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特開2024-179154分散電源群管理方法、分散電源群管理システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179154
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】分散電源群管理方法、分散電源群管理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20241219BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097760
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 朗
(72)【発明者】
【氏名】具 利晟
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】分散電源の普及に寄与することが可能な分散電源群管理方法等を提供する。
【解決手段】分散電源群管理方法は、それぞれが異なる施設に設置された複数の分散電源それぞれの発電電力量を取得し(S10)、複数の分散電源のそれぞれに対して、当該分散電源を施設に設置したと仮定した場合の所定期間での発電量予測値と、施設に設置された当該分散電源の発電電力量とに基づいて、発電量予測値に基づく金額を超過する超過金額及び金額に対して不足する不足金額の一方を算出し(S30)、複数の分散電源のうち超過金額が発生した1以上の第1分散電源それぞれの超過金額を用いて、複数の分散電源のうち不足金額が発生した1以上の第2分散電源それぞれに対して不足金額に応じた金銭的な補填を行う処理を実行する(S40~S80、S100)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが異なる施設に設置された複数の分散電源それぞれの発電電力量を取得し、
前記複数の分散電源のそれぞれに対して、当該分散電源を前記施設に設置したと仮定した場合の所定期間での発電量予測値と、前記施設に設置された当該分散電源の前記発電電力量とに基づいて、前記発電量予測値に基づく第1金額を超過する超過金額及び前記第1金額に対して不足する不足金額の一方を算出し、
前記複数の分散電源のうち前記超過金額が発生した1以上の第1分散電源それぞれの前記超過金額を用いて、前記複数の分散電源のうち前記不足金額が発生した1以上の第2分散電源それぞれに対して前記不足金額に応じた金銭的な補填を行う処理を実行する
分散電源群管理方法。
【請求項2】
前記複数の分散電源のそれぞれに対して、
当該分散電源の前記発電量予測値に基づく前記発電電力量の超過閾値及び不足閾値を用いて、前記発電電力量の超過量及び不足量の一方を算出し、
当該分散電源において前記超過量が発生する場合、前記超過量に基づいて前記超過金額を算出し、前記不足量が発生する場合、前記不足量に基づいて前記不足金額を算出する
請求項1に記載の分散電源群管理方法。
【請求項3】
前記超過金額及び前記不足金額の一方の算出では、前記複数の分散電源それぞれにおいて、
取得された前記発電電力量を、自家消費する自家消費量と、売電する売電量とに分解し、
分解された前記自家消費量と前記売電量とに互いに異なる料金単価を演算することで、前記超過金額及び前記不足金額の一方を算出する
請求項2に記載の分散電源群管理方法。
【請求項4】
前記第1金額は、当該施設において予め設定された自家消費率に基づく超過金額閾値及び不足金額閾値を含み、
前記超過金額及び前記不足金額の一方の算出では、前記複数の分散電源それぞれにおいて、
当該分散電源が設置された前記施設において自家消費された自家消費量の実績値及び売電された売電量の実績値に基づいて、取得された前記発電電力量を、前記自家消費量と、前記売電量とに分解し、
分解された前記自家消費量と前記売電量とに互いに異なる料金単価を演算した第2金額と、前記超過金額閾値及び前記不足金額閾値の一方とに基づいて、前記超過金額及び前記不足金額の一方を算出する
請求項1に記載の分散電源群管理方法。
【請求項5】
固定価格買取制度の適用期間内であるか否かに応じて、前記売電量に演算する料金単価を異ならせる
請求項3又は4に記載の分散電源群管理方法。
【請求項6】
前記処理の実行では、当該分散電源が設置された前記施設が電力系統から受電した電力量に対する電気料金の請求金額と、当該分散電源の前記超過金額及び前記不足金額の一方とを合算し、
合算された金額が当該施設に請求される
請求項2~4のいずれか1項に記載の分散電源群管理方法。
【請求項7】
前記複数の分散電源のそれぞれは、当該分散電源の前記発電電力量を計測可能に構成されるパワーコンディショナと接続されており、
前記発電電力量の取得では、前記パワーコンディショナが計測した前記発電電力量を取得する
請求項1~4のいずれか1項に記載の分散電源群管理方法。
【請求項8】
前記1以上の第1分散電源それぞれの前記超過金額を前記1以上の第2分散電源それぞれの前記不足金額に補填した後の余剰金額を、前記分散電源群管理方法を実行する分散電源群管理システムを管理する事業者の収益として計算する
請求項1~4のいずれか1項に記載の分散電源群管理方法。
【請求項9】
前記超過閾値と前記不足閾値とは同一の値である
請求項2又は3に記載の分散電源群管理方法。
【請求項10】
それぞれが異なる施設に設置された複数の分散電源それぞれの発電電力量を取得する取得部と、
前記複数の分散電源のそれぞれに対して、当該分散電源を前記施設に設置したと仮定した場合の所定期間での発電量予測値と、前記施設に設置された当該分散電源の前記発電電力量とに基づいて、前記発電量予測値に基づく金額を超過する超過金額及び前記金額に対して不足する不足金額の一方を算出する算出部と、
前記複数の分散電源のうち前記超過金額が発生した1以上の第1分散電源それぞれの前記超過金額を用いて、前記複数の分散電源のうち前記不足金額が発生した1以上の第2分散電源それぞれに対して前記不足金額に応じた金銭的な補填を行う処理を実行する制御部とを備える
分散電源群管理システム。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載の分散電源群管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散電源群管理方法、分散電源群管理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO削減等の地球環境対策の観点から、いわゆる再生可能エネルギーを利用した発電の普及が促進されている。そのような発電の一例として、太陽光発電が挙げられる。例えば、住宅に太陽電池を含む太陽光発電システムを設置すると、電気代の節約にもなる。そこで、特許文献1のように、太陽電池(太陽電池アレイ)を設置する場合の費用対効果を予測する種々の方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-124605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、費用対効果を精度よく予測することはできるものの、太陽電池の故障、汚れなどの発電量減少要因を費用対効果の予測に含めることは困難である。太陽電池は、長期間にわたる投資回収となるので、上記の発電量減少要因等に対する不安感から設備投資に踏み切れないユーザがいるものと考えられる。一方、背景技術でも記載したように、地球環境対策の観点から、太陽電池等の分散電源の普及がより一層進むことが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、分散電源の普及に寄与することが可能な分散電源群管理方法、分散電源群管理システム及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る分散電源群管理方法は、それぞれが異なる施設に設置された複数の分散電源それぞれの発電電力量を取得し、前記複数の分散電源のそれぞれに対して、当該分散電源を前記施設に設置したと仮定した場合の所定期間での発電量予測値と、前記施設に設置された当該分散電源の前記発電電力量とに基づいて、前記発電量予測値に基づく第1金額を超過する超過金額及び前記第1金額に対して不足する不足金額の一方を算出し、前記複数の分散電源のうち前記超過金額が発生した1以上の第1分散電源それぞれの前記超過金額を用いて、前記複数の分散電源のうち前記不足金額が発生した1以上の第2分散電源それぞれに対して前記不足金額に応じた金銭的な補填を行う処理を実行する。
【0007】
本発明の一態様に係る分散電源群管理システムは、それぞれが異なる施設に設置された複数の分散電源それぞれの発電電力量を取得する取得部と、前記複数の分散電源のそれぞれに対して、当該分散電源を前記施設に設置したと仮定した場合の所定期間での発電量予測値と、前記施設に設置された当該分散電源の前記発電電力量とに基づいて、前記発電量予測値に基づく金額を超過する超過金額及び前記金額に対して不足する不足金額の一方を算出する算出部と、前記複数の分散電源のうち前記超過金額が発生した1以上の第1分散電源それぞれの前記超過金額を用いて、前記複数の分散電源のうち前記不足金額が発生した1以上の第2分散電源それぞれに対して前記不足金額に応じた金銭的な補填を行う処理を実行する制御部とを備える。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、上記の分散電源群管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、分散電源の普及に寄与することが可能な分散電源群管理方法等を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る分散電源群管理システムの構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係るサーバの機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態に係る分散電源群管理システムの動作を示すフローチャートである。
図4図4は、実施の形態に係るサーバにおける、発電量予測値に対する下振れリスクを補償しあう方法を説明するための図である。
図5図5は、太陽光発電システムを設置する前の発電量のシミュレーション結果を示す図である。
図6図6は、発電量予測値に対する発電量実測値の比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明に至った経緯)
本発明の説明に先立ち、本発明に至った経緯について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、太陽光発電システムを設置する前の発電量のシミュレーション結果を示す図である。
【0012】
太陽電池を含む太陽光発電システムの発電量は、主に居住地域の日射特性(例えば、日射量)、発電効率値などによって概算が可能であるので、太陽光発電システムを住宅などに設置する場合、設置前に当該太陽光発電システムを当該住宅に設置したと仮定した場合の発電量のシミュレーションがユーザごとに行われる。シミュレーション結果は、ユーザが太陽光発電システムを設置するか否かを検討する上での重要なデータである。図5は、このようなシミュレーション結果の一例であり、ユーザの住宅(施設の一例)に太陽光発電システムを設置したと仮定した場合の所定期間(例えば、1ヶ月、1年など)での発電量予測値(シミュレーション値)を示す。発電量予測値は、太陽光発電システムを当該施設に設置する前に算出(予測)される。
【0013】
なお、太陽光発電システムとは、太陽光エネルギーを受けて太陽電池(太陽電池パネル)が発電した直流電力を、パワーコンディショナにより交流電力に変換し、住宅内の家電機器など(電力需要)に電気を供給するためのシステムである。
【0014】
図5に示すように、発電量のシミュレーションは、太陽光発電システムの容量、日射特性を観測する地点、太陽電池の設置条件(例えば、方位、勾配)などの条件を用いて行われる。発電量は、例えば、月ごとに予測され、年間の発電量予測値(図5に示す年間発電量)、年間の発電金額の予測値(図5に示す年間発電金額)などが算出される。発電金額は、自家消費する自家消費分に応じた金額と、売電する売電分に応じた金額との合計金額として算出される。自家消費する自家消費分に応じた金額は、例えば、当該自家消費した電力量を小売電気事業者から購入した(買電した)場合の金額に相当する。
【0015】
図5の例では、年間発電量のうち自家消費電力量が1500kWh/年であり、自家消費した場合の単価が30.00円/kWhであり、売電した場合の単価が16.00円/kWhとして計算している。例えば、年間発電量及び年間発電金額は、ユーザが太陽光発電システムを設置するか否かを検討する際の重要な数値となり得る。そのため、発電量のシミュレーションは、より正確に行われることが求められ、発電量のシミュレーションの精度を向上させる種々の検討が行われている。
【0016】
一方、太陽光発電システムを設置した後の発電量の実績である発電量実測値と、発電量予測値とは、必ずしも一致しない。予測より日射量が多かった場合、発電量実測値は発電量予測値より大きな値となり、予測より日射量が少なかった場合、発電量実測値は発電量予測値より小さくなる。また、発電量実測値が小さくなる他の発電量減少要因として、例えば、太陽電池の故障、太陽電池の汚れ、隣地への建物建設による日陰の発生、太陽電池への着雪、自家消費の減少、パワーコンディショナに対する出力抑制の増加などが例示される。
【0017】
このように、発電量実測値が発電量予測値より減少する、つまり発電金額(ユーザの収入)がシミュレーション値(年間発電金額)より減少する要因が複数存在する。また、現状、それらを発電量のシミュレーションに含めることは、困難である。なお、ここでの収入とは、太陽光発電システムにおける発電により生じる金銭的な利益(経済的な利益)を意味する。
【0018】
図6は、発電量予測値に対する発電量実測値の比率を示す図である。図6は、ある地域における、月ごとの発電量予測値を基準(100%)とした場合の月ごとの発電量実測値の比率を示す。図6の縦軸は、当該比率を示し、横軸は月を示す。比率が100%であることは、発電量予測値と発電量実測値とが一致していることを意味する。また、図6では、ある地域の多数のユーザの比率の平均値(破線)と、当該多数のうち任意に抽出した3人のユーザの比率(実線)とを図示している。なお、発電量予測値の予測に、地点Bにおいて観測された日射特性が用いられている。
【0019】
図6に示すように、ある地域において、住宅ごとの発電量実測値が発電量予測値に対して大きくズレていることがわかる。なお、発電量実測値が発電量予測値より高くなっているユーザもいれば、発電量実測値が発電量予測値より低くなっているユーザもいる。発電量実測値が発電量予測値より低くなると、ユーザは、シミュレーションでの発電金額(予測収入)を下回る発電金額(実際の収入)しか得ることができない。
【0020】
また、太陽光発電システムは、長期間にわたる投資回収になるため、発電量実測値と発電量予測値とのズレの累積値が大きな値となる可能性がある。また、現状、太陽光発電システムの発電量をメーカが保証するようなことは、なされていない。このように、発電量の保証が得られず、また太陽光発電システムの導入による経済性の予測への不安感から、太陽光発電システムの導入を躊躇しているユーザが一定数存在するのが現状である。
【0021】
そこで、本願発明者らは、ユーザが太陽光発電システムの導入を躊躇することを抑制可能な、つまり太陽光発電システムの普及を促進することが可能な分散電源群管理方法、分散電源群管理システム及びプログラムについて鋭意検討を行い、以下に示す分散電源群管理方法、分散電源群管理システム及びプログラムを創案した。
【0022】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0023】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。
【0024】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0025】
また、本明細書において、一致などの要素間の関係性を示す用語、並びに、数値、及び、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度(あるいは、10%程度)の差異をも含むことを意味する表現である。
【0026】
また、各構成要素の「接続」とは、電気的な接続を意味し、2つの構成要素が直接的に接続される場合だけでなく、2つの構成要素の間に他の構成要素を挿入した状態で2つの構成要素が間接的に接続される場合も含まれる。
【0027】
(実施の形態)
以下、本実施の形態に係る分散電源群管理方法等について、図1図4を参照しながら説明する。
【0028】
[1.分散電源群管理システムの構成]
まずは、本実施の形態に係る分散電源群管理システム1の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る分散電源群管理システム1の構成を示す図である。図2は、本実施の形態に係るサーバ10の機能構成を示すブロック図である。
【0029】
図1に示すように、分散電源群管理システム1は、ユーザA~D(需要家)それぞれに設けられる分散電源システム(本実施の形態では、太陽光発電システム)と通信可能に接続されるサーバ10を備える情報処理システムである。分散電源群管理システム1は、さらに複数の分散電源システムを備えていてもよい。なお、サーバ10と通信可能に接続される分散電源システムの数は特に限定されず、2以上であればよい。
【0030】
複数の分散電源システムのそれぞれは、少なくとも1つの分散電源を有し、図1の例では、少なくとも1つの太陽電池を有する。また、複数の分散電源システムは、例えば、互いに異なるユーザの施設に設置されている。施設は、例えば、住宅であるが、オフィスビル、ホテル、病院、学校、商業施設などの非住宅施設であってもよい。以降において、分散電源システムが太陽光発電システムである例について説明する。
【0031】
また、複数のユーザA~Dは、以下で説明するような不足金額の補填を互いに行う契約を行っているユーザである。
【0032】
サーバ10は、複数の太陽光発電システム(例えば、複数の太陽電池)それぞれの発電電力量(発電量実測値)と、複数の太陽電池それぞれの発電量のシミュレーション値(発電量予測値)とに基づいて、複数のユーザA~D間で収入減少に伴う金銭的な補填をしあうための処理を実行する。サーバ10は、複数のユーザA~D間で、発電量予測値を所定量以上上回ったユーザには、上回った分の電力量を金額換算した金銭を徴収し、発電量予測値を所定量以上下回ったユーザには、下回った分の電力量を金額換算した金銭補償を行うための処理を実行する。これにより、発電量予測値に対する下振れリスクをユーザA~D間で補償しあうことが可能となる。なお、サーバ10が実行する処理の詳細は後述する。
【0033】
サーバ10は、各太陽光発電システムと通信するための通信インターフェース、各処理部が実行するプログラムを記憶する不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、信号の送受信をするための入出力ポート、並びに、プログラムを実行するプロセッサなどを備えるコンピュータで実現される。通信インターフェースは、有線通信を行うために通信線が接続されるコネクタなどにより実現されてもよいし、無線通信を行うための無線通信回路などにより実現されてもよい。
【0034】
図2に示すように、サーバ10は、取得部11と、算出部12と、制御部13と、出力部14とを備える。
【0035】
取得部11は、複数の太陽光発電システムそれぞれの発電電力量を、各太陽光発電システムから取得する処理部である。取得部11は、複数の太陽光発電システムそれぞれの発電電力量を定期的に取得する。取得部11は、例えば、電力メータ23A等(図1に示す「M2」)により計測された発電電力量を取得してもよいし、電力変換システム22A等(図1に示す「PCS」)が発電電力量を計測可能である場合、電力変換システム22A等が計測した発電電力量を取得してもよい。
【0036】
算出部12は、複数の太陽光発電システムのそれぞれに対して、当該太陽光発電システムを住宅に設置したと仮定した場合の所定期間での発電量予測値(例えば月積算発電量の発電量予測値)と、設置された当該太陽光発電システムの発電量実測値とに基づいて、発電量予測値に基づく当該施設(当該施設のユーザ)の発電金額(予測収入)を超過する超過金額及び当該発電金額に対して不足する不足金額の一方を算出する処理部である。なお、発電量予測値は、ユーザが太陽光発電システムを設置する前に行われたシミュレーション(図5を参照)において算出される発電量である。また、発電金額(予測収入)は、当該発電量予測値に基づく金額であり、予測金額の一例である。
【0037】
算出部12は、例えば、複数の太陽光発電システムそれぞれの所定期間での発電量予測値に基づく発電電力量の超過閾値及び不足閾値を用いて、複数の太陽光発電システムそれぞれにおける発電電力量の超過量及び不足量の一方を算出する。算出部12は、複数の太陽光発電システムそれぞれに対して、当該太陽光発電システムにおける発電電力量が超過閾値を上回っている場合には超過量を算出し、当該太陽光発電システムにおける発電電力量が不足閾値を下回っている場合には不足量を算出する。超過量は、発電電力量から超過閾値を減算することで算出され、不足量は、不足閾値から発電電力量を減算することで算出される。また、算出部12は、さらに、超過量が発生する太陽光発電システム(ユーザ)においては、超過量に基づいて超過金額を算出し、不足量が発生する太陽光発電システム(ユーザ)においては、不足量に基づいて不足金額を算出する。
【0038】
なお、超過閾値と不足閾値とは、予め設定されており、半導体メモリなどの記憶部(図示しない)に記憶されている。超過閾値は、月ごとの発電量予測値、又は、月ごとの発電量予測値の平均値より大きな値が設定される。超過閾値は、例えば、月ごとの発電量予測値、又は、月ごとの発電量予測値の平均値に所定の係数(1より大きな係数)を乗算することで算出されてもよい。また、不足閾値は、例えば、月ごとの発電量予測値、又は、月ごとの発電量予測値の平均値に所定の係数(1より小さな係数)を乗算することで算出されてもよい。また、超過閾値と不足閾値とは、同一の値であってもよい。超過閾値及び不足閾値の算出方法は特に限定されず、他のいかなる方法で算出されてもよい。
【0039】
制御部13は、複数の太陽光発電システムのうち超過金額が発生した1以上の太陽光発電システム(第1分散電源の一例)それぞれの超過金額を用いて、複数の太陽光発電システムのうち不足金額が発生した1以上の太陽光発電システム(第2分散電源の一例)それぞれに対して不足金額に応じた金銭的な補填を行う処理を実行する処理部である。また、制御部13は、例えば、複数の太陽光発電システムのうち超過量を有する1以上の第1分散電源それぞれの超過量に基づいて、複数の太陽光発電システムのうち不足量を有する1以上の第2分散電源それぞれに対して不足量に応じた金銭(不足金額)を補填する処理を実行する処理部であってもよい。
【0040】
制御部13は、1以上の第1分散電源のそれぞれ(当該第1分散電源を所有するユーザのそれぞれ)に対して、超過量に応じた金銭(超過金額)を算出し、1以上の第2分散電源のそれぞれ(当該第2分散電源を所有するユーザのそれぞれ)に対して、不足量に応じた金銭(不足金額)を算出する。そして、制御部13は、例えば、徴収した超過金額を原資として、第2分散電源を有する1以上のユーザ(又は施設)それぞれの不足金額を補填する処理を実行する。
【0041】
出力部14は、制御部13により算出された各金額を示す情報を出力する。
【0042】
複数の分散電源のそれぞれ(図1では、ユーザA~Dが所有する太陽光発電システムのそれぞれ)の構成は同一であり、以下では主にユーザAの住宅に設置された太陽光発電システムについて説明する。
【0043】
太陽電池21Aは、光起電力効果を利用して、光エネルギーを電気エネルギー(電力)に変換する電力機器である。太陽電池21B、21C及び21Dについても、太陽電池21Aと同様の構成である。
【0044】
電力変換システム22Aは、パワーコンディショナとも称され、太陽電池21Aで生成された直流電力を交流電力へ変換し、電力を施設で使用するのに適した電圧に変圧して施設内の電力需要25A(負荷)に供給する。また、電力変換システム22Aは、太陽電池21Aの発電電力量を計測可能に構成されてもよい。発電電力量を計測するセンサは、電力変換システム22Aの筐体内部に配置される。当該センサは、電力変換システム22Aに内蔵されるとも言える。電力変換システム22B、22C及び22Dについても、電力変換システム22Aと同様の構成である。
【0045】
電力メータ23Aは、太陽電池21Aで発電された電力を計測する電力センサである。電力メータ23Aは、いわゆるスマートメータであってもよい。電力メータ23B、23C及び23Dについても、電力メータ23Aと同様の構成である。
【0046】
電力メータ24A(図1に示す「M1」)は、小売電気事業者(図示しない)からユーザAに供給された(つまり、ユーザAが小売電気事業者から買電した)電力を計測する電力センサである。また、太陽電池21Aで生成された余剰電力(例えば、電力需要25Aで消費されなかった電力)は、電力メータ24Aを介して小売電気事業者などに売電される。つまり、電力メータ24Aは、売電電力も計測する。電力メータ24Aは、いわゆるスマートメータであってもよい。電力メータ24B、24C及び24Dについても、電力メータ24Aと同様の構成である。
【0047】
電力需要25Aは、例えば、住宅内に設けられた家電機器、ヒートポンプ技術を使って空気の熱でお湯を沸かす家庭用給湯システムなどの電力を消費する機器を使用することにより発生する。電力需要25B、25C及び25Dについても、電力需要25Aと同様である。
【0048】
ゲートウェイ26Aは、ネットワークを介してサーバ10と通信する機能を有する。また、ゲートウェイ26Aは、住宅内の電力メータ23A及び24Aと通信可能である。ゲートウェイ26Aは、電力メータ23A(又は、電力変換システム22A)から取得した電力量を、太陽電池21A(又は太陽電池21Aを含む太陽光発電システム)の発電電力量(発電量実測値)としてサーバ10に送信する。また、ゲートウェイ26Aは、電力メータ24Aから取得した売電量を、小売電気事業者などに売電された電力量としてサーバ10に送信する。発電電力量から売電量を減算した電力量は、電力需要25Aで消費された電力量(自家消費分)である。また、ゲートウェイ26Aは、電力メータ24Aから取得した買電電力量を、小売電気事業者から買電した電力量としてサーバ10に送信する。ゲートウェイ26B、26C及び26Dについても、ゲートウェイ26Aと同様の構成である。
【0049】
なお、太陽光発電システムは、さらに、太陽電池21Aで発電された電力を充電及び放電可能な家庭用の蓄電池、又は、EV(Electric Vehicle:電気自動車)等に搭載される車両用の蓄電池を備えていてもよい。
【0050】
[2.分散電源群管理システムの動作]
続いて、上記のように構成される分散電源群管理システム1の動作について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、本実施の形態に係る分散電源群管理システム1が実行する動作(分散電源群管理方法)を示すフローチャートである。図4は、本実施の形態に係るサーバ10における、発電量予測値に対する下振れリスクを補償しあう方法を説明するための図である。図4の縦軸は、パネル1kWあたりの月積算発電量であり、横軸は、発電量予測値(図4に示す「Sim値」)、各ユーザA~Dの補填前後での発電量のイメージ、及び、事業者収支を示す。図4では、ユーザA~DのそれぞれにおけるSim値は、100kWh/月であるとする。
【0051】
図3に示すように、サーバ10の取得部11は、複数の太陽光発電システムそれぞれから発電電力量を取得する(S10)。
【0052】
次に、サーバ10の算出部12は、複数の太陽光発電システムそれぞれに対して、取得部11により取得された発電電力量に基づいて、超過量及び不足量を算出する(S20)。算出部12は、図4に示す発電量(ドットハッチングで示される発電量)の場合、ユーザA、C、Dそれぞれに対して、一点鎖線で示す超過閾値を超える発電量を超過量(太枠で示す発電量)として算出する。また、算出部12は、図4に示す発電量(ドットハッチングで示される発電量)の場合、ユーザBに対して、二点鎖線で示す不足閾値を下回る発電量を不足量(破線枠で示す発電量)として算出する。
【0053】
なお、図4では、ユーザA~Dのそれぞれの超過閾値及び不足閾値が同一の値である例について図示しているが、互いに異なる値であってもよい。また、図4では、ユーザA~DのそれぞれのSim値が同一の値である例について図示しているが、互いに異なる値であってもよい。
【0054】
図3を再び参照して、次に、算出部12は、ステップS20で算出した超過量及び不足量に基づいて、超過金額及び不足金額を算出する(S30)。算出部12は、超過量が発生した太陽光発電システムに対しては、超過金額を算出する。算出部12は、超過量を全て売電した場合の金額を超過金額として算出してもよい。この場合、算出部12は、超過量に売電単価を乗算することで、超過金額を算出する。また、算出部12は、超過量の一部を自家消費し、超過量の残りを売電した場合の金額を超過金額として算出してもよい。この場合、算出部12は、超過量を自家消費する自家消費量と、売電する売電量とに分解し、自家消費量に買電単価を乗算し、売電量に売電単価を乗算し、それらを足し合わせることで、超過金額を算出する。なお、自家消費量と売電量とに分解するときの比率は、各ユーザで一定の比率が設定されていてもよいし、各ユーザに個別の値が設定されていてもよい。比率として、例えば、発電量のシミュレーションにおいて発電金額を算出する際に設定した自家消費量及び売電量の比率が用いられてもよいし、当該ユーザにおける自家消費量及び売電量の実績値から比率が算出されてもよい。当該比率は、発電電力量に対する自家消費量の比率を示す自家消費率であってもよい。
【0055】
図4の補填前に示すように、ユーザA、C及びDにおいて超過量が発生しているので、算出部12は、ステップS30において、ユーザA、C及びDそれぞれの超過金額を算出する。超過閾値は、発電量予測値に基づく発電量の閾値であり、発電量が当該超過閾値の場合の発電金額は、発電量予測値に基づく金額の一例である。ユーザA、C及びDそれぞれの超過金額は、発電量予測値に基づく金額を超過する金額であり、分散電源の超過金額の一例である。
【0056】
また、図4の補填前に示すようにユーザBにおいて不足量が発生しているので、算出部12は、ステップS30において、ユーザBの不足金額を算出する。不足閾値は、発電量予測値に基づく発電量の閾値であり、発電量が当該不足閾値の場合の発電金額(予測収入)は、発電量予測値に基づく金額の一例である。ユーザBの不足金額は、発電量予測値に基づく金額に対して不足する金額である。
【0057】
なお、売電単価と買電単価とには、例えば、互いに異なる料金単価が用いられる。売電単価は、小売電気事業者などに売電した場合の料金単価が用いられる。売電単価は、例えば、ユーザと小売電気事業者との契約で定められた料金単価であり、ユーザごとに異なり得る。また、当該太陽光発電システムが、固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)の適用期間内であるか否かに応じて、料金単価が異なっていてもよい。固定価格買取制度の適用期間内である場合、当該固定価格買取制度において設定されている料金単価を売電単価として用い、固定価格買取制度の適用期間外である場合、ユーザと小売電気事業者との契約で定められた売電時の料金単価を売電単価として用いてもよい。また、買電単価は、小売電気事業者から買電した場合の料金単価が用いられる。買電単価は、例えば、ユーザと小売電気事業者との契約で定められた料金単価であり、ユーザごとに異なり得る。
【0058】
なお、固定価格買取制度は、日本における、再生可能エネルギーからつくられた電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が保証する制度である。FIT制度の対象となる再生可能エネルギーに、太陽光発電システムにより生成された電気エネルギーが含まれている。
【0059】
また、算出部12は、不足量が発生した太陽光発電システム(ユーザ)に対しては、不足金額を算出する。算出部12は、不足量を全て買電した場合の金額を不足金額として算出してもよい。この場合、算出部12は、不足量に買電単価を乗算することで、不足金額を算出する。また、算出部12は、不足量の一部を自家消費し、残りを売電したと仮定した場合の金額を不足金額として算出してもよい。この場合、算出部12は、不足量を自家消費する自家消費量と、売電する売電量とに分解し、自家消費量に買電単価を乗算し、売電量に売電単価を乗算し、それらを足し合わせることで、不足金額を算出する。なお、自家消費量と売電量とに分解するときの比率は、超過金額を算出する場合と同じ値が用いられてもよい。
【0060】
図3を再び参照して、次に、制御部13は、ステップS20で算出された超過量に基づいて、超過するユーザ(超過量が発生している太陽光発電システムを所有するユーザ)があるか否かを判定する(S40)。制御部13は、複数のユーザA~Dのうち少なくとも1つのユーザにおいて超過量が発生している場合、ステップS40でYesと判定する。また、制御部13は、複数のユーザA~Dのうちいずれのユーザにおいても超過量が発生していない場合、ステップS40でNoと判定し、ステップS60に進む。なお、ユーザにおいて超過量が発生することと、分散電源において超過量が発生することとは同義である。
【0061】
次に、制御部13は、超過するユーザがあると判定した場合(S40でYes)、超過するユーザから超過金額を徴収するための処理を実行する(S50)。制御部13は、例えば、超過するユーザそれぞれに対して、超過金額を請求してもよいし、当該ユーザが電力系統から受電した電力量に対する電気料金の請求金額と超過金額とを合算(請求金額+超過金額)し、合算された金額をユーザに請求するための処理を実行してもよい。制御部13は、例えば、合算された金額を当該ユーザに請求してもよいし、請求金額を管理するサーバ(例えば、小売電気事業者が管理するサーバ)に、当該ユーザの識別情報とともに当該ユーザの超過金額を通知してもよい。
【0062】
図4の場合、超過量に応じた超過金額が徴収されるので、補填後に示すようにユーザA、C及びDそれぞれが得ることができる金銭的な利益は、補填後の発電量(例えば、超過閾値)である場合に得ることができる金銭的な利益となる。ユーザA、C及びDのそれぞれが得る経済的な利益は、補填前の発電量(発電量実測値)により得られる金銭的な利益より少なくなるが、シミュレーション時に予測された経済的な利益(図4に示す発電金額)と同等又はそれ以上の経済的な利益を得ることができる。
【0063】
図3を再び参照して、次に、制御部13は、ステップS20で算出された不足量に基づいて、不足するユーザ(不足量が発生している太陽光発電システムを所有するユーザ)があるか否かを判定する(S60)。制御部13は、複数のユーザA~Dのうち少なくとも1つのユーザにおいて不足量が発生している場合、ステップS60でYesと判定する。また、制御部13は、複数のユーザA~Dのいずれのユーザにおいても不足量が発生していない場合、ステップS60でNoと判定し、ステップS90に進む。
【0064】
次に、制御部13は、不足するユーザがあると判定した場合(S60でYes)、超過する1以上のユーザそれぞれの超過金額を合計した合計値(第1合計値)が、不足する1以上のユーザそれぞれの不足金額を合計した合計値(第2合計値)以上であるか否かを判定する(S70)。
【0065】
制御部13は、第1合計値が第2合計値以上であると判定した場合(S70でYes)、超過金額から不足金額を補填するための処理を実行する(S80)。制御部13は、例えば、不足するユーザそれぞれに対して、不足金額を当該ユーザに支給してもよいし、当該ユーザが電力系統から受電した電力量に対する電気料金の請求金額と不足金額とを合算(請求金額-不足金額)し、合算された金額をユーザに請求するための処理を実行してもよい。制御部13は、例えば、合算された金額を当該ユーザに請求してもよいし、請求金額を管理するサーバ(例えば、小売電気事業者が管理するサーバ)に、当該ユーザの識別情報とともに当該ユーザの不足金額を通知してもよい。
【0066】
図4では、ユーザA及びCの超過量に応じた超過金額により、ユーザBの不足量に応じた不足金額が補填されている例を示している。図4に示すように、不足量に応じた超過金額が支給されるので、補填後に示すようにユーザBが得る金銭的な利益は、補填後の発電量(例えば、不足閾値)である場合に得ることができる金銭的な利益となる。ユーザBが得る金銭的な利益は、補填前の発電量(発電量実測値)により得られる金銭的な利益より多くなり、例えば、シミュレーション時に予測された金銭的な利益(図4に示す発電金額)と同等又はそれに近い金銭的な利益を得ることができる。
【0067】
図3を再び参照して、次に、制御部13は、余剰金額を事業者の利益として計算する(S90)。余剰金額は、超過金額の第1合計値から不足金額の第2合計値を減算した金額である。つまり、1以上の第1分散電源それぞれの超過金額を1以上の第2分散電源それぞれの不足金額に補填した後の余剰金額は、分散電源群管理システム1を管理する事業者の利益として蓄えられる。図4では、ユーザDの超過量に応じた超過金額が事業者の利益として計算されている例を示している。この蓄えられた余剰金額は、例えば、ステップS70においてNoと判定された場合の事業者の持ち出し分として利用されてもよい。
【0068】
また、制御部13は、超過金額の第1合計値が不足金額の第2合計値未満である場合(S70でNo)、超過金額から不足金額を減算した差分金額を事業者収支から支出する処理を行う。制御部13は、ステップS70でNoの場合、超過金額(第1合計値)と事業者収支(事業者の持ち出し分)とから不足金額を補填するための処理を実行する(S100)。具体的な処理は、ステップS80と同様であってもよい。この場合、制御部13は、事業者の持ち出し分を事業者の損益として計算してもよい。
【0069】
上記のように超過金額の徴収と不足金額の補填とが実行されることで、複数のユーザA~D間で可能な限りの不足金額の補填を行うことができる。また、ステップS70でNoと判定された場合、さらに事業者収支も補填に用いられることで、複数のユーザA~Dそれぞれが、不足閾値に相当する発電量の発電が行われた場合の経済的な利益を得ることができる。
【0070】
また、太陽光発電システムを設置するか否かを検討しているユーザは、図4に示す不足閾値に相当する発電量の発電が行われた場合の経済的な利益(最低限保障される利益)に基づいて、太陽光発電システムを設置するか否かを判断することが可能となる。最低限保障される利益を予め知ることができるので、太陽光発電システムの導入による経済性に対する不安感からユーザが太陽光発電システムの導入を躊躇することが抑制されると考えられる。よって、分散電源群管理方法に示される処理が実行されることで、太陽光発電システムの普及に寄与することが可能である。
【0071】
なお、図4に示すフローチャートにおける各ステップが実行される順序は一例であり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が他のステップと同時(並列)に実行されてもよいし、上記ステップの一部は実行されなくてもよい。例えば、ステップS30における超過金額の算出は、ステップS40においてYesと判定された後、ステップS50が実行されるまでに実行されてもよいし、ステップS40でNoと判定され、かつ、ステップS60でYesと判定された後、ステップS70が実行されるまでに実行されてもよい。また、例えば、ステップS30における不足金額の算出は、ステップS60においてYesと判定された後、ステップS70が実行されるまでに実行されてもよい。
【0072】
なお、図4では、縦軸が月積算発電量である例について説明したが、金額(例えば、月積算発電金額)であってもよい。当該金額は、例えば、月積算発電量と、自家消費量及び売電量の比率を示す情報と、売電単価及び買電単価とに基づいて算出される、ユーザごとの金銭的な利益を示す金額である。自家消費量及び売電量の比率は、予め設定された比率であってもよいし、当該ユーザ(当該太陽光発電システムが設置された施設)における当該月又は直近の自家消費量の実績値及び売電量の実績値に基づいて設定された比率であってもよい。当該比率が実績値に基づいて設定されている場合、シミュレーション時において設定した比率と実績値に基づく比率とに相違があり、かつ、当該相違による経済的な不利益が発生している場合、当該不利益を考慮した不足金額を算出及び補填することが可能となる。例えば、当該ユーザにおけるシミュレーション時の比率を用いて算出された発電金額に基づいて、超過金額閾値及び不足金額閾値が設定され、超過金額閾値を超過する分が超過金額として算出され、不足金額閾値を下回る分が不足金額として算出されることで、当該不利益を考慮した不足金額を算出及び補填を行うことが可能となる。超過金額閾値及び不足金額閾値は、例えば、当該施設において予め設定された自家消費率に基づく金額であってもよく、発電量予測値に基づく金額の一例である。
【0073】
[3.効果など]
以上のように、第1態様に係る分散電源群管理方法は、それぞれが異なる施設に設置された複数の分散電源それぞれの発電電力量を取得し(S10)、複数の分散電源のそれぞれに対して、当該分散電源を施設に設置したと仮定した場合の所定期間での発電量予測値と、施設に設置された当該分散電源の発電電力量とに基づいて、発電量予測値に基づく第1金額を超過する超過金額及び第1金額に対して不足する不足金額の一方を算出し(S30)、複数の分散電源のうち超過金額が発生した1以上の第1分散電源それぞれの超過金額を用いて、複数の分散電源のうち不足金額が発生した1以上の第2分散電源それぞれに対して不足金額に応じた金銭的な補填を行う処理を実行する(S40~S80、S100)。
【0074】
これにより、分散電源を設置後にユーザにおいて不足金額が発生した場合、超過金額を用いて不足金額に応じた補填がなされる。このような分散電源群管理方法により補填がなされることを分散電源の導入を検討しているユーザが知ることで、ユーザが抱いた経済性の予測に対する不安感を低減することができる。よって、分散電源群管理方法によれば、分散電源の普及に寄与することが可能である。
【0075】
また、第2態様に係る分散電源群管理方法は、第1態様に係る分散電源群管理方法であって、例えば、複数の分散電源のそれぞれに対して、当該分散電源の発電量予測値に基づく発電電力量の超過閾値及び不足閾値を用いて、発電電力量の超過量及び不足量の一方を算出し(S20)、当該分散電源において超過量が発生する場合、超過量に基づいて超過金額を算出し、不足量が発生する場合、不足量に基づいて不足金額を算出してもよい。
【0076】
これにより、超過量及び不足量の一方に応じた、超過金額及び不足金額の一方を算出することができる。よって、発電量不足等が生じた場合に金銭的な補填が行われるので、発電量不足等の発生に対する不安感を抱いているユーザの当該不安感を低減することができる。
【0077】
また、第3態様に係る分散電源群管理方法は、第2態様に係る分散電源群管理方法であって、超過金額及び不足金額の一方の算出では、例えば、複数の分散電源それぞれにおいて、取得された発電電力量を、自家消費する自家消費量と、売電する売電量とに分解し、分解された自家消費量と売電量とに互いに異なる料金単価を演算することで、超過金額及び不足金額の一方を算出してもよい。
【0078】
これにより、自家消費時の単価と売電時の単価とを考慮するので、より正確な超過金額及び不足金額の一方を算出することができる。
【0079】
また、第4態様に係る分散電源群管理方法は、第1態様に係る分散電源群管理方法であって、第1金額は、当該施設において予め設定された自家消費率に基づく超過金額閾値及び不足金額閾値を含み、超過金額及び不足金額の一方の算出では、複数の分散電源それぞれにおいて、当該分散電源が設置された施設において自家消費された自家消費量の実績値及び売電された売電量の実績値に基づいて、取得された発電電力量を、自家消費量と、売電量とに分解し、分解された自家消費量と売電量とに互いに異なる料金単価を演算した第2金額と、超過金額閾値及び不足金額閾値の一方とに基づいて、超過金額及び不足金額の一方を算出する。
【0080】
これにより、第1金額を算出したときから自家消費率が変わっている場合に、当該自家消費率の違いを補填に反映させることができる。
【0081】
また、第5態様に係る分散電源群管理方法は、第2態様~第4態様のいずれかに係る分散電源群管理方法であって、固定価格買取制度の適用期間内であるか否かに応じて、売電量に演算する料金単価を異ならせる。
【0082】
これにより、固定価格買取制度の適用の有無に応じた適切な超過金額及び不足金額の一方を算出することができる。
【0083】
また、第6態様に係る分散電源群管理方法は、第2態様~第5態様のいずれかに係る分散電源群管理方法であって、不足金額に応じた金銭的な補填を行う処理の実行では、当該分散電源が設置された施設が電力系統から受電した電力量に対する電気料金の請求金額と、当該分散電源の超過金額及び不足金額の一方とを合算し、合算された金額が当該施設に請求される。
【0084】
これにより、ユーザは1回の支払いで済むので、分散電源群管理方法の利便性が向上する。
【0085】
また、第7態様に係る分散電源群管理方法は、第1態様~第6態様のいずれかに係る分散電源群管理方法であって、複数の分散電源のそれぞれは、当該分散電源の発電電力量を計測可能に構成されるパワーコンディショナと接続されており、発電電力量の取得では、パワーコンディショナが計測した発電電力量を取得する。
【0086】
これにより、計測のためのセンサがパワーコンディショナ内部に設けられるので、計測値に対する改ざんが行われることを抑制することができる。
【0087】
また、第8態様に係る分散電源群管理方法は、第1態様~第7態様のいずれかに係る分散電源群管理方法であって、1以上の第1分散電源それぞれの超過金額を1以上の第2分散電源それぞれの不足金額に補填した後の余剰金額を、分散電源群管理方法を実行する分散電源群管理システムを管理する事業者の収益として計算する。
【0088】
これにより、余剰金額を、事業者じたいが補填を行う場合の原資として用いることができるようになり、補填の調整幅を広げることができる。また、多照年及び寡照年での事業者収支を平均化することができる。
【0089】
また、第9態様に係る分散電源群管理方法は、第2態様、第3態様、第5態様及び第6態様のいずれかに係る分散電源群管理方法であって、超過閾値と不足閾値とは同一の値である。
【0090】
これにより、超過量及び不足量の一方を算出する場合に用いるパラメータを減らすことができる。
【0091】
また、第10態様に係る分散電源群管理システム1は、それぞれが異なる施設に設置された複数の分散電源それぞれの発電電力量を取得する取得部11と、複数の分散電源のそれぞれに対して、当該分散電源を施設に設置したと仮定した場合の所定期間での発電量予測値と、施設に設置された当該分散電源の発電電力量とに基づいて、発電量予測値に基づく金額を超過する超過金額及び金額に対して不足する不足金額の一方を算出する算出部12と、複数の分散電源のうち超過金額が発生した1以上の第1分散電源それぞれの超過金額を用いて、複数の分散電源のうち不足金額が発生した1以上の第2分散電源それぞれに対して不足金額に応じた金銭的な補填を行う処理を実行する制御部13とを備える。
【0092】
また、第11態様に係るプログラムは、第1態様~第9態様のいずれかに係る分散電源群管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0093】
これにより、上記の分散電源群管理方法と同様の効果を奏する。
【0094】
(その他の実施の形態)
以上、一つ又は複数の態様に係る分散電源群管理方法等について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明に含まれてもよい。
【0095】
例えば、上記実施の形態では、分散電源群管理システムは、不足量が発生した場合、不足量の全てに応じた金銭的な補填を行う例について説明したがこれに限定されず、不足量の一部に応じた金銭的な補填を行ってもよい。
【0096】
また、例えば、上記実施の形態では、分散電源の一例として太陽光発電システム(又は太陽電池)を例示したがこれに限定されず、分散電源は、例えば、風力発電システム、水力発電システム、地熱発電システム、バイオマス発電システムのいずれか又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0097】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0098】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0099】
また、上記実施の形態に係るサーバは、単一の装置として実現されてもよいし、複数の装置により実現されてもよい。サーバが複数の装置によって実現される場合、当該サーバが有する各構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。サーバが複数の装置で実現される場合、当該複数の装置間の通信方法は、特に限定されず、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。また、装置間では、無線通信及び有線通信が組み合わされてもよい。
【0100】
また、上記実施の形態で説明した各構成要素は、ソフトウェアとして実現されても良いし、典型的には、集積回路であるLSIとして実現されてもよい。これらは、個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路(専用のプログラムを実行する汎用回路)又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)又は、LSI内部の回路セルの接続若しくは設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。更には、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて構成要素の集積化を行ってもよい。
【0101】
システムLSIは、複数の処理部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0102】
また、本発明の一態様は、図3に示される分散電源群管理方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。
【0103】
また、例えば、プログラムは、コンピュータに実行させるためのプログラムであってもよい。また、本発明の一態様は、そのようなプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。例えば、そのようなプログラムを記録媒体に記録して頒布又は流通させてもよい。例えば、頒布されたプログラムを、他のプロセッサを有する装置にインストールして、そのプログラムをそのプロセッサに実行させることで、その装置に、上記各処理を行わせることが可能となる。
【符号の説明】
【0104】
1 分散電源群管理システム
11 取得部
12 算出部
13 制御部
21A、21B、21C、21D 太陽電池(分散電源)
A、B、C、D ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6