点の位置を出力するユーザーインターフェースとを備えるものとする。
【0011】
また、本発明は、荷物配送システムで用いられる飛行体に対して荷物の受け渡しを行う中継地点の位置を決定する中継地点決定方法において、前記飛行体の離着陸に関わる性能に基づいて、地形と地上に設置された建物とを含む地上地物情報から複数の着陸可能地点を抽出する第1ステップと、所定の環境条件に基づいて、前記複数の着陸可能地点の中から前記中継地点を選択する第2ステップとを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、荷物配送システムで用いられる飛行体に対して荷物の受け渡しを行う中継地点の位置を適切に決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1における中継地点決定装置の構成図である
【
図2】本発明の実施例1における地上地物影響演算部の処理を示すフロー図である
【
図3】本発明の実施例1におけるユーザーに提示される新たに設置する中継地点の配置を表した例である。
【
図4】本発明の実施例3における中継地点決定装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、各図中、同等の要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例0015】
本発明の実施例1は、飛行体の一例としてドローンを用いた荷物配送システムに本発明を適用したものである。本実施例では、ある領域内でドローンを用いた荷物配送システムによる荷物配送を実現するために必要な中継地点の位置を、ドローンの機体性能と物理的な離着陸可能な領域の情報、通信回線の安定度、電線網、及び他荷物配送システムの配送路情報を用いて決定する。
【0016】
図1は、実施例1における中継地点決定装置の構成図である。中継地点決定装置100は、ユーザーからの情報を入力、及び中継地点決定装置100からの情報を出力するユーザーインターフェース101と、地上に存在する地物の影響を計算する地上地物影響演算部102と、地上の各種地物を記録する地上地物記録部111と、配送で使用するドローンの機体性能を記録する機体情報記録部112とを備える。
【0017】
ユーザーインターフェース101は、地上地物影響演算部102に対して地上地物影響を計算する領域101Aを送り、機体情報記録部112に対して配送で使用するドローンの機体性能101Bを送る。地上地物影響演算部102は、ユーザーインターフェース101に対して中継地点の位置102Aを送る。地上地物記録部111は、地上地物影響演算部102に対して地上地物情報111Aを送る。機体情報記録部112は、地上地物影響演算部102に対して機体情報112Aを送る。
【0018】
ユーザーインターフェース101の構成例としては、情報を投影するディスプレイが挙げられる。地上地物影響演算部102の構成例としては、地上に設置されたコンピューターが挙げられる。地上地物記録部111及び機体情報記録部112の構成例としては、ハードディスクなどのデータ記録装置が挙げられる。
【0019】
図2は、地上地物影響演算部102の処理を示すフロー図である。
【0020】
まず、ユーザーインターフェース101より得られる領域101A内の地上地物情報111Aを地上地物記録部111から抽出する(処理201)。
【0021】
次に、機体情報112Aに含まれる、ドローンの離着陸に関わる性能に基づいて、地上地物情報111Aから着陸可能な地点を抽出する(処理202)。
【0022】
次に、処理202で抽出した各地点における地上地物の影響を、式aを用いて計算する(処理203)。
【0023】
実施例1では、式aとして以下の式(1)を用いる。
【0024】
【0025】
ここで、式(1)の右辺各項に対するゲインはユーザーが対話的に設定可能としてもよいし、システム内部で固定値を用いてもよい。
【0026】
次に、式aの値が最も高い地点を初期値として、新たに設置する中継地点の個数に1を加算する(処理204)。中継地点の個数の初期値は1とする。中継地点の数に1を加算した際、中継地点の個数が上限値を越えた場合は、ユーザーに「本領域はカバー不可」などの提示を行う。
【0027】
次に、処理202で抽出した各地点のうち、式bを用いた評価関数の値が最も高い地点を、新たに設置する中継地点とする(処理205)。
【0028】
実施例1では、式bとして以下の式(2)を用いる。
【0029】
【0030】
ここで、式(2)の右辺各項に対するゲインはユーザーが対話的に設定可能としてもよいし、システム内部で固定値を用いてもよい。
【0031】
なお、処理205において、追加した中継地点からのドローンの到達範囲が他中継地点と重複した場合は、追加した中継地点は不要と判断し、他の地点に中継地点を設置する。
【0032】
次に、1つ以上の中継地点から領域101A内の任意の地点までドローンを用いて到達可能か判定する(処理206)。到達可能な場合は処理207に進み、到達不能な場合は処理204に戻る。
【0033】
最後に、新たに設置する中継地点の配置をユーザーインターフェース101を用いてユーザーに提示する(処理207)。
【0034】
図3は、ユーザーに提示される新たに設置する中継地点の配置を表した例である。領域301は、ユーザーインターフェース101から得られた領域101A(
図1に示す)を示している。地点310,311は、既に設定されている中継地点を示している。地点320,321,322は、
図2に示す処理によって新たに設置する中継地点を示している。領域310A,311A,320A,321A,322Aは、それぞれ中継地点310,311,320,321,322からドローンを用いて到達可能な範囲(航続距離範囲)を示している。
【0035】
図2に示した処理によって、新たに設置する中継地点が、周囲の環境を考慮してより効果的な場所に配置される。また、領域301内のすべての地点が、少なくとも1つの中継地点からドローンを用いて到達可能な範囲内に収まる。
【0036】
(まとめ)
実施例1では、荷物配送システムで用いられるドローンに対して荷物の受け渡しを行う中継地点の位置を決定する中継地点決定装置において、地形と地上に設置された建物とを含む地上地物情報111Aを記録する地上地物記録部111と、ドローンの機体情報を記録する機体情報記録部112と、機体情報記録部112に記録された前記機体情報に含まれる、前記ドローンの離着陸に関わる性能に基づいて、地上地物記録部111に記録された地上地物情報111Aから複数の着陸可能地点を抽出し、所定の環境条件に基づいて、前記複数の着陸可能地点の中から前記中継地点を選択する地上地物影響演算部102と、地上地物影響演算部102で選択された前記中継地点の位置を出力するユーザーインターフェース101とを備える。
【0037】
また、実施例1では、荷物配送システムで用いられるドローンに対して荷物の受け渡しを行う中継地点の位置を決定する中継地点決定方法において、前記ドローンの離着陸に関わる性能に基づいて、地形と地上に設置された建物とを含む地上地物情報111Aから複数の着陸可能地点を抽出する第1ステップ(処理202)と、所定の環境条件に基づいて、前記複数の着陸可能地点の中から前記中継地点を選択する第2ステップ(処理205)とを備える。
【0038】
以上のように構成した実施例1によれば、荷物配送システムで用いられるドローンに対して荷物の受け渡しを行う中継地点の位置を適切に決定することが可能となる。
【0039】
また、実施例1における前記所定の環境条件には、前記複数の着陸可能地点における通信回線の安定度と、前記複数の着陸可能地点から電線網までの距離と、前記複数の着陸可能地点から他荷物配送システムの配送路までの距離とが含まれる。これにより、通信回線の安定度、電線網までの距離、及び他荷物配送システムの配送路までの距離を考慮して中継地点の位置を決定することが可能となる。
【0040】
なお、実施例1における地上地物影響演算部102は、第2ステップ(処理205)で選択した前記中継地点から所定の範囲内(前記中継地点の近傍)に、中継ポートとして設置可能な施設が存在する場合は、前記施設の位置を前記中継地点として選択し直してもよい。これにより、中継ポートとして設置可能な施設を優先的に中継地点として選択することが可能となる。
本発明の実施例2は、中継地点近隣の情報を考慮して中継地点の位置を決定することによって、中継地点を実際に設置する際のコストや稼働効率が向上するように、実施例1に修正を加えたものである。中継地点近隣の情報としては、中継地点近隣の人が滞在可能な施設(コンビニ、郵便局、公園など)の有無や、中継地点近隣の人口、及び飛行を避けるべき建物・施設の情報を用いる。
ここで、式(3)の右辺各項に対するゲインはユーザーが対話的に設定可能としてもよいし、システム内部で固定値を用いてもよい。式(3)を用いることにより、より地上の地物の影響を考慮した位置に中継地点を設置できる。