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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179160
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/447 20060101AFI20241219BHJP
   B41J 2/45 20060101ALI20241219BHJP
   G03G 15/04 20060101ALI20241219BHJP
   H04N 1/036 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B41J2/447 101A
B41J2/45
G03G15/04
H04N1/036
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097770
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】植村 直記
【テーマコード(参考)】
2C162
5C051
【Fターム(参考)】
2C162AE12
2C162AE21
2C162AE28
2C162AE40
2C162AE47
2C162AE73
2C162AF07
2C162FA04
2C162FA18
2C162FA45
2C162FA50
5C051AA02
5C051CA08
5C051DA04
5C051DA06
5C051DB02
5C051DB04
5C051DB07
5C051DB14
5C051DC02
5C051DC03
5C051DD02
5C051EA08
(57)【要約】
【課題】 発光チップに駆動回路が内蔵された露光ヘッドの場合、発光チップの近傍に電子部品を設ける必要がある。該露光ヘッドにおいては製造工程において発光チップの表面に異物が付着する可能性が発光チップの近傍に設けられた電子部品の基板表面からの高さが、発光チップの出射面の基板表面からの高さよりも高い場合、ローラーでクリーニングを行う際にローラーが発光チップの出射面に接触せず、発光チップの表面に付着した異物を十分に除去できない虞がある。
【解決手段】 感光体を露光する光を発する発光部を有する発光チップと電子部品とが実装された基板を有する露光ヘッドを備える画像形成装置において、発光チップのプリント基板表面からの高さが電子部品の高さよりも高い。
【選択図】 図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
前記感光体を露光する光を発する複数の発光部と前記光が出射される光出射面とを有する発光チップと、電子部品と、が一方の面に実装された基板と、
を備え、
前記基板の前記一方の面に垂直な垂直方向において、前記発光チップの前記一方の面から前記光出射面までの高さである第1の高さは、前記一方の面から前記電子部品における前記一方の面から最も遠い端部までの高さである第2の高さよりも高い、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記基板の前記一方の面は、前記発光チップ及び前記電子部品がそれぞれ複数実装され、
前記垂直方向において、前記一方の面に複数実装された前記発光チップの前記第1の高さのそれぞれは、前記一方の面に複数実装された前記電子部品のうち前記第2の高さが最も高い前記電子部品の前記第2の高さよりも高い、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記電子部品の少なくとも一部は、前記基板の長手方向において前記発光チップとオーバーラップしている、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置は、
前記発光チップに電力線を介して電流を供給する電源と、
を備え、
前記発光チップは前記複数の発光部を駆動する駆動部を有し、
前記電子部品は、一端が前記電源線に接続され、他端が前記駆動部に接続されるバイパスコンデンサを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記垂直方向において、前記発光チップの前記第1の高さは、前記一方の面から前記バイパスコンデンサにおける前記基板の一方の面から最も遠い端部までの高さよりも高い、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電子部品は、前記発光チップの温度を計測するサーミスタを含み、
前記垂直方向において、前記第1の高さは、前記基板の前記一方の面から前記サーミスタにおける前記基板の前記一方の面から最も遠い端部までの高さよりも高い、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記発光チップは接着剤を用いて前記基板に実装され、
前記第1の高さは、前記垂直方向における前記接着剤の高さと前記発光チップの高さとの和である、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
感光体を露光する光を発する複数の発光部と前記光が出射される光出射面を有する発光チップと、電子部品と、が一方の面に実装された基板を備え、
前記基板の前記一方の面に垂直な垂直方向において、前記発光チップにおける前記一方の面から前記光出射面までの高さである第1の高さは、前記一方の面から前記電子部品の前記一方の面から最も遠い端部までの高さである第2の高さよりも高い、
ことを特徴とする露光ヘッド。
【請求項9】
前記基板の前記一方の面は、前記発光チップ及び前記電子部品がそれぞれ複数実装され、
前記垂直方向において、前記一方の面に複数実装された前記発光チップの前記第1の高さのそれぞれは、前記一方の面に複数実装された前記電子部品のうち前記第2の高さが最も高い前記電子部品の前記第2の高さよりも高い、
ことを特徴とする請求項8に記載の露光ヘッド。
【請求項10】
前記電子部品の少なくとも一部は、前記基板の長手方向において前記発光チップとオーバーラップしている、
ことを特徴とする請求項8に記載の露光ヘッド。
【請求項11】
前記発光チップは電源線を介して電流が供給され、前記複数の発光部を駆動する駆動部を有し、
前記電子部品は、一端が前記電源線に接続され、他端が前記駆動部に接続されるバイパスコンデンサを含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の露光ヘッド。
【請求項12】
前記垂直方向において、前記発光チップの前記第1の高さは、前記一方の面から前記バイパスコンデンサにおける前記基板の一方の面から最も遠い端部までの高さよりも高い、
ことを特徴とする請求項11に記載の露光ヘッド。
【請求項13】
前記電子部品は、前記複数の発光部の温度を計測するサーミスタを含み、
前記垂直方向において、前記第1の高さは、前記一方の面から前記サーミスタにおける前記一方の面から最も遠い端部までの高さよりも高い、
ことを特徴とする請求項8に記載の露光ヘッド。
【請求項14】
前記発光チップは接着剤を用いて前記基板に実装され、
前記第1の高さは、前記垂直方向における前記接着剤の高さと前記発光チップの高さとの和である、ことを特徴とする請求項8に記載の露光ヘッド。
【請求項15】
前記第1の高さと前記第2との高さの差は0.4mmよりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記複数の発光部のそれぞれは有機ELである、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記複数の発光部のそれぞれは有機ELである、
ことを特徴とする請求項8に記載の露光ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光ヘッドを用いた電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンタにおいては、LEDや有機ELなどを用いた露光ヘッドを用いて感光ドラムを露光し、当該感光ドラムの表面に潜像を形成する方式が一般的に知られている。特許文献1では長尺上の基板に複数の発光点を有する発光素子アレイチップが実装された光プリントヘッドが開示されている。さらに特許文献1では基板の発光素子アレイチップが実装されている面と同一の面に発光素子アレイチップを駆動する駆動ICが実装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-96137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された露光ヘッドにおいては、製造工程で出射面に付着した異物によって感光体に到達する光量が減少する場合がある。このため、出射面に付着した異物を清掃部材によって取り除く必要がある。しかしながら、特許文献1のように発光素子と同一面に電子部品が実装された露光ヘッドにおいて、例えば、電子部品の基板表面からの高さが出射面の高さよりも高い場合、出射面に付着した異物を十分に除去できない虞がある。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明では、発光チップと電子部品とが基板の同一面に実装された露光ヘッドにおいて、発光チップの光出射面に付着した異物が効果的に除去される露光ヘッドの提供及び該露光ヘッドを有する画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に記載の画像形成装置は、
感光体と、
前記感光体を露光する光を発する複数の発光部と前記光が出射される光出射面とを有する発光チップと、電子部品と、が一方の面に実装された基板と、
を備え、
前記基板の前記一方の面に垂直な垂直方向において、前記発光チップの前記一方の面から前記光出射面までの高さである第1の高さは、前記一方の面から前記電子部品における前記一方の面から最も遠い端部までの高さである第2の高さよりも高い、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発光チップと電子部品とが基板の同一面に実装された露光ヘッドにおいて、発光チップの光出射面に付着した異物が効果的に除去される露光ヘッド及び該露光ヘッドを用いる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る画像形成装置の概略的な構成を示す構成図。
図2】一実施形態に係る感光体ドラム及び露光ヘッドの構成についての説明図。
図3】一実施形態に係る露光ヘッドのプリント基板の構成についての説明図。
図4】一実施形態に係る発光チップ及び発光チップ内の発光素子配列についての説明図。
図5】一実施形態に係る発光チップとプリント基板の一部の概略的な構成とを示す平面図。
図6】一実施形態に係る発光チップの概略的な構成を示す断面図。
図7】一実施形態に係る露光装置の制御構成を示す回路図。
図8】一実施形態に係る発光チップのレジスタへのアクセスに関連する信号チャート。
図9】一実施形態に係る発光チップへの画像データの送信に関連する信号チャート。
図10】一実施形態に係る発光チップの詳細な構成を示す機能ブロック図。
図11】階段状に配列された発光素子による多重露光についての説明図。
図12A】入力画像データに基づく発光制御の手順についての説明図。
図12B】入力画像データに基づく発光制御の手順についての説明図。
図12C】入力画像データに基づく発光制御の手順についての説明図。
図12D】入力画像データに基づく発光制御の手順についての説明図。
図13A】一実施形態に係る発光チップを実装する前のプリント基板の構成についての説明図。
図13B】一実施形態に係る発光チップを実装する前のプリント基板の構成についての説明図。
図14】一実施形態に係る発光チップの実装工程についての説明図。
図15】一実施形態に係る発光素子クリーニング工程についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<画像形成装置の構成>
図1は、一実施形態に係る画像形成装置1の概略的な構成の一例を示している。画像形成装置1は、読取部100、作像部103、定着部104及び搬送部105を備える。読取部100は、原稿台に置かれた原稿を光学的に読み取って、読取画像データを生成する。作像部103は、例えば、読取部100によって生成された読取画像データに基づき、或いは、ネットワークを介して外部装置から受信される印刷用画像データに基づき、シートに画像を形成する。
【0011】
作像部103は、画像形成部101a、101b、101c及び101dを有する。画像形成部101a、101b、101c及び101dは、それぞれ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンのトナー像を形成する。画像形成部101a、101b、101c及び101dの構成は同様であり、以下では、総称して画像形成部101ともいう。画像形成部101の感光体ドラム102は、画像形成時、図の時計回り方向に回転駆動される。帯電器107は、感光体ドラム102を帯電させる。露光ヘッド106は、感光体ドラム102を露光して、感光体ドラム102の表面上に静電潜像を形成する。現像器108は、感光体ドラム102の静電潜像をトナーで現像して、トナー像を形成する。感光体ドラム102の表面上に形成されたトナー像は、転写ベルト111上を搬送されるシートに転写される。4つの感光体ドラム102のトナー像を重ねてシートに転写することで、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンという4つの色成分を含むカラー画像を形成することができる。
【0012】
搬送部105は、シートの給送及び搬送を制御する。具体的には、搬送部105は、内部格納ユニット109a及び109bと、外部格納ユニット109cと、手差しユニット109dと、のうちの指定されたユニットから画像形成装置1の搬送路にシートを給送する。給送されたシートは、レジストレーションローラ110まで搬送される。レジストレーションローラ110は、各感光体ドラム102のトナー像がシートに転写されるように、適切なタイミングでシートを転写ベルト111上へ搬送する。上述したように、シートが転写ベルト111上を搬送されている間に、シートにトナー像が転写される。定着部104は、トナー像が転写されたシートを加熱し及び加圧することによりトナー像をシートに定着させる。トナー像の定着後、シートは排出ローラ112によって画像形成装置1の外部に排出される。転写ベルト111の対向位置には、光学センサ113が配置される。光学センサ113は、画像形成部101によって転写ベルト111に形成されるテストチャートを光学的に読取る。後述する画像コントローラ700は、光学センサ113により読取られたテストチャートについて位置ずれが検出された場合、その後のジョブの実行時に位置ずれを補償するための制御を行う。
【0013】
なお、ここでは転写ベルト111上のシートに各感光体ドラム102からトナー像が直接的に転写される例を説明したが、トナー像は、各感光体ドラム102から中間転写体を介して間接的にシートに転写されてもよい。また、ここでは複数の色のトナーを用いてカラー画像を形成する例を説明したが、本開示に係る技術は、単一の色のトナーを用いてモノクロ画像を形成する画像形成装置にも適用可能である。
【0014】
<露光ヘッドの構成例>
図2(A)および図2(B)は、感光体ドラム102及び露光ヘッド106を示している。露光ヘッド106は、発光素子配列201と、発光素子配列201が実装されるプリント基板202と、ロッドレンズアレイ203と、ロッドレンズアレイ203及びプリント基板202を保持するハウジング204と、を有する。感光体ドラム102は、円筒状の形状を有する。露光ヘッド106は、その長手方向が感光体ドラム102の軸方向D1と平行となり、ロッドレンズアレイ203が取付けられた面が感光体ドラム102の表面に対向するように配置される。感光体ドラム102が周方向D2に回転している間に、露光ヘッド106の発光素子配列201は光出射面から光を射出し、ロッドレンズアレイ203がその光を感光体ドラム102の表面上に集光する。すなわち発光素子602は発光部に対応する。
【0015】
プリント基板202の構成について説明する。図3(A)及び図3(B)は、プリント基板202の構成の一例を示している。なお、図3(A)は、発光素子配列201が実装されている面を示し、図3(B)は、コネクタ305が実装されている面(発光素子配列201が実装されている面とは反対側の面)を示している。また、以下では、説明の便宜上、プリント基板202の長手方向(X方向)を「長手方向」、プリント基板202の短手方向(Y方向)を「短手方向」、プリント基板202の高さ(厚み)方向(Z方向)を「高さ方向」もしくは「垂直方向」と称することがある。
【0016】
本実施形態において、発光素子配列201は、二次元的に配列された複数の発光素子を有する。発光素子配列201は、全体として、感光体ドラム102の軸方向D1にN列及び周方向D2にM行の発光素子を含み、ここでM及びNは2以上の整数である。図3(A)の例では、発光素子配列201は、各々が複数の発光素子全体のうちのサブセットを含む20個の発光チップ400-1~400-20に分けて構成され、発光チップ400-1~400-20は、軸方向D1に沿って千鳥状に配列される。発光チップ400-1~400-20を総称して発光チップ400ともいう。図3(A)に示したように、20個の発光チップの全ての発光素子が軸方向D1において占める範囲は、入力画像データの最大幅Wが占める範囲よりも広い。したがって、軸方向D1の両端に位置するいくつかの発光素子は、画像の位置ずれが検出されない限り、感光体ドラム102を露光するために使用されなくてよい。プリント基板202の各発光チップ400は、コネクタ305を介して、画像コントローラ700(図7)に接続される。なお、以下では、説明の便宜上、軸方向D1に沿って並ぶ発光チップ400-1~400-20の枝番の小さい側を「左」、枝番の大きい側を「右」と称することがある。例えば、発光チップ400-1は左端の発光チップ400、発光チップ400-20は右端の発光チップである。プリント基板電極部群307は発光チップ400に電気的に接続するための電極部の集まりである。プリント基板電極部群307-1は発光チップ400-1に、プリント基板電極部群307-2は発光チップ400-2に、というように各プリント基板電極部群307-1~307-20は、それぞれの対応する発光チップ400-1~400-20と電気的に接続される。
【0017】
図4は、発光チップ400、及び発光チップ400内の発光素子602の配列を概略的に示している。1つの発光チップ400の各行に配列される発光素子602の個数J(J=N/20)は、例えば748に等しくてよい(J=748)。一方、1つの発光チップ400の各列に配列される発光素子602の個数Mは、例えば4に等しくてよい(M=4)。つまり、例示的な実施形態において、各発光チップ400は、軸方向D1に748個、周方向D2に4個として、計2992(=748×4)個の発光素子602を有する。周方向D2に隣り合う発光素子602の中心点の間の間隔Pは、例えば1200dpiの解像度に対応する約21.16μmであってよい。軸方向D1に隣り合う発光素子602の中心点の間の間隔もまた約21.16μmであってよく、この場合、748個の発光素子602は軸方向D1において約15.8mmの長さを占める。なお、図4には、説明の便宜上、各発光チップ400において発光素子602が完全に格子状に配列されている例を示しているが、実際には、各列のM個(M=4)の発光素子602は階段状に配列される。
【0018】
図5は、発光チップ400とプリント基板202の一部の概略的な構成を示す平面図である。各発光チップ400の複数の発光素子602は、例えば、シリコン基板である発光基板402の上に形成される。また、発光基板402には、複数の発光素子602を駆動するための回路部406が設けられる。発光基板電極部408-1~408-9は、画像コントローラ700(図7参照)と通信する信号線や、電源に接続する電源線や、グラウンドに接続するグラウンド線をプリント基板202から接続させるための電極部である。発光基板電極部408-1~408-9を総称して発光基板電極部408ともいう。プリント基板202のプリント基板電極部群307はプリント基板電極部308-1~308-9から構成される。プリント基板電極部308-1~308-9は、画像コントローラ700と通信する信号線や、電源に接続する電源線や、グラウンドに接続するグラウンド線を発光基板電極部408-1~408-9に接続させるための電極部である。プリント基板電極部308-1~308-9を総称してプリント基板電極部308ともいう。プリント基板電極部308-1は発光基板408-1に、プリント基板電極部308-2は発光チップ400-2に、というように各プリント基板電極部308-1~308-9はそれぞれの対応する発光基板電極部408-1~408-9と電気的に接続される。電気的接続に用いるのは、例えば、金でできたワイヤーであってよい。
【0019】
図6は、図5のA-A線での断面の一部を示している。発光基板402上には複数の下部電極504が形成される。隣接する2つの下部電極504の間には、長さdのギャップが設けられる。下部電極504の上には発光層506が設けられ、発光層506の上には上部電極508が設けられる。上部電極508は、複数の下部電極504に対する1つの共通電極である。下部電極504と上部電極508との間に電圧が印加されると、下部電極504から上部電極508に電流が流れることで発光層506が発光する。したがって、1つの下部電極504と、当該下部電極504に対応する発光層506及び上部電極508の部分領域が1つの発光素子602を構成する。即ち、本実施形態では、発光基板402は複数の発光素子602を含む。
【0020】
発光層506には、例えば、有機EL膜を使用することができる。上部電極508は、発光層506の発光波長を透過させるように、例えば、酸化インジウム錫(ITO)などの透明電極で構成される。なお、本実施形態では、上部電極508の全体が発光層506の発光波長を透過させているが、上部電極508の全体が発光波長を透過させる必要はない。具体的には、各発光素子602からの光が通過する部分領域が発光波長を透過させればよい。なお、図6では、1つの連続的な発光層506が形成されているが、下部電極504の幅Wと同等の幅を各々有する複数の発光層506が下部電極504の上にそれぞれ形成されてもよい。また、図6では、上部電極508は複数の下部電極504に対する1つの共通電極であるが、下部電極504の幅Wと同等の幅を各々有する複数の上部電極508が下部電極504のそれぞれに対応して形成されてもよい。また、各発光チップ400の下部電極504のうち第1の複数の下部電極504が第1の発光層506により覆われ、第2の複数の下部電極504が第2の発光層506により覆われてもよい。また、各発光チップ400の下部電極504のうち第1の複数の下部電極504に対応して第1の上部電極508が共通に形成され、第2の複数の下部電極504に対応して第2の上部電極508が共通に形成されてもよい。これらのような構成においても、1つの下部電極504と、当該下部電極504に対応する発光層506及び上部電極508の領域が1つの発光素子602を構成する。
【0021】
図7は、発光チップ400を制御するための制御構成に関連する回路図である。画像コントローラ700は、複数の信号線(ワイヤー)を介してプリント基板202と通信する制御回路である。画像コントローラ700は、CPU701、クロック生成部702、画像データ処理部703、レジスタアクセス部704、及び発光制御部705を有する。発光制御部705は、露光ヘッド106と共に露光装置を構成する構成要素である。発光制御部705は、プリント基板202との間の信号線を終端する。プリント基板202上のn番目の発光チップ400-n(nは1から20までの整数)は、信号線DATAn及び信号線WRITEnを介して発光制御部705へ接続される。信号線DATAnは、画像データを画像コントローラ700から発光チップ400-nへ送信するために使用される。信号線WRITEnは、画像コントローラ700が発光チップ400-nのレジスタに制御データを書き込むために使用される。
【0022】
発光制御部705と各発光チップ400との間には、さらに1つの信号線CLK、1つの信号線SYNC、及び1つの信号線ENが設けられる。信号線CLKは、信号線DATAn及びWRITEnでのデータの送信のためのクロック信号を送信するために使用される。発光制御部705は、クロック生成部702からの基準クロック信号に基づき生成したクロック信号を信号線CLKに出力する。信号線SYNC及び信号線ENに送信される信号については後述する。
【0023】
CPU701は、画像形成装置1の全体を制御する。画像データ処理部703は、読取部100又は外部装置から受信される画像データに対して画像処理を行って、プリント基板202上の発光チップ400の発光素子602の発光のオン・オフを制御するための二値のビットマップ形式の画像データを生成する。ここでの画像処理は、例えば、ラスタ変換、階調補正、色変換、及びハーフトーン処理を含み得る。画像データ処理部703は、生成した画像データを、入力画像データとして発光制御部705に送信する。レジスタアクセス部704は、各発光チップ400内のレジスタに書き込むべき制御データをCPU701から受信して発光制御部705に送信する。
【0024】
図8は、発光チップ400のレジスタに制御データを書き込む場合における各信号線の信号レベルの推移を示している。信号線ENには、通信の間、ハイレベルとなって通信中であることを示すイネーブル信号が出力される。発光制御部705は、イネーブル信号の立ち上がりに同期して、スタートビットを信号線WRITEnに送信する。続いて、発光制御部705は、書き込み動作であることを示すライト識別ビットを送信し、その後、制御データを書き込むレジスタのアドレス(本例では4ビット)と、制御データ(本例では8ビット)を送信する。発光制御部705は、レジスタへの書き込みの際に、例えば、信号線CLKに送信するクロック信号の周波数を3MHzとする。
【0025】
図9は、各発光チップ400に画像データを送信する場合における各信号線の信号レベルの推移を示している。信号線SYNCには、感光体ドラム102における各ラインの露光タイミングを示す周期的なライン同期信号が出力される。感光体ドラム102の周速度を200mm/sとし、周方向の解像度を1200dpi(約21.16μm)とすると、ライン同期信号は、約105.8μsの周期で出力される。発光制御部705は、ライン同期信号の立ち上がりに同期して、画像データを信号線DATA1~DATA20に送信する。本実施形態において、各発光チップ400は、2992個の発光素子602を有するため、約105.8μsの周期内に計2992個の発光素子602それぞれの発光・非発光を示す画像データを各発光チップ400に送信する必要がある。そのため、本例では、図9に示すように、画像データの送信の際、発光制御部705は、信号線CLKに送信するクロック信号の周波数を30MHzに設定する。
【0026】
図10は、1つの発光チップ400(n番目の発光チップ400-n)の詳細な構成を示す機能ブロック図である。図5にも示したように、発光チップ400は、9個のパッド408-1~408-9を有する。パッド408-1及びパッド408-2は、電源線により、電源電圧VCCに接続される。発光チップ400の回路部406の各回路には、この電源電圧VCCによる電力が供給される。パッド408-3及びパッド408-4は、グラウンド線により、グラウンドに接続される。回路部406の各回路及び上部電極508は、パッド408-3及びパッド408-4を介してグラウンドに接続される。信号線CLKは、パッド408-5を介して、転送部1003、レジスタ1102及びラッチ部1004-001~748に接続される。信号線SYNC及びDATAnは、パッド408-6及び408-7を介して、転送部1003に接続される。信号線EN及びWRITEnは、パッド408-8及び408-9を介して、レジスタ1102に接続される。レジスタ1102には、例えば発光素子602の所望の発光強度を示す制御データが格納される。
【0027】
転送部1003は、信号線SYNCからのライン同期信号を起点として、信号線CLKからのクロック信号に同期して、各々1つの発光素子602の発光又は非発光を示す一連の画素値を含む入力画像データを信号線DATAnから受信する。転送部1003は、信号線DATAnからシリアルに受信される一連の画素値について、M個(例えば、M=4)の画素値の単位でシリアル-パラレル変換を行う。例えば、転送部1003は、カスケード接続された4個のDフリップフロップを有し、4クロックにわたって入力される画素値DATA-1、DATA-2、DATA-3、DATA-4を並列化してラッチ部1004-0001~1004-748へ出力する。また、転送部1003は、ライン同期信号を遅延させるための4個のDフリップフロップをさらに有し、ライン同期信号が入力されてから4クロック遅れたタイミングで信号線LAT1を介してラッチ部1004-001へ第1ラッチ信号を出力する。
【0028】
k番目のラッチ部1004-k(kは1から748までの整数)は、第kラッチ信号の入力と同時に転送部1003から入力される4つの画素値DATA-1、DATA-2、DATA-3、DATA-4をラッチ回路により保持する。また、最後段のラッチ部1004-748を除いて、k番目のラッチ部1004-kは、第kラッチ信号を4クロック分遅延させて第(k+1)ラッチ信号を信号線LAT(k+1)を介してラッチ部1004-(k+1)へ出力する。そして、k番目のラッチ部1004-kは、第kラッチ信号の信号周期の間、ラッチ回路により保持している4つの画素値に基づく駆動信号を電流駆動部1104へ出力し続ける。例えば、ラッチ部1004-1へ第1ラッチ信号が入力されるタイミングとラッチ部1004-2へ第2ラッチ信号が入力されるタイミングとの間には、4クロック分の遅延がある。そのため、ラッチ部1004-1は1、2、3及び4番目の画素値に基づく駆動信号を電流駆動部1104へ出力するのに対し、ラッチ部1004-2は5、6、7及び8番目の画素値に基づく駆動信号を電流駆動部1104へ出力する。概していうと、ラッチ部1004-kは(4k-3)、(4k-2)、(4k-1)及び(4k)番目の画素値に基づく駆動信号を電流駆動部1104へ出力する。したがって、図10に示した実施形態では、748個のラッチ部1004-001~1004-748によって、2992(=748×4)個の発光素子602の駆動を制御するための2992個の駆動信号が電流駆動部1104へ略並列的に出力される。各駆動信号は、ハイレベル又はローレベルを示す二値信号である。
【0029】
電流駆動部1104は、それぞれ発光層506の部分領域を含む2992個の発光素子602にそれぞれ対応する2992個の発光駆動回路を有する。各発光駆動回路は、対応する駆動信号が発光のオンを意味するハイレベルを示している間、レジスタ1102内の制御データにより示される発光強度に対応する駆動電圧を、対応する発光素子602の発光層506に印加する。それにより、発光層506に電流が流れて発光素子602が発光する。なお、制御データは、各発光素子602について1つの個別の発光強度を示してもよく、発光素子602のグループごとに1つの発光強度を示してもよく、又は全ての発光素子602に共通の1つの発光強度を示してもよい。
【0030】
<多重露光の制御>
図4には各発光チップ400において発光素子602が完全に格子状に配列されている例を示したが、実際には、本実施形態において、各列のM個の発光素子602は一定のピッチで階段状に配列され得る。図11は、階段状に配列された発光素子による多重露光についての説明図である。ここでは、M=4である場合の、発光チップ400-1における発光素子の配置の例が部分的に示されている。図中のRj_m(j={0,1,...,J-1}、m={0,1,2,3})は、軸方向に左からj列目、周方向に上からm行目の発光素子602を表す。発光素子の周方向のピッチPは、上述したように、約21.16μmであってよい。各列のM個の発光素子のうちの隣り合う2つの発光素子の間の、軸方向における間隔、即ち発光素子の軸方向のピッチPは、4800dpiの解像度に対応する約5μmであってよい。
【0031】
このように各列の4個の発光素子が階段状に配列されることで、それら4個の発光素子のうちの隣り合うどの2つの発光素子も、軸方向において部分的に重複する範囲を占める。そして、入力画像データの各画素位置に対応する列の4個の発光素子が感光体ドラム102が回転している間に逐次的に発光することにより、各画素位置に対応するスポットが感光体ドラム102の表面上に形成される。図11の例では、入力画像データのi番目のラインの左端の画素値が発光オンを示している場合、発光素子R0_0、R0_1、R0_2、R0_3が感光体ドラム102の表面上のラインLにそれぞれ対向するタイミングで逐次的に発光する。その結果、ラインLの左端のスポット領域が多重的に露光され、対応するスポットSPが形成される。同様に、入力画像データのi番目のラインの左からj番目の画素値が発光オンを示している場合、発光素子Rj_0、Rj_1、Rj_2、Rj_3が感光体ドラム102の表面上のラインLにそれぞれ対向するタイミングで逐次的に発光する。その結果、ラインLの左からj番目のスポット領域が多重的に露光され、対応するスポットSPが形成される。
【0032】
図11から理解されるように、本実施形態において、軸方向に隣り合う2つの列の発光素子もまた、軸方向において部分的に重複する範囲を占める。同様に、軸方向に隣り合う2つの発光チップ400のうちの、左の発光チップ400の右端列の発光素子、及び右の発光チップ400の左端列の発光素子もまた、軸方向において部分的に重複する範囲を占める。20個の発光チップ400の全体にわたって、発光素子の軸方向のピッチPは約5μmで一定である。これら発光チップ400の各列の4個の発光素子が適切なタイミングで逐次的に発光することで、感光体ドラム102の表面上に、一定のスポット間隔を有し互いに部分的に重複する一連のスポットからなる、滑らかな静電潜像のラインが形成され得る。そして、そうしたラインが周方向に連続的に形成される結果として、2次元の静電潜像が生み出される。
【0033】
図12A図12Dは、入力画像データに基づく発光制御の手順についての説明図である。画像形成に際して、発光制御部705は、二値のビットマップ形式の入力画像データIM1を画像データ処理部703から受信する。図12Aの左では、2次元の画素値配列である入力画像データIM1の上からi番目のラインの左からj番目の画素値を(j,i)と表記している(j={0,1,2,...}、i={0,1,2,...})。発光制御部705は、入力画像データIM1の先頭に(M-1)ライン分のダミーの画素値を付加する。M=4の場合、付加されるダミーの画素値を含めると、画素値のインデックスiのレンジは{-3,-2,-1,0,1,2,...}となる。ダミーの画素値は、例えば発光のオフを意味するゼロであってよい。発光制御部705は、1ラインの画素値の個数が軸方向の発光素子の個数に等しくなるように入力画像データIM1の左右にもダミーの画素値を付加し得るが、説明の簡明さのために、ここでは軸方向に関しては実効的な画素値のみを示している。
【0034】
画像形成の最初のライン周期tにおいて、発光制御部705は、入力画像データIM1の上から4ラインの画素値を読出し、読出した画素値の2992(=748×4)個ごとのサブセットを信号線DATAnを介して発光チップ400-nへ出力する。図12Aの右に示した発光チップ400-1に注目すると、ライン周期tの期間中に、(0,-3)から(748,0)までの画素値を含む読出し範囲RD内の画像データが、信号線DATA1を介して入力される。発光チップ400-1は、入力された画像データをシリアル-パラレル変換し、それら画素値に基づく駆動信号を2992個の発光素子へそれぞれ供給する。例えば、画素値(0,-3)、(0,-2)、(0,-1)、(0,0)及び(1,-3)に基づく駆動信号が、発光素子R0_0、R0_1、R0_2、R0_3及びR1_0へ供給される。とりわけ、図中で破線で示したように、発光素子R0_3を含む4行目の発光素子に、入力画像データIM1のインデクスi=0のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号が供給される。その結果、感光体ドラム102の表面上のラインLが、入力画像データIM1のラインDLの画素値集合に従って露光される。但し、この時点では、多重露光の途中であり、静電潜像のラインLの形成は完了しない。
【0035】
図12Bには、次のライン周期t+1の期間中の発光チップ400-1の駆動の様子が示されている。ライン周期t+1において、発光制御部705は、入力画像データIM1の読出し範囲RDを1ライン下へ移動させ、(0,-2)から(748,1)までの画素値を読出して、信号線DATA1を介して発光チップ400-1へ出力する。発光チップ400-1は、入力されたそれら画素値に基づく駆動信号を2992個の発光素子へ供給する。例えば、画素値(0,-2)、(0,-1)、(0,0)、(0,1)及び(1,-2)に基づく駆動信号が、発光素子R0_0、R0_1、R0_2、R0_3及びR1_0へ供給される。ライン周期t+1においては、発光素子R0_2を含む3行目の発光素子に入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号が供給される。このとき、感光体ドラム102が周方向に回転しているため、感光体ドラム102の表面上のラインLは、発光チップ400-1の3行目の発光素子に対向している。その結果、感光体ドラム102の表面上のラインLは、再び入力画像データIM1のラインDLの画素値集合に従って露光される。
【0036】
図12Cには、次のライン周期t+2の期間中の発光チップ400-1の駆動の様子が示されている。ライン周期t+2において、発光制御部705は、入力画像データIM1の読出し範囲RDをさらに1ライン下へ移動させ、(0,-1)から(748,2)までの画素値を読出して、信号線DATA1を介して発光チップ400-1へ出力する。発光チップ400-1は、入力されたそれら画素値に基づく駆動信号を2992個の発光素子へ供給する。ライン周期t+2においては、発光素子R0_1を含む2行目の発光素子に入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号が供給される。このとき、感光体ドラム102の表面上のラインLは、発光チップ400-1の2行目の発光素子に対向している。その結果、感光体ドラム102の表面上のラインLは、三たび入力画像データIM1のラインDLの画素値集合に従って露光される。
【0037】
図12Dには、次のライン周期t+3の期間中の発光チップ400-1の駆動の様子が示されている。ライン周期t+3において、発光制御部705は、入力画像データIM1の読出し範囲RDをさらに1ライン下へ移動させ、(0,0)から(748,3)までの画素値を読出して、信号線DATA1を介して発光チップ400-1へ出力する。発光チップ400-1は、入力されたそれら画素値に基づく駆動信号を2992個の発光素子へ供給する。ライン周期t+3においては、発光素子R0_0を含む1行目の発光素子に入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号が供給される。このとき、感光体ドラム102の表面上のラインLは、発光チップ400-1の1行目の発光素子に対向している。その結果、感光体ドラム102の表面上のラインLは、四たび入力画像データIM1のラインDLの画素値集合に従って露光される。この時点で、発光チップ400の各列の4個の発光素子による多重露光が行われたことになり、静電潜像のラインLの形成が完了する。静電潜像のラインLに後続するラインも、こうしたライン周期の繰り返しを通じて、同様に感光体ドラム102の表面上に形成され得る。このように、本実施形態では、(0,0)から(748,3)までの各画素値は、4つの発光素子602に入力される。具体的には、例えば、(0,0)の画素値は、4つの発光素子R0_0、0_1、R0_2、R0_3に入力される。また、例えば、(1,0)の画素値は、4つの発光素子R1_0、1_1、R1_2、R1_3に入力される。即ち、(0,0)の画素値に対応する感光体ドラム102上のスポットは4つの発光素子R0_0、0_1、R0_2、R0_3によって形成され、(1,0)の画素値に対応する感光体ドラム102上のスポットは4つの発光素子R1_0、1_1、R1_2、R1_3によって形成される。
【0038】
上の説明から理解されるように、発光制御部705は、入力画像データIM1のMラインにわたる読出し範囲から読出される画素値に基づいて、複数の発光素子602を発光させる。その読出し範囲は、ライン周期ごとに1ラインずつ移動する。
【0039】
<プリント基板の構成>
図13を用いて、発光チップ400が実装される前のプリント基板202の構成を説明する。図13A及び図13Bは、発光チップ400が実装される前のプリント基板202である。図13Aは、プリント基板202において発光チップ400が実装される面を示す。すなわち、プリント基板202において発光素子配201が実装される面は表面に対応する。図13Bは、プリント基板202において発光チップ400が実装される面とは反対側の面であって、コネクタ305が実装されている面を示す。すなわち、プリント基板202において、発光チップ400が実装される面とは反対側の面は裏面に対応する。集合体800は、発光チップ400が実装される前のプリント基板202-1~202-6と、複数の連結部801、捨て基板802から成る。本実施例では集合体800に含まれるプリント基板202は6個であるが、2つ以上のプリント基板202が含まれていればこの数に限らない。
【0040】
図13Aに示すように、プリント基板202の表面には、発光チップ400に設けられた発光基板電極部408と、プリント基板202を電気的に接続するためのプリント基板電極部308(不図示)と、詳細は後述する電子部品302が設けられる。本実施例では電子部品302はプリント基板202上の電子回路を構成する部品を指す。例えば、電子部品302にはコンデンサやダイオード、抵抗や発光素子602の温度を計測するサーミスタなどが含まれる。電子部品302は基板202における発光チップ400が設けられる面と同一の面に設けられる。電子部品302は一つであってもよく、複数実装されていてもよい。さらに電子部品302は一種類に限らず複数個設けられていても良い。
【0041】
電子部品302の一例としてバイパスコンデンサがあるバイパスコンデンサは発光チップ400のそれぞれに対して少なくとも一つずつ設けられ、一端が発光チップ400に供給される電源線(不図示)に、他端がGNDにそれぞれ接続される。発光チップ400に含まれる駆動部1104は駆動状態に応じて消費電流が変化する。消費電流が増加した場合、電源電圧の電圧降下が発生し、駆動部1104に供給される電圧が低下することで駆動部1104が正常に動作しなくなる虞がある。また、駆動部1104の消費電流が低下した場合、電源から供給される電圧が上昇し、駆動部1104が正常に動作しなくなる虞がある。バイパスコンデンサを電源と発光チップ400との間に設けた場合、電源から供給される電圧が低下した場合にはバイパスコンデンサに蓄えられている電荷を放出し、電源から供給される電圧が上昇した場合にはバイパスコンデンサに電荷を蓄えることができる。上述のように発光チップ400に供給される電圧の変化をバイパスコンデンサによって低減することで、発光チップ400に供給される電圧の変化を低減することができる。
【0042】
なお、配線におけるインピーダンスも発光チップ400に供給される電圧変化の要因となるため、バイパスコンデンサと発光チップ400との間の配線長さは可能な限り短いほうが好ましい。すなわち、バイパスコンデンサと発光チップ400との間の配線長さを短くするために、バイパスコンデンサはプリント基板202において発光チップ400と同一面、かつ、発光チップ400の近傍に配置されることが望ましい。本実施例では発光チップ400にそれぞれ対応するバイパスコンデンサは、基板の長手方向において対応する発光チップ400にオーバーラップする位置に設けられる。バイパスコンデンサが基板の長手方向において発光チップ400にオーバーラップする位置に設けられた場合、基板202の短手方向に沿った方向におけるバイパスコンデンサと発光チップ400との距離は3mm以下であることが望ましい。
【0043】
また、電源から発光チップ400に供給される電流は外乱等により高周波なノイズ成分が含まれる場合がある。バイパスコンデンサは高周波なノイズ成分が流れやすいため、高周波なノイズ成分をグラウンドに逃がすことで発光チップ400に流れるノイズ成分を低減することができる。ノイズ成分は周波数が異なる場合が多く、バイパスコンデンサの容量リアクタンスによって流れやすいノイズ成分は異なる。このため、異なる容量リアクタンスのバイパスコンデンサを複数用いることで、周波数の異なるノイズ成分を除去することができる。本実施例では容量リアクタンスの異なるバイパスコンデンサをプリント基板202の表面に3つ設けている。なおバイパスコンデンサの数は一例でありこの他の数であってもよい。また、バイパスコンデンサの配置は、上述したように発光チップ400の近傍が好ましいが、これに限らず他の位置に設けてもよい。
【0044】
<発光チップの実装工程>
次に発光チップ400の実装工程を説明する。図14(A)は発光チップ400が実装される前のプリント基板202を示している。発光チップ400はプリント基板202の表面に設けられた発光チップ実装領域803に設けられる。プリント基板202に発光チップ400-1~20を実装する場合、発光チップ実装領域803のそれぞれは発光チップ400のうち異なる一つに対応して設けられ、発光チップ実装領域803は発光チップ実装領域800-1~20の20領域で構成される。
【0045】
図14(B)は、プリント基板202において、発光チップ実装領域803-1~20のそれぞれに接着剤304を塗付した状態を示した図である。接着剤304を塗付した発光チップ実装領域803のそれぞれに発光チップ400を配置することで発光チップ400がプリント基板202に実装される。本実施例では接着座304は紫外線硬化型の接着剤を用いるがこの他の接着剤を用いても良い。例えば、接着剤304は熱硬化型の接着剤であってもよく、導電性を有する接着剤であってもよい。また、接着剤304が塗付される領域は、発光チップ実装領域803の全部分、もしくは一部分のいずれであってもよい。さらに接着剤304は発光チップ実装領域803からはみ出して塗付されてもよい。
【0046】
図14(C)に発光チップ400を実装した後のプリント基板202を示す。接着剤304が塗付された発光チップ実装領域803に発光チップ400が実装され接着される。
【0047】
詳細は後述するが、プリント基板202に発光チップ400を実装した後に、発光チップ400に設けられた発光素子602の表面に付着した異物を除去するクリーニング工程を行う。発光素子602の表面に付着した異物は、例えば、発光チップ400の割断時に発生するシリコンの破片や、空気中に浮遊する埃がある。発光素子602の表面に上述の異物が付着した場合、発光素子602が発する光が異物に遮られ、感光体ドラム102に到達する光量が低下する虞がある。このため、発光素子602の表面に付着した異物は除去することが望ましい。
【0048】
発光素子602の表面の異物を除去するクリーニング工程を行った後に、プリント基板202に設けられたプリント基板電極部308と、発光チップ400に設けられた発光基板電極部408とを電気的に接続する。本実施例ではワイヤーで電気的な接続を行うワイヤーボンディングを用いて接続が行われるが他の手法をもちいて電気的な接続を行ってもよい。
【0049】
最後に、集合体800をなす複数のプリント基板202がそれぞれ単一のプリント基板202となるように複数の連結部801(図13B参照)を切断する。本実施例ではレーザーカット加工を用いて連結部801を切断するが、他の方法を用いて連結部801を切断しても良い。例えば機械加工などによって連結部801を切断してもよい。
【0050】
以上のような工程を経て、初期状態の集合体800から発光チップ400が実装された単一のプリント基板202(図3参照)が得られる。
【0051】
次に、集合体800をなす各プリント基板202に実装された複数の発光チップ400の複数の発光素子602上に付着した異物を粘着性のあるクリーニングローラー900で除去する。発光素子602上に付着している異物は、発光チップ400の割断時に発生するシリコン破片や、一般環境に浮遊する埃などである。すなわち、集合体800をなす各プリント基板202の一方の面に実装された複数の発光チップ400の発光素子602上に付着した異物を除去することを目的に、発光素子クリーニング工程が行われる。
【0052】
<発光素子の表面のクリーニング方法>
図15を用いて、本実施例における発光素子クリーニング工程を詳しく説明する。なお、発光チップ400、電子部品302、接着剤304は、それぞれの高さ関係をわかりやすくするために大きく、または小さく図示しており、実際の高さの比率とは異なる場合がある。
【0053】
本実施例において発光素子602の表面に付着した異物は、粘着性のあるローラーであるクリーニングローラー900を発光素子602の表目に接触させることで除去する。上述した異物は静電気力により発光素子602の表面に吸着している場合があるため、エアブローなどによるクリーニング方法では発光素子602の表面に付着した異物を除去することができない虞がある。このため、発光素子602の表面に付着した異物はクリーニングローラーを接触させることで除去する手法が望ましい。
【0054】
図15に示すようにクリーニングローラー900は所定の位置で固定される。集合体800は、発光素子602の表面とクリーニングローラー900が接触した状態で、基板202の一端から他端へ向かって基板202の長手方向に沿った方向に移動する。クリーニングローラー900は、基板202の長手方向に直交し、かつ、基板202の短手方向に平行な回転軸を中心に回転する。クリーニングローラー900は、発光素子602の表面とクリーニングローラー900との間で発生する摩擦力によって回転しながら発光素子602の表面に付着した異物を粘着力によって除去する。集合体800が移動する方向は基板202の長手方向に沿った方向であればよく、発光チップ400-1から発光チップ400-20へ向かう方向でも良いし、発光チップ400-20から発光チップ400-1へ向かう方向であってもよい。
【0055】
本実施例では、クリーニングローラー900を固定し集合体800を移動させる手法を示したが、集合体800を固定し、クリーニングローラー900を移動させることで発光素子602の表面に付着した異物を除去してもよい。さらに、集合体800及びクリーニングローラー900の双方が移動することで発光素子602の表面に付着した異物を除去してもよい。
【0056】
また、本実施例では基板202の長手方向に直交し、かつ、基板202の短手方向に平行な回転軸を中心に回転するクリーニングローラー900を用いたが、回転軸の方向はこれに限らない。例えば、基板202の短手方向に直交し、かつ、基板202の長手方向に平行な回転軸を中心に回転するクリーニングローラー900を用いて発光素子602の表面に付着した異物を除去してもよい。
【0057】
さらに本実施例では発光素子602の表面に付着した異物を除去する方法としてクリーニングローラーを用いる方法を記載したがこれに限らず他の手法をもちいても良い。すなわちクリーニングローラーを用いずに粘着性のある清掃部材を発光素子602の表面に接触させることで異物を除去する清掃方法を用いても良い。
【0058】
さらには粘着性のある清掃部材を用いずにエアフローを用いて異物を除去しても良い。この時発光素子602に付着した異物が帯電していることで発光素子602の表面に異物602が静電気力によって吸着している場合がある。このため、イオナイザーを用いて発光素子602の表面もしくは異物のいずれかを除電することでエアフローによって異物を効果的に除去することができる。
【0059】
図15(A)は表面に発光チップ400のみが実装された基板202の長手方向における断面を示した図である。図15(A)において基板202に実装されているのは発光チップ400のみであるため、クリーニングローラー900を発光素子602の表面に確実に接触させることができる。
【0060】
図15(B)は表面に発光チップ400及び電子部品302が実装された基板202の長手方向における断面を示した図である。図15(B)では、基板202の長手方向及び短手方向に直交する高さ方向において、電子部品302の基板202の表面からの高さが、発光チップ400の基板202の表面からの高さよりも高い。なお本実施例では電子部品302の高さは、前記高さ方向において、基板202のクリーニングローラー900に対向する面から最も遠い電子部品302の端部までの距離で定義する。また、本実施例において発光チップ400の高さは、前記高さ方向において、基板202のクリーニングローラー900に対向する面から最も遠い発光チップ400の端部までの距離で定義する。
【0061】
電子部品302の高さが発光チップ400の高さよりも高い場合、クリーニングローラー900が、電子部品302に接触し発光チップ400が有する発光素子602の表面に接触しない虞がある。この場合、発光素子602の表面に付着した異物をクリーニングローラー900が十分に除去することができない。
【0062】
図15(C)は表面に発光チップ400及び電子部品302が実装された基板202の長手方向における断面を示した図である。図15(C)では図15(B)と異なり、電子部品302の基板202の表面からの高さが発光チップ400の基板202の表面からの高さよりも低い。図15(C)のように電子部品302の高さ及び発光チップ400の高さを定義することで、クリーニングローラー900が電子部品302に阻害されることなく発光チップ400が有する発光素子602の表面に接触し、発光素子602の表面に付着した異物を十分に除去することができる。
【0063】
なお、発光素子602の表面に付着した異物を確実に除去する構成として、図15(C)のように電子部品302の高さが発光チップ400の高さよりも低い構成を示したが、電子部品302及び発光チップ400の高さが同一の場合でもクリーニングローラー900を発光素子602の表面に接触させることができる。
【0064】
また、粘着性のあるクリーニングローラー900は、弾性変形するゴム素材であってもよい。クリーニングローラー900がゴム素材である場合に、発光チップ400よりも高さが高い電子部品302が基板202に設けられていたとしても、電子部品302が基板202の短手方向において発光チップ400よりも十分に離れた位置に設けられていれば、クリーニングローラー900が電子部品302に接触したとしてもクリーニングローラー900を発光チップ400に接触させることができる。この時、電子部品302は基板202の短手方向に沿った方向において発光チップ400と3mm以上離れており、発光チップ400とバイパスコンデンサとの高さの差は0.4mm以内であることが望ましい。
【0065】
以上、本実施例では発光チップが実装された基板202において電子部品302の基板202の表面からの高さを発光チップ400の高さよりも低くする。上述のように電子部品302及び発光チップ400の高さを設定することで発光素子602の表面に付着した異物を確実に除去することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 画像形成装置
101 画像形成部
102 感光体ドラム
106 露光ヘッド
201 発光素子配列
202 プリント基板
203 ロッドレンズアレイ
204 ハウジング
302 バイパスコンデンサ
304 接着剤
400 発光チップ
402 発光基板
602 発光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
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図15