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  • 特開-バケットホイル回転駆動装置 図1
  • 特開-バケットホイル回転駆動装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179152
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】バケットホイル回転駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 65/20 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B65G65/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097754
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005924
【氏名又は名称】株式会社三井三池製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 晃
(57)【要約】
【課題】バケットホイルの回転駆動装置について、製造コストの高騰や配置スペースの過剰な拡大を伴うことなく通常運転と低速運転の間で切替え可能とする。
【解決手段】バケットホイル10を備えたリクレーマ又はエクスカベータに配設され、バケットホイル10の回転駆動手段である電動機と、その回転駆動力をバケットホイル10に伝達する動力伝達手段と、を備え、バケットホイル10を回転駆動させるバケットホイル回転駆動装置1において、前記回転駆動手段は通常運転用のメイン電動機2と低速運転用のサブ電動機5とを備えており、バケットホイル10の回転駆動における通常運転とそれよりも低速の運転との間で駆動源の切替えを可能なものとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケットホイルを備えたリクレーマ又はエクスカベータに配設され、前記バケットホイルの回転駆動手段である電動機と、前記電動機の回転駆動力を前記バケットホイルに伝達する動力伝達手段と、を備え、ブームの先端側で前記バケットホイルを回転駆動させるバケットホイル回転駆動装置において、
前記回転駆動手段は、通常運転用のメイン電動機に加えて低速運転用のサブ電動機を備え、
前記動力伝達手段は、前記メイン電動機の回転駆動力を前記バケットホイルに伝達する動力伝達経路の途中で前記サブ電動機の回転駆動力を伝達する動力伝達経路が接続されて、前記サブ電動機のみを駆動源とした前記バケットホイルの回転駆動が可能とされており、
前記バケットホイルの回転駆動における通常運転とそれよりも低速の運転との間で前記駆動源の切替えが可能とされている、ことを特徴とするバケットホイル回転駆動装置。
【請求項2】
前記動力伝達手段は、前記メイン電動機の動力伝達経路の途中で前記サブ電動機の動力伝達経路が接続する部分の手前側に、流体継手が配設されていることを特徴とする請求項1記載のバケットホイル回転駆動装置。
【請求項3】
前記動力伝達手段は、前記サブ電動機の動力伝達経路の途中で前記メイン電動機の動力伝達経路に接続する部分の手前側に、動力伝達の接続・分断を行うための電磁クラッチが配設されていることを特徴とする請求項2記載のバケットホイル回転駆動装置。
【請求項4】
前記サブ電動機の動力伝達経路が前記メイン電動機の動力伝達経路に接続される部分は、ベベルギアによる直角方向の接続とされていることを特徴とする請求項1,2または3記載のバケットホイル回転駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケットホイルを回転駆動させる装置に関し、リクレーマ等の機器におけるバケットホイルの駆動を、通常運転から低速運転に切替えることが可能なバケットホイル回転駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭や鉱石等の貯鉱場で積付山から貯蔵物を払い出す機器であるリクレーマ(回収機)や、採掘場で鉱石等を掘削する機器であるエクスカベータ(掘削機)には、旋回及び俯仰動作可能なブームの先端側で回転駆動しながらホイル外周に設けた複数個のバケットで鉱石等を掬ったり削り取ったりするバケットホイルが設けられており、バケットで掬われた鉱石等のバラ物は、ブームに設けられたブームコンベアで連続的に搬出されるようになっている。
【0003】
このような鉱石等の回収・掘削機能を有したバケットホイルの清掃作業を行う際には、その回転速度を通常運転時と比べて大幅に低下させて行う必要があるところ、バケットホイルとそれを回転駆動させる電動機との間の動力伝達経路には、保護手段として流体継手が介装されているのが通常であり、その流体継手においては、予め設定された通常運転用の条件よりも回転速度を落として低速運転を実施することに制限がある。
【0004】
これに対し、本願発明者・出願時らは、先行して出願した特許出願(特開2011-020819号公報,特許文献1)において、電動機からバケットホイルに繋がる動力伝達経路の途中に保護手段としての湿式クラッチを配設するとともにインバータ制御による電動機を配設したことで、バケットホイルの過負荷に対する安全性を確保しながらバケットホイルの回転速度を調整可能として、バケットホイル洗浄等の必要時に低速運転を行えるようにしたリクレーマを提案している。
【0005】
しかし、リクレーマやエクスカベータ等のバケットホイル回転駆動装置において、保護手段として流体継手の代わりに湿式クラッチを配設すること及び回転速度調整手段としてインバータ制御の電動機を設ける場合には、その製造コストの高騰に繋がりやすくなるとともに、インバータ制御を行うための制御盤を追加する際に電気室を拡張させるスペースを確保することが必要になってしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-020819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、バケットホイルの回転駆動装置について、製造コストの高騰や配置スペースの過剰な拡大を伴うことなく、通常運転と低速運転との間で切替えられるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明は、バケットホイルを備えたリクレーマ又はエクスカベータに配設され、バケットホイルの回転駆動手段である電動機と、前記電動機の回転駆動力をバケットホイルに伝達する動力伝達手段と、を備え、ブームの先端側でバケットホイルを回転駆動させるバケットホイル回転駆動装置において、前記回転駆動手段は、通常運転用のメイン電動機に加えて低速運転用のサブ電動機を備え、前記動力伝達手段は、メイン電動機の回転駆動力をバケットホイルに伝達する動力伝達経路の途中でサブ電動機の回転駆動力を伝達する動力伝達経路が接続されて、サブ電動機のみを駆動源としたバケットホイルの回転駆動が可能とされており、バケットホイルの回転駆動における通常運転とそれよりも低速の運転との間で駆動源の切替えが可能とされている、ことを特徴とする。
【0009】
このように、バケットホイルにおける駆動源であるメイン電動機とは別個に、低速運転用のサブ電動機を設けて2つの駆動源を切替えられるようにしたことで、インバータ電動機を使用することなく通常運転よりも回転速度の低い低速運転を実施可能となるため、製造コストの高騰や配置スペースの過剰な拡大を伴うことなく、通常運転と低速運転との間で切替えられるものとなる。
【0010】
本発明において、前記動力伝達手段は、メイン電動機の動力伝達経路の途中でサブ電動機の動力伝達経路が接続する部分の手前側に、流体継手が配設されている場合、前記流体継手がバケットホイルの過負荷に対する安全装置として機能することに加え、サブ電動機による低速運転時に駆動停止中のメイン電動機が負荷になりにくいものとなる。
【0011】
更に、前記動力伝達手段は、前記サブ電動機の動力伝達経路の途中で前記メイン電動機の動力伝達経路に接続する部分の手前側に、動力伝達の接続・分断を行うための電磁クラッチが配設されている場合、コストの高騰を招くことなく、切替え操作が可能になるとともにサブ電動機側の安全装置として機能するものとなる。
【0012】
本発明において、サブ電動機の動力伝達経路がメイン電動機の動力伝達経路に接続される部分が、ベベルギアによる直角方向の接続とされている場合、動力伝達経路の構成を複雑にすることなく、サブ電動機の回転駆動力をバケットホイルに対しスムースに伝達可能なものとなる。
【発明の効果】
【0013】
バケットホイルの駆動源であるメイン電動機とは別個に低速運転用のサブ電動機を設けた本発明によると、製造コストの高騰や配置スペースの過剰な拡大を伴うことなく、通常運転と低速運転の間で切替え可能なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明における実施の形態であるバケットホイル回転駆動装置の側面図。
図2図1のバケットホイル回転駆動装置における機能的な構成を説明するための簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態であるバケットホイル回転駆動装置1を側面図で示しており、そのうち一部は断面表示している。図2図1のバケットホイル回転駆動装置1における機能的な構成を説明するために簡略図で示している。
【0017】
バケットホイル回転駆動装置1は、鉱石や石炭等のバラ物を貯蔵する貯鉱場等で積付山から貯蔵物を払い出すための機器であるリクレーマのブーム先端側において、図2に示すようにバケットホイル10の回転軸線上に配置されて、バケットホイル10をモータ駆動で回転させるための装置である。
【0018】
即ち、このバケットホイル回転駆動装置1は、バケットホイル10の駆動源であるメイン電動機2と、メイン電動機2の回転駆動力をバケットホイル10の中心軸に伝達するための動力伝達手段とを有して、旋回及び俯仰動作可能なブームの先端側にバケットホイル10を備えた図示しないリクレーマに配設される装置であるが、そのリクレーマは、バケットホイル回転駆動装置1でバケットホイル10を回転駆動させることで、ホイル外周に設けたバケットで鉱石等のバラ物を掬い取りながら、それらをブームコンベアで連続的に搬送させるようになっている。
【0019】
そして、本実施の形態のバケットホイル回転駆動装置1においては、バケットホイル10の回転駆動手段として、通常運転用のメイン電動機2に加え、メイン電動機2よりも小型で低速運転に適したギヤードモータ等のサブ電動機5を備えている。また、その動力伝達手段においては、図2に示すように、メイン電動機2の回転駆動力をバケットホイル10に伝達する動力伝達経路の一部を構成しているメインシャフト20の途中位置で、サブ電動機5の回転駆動力を伝達する動力伝達経路が、減速機ボックス40内でベベルギア7により直角方向に接続された構成となっている。
【0020】
そのため、本実施の形態のバケットホイル回転駆動装置1は、メイン電動機2とサブ電動機5との間でバケットホイル10の駆動源を変更することができ、バケットホイル10の回転駆動における通常運転とそれよりも回転速度の遅い低速運転との間の切替え操作が可能とされており、この点が本発明における特に優れた特徴となっている。
【0021】
即ち、上述した従来のバケットホイル回転駆動装置においては、バケットホイルの洗浄作業等に適した低速運転を実施可能とするために、その保護手段(安全装置)及び切替え手段として湿式クラッチを配設するとともに、回転速度調整手段としてインバータ制御の電動機を使用していることから、製造コストの高騰やインバータ制御盤を配置するためのスペースが必要になってしまう、という問題点を有していた。
【0022】
これに対し、本発明においては、上述したようにバケットホイル10の回転駆動を行う駆動源であるメイン電動機2とは別個に、それよりも回転速度の遅い低速運転用の駆動源であるサブ電動機5を追加して設けて、バケットホイル10の駆動源を変更可能なものとしており、高価で余分なスペースを要するインバータ電動機を使用することなく、通常運転と低速運転との間の切替え操作を容易に行えるようにしたものである。
【0023】
また、本実施の形態のバケットホイル回転駆動装置1においては、メイン電動機2の動力伝達経路の途中位置でサブ電動機5の動力伝達経路が接続する部分の手前側に、流体継手3が配設されており、メイン電動機2から延設された回転駆動軸が、流体継手3、チャンカップリング8、遊星減速機4を介して、バケットホイル10の中心軸に接続されている。
【0024】
これにより、バケットホイル10への動力伝達経路中に配設された流体継手3がバケットホイル10の過負荷発生時に安全装置として機能するとともに、サブ電動機5による低速運転の際には、その回転速度の遅さにより、流体継手3を介して接続されている停止中のメイン電動機2が、サブ電動機5の回転駆動力に対する負荷になりにくいものとなる。
【0025】
さらに、本実施の形態においては、サブ電動機5の動力伝達経路の途中でメイン電動機2の動力伝達経路に接続する部分の手前側に、動力伝達の接続・分断を行うための電磁クラッチ6が配設されており、サブ電動機5の回転駆動軸が、クラッチカバー60内部でチェーンカップリング9、電磁クラッチ6、チェーンカップリング9を介して、減速機ボックス40内でベベルギア7により直角方向に接続されている。
【0026】
このように、サブ電動機5の動力伝達経路の途中に比較的安価な電磁クラッチ6を介装したことにより、コストの高騰を招くことなくバケットホイル10の回転速度の切替え操作が確実に実施可能になったことに加え、サブ電動機5側の過負荷時の安全装置としても機能するものとなった。
【0027】
尚、上述した実施の形態におけるバケットホイル回転駆動装置1は、鉱石等のバラ物の回収手段であるリクレーマに配設された場合を説明したが、本発明は採掘場における鉱石等の掘削手段であるエクスカベータに配設した場合であっても、上述の実施の形態と同様の作用・効果が期待できるものである。
【0028】
以上、述べたように、バケットホイルの回転駆動装置について、本発明により製造コストの高騰や配置スペースの過剰な拡大を伴うことなく、通常運転と低速運転との間で切替えられるようになった。
【符号の説明】
【0029】
1 バケットホイル回転駆動装置、2 メイン電動機、3 流体継手、4 遊星減速機、5 サブ電動機、6 電磁クラッチ、7 ベベルギア、8 チャンカップリング、9 チェーンカップリング、10 バケットホイル、20 メインシャフト、40 減速機ボックス
図1
図2