(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179150
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】蛍光X線分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/223 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G01N23/223
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097750
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】今林 洋一
(72)【発明者】
【氏名】原 真也
(72)【発明者】
【氏名】堂井 真
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001CA01
2G001EA01
2G001EA03
2G001FA10
2G001FA30
2G001GA01
2G001GA13
2G001HA05
2G001KA01
(57)【要約】
【課題】数え落とし補正を行う定量手段により試料の定量分析を行う蛍光X線分析装置において、計数精度に数え落とし補正の揺らぎを適切に反映させる装置を提供する。
【解決手段】定量手段が、計数精度として、補正前積分強度および補正前微分強度に基づいて式(1)により補正後微分強度の理論標準偏差を計算して表示する。
σ
W(I
t0,I
W0)=((∂I
W/∂I
t0)
2・σ
It0
2+(∂I
W/∂I
W0)
2・σ
IW0
2)
1/2 …(1)
σ
W:補正後微分強度の理論標準偏差,I
t0:補正前積分強度,I
W0:補正前微分強度,I
W:補正後微分強度,σ
It0:補正前積分強度の理論標準偏差,σ
IW0:補正前微分強度の理論標準偏差
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管から試料に1次X線を照射し、発生する蛍光X線の強度に基づいて、数え落とし補正を行う定量手段により、前記試料の定量分析を行う蛍光X線分析装置であって、
前記定量手段が、次式(1)を用いて補正後微分強度の理論標準偏差を計算して表示器に表示する蛍光X線分析装置。
σW(It0,IW0)=((∂IW/∂It0)2・σIt0
2+(∂IW/∂IW0)2・σIW0
2)1/2 …(1)
ここで、式中の各記号および各項については左から順に以下のとおり。
σW:補正後微分強度の理論標準偏差
It0:補正前積分強度
IW0:補正前微分強度
IW:補正後微分強度
(∂IW/∂It0):It0に対するIWの偏微分係数
(∂IW/∂It0)=((IW・τd)/(1-IW・τW))・(∂It/∂It0)=((IW・τd)/(1-IW・τW))・((It/It0)/(1-It・τd))
τd:積分強度についての数え落とし補正係数
τW:微分強度についての数え落とし補正係数
It:補正後積分強度
σIt0:補正前積分強度の理論標準偏差
(∂IW/∂IW0):IW0に対するIWの偏微分係数
(∂IW/∂IW0)=(IW/IW0)/(1-IW・τW)
σIW0:補正前微分強度の理論標準偏差
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光X線分析装置において、
前記定量手段が、
あらかじめ求められた補正前積分強度と補正前微分強度との関係に基づいて、補正後微分強度に対する補正後微分強度の理論標準偏差の比である変動係数について、その変動係数が極小となる補正後微分強度を最適補正後微分強度として求め、
前記X線管の管電流値が補正後微分強度に比例するとの仮定のもとに、変動係数が極小となる最適管電流値を最適補正後微分強度から求めて表示器に表示する蛍光X線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に1次X線を照射し、発生する蛍光X線の強度に基づいて、数え落とし補正を行う定量手段により、試料の定量分析を行う蛍光X線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蛍光X線分析においては、高計数率で、つまり高強度の蛍光X線でX線の数え落としが目立ってくるため、数え落とし補正が行われる。数え落とし補正を行う場合の計数精度の推定値としては、数え落とし補正後の強度I(kcps)の統計誤差から計算した理論標準偏差σ、つまり、数え落とし補正後の強度I(kcps)および測定時間T(秒)からσ=(I/1000T)1/2と計算した理論標準偏差σが用いられる。
【0003】
また、別の手法として、特許文献1に記載の蛍光X線分析装置では、数え落としが発生する場合にも、適切な計数時間と分析精度での測定を行うために、計数精度(数え落とし補正後の強度の理論標準偏差)を、数え落とし補正を行う前の強度である補正前強度の計数精度と、その補正前強度に対する補正後強度の勾配との積として推定することにより、数え落としの影響を計数精度に反映させている(段落0034-0035等参照)。なお、蛍光X線の強度には、分析線(分析対象の蛍光X線)のピークを含む所定の波高範囲の累積強度である微分強度と、検出器に入射する全波高範囲の累積強度である積分強度とがあるが、特許文献1に記載の蛍光X線分析装置では、段落0032における式(6)から理解されるように、積分強度を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの従来技術による計数精度の推定では、数え落とし補正の揺らぎが考慮されていないため、蛍光X線が高強度になるほど推定される計数精度が高く(数値としては小さく、良好に)なってしまい、その結果、高強度の測定では、実際の繰り返し精度よりもかなり高い計数精度が推定されてしまうことが判明した。これでは、適切な計数精度での定量分析ができない。
【0006】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、数え落とし補正を行う定量手段により試料の定量分析を行う蛍光X線分析装置において、数え落とし補正の揺らぎを適切に反映させた計数精度を計算して表示できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、X線管から試料に1次X線を照射し、発生する蛍光X線の強度に基づいて、数え落とし補正を行う定量手段により、前記試料の定量分析を行う蛍光X線分析装置であって、前記定量手段が、次式(1)を用いて補正後微分強度の理論標準偏差を計算して表示器に表示する。
【0008】
σW(It0,IW0)=((∂IW/∂It0)2・σIt0
2+(∂IW/∂IW0)2・σIW0
2)1/2 …(1)
ここで、式中の各記号および各項については左から順に以下のとおり。
σW:補正後微分強度の理論標準偏差
It0:補正前積分強度(kcps)
IW0:補正前微分強度(kcps)
IW:補正後微分強度(kcps)
(∂IW/∂It0):It0に対するIWの偏微分係数
(∂IW/∂It0)=((IW・τd)/(1-IW・τW))・(∂It/∂It0)=((IW・τd)/(1-IW・τW))・((It/It0)/(1-It・τd))
τd:積分強度についての数え落とし補正係数
τW:微分強度についての数え落とし補正係数
It:補正後積分強度(kcps)
σIt0:補正前積分強度の理論標準偏差
σIt0=(It0/1000T)1/2
T:測定時間(秒)
(∂IW/∂IW0):IW0に対するIWの偏微分係数
(∂IW/∂IW0)=(IW/IW0)/(1-IW・τW)
σIW0:補正前微分強度の理論標準偏差
σIW0=(IW0/1000T)1/2
上記σIt0,σIW0の具体的数式はIt0,IW0の揺らぎの分布としてPoisson分布を仮定した一例であり、数え落としなどの補正項を含む数式や別の確率分布を用いてもよい。
【0009】
本発明の蛍光X線分析装置によれば、定量手段が、計数精度として、補正前積分強度および補正前微分強度に基づいて式(1)により補正後微分強度の理論標準偏差を計算して表示するので、計数精度に数え落とし補正の揺らぎを適切に反映させることができる。したがって、適切な計数精度での定量分析が容易にできる。
【0010】
本発明の蛍光X線分析装置においては、前記定量手段が、あらかじめ求められた補正前積分強度と補正前微分強度との関係に基づいて、補正後微分強度に対する補正後微分強度の理論標準偏差の比である変動係数について、その変動係数が極小となる補正後微分強度を最適補正後微分強度として求め、前記X線管の管電流値が補正後微分強度に比例するとの仮定のもとに、変動係数が極小となる最適管電流値を最適補正後微分強度から求めて表示器に表示してもよい。この場合には、補正後微分強度に対する補正後微分強度の理論標準偏差の比である変動係数が極小となる最適管電流値が表示されるので、適切な計数精度での定量分析がいっそう容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の蛍光X線分析装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態の蛍光X線分析装置について説明する。
図1に示すように、本実施形態の蛍光X線分析装置は、試料1,14(未知試料1と標準試料14の双方を含む)に1次X線3を照射して発生する2次X線5の強度を測定する走査型の蛍光X線分析装置であって、試料1,14が載置される試料台2と、試料1,14に1次X線3を照射するX線管4と、試料1,14から発生する蛍光X線などの2次X線5を分光する分光素子6と、その分光素子6で分光された2次X線7が入射され、その強度を検出する検出器8とを備えている。検出器8の出力は、図示しない増幅器、波高分析器、計数手段などを経て、装置全体を制御するコンピューターなどの制御手段11に入力される。
【0013】
本実施形態の蛍光X線分析装置は、波長分散型でかつ走査型の蛍光X線分析装置であり、検出器8に入射する2次X線7の波長が変化するように、分光素子6と検出器8を連動させる連動手段10、すなわちいわゆるゴニオメーターを備えている。2次X線5がある入射角θで分光素子6へ入射すると、その2次X線5の延長線9と分光素子6で分光(回折)された2次X線7は入射角θの2倍の分光角2θをなすが、連動手段10は、分光角2θを変化させて分光される2次X線7の波長を変化させつつ、その分光された2次X線7が検出器8に入射するように、分光素子6を、その表面の中心を通る紙面に垂直な軸Oを中心に回転させ、その回転角の2倍だけ、検出器8を、軸Oを中心に円12に沿って回転させる。分光角2θの値(2θ角度)は、連動手段10から制御手段11に入力される。なお、本発明においては、蛍光X線分析装置は、波長分散型でかつ多元素同時分析型の蛍光X線分析装置でもよいし、エネルギー分散型の蛍光X線分析装置でもよい。
【0014】
本実施形態の蛍光X線分析装置は、制御手段11に搭載されるプログラムとして定量手段13を備えており、蛍光X線5の測定強度に基づいて、数え落とし補正を行う定量手段13により、試料1,14の定量分析を行う。定量手段13は、次式(1)を用いて補正後微分強度の理論標準偏差σW(It0,IW0)を計算して、制御手段11に接続された液晶ディスプレイ等の表示器15に表示する。
【0015】
σW(It0,IW0)=((∂IW/∂It0)2・σIt0
2+(∂IW/∂IW0)2・σIW0
2)1/2 …(1)
ここで、式中の各記号および各項については左から順に以下のとおり。
σW:補正後微分強度の理論標準偏差
It0:補正前積分強度(kcps)
IW0:補正前微分強度(kcps)
IW:補正後微分強度(kcps)
(∂IW/∂It0):It0に対するIWの偏微分係数
(∂IW/∂It0)=((IW・τd)/(1-IW・τW))・(∂It/∂It0)=((IW・τd)/(1-IW・τW))・((It/It0)/(1-It・τd))
τd:積分強度についての数え落とし補正係数
τW:微分強度についての数え落とし補正係数
It:補正後積分強度(kcps)
σIt0:補正前積分強度の理論標準偏差
σIt0=(It0/1000T)1/2
T:測定時間(秒)
(∂IW/∂IW0):IW0に対するIWの偏微分係数
(∂IW/∂IW0)=(IW/IW0)/(1-IW・τW)
σIW0:補正前微分強度の理論標準偏差
σIW0=(IW0/1000T)1/2
上記σIt0,σIW0の具体的数式はIt0,IW0の揺らぎの分布としてPoisson分布を仮定した一例である。
【0016】
式(1)に関する数値のうち、補正前積分強度It0および補正前微分強度IW0は、従来の装置と同様に、測定により取得され、積分強度についての数え落とし補正係数τd、微分強度についての数え落とし補正係数τW、測定時間Tも、従来の装置と同様に、分析線、用いる検出器、検出する波高範囲PHA等とともに、測定条件として制御手段11に入力されることにより、取得される。
【0017】
数え落とし補正については、種々の補正式が知られているが、拡張死時間モデル(窒息型)に基づく次式(2),(3)を用いている。
【0018】
It=It0exp(It・τd) …(2)
IW=IW0exp(It・τd)exp(IW・τW) …(3)
【0019】
式(2)により得られる補正後積分強度Itを補正前積分強度It0で偏微分した式、式(3)により得られる補正後微分強度IWを補正前微分強度IW0で偏微分した式、および、式(3)により得られる補正後微分強度IWを補正前積分強度It0で偏微分した式から、上記の、IW0に対するIWの偏微分係数(∂IW/∂IW0)、および、It0に対するIWの偏微分係数(∂IW/∂It0)が求められる。
【0020】
さて、一般に定量分析には補正後微分強度IWが用いられるところ、式(1)では、補正前積分強度It0と補正前微分強度IW0は独立と仮定し、補正前積分強度の理論標準偏差σIt0と、補正前積分強度It0に対する補正後微分強度IWの偏微分係数つまり勾配(∂IW/∂It0)との積を求めるとともに、補正前微分強度の理論標準偏差σIW0と、補正前微分強度IW0に対する補正後微分強度IWの偏微分係数つまり勾配(∂IW/∂IW0)との積を求め、両者の二乗平均平方根として、補正後微分強度の理論標準偏差σW(It0,IW0)を計算している。本発明の蛍光X線分析装置では、この補正後微分強度の理論標準偏差σW(It0,IW0)を計数精度として表示するので、計数精度に数え落とし補正の揺らぎを適切に反映させることができる。したがって、適切な計数精度での定量分析が容易にできる。
【0021】
本発明の効果に関し、以下のような検証を行った。Si-Kα線(1.74keV)について、PC検出器を用い、波高範囲PHAを100-300とし、測定時間T=20(秒)、積分強度についての数え落とし補正係数τd=1.42×10-7、微分強度についての数え落とし補正係数τW=1.03×10-7という測定条件で、実際に20回の繰り返し測定を行って、補正後微分強度IWの標準偏差0.374を得た。補正後微分強度IWの平均値は、1207.44(kcps)であった。ここで、補正後微分強度IWの統計誤差から計算する従来の理論標準偏差は、(1207.44/(1000×20))1/2=0.246であり、実際の繰り返し測定による標準偏差0.374より34%も小さい(高精度の、良好な)数値が推定されてしまう。
【0022】
これに対し、本発明の蛍光X線分析装置では、補正前積分強度It0の平均値:1052.94(kcps)、補正前微分強度IW0の平均値:891.68(kcps)、補正前積分強度の理論標準偏差σIt0=(It0/1000T)1/2=0.229、補正前微分強度の理論標準偏差σIW0=(IW0/1000T)1/2=0.211、IW0に対するIWの偏微分係数(∂IW/∂IW0)=(IW/IW0)/(1-IW・τW)=1.5464、It0に対するIWの偏微分係数(∂IW/∂It0)=((IW・τd)/(1-IW・τW))・((It/It0)/(1-It・τd))=0.2851を用いて、式(1)から、実際の繰り返しによる補正後微分強度IWの標準偏差0.374に十分に近い(11%だけ小さい)、補正後微分強度の理論標準偏差σW=0.333が推定される。このように、本発明の蛍光X線分析装置によれば、計数精度としての補正後微分強度の理論標準偏差σW(It0,IW0)に数え落とし補正の揺らぎを適切に反映させることができる。
【0023】
さて、本願発明者は、数え落とし補正の揺らぎについて検討する過程で、補正後微分強度IWに対する補正後微分強度の理論標準偏差σWの比である変動係数C.V.について、高強度において単調減少ではなく極小値が存在することを見出した。そこで、本実施形態の蛍光X線分析装置においては、さらに、定量手段13が、あらかじめ求められた補正前積分強度It0と補正前微分強度IW0との関係に基づいて、補正後微分強度IWに対する補正後微分強度の理論標準偏差σWの比である変動係数C.V.について、その変動係数が極小となる補正後微分強度を最適補正後微分強度IW
optとして求め、X線管4の管電流値Cが補正後微分強度IWに比例するとの仮定のもとに、変動係数C.V.が極小となる最適管電流値Coptを最適補正後微分強度IW
optから求めて表示器15に表示する。
【0024】
この動作は、より具体的には、以下のように行われる。まず、補正前積分強度It0と補正前微分強度IW0との関係が、分析線、用いる検出器、検出する波高範囲PHA等の測定条件に応じて、あらかじめ求められ、It0に対するIW0のフィッティング関数の係数が、定量手段13に格納される。また、従来の装置と同様に、測定条件決定のための予備測定により、測定時の管電流値Cmesおよび分析線の補正後微分強度IW
mesが取得される。積分強度についての数え落とし補正係数τd、微分強度についての数え落とし補正係数τWも、前述したように、従来の装置と同様に、測定条件として制御手段11に入力されることにより、取得される。
【0025】
以上の準備の後、変数としての補正前積分強度It0から、前式(2)により補正後積分強度Itを求めるとともに、上述のあらかじめ求められた補正前積分強度It0と補正前微分強度IW0との関係により補正前微分強度IW0を求める。次に、補正前微分強度IW0、補正後積分強度Itから、前式(3)により補正後微分強度IWを求め、さらに、その補正後微分強度IWを用いて前式(1)により変動係数C.V.(IW)=σW(It0,IW0)/IWを求める。この変動係数C.V.(IW)は、分析線、用いる検出器、検出する波高範囲PHA等の測定条件に応じて求められる。
【0026】
そして、回帰計算により、変動係数C.V.(IW)が極小となる補正後微分強度を最適補正後微分強度IW
optとして求める。さらに、X線管4の管電流値Cが補正後微分強度IWに比例するとの仮定のもとに、変動係数C.V.が極小となる最適管電流値Coptを、最適補正後微分強度IW
optから、Copt=Cmes×(IW
opt/IW
mes)として求めて表示器15に表示する。この場合には、補正後微分強度IWに対する補正後微分強度の理論標準偏差σW(It0,IW0)の比である変動係数C.V.(IW)が極小となる最適管電流値Coptが表示されるので、適切な計数精度での定量分析がいっそう容易にできる。
【0027】
なお、管電流値Cを設定可能範囲で低下させるだけでは最適補正後微分強度I
W
optが得られない場合には、
図1に示すように、蛍光X線5の光路に、絞り孔を有するアッテネータ16を進退機構17により進出させることにより、検出器8に入射する蛍光X線7を減衰させる。管電流値Cの制御に所定の減衰率をもつアッテネータ16を併用することは公知技術であり、アッテネータ16を用いる場合には、定量手段13は、アッテネータ16の所定の減衰率で減衰された補正後微分強度I
Wについて、変動係数C.V.が極小となる最適補正後微分強度I
W
optを求め、その最適補正後微分強度I
W
optから変動係数C.V.が極小となる最適管電流値C
optを求めて、アッテネータ16追加の旨とともに表示器15に表示する。
【符号の説明】
【0028】
1 未知試料
3 1次X線
4 X線管
5 蛍光X線
13 定量手段
14 標準試料
15 表示器