(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179148
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】中継ポート運用装置及び中継ポート運用方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/083 20240101AFI20241219BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20241219BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241219BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20241219BHJP
B64U 70/80 20230101ALI20241219BHJP
B64U 70/90 20230101ALI20241219BHJP
B64U 101/64 20230101ALN20241219BHJP
【FI】
G06Q10/083
B65G61/00 542
G08G1/00 D
G08G5/00 A
B64U70/80
B64U70/90
B64U101:64
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097746
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】板東 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴廣
(72)【発明者】
【氏名】金川 信康
(72)【発明者】
【氏名】水垣 健一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 一毅
【テーマコード(参考)】
5H181
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5H181AA15
5H181AA26
5H181BB04
5H181BB15
5H181FF05
5H181MA42
5L010AA16
5L049AA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】中継ポートを介して、安全に配送物を配送する中継ポート運用装置及び中継ポート運用方法を提供する。
【解決手段】配送システムにおいて、中継ポート運用装置100は、飛行体が配送物を届け、飛行体とは異なる他配送手段が配送物を受け取るために設けられた中継ポートを運用する。中継ポート運用装置は、配送物の属性及び配送物の最終受取時刻の内の少なくとも一方を入力情報として受け付ける受付部111と、受付部が受け付けた入力情報を用いて、中継ポートを介した飛行体と他配送手段が連携する配送計画を作成する配送計画作成部112と、配送計画作成部が作成した配送計画に基づいて、飛行体及び他配送手段の運行を管理する統合運行管理部113と、中継ポートから他配送手段までの距離が所定距離未満となった場合に、飛行体及び他配送手段の内の少なくとも一方に対して、配送物の移動許可を出力する出力部114と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体が配送物を届け、前記飛行体とは異なる他配送手段が前記配送物を受け取るために設けられた中継ポートを運用する中継ポート運用装置において、
前記配送物の属性及び前記配送物の最終受取時刻の内の少なくとも一方を入力情報として受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた前記入力情報を用いて、前記中継ポートを介した前記飛行体と前記他配送手段が連携する配送計画を作成する配送計画作成部と、
前記配送計画作成部により作成された前記配送計画に基づいて、前記飛行体及び前記他配送手段の運行を管理する統合運行管理部と、
前記中継ポートから前記他配送手段までの距離が所定距離未満となった場合に、前記飛行体及び前記他配送手段の内の少なくとも一方に対して、前記配送物の移動許可を出力する出力部と、
を備える中継ポート運用装置。
【請求項2】
請求項1に記載の中継ポート運用装置において、
前記中継ポートには、外部からのアクセスが禁止された配送物保持エリアが設けられ、
前記出力部は、前記飛行体に対して、前記配送物を前記中継ポートの前記配送物保持エリアに輸送させる輸送指示を出力し、
前記統合運行管理部は、前記中継ポートから前記他配送手段までの距離が所定距離未満であるか否かを判定し、
前記出力部は、前記中継ポートから前記他配送手段までの距離が前記所定距離未満であると判定された場合には、前記飛行体及び前記他配送手段の内の少なくとも一方に対して、前記配送物保持エリアにある前記配送物の移動許可を出力する、
中継ポート運用装置。
【請求項3】
請求項2に記載の中継ポート運用装置において、
前記中継ポートから前記他配送手段までの距離が前記所定距離以上である場合には、前記配送物保持エリアから配送物受渡エリアへの前記配送物の移動が禁止されており、
前記出力部は、前記中継ポートから前記他配送手段までの距離が前記所定距離未満であると判定された場合には、前記配送物保持エリアから前記配送物受渡エリアへの前記配送物の移動許可を出力する、
中継ポート運用装置。
【請求項4】
請求項3に記載の中継ポート運用装置において、
前記出力部は、前記中継ポートから前記他配送手段までの距離が前記所定距離未満であると判定された場合には、前記飛行体に対して、前記配送物保持エリアから前記配送物受渡エリアへの前記飛行体による前記配送物の移動許可を出力する、
中継ポート運用装置。
【請求項5】
請求項4に記載の中継ポート運用装置において、
前記配送物保持エリアは、空中に設定され、
前記出力部は、前記中継ポートから前記他配送手段までの距離が前記所定距離未満であると判定された場合には、空中の前記配送物保持エリアで前記配送物を保持した状態で待機している前記飛行体に対して、前記配送物保持エリアから前記配送物受渡エリアへの前記飛行体による前記配送物の移動許可を出力する、
中継ポート運用装置。
【請求項6】
請求項3に記載の中継ポート運用装置において、
前記中継ポートには、前記配送物保持エリアから前記配送物受渡エリアへ前記配送物を搬送する搬送装置が設けられ、
前記出力部は、前記中継ポートから前記他配送手段までの距離が前記所定距離未満であると判定された場合には、前記搬送装置に対して、前記配送物保持エリアから前記配送物受渡エリアへの前記搬送装置による前記配送物の移動許可を出力する、
中継ポート運用装置。
【請求項7】
請求項2に記載の中継ポート運用装置において、
前記受付部は、前記他配送手段の位置を受け付け、
前記統合運行管理部は、前記他配送手段の位置と前記中継ポートの位置とに基づいて、前記中継ポートから前記他配送手段までの距離を演算する、
中継ポート運用装置。
【請求項8】
請求項2に記載の中継ポート運用装置において、
前記中継ポートには、
前記配送物保持エリアへの進入路の開放と遮断を行うゲートと、
前記他配送手段を近距離で認証するための近距離認証装置と、が設けられ、
前記統合運行管理部は、前記近距離認証装置によって前記他配送手段が認証された場合に、前記中継ポートから前記他配送手段までの距離が前記所定距離未満であると判定し、
前記出力部は、
前記近距離認証装置によって前記他配送手段が認証されていない場合には、前記ゲートの開放指示を出力せずに前記進入路を前記ゲートで遮断した状態を維持し、
前記近距離認証装置によって前記他配送手段が認証された場合には、前記ゲートに対して前記ゲートの開放指示を出力するとともに、前記他配送手段に対して前記配送物保持エリアからの前記他配送手段による前記配送物の移動許可を出力する、
中継ポート運用装置。
【請求項9】
請求項1に記載の中継ポート運用装置において、
前記配送計画作成部は、
前記飛行体の仕様と前記配送物の属性に含まれる重量とに基づいて前記飛行体が前記配送物を保持した状態で飛行可能な限界時間である飛行保持可能限界時間を演算し、
前記配送物の属性に含まれる種別に基づいて、前記配送物の品質を維持するための許容時間である品質保持許容時間を演算し、
前記飛行保持可能限界時間と前記品質保持許容時間とに基づいて、前記配送計画を作成する、
中継ポート運用装置。
【請求項10】
飛行体が配送物を届け、前記飛行体とは異なる他配送手段が前記配送物を受け取るために設けられた中継ポートを運用する中継ポート運用方法において、
前記配送物の属性及び前記配送物の最終受取時刻の内の少なくとも一方を入力情報として受け付ける受付工程と、
受け付けた前記入力情報を用いて、前記中継ポートを介した前記飛行体と前記他配送手段が連携する配送計画を作成する配送計画作成工程と、
作成された前記配送計画に基づいて、前記飛行体及び前記他配送手段の運行を管理する運行管理工程と、
前記中継ポートから前記他配送手段までの距離が所定距離未満となった場合に、前記飛行体及び前記他配送手段の内の少なくとも一方に対して、前記配送物の移動許可を出力する出力工程と、を含む、
中継ポート運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継ポート運用装置及び中継ポート運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物品を輸送する第1輸送機、及び第1輸送機から受け渡された物品を輸送する第2輸送機の運行計画を管理する運行管理装置が知られている。特許文献1に記載の運行管理装置は、第1輸送機の現在位置を示す第1位置情報と、第2輸送機の現在位置を示す第2位置情報と、物品の配送先を示す配送先情報とを取得する情報取得部と、第1位置情報、第2位置情報及び配送先情報に基づいて、第1輸送機が輸送する物品を第2輸送機に受け渡しできる複数の中継位置から使用中継位置を選択することにより運行計画を作成する運行管理部と、を備えている。
【0003】
また、特許文献1には、中継位置に到着した第1輸送機から第2輸送機に物品を受け渡す際に要する時間を最小限に留めるために、第1輸送機が中継位置に到着する前に第2輸送機が中継位置に到着させておくことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第2輸送機は、予定時刻から遅れて中継位置に到着することもある。ここで、第2輸送機が到着するまでの間、配送物を中継位置で保管しておく場合、配送物の盗難、損傷などのリスクがある。
【0006】
本発明は、中継ポートを介して、安全に配送物を配送することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による中継ポート運用装置は、飛行体が配送物を届け、前記飛行体とは異なる他配送手段が前記配送物を受け取るために設けられた中継ポートを運用する。中継ポート運用装置は、前記配送物の属性及び前記配送物の最終受取時刻の内の少なくとも一方を入力情報として受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた前記入力情報を用いて、前記中継ポートを介した前記飛行体と前記他配送手段が連携する配送計画を作成する配送計画作成部と、前記配送計画作成部により作成された前記配送計画に基づいて、前記飛行体及び前記他配送手段の運行を管理する統合運行管理部と、前記中継ポートから前記他配送手段までの距離が所定距離未満となった場合に、前記飛行体及び前記他配送手段の内の少なくとも一方に対して、前記配送物の移動許可を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、中継ポートを介して、安全に配送物を配送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る配送システム10の構成図である。
【
図2】
図2は、配送ルートの候補例を示す図である。
【
図3】
図3は、中継ポート130に設定される配送物保持エリア131と配送物受渡エリア132の模式図である。
【
図4】
図4は、中継ポート運用装置100の機能の概要を説明するブロック図である。
【
図5】
図5は、情報端末142に表示される情報の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、中継ポート運用装置100の機能ブロック図である。
【
図11】
図11は、飛行空域を分割した空間と、飛行経路の候補を示す図である。
【
図12】
図12は、運行計画フェイズにおいて実行される処理と、輸送フェイズにおいて実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】
図12の受渡処理(ステップS150)の詳細について示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、配送物保持エリア131が店舗の屋上などの高所に設定されている例を示す図である。
【
図15】
図15は、飛行体120が配送物190を配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132に移動させる様子を示す図である。
【
図16】
図16は、配送物保持エリア131が空中に設定されている例を示す図である。
【
図17】
図17は、搬送装置181が配送物190を配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132に移動させる様子を示す図である。
【
図18】
図18は、他配送手段140が配送物保持エリア131に進入して配送物190を移動させる例について示す図である。
【
図19】
図19は、着陸待機方式において、他配送手段140の位置が近距離認証装置184によって行われる例について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る中継ポート運用装置100を含む配送システム10について説明する。
図1は、本実施形態に係る配送システム10の構成図であり、
図2は、配送ルートの候補例を示す図である。
図1及び
図2に示すように、配送システム10は、物品である配送物190を配送拠点109から配送先150まで配送する複数の配送手段(飛行体120、配送員、専用配送車両等)と、複数の配送手段の運行を管理するとともに、配送拠点109と配送先150との間の中継点に設けられる中継ポート130を運用する中継ポート運用装置100と、を含む。複数の配送手段には、複数の飛行体120と、飛行体120とは異なる複数の配送手段(以下、他配送手段と記す)140と、が含まれる。中継ポート130は、飛行体120が配送物190を届ける輸送先であり、他配送手段140が配送物190を受け取るために設けられる。
【0011】
中継ポート運用装置100は、配送物190の出発時刻、配送時間、配送経路、配送に利用する配送手段(飛行体120及び他配送手段140)等を定めることにより配送計画を作成し、作成した配送計画を複数の配送手段のそれぞれに送信する。中継ポート運用装置100、複数の配送手段(飛行体120及び他配送手段140)など、配送システム10を構成する手段は、それぞれ通信装置を備え、相互の情報の授受が可能とされている。
【0012】
図1に示すように、中継ポート運用装置100は、制御装置110と、通信装置103と、表示装置104と、入力装置105と、を備える。制御装置110は、通信装置103及び入力装置105を介して入力された情報に基づき、通信装置103及び表示装置104を制御する。入力装置105は、キーボード、マウス等であり、配送を管理する管理人により操作される。表示装置104は、液晶ディスプレイ装置などである。管理人は、入力装置105を操作することにより、表示装置104の表示画面に配送状況などの情報を表示させる。また、管理人は、入力装置105を操作することにより、制御装置110の記憶装置102に記憶されているデータ(閾値、データテーブル等)を更新する。
【0013】
制御装置110は、処理装置101、記憶装置102、入出力インタフェース、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。これらのハードウェアは、協働してソフトウェアを動作させ、複数の機能を実現する。なお、コントローラは、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。処理装置101は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサである。記憶装置102は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ、及び所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリを含む。
【0014】
不揮発性メモリには、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、不揮発性メモリは、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。揮発性メモリは、処理装置101による演算結果及び入出力インタフェースから入力された信号を一時的に記憶する。処理装置101は、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを揮発性メモリに展開して演算実行する装置であって、プログラムに従って入出力インタフェース、及び記憶装置102から取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0015】
入出力インタフェースの入力部は、各種装置(通信装置103、入力装置105等)から入力された信号を処理装置101で演算可能なデータに変換する。また、入出力インタフェースの出力部は、処理装置101での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を各種装置(通信装置103、表示装置104等)に出力する。
【0016】
飛行体120は、配送物190を保持した状態で自律飛行が可能な装置である。本実施形態では、飛行体120がドローンである例について説明するが、飛行体120は無人小型飛行機などであってもよい。飛行体120は、中継ポート運用装置100から送信される指示に基づき、出発地から離陸し、目標飛行経路に沿って目的地まで飛行する。飛行体120は、例えば、矩形状の筐体本体121と、筐体本体121に設けられた複数の羽根ロータ122と、を備える。羽根ロータ122は、図示しない電動モータによって駆動される。各羽根ロータ122の回転速度が制御されることにより、飛行体120は、上昇、下降、目標飛行経路に沿った飛行、上空の同じ位置での空中浮揚(ホバリング)などを行うことができる。
【0017】
飛行体120の筐体本体121には、飛行体制御装置123と、通信装置124と、位置姿勢センサ125とが設けられている。位置姿勢センサ125は、飛行体120の位置を検出する位置センサ125aと、飛行体120の姿勢を検出する姿勢センサ125bと、を有する。
【0018】
位置センサ125aは、飛行体120の位置を取得するためのものである。姿勢センサ125bは、飛行体120の向きを取得するためのものである。位置センサ125a及び姿勢センサ125bは、例えば、複数のGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球衛星測位システム)用のアンテナ(以下、GNSSアンテナと記す)と、GNSSアンテナで受信された複数の測位衛星からの衛星信号(GNSS電波)に基づいて、3次元空間の実座標で表される飛行体120の位置、及び基準方位からの角度である方位角を演算する測位演算装置と、を有する。飛行体120の位置は、例えば、地理座標系(グローバル座標系)における飛行体120の位置座標で表される。なお、姿勢センサ125bは、例えば、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)と、IMUにより検出された角加速度情報に基づいて、飛行体120の向きを演算する演算装置と、を備えたものであってもよい。
【0019】
飛行体制御装置123は、制御装置110と同様、処理装置、記憶装置、入出力インタフェース、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。飛行体制御装置123は、位置姿勢センサ125により検出された飛行体120の位置姿勢情報を、通信装置124を介して中継ポート運用装置100に送信する。飛行体120の位置姿勢情報は、地理座標系における飛行体120の位置と、飛行体120の傾き角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を含む。また、飛行体制御装置123は、通信装置124を介して、中継ポート運用装置100から目標飛行経路を含む飛行計画情報を取得する。目標飛行経路は、例えば、水平面に平行な面内の経路を構成する位置座標と、各位置座標における飛行高度により構成される。なお、目標飛行経路は、複数の3次元位置座標によって構成されていてもよい。飛行体制御装置123は、飛行計画情報に基づき、目標飛行経路に沿って、飛行体120を飛行させる。
【0020】
飛行体120の筐体本体121には、配送物190を保持可能な保持アーム126が設けられている。飛行体制御装置123は、保持アーム126の開閉を制御する。飛行体制御装置123は、保持アーム126を開くことにより、配送物190の荷下ろしを行う。
【0021】
他配送手段140は、配送物190を保持した状態で自律移動することが可能な手段である。他配送手段140としては、例えば、自転車、自動二輪車、自動車などの車両と車両を用いて配送物を配送する配送員と、徒歩で配送物を配送する配送員、ユーザ149などである。
【0022】
図2に示すように、配送物190は、配送拠点109から発送され中継点を介して配送先150まで配送される。中継点Aには、配送会社が保有する保管庫が設置されている。中継点Bには、セキュリティボックスが設置されている。中継点Cには、配送物190を管理する常在員が常に駐在している。
【0023】
中継点Dには、中継ポート130のみが設置されており、保管庫、セキュリティボックス、及び常駐する常在員等が存在していない。このため、中継点Dでは、配送物190が中継点Dに到着してから他配送手段140に対して受け渡されるまでの間に、配送物190の盗難、損傷等のリスクがある。そこで、本実施形態では、中継ポート130において、外部からのアクセスが禁止された配送物保持エリア(アクセス不可エリア)を設け、他配送手段140が中継ポート130の近くに位置するまで、配送物190を配送物保持エリアで保持する。
【0024】
図3は、中継ポート130に設定される配送物保持エリア131と配送物受渡エリア132の模式図である。
図3に示すように、中継ポート130には、配送物保持エリア131と配送物受渡エリア132とが設定される。配送物保持エリア131は、例えば、コンビニエンスストアなどの店舗の屋根の上に設定される。また、配送物保持エリア131は、外部からの接触及び侵入を物理的に遮断可能な構造物(以下、侵入防止構造体とも記す)により形成されてもよい。店舗の屋根の上に設定される配送物保持エリア131は、梯子などを用いない限り第三者がアクセスすることができない。また、柵、壁などの侵入防止構造体を設ける場合には、柵、壁により囲まれるエリアが配送物保持エリア131として設定される。なお、配送物保持エリア131は、所定の高さ以上の空中に設定されていてもよい。配送物保持エリア131が空中に設定される場合、飛行体120は、配送物190の荷下ろしを行わず、空中で配送物190を保持する。
【0025】
配送物受渡エリア132は、地上などで他配送手段140がアクセス可能な場所に設定される。配送物受渡エリア132は、第三者でもアクセスできる可能性がある。このため、本実施形態に係る中継ポート運用装置100は、配送物受渡エリア132に配送物190を置いておく時間ができるだけ短くなるように、飛行体120などの各種装置を制御する。
【0026】
図4は、中継ポート運用装置100の機能の概要を説明するブロック図である。
図4に示すように、中継ポート運用装置100は、データサーバ160から配送物属性情報、飛行体情報、中継点情報、及び空間情報などの配送情報を取得する。
【0027】
また、中継ポート運用装置100は、ユーザインターフェイス151からユーザ情報を取得する。ユーザ情報には、ユーザ149の住所などの配送先(位置)の情報、配送希望日時、ユーザ149の氏名、電話番号などが含まれる。ユーザインターフェイス151は、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどである。ユーザ149は、ユーザインターフェイス151を用いてユーザ情報を入力し、ユーザインターフェイス151は、ユーザインターフェイス151に搭載されている通信装置を介して、ユーザ情報を中継ポート運用装置100に送信する。
【0028】
中継ポート運用装置100は、データサーバ160から取得した配送情報、及びユーザインターフェイス151から取得したユーザ情報に基づき、配送計画を作成する。中継ポート運用装置100は、作成した配送計画に含まれる飛行計画情報を飛行体120に送信する。飛行体120は、飛行計画情報に基づき飛行する。飛行体120は、当該飛行体120の現在位置及び速度などの動態情報を中継ポート運用装置100に送信する。
【0029】
中継ポート運用装置100は、作成した配送計画に含まれる中継点の位置情報、飛行体120が中継点に到着する時刻などの情報を他配送手段140に送信する。また、中継ポート運用装置100は、中継ポート130からの移動が許可されている状態であるか否かを示す情報などの現在の配送状況を他配送手段140に送信する。
【0030】
他配送手段140は、情報端末142を備えている。情報端末142は、配送員が所持するスマートフォンであってもよいし、配送車両141に搭載される車載装置であってもよい。また、他配送手段140の情報端末142は、当該他配送手段140の位置を検出する位置センサと、位置センサにより検出された位置を中継ポート運用装置100に送信したり、中継ポート運用装置100からの種々の指示や通知を受信したりする端末通信装置と、を備えている。他配送手段140の位置センサは、飛行体120の位置センサ125aと同様、例えば、GNSSアンテナと、測位演算装置とを含んで構成される。他配送手段140は、中継ポート運用装置100から指示や通知を受信すると、その情報を配送員に提示する。
【0031】
図5は、情報端末142に表示される情報の一例を示す図である。
図5に示すように、情報端末142は、液晶ディスプレイなどの表示装置143aと、表示装置143aの表示画面に設けられたタッチセンサなどの入力装置143bと、入力装置143bからの入力信号に応じて表示装置143aや端末通信装置を制御する端末制御装置(不図示)と、を備えている。端末制御装置(不図示)は、制御装置110と同様、処理装置、記憶装置、入出力インタフェース、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。
【0032】
表示装置143aには、地図情報を表示する地図表示画面144aと、中継点の状態を表示する中継点状態表示画面144bと、が表示される。地図表示画面144aには、情報端末142の現在位置(他配送手段140の現在位置)144cと、現在位置144cを中心とする所定領域内の地図と、所定領域内の複数の中継点144dとが表示される。中継点状態表示画面144bには、中継点識別情報と、到着時刻情報と、配送物状態情報とが表示される。図示する例では、中継点識別情報は、飛行体120の配送物190の輸送先である中継点を識別する情報(中継点A、中継点B、中継点C)である。なお、中継点識別情報として、中継点の位置を表す住所を合わせて表示してもよい。表示装置143aの表示画面に表示される到着時刻情報は、配送物190が輸送先(中継点)に到着している場合には、実際の到着時刻であり、配送物190が輸送先(中継点)に到着していない場合には、予定の到着時刻である。
【0033】
中継ポート運用装置100は、中継点を含む所定範囲内に存在する複数の他配送手段140に対して、指示及び通知情報を送信する。複数の他配送手段140の情報端末142の内の一つにおいて、中継点の選択操作が行われると、情報端末142は、選択された中継点を当該他配送手段140が向かう行先(輸送先)として決定する。情報端末142は、中継点が選択された旨を、中継ポート運用装置100に送信する。中継ポート運用装置100は、選択された中継点が別の他配送手段140の情報端末142で重複して選択されることを防止するため、当該中継点を輸送先として選択する操作を禁止する処理を実行する。
【0034】
図示する例では、中継点Aが、次に向かう輸送先(すなわち目的地)として選択されている。中継点Aが選択されると、情報端末142は、中継点Aが選択されたことを示す白抜きの三角マーク144eを地図表示画面144aに表示するとともに、中継点Aが選択されたことを示す太枠を中継点状態表示画面144bに表示する。
【0035】
情報端末142に表示される配送物状態情報としては、輸送先に到着している配送物190が移動許可状態であることを示す「〇」マークと、輸送先に配送物190が到着していないことを示す「×」マークと、輸送先に配送物190が到着しているが、配送物190の移動が許可されていない状態であることを示す「待機」のメッセージとがある。
【0036】
図6は、中継ポート運用装置100の機能ブロック図である。中継ポート運用装置100は、受付部111、配送計画作成部112、統合運行管理部113、及び出力部114として機能する。配送計画作成部112、及び統合運行管理部113のそれぞれの機能は、制御装置110によって発揮される。受付部111及び出力部114の機能は、制御装置110及び通信装置103によって発揮される。
【0037】
受付部111は、データサーバ160からの配送物属性情報、飛行体情報、中継点情報、空間情報、及びユーザインターフェイス151からの配送希望日時を入力情報として受け付ける。配送計画作成部112は、受付部111が受け付けた入力情報を用いて、中継ポート130を介した飛行体120と他配送手段140が連携する配送計画を作成する。統合運行管理部113は、配送計画作成部112により作成された配送計画に基づいて、飛行体120及び他配送手段140の運行を管理する。出力部114は、中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満となった場合に、飛行体120及び他配送手段140の内の少なくとも一方に対して、配送物190の移動許可を出力する。配送物190の移動許可とは、飛行体120及び他配送手段140の内、少なくともどちらか一方が中継ポート130近辺において配送物190を動かしても良しとすることである。
【0038】
図4に示すように、配送物属性情報は、データサーバ160の配送物属性データベース161に記憶されている。飛行体情報は、データサーバ160の飛行体データベース162に記憶されている。中継点情報は、データサーバ160の中継点データベース163に記憶されている。空間情報は、データサーバ160の空間情報データベース164に記憶されている。
【0039】
図7は、配送物属性情報を示す図である。
図7に示すように、配送物属性情報である配送物識別情報161a、配送希望日時161b、配送先(位置)161c、配送物190の重量161d、配送物190のサイズ161e、耐衝撃値161f、天候耐性・温度情報161g、親展情報161h、設置向き161i、及び配送物190の種別161jは、配送物190毎に対応付けられて記憶されている。
【0040】
配送物識別情報161aは、配送物190を識別する情報である。配送希望日時161bは、ユーザ149が配送を希望する日時である。配送希望日時161bは、ユーザインターフェイス151から送信される情報によって更新される。他配送手段140は、配送希望日時161bに配送先150に到着するように、配送物190を配送する。配送希望日時161bは、配送ルートにおける最終地点での受け取り日時である、このため、配送希望日時161bは、ユーザ149の最終受取日時(最終受取日及び最終受取時刻)に相当する。配送先(位置)161cは、配送先150の地理座標系における位置座標である。
【0041】
図8は、飛行体情報を示す図である。
図8に示すように、飛行体情報である飛行体識別情報162a、最大可搬サイズ162b、最大可搬重量162c、飛行可能時間の特性データ162d、及び標準速度162eは、飛行体120毎に対応付けられて記憶されている。
【0042】
飛行体識別情報162aは、飛行体120を識別する情報である。最大可搬サイズ162bは、飛行体120が運搬可能な最大サイズ(長さL×幅W×高さH)である。最大可搬重量162cは、飛行体120が運搬可能な最大重量である。飛行可能時間の特性データ162dは、風速と、配送物190の重量と、飛行可能時間との関係を規定するデータテーブルあるいは数式データである。標準速度162eは、例えば、飛行体120が配送物190を保持していない状態であって、風速が0[m/秒]である状態での飛行体120の速度に相当する。
【0043】
図9は、中継点情報を示す図である。
図9に示すように、中継点情報である中継点識別情報163a、風況情報163b、降水量163c、降雪量163d、気温163e、規制情報163f、セキュリティ情報163g、充電設備情報163h、及び位置検出手段163iは、中継点毎に対応付けられて記憶されている。
【0044】
中継点識別情報163aは、中継点を識別する情報であり、中継点の地理座標系の位置座標を含む。風況情報163bは、中継点の風向きと風速を表す情報である。降水量163cは中継点の雨量であり、降雪量163dは中継点の単位時間当たりの積雪高さ(積雪量)の増加分である。中継点の風況情報163b、降水量163c、降雪量163d、及び気温163eは、中継点の近くに設置されている環境センサ180(
図1参照)によって観測される。規制情報163fは、中継点の空域への飛行体120の飛行の規制が有るか否かを示す情報であり、規制情報提供装置172(
図1参照)から提供される。セキュリティ情報163gは、配送物保持エリア131での中継方式を示す情報である。充電設備情報163hは、中継点に充電設備が有るか否かを示す情報である。位置検出手段163iは、中継点と他配送手段140との相対的な位置を検出する手段を示す情報であり、例えば、顔認証、QRコード(登録商標)を用いたコード認証、他配送手段140の位置情報などがある。
【0045】
図10は、空間情報を示す図である。
図10に示すように、空間情報である空間識別情報164a、障害物情報164b、無線状況情報164c、風況ベクトル164d、降水量164e、降雪量164f、気温164g、及び規制情報164hは、空間毎に対応付けられて記憶されている。ここで、空間とは、所定の長さ、幅、高さの直方体状の空間であり、飛行体120の飛行空域を分割することにより形成される。
【0046】
図11は、飛行空域を分割した空間と、飛行経路の候補を示す図である。
図11に示すように、本実施形態に係る空間(以下、小分割空間とも記す)173は、長さ、幅、及び高さが等しい立方体状の空間である。小分割空間173の中心点の空間座標系における位置座標が、空間識別情報164aとして空間情報データベース164に記憶されている。なお、空間座標系は、飛行空域における基準位置を原点とする直交座標系である。
【0047】
図10に示すように、空間識別情報164aは、小分割空間173を識別する情報である。障害物情報164bは、小分割空間173内に障害物が有るか否かを示す情報である。障害物とは、例えば、建物などの構造物、鳥、ドローン等の飛行体などである。データサーバ160は、飛行空域に設置された複数の環境センサ180の検出結果に基づき、小分割空間173内に障害物が有るか否かを判定し、その判定結果を障害物情報164bとして記憶する。無線状況情報164cは、小分割空間173内の通信強度(通信レベル)を示す情報であり、通信キャリア171(
図1参照)から提供される。風況ベクトル164dは、小分割空間173内の風向きと風速とを示すベクトルである。データサーバ160は、複数の環境センサ180の検出結果に基づき、小分割空間173の風況ベクトルを算出し、記憶する。小分割空間173の降水量164e、降雪量164f、及び気温164gは、上述した中継点の降水量163c、降雪量163d、及び気温163eと同様の情報であり、飛行空域に設置された複数の環境センサ180により観測される。規制情報164hは、小分割空間173内での飛行体120の飛行の規制が有るか否かを示す情報であり、規制情報提供装置172(
図1参照)から提供される。
【0048】
図12及び
図13を参照して、中継ポート運用装置100の制御装置110により実行される処理の流れの一例について説明する。
図12は、運行計画フェイズにおいて実行される処理と、輸送フェイズにおいて実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図12に示す処理は、中継ポート運用装置100により所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0049】
図12に示すように、ステップS110において、配送計画作成部112は、データサーバ160から配送情報(配送物属性情報、飛行体情報、中継点情報、及び空間情報)を取得して、処理をステップS115に進める。
【0050】
ステップS115において、配送計画作成部112は、配送計画を作成する。配送計画の作成処理は、例えば、以下のようにして作成される。先ず、配送計画作成部112は、配送物190の重量161d及びサイズ161eと、飛行体120の最大可搬重量162c及び最大可搬サイズ162bとに基づいて、利用可能な飛行体120を選択する。例えば、配送計画作成部112は、最大可搬重量162cが配送物190の重量以下であり、かつ、最大可搬サイズ162bが配送物190のサイズ161e以下である飛行体120を選択する。選択された飛行体120が複数ある場合、それらの飛行体120の内、最大可搬サイズ162b及び最大可搬重量162cが比較的小さい飛行体120を、配送に利用する飛行体120として決定する。
【0051】
次に、配送計画作成部112は、記憶装置102に予め記憶されている配送拠点109の位置と、配送属性情報である配送先(位置)161cに基づいて、例えば、
図11に示すように、配送拠点109と配送先150の間にある複数の中継ポート130a,130b,130cを選択する。配送計画作成部112は、配送拠点109から各中継ポート130a,130b,130cまでの経路174(174a,174b,174c)を生成する。経路174a,174b,174cは、以下の経路条件が成立する小分割空間173を通るように、かつ、経路長ができるだけ短くなるように設定される。
【0052】
経路条件は、以下の(条件1)~(条件7)の全てが満たされた場合に成立し、(条件1)~(条件7)のいずれか一つでも満たされていない場合には成立しない。
(条件1)障害物が無い。すなわち、障害物情報164bが「無し」とされている。
(条件2)無線状況が良好である。例えば、無線状況情報164cとしての通信強度(通信レベル)が強度閾値以上である。
(条件3)風況ベクトル164dの大きさ(風速)が風速閾値未満である。
(条件4)降水量164eが降水量閾値未満である。
(条件5)降雪量164fが降雪量閾値未満である。
(条件6)気温164gが、第1気温閾値以上、かつ第2気温閾値未満である。
(条件7)規制情報164hが「無し」とされている。
【0053】
配送計画作成部112は、飛行体120の仕様によって定められる飛行可能時間の特性データ162dを参照し、配送物190の重量161dと、経路174を含む複数の小分割空間173の風況ベクトル164dの大きさ(風速)の平均値とに基づいて、飛行可能時間を演算する。なお、特性データ162dにより規定される飛行可能時間は、飛行体120のバッテリが満充電されているときの値である。このため、現在の飛行体120のバッテリの充電率等に基づき、飛行可能時間を補正してもよい。
【0054】
配送計画作成部112は、演算した飛行可能時間から帰還時間を差し引くことにより、飛行保持可能限界時間t1を演算する。飛行保持可能限界時間t1は、飛行体120が配送物190を保持した状態で飛行可能な限界時間である。帰還時間は、飛行体120の標準速度162eと、中継ポート130と配送拠点109とを結ぶ経路174の経路長と、に基づいて演算される。
【0055】
記憶装置102には、配送物190の種別161jと品質保持許容時間t2とが対応付けられたデータテーブル(以下、品質保持許容時間テーブルと記す)が記憶されている。品質保持許容時間t2は、配送物190の品質を維持するための許容時間である。例えば、配送物190の種別161jが生鮮物などの冷蔵が必要な物品に設定される品質保持許容時間t2は、種別161jが電子機器などの冷蔵が不要な物品に設定される品質保持許容時間t2よりも短い。配送計画作成部112は、品質保持許容時間テーブルを参照し、配送物190の種別161jに基づいて、品質保持許容時間t2を演算する。なお、配送計画作成部112は、経路174を含む複数の小分割空間173の気温164gの平均値に応じて品質保持許容時間t2を補正してもよい。
【0056】
配送計画作成部112は、演算した飛行保持可能限界時間t1と品質保持許容時間t2とを比較し、小さい方を配送物保持時間t3として決定する。配送計画作成部112は、配送希望日時161bと、配送物保持時間t3と、他配送手段140による配送予測時間とに基づいて、飛行体120の出発時刻を演算する。
【0057】
例えば、配送計画作成部112は、配送希望日時161bよりも配送予測時間だけ前の時刻を、中継ポート受取時刻として演算する。配送計画作成部112は、中継ポート受取時刻よりも配送物保持時間t3だけ前の時刻を、飛行体120の出発時刻として決定する。
【0058】
配送計画作成部112は、中継ポート受取時刻を含む所定幅の時間帯に、中継ポート130の近くに存在する他配送手段140を特定する。中継ポート130の近くに存在する他配送手段140としては、当該中継ポート130を含む所定範囲の地域を担当する配送業者の社員などが想定される。配送計画作成部112は、上記時間帯に、中継ポート30の近くに他配送手段140が存在しないと判定した場合には、当該中継ポート30を輸送先の候補から除外する。
【0059】
配送計画作成部112は、所定の条件を満たす複数の中継ポート130a,130b,130cと配送拠点109とを結ぶ複数の経路174a,174b,174cのそれぞれに対し、優先順位をつける。配送計画作成部112は、例えば、中継ポート130から配送先150までの経路の経路長が短いほど、優先順位を高くする。なお、優先順位のつけ方はこれに限定されず、配送拠点109から中継ポート130までの経路の経路長が短いほど、優先順位を高くしてもよい。また、配送物190の種別161jに応じて、優先順位のつけ方を変更してもよい。
【0060】
以上のように、配送計画作成部112は、利用する飛行体120、利用予定の一つ以上の中継ポート130及び経路174、飛行体120の出発時刻等を定めることにより、配送計画を作成し、処理を
図12に示すステップS120に進める。ステップS120において、配送計画作成部112は、行先である中継ポート130に対応する中継方式を登録する。中継方式は、
図9に示すセキュリティ情報163gによって定まる。
【0061】
例えば、セキュリティ情報163gが「屋上着荷」である場合には、中継方式として着荷帰還方式が登録される。着荷帰還方式は、飛行体120が配送物保持エリア131に配送物190を荷下ろしした後、直ちに帰還し、他配送手段140が配送物190を配送物保持エリア131から持ち出す中継方式である。また、セキュリティ情報163gが「空中ホバリングエリア」である場合には、中継方式として空中待機方式が登録される。空中待機方式は、配送物190を保持した飛行体120を空中の配送物保持エリア131で待機させ、他配送手段140が中継ポート130の近くに来たら、飛行体120を配送物受渡エリア132に移動させて、配送物190の荷下ろしを行う中継方式である。セキュリティ情報163gが「屋上待機」である場合には、中継方式として着陸待機方式が登録される。着陸待機方式は、飛行体120を配送物保持エリア131に着陸させ、他配送手段140が中継ポート130の近くに来たら、飛行体120を配送物受渡エリア132に移動させて、配送物190の荷下ろしを行う中継方式である。
【0062】
図12に示すように、次のステップS125において、統合運行管理部113は、現在時刻が配送計画に含まれる出発時刻になったか否かを監視する。飛行体120には、予め配送物190が搭載されている。統合運行管理部113によって現在時刻が出発時刻になったと判定された場合、出力部114は、飛行体120に対して、配送物190を中継ポート130に輸送させる輸送指示を送信する。飛行体120は、輸送指示を受信すると、配送拠点109から離陸し、配送計画に含まれる経路174に沿って配送物190の輸送を開始する。なお、ステップS125において、出力部114は、当該飛行体120による輸送が開始されたことを表す通知情報を、当該飛行体120の輸送先を含む所定範囲内に存在する他配送手段140に送信する。
【0063】
次のステップS130において、統合運行管理部113は、飛行体120の現在位置、速度などの動態情報を取得する。これにより、飛行体120と統合運行管理部113とで動態情報が共有される。
【0064】
次のステップS135において、統合運行管理部113は、状況の変化が有るかを判定する。統合運行管理部113は、例えば、以下の(条件A)~(条件C)の内の少なくとも一つが満たされた場合には、状況の変化が有ると判定する。統合運行管理部113は、(条件A)~(条件C)の全てが満たされていない場合には、状況の変化は無いと判定する。
(条件A)行先の中継ポート130の配送物保持エリア131における待機スペースの空きが無くなる。
(条件B)行先の中継ポート130の近くに、他配送手段140が存在していない。
(条件C)行先の中継ポート130の配送物保持エリア131が空中に設定されている場合であって、かつ、空中待機が難しいほど天候が悪化した。
【0065】
(条件A)は、例えば、緊急着陸した別の飛行体120が配送物保持エリア131で待機している場合に満たされる。緊急着陸の情報は、緊急着陸した飛行体120、または緊急着陸先の中継ポート130から中継ポート運用装置100に送信される。統合運行管理部113は、各飛行体120の動態情報及び中継ポート130からの情報に基づき、(条件A)が満たされているか否かを判定することができる。
【0066】
(条件B)は、中継ポート130の近くにいるはずであった他配送手段140が、配送車両141の故障などの不測の事態により、中継ポート130を含む所定範囲内に存在していない場合に満たされる。他配送手段140の不測の事態の情報は、当該他配送手段140から中継ポート運用装置100に送信される。統合運行管理部113は、他配送手段140から送信された不測の事態の情報に基づき、(条件B)が満たされているか否かを判定することができる。
【0067】
(条件C)は、中継ポート130の天候が良好な状況から悪化した場合に満たされる。統合運行管理部113は、中継ポート130の風況情報163bに含まれる風速、降水量163c、及び降雪量163dのいずれか一つが、それぞれに対応して設定される閾値以上となった場合に、(条件C)が満たされていると判定する。
【0068】
ステップS135において、状況の変化が有ると判定された場合には、処理がステップS140に進み、状況の変化が無いと判定された場合には、処理がステップS145に進む。
【0069】
ステップS140において、統合運行管理部113は、飛行体120の行先の変更要否の判定処理を実行する。統合運行管理部113は、状況の変化による当初の予定からの差分と、中継ポート130の変更候補の情報とに基づいて、別の中継ポート130への配送が可能か否かを判定する。当初の行先である中継ポート130への配送が不可能であると判定された場合、統合運行管理部113は、飛行体120の行先を配送可能な別の中継ポート130に変更する。さらに、統合運行管理部113は、変更後の新たな行先である中継ポート130の中継方式を登録する。なお、当初の行先である中継ポート130への配送が可能であると判定された場合、統合運行管理部113は、行先の変更を行わない。
【0070】
例えば、(条件A)が満たされた場合であっても、所定時間経過後に待機スペースが空くときがある。このような場合、統合運行管理部113は、所定時間、経路上の所定の場所で待機を行った場合でも、中継ポート受取時刻までに待機スペースまで移動可能であるか否かを判定する。中継ポート受取時刻までに待機スペースまで移動可能であると判定された場合には、統合運行管理部113は、当初の行先である中継ポート130への配送が可能であると判定する。一方、中継ポート受取時刻までに待機スペースまで移動可能でないと判定された場合には、統合運行管理部113は、当初の行先である中継ポート130への配送が不可能であると判定する。
【0071】
飛行体120の行先の変更要否の判定処理(ステップS140)が完了すると、処理がステップS145に進む。ステップS145において、統合運行管理部113は、ステップS130で取得した飛行体120の動態情報に含まれる位置情報と、中継ポート130の位置情報とに基づいて、飛行体120が中継ポート130に到着したか否かを判定する。
【0072】
ステップS145において、中継ポート130の基準位置から飛行体120の位置までの距離が到着判定用の距離閾値以上である場合には、統合運行管理部113は、飛行体120は中継ポート130に到着していないと判定する。この場合、処理はステップS130に戻る。ステップS145において、中継ポート130の基準位置から飛行体120の位置までの距離が到着判定用の距離閾値未満になった場合には、統合運行管理部113は、飛行体120が中継ポート130に到着したと判定する。この場合、処理はステップS150に進む。
【0073】
図13は、
図12の受渡処理(ステップS150)の詳細について示すフローチャートである。
図12の受渡処理(ステップS150)が開始されると、
図13に示すように、まず、ステップS160において、出力部114は、飛行体120に対して、配送物190を配送物保持エリア131に移動させる移動指示を送信する。飛行体制御装置123は、移動指示を受信すると、飛行体120を配送物保持エリア131まで移動させる。
【0074】
次のステップS163において、統合運行管理部113は、飛行体120が配送物保持エリア131に到着したか否かを判定する。例えば、統合運行管理部113は、飛行体120から配送物保持エリア131に到着したことを示す信号が送信された場合に。飛行体120が配送物保持エリア131に到着したと判定する。なお、判定方法はこれに限られない。例えば、統合運行管理部113は、飛行体120の位置情報に基づいて、飛行体120が配送物保持エリア131に到着したか否かを判定してもよい。ステップS163の処理は、肯定判定されるまで所定の制御周期で繰り返し実行される。ステップS163において肯定判定された場合には、処理がステップS166に進む。
【0075】
ステップS166において、統合運行管理部113は、登録されている中継方式が待機方式か否かを判定する。中継方式として空中待機方式及び着陸待機方式のいずれも登録されていない場合には、中継方式は待機方式でないと判定され、処理がステップS169に進む。中継方式として、空中待機方式または着陸待機方式が登録されている場合には、中継方式は待機方式であると判定され、処理がステップS175に進む。
【0076】
ステップS169において、出力部114は、飛行体120に着荷をさせるための配送物着荷指示を送信する。飛行体制御装置123は配送物着荷指示を受信すると、飛行体120を配送物保持エリア131に着陸させ、配送物190を荷下ろしした後、再び飛行体120を離陸させる。荷下ろしが完了すると、処理がステップS172に進む。
【0077】
ステップS172において、出力部114は、帰還指示を飛行体120に送信する。飛行体制御装置123は、帰還指示を受信すると、飛行体120を配送拠点109まで移動させる。
【0078】
ステップS175において、統合運行管理部113は、登録されている中継方式が空中待機方式か着陸待機方式かを判定する。登録されている中継方式が空中待機方式である場合には、処理がステップS178に進み、登録されている中継方式が着陸待機方式である場合には、処理がステップS181に進む。
【0079】
ステップS178において、出力部114は、ホバリング指示を飛行体120に送信する。飛行体制御装置123は、ホバリング指示を受信すると、配送物190を保持した状態で飛行体120をホバリングさせる。
【0080】
ステップS181において、出力部114は、着陸指示を飛行体120に送信する。飛行体制御装置123は、着陸指示を受信すると、飛行体120を配送物保持エリア131に着陸させる。なお、飛行体120は、着陸した後も配送物190を保持している。
【0081】
ステップS172,S178,S181の処理が完了すると、処理がステップS183に進む。ステップS183において、統合運行管理部113は、配送物保持時間t3から飛行体120の出発時刻からの経過時間t4を差し引くことにより、残り時間t5を演算する(t5=t3―t4)。
【0082】
次のステップS184において、統合運行管理部113は、残り時間t5が時間閾値t0未満であるか否かを判定する。残り時間t5が時間閾値t0以上であると判定された場合には、処理がステップS187に進み、残り時間t5が時間閾値t0未満であると判定された場合には、処理がステップS196に進む。なお、ステップS183,S184の処理は、ステップS172の処理が実行されている場合には省略される。
【0083】
ステップS187において、統合運行管理部113は、他配送手段140の位置を検出する。次のステップS190において、統合運行管理部113は、ステップS187の検出結果に基づき、中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満であるか否かを判定する。なお、距離D1は、中継ポート130から他配送手段140までの直線距離としてもよいし、道路に沿った最短距離(道のり)としてもよい。所定距離(距離閾値)D0は、予め定められ、記憶装置102に記憶されている。距離D1が所定距離D0以上であると判定された場合には、処理がステップS183に戻り、距離D1が所定距離D0未満であると判定された場合には、処理がステップS193に進む。ステップS193において、出力部114は、中継方式に応じて、飛行体120及び他配送手段140の内の少なくとも一方に対して、配送物保持エリア131にある配送物190の移動許可を送信する。他配送手段140の位置検出方法、及び、移動許可の態様は、中継ポート130設備や中継方式に対応するものが採用される。他配送手段140の位置検出方法及び移動許可の態様の詳細は後述する。
【0084】
次のステップS196において、出力部114は、飛行体120が中継ポート130にいる場合、帰還指示を飛行体120に送信する。待機方式が、空中待機方式または着陸待機方式であった場合には、飛行体120が中継ポート130にいるため、飛行体120に帰還指示が送信される。飛行体制御装置123は、帰還指示を受信すると、飛行体120を配送拠点109まで移動させる。なお、ステップS196の処理は、ステップS172の処理が実行されている場合には省略される。ステップS196の処理が完了または省略されることにより、受取処理(
図12のステップS150)が終了する。
【0085】
図14~
図18を参照して、他配送手段140の位置検出方法及び移動許可の態様の詳細を説明する。
図14は、配送物保持エリア131が店舗の屋上などの高所に設定されている例を示す図である。
図15は、飛行体120が配送物190を配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132に移動させる様子を示す図である。
【0086】
中継方式が着陸待機方式である場合、
図14に示すように、飛行体120は、配送物保持エリア131に着陸し、移動許可を受信するまで配送物保持エリア131で待機する(
図13のS166,S175,S181)。受付部111は、他配送手段140から送信される当該他配送手段140の位置を受け付けることにより、他配送手段140の位置を検出する(
図13のS187)。統合運行管理部113は、他配送手段140の位置と記憶装置102に予め記憶されている中継ポート130の位置に基づいて、中継ポート130から他配送手段140までの距離D1を演算する(
図13のS190)。統合運行管理部113は、演算した距離D1と、記憶装置102に記憶されている距離閾値(所定距離)D0とを比較し、距離D1が所定距離D0未満であるか否かを判定する(
図13のS190)。
【0087】
出力部114は、統合運行管理部113によって中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満であると判定された場合には、飛行体120に対して、配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132への飛行体120による配送物190の移動許可を送信する(
図13のS193)。
図15に示すように、飛行体制御装置123は、移動許可を受信した場合には、飛行体120を離陸させ、飛行体120を配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132まで移動させる。このように、
図15に示す例において、出力部114から飛行体120に出力される移動許可とは、配送物保持エリア131に保持されている配送物190を配送物受渡エリア132まで動かしても良いことを表す動作指令に相当する。なお、出力部114は、他配送手段140にも移動許可を出力する。出力部114から他配送手段140に出力される移動許可とは、配送物受渡エリア132に保持されている配送物190を動かしても良いこと、すなわち中継ポート130から配送物190を持ち出してもよいことを表す通知に相当する。
【0088】
図16は、配送物保持エリア131が空中に設定されている例を示す図である。中継方式が空中待機方式である場合、
図16に示すように、飛行体120は、配送物保持エリア131でホバリングし、移動許可を受信するまで空中の配送物保持エリア131で待機する(
図13のS166,S175,S178)。出力部114は、統合運行管理部113によって中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満であると判定された場合には、空中の配送物保持エリア131で配送物190を保持した状態で待機している飛行体120に対して、配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132への飛行体120による配送物190の移動許可を送信する(
図13のS187,S190,S193)。飛行体制御装置123は、移動許可を受信した場合には、飛行体120を配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132まで移動させる。このように、
図16に示す例において、出力部114から飛行体120に出力される移動許可とは、配送物保持エリア131に保持されている配送物190を配送物受渡エリア132まで動かしても良いことを表す動作指令に相当する。なお、出力部114は、他配送手段140にも移動許可を出力する。出力部114から他配送手段140に出力される移動許可とは、配送物受渡エリア132に保持されている配送物190を動かしても良いこと、すなわち中継ポート130から配送物190を持ち出してもよいことを表す通知に相当する。
【0089】
図17は、搬送装置181が配送物190を配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132に移動させる様子を示す図である。
図17に示す例では、中継ポート130に搬送装置181が設けられている。搬送装置181は、配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132へ配送物190を搬送する装置である。搬送装置181は、例えば、ベルトコンベア、自律走行式の搬送車両などである。搬送装置181は、搬送制御装置及び通信装置を備えており、中継ポート運用装置100と情報の授受を行う。
【0090】
中継方式が着荷帰還方式である場合、飛行体120は、配送物保持エリア131に配送物190を降ろした後、配送拠点109に帰還する(
図13のS166,S169,S172)。出力部114は、統合運行管理部113によって中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満であると判定された場合には、搬送装置181に対して、配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132への搬送装置181による配送物190の移動許可を送信する(
図13のS187,S190,S193)。搬送制御装置は、通信装置を介して移動許可を受信した場合には、搬送装置181によって配送物190を配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132まで移動させる。このように、
図17に示す例において、出力部114から搬送装置181に出力される移動許可とは、配送物保持エリア131に保持されている配送物190を配送物受渡エリア132まで動かしても良いことを表す動作指令に相当する。なお、出力部114は、他配送手段140にも移動許可を出力する。出力部114から他配送手段140に出力される移動許可とは、配送物受渡エリア132に保持されている配送物190を動かしても良いこと、すなわち中継ポート130から配送物190を持ち出してもよいことを表す通知に相当する。
【0091】
図18は、他配送手段140が配送物保持エリア131に進入して配送物190を移動させる例について示す図である。
図18に示す例では、中継ポート130に、柵、壁などの侵入防止構造体182が設けられ、配送物保持エリア131と配送物受渡エリア132が兼用されている。侵入防止構造体182は、配送物保持エリア131を囲むように形成される。侵入防止構造体182には、配送物保持エリア131への進入路の開放と遮断を自動で行うゲート183が設けられている。ゲート183は、通信装置を備えており、遠隔操作信号により自動で開動作または閉動作が行われる。ゲート183の近くには近距離認証装置184が設けられている。近距離認証装置184は、他配送手段140を近距離で認証するための装置である。近距離認証装置184は、例えば、QRコード(登録商標)等のコード画像を利用した周知のコード認証装置、及びカメラにより撮影した配送員の撮影画像を利用した周知の顔認証装置などである。近距離認証装置184は、通信装置を備えており、通信装置を介して中継ポート運用装置100と情報の授受を行う。
【0092】
近距離認証装置184によって他配送手段140が認証された場合、近距離認証装置184は、他配送手段140が認証されたことを表す認証成功信号を中継ポート運用装置100に送信する。中継ポート運用装置100の受付部111が認証成功信号を受け付けると、統合運行管理部113は、他配送手段140の位置が近距離認証装置184の位置であることを検出する。近距離認証装置184は、中継ポート130から所定距離D0未満の位置に設置されている。このため、統合運行管理部113は、近距離認証装置184によって他配送手段140が認証された場合に、中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満であると判定する。
【0093】
出力部114は、近距離認証装置184によって、他配送手段140が認証された場合には、ゲート183に対して、ゲート183の開放指示を送信する。さらに、出力部114は、他配送手段140に対して、配送物保持エリア131からの他配送手段140による配送物190の移動許可を送信する。ゲート183は、開放指示を受信した場合には、閉位置から開位置まで開動作を実行する。他配送手段140である配達員の情報端末142は、移動許可を受信した場合には、表示装置143aの表示画面に、配送物保持エリア131に置かれている配送物190を移動させてもよいメッセージ、アイコンなどを表示させる。このように、
図18に示す例において、出力部114から他配送手段140に出力される移動許可とは、配送物受渡エリア132(配送物保持エリア131)に保持されている配送物190を動かしても良いこと、すなわち中継ポート130から配送物190を持ち出してもよいことを表す通知に相当する。
【0094】
配達員は、配送物190を取り、ゲート183の外側に移動した後、情報端末142の入力装置143bにより配送物190の配送開始操作(受取完了操作)を行う。配送開始操作が行われた場合、情報端末142は、当該他配送手段140による配送開始信号を中継ポート運用装置100に送信する。出力部114は、受付部111が配送開始信号を受け付けた場合には、ゲート183に遮断指示を送信する。ゲート183は、遮断指示を受信した場合には、開位置から閉位置まで閉動作を実行する。なお、出力部114は、近距離認証装置184によって他配送手段140が認証されていない場合には、ゲート183の開放指示を送信しない。これにより、ゲート183は、進入路を遮断した状態で維持される。
【0095】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0096】
(1)本実施形態に係る中継ポート運用装置100は、中継ポート130を運用するとともに、配送システム10を構成する各種装置(飛行体120、他配送手段140、搬送装置181、ゲート183、近距離認証装置184等)の管理を行う配送管理装置として機能する。中継ポート130は、飛行体120が配送物190を届ける輸送先であって、飛行体120とは異なる他配送手段140が配送物190を受け取るために設けられている。中継ポート運用装置100は、配送物190の属性及び配送物190の配送希望日時(最終受取時刻)161bを入力情報として受け付ける受付部111と、受付部111が受け付けた入力情報を用いて、中継ポート130を介した飛行体120と他配送手段140が連携する配送計画を作成する配送計画作成部112と、配送計画作成部112により作成された配送計画に基づいて、飛行体120及び他配送手段140の運行を管理する統合運行管理部113と、中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満となった場合に、飛行体120及び他配送手段140の内の少なくとも一方に対して、配送物190の移動許可を出力する出力部114と、を備えている。この構成では、移動許可が出力されることで、飛行体120及び他配送手段140の内の少なくとも一方による配送物190の移動が許容されるので、中継ポート130を介して、安全に配送物190を配送することができる。
【0097】
(2)中継ポート130には、外部からのアクセスが禁止された配送物保持エリア131が設けられている(
図3参照)。出力部114は、飛行体120に対して、配送物190を中継ポート130の配送物保持エリア131に輸送させる輸送指示を出力する(
図12のステップS125)。統合運行管理部113は、中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満であるか否かを判定する(
図13のS190)。出力部114は、中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満であると判定された場合には、飛行体120及び他配送手段140の内の少なくとも一方に対して、配送物保持エリア131にある配送物190の移動許可を出力する(
図13のS193)。この構成によれば、移動許可が出力されるまで、配送物190が物理的に外部からのアクセスが禁止された配送物保持エリア131に保持される。このため、第三者による配送物190の損傷、盗難を適切に防止することができる。
【0098】
なお、中継方式が空中待機方式または着陸待機方式である場合(
図14~
図16参照)、出力部114は、飛行体120に対して移動許可を出力する。これにより、飛行体120によって配送物190を配送物保持エリア131から移動させ、他配送手段140に渡すことができる。また、他配送手段140に移動許可を表す通知を行うことで(
図5参照)、他配送手段140は配送物保持エリア131または配送物受渡エリア132に置かれている配送物190を受け取ることができる(
図15~
図18参照)。
【0099】
(3)中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0以上である場合には、配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132への配送物190の移動が禁止されている。例えば、中継方式が空中待機方式または着陸待機方式である場合(
図14~
図16参照)、飛行体120は、移動許可を受信するまで配送物保持エリア131に待機している。また、中継方式が着荷帰還方式であって、配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132へ配送物190を搬送する搬送装置181が設けられている場合(
図17参照)、搬送装置181は移動許可を受信するまで配送物保持エリア131に配送物190を保持させる。
【0100】
出力部114は、統合運行管理部113によって中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満であると判定された場合には、飛行体120及び搬送装置181の内の少なくとも一方に対して、配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132への配送物190の移動許可を出力する。
【0101】
例えば、中継方式が空中待機方式または着陸待機方式である場合(
図14~
図16参照)、出力部114は、飛行体120に対して、配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132への飛行体120による配送物190の移動許可を出力する。これにより、飛行体120によって配送物190を配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132に移動させ、他配送手段140に渡すことができる。この構成によれば、搬送装置181を中継ポート130に設置する必要がないので、配送システム10の初期費用を抑えることができる。また、搬送装置181を設置するスペースを確保する必要がないため、中継ポート130の設置自由度を高めることができる。
【0102】
中継方式が着荷帰還方式であって、配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132へ配送物190を搬送する搬送装置181が、中継ポート130に設けられている場合(
図17参照)、出力部114は、搬送装置181に対して、配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132への搬送装置181による配送物190の移動許可を出力する。これにより、搬送装置181によって配送物190を配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132に移動させ、他配送手段140に渡すことができる。この構成によれば、飛行体120を中継ポート130に待機させる必要がない。つまり、飛行体120を配送拠点109に帰還させて、別の配送に利用することができる。その結果、配送システム10による配送効率の向上を図ることができる。
【0103】
(4)配送物保持エリア131が空中に設定されている中継方式(空中待機方式)では、中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0以上である場合には、配送物190を保持する飛行体120が、空中の配送物保持エリア131で待機している。出力部114は、統合運行管理部113によって中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満であると判定された場合には、空中の配送物保持エリア131で配送物190を保持した状態で待機している飛行体120に対して、配送物保持エリア131から配送物受渡エリア132への飛行体120による配送物190の移動許可を出力する。この構成では、中継ポート130に柵、壁などの侵入防止構造体182の設置を省略できる。その結果、配送システム10の初期費用を抑えることができる。また、この構成では、店舗の屋上などを借りる必要がない。さらに、侵入防止構造体182を設置するスペースを確保する必要もない。このため、中継ポート130の設置自由度を高めることができる。
【0104】
(5)受付部111は、他配送手段140の位置を受け付ける(
図13のS187)。統合運行管理部113は、他配送手段140の位置と中継ポート130の位置とに基づいて、中継ポート130から他配送手段140までの距離D1を演算する。この構成では、演算した距離D1が所定距離D0未満になった場合に、飛行体120、搬送装置181、及び他配送手段140に移動許可が出力される。例えば、飛行体120または搬送装置181が移動許可としての動作指令を受信することにより、配送物190を移動させて受け渡しの準備を進めることができる。また、中継ポート130から所定距離D0未満に存在する一つ以上の他配送手段140が、移動許可としての通知を受信する。これにより、一つ以上の他配送手段140は、複数の中継ポート130のうち、受け渡し準備が進められている、あるいは受け渡し準備が完了している中継ポート130を把握することができる。その結果、配送システム10による配送効率の向上を図ることができる。
【0105】
(6)
図18に示すように、ある中継ポート130には、配送物保持エリア131への進入路の開放と遮断を行うゲート183と、他配送手段140を近距離で認証するための近距離認証装置184と、が設けられている。統合運行管理部113は、近距離認証装置184によって他配送手段140が認証された場合に、中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満であると判定する。出力部114は、近距離認証装置184によって他配送手段140が認証されていない場合には、ゲート183の開放指示を出力せずに進入路をゲート183で遮断した状態を維持する。出力部114は、近距離認証装置184によって他配送手段140が認証された場合には、ゲート183に対してゲート183の開放指示を出力するとともに、他配送手段140に対して配送物保持エリア131からの他配送手段140による配送物190の移動許可を出力する。この構成では、中継方式として着荷帰還方式を採用することができる。このため、飛行体120は、荷下ろしを完了次第、配送拠点109に帰還することができる。配送拠点109に帰還した飛行体120は、別の配送に利用することができるので、配送システム10による配送効率を向上することができる。
【0106】
(7)配送計画作成部112は、飛行体120の仕様と配送物190の属性に含まれる重量161dとに基づいて飛行体120が配送物190を保持した状態で飛行可能な限界時間である飛行保持可能限界時間t1を演算する。配送計画作成部112は、配送物190の属性に含まれる種別161jに基づいて、配送物190の品質を維持するための許容時間である品質保持許容時間t2を演算する。配送計画作成部112は、飛行保持可能限界時間t1と品質保持許容時間t2とに基づいて、配送計画を作成する。例えば、配送計画作成部112は、飛行保持可能限界時間t1と品質保持許容時間t2の内で小さい方を配送物保持時間t3として決定し、配送物保持時間t3と配送希望日時(最終受取時刻)161b等に基づいて、飛行体120の出発時刻を演算する。この構成によれば、飛行体120による配送物190の輸送及び配送拠点109への帰還を適切に行うことができるとともに、配送物190の品質の劣化を防止することができる。
【0107】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0108】
<変形例1>
上記実施形態では、飛行体120が配送物190を届け、飛行体120とは異なる他配送手段140が配送物190を受け取るために設けられた中継ポート130を運用する中継ポート運用方法が、中継ポート運用装置100の制御装置110及び通信装置103によって実現される例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。上述した中継ポート運用装置100により実行される処理の一部を、配送を管理する管理人が、表示装置104に表示される情報を参照しながら、入力装置105を操作して中継ポート運用装置100に所定の情報を入力することで実現してもよい。例えば、管理人が、入力装置105を操作して、配送計画の一部を修正してもよい。少なくとも、中継ポート運用方法は、配送物190の属性及び配送物190の最終受取時刻の内の少なくとも一方を入力情報として受け付ける受付工程(
図12のS110)と、受け付けた入力情報を用いて、中継ポート130を介した飛行体120と他配送手段140が連携する配送計画を作成する配送計画作成工程(
図12のS115)と、作成した配送計画に基づいて、飛行体120及び他配送手段140の運行を管理する運行管理工程(
図12のS125~S145)と、中継ポート130から他配送手段140までの距離D1が所定距離D0未満となった場合に、飛行体120及び他配送手段140の内の少なくとも一方に対して、配送物190の移動許可を出力する出力工程(
図12のS193)と、を含んでいればよい。これにより、中継ポート130を介して、安全に配送物190を配送することができる。
【0109】
<変形例2>
上記実施形態において、配送計画作成部112は、飛行可能時間の特性データ162dを用いて、飛行可能時間を演算する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、飛行可能時間は、以下のように演算してもよい。
【0110】
配送計画作成部112は、配送拠点109と中継ポート130とを結ぶ経路174の経路長と、飛行体120の標準速度162eと、配送物190の重量161dと、経路174上の風況ベクトル164dとに基づいて、配送拠点109から中継ポート130までの移動に要する往路移動時間と、往路での飛行体120のバッテリ消費量を演算する。また、配送計画作成部112は、配送拠点109と中継ポート130とを結ぶ経路174の経路長と、飛行体120の標準速度162eと、経路174上の風況ベクトル164dとに基づいて、中継ポート130から配送拠点109までの移動に要する復路移動時間と、復路での飛行体120のバッテリ消費量を演算する。
【0111】
配送計画作成部112は、往路でのバッテリ消費量と、復路でのバッテリ消費量と、バッテリの満充電容量とに基づいて、中継ポート130でのホバリングに使用可能なバッテリ容量を演算する。配送計画作成部112は、演算したバッテリ容量と、配送物190の重量とに基づき、ホバリングが可能な時間(以下、ホバリング可能時間と記す)を演算する。配送計画作成部112は、往路移動時間、復路移動時間、及びホバリング可能時間の総和を飛行可能時間として演算する。
【0112】
<変形例3>
上記実施形態では、配送物190の属性及び配送物190の最終受取時刻の双方を用いて、配送計画が作成される例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。配送計画作成部112は、配送物190の属性及び配送物190の最終受取時刻の内の少なくとも一方を用いて配送計画を作成してもよい。
【0113】
<変形例4>
中継ポート130の構成、及び、中継ポート130での飛行体120から他配送手段140への中継方式の種類、他配送手段140の位置検出方法の組み合わせは、上記実施形態で説明したものに限定されない。例えば、
図19に示すように、着陸待機方式において、他配送手段140の位置の検出を近距離認証装置184で行ってもよい。図示しないが、空中待機方式において、他配送手段140の位置の検出を近距離認証装置184で行ってもよい。
【0114】
<変形例5>
図19に示す例では、近距離認証装置184が中継ポート130に常設されている。しかしながら、近距離認証装置184は、中継ポート130に常設される形態に限定されない。例えば、近距離認証装置184は飛行体120が備えていてもよい。この場合、中継ポート184への近距離認証装置184の設置を省略することができるので、中継ポート130の設備費用を抑えることができる。
【0115】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0116】
10…配送システム、30…中継ポート、100…中継ポート運用装置、101…処理装置、102…記憶装置、103…通信装置、104…表示装置、105…入力装置、109…配送拠点、110…制御装置、111…受付部、112…配送計画作成部、113…統合運行管理部、114…出力部、120…飛行体、130…中継ポート、131…配送物保持エリア、132…配送物受渡エリア、140…他配送手段、141…配送車両、142…情報端末、143a…表示装置、143b…入力装置、144a…地図表示画面、144b…中継点状態表示画面、149…ユーザ、150…配送先、151…ユーザインターフェイス、160…データサーバ、161…配送物属性データベース、161a…配送物識別情報、161b…配送希望日時(最終受取時刻)、161c…配送先(位置)、161d…重量、161e…サイズ、161f…耐衝撃値、161g…天候耐性・温度情報、161h…親展情報、161j…種別、162…飛行体データベース、162a…飛行体識別情報、162b…最大可搬サイズ、162c…最大可搬重量、162d…特性データ、162e…標準速度、163…中継点データベース、163a…中継点識別情報、163b…風況情報、163c…降水量、163d…降雪量、163e…気温、163f…規制情報、163g…セキュリティ情報、163h…充電設備情報、163i…位置検出手段、164…空間情報データベース、164a…空間識別情報、164b…障害物情報、164c…無線状況情報、164d…風況ベクトル、164e…降水量、164f…降雪量、164g…気温、164h…規制情報、174…経路、180…環境センサ、181…搬送装置、182…侵入防止構造体、183…ゲート、184…近距離認証装置、190…配送物、D0…所定距離(距離閾値)、D1…中継ポートから他配送手段までの距離、t0…時間閾値、t1…飛行保持可能限界時間、t2…品質保持許容時間、t3…配送物保持時間、t4…経過時間、t5…残り時間