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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179146
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】二次電池用充放電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241219BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20241219BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H02J7/00 303C
H02J7/00 A
H02J1/00 304H
H02J1/00 304J
H02J1/00 309H
H02J1/00 309Q
H02J1/00 309T
H01M10/44 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097743
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】591142507
【氏名又は名称】株式会社北電子
(71)【出願人】
【識別番号】512146362
【氏名又は名称】株式会社ソフトエナジーコントロールズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】江口 勇治
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G165BB01
5G165BB04
5G165EA02
5G165EA06
5G165FA01
5G165HA09
5G165LA01
5G165LA02
5G165LA07
5G503AA01
5G503AA04
5G503BA04
5G503BB02
5G503EA08
5G503EA09
5G503GB03
5H030AA01
5H030AS20
5H030BB01
5H030BB21
(57)【要約】
【課題】AC/DCコンバータ・蓄電池用DC/DCコンバータ・試験電池用DC/DCコンバータ等の機器が直流バスに接続された構成の二次電池用の充放電装置において、直流バスに接続されている機器の一部が故障した場合、直流バスに大電流が発生して隣接した機器を連鎖的に故障させる等の不具合を防止する。
【解決手段】二次電池用充放電装置1において、AC/DCコンバータ3と、蓄電池用DC/DCコンバータ6と、試験電池用DC/DCコンバータ7等の機器と、直流バス9との間に、二次電池用充放電装置1上の異常(過電流または過電圧または高温など)を検知して電流を遮断する接続遮断手段11として遮断機5を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電力が接続されるAC/DCコンバータと、
蓄電用の二次電池が電気的に接続可能な蓄電池用DC/DCコンバータと、
試験用の二次電池が電気的に接続可能な試験電池用DC/DCコンバータと、
前記AC/DCコンバータ、蓄電池用DC/DCコンバータ、及び試験電池用DC/DCコンバータが、それぞれ電気的に接続可能な直流バスと、を備え、
前記試験用の二次電池に対して所定の充放電を実行可能な二次電池用充放電装置であって、
前記直流バスと、前記AC/DCコンバータ、蓄電池用DC/DCコンバータ、又は試験電池用DC/DCコンバータの少なくともいずれかとの間における電力の伝送を制御可能な電力制御手段を備える
ことを特徴とする二次電池用充放電装置。
【請求項2】
前記電力制御手段として、
前記直流バスと、前記AC/DCコンバータ、蓄電池用DC/DCコンバータ、又は試験電池用DC/DCコンバータの少なくともいずれかとの電気的な接続を遮断可能な接続遮断手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池用充放電装置。
【請求項3】
前記接続遮断手段が、
前記直流バスと、前記AC/DCコンバータ、蓄電池用DC/DCコンバータ、又は試験電池用DC/DCコンバータの少なくともいずれかとの間に配設される、
前記直流バスの過電流、過電圧、又は高温の少なくともいずれかを検知すると、当該直流バスと前記AC/DCコンバータ、蓄電池用DC/DCコンバータ、又は試験電池用DC/DCコンバータの少なくともいずれかとの電気的な接続を切り離し可能な遮断機からなる
ことを特徴とする請求項2に記載の二次電池用充放電装置。
【請求項4】
前記電力制御手段として、
前記直流バスと、前記AC/DCコンバータとの電気的な接続を絶縁可能な絶縁手段を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池用充放電装置。
【請求項5】
前記絶縁手段が、
前記直流バスと、前記AC/DCコンバータとの間に配設される、
前記AC/DCコンバータの前記直流バスへの出力電圧を調整可能な変圧器からなる
ことを特徴とする請求項4に記載の二次電池用充放電装置。
【請求項6】
前記電力制御手段として、
前記蓄電池用DC/DCコンバータが、前記蓄電用の二次電池から前記直流バスへ電力を伝送する力行動作をしている場合に、
前記AC/DCコンバータの、前記直流バスから前記系統電力へ電力を伝送する回生動作を停止可能な回生制御手段を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池用充放電装置。
【請求項7】
前記電力制御手段として、
前記AC/DCコンバータ又は前記蓄電池用DC/DCコンバータが、休止状態から定格電流を出力できるようになるまでに要する立上り時間tを、下記式1を満たすように制御可能な立上り時間制御手段を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池用充放電装置。
式1:t<(Vb-Vt0)×Cs/I_tr
Vb:前記直流バスの通常の電圧値
Vt0:前記試験電池用DC/DCコンバータの入力電圧の下限値
Cs:前記直流バスの容量の合計値
I_tr:前記試験電池用DC/DCコンバータの定格充電電流の合計値
【請求項8】
前記電力制御手段として、
前記直流バスと、前記AC/DCコンバータ、蓄電池用DC/DCコンバータ、又は試験電池用DC/DCコンバータの少なくともいずれかとの間に配設されるコンデンサに対して、所定電荷を放電又は充電可能なコンデンサ制御手段を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池用充放電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスマートフォン等のIT機器や電気自動車などに使用される二次電池の活性化や品質検査のための充放電を行う二次電池用充放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日において、スマートフォン等のIT機器や電気自動車などに使用される二次電池の需要が急速に増大している。
この種の二次電池の量産工場の最終工程では、生産された二次電池の活性化と品質検査のための充放電を行う充放電装置が広く用いられている。
このような充放電装置を用いることにより、それまで人力で行われていた二次電池の活性化と品質検査を機械化することが可能となり、二次電池の大量生産の実現に寄与している。
【0003】
ここで、従来の充放電装置の多くは、試験電池から放電回生した電力を双方向AC-DCコンバータによってさらに交流系統へ回生(逆潮流)しているが、次に試験電池へ充電する時には、再び双方向AC-DCコンバータを力行動作させて系統から電力を供給している。
このような従来の充放電方式は、放電回生した電力を有効に使うことができていないということであり、すなわち電力ロスが生じているという状況であった。
【0004】
これに対して、試験電池から放電回生した電力を効率よく再利用するために、例えば特許文献1では、充放電装置に直流バスを用いることにより、二次電池の充放電に伴う電力損失が最小となるように充放電装置を運用することを目的とした「充放電試験システム」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-154793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているのは、直流バスを基本構造として取り入れることにより、充放電による電力使用の効率を改善しようとする充放電システムである。
しかしながら、特許文献1には、単に充放電システムに直流バスを採用する構成が開示されているのみであり、そのような構成を実施した場合に発生する可能性のある、不具合についての解決方法や、非常時に対応する方法等は示されていない。
例えば、特許文献1のシステムにおいて、直流バスに接続されている機器の一部が故障した場合、直流バスに大電流が発生して隣接した機器を連鎖的に故障させる恐れがある。
【0007】
また、例えば、特許文献1に記載の双方向AC-DCコンバータは、通常、三相PFC回路が用いられるが、その直流出力はアース電位に対してコモンモードの脈流になっているため、他の機器との接続が困難な場合があり、また接地もできないために安全面にも問題があった。
また、例えば、特許文献1に記載の構成を実施した場合、意図しない電流経路が発生するため効率悪化を招く恐れがある。
【0008】
また、例えば、直流バスに接続されている機器の一部が故障した場合、直流バスに瞬低を発生させて、充放電装置の稼働を停止させてしまう恐れがある。
さらに、例えば、機器を直流バスに対して挿抜する場合、機器側の大容量コンデンサの電荷が安全上の問題を起こす恐れがある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するために提案されたものであり、二次電池用の充放電装置を構成する各機器と直流バスとの間に、装置上の異常を検知して断路する遮断機を設けることによって、機器の故障に伴う連鎖故障等を有効に防止することができる、高効率な二次電池用充放電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、系統電力が接続されるAC/DCコンバータと、蓄電用の二次電池が電気的に接続可能な蓄電池用DC/DCコンバータと、試験用の二次電池が電気的に接続可能な試験電池用DC/DCコンバータと、前記AC/DCコンバータ、蓄電池用DC/DCコンバータ、及び試験電池用DC/DCコンバータが、それぞれ電気的に接続可能な直流バスと、を備え、前記試験用の二次電池に対して所定の充放電を実行可能な二次電池用充放電装置であって、前記直流バスと、前記AC/DCコンバータ、蓄電池用DC/DCコンバータ、又は試験電池用DC/DCコンバータの少なくともいずれかとの間における電力の伝送を制御可能な電力制御手段を備える構成としてある。
【0011】
以上のような本発明の二次電池用充放電装置によれば、例えばAC/DCコンバータや蓄電池用DC/DCコンバータ、試験電池用DC/DCコンバータの直流バスとの接続を遮断する遮断機を配設・制御することにより、直流バスに接続されている機器の一部が故障した場合に、異常を検知して遮断機を動作させることで、直流バスに大電流が発生して隣接した機器を連鎖的に故障させることを有効に防止することができる。
また、本発明の二次電池用充放電装置によれば、例えばAC/DCコンバータの出力を変圧器で絶縁することにより、その出力電圧がアース電位に対してコモンモードの脈流になることを防止できるため、他の機器との接続が間便になり、また接地可能となるため安全性も向上する。
【0012】
また、本発明に係る二次電池用充放電装置において、前記蓄電池用DC/DCコンバータが力行動作をしている時に、AC/DCコンバータの回生動作を停止させる機能を備えることにより、意図しない電流経路が発生することによる効率悪化を防止することができる。
また、本発明に係る二次電池用充放電装置において、前記AC/DCコンバータと蓄電池用DC/DCコンバータの立上り時間tを制限することにより、直流バスに接続されている機器の一部が故障した場合などに発生する直流バスの瞬低を防止することができる。
さらに、本発明に係る二次電池用充放電装置において、前記AC/DCコンバータ、および蓄電池用DC/DCコンバータの出力コンデンサに対して、安全に電荷を放電する放電回路と、安全に電荷を充電する予備充電回路とを設けることにより、機器を直流バスに対して挿抜する場合に発生する安全上の問題を回避することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る二次電池用充放電装置によれば、二次電池用の充放電装置を構成する各機器と直流バスとの間に、装置上の異常を検知して断路する遮断機等の電力制御手段を設けることによって、機器の故障に伴う連鎖故障等を防止することができる、高効率な二次電池用充放電装置を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、例えば充放電装置の部分故障時の不具合対策や、他の機器との接続時の不具合対策、運転動作上の不具合対策、メンテナンス時の安全対策などを実施することができ、これによって、直流バスを用いた二次電池用充放電装置の性能向上を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池用充放電装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る二次電池用充放電装置の構成を示すブロック図であり、本発明に係る電力制御手段として、直流バスとAC/DCコンバータ・蓄電池用DC/DCコンバータ・試験電池用DC/DCコンバータとの接続を切り離す遮断機(接続遮断手段)を備える場合を示している。
図3図2に示す遮断機とその制御回路の詳細を示す図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る二次電池用充放電装置の構成を示すブロック図であり、本発明に係る電力制御手段として、AC/DCコンバータの出力を絶縁する変圧器(絶縁手段)を備える場合を示している。
図5】AC/DCコンバータの出力電圧がコモンモードの脈流となることを説明するための説明図である。
図6】標準的なAC/DCコンバータの原理ブロック図である。
図7図4に示す変圧器とその回路例の詳細を示す図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る二次電池用充放電装置の構成を示すブロック図であり、本発明に係る電力制御手段として、蓄電池用DC/DCコンバータを力行動作させる場合にAC/DCコンバータを停止させる回生制御手段の動作モードを示している。
図9図8に示す回生制御手段を構成する回路例の詳細を示す図である。
図10図8及び図9に示す二次電池用充放電装置において、蓄電池用DC/DCコンバータを力行動作させる場合に、AC/DCコンバータを停止させる動作を説明するためのフローチャートである。
図11】直流バスにおいて瞬停が発生することを説明するための説明図である。
図12】本発明の一実施の形態に係る二次電池用充放電装置における電力制御手段として、AC/DCコンバータが休止状態から定格電流を出力できるようになるまでに要する立上り時間を制御する立上り時間制御手段を構成する回路例の詳細を示す図である。
図13】本発明の一実施の形態に係る二次電池用充放電装置のAC/DCコンバータの構成を示すブロック図であり、本発明に係る電力制御手段として、AC/DCコンバータを直流バスに接続する場合に、安全に電荷を充電する予備充電回路(コンデンサ制御手段)を備える場合を示している。
図14】本発明の一実施の形態に係る二次電池用充放電装置のAC/DCコンバータの構成を示すブロック図であり、本発明に係る電力制御手段として、AC/DCコンバータを直流バスから取り外す場合に、安全に電荷を放電する放電回路(コンデンサ制御手段)を備える場合を示している。
図15図13に示す二次電池用充放電装置において、AC/DCコンバータを直流バスに接続する場合に、安全に電荷を充電する予備充電回路の動作を説明するためのフローチャートである。
図16図14に示す二次電池用充放電装置において、AC/DCコンバータを直流バスから取り外す場合に、安全に電荷を放電する放電回路を説明するためのフローチャートである。
図17】本発明の一実施の形態に係る二次電池用充放電装置の電力制御手段を構成するサーバ・装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本明細書に添付した図面を参照しつつ、本発明に係る二次電池用充放電装置を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
本発明に係る二次電池用充放電装置は、例えばスマートフォン等のIT機器や電気自動車などに使用される二次電池の活性化や品質検査のために、二次電池の量産工場の最終工程などにおいて、生産された二次電池に対して所定の充放電処理を行う二次電池用の充放電装置である。
【0016】
具体的には、本発明の一実施形態に係る二次電池用充放電装置1は、例えば、生産されたリチウムイオン電池等の二次電池(試験電池8)の活性化及び品質検査で用いられ、複数の試験チャンネルにおいて複数の試験電池8を一度(同時)に充放電するための装置である。
図1に示すように、本実施形態の二次電池用充放電装置1は、系統電力2が接続されるAC/DCコンバータ3と、蓄電用の二次電池である蓄電池ユニット4が接続される蓄電池用DC/DCコンバータ6と、試験用の二次電池である試験電池8が接続される試験電池用DC/DCコンバータ7と、二次電池用充放電装置1の各部を監視・制御して所定の電力伝送を行わせる電力制御手段10を備えている。
【0017】
AC/DCコンバータ3、蓄電池用DC/DCコンバータ6、及び試験電池用DC/DCコンバータ7は、図2に示すように、それぞれ直流バス(DCバス)9に接続されて、試験電池8に対して所定の充放電処理が行えるようになっている。
そして、本発明に係る二次電池用充放電装置1では、直流バス9と、AC/DCコンバータ3、蓄電池用DC/DCコンバータ6、又は試験電池用DC/DCコンバータ7の少なくともいずれかとの間における電力の伝送を制御するための、所定の電力制御手段10を備えるようになっている。
【0018】
AC/DCコンバータ3は、交流側端子が系統電力(交流電源)2に接続され、直流側端子が直流バス9に接続されて、試験対象となる二次電池(試験電池8)に対する電力の双方向への伝送(力行動作/回生動作)を実行する。
例えば、AC/DCコンバータ3は、力行動作する場合には、三相200Vの交流電圧を350Vの直流電圧に変換・昇圧し、また、回生動作する場合には、直流バス9の直流電圧を200Vの交流電圧に変換・降圧することができる。
【0019】
蓄電池用DC/DCコンバータ6は、一端が蓄電池ユニット4に電気的に接続され、他端が直流バス9に電気的に接続されて、蓄電池ユニット4から直流バス9への電力の供給(力行動作)と、直流バス9から蓄電池ユニット4への電力の供給(回生動作)を実行する。
例えば、蓄電池用DC/DCコンバータ6は、力行動作する場合には、蓄電池ユニット4の直流電圧を350Vの直流電圧に変換して直流バス9に供給し、また、回生動作する場合には、直流バス9の直流回生電圧を、一般的には数100Vの直流電圧(ESS蓄電池の電圧等)に変換して蓄電池ユニット4に供給することができる。
【0020】
蓄電池ユニット4は、蓄電池用DC/DCコンバータ6への電力の供給(力行動作)と、蓄電池用DC/DCコンバータ6からの電力の蓄電(回生動作)を行う二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池,ニッケル水素電池などで構成される。
【0021】
試験電池用DC/DCコンバータ7は、一端が直流バス9に電気的に接続され、他端が試験電池8に電気的に接続されて、試験電池8への電力の供給(力行動作)と、試験電池8からの電力の供給(回生動作)を実行する。
例えば、試験電池用DC/DCコンバータ7は、力行動作する場合には、直流バス9の直流電圧を0~4V程度の直流電圧(試験電池の電圧等)に変換し、また、回生動作する場合には、各試験電池8の直流放電電圧を350Vの直流電圧に変換することができる。
試験電池8は、試験対象となる二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池,ニッケル水素電池などで構成される。
【0022】
電力制御手段10は、AC/DCコンバータ3、蓄電池用DC/DCコンバータ6、又は試験電池用DC/DCコンバータ7を制御して、複数の試験電池8に対する充放電処理を実行・制御する。
具体的には、電力制御手段10は、後述するように、AC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7を構成する物理的な電気回路を監視・制御するための処理,手段,機能を実行するソフトウェア(プログラム)及びハードウェア(コンピュータ等の情報処理装置)によって構成される(図17参照)。
【0023】
例えば、電力制御手段10は、AC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7の状態・動作を監視し、それぞれが、力行動作中・回生動作中・休止(アイドリング)中等であるかを把握し、必要な動作を開始・終了・停止等させることができる。
また、電力制御手段10は、AC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7と直流バス9の間で、直流バス9の過電流・過電圧・高温などの異常の有無を監視し、何らかの異常を検知する、異常を除去・解消するための必要な制御を実行させることができる。
【0024】
例えば、電力制御手段10は、複数の試験電池用DC/DCコンバータ7にそれぞれ接続される複数の試験電池8の充放電パターンに応じて、対応する試験電池用DC/DCコンバータ7及びAC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6の力行動作・回生動作・休止等を制御することができる。
このように電力制御手段10によって複数のAC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7に供給される力行電力・回生電力が制御されることで、任意の試験電池8について所定の充電及び放電処理が実行されるようになる。
なお、電力制御手段10は、二次電池用充放電装置1自体に内蔵されていてもよく、また、二次電池用充放電装置1に対して外付けされる構成であってもよく、その場合には、電力制御手段10は、例えば一般的なPCやサーバ等によって構成することができる(図17参照)。
【0025】
そして、本実施形態に係る電力制御手段10は、図1に示すように、接続遮断手段11・絶縁手段12・回生制御手段13・立上り時間制御手段14・コンデンサ制御手段15の、少なくともいずれかの手段として構成されるようになっている。
以下、本実施形態に係る二次電池用充放電装置1の電力制御手段10を構成する各部について、その動作・処理・機能を含めて詳細を説明する。
【0026】
[接続遮断手段]
図2は、本実施形態に係る二次電池用充放電装置1において、電力制御手段10として、直流バスとAC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7との電気的な接続を切り離す接続遮断手段11となる遮断機5を備える場合を示している。
図3は、図2に示す直流バス9とAC/DCコンバータ3と遮断機5とその制御回路の詳細を示す図である。
なお、直流バス9と蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7との電気的な接続を切り離す接続遮断手段11の制御回路は、図3とほぼ同様なのでこれらについての詳細な説明と図は省略する。
【0027】
接続遮断手段11は、直流バス9と、AC/DCコンバータ3、蓄電池用DC/DCコンバータ6、又は試験電池用DC/DCコンバータ7の少なくともいずれかとの電気的な接続を遮断するための電力制御手段10として備えられる。
具体的には、本実施形態では、接続遮断手段11は、直流バス9と、AC/DCコンバータ3、蓄電池用DC/DCコンバータ6、又は試験電池用DC/DCコンバータ7の少なくともいずれかとの間に配設され、AC/DCコンバータ3、蓄電池用DC/DCコンバータ6、又は試験電池用DC/DCコンバータ7の過電流、過電圧、又は高温の少なくともいずれかの異常を検知すると、直流バス9と、異常を検知したAC/DCコンバータ3、蓄電池用DC/DCコンバータ6、又は試験電池用DC/DCコンバータ7の少なくともいずれかとの接続を切り離す遮断機5によって構成される。
すなわち、異常(過電流、過電圧、又は高温)を検知する対象は、直流バス9ではなく、直流バス9に接続される機器(AC/DCコンバータ3、蓄電池用DC/DCコンバータ6、又は試験電池用DC/DCコンバータ7)である。
【0028】
AC/DCコンバータ3、蓄電池用DC/DCコンバータ6、試験電池用DC/DCコンバータ7は、それぞれ、双方向に電力を伝送する機能を有しており、直流バス9に対して「力行動作」と「回生動作」が可能となっている。
ここで、AC/DCコンバータ3の力行動作とは、系統電力2から直流バス9へ電力を伝送する動作である。
一方、AC/DCコンバータ3の回生動作とは、直流バス9から系統電力2へ電力を伝送する動作である。
【0029】
同様に、蓄電池用DC/DCコンバータ6の力行動作とは、蓄電池ユニット4から直流バス9へ電力を伝送する動作である。
また、蓄電池用DC/DCコンバータ6の回生動作とは、直流バス9から蓄電池ユニット4へ電力を伝送する動作である。
同様に、試験電池用DC/DCコンバータ7の力行動作とは、直流バス9から試験電池8へ電力を伝送する動作である。
また、試験電池用DC/DCコンバータ7の回生動作とは、試験電池8から直流バス9へ電力を伝送する動作である。
【0030】
以上のようなAC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7の力行及び回生動作を前提として、本実施形態における二次電池用充放電装置1の通常の運転モードとして、例えば以下の3パターンが実行される。
・運転モード1:試験電池用DC/DCコンバータ7が全部力行動作している。
・運転モード2:試験電池用DC/DCコンバータ7が全部回生動作している。
・運転モード3:試験電池用DC/DCコンバータ7が、力行動作と回生動作が混在している。
【0031】
ここで、上記のような3パターンの運転モードは、電力の伝送方向に着目すると以下のようになる。
・運転モード1:AC/DCコンバータ3、又は蓄電池用DC/DCコンバータ6が力行動作して、直流バス9へ電力を伝送する。
・運転モード2:AC/DCコンバータ3、又は蓄電池用DC/DCコンバータ6が回生動作して、直流バス9から電力を抜き出す。
・運転モード3:AC/DCコンバータ3、又は蓄電池用DC/DCコンバータ6が、力行動作及び回生動作するとともに、試験電池用DC/DCコンバータ7同士で電力の伝送が発生する。
なお、この運転モード3における、試験電池用DC/DCコンバータ7同士で電力を伝送する経路は、試験電池8が放電した電力を最も効率よく再利用する経路であって、本実施形態に係る二次電池用充放電装置1の構成が実現できる優れた利点の一つでもある。
【0032】
以上のように、AC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7による力行動作及び回生動作が行われる本実施形態に係る二次電池用充放電装置1において、発生が想定される不具合としては、例えば、直流バス9に接続されている機器の一部が故障した場合に、直流バス9に大電流が発生して、隣接した機器を連鎖的に故障させることがあり得る。
そこで、本実施形態では、そのような不具合を防止するために、直流バス9と直流バス9に接続されている各機器との間に、電力制御手段10として、直流バス9上の異常を検知して動作する接続遮断手段11となる遮断機5を設けるようにしている。
【0033】
遮断機(遮断器)5は、図2に示すように、直流バス9と、直流バス9に接続されるAC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7との間にそれぞれ配設される、電路を開閉するための装置であり、サーキットブレーカーとも呼ばれ、公知の遮断装置・開閉スイッチ等によって構成することができる。
ここで、電路の「開」動作の際には、開放電極間に高電圧が発生し電流遮断を困難にする作用があるため、遮断機5はその作用に耐え、電路電流遮断を可能とする開閉装置として機能する。したがって、遮断機5は、通常の負荷電流と、短絡や地絡などの故障中に流れる大きな故障電流の遮断もできるようになっており、この点において、負荷電流程度の小さい電流しか遮断できない負荷開閉器(負荷スイッチ)とは異なる。
【0034】
なお、電力系統に短絡や地絡などの故障が発生した場合には、故障部分を、遮断によりできるだけ速やかに切り離す必要があり、切り離す時間が速ければ速いほど電力系統の安定性が増すことになる。このため、公知の遮断機(遮断器)による遮断時間は逐次短縮されており、例えば150キロ~500キロボルトに使用されている大型遮断器でも電流を遮断する時間は30ミリ~60ミリ秒程度に短縮されるようになっている。
このように、遮断機5は、平常状態及び短絡・過電流・地絡状態の電路を投入・遮断できる装置として機能する。なお、遮断機5は、2次側で短絡・過電流・地絡が発生したときに電路を保護するために、過電流継電器や地絡継電器など保護継電器と組み合わせたり、過電流や地絡を検出する装置を内蔵したりすることができ、このような構成によって、もっとも深刻である三相短絡事故が発生したときにも故障電流を遮断することができるようになる。
【0035】
図3に、以上のような本実施形態の遮断機5を動作させるための異常検知制御回路のブロック図の一例を示す。
同図に示す回路は、AC/DCコンバータ3のAC/DC回路31の温度センサ32と、電流センサCT33、過電流検出器34、過電圧検出器35、OR回路36を備えている。
AC/DCコンバータ3のAC/DC回路31は、系統電力からの交流電力を直流電力に変換し、また、直流バス9からの直流電力を交流電力に変換する変換回路である。
【0036】
温度センサ32は、AC/DC回路31の温度(発熱)を測定し、所定の閾値を超える温度(高温)を検出すると、所定の検知信号(高温信号)を出力する検知手段である。
ここで、温度センサ32で高温と検知・判定される温度としては、例えば、回路の部品や部材の定格温度よりも低い温度を、異常高温の基準値として設定することができる。
なお、温度センサ32で高温と判定するための基準値は、例えば二次電池用充放電装置1の規模や稼働状況、AC/DC回路31の規模や回路構成、温度センサ32を取り付ける場所や環境など、温度センサ32を使用する状況や条件等の違いに応じて、ケースバイケースで、任意の温度(数値)を基準値として設定することができる。特に特定の決まった温度に限定されるものではない。
【0037】
例えば、発熱部品に直接取り付ける場合には、100℃以上で異常高温と判定することができ、機器内の空気温度を検出する場合には、40℃でも異常高温と判定することができる。また、発熱部品を冷却するヒートシンクにセンサを取り付ける場合には、90℃で異常高温と判定することができる。
この点、温度センサ32による監視・判定によって高温から保護したいのは、対象となる部品や部材であり、それら各部品・部材には、それぞれ定格温度が存在する。例えば、部品の定格温度としては、半導体は150℃付近、基板であれば120℃付近、電解コンデンサは85℃、などである。このため、温度センサ32における基準値(温度)は、対象となる部品の定格温度を超えないように(実際にはマージンを持たせて)、センサを仕掛ける場所と閾値を決めることが好ましい。
【0038】
過電流検出器34は、電流センサ33を介してAC/DC回路31と直流バス9との間の電流を測定し、所定の閾値を超える過電流を検出すると、所定の検知信号(過電流信号)を出力する検知手段である。
ここで、過電流検出器34で過電流と検知・判定される電流値としては、例えばAC/DC回路31の定格電流値を、過電流の基準値として設定することができる。
なお、過電流検出器34で過電流と判定するための過電流の基準値も、例えばAC/DC回路31の仕様によって出力可能の電流値も様々であるので、過電流検出器34を使用する状況や条件等の違いに応じて、ケースバイケースで、任意の電流値を基準値として設定することができ、特に特定の決まった電流値に限定されるものではない。
【0039】
例えば、AC/DC回路31の出力電圧(直流バス電圧=仕様電圧)が、一般的な350Vであるとすると、AC/DC回路31の定格出力は以下のようになる。
・1kWの場合は、定格電流=2.86[A]
・10kWの場合は、定格電流=28.6[A]
したがって、これらの定格電流値か、あるいはそれよりもやや低めの電流値を、過電流検出器34における過電流の判定値として設定することができる。
【0040】
過電圧検出器35は、AC/DC回路31と直流バス9との間の電圧を測定し、所定の閾値を超える過電圧を検出すると、所定の検知信号(過電圧信号)を出力する検知手段である。
ここで、過電圧検出器34で過電圧と検知・判定される電圧値としては、例えばAC/DC回路31や、直流バス、直流バスに接続されている他の機器の定格電圧などを、過電圧の基準値として設定することができる。
【0041】
なお、過電圧検出器35で過電圧と判定するための過電圧の基準値についても、例えばAC/DC回路31の種類や設計方法、使用部品の耐圧などによって、電圧の許容範囲が変わることから、過電圧検出器35を使用する状況や条件等の違いに応じて、ケースバイケースで、任意の電圧値を基準値として設定することができる。したがって、特に特定の決まった電圧値に限定されるものではない。
具体的には、例えば二次電池用充放電装置1の仕様電圧350V+10~20%程度を、過電圧の判定値として設定することができる。
【0042】
OR回路36は、3入力・1出力の論理和回路であり、温度センサ32からの高温信号・過電流検出器34からの過電流信号・過電圧検出器35からの過電圧信号の、少なくともいずれかの信号を入力すると、遮断機5に対して信号を出力して遮断機5を開閉動作させる制御手段である。
以上のような回路により、直流バス9に接続されているいずれかの機器に異常が発生し、AC/DCコンバータ3と直流バス9との間で、高温・過電流・過電圧の少なくともいずれかの異常が発生すると、その異常が検知されて、AC/DCコンバータ3と直流バス9とを接続する遮断機5が解放されて、直流バス9からAC/DCコンバータ3が切り離されることになる。
【0043】
なお、上記のような遮断機5を開閉動作させる異常検知制御回路は、図3に示したAC/DCコンバータ3に設けられる場合のみを例にとって説明したが、同様の制御回路を、蓄電池用DC/DCコンバータ6、試験電池用DC/DCコンバータ7にも備えられることは言うまでもない。
これによって、本実施形態に係る二次電池用充放電装置1において、直流バス9に接続されている機器の一部に何らかの故障等が発生すると、上記のような制御回路によって遮断機5が開閉動作されて、直流バス9に接続されている各機器(AC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7)と直流バス9との接続が遮断され、直流バス9に大電流が発生して、隣接した機器を連鎖的に故障させることを有効に防止することができるようになる。
【0044】
[絶縁手段]
図4は、本実施形態に係る二次電池用充放電装置1において、電力制御手段10として、AC/DCコンバータの出力を絶縁する絶縁手段12となる変圧器21を備える場合を示している。
図5は、AC/DCコンバータの出力電圧がコモンモードの脈流となることを説明するための説明図である。
図7は、図4に示す変圧器21とその回路例の詳細を示す図である。
【0045】
絶縁手段12は、直流バス9と、AC/DCコンバータ3との電気的な接続を絶縁するための電力制御手段10として備えられる。
具体的には、本実施形態では、絶縁手段12は、直流バス9と、AC/DCコンバータ3との間に配設される、AC/DCコンバータ3の直流バス9への出力電圧を調整可能な変圧器(絶縁型DC/DCコンバータ)21によって構成される。
【0046】
図4に示すように、変圧器21は、AC/DCコンバータ3と直流バス9との間に配設され、AC/DCコンバータ3の出力が変圧器21で絶縁されるようになっている。
このように変圧器21を備えることによって、AC/DCコンバータ3の出力電圧が調整できるようになり、特に、AC/DCコンバータ3の出力電圧が、アース電位に対してコモンモードの脈流になっている場合に、その脈流成分を直流バス9に伝送しないようにすることができる。
【0047】
ここで、AC/DCコンバータ3の出力電圧が脈流になる場合について、図5を参照しつつ説明する。
図5(a)に、AC/DCコンバータ3と類似の整流動作ができる三相全波整流回路を示す。
三相全波整流回路は、整流素子(ダイオード又はサイリスタ)を用いた、交流電圧から直流電圧を得るための整流作用をもつ回路の一種であり、三相半波整流回路を上下2組接続したような構成で、三相の正弦波交流電圧のうち高低2つの相の差電圧を整流する、三相ブリッジ整流回路とも呼ばれる。
本実施形態に係るAC/DCコンバータ3も、この三相全波整流回路と同様の波形を出力する回路として機能する。
【0048】
このような三相全波整流回路は、三相変圧器を介し、各整流素子を特定のタイミングで導通させることで、整流された負荷電圧及び直流電流を得ることができる。
ここで、三相交流回路の電源側と負荷側を接続する方法(結線方法)としては、例えば、図5(a)に示すY結線(スター結線・星形結線)と、図5(b)に示すデルタ結線(△結線・三角結線)とがある。
このうち、Y結線の場合には、図5(a)に示すように、三相交流は、電流の大きさが変化しない、直線状に整流された直流として出力される。
【0049】
ところが、デルタ結線の場合には、図5(b)に示すように、三相交流が、電流の大きさが変化する、交流のような脈流として出力される。
具体的には、脈流とは、電流の流れる方向は一定で、電流の大きさが周期的に変化しているような性質を持った電流で、整流回路によって整流された電流が、正・負のどちらか片方で山の連続のような波形を描いており、これが脈流と呼ばれている。
そして、AC/DCコンバータにおいても同様な現象(脈流)が発生する。
ここで、充放電装置のAC/DCコンバータとしては、通常、力率改善回路(PFC:Power Factor Correction)が用いられる。
【0050】
図6(a)及び(b)に、標準的なAC/DCコンバータの原理ブロック図を示す。
同図中の符号は以下のとおりである。
・Lr,Ls,Lt:入力チョークコイル
・Q11,12,21,22,31,32:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)
・D11,12,21,22,31,32:還流ダイオード(FWD:Free Wheel Diode)
・C1:平滑コンデンサ
【0051】
このようなAC/DCコンバータに、三相200V(系統電源)を入力すると、一般的な出力電圧は直流350V程度になる。
ところが、上述した三相全波整流回路と同様に、三相200Vの形式によって、出力電圧の形態が変わってしまう。
すなわち、三相200Vが「Y結線の中性点接地」の場合、出力電圧は、アース電位に対して直流になるのに対して、三相200Vが「Δ結線のS相接地」の場合、出力電圧は、アース電位に対して脈流になる。
このような脈流は、我が国の低圧三相電源が「S相接地」と呼ばれる接地方式を採用しているために生じる現象であり、そのままでは直流として扱うことはできない。
【0052】
ここで、二次電池用充放電装置1では、チャンネル毎に蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7に変圧器(トランス)が備えられ、脈流が絶縁されることから、それぞれローカルな電力としてはそのまま供給・使用することができる。
ところが、本実施形態に係る二次電池用充放電装置1では、直流バス9を介して蓄電池用DC/DCコンバータ6や試験電池用DC/DCコンバータ7以外の複数の機器が接続される、例えば工場の構内の大規模な電力供給システムとして機能するESS(電力貯蔵システム:Energy Storage System)なども想定されており、そのような大規模システムに接続される各種機器に対して脈流を供給電力として扱うことはできず、例えば各機器に脈流対応の専用の構造・改良等が必要となり簡便な接続は困難乃至不可能となり、接地不足による安全性の懸念等もあった。
【0053】
そこで、本実施形態の二次電池用充放電装置1では、図4に示すように、変圧器21を、AC/DCコンバータ3と直流バス9との間に配設することで、AC/DCコンバータ3の出力が変圧器21で絶縁され、AC/DCコンバータ3の出力電圧が脈流となっても、脈流成分が切り離されて解消され、直流バス9には整流された直流電力が出力・供給されるようになる。
これによって、直流バス9に脈流電力が出力されることがなくなり、直流バス9へ接続される機器は、それぞれそのまま接続することができ、接地による安全性も向上させることできる。
【0054】
図7に、図4に示す変圧器21とその回路例の詳細を示す。
図7(a)に示すように、変圧器21は、直流バス9と、直流バス9に接続されるAC/DCコンバータ3との間に配設される、電路を絶縁するための装置であり、公知の絶縁装置、例えば図7(b)に示すような絶縁型DC/DCコンバータによって構成することができる。
このような変圧器21をAC/DCコンバータ3と直流バス9との間に設けることによって、系統電力2から供給される交流電力が、脈流として直流バス9に出力されることを防止することができる。
したがって、例えばESS等の大規模システムに接続されるような、蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7以外の他の機器であっても、本実施形態の二次電池用充放電装置1の直流バス9にそのまま接続することが可能となり、複数機器の直流バスへの接続が簡便となり、また、接地も可能となるため安全性も向上する。
【0055】
[回生制御手段]
図8は、本実施形態に係る二次電池用充放電装置1において、電力制御手段10として、蓄電池用DC/DCコンバータ6を力行動作させる場合にAC/DCコンバータ3を停止させる回生制御手段13の動作モードを示している。
図9は、図8に示す回生制御手段13を構成する回路例の詳細を示す図である。
また、図10は、図8及び図9に示す二次電池用充放電装置1において、蓄電池用DC/DCコンバータ6を力行動作させる場合に、AC/DCコンバータ3を停止させる動作を説明するためのフローチャートである。
【0056】
回生制御手段13は、蓄電池用DC/DCコンバータ6が、蓄電用の二次電池(蓄電池ユニット4)から直流バス9へ電力を伝送する力行動作をしている場合に、AC/DCコンバータ3の、直流バス9から系統電力2へ電力を伝送する回生動作を停止させるための電力制御手段10として備えられる。
以下、図8を参照して、AC/DCコンバータ3と、蓄電池用DC/DCコンバータ6と、試験電池用DC/DCコンバータ7等の機器が、直流バス9に接続された構成の二次電池充放電装置1において、意図しない電流経路が発生し、効率が悪化する現象と、それを防止する方法について説明する。
【0057】
まず、試験電池用DC/DCコンバータ7が、試験電池8に対して力行動作している場合、図8に示すように、電流の流れは、試験電池用DC/DCコンバータ7が電流I_trを、直流バス9から引いて試験電池8に供給している。
このとき、蓄電池用DC/DCコンバータ6が力行動作して電力を供給している場合には、蓄電池用DC/DCコンバータ6は電流I_srを直流バス9に供給するので、直流バス9の電圧が上昇する。
【0058】
直流バス9の電圧が上昇すると、AC/DCコンバータ3は自動的に回生モードに入ってしまうため、電流I_pkが電流I_srから分流して、AC/DCコンバータ3を介して系統電力2への逆潮流が発生する。
蓄電池ユニット4に蓄えられた電力は、本来、試験電池8を充電するための電力であるので、このように蓄電池用DC/DCコンバータ6の力行動作が行われている場合に、系統電力2への逆潮流・回生動作が行われることは、意図しない無駄な動作となってしまう。
例えば、AC/DCコンバータ3の効率が90%だった場合、この時の回生電力の10%が無駄に消費されてしまうことになる。
【0059】
このような意図しない無駄な回生動作を防止するために、本実施形態の二次電池用充放電装置1では、蓄電池用DC/DCコンバータ6を力行動作させる場合に、AC/DCコンバータ3に流れ込んでくる電流I_pkを阻止するようにしている。
すなわち、本実施形態では、蓄電池用DC/DCコンバータ6が、蓄電池ユニット4から直流バス9へ電力を伝送する力行動作をしている場合に、電力制御手段10となる回生制御手段13により、AC/DCコンバータ3の直流バス9から系統電力2へ電力を伝送する回生動作を停止させるようになっている。
【0060】
このような系統電力2への回生動作の停止制御は、例えば、蓄電池用DC/DCコンバータ6を力行動作させることを条件として、AC/DCコンバータ3の回生動作を停止させる方法として、以下のような方法がある。
まず、蓄電池用DC/DCコンバータ6を力行動作させることを条件として、図8に示すように、上述した遮断機5を開放する方法がある。
この遮断機5を開放するための制御方法・制御手段については、上述したとおりである(図2及び図3参照)。
【0061】
また、AC/DCコンバータ3の回生動作を停止させる方法として、例えば、AC/DCコンバータ3の制御回路の中のエラーアンプの入力電圧を強制的に平衡させる方法がある。
図9に、本実施形態の回生制御手段13の一例として、エラーアンプの入力電圧を強制的に平衡させることで、AC/DCコンバータ3の回生動作を停止させることができる制御回路の回路例の詳細を示す。
【0062】
図9(a)に示す回路は、AC/DCコンバータ3を介して供給・伝送される系統電力2からの供給電力(AC入力)と直流バス9への出力電圧(Vout)を監視して、伝送電力を制御する監視回路として、エラーアンプ(E-AMP1・E-AMP2)・乗算器等からなるループ回路が備えられている。なお、図9では、三相PFC回路を、説明の便宜上、単相として単純化して示してある。
このループ回路は、エラーアンプ(E-AMP1)によって直流バス9への出力電圧(Vout2)が監視され、監視電圧(Vout2)が所定の基準電圧(VR)と比較して、目標値に対して低ければAC/DCコンバータ3の力行動作を行わせ、目標値に対して高ければAC/DCコンバータ3の回生動作を行わせるように乗算器に信号を出力し、AC/DCコンバータ3の力行/回生動作を自動的に制御するようになっている。
【0063】
このエラーアンプ(E-AMP1)について、図9(b)に示すように、通常のモードでは監視電圧(Vout2)と基準電圧(VR)を比較している(スイッチ:0)のに対して、回生停止モードでは、エラーアンプの入力電圧を強制的に平衡させる(スイッチ:1)ことで、エラーアンプの入力が一致して、AC/DCコンバータ3の回生動作を停止させることができるようになる。
このようなエラーアンプのモード切替は、例えば電力制御手段10を構成する回路に対する手動操作によって切り替えることができ、また、電力制御手段10を構成するコンピュータ/ソフトウェアによって、監視電圧の値に応じて自動的に切り替えることができる。
【0064】
図10に、本実施形態の二次電池用充放電装置1において、蓄電池用DC/DCコンバータ6を力行動作させる場合に、以上のような制御回路・制御手段を用いて、AC/DCコンバータ3を停止させる動作を説明するためのフローチャートを示す。
同図に示すように、二次電池用充放電装置1の運転が開始され、蓄電池用DC/DCコンバータ6の力行動作が行われる(ステップ1001)、電力制御手段10において、AC/DCコンバータ3の回生動作を停止させる「条件1」であると判定される。
この条件1と判定されると、電力制御手段10において、モード選択(AorB)が行われる(ステップ1002)。
【0065】
モードAが選択された場合に、AC/DCコンバータ3の動作に制限を設けない動作モードとなり(ステップ1003)、AC/DCコンバータ3は、伝送電力に応じて自動的に力行動作(又は回生動作)が行われることになる(ステップ1005)。
一方、モードBが選択された場合に、AC/DCコンバータ3の回生動作を(強制的に)停止させるモードとなり(ステップ1004)、AC/DCコンバータ3は、伝送電力に関わらず、回生動作が行われることなく、力行動作が行われることになる(ステップ1005)。
以上のようにして、電力制御手段10を構成する所定の回生制御手段13により、二次電池用充放電装置1の充放電処理に応じて、AC/DCコンバータ3の、直流バス9から系統電力2へ電力を伝送する回生動作を停止制御することができるようになる。
【0066】
[立上り時間制御手段]
図11は、本実施形態に係る二次電池用充放電装置1の直流バス9において、瞬停が発生することを説明するための説明図である。
図12は、本実施形態に係る二次電池用充放電装置1の電力制御手段10として、AC/DCコンバータ3が休止状態から定格電流を出力できるようになるまでに要する立上り時間を制御可能な立上り時間制御手段14を構成する回路例の詳細を示す図である。
【0067】
立上り時間制御手段14は、AC/DCコンバータ3又は蓄電池用DC/DCコンバータ6が、休止状態から定格電流を出力できるようになるまでに要する立上り時間tを、後述する式1を満たすように制御するための電力制御手段10として備えられる。
以下、図11を参照して、二次電池用充放電装置1において、例えば、直流バス9に接続されている機器の一部が故障するなどして、直流バス9に瞬低を発生させ、二次電池用充放電装置1の稼働が停止されてしまう不具合が発生する現象と、それを防止する方法について説明する。
【0068】
まず、試験電池用DC/DCコンバータ7が、試験電池8に対して力行動作して、場合、図11に示すように、電流の流れは、試験電池用DC/DCコンバータ7が電流I_trを直流バス9から引いて試験電池8に供給している。
このとき、その試験電池8に供給される電流I_trは、AC/DCコンバータ3か、又は蓄電池用DC/DCコンバータ6のどちらか一方、ここでは、例えば蓄電池用DC/DCコンバータ6が直流バス9に対して供給している場合には、AC/DCコンバータ3の方は、休止(出力がほぼゼロでアイドリング運転の状態も含む)状態となっている。
【0069】
この状態から、あるタイミングで、蓄電池用DC/DCコンバータ6が故障すると、試験電池用DC/DCコンバータ7は、変わらずに電流I_trを直流バス9から引いているので、直流バス9に付いている容量Cs41の電荷が放電されて、直流バス9の電圧Vbが急激に低下する。
なお、図11に示す容量Cs41は、直流バス9に接続されている複数のコンデンサの静電容量の総量を模式的に一つのコンデンサとして表したものである。
そして、このように直流バス9の電圧Vbが低下すると、直流バス9の電圧が試験電池用DC/DCコンバータ7の入力電圧下限Vt0を割り込み、つまり「瞬低」が発生して、試験電池用DC/DCコンバータ7の動作が停止し、ひいては二次電池用充放電装置1の稼働自体が停止することになり、このようなことは、電池の生産工場としては、あってはならない事態である。
【0070】
このような意図しない瞬低と、それに続く充放電装置の稼働停止等を防止するために、本実施形態の二次電池用充放電装置1では、休止しているAC/DCコンバータ3を復帰させて、直流バス9に迅速に電流I_trを供給するようにしている。
すなわち、本実施形態では、蓄電池用DC/DCコンバータ6が、直流バス9に対して電力を供給しており、AC/DCコンバータ3が休止している状態である場合に、蓄電池用DC/DCコンバータ6に故障が発生した場合には、直流バス9の電圧Vbが、試験電池用DC/DCコンバータ7の入力電圧下限Vt0を割り込む前に、AC/DCコンバータ3が休止から復帰し電流I_trを直流バス9に供給するための力行動作を行わせる立上り制御を実行できるようにしている。
【0071】
このようなAC/DCコンバータ3の休止状態から復帰状態への立上り制御として、本実施形態では、電力制御手段10となる立上り時間制御手段14により、AC/DCコンバータ3の立上り(復帰)時間「t」が、下記[式1]を満たすように制御が行われるようになっている。
これによって、休止状態のAC/DCコンバータ3を所定の立上り時間「t」で復帰・動作させることで、直流バス9に接続されている機器の一部が故障するなどしても、復帰したAC/DCコンバータ3によって直流バス9に電力を供給することができ、直流バス9に瞬低が発生すること防止できるようになる。
【0072】
[式1]
t<(Vb-Vt0)×Cs/I_tr
t:AC/DCコンバータ3の立上り時間(休止状態から定格電流IMを出力できるようになるまでに要する立上り時間)
Vb:直流バスの通常の電圧
Vt0:試験電池用DC/DCコンバータ7の入力電圧下限(直流バス電圧の最大低下許容値)
Cs:直流バスに付いている容量の合計値
I_tr:試験電池用DC/DCコンバータの定格充電電流の合計値(ただし直流バス電圧における電流換算値)
IM×n:AC/DCコンバータ3の定格電流の合計値(IM×n(任意の整数)≧I_tr)
【0073】
ここで、上記の例では、「AC/DCコンバータ3」の立上り(復帰)時間「t」について説明しているが、「蓄電池用DC/DCコンバータ6」についても、同様の立上り(復帰)時間「t」を制御することで、意図しない瞬低を防止することができることは言うまでもない。
例えば、AC/DCコンバータ3が、直流バス9に対して電力を供給しており、蓄電池用DC/DCコンバータ6が休止している状態である場合に、AC/DCコンバータ3に故障が発生した場合には、直流バス9の電圧Vbが、試験電池用DC/DCコンバータ7の入力電圧下限Vt0を割り込む前に、蓄電池用DC/DCコンバータ6を休止状態から、上記の立上り(復帰)時間「t」を満たすように復帰させることで、電流I_trを直流バス9に供給することで、瞬低や二次電池用充放電装置1の稼働停止等の不具合を未然に防止することができる。
【0074】
すなわち、上記[式1]は、AC/DCコンバータ3であっても、蓄電池用DC/DCコンバータ6であっても対象となるものであり、実際に、立上り時間「t」を満たす(立ち上がって欲しい)制御が必要となる現象として、以下の2つのパターンがあり得る。
[パターン1]
AC/DCコンバータ3」が力行動作の状態、蓄電池用DC/DCコンバータ6が休止の状態を外部コントロール(電力制御手段10)で制御している場合に、運転中(力行動作中)のAC/DCコンバータ3が故障した場合には、蓄電池用DC/DCコンバータ6が、上記式1の条件を満たす立上り時間「t」で立ち上がってほしい。
【0075】
[パターン2]
AC/DCコンバータ3が休止の状態、蓄電池用DC/DCコンバータ6が力行動作の状態を外部コントロール(電力制御手段10)で制御している場合に、運転中(力行動作中)の蓄電池用DC/DCコンバータ6が故障した場合には、AC/DCコンバータ3が、上記式1の条件を満たす立上り時間「t」で立ち上がってほしい。
また、上述の例は、(蓄電池用DC/DCコンバータ6又はAC/DCコンバータ3)の「力行動作時」の場合を例にとって説明しているが、「回生動作時」でも同様の状況となり得るので、上記の立上り(復帰)時間「t」を満たす復帰制御が行えることは言うまでもない。
【0076】
なお、上述した[式1]では、電流項を「I_tr(直流バスの消費電流)」としているが、これを「IM(AC/DCコンバータ3の定格電流)」とすることもできる。
例えば、上述した[パターン1]の場合に、[式1]の電流項として「IM」を使うとすると、
蓄電池用DC/DCコンバータ6は、1台とは限らず、任意の複数台(n台)が設置される可能性がある。この場合、「IM」の合計値「IM×n」は、I_tr以上でなければならないため、「IM×n≧I_tr」となる。
【0077】
その場合、上記[式1]は、以下のように表すことができる。
[式1’]
t<(Vb-Vt0)×Cs/IM×n
(IM×n(任意の整数)≧I_tr)
したがって、本実施形態の立上り時間を制御14によって復帰制御が行われる、AC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6の立上り(復帰)時間「t」は、上述した[式1]と「式1’」のいずれであってもよい。
【0078】
次に、以上のような[式1](又は[式1’])の立上り時間「t」を満たすAC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6の立上り時間を調整・制御する方法としては、例えば、制御回路中のエラーアンプの利得を変える方法や、制御ループ上の時定数を変える方法などがある。
図12に、本実施形態の立上り時間制御手段14の一例として、制御回路中のエラーアンプの利得を変えることで、AC/DCコンバータ3の立上り時間を制御することができる制御回路の回路例の詳細を示す。
【0079】
図12に示す回路は、蓄電池用DC/DCコンバータ6に備えられる、蓄電池用DC/DCコンバータ6から直流バス9に出力・供給される電流が定格電流に達するまでの立上り時間を制御するための公知の制御ループ回路の一例である。
このような制御ループ回路によって制御される蓄電池用DC/DCコンバータ6の立上り時間を調整する、具体的には立上り時間を「速くする」(図12に示す「t1→t2」)ためには、例えば以下の2つの方法がある。
【0080】
(1)制御ループ回路の「E-AMP」の利得をアップする。
具体的には、図12に示す「E-AMP」の利得「G」を、「G1→G2」(G1<G2)となるように設定・変更する。例えば、「E-AMP」の利得「G」を、100倍~1000倍程度に大きくすることができる。
【0081】
(2)制御ループ回路の「ループ時定数」を小さくする。
具体的には、図12に示す「L:インダクタンス」と「C:静電容量」)を、「L1・C1→L2・C2」(L1・C1>L2・C2)となるように設定・変更する。
ここで、L・Cは、出力のリップル電圧を小さくする、平滑フィルタとして機能する役割がある。このため、L・C(時定数)を小さくするということは、「立上り時間を速くする」と同時に、「リップル電圧が大きくなってしまう」、つまりトレードオフの関係となる。
【0082】
したがって、立上り時間を「速くする」ことのみを考慮してL・C(時定数)を小さくし過ぎることは望ましいこととは言えない。一般的には、20%も小さくするとかなり悪影響が大きくなる可能性があるため、例えば20%未満となるように設定することが好ましい。
このように、「立上り時間」と「リップル電圧」のどちらが優先するかは、まさにケースバイケースの判断になることから、二次電池用充放電装置1の規模や使用環境や稼働状況などに応じて、最適なL・C(時定数)を設定・変更することが望ましい。
【0083】
以上のような制御ループ回路のパラメータを、手動又は自動で設定・変更することで、上述したようにAC/DCコンバータ3や蓄電池用DC/DCコンバータ6を休止状態から所定の立上り時間「t」で復帰・動作させることができる。これにより、直流バス9に接続されている機器の一部が故障するなどしても、復帰したAC/DCコンバータ3によって直流バス9に電力を供給することができ、直流バス9に瞬低が発生することを防止できるようになる。
なお、図12では、蓄電池用DC/DCコンバータ6の制御ループ回路を例にとって説明したが、AC/DCコンバータ3にも同様の制御ループ回路を備えることができ、上記(1)や(2)の設定・変更を行うことで、休止状態のAC/DCコンバータ3の立上り時間を制御することができることは言うまでもない。
【0084】
[コンデンサ制御手段]
図13は、本実施形態に係る二次電池用充放電装置1のAC/DCコンバータ3の構成を示すブロック図であり、電力制御手段10として、AC/DCコンバータ3を直流バス9に接続する場合に、安全に電荷を充電可能なコンデンサ制御手段15となる予備充電回路を備える場合を示している。
また、図14は、同じく本実施形態に係るAC/DCコンバータ3の構成を示すブロック図であり、電力制御手段10として、AC/DCコンバータ3を直流バス9から取り外す場合に、安全に電荷を放電可能なコンデンサ制御手段15となる放電回路を備える場合を示している。
【0085】
コンデンサ制御手段15は、直流バス9と、AC/DCコンバータ3、蓄電池用DC/DCコンバータ6、又は試験電池用DC/DCコンバータ7の少なくともいずれかとの間に配設されるコンデンサに対して、所定電荷を放電又は充電するための電力制御手段10として備えられる。
このようなコンデンサ制御手段15を備えることで、二次電池用充放電装置1の直流バス9に対して接続される各種機器の挿抜の際の安全性を向上させ、所謂「活性挿抜」(活線挿抜・ホットスワップ)を可能とすることができる。
【0086】
以下、二次電池用充放電装置1の直流バス9に対して、各種機器を挿抜する際に、機器側の大容量コンデンサの電荷が安全上の問題を起こす現象と、それを防止する方法について説明する。
なお、以下では、機器を接続する場合(図13)と、機器を切り離す場合(図14)とで、それぞれ、別々に回路構成を示しているが、これは説明の便宜上のためであり、両者を共通(単一)
の回路として構成できることは言うまでもない。
【0087】
まず、図13を参照して、機器を直流バス9に対して接続する場合について説明する。
ここでは、AC/DCコンバータ3が、停止した状態で直流バス9に接続された(挿された)とする。
このとき、上述した接続遮断手段11となる出力スイッチとして機能する遮断機5(図2及び図3参照)が閉じたままの状態では、AC/DCコンバータ3が直流バス9に接続されると、直流バス9からAC/DCコンバータ3のコンデンサCp51に向かって大電流が一気に流れ、AC/DCコンバータ3の基板パターンや接続コネクタ等に損傷を与えてしまうことになる。
【0088】
そこで、このような意図しない大電流による機器の損傷等を防止するために、本実施形態の二次電池用充放電装置1では、図13に示すように、遮断機(出力スイッチ)5に対して抵抗Rp53を並列に配置するとともに、遮断機5を電圧比較器52で監視・制御することで、遮断機5が解放された状態で、AC/DCコンバータ3が直流バス9に接続できるようにしてある。
このような回路をコンデンサ制御手段15として備えることで、AC/DCコンバータ3が直流バス9に接続されると、直流バス9からは、抵抗Rp53を介して、制限された電流がコンデンサCp51へ流れることになり、コンデンサCp51が充電されて電圧Vp54が上昇する。
そして、電圧Vp54が上昇して、直流バス9の所定電圧Vb55に昇圧されて、「Vp≒Vb」となったときに、電圧比較器52が遮断機5を閉じるように動作するので、この状態で、AC/DCコンバータ3は、安全に直流バス9に接続してそのまま使用できるようになる。
【0089】
以上のように、AC/DCコンバータ3に、電流を制限して容量に充電するコンデンサ制御手段15を設けることで、基板パターンや接続コネクタ等に損傷を与えることなく、AC/DCコンバータ3を直流バス9に対して安全かつ簡便に接続することができるようになる。
なお、上記のような回路構成自体は、例えば公知のコンパレータとスイッチ等で構成することができる。
また、上述したように、コンデンサCp51が、Vp<Vbでは充電を継続し、Vp≒Vbになると遮断機5を閉じる論理が組み立ている限り、図13に示した回路構成に限らず、他の回路で実現することは可能であり、また、マイコンで実現することも可能である。
【0090】
次に、図14を参照して、機器を直流バス9から切り離す場合について説明する。
ここでは、直流バス9から切り離される機器として、上述した図13の場合と同様に、AC/DCコンバータ3を例にとって説明する。
なお、AC/DCコンバータ3等の機器を直流バス9から切り離されるのは、例えば機器のメンテナンスを行う場合などである。
【0091】
いま、AC/DCコンバータ3が、系統電力2と直流バス9に接続されていた状態から切り離された(抜かれた)とする。
このとき、AC/DCコンバータ3のCp51には電荷が充電されており、出力端子には、電圧「Vp≒Vb」(図13参照)が保持されている。
ここで、通常、Vbは高い電圧であり、それがAC/DCコンバータ3の出力端子に現れることになる。このため、その状態で、例えばメンテナンスの作業者が出力端子に触れてしまうと、感電する恐れがある。
【0092】
そこで、そのような作業者の感電等を防止するために、本実施形態の二次電池用充放電装置1では、図14に示すように、AC/DCコンバータ3の入出力に入力接続検出器56とバス接続検出器60を配置するとともに、コンデンサCp51の出力側に放電用の抵抗Rd57を備えて、放電用スイッチ59を介してGNDに接続する。
そして、入力接続検出器56の出力(AC入力の有無)によって遮断機(出力スイッチ)5を制御し、入力接続検出器56とバス接続検出器60の出力のAND論理で放電用スイッチ59を制御するようにする。
このような回路をコンデンサ制御手段15として備えることで、AC/DCコンバータ3を直流バス9から切り離されると、自動的にコンデンサCp51の電荷が放電され、出力端子に高電圧が現れることがなくなる。
【0093】
したがって、作業者が感電する恐れもなくなり、AC/DCコンバータ3の挿抜やメンテナンス等を安全かつ簡便に行えるようになる。
なお、以上のような回路構成も、図13の場合と同様に、例えば公知のコンパレータとスイッチ等で構成することができる。
また、上述したように、AC入力の有無によって遮断機5を開き、入力接続とバス接続の出力で放電用スイッチ59を閉じる論理が組み立ている限り、図14に示した回路構成に限らず、他の回路で実現することは可能であり、また、マイコンで実現することも可能である。
【0094】
図15は、図13に示した、二次電池用充放電装置1においてAC/DCコンバータを3直流バス9に接続する場合に、安全に電荷を充電する予備充電回路の動作を説明するためのフローチャートである。
また、図16は、図14に示した、二次電池用充放電装置1においてAC/DCコンバータ3を直流バス9から取り外す場合に、安全に電荷を放電する放電回路を説明するためのフローチャートである。
【0095】
これらのフローチャートに示すように、本実施形態に係るコンデンサ制御手段15は、まず、二次電池用充放電装置1の直流バス9に、AC/DCコンバータ3等の機器が接続されると(ステップ1501)、AC/DCコンバータ3の出力スイッチ(遮断機)5が「開」に制御され(ステップ1502)、コンデンサ51が充電されるようになる(ステップ1503)。
その後、コンデンサ51が充電されて電圧Vpが上昇して「Vp≒Vb」となると(ステップ1504)、出力スイッチ5が「閉」に制御されて(ステップ1505)、AC/DCコンバータ3は、直流バス9に対して安全に接続され、使用できるようになる。
【0096】
次に、二次電池用充放電装置1の直流バス9に接続されたAC/DCコンバータ3等の機器が切り離される場合には、まず、AC/DCコンバータ3がAC入力(系統電力2)から外されると(ステップ1601)、AC入力「無」を示す信号が出力され(ステップ1602)、AC/DCコンバータ3の出力スイッチ(遮断機)5が「開」に制御される(ステップ1603)。
また、AC/DCコンバータ3が直流バス9から外されると(ステップ1604)、バス接続「無」を示す信号が出力され(ステップ1605)、AC/DCコンバータ3の放電用スイッチ59が「閉」に制御される(ステップ1606)。
これによって、コンデンサ51が放電され(ステップ1607)、AC/DCコンバータ3は、直流バス9から安全に切り離すことができ、メンテナンス等の必要な作業を安全かつ簡便に行えるようになる。
【0097】
なお、以上説明した本実施形態に係る二次電池用充放電装置1の電力制御手段10(接続遮断手段11・絶縁手段12・回生制御手段13・立上り時間制御手段14・コンデンサ制御手段15)は、上述した物理的な電気回路とともに、あるいは物理的な電気回路に代えて、プログラム(ソフトウェア)の命令によりコンピュータで実行される処理,手段,機能によって実現することができる。プログラムは、コンピュータの各構成要素に指令を送り、上述した電力制御手段10による本発明に係る所定の処理・機能等を行わせることができる。
したがって、本発明における電力制御手段10の各処理や手段,機能は、プログラムとコンピュータとが協働した具体的手段によって実現することができる。
【0098】
ここで、プログラムの全部又は一部は、例えば、磁気ディスク,光ディスク,半導体メモリ,その他任意のコンピュータで読取り可能な記録媒体により提供され、記録媒体から読み出されたプログラムがコンピュータにインストールされて実行される。また、プログラムは、記録媒体を介さず、通信回線を通じて直接にコンピュータにロードし実行することもできる。
また、本発明に係る電力制御手段10を実行するコンピュータは、単一の情報処理装置(例えば一台のパーソナルコンピュータ等)で構成することもでき、複数の情報処理装置(例えば複数台のサーバコンピュータ群等)で構成することもできる。
【0099】
具体的には、本発明に係る電力制御手段10を構成する情報処理装置は、例えば図17に示すように、CPU301・RAM302・ROM303・HDD304・入力装置305・表示装置(ディスプレイ)306・通信IF307等を含むハードウェアによって構成される。これらの構成要素はシステムバスで接続され、システムバスを介してデータのやり取りが行われる。CPU(Central Processing Unit)301は、中央処理装置とも呼ばれ、コンピュータの中心的な処理を行う部位であり、各装置の制御やデータの計算や加工を行う。RAM(Random Access Memory)302は、メモリ装置の一種で、データの消去や書き換えが可能なものである。ROM(Read Only Memory)303は、半導体などを用いたメモリ装置の一種で、データ書き込みは製造時1回のみで、利用時には記録されたデータの読み出しのみできるものである。HDD(Hard Disk Drive)304は、磁性体の性質を利用し、情報を記録し読み出す補助記憶装置である。入力装置305は、ユーザがコンピュータに対して操作指示を行うため、あるいは、文字等を入力するために使用され、具体的には、キーボード、マウス等で構成される。表示装置306は、例えば液晶ディスプレイ等で構成される。本システムにおける各装置は、入力装置305及び表示装置306が一体となったタッチパネル機能を有する装置を備えていてもよい。また、他の端末や情報処理装置等との通信が可能となる通信機能(通信IF307)を備えることもできる。通信IF(Inter Face)は、所定の通信規格に従って他の装置と通信するための装置であり、例えばNIC(Network Interface Card)を含む。
【0100】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る二次電池用充放電装置1によれば、二次電池用充放電装置1を構成する各機器(AC/DCコンバータ3・蓄電池用DC/DCコンバータ6・試験電池用DC/DCコンバータ7)と直流バス9との間に、装置上の異常を検知して断路する遮断機5等の電力制御手段を設けることによって、機器の故障に伴う連鎖故障等を防止することができるようになる。
【0101】
また、例えばAC/DCコンバータ3の出力を変圧器21で絶縁することにより、その出力電圧がアース電位に対してコモンモードの脈流になることを防止できるため、他の機器との接続が間便になり、また接地可能となるため安全性も向上する。
また、例えば蓄電池用DC/DCコンバータ6が力行動作をしている時に、AC/DCコンバータ3の回生動作を停止させる機能を備えることにより、意図しない電流経路が発生することによる効率悪化を防止することができる。
【0102】
また、例えばAC/DCコンバータ3と蓄電池用DC/DCコンバータ6の立上り時間tを制限することにより、直流バスに接続されている機器の一部が故障した場合などに発生する直流バスの瞬低を防止することができる。
さらに、例えばAC/DCコンバータ3、及び蓄電池用DC/DCコンバータ6の出力コンデンサに対して、安全に電荷を放電する放電回路と、安全に電荷を充電する予備充電回路とを設けることにより、機器を直流バスに対して挿抜する場合に発生する安全上の問題を回避することができるようになる。
【0103】
以上、本発明について好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、所定の回路構成・ハードウェア・ソフトウェアで実現される電力制御手段10として、図2図4図8図11図13図14において、接続遮断手段11・絶縁手段12・回生制御手段13・立上り時間制御手段14・コンデンサ制御手段15をそれぞれ個別(単独)に備えた回路構成を示したが、各手段11~15は、任意の組み合わせで複数の手段が備えられる回路構成とすることが可能である。
すなわち、本発明に係る電力制御手段は、上述した接続遮断手段・絶縁手段・回生制御手段・立上り時間制御手段・コンデンサ制御手段の、少なくともいずれかの手段を備えて構成されていればよく、それら各手段11~15の一部又は全部について、任意に組み合わせて構成することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、例えばスマートフォン等のIT機器や電気自動車などに使用される二次電池の活性化や品質検査のために充放電を行う二次電池用充放電装置として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 二次電池用充放電装置
2 系統電力
3 AC/DCコンバータ
4 蓄電池ユニット
5 遮断機(電流を遮断する装置)
6 蓄電池用DC/DCコンバータ
7 試験電池用DC/DCコンバータ
8 試験電池
9 直流バス
10 電力制御手段
11 接続遮断手段
12 絶縁手段
13 回生制御手段
14 立上り時間制御手段
15 コンデンサ制御手段
21 変圧器(絶縁型DC/DCコンバータ)
31 AC/DC回路(AC/DCコンバータ内の制御回路)
32 温度センサ
33 CT(電流センサ)
34 過電流検出器
35 過電圧検出器
36 OR回路
41 Cs(直流バスに付いている容量の合計)
51 Cp(AC/DCコンバータの出力コンデンサ)
52 電圧比較器
53 Rp(放電用の抵抗)
54 Vp(AC/DCコンバータ側の電圧)
55 Vb(直流バスの電圧)
56 入力接続検出器
57 Rd(放電用の抵抗)
58 AND回路
59 放電用スイッチ(電流を遮断する装置)
60 バス接続検出器
100 構内の他の機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17