(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179167
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】液滴の製造装置及び液滴の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20241219BHJP
B01F 33/3011 20220101ALI20241219BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241219BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B01J19/00 321
B01F33/3011
C12M1/00 A
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097788
(22)【出願日】2023-06-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業「電界誘起気泡及びDNAナノ粒子結晶による長鎖DNAの導入・操作技術の研究」委託研究 産業技術強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】鳥取 直友
(72)【発明者】
【氏名】角村 勇真
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 臣耶
(72)【発明者】
【氏名】山西 陽子
【テーマコード(参考)】
4B029
4G036
4G075
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB01
4B029CC01
4G036AC70
4G075AA13
4G075AA27
4G075AA39
4G075BB08
4G075BD09
4G075BD15
4G075BD16
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB50
4G075FA12
4G075FB12
(57)【要約】
【課題】本発明は、目的の粒子や細胞を効率よく液滴中に封入するマイクロ流体デバイスを用いた液滴生成技術を確立することを課題とする。
【解決手段】本発明は、液滴生成管路を有し、液滴生成管路の少なくとも一部では、粒子状物を含む第1の流体と、第1の流体とは非混和である第2の流体が存在し、液滴生成管路中において渦流により粒子状物が一定時間滞留する、粒子状物を封入した液滴の製造装置に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴生成管路を有し、
前記液滴生成管路の少なくとも一部では、粒子状物を含む第1の流体と、前記第1の流体とは非混和である第2の流体が存在し、
前記液滴生成管路中において渦流により粒子状物が一定時間滞留する、粒子状物を封入した液滴の製造装置。
【請求項2】
前記液滴生成管路には狭窄部が設けられている、請求項1に記載の液滴の製造装置。
【請求項3】
前記第1の流体を流す第1の流体管路と、前記第2の流体を流す第2の流体管路を有し、前記第1の流体管路と前記第2の流体管路が前記液滴生成管路に連結している、請求項1又は2に記載の液滴の製造装置。
【請求項4】
少なくとも2本の第2の流体管路が前記液滴生成管路に連結している、請求項3に記載の液滴の製造装置。
【請求項5】
前記液滴生成管路の連結部に向けて第2の流体管路の管路直径が大きくなっている、請求項3に記載の液滴の製造装置。
【請求項6】
前記狭窄部の最小幅が1mm以下である、請求項2に記載の液滴の製造装置。
【請求項7】
前記液滴生成管路の下流に液滴回収部を備える、請求項1又は2に記載の液滴の製造装置。
【請求項8】
第1の流体は水系流体であり、第2の流体は油系流体である、請求項1又は2に記載の液滴の製造装置。
【請求項9】
粒子状物を含む第1の流体と、前記第1の流体とは非混和である第2の流体を接触させて液滴を形成する工程を含み、
前記第1の流体中において渦流により粒子状物を一定時間滞留させる、粒子状物を封入した液滴の製造方法。
【請求項10】
前記粒子状物のうち少なくとも1個が前記第1の流体内において一定時間滞留し、
滞留した少なくとも1個の粒子状物を含む2個以上の粒子状物が液滴中に封入される、請求項9に記載の液滴の製造方法。
【請求項11】
滞留した少なくとも1個の粒子状物のもとに、他の粒子状物が到着することで、2個以上の粒子状物が封入された液滴が形成される、請求項9又は10に記載の液滴の製造方法。
【請求項12】
前記第2の流体は少なくとも2方面から供給される、請求項9又は10に記載の液滴の製造方法。
【請求項13】
前記第1の流体は水系流体であり、前記第2の流体は油系流体である、請求項9又は10に記載の液滴の製造方法。
【請求項14】
前記第1の流体の流量は0.001~100.0μl/minであり、
前記第2の流体の流量は0.01~1000.0μl/minである、請求項9又は10に記載の液滴の製造方法。
【請求項15】
前記第1の流体の流量をPとし、前記第2の流体の流量をQとした場合、Q/Pの値が0.1~5000である、請求項9又は10に記載の液滴の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物を封入した液滴の製造装置及び粒子状物を封入した液滴の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液滴を生成するマイクロ流体デバイスが知られている。このようなマイクロ流体デバイスでは、例えば、分散相と連続相の2つの非混和性の流体が交わり液滴が生成される。また、マイクロ流体デバイスを用いた液滴生成技術を利用し、目的の粒子や細胞を液滴中に封入する技術も検討されている。例えば、特許文献1には、細胞または細胞様構造物を1細胞または構造物単位ずつ液滴中に封入する工程を含む細胞または細胞様構造物中のポリヌクレオチドを増幅する方法が開示されている。また、特許文献2にはデバイス中で液滴を生成させるための方法が開示されており、さらには、第1流体管路、第2流体管路、第1流体管路と第2流体管路との間に開口部を含み、パルスレーザーに連結され、レーザーによって第1流体管路中で1以上のキャビテーション気泡の一時的形成を誘発することを制御するように構成された、コントローラを含む、液滴を生成するためのデバイスが開示されている。
【0003】
そうした中、近年は、細胞間の相互作用の解析や、標的の細胞同士を融合させた融合細胞の作製をするために、微小な構造物を用いて、目的の粒子や細胞を構造物へと捕捉・ペアリングする技術が検討されている。しかしながら、微小な構造物を用いて目的の粒子や細胞をペアリングする手法では、構造物の数によって捕捉・ペアリング可能な粒子や細胞数が規定されるほか、操作後に粒子を回収することが難しいといった課題がある。このため、マイクロ流体デバイスを用いた液滴生成技術を利用し、複数の目的の粒子や細胞を1つの液滴中に封入する技術の開発が進められている。マイクロ流体デバイスを用いた手法では、連続的に細胞を封入した液滴を生成することが可能となり、生成された液滴の回収も容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/216271号
【特許文献2】特開2018-034154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マイクロ流体デバイスを用いて液滴を生成する際には、分散相に懸濁している粒子が液滴生成部へとランダムに流れてきた後、液滴へと封入されるため、目的の粒子や細胞の封入効率が低いという課題がある。
【0006】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、目的の粒子や細胞を効率よく液滴中に封入するマイクロ流体デバイスを用いた液滴生成技術を確立することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の具体的な態様の例を以下に示す。
【0008】
[1] 液滴生成管路を有し、
液滴生成管路の少なくとも一部では、粒子状物を含む第1の流体と、第1の流体とは非混和である第2の流体が存在し、
液滴生成管路中において渦流により粒子状物が一定時間滞留する、粒子状物を封入した液滴の製造装置。
[2] 液滴生成管路には狭窄部が設けられている、[1]に記載の液滴の製造装置。
[3] 第1の流体を流す第1の流体管路と、第2の流体を流す第2の流体管路を有し、第1の流体管路と第2の流体管路が液滴生成管路に連結している、[1]又は[2]に記載の液滴の製造装置。
[4] 少なくとも2本の第2の流体管路が液滴生成管路に連結している、[3]に記載の液滴の製造装置。
[5] 液滴生成管路の連結部に向けて第2の流体管路の管路直径が大きくなっている、[3]又は[4]に記載の液滴の製造装置。
[6] 狭窄部の最小幅が1mm以下である、[2]~[5]のいずれかに記載の液滴の製造装置。
[7] 液滴生成管路の下流に液滴回収部を備える、[1]~[6]のいずれかに記載の液滴の製造装置。
[8] 第1の流体は水系流体であり、第2の流体は油系流体である、[1]~[7]のいずれかに記載の液滴の製造装置。
[9] 粒子状物を含む第1の流体と、第1の流体とは非混和である第2の流体を接触させて液滴を形成する工程を含み、
第1の流体中において渦流により粒子状物を一定時間滞留させる、粒子状物を封入した液滴の製造方法。
[10] 粒子状物のうち少なくとも1個が第1の流体内において一定時間滞留し、
滞留した少なくとも1個の粒子状物を含む2個以上の粒子状物が液滴中に封入される、[9]に記載の液滴の製造方法。
[11] 滞留した少なくとも1個の粒子状物のもとに、他の粒子状物が到着することで、2個以上の粒子状物が封入された液滴が形成される、[9]又は[10]に記載の液滴の製造方法。
[12] 第2の流体は少なくとも2方面から供給される、[9]~[11]のいずれかに記載の液滴の製造方法。
[13] 第1の流体は水系流体であり、第2の流体は油系流体である、[9]~[12]のいずれかに記載の液滴の製造方法。
[14] 第1の流体の流量は0.001~100.0μl/minであり、
第2の流体の流量は0.01~1000.0μl/minである、[9]~[13]のいずれかに記載の液滴の製造方法。
[15] 第1の流体の流量をPとし、第2の流体の流量をQとした場合、Q/Pの値が0.1~5000である、[9]~[14]のいずれかに記載の液滴の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、目的の粒子状物を効率よく液滴内に封入することができる。本発明によれば、目的の粒子状物を封入した液滴の製造装置及び液滴の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の液滴製造装置の構成を説明する概略図である。
【
図2】他の実施形態の液滴製造装置において、合流部構造を説明する概略図である。
【
図3】本実施形態の液滴製造装置において、合流部における分散相の流れを蛍光ビーズにより可視化した顕微鏡写真である。
【
図4】本実施形態の液滴製造装置を用いて、細胞を封入した液滴を生成した様子を観察した顕微鏡写真である。
【
図5】複数細胞が液滴に封入される様子を説明するイメージ図である。
【
図6】2個以上の細胞が封入された液滴が生成された際の第1の流体および第2の流体の流量の関係を示す結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
(液滴製造装置)
本実施形態は、液滴生成管路を有し、液滴生成管路の少なくとも一部では、粒子状物を含む第1の流体(以下、粒子懸濁液ともいう)と、第1の流体とは非混和である第2の流体が存在し、液滴生成管路中において渦流により粒子状物が一定時間滞留する、粒子状物を封入した液滴の製造装置に関する。なお、本明細書において、粒子状物には、粒子の他に、細胞、細胞様構造物等が含まれる。
【0013】
本実施形態は、上記構成を有するため、目的の粒子状物を効率よく液滴内に封入することができる。さらに、本実施形態は、上記構成を有するため、複数の目的の粒子状物を効率よく液滴内に封入することができる。ここで、下記に示すポアソン分布により算出される、粒子状物が封入された液滴のうち、2個の粒子状物が液滴に封入される割合(理論値)は、1.12×10-1%であり、3個の粒子状物が液滴に封入される割合は8.32×10-5%と低い確率である。
【0014】
【0015】
上記式においてP(x)はx個の粒子状物が封入されている液滴の割合であり、λは1つの液滴の平均封入細胞数である。なお、eはネイピア数(e= 2.71828…)であり、x!はxの階乗を表す。
【0016】
これに対して、本実施形態では、液滴生成管路中において渦流を発生させ、その渦流中において粒子状物を一定時間滞留させることで、1つの液滴内に2個以上の粒子状物が封入される割合を高めることができる。本実施形態において、1つの液滴内に2個以上の粒子状物が封入される割合は、0.001%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがより好ましく、0.1%以上であることがさらに好ましく、0.5%以上であることが一層好ましく、1%以上であることがより一層好ましく、2%以上であることがさらに一層好ましく、3%以上であることが特に好ましく、5%以上であることが最も好ましい。
【0017】
本実施形態において第1の流体は、水系流体であることが好ましい。水系流体としては、例えば、水や各種水溶液を挙げることができる。水溶液としては、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム緩衝液、酢酸緩衝液等を好ましく挙げることができる。また、水系流体としては、細胞の培養液や細胞融合用バッファー(ソルビトールや酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等を含む溶液)を用いてもよい。水系流体は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
第1の流体は、粒子状物を含む。粒子状物としては、粒子や細胞、細胞様構造物等を挙げることができる。第1の流体は1種類の粒子状物を含んでいてもよく、この場合、第1の流体は粒子又は細胞を含むことが好ましく、細胞を含むことがより好ましい。また、第1の流体は複数種の粒子状物を含んでいてもよく、この場合、異種の粒子の組み合わせ、異種の細胞の組み合わせ、粒子と細胞の組み合わせ、粒子と細胞様構造物の組み合わせ、細胞と細胞様構造物の組み合わせが挙げられる。
【0019】
粒子としては、例えば、球形や非球形の無機粒子や有機粒子を挙げることができる。このような粒子としては、ラテックス等のポリマー粒子、ゲル粒子、金属粒子、金属酸化物等の非金属粒子等が挙げられる。また、粒子は無機材料や有機材料を含むマイクロビーズであることが好ましい。例えば、マイクロビーズの材質としては、金や銀等の金属、ステンレス等の金属化合物、ガラス、ポリスチレンやポリカーボネート等の樹脂を挙げることができる。安価で軽量である観点から、樹脂製のマイクロビーズを用いることが特に好ましい。マイクロビーズ直径は液滴生成管路や狭窄部の大きさ等に応じて当業者が適宜決定することができるが、例えば、1nm~1mmであってもよく、1~100μmであってもよい。
【0020】
マイクロビーズの表面もしくは内部には、各種反応物質が結合されていてもよい。反応物質としては、例えば、核酸、タンパク質、糖タンパク質、糖鎖、脂質等を挙げることができる。より具体的には、DNA等の各種核酸分子及びオリゴヌクレオチド等のその断片、抗原・抗体等のタンパク質及びペプチド類、脂質及び糖類、または薬剤等の低分子化合物等を挙げることができる。また、マイクロビーズの表面には蛍光色素等が結合されていてもよく、マイクロビーズは蛍光ビーズであってもよい。
【0021】
また、粒子は、ゲル微粒子であってもよい。ゲル微粒子としては、例えば、細胞を封入したゲル微粒子を用いることができる。
【0022】
細胞としては、単細胞生物の細胞、多細胞生物の細胞、細菌、真菌等を挙げることができる。なお、細胞には、細胞凝集塊(スフェロイド)も含まれる。
【0023】
細胞様構造物としては、細胞内小器官(例えば、ミトコンドリア、細胞核、リソソーム、リボソーム)、細胞外小胞、葉緑体、ウイルス等を挙げることができる。
【0024】
第1の流体に含まれる粒子状物の含有量は、10個/mL以上であってもよく、50個/mL以上であってもよく、100個/mL以上であってもよく、500個/mL以上であってもよく、1000個/mL以上であってもよい。また、第1の流体に含まれる粒子状物の含有量は、1×108個/mL以下であってもよく、1×107個/mL以下であってもよく、1×106個/mL以下であってもよい。なお、本実施形態では、液滴生成管路中において渦流により粒子状物を滞留させた後に、液滴内に封入しているため、液滴への封入効率が高められている。このため、第1の流体に含まれる粒子状物の含有量を少なくすることができる。本実施形態では、粒子状物が希少なサンプルである場合などであっても粒子状物を封入した液滴を作製することができる。
【0025】
第1の流体は、粒子状物の他に任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、界面活性剤、アガロース、コラーゲン、キトサン、デキストラン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0026】
本実施形態において第2の流体は、油系流体であることが好ましい。油系流体としては、特に限定されず水に不溶な(水と相分離する)ものを広く使用することができる。油系流体としては、例えば、炭化水素油(例えば、デカン、オクタン等のアルカン類、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類等)、合成エステル油、シリコーン油、動植物油、鉱物油、高級脂肪酸(例えば、オレイン酸等の脂肪酸)、高級アルコール、フッ素系油剤、有機溶媒等が挙げられる。油系流体は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
第2の流体は、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤(アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤)や非イオン性界面活性剤を用いることができる。第2の流体における界面活性剤の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、第2の流体の全質量に対して0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。また、第2の流体における界面活性剤の含有量は30質量%以下であってもよい。
【0028】
本実施形態の液滴製造装置は、液滴生成管路を有し、液滴生成管路内を流動する第1の流体を、第1の流体(分散相)とは非混和である第2の流体(連続相)でせん断することにより、粒子状物を封入した液滴を生成することができる。この場合、油中水滴が生成されることが好ましい。また、他の実施形態では、第2の流体を分散相とし、第1の流体(連続相)でせん断することによって液滴を生成してもよい。この場合、水中油滴が生成されることが好ましい。せん断は、一定間隔で行われ、これにより連続的に粒子状物を封入した液滴を生成可能となる。
【0029】
第1の流体を第2の流体によりせん断する方法は特に限定されるものではなく、第1の流体を第2の流体を流す流路を適宜合流させたり、狭窄部を通過させることでせん断力を付加してもよく、振動や超音波などを印加することでせん断力を付加してもよい。また、バルブ等の開閉によりせん断力を付加してもよく、レーザーやマイクロバブルによりせん断力を付加することもできる。
【0030】
本実施形態の液滴製造装置では、液滴生成管路内において、渦流が発生している。渦流は、第1の流体中において発生していることが好ましく、第1の流体と第2の流体が接触する箇所(せん断箇所)の上流もしくは、第1の流体と第2の流体が接触する箇所(せん断箇所)の近傍において発生していることが好ましい。なお、渦流が第1の流体と第2の流体が接触する箇所(せん断箇所)の上流で発生する場合には、例えば、超音波等で渦を発生させてもよい。
【0031】
本実施形態では、液滴生成管路内において、渦流を発生させ、その渦流により粒子状物を一定時間滞留させることが好ましい。なお、粒子の滞留時間は、第1の流体の流量や流速にもよるが、例えば、0.1ミリ秒以上であってもよく、1ミリ秒以上であってもよく、10ミリ秒以上であってもよく、50ミリ秒以上であってもよい。
【0032】
液滴生成管路内において渦流を発生させるためには、後述するように液滴生成管路には狭窄部を設けることや、液滴生成管路に凸構造を設けること、液滴生成管路の内壁を螺旋構造とすることなどが挙げられる。また、第1の流体の流速を変動させたり、音場や電場などの外部エネルギーを印加することで渦流を発生させることもできる。
【0033】
中でも、本実施形態の液滴製造装置では、液滴生成管路には狭窄部が設けられていることが好ましい。狭窄部は、液滴生成管路の途中に設けられた管路の幅が狭められた部位であり、狭窄部の最小幅(狭窄部の断面が円形の場合は直径)が、狭窄部の上流に位置する液滴生成管路の最大幅(液滴生成管路の断面が円形の場合は直径)の80%以下である部分をいう。なお、狭窄部の最小幅は、狭窄部の上流に位置する液滴生成管路の最大幅の70%以下であってもよく、60%以下であってもよく、50%以下であってもよく、40%以下であってもよい。液滴生成管路には狭窄部を設けることにより、液滴生成管路内において渦流を発生させつつ、液滴を生成するためのせん断力を効果的に発生させることができ、効率よく液滴を生成することができる。
【0034】
狭窄部の最小幅は、液滴生成管路の直径や生成する液滴の大きさに応じて適宜調整することができるが、例えば、1mm以下であってもよく、300μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、100μm以下でってもよく、75μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。また、狭窄部の最小幅は、1μm以上であってもよく、3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。
【0035】
液滴生成管路には狭窄部が設けられることにより、例えば、狭窄部の上流で第1の流体と第2の流体が合流し、これらの流体が狭窄部を通過することで液滴が生成されてもよい。また、狭窄部を介して上流では第1の流体が流動し、狭窄部の下流にプールされた第2の流体に向けて、第1の流体が圧出されることで液滴が生成されてもよい。このように狭窄部において、液体にせん断力が付加されることで液滴の生成効率を高めることができる。
【0036】
また、液滴生成管路に狭窄部が設けられることにより、第1の流体の少なくとも一部の流れが堰き止められることになり、狭窄部の上流近傍において渦流を発生させることができる。渦流が発生した箇所では少なくとも1個の粒子状物が一定時間滞留することになり、その結果、1つの液滴内に2個以上の粒子状物が封入される割合を高めることができる。
【0037】
生成された液滴は液滴生成管路の下流に設けられた管路(ドレイン流路)を流れることが好ましい。液滴生成管路はドレイン流路の下流域に液滴回収部を備えていてもよい。液滴回収部では、生成された液滴が回収される。液滴回収部では、必要に応じて精製等の処理が行われてもよく、例えば、マイクロピラーアレイを用いて、サイズの異なる液滴を分離してもよい。
【0038】
本実施形態の液滴製造装置は、第1の流体を流す第1の流体管路と、第2の流体を流す第2の流体管路を有することが好ましく、第1の流体管路と第2の流体管路が液滴生成管路に連結していることが好ましい。そして、それぞれの流体管路を流れてきた第1の流体と第2の流体が液滴生成管路内において合流することが好ましい。第1の流体を流す第1の流体管路と、第2の流体を流す第2の流体管路が液滴生成管路に連結した箇所では、第1の流体と第2の流体が合流する。本明細書では、第1の流体管路と第2の流体管路が連結し、第1の流体と第2の流体が合流する箇所を合流部ともいう。そして、この合流部において渦流が発生することが好ましい。なお、液滴製造装置が合流部を有する場合、合流部及び合流部よりも下流の管路を合わせて液滴生成管路と呼ぶ。
【0039】
第1の流体管路と第2の流体管路が連結する箇所では、連結部において第1の流体管路と第2の流体管路の間の角度は特に限定されるものではなく、0~180°の範囲で調整されればよく、10~170°であってもよく、20~160°であってもよい。
【0040】
本実施形態の好ましい態様では、少なくとも2本の第2の流体管路が液滴生成管路に連結していることが好ましい。少なくとも2本の第2の流体管路は合流部において連結していることが好ましい。すなわち、合流部に流入する第1の流体の流れ方向に対して、少なくとも2方向から第2の流体が流れ、これらの流体が合流することが好ましい。
【0041】
本実施形態の好ましい態様では、第2の流体管路は、第1の流体管路に対して垂直であることが好ましい。すなわち、第1の流体の流れ方向と第2の流体の流れ方向は直交することが好ましい。とりわけ、2本の第2の流体管路が液滴生成管路に連結していることが好ましく、これら2本の第2の流体管路は、第1の流体管路に対して垂直であることが好ましい。このような場合、合流部では第1の流体管路と第2の流体管路による十字路が形成されることになる。これにより合流部において、渦流を効果的に発生させることができる。また、第1の流体の流れ方向と第2の流体の流れ方向を適切にコントロールすることによって、1つの液滴内に2個以上の粒子状物が封入される割合を高めることができる。
【0042】
本実施形態の好ましい態様では、第2の流体管路が液滴生成管路に連結しており、液滴生成管路の連結部に向けて第2の流体管路の管路直径が大きくなっていることが好ましい。すなわち、第2の流体管路は、液滴生成管路の連結部に向けて逆テーパー流路、急拡大流路、円弧流路などの流路形状を有していることが好ましい。第2の流体管路を上記構成とすることにより、合流部内の空間幅を広くすることができ、第1の流体と第2の流体の接触面積を増やすことができる。これにより、合流部において、粒子状物を捕捉するのに適した渦流を効果的に発生させることができる。また、第1の流体と第2の流体の接触面積を増やすことで、1つの液滴内に2個以上の粒子状物が封入される割合を高めることができる。
【0043】
図1には、本実施形態における液滴製造装置及び液滴生成管路の構成例の一例を示している。
図1(b)は
図1(a)における(i)の箇所を拡大した拡大図であり、実線矢印は分散相の流れを、点線矢印は連続相の流れを示している。なお、本実施形態における液滴生成管路の構成は
図1に示す形態に限定されるものではなく、例えば、
図2に示される構成であってもよい。
図2(a)及び(b)では、第1の流体管路と第2の流体管路はT字状に連結されており、合流部において第1の流体(粒子懸濁液)と第2の流体(油)が接触することで渦流を発生させ、その後、液滴を生成している。また、
図2(c)では、2本の第2の流体管路が液滴生成管路に連結しており、第1の流体管路と第2の流体管路の間の角度は60°又は120°程度となっている。
図2(c)においても、合流部において第1の流体(粒子懸濁液)と第2の流体(油)が接触することで渦流を発生させ、その後、液滴を生成している。
図2(d)では、合流部の上流において、第1流体に渦流を発生させており、合流部において第1の流体(粒子懸濁液)と第2の流体(油)が接触することで液滴を生成している。
【0044】
なお、合流部内の空間の最大幅(第1の流体と第2の流体の接触領域の最大幅)は、液滴生成管路の直径や生成する液滴の直径に応じて適宜調整することができるが、例えば、1μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。また、合流部内の空間の最大幅(第1の流体と第2の流体の接触領域の最大幅)は、1000μm以下であってもよく、800μm以下であってもよく、500μm以下であってもよい。合流部内の空間の最大幅(第1の流体と第2の流体の接触領域の最大幅)を上記範囲内とすることにより、合流部において、渦流を効果的に発生させることができる。また、合流部内の空間の最大幅(第1の流体と第2の流体の接触領域の最大幅)を上記範囲内とすることにより、1つの液滴内に2個以上の粒子状物が封入される割合を高めることができる。
【0045】
本実施形態の好ましい態様では、第1の流体管路の管路直径は、1μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。第1の流体管路の管路直径は、1000μm以下であってもよく、800μm以下であってもよい。また、第2の流体管路の管路直径(逆テーパー状構造部分を除く)は、1μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。第2の流体管路の管路直径(逆テーパー状構造部分を除く)は、1000μm以下であってもよく、800μm以下であってもよい。
【0046】
本実施形態の好ましい態様では、狭窄部より下流の液滴生成管路の直径は、1μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。狭窄部より下流の液滴生成管路の直径は、1000μm以下であってもよく、800μm以下であってもよい。なお、上記管路直径は、管路の内壁の断面直径を意味する。
【0047】
以上のように、本実施形態の液滴製造装置は、上述したようなマイクロメートルオーダーの直径を有する流路(マイクロ流路)を有するため、マイクロ流体デバイスとも言う。本実施形態の液滴製造装置で生成された液滴の直径は、1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。また、液滴の直径は、1000μm以下であってもよく、800μm以下であってもよく、300μm以下であってもよく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。
【0048】
本実施形態の液滴製造装置ではマイクロ流路の内壁を表面処理してもよい。例えば、分散相として水系流体を用い、連続相として油系流体を用いて水滴を生成する場合には、マイクロ流路の内壁を疎水化処理することが好ましい。一方、第1の流体として油系流体を用い、第2の流体として水系流体を用いて油滴を生成する場合には、マイクロ流路の内壁を親水化処理してもよい。
【0049】
本実施形態の液滴製造装置では、第1の流体管路が複数設けられていてもよく、これらの第1の流体管路の上流にはそれぞれの流体ポート(供給貯留槽)が接続されていてもよい。例えば、複数種の第1の流体を、それぞれの流体ポートから第1の流体管路へ流し、複数種の第1の流体を第2の流体に接触させることで液滴を生成してもよい。これにより、例えば、異種の細胞をペアリングして1つの液滴に封入することもできる。また、細胞とマイクロビーズなどの粒子をペアリングして1つの液滴に封入することもできる。
【0050】
液滴製造装置には、各管路に流れる流体の流量を計測する流量計が接続されていてもよい。また、液滴製造装置には、送液の駆動源として、圧力ポンプやシリンジポンプが連結されていてもよい。本実施形態では、流体の流量を適切にコントロールすることにより、液滴生成管路中において効果的に渦流を発生させることもできる。
【0051】
(液滴製造方法)
本実施形態は、上述した液滴製造装置を用いた液滴の製造方法に関する。具体的に、本実施形態は、粒子状物を含む第1の流体と、第1の流体とは非混和である第2の流体を接触させて液滴を形成する工程を含み、第1の流体中において渦流により粒子状物を一定時間滞留させる、粒子状物を封入した液滴の製造方法に関する。
【0052】
本実施形態の液滴製造方法では、第1の流体と、第1の流体とは非混和である第2の流体を接触させることで、第1の流体をせん断し、それにより粒子状物を封入した液滴を生成することができる。せん断は、一定間隔で行われ、これにより連続的に粒子状物を封入した液滴を生成可能することが可能となる。第1の流体を第2の流体によりせん断する方法は特に限定されるものではなく、上述した液滴製造装置において述べた方法を挙げることができる。
【0053】
本実施形態の液滴製造方法では、第1の流体中において渦流が発生しており、この渦流は、第1の流体と第2の流体が接触する箇所(せん断箇所)の上流もしくは、第1の流体と第2の流体が接触する箇所(せん断箇所)の近傍において発生していることが好ましい。
【0054】
第1の流体中において渦流により粒子状物を一定時間滞留させる方法としては、上述した液滴製造装置の液滴生成管路内において渦流を発生させる方法を同様に例示することができる。粒子状物の滞留時間も同様である。また、液滴製造方法で用いる第1の流体及び第2の流体の例示や好ましい態様も上述したとおりである。
【0055】
本実施形態の液滴製造方法では、粒子状物のうち少なくとも1個が第1の流体内において一定時間滞留し、滞留した少なくとも1個の粒子状物を含む2個以上の粒子状物が液滴中に封入されることが好ましい。この場合、滞留した少なくとも1個の粒子状物のもとに、他の粒子状物が到着することで、2個以上の粒子状物が封入された液滴が形成されることがより好ましい。例えば、本実施形態の好ましい態様では、第1の流体内の渦流において、第1粒子状物を滞留させ、第1粒子状物の後を流れる第2粒子状物が第1粒子状物のもとに到着し、好ましくは第1粒子状物と第2粒子状物が接触することで、2個の粒子状物が封入された液滴が形成されることがより好ましい。第2粒子状物が第1粒子状物のもとへ到着することで渦流中で滞留していた第1粒子状物が渦流から押し出され、第2粒子状物と共に第1粒子状物が液滴に封入されることになる。なお、渦流から押し出された第1粒子状物と第2粒子状物は共に狭窄部を通過することで、液滴に封入されることが好ましい。
【0056】
本実施形態の好ましい態様では、第2の流体は少なくとも2方面から供給されることが好ましい。すなわち、本実施形態では、第1の流体の流れ方向に対して、少なくとも2方向から第2の流体が流れ、これらの流体が合流することが好ましい。
【0057】
また、本実施形態の好ましい態様では、第1の流体の流れ方向と、第2の流体の流れ方向は直交していることが好ましい。とりわけ、第2の流体は2方面から供給され、これら2方面から流れる第2の流体の流れ方向と第1の流体の流れ方向が直交していることが好ましい。
【0058】
本実施形態の好ましい態様では、第1の流体の流量は0.001μl/min以上であってもよく、0.01μl/min以上であってもよく、0.1μl/min以上であってもよく、0.2μl/min以上であってもよく、0.3μl/min以上であってもよい。また、第1の流体の流量は100.0μl/min以下であってもよく、50.0μl/min以下であってもよく、10.0μl/min以下であってもよい。
【0059】
また、本実施形態の好ましい態様では、第2の流体の流量は0.01μl/min以上であってもよく、0.1μl/min以上であってもよく、1.0μl/min以上であってもよく、2.0μl/min以上であってもよく、3.0μl/min以上であってもよい。また、第2の流体の流量は1000.0μl/min以下であってもよく、500.0μl/min以下であってもよく、100.0μl/min以下であってもよい。なお、上記流量は、液滴製造装置に供給される流量であり、設定流量でもある。第1の流体の流量及び第2の流体の流量を上記範囲内とすることにより、第1の流体内において、渦流を効果的に発生させることができる。また、1の流体の流量及び第2の流体の流量を上記範囲内とすることにより、その結果、1つの液滴内に2個以上の粒子状物が封入される割合を高めることができる。
【0060】
本実施形態の好ましい態様では、第1の流体の流量をPとし、第2の流体の流量をQとした場合、Q/Pの値は0.1以上であってもよく、1以上であってもよく、2以上であってもよく、5以上であってもよく、10以上であってもよい。また、Q/Pの値は5000以下であってもよく、1000以下であってもよく、100以下であってもよく、80以下であってもよく、50以下であってもよい。Q/Pの値を上記範囲内とすることにより、第1の流体内において、渦流を効果的に発生させることができる。また、Q/Pの値を上記範囲内とすることにより、1つの液滴内に2個以上の粒子状物が封入される割合を高めることができる。
【0061】
本実施形態の液滴製造方法では、複数種の第1の流体を第2の流体に接触させることで液滴を生成してもよい。例えば、第1の流体(A)、第1の流体(B)及び第2の流体を同時に接触させることにより、例えば、異種の細胞をペアリングして1つの液滴に封入することもできる。また、細胞とマイクロビーズなどの粒子をペアリングして1つの液滴に封入することもできる。
【実施例0062】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0063】
(実施例)
<デバイス設計・作製>
第1の流体管路と第2の流体管路を十字型に連結し、生成した液滴を回収するための回収口を備えた液滴製造装置(マイクロ流体デバイス)を作製した。十字型の液滴生成管路の構造は
図1のとおりであり、第1の流体管路と第2の流体管路が合流する部分の幅は50μmであり、第2の流体管路は、逆テーパー状の流路を介して接続させた。第1の流体管路と第2の流体管路の合流部の下流には、狭窄部(幅:15μm)を設けたドレイン流路(幅:75μm)を接続した。液滴製造装置は、ソフトリソグラフィーを用いて樹脂(ポリジメチルシロキサン(PDMS))に微細溝を転写した後、PDMS基板とスライドガラスをプラズマ接合することで作製した。その後、第1の流体管路と第2の流体管路に疎水化剤を流し、乾燥及び加熱処理によって、表面を疎水化処理した。
【0064】
<試料>
第1の流体には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いた。マイクロ流路内の流れを可視化する際には、蛍光ビーズ(直径1±0.55μm、濃度1.00×107particles/ml)をPBSに懸濁して流した。また、細胞を封入した液滴を生成する際には、マウス線維芽細胞(NIH-3T3、106~107cells/ml、直径15~30μm)をPBSに懸濁して流した。第2の流体には、エステル油に界面活性剤を添加(7wt%)したものを用いた。
【0065】
<マイクロ流路内の流れの可視化実験>
作製した液滴製造装置において、蛍光ビーズを懸濁したPBSを第1の流体として用い、第1の流体および第2の流体の流量を変化させて合流部における第1の流体の流れを可視化した(
図3)。細胞が合流部に捕捉される流量条件において、微小渦が形成されている様子が観察された(
図3(b)(c))。
【0066】
<液滴への細胞封入実験>
作製した液滴製造装置において、細胞を懸濁したPBSを第1の流体として用い、第1の流体および第2の流体の流量を変化させ液滴を生成し、その際の細胞封入挙動について評価した。例えば、作製した液滴製造装置では、第2の流体流量(Q
c)を4.09 μl/min、第1の流体流量(Q
d)を1.14 μl/minに設定すると、合流部において、細胞が滞留しなかったが(
図4(a))、第1の流体流量(Q
d)と、第2の流体流量(Q
c)を変動させると、合流部において、細胞が滞留し、一つの液滴へと封入される細胞数が増加する様子が確認された(
図4(b)(c))。例えば、作製した液滴製造装置では、Q
c=2.91 μl/min、Q
d=0.30 μl/minにおいて、2個の細胞が液滴に封入される割合は9.68%であり、ポアソン分布より算出した理論値(1.12×10
-1%)に対して大幅に上昇していることが確認された。なお、3個の細胞が液滴に封入される割合は1.93%であり、ポアソン分布より算出した理論値(8.32×10
-5%)に対して大幅に上昇していた。
【0067】
上記結果より、第1の流体に含まれる細胞が渦流において滞留し、そこへ他の細胞が到着することで複数の細胞が封入された液滴が生成されているものと想定された(
図5(a)~(d))。また、第1の流体および第2の流体の流量を変化させ液滴を生成した場合、
図6における丸印では、1個の細胞が滞留することで2個の細胞が封入された液滴が生成される傾向が見られ、三角印では、2個以上の細胞が滞留することで3個以上の細胞が封入された液滴が生成される傾向が見られた。
【0068】
以上のように本発明の液滴製造装置及び液滴製造方法を用いることで、2個以上の細胞が封入された液滴が生成された。このような液滴を生成することで、細胞間相互作用の解明や、細胞融合のためのプラットフォームへの応用が期待される。