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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179168
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】検査ゲージ
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/30 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G01B3/30
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097789
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】599067053
【氏名又は名称】株式会社ピーエムティー
(71)【出願人】
【識別番号】523221153
【氏名又は名称】上野 滋
(72)【発明者】
【氏名】上野 滋
(72)【発明者】
【氏名】安部 克規
(72)【発明者】
【氏名】川波 寛
【テーマコード(参考)】
2F061
【Fターム(参考)】
2F061AA01
2F061CC17
2F061GG01
2F061TT05
(57)【要約】
【課題】検査ゲージを用いて、ボールねじのリード誤差に基づく機械装置の位置決め精度を容易に、かつ正しく評価する。
【解決手段】延伸方向Ldに沿って、互いに離間して一列に配置された複数の第1貫通孔3、および延伸方向Ldに沿って、互いに離間して一列に配置された複数の第2貫通孔4を有する検査ゲージを用いる。複数の第1貫通孔3にそれぞれ設けられた測定面5は合成数からなる第1基準ピッチMCで配置され、複数の第2貫通孔4にそれぞれ設けられた測定面6は素数からなる第2基準ピッチMPで配置されており、ゼロ基準面5aから複数の第1貫通孔3の測定面5までのそれぞれの距離を順次測定し、ゼロ基準面6aから複数の第2貫通孔4の測定面6までのそれぞれの距離を順次測定することにより、ボールねじの系統誤差の成分および周期誤差の成分を検出する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械装置の位置決め精度を測定する検査ゲージであって、
第1方向と、前記第1方向と互いに直交する第2方向とで構成される水平面を有する母材と、
前記第1方向に沿って、互いに離間して前記母材に一列に設けられた複数の第1測定部位と、
前記複数の第1測定部位と前記第2方向に離間し、かつ、前記第1方向に沿って、互いに離間して前記母材に一列に設けられた複数の第2測定部位と、
を有し、
前記複数の第1測定部位のそれぞれに前記第2方向に沿った第1測定面が設けられ、
前記複数の第2測定部位のそれぞれに前記第2方向に沿った第2測定面が設けられ、
複数の前記第1測定面は、前記第1方向に沿って、合成数からなる第1基準ピッチで配置され、
複数の前記第2測定面は、前記第1方向に沿って、素数からなる第2基準ピッチで配置される、検査ゲージ。
【請求項2】
請求項1記載の検査ゲージにおいて、
前記複数の第1測定部位のうちの一つが、前記複数の第1測定部位の測定の始点となる第1測定基準であり、
前記複数の第2測定部位のうちの一つが、前記複数の第2測定部位の測定の始点となる第2測定基準であり、
前記第1測定基準となる第1測定部位の第1測定面と、前記第2測定基準となる第2測定部位の第2測定面とが、前記第2方向に沿った同一線上に位置する、検査ゲージ。
【請求項3】
請求項1または2記載の検査ゲージにおいて、
前記複数の第1測定部位および前記複数の第2測定部位は、前記母材を貫通する孔である、検査ゲージ。
【請求項4】
請求項1または2記載の検査ゲージにおいて、
前記複数の第1測定部位は、前記母材の前記第1方向に沿った第1側面に形成された溝であり、
前記複数の第2測定部位は、前記第1側面と反対側に位置し、前記母材の前記第1方向に沿った第2側面に形成された溝である、検査ゲージ。
【請求項5】
請求項1または2記載の検査ゲージにおいて、
前記第1方向に沿って形成された前記母材の一方の側面がアライメント基準面である、検査ゲージ。
【請求項6】
請求項1または2記載の検査ゲージにおいて、
前記第1基準ピッチは、20mmまたは25mmであり、
前記第2基準ピッチは、17mm、19mm、23mmまたは31mmである、検査ゲージ。
【請求項7】
機械装置の位置決め精度を測定する検査ゲージであって、
第1方向と、前記第1方向と互いに直交する第2方向とで構成される水平面を有する母材と、
前記第1方向に沿って、互いに離間して前記母材に一列に設けられた複数の第1測定部位と、
前記複数の第1測定部位と前記第2方向に離間し、かつ、前記第1方向に沿って、互いに離間して前記母材に一列に設けられた複数の第2測定部位と、
を有し、
前記複数の第1測定部位のそれぞれに前記第2方向に沿った第1測定面が設けられ、
前記複数の第2測定部位のそれぞれに前記第2方向に沿った第2測定面が設けられ、
前記複数の第1測定部位のうちの一つが、前記複数の第1測定部位の測定の始点となる第1測定基準であり、
前記複数の第2測定部位のうちの一つが、前記複数の第2測定部位の測定の始点となる第2測定基準であり、
複数の前記第1測定面は、前記第1方向に沿って、合成数からなる第1基準ピッチで配置され、
複数の前記第2測定面のうち、前記第2測定基準となる第2測定部位の第2測定面を除く各第2測定面は、前記第1方向に沿って、前記第2測定基準となる第2測定部位の第2測定面からの距離が前記第1基準ピッチの倍数近傍の素数となるように配置される、検査ゲージ。
【請求項8】
請求項7記載の検査ゲージにおいて、
前記第1測定基準となる第1測定部位の第1測定面と、前記第2測定基準となる第2測定部位の第2測定面とが、前記第2方向に沿った同一線上に位置する、検査ゲージ。
【請求項9】
請求項7または8記載の検査ゲージにおいて、
前記複数の第1測定部位および前記複数の第2測定部位は、前記母材を貫通する孔である、検査ゲージ。
【請求項10】
請求項7または8記載の検査ゲージにおいて、
前記複数の第1測定部位は、前記母材の前記第1方向に沿った第1側面に形成された溝であり、
前記複数の第2測定部位は、前記第1側面と反対側に位置し、前記母材の前記第1方向に沿った第2側面に形成された溝である、検査ゲージ。
【請求項11】
請求項7または8記載の検査ゲージにおいて、
前記第1方向に沿って形成された前記母材の一方の側面がアライメント基準面である、検査ゲージ。
【請求項12】
機械装置の位置決め精度を測定する検査ゲージであって、
第1方向と、前記第1方向に互いに直交する第2方向とで構成される水平面を有する母材と、
前記母材の主面上に、前記第1方向に沿って、互いに離間して一列に設けられた前記第2方向に延在する複数の第1目盛線と、
前記母材の主面上に、前記複数の第1目盛線と前記第2方向に離間し、かつ、前記第1方向に沿って、互いに離間して一列に設けられた前記第2方向に延在する複数の第2目盛線と、
を有し、
前記複数の第1目盛線にそれぞれ備わる測定点は、前記第1方向に沿って、合成数からなる第1基準ピッチで配置され、
前記複数の第2目盛線にそれぞれ備わる測定点は、前記第1方向に沿って、素数からなる第2基準ピッチで配置される、検査ゲージ。
【請求項13】
請求項12記載の検査ゲージにおいて、
前記複数の第1目盛線のうちの一つが、前記複数の第1目盛線の測定の始点となる第1測定基準であり、
前記複数の第2目盛線のうちの一つが、前記複数の第2目盛線の測定の始点となる第2測定基準であり、
前記第1測定基準となる第1目盛線の測定点と、前記第2測定基準となる第2目盛線の測定点とが、前記第2方向に沿った同一線上に位置する、検査ゲージ。
【請求項14】
請求項12または13記載の検査ゲージにおいて、
前記母材の主面上に、前記第1方向に沿って設けられたアライメント補助線、
をさらに有する、検査ゲージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査ゲージに関し、特に機械装置の位置決め精度の測定に使用する検査ゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
機械装置、例えば工作機械においては、テーブルの位置決めを行う送り要素としてボールねじが多く用いられており、ボールねじの送り量には極めて高い精度が要求される。そのため、ボールねじのリード誤差(移動量誤差)などの測定が行われており、その結果は目標精度に対する合否判定、経時変化の検出または不良要因の推定などに用いられている。
【0003】
例えば特開2004-125665号公報(特許文献1)には、所定間隔毎に基準測定面が設けられたステップゲージを用いて校正処理を行う測定装置が記載されている。
【0004】
また、特開2013-248687号公報(特許文献2)には、送り要素の位置決め精度を所望の位置決め精度以下の精度に良好に維持することができる位置決め精度の設定方法および位置決め精度設定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-125665号公報
【特許文献2】特開2013-248687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ボールねじのリード誤差に基づく工作機械の位置決め精度の測定には、例えば検査ゲージ(測定ゲージ、基準ゲージ、標準ゲージ)、標準尺またはレーザ干渉測定機などの検査機器が用いられる。検査ゲージを用いた工作機械の位置決め精度の測定では、検査ゲージの設置および調整が容易であることから、短時間で作業を終えることが可能であるという利点がある。
【0007】
ところで、ボールねじは周期的なリード誤差を持ち、そのリード誤差は主に全体的な系統誤差と部分的な周期誤差とを有する。しかし、検査ゲージでは、あらかじめ決められた一定間隔の測定しかできないことから、系統誤差の成分は推定することは可能であるが、周期誤差の成分は捕捉することができない場合がある。このため、検査ゲージでは、ボールねじの周期的なうねり量が検出できず、工作機械の見かけ上の位置決め精度しか評価できない場合がある。
【0008】
例えばレーザ干渉測定機を用いれば、周期誤差の成分を捕捉することは可能である。しかし、レーザ干渉測定機による測定には多くの準備と時間を要し、さらに、初期投資が必要不可欠であることから、周期誤差の成分の捕捉のみにレーザ干渉測定機を使用することは望ましくない。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態による検査ゲージは、互いに直交する第1方向と第2方向とで構成される水平面を有する母材と、第1方向に沿って、互いに離間して母材に一列に設けられた複数の第1貫通孔と、複数の第1貫通孔と第2方向に離間し、かつ、第1方向に沿って、互いに離間して母材に一列に設けられた複数の第2貫通孔と、を有する。複数の第1貫通孔のそれぞれに第2方向に沿った第1測定面が設けられ、複数の第2貫通孔のそれぞれに第2方向に沿った第2測定面が設けられ、複数の第1測定面は、第1方向に沿って、合成数からなる第1基準ピッチで配置され、複数の第2測定面は、第1方向に沿って、素数からなる第2基準ピッチで配置されている。
【0010】
一実施の形態による検査ゲージは、互いに直交する第1方向と第2方向とで構成される水平面を有する母材と、第1方向に沿って、互いに離間して母材に一列に設けられた複数の第1貫通孔と、複数の第1貫通孔と第2方向に離間し、かつ、第1方向に沿って、互いに離間して母材に一列に設けられた複数の第2貫通孔と、を有する。複数の第1貫通孔のそれぞれに第2方向に沿った第1測定面が設けられ、複数の第1貫通孔のうちの一つが測定の始点となる第1測定基準であり、複数の第2貫通孔のそれぞれに第2方向に沿った第2測定面が設けられ、複数の第2貫通孔のうちの一つが測定の始点となる第2測定基準である。さらに、複数の第1測定面は、第1方向に沿って、合成数からなる第1基準ピッチで配置され、複数の第2測定面は、第2測定基準となる第2貫通孔の第2測定面から第1方向に順次設けられた他の各第2貫通孔のそれぞれの第2測定面までの距離が、第1基準ピッチの倍数近傍の素数となるように、第1方向に沿って配置されている。
【0011】
一実施の形態による検査ゲージは、互いに直交する第1方向と第2方向とで構成される水平面を有する母材と、母材の主面上に、第1方向に沿って、互いに離間して一列に設けられた第2方向に延在する複数の第1目盛線と、母材の主面上に、複数の第1目盛線と第2方向に離間し、かつ、第1方向に沿って、互いに離間して一列に設けられた第2方向に延在する複数の第2目盛線と、を有する。複数の第1目盛線にそれぞれ備わる測定点は、第1方向に沿って、合成数からなる第1基準ピッチで配置され、複数の第2目盛線にそれぞれ備わる測定点は、第1方向に沿って、素数からなる第2基準ピッチで配置されている。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、検査ゲージを用いて、ボールねじのリード誤差に基づく機械装置の位置決め精度を容易に、かつ正しく評価することができる。
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】検討例による検査ゲージを示す上面図である。
図2】(a)および(b)は、それぞれ実施の形態1による検査ゲージを示す上面図および同図(a)のA-A´線に沿った断面図である。
図3】(a)および(b)は、それぞれ実施の形態1の変形例による検査ゲージを示す上面図および同図(a)のB-B´線に沿った断面図である。
図4】実施の形態1による工作機械の構成例を示す概略斜視図である。
図5】実施の形態1による工作機械の位置決め精度の測定手順を説明するフロー図である。
図6】実施の形態1による変位センサの概略図である。
図7】実施の形態2による検査ゲージを示す上面図である。
図8】実施の形態3による検査ゲージを示す上面図である。
図9図8のC-C´線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、複数の類似の部材(部位)が存在する場合には、総称の符号に記号を追加し個別または特定の部位を示す場合がある。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0016】
また、断面図および平面図において、各部位の大きさは実際の検査ゲージおよび機器と対応するものではなく、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。また、断面図と平面図が対応する場合においても、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。
【0017】
また、以下の説明においては、検査ゲージを構成する母材の構造の説明上の方向として、延伸方向、幅方向および高さ方向を用いる。延伸方向と幅方向とは互いに直交し、水平面を構成する方向であり、高さ方向は水平面に対して鉛直の方向である。
(課題の説明)
【0018】
本実施の形態による検査ゲージがより明確になると思われるため、本発明に至るまでに本発明者らが見出した課題について説明する。
【0019】
工作機械の位置決め精度は、(1)ボールねじの持つ精度、(2)案内機構の精度、(3)案内機構の摩擦特性、(4)駆動モータの持つ割り出し精度(ボールねじと駆動モータとの間の芯だし組み立て精度を含む。)、(5)使用するプログラム指令の精度、などによって決まる。これらのうち、最も影響の大きい要因が(1)ボールねじのもつ精度である。
【0020】
ボールねじとは、ねじ軸、ナットおよびボールなどから構成され、回転運動を直線運動に、直線運動を回転運動に変換する機械要素部品の一つである。また、ボールねじのリードとは、ねじ軸またはナットの一方が1回転したときに、もう一方がねじ軸の延伸する方向(以下、延伸方向、軸方向と言うこともある。)に進む距離のことであり、ボールねじが直線運動をする際の1回転の送り量である。従って、ナットを1回転させた場合、元の位置からリードの距離だけ移動する。しかし、どのような精密なボールねじであっても、リードに誤差を持つ。
【0021】
本発明者らは、検査ゲージを用いて、ボールねじのリード誤差に基づく工作機械の位置決め精度の測定方法について検討を行った。図1に、本発明に至るまでに本発明者らが検討した検査ゲージの一例を示す。
【0022】
図1に示すように、検討例である検査ゲージ51は、平面視において略四角形であり、所定の厚さを有する母材52と、母材52の延伸方向Ldに沿って一列に設けられた複数の貫通孔53とから構成される。
【0023】
母材52は、幅方向Wdに沿った第1端面52aと、第1端面52aと反対側に位置する第2端面52bとを有する。検査ゲージ51では、複数の貫通孔53は、母材52の第1端面52aから第2端面52bに向かって、互いに一定の距離(間隔)L2を有して設けられており、第1端面52aに最も近くに位置する貫通孔53aが測定基準となる。
【0024】
各貫通孔53には、互いに対向して、幅方向Wdに沿った平坦な内面が2つ形成されており、互いに対向する2つの内面間の距離L1は、あらかじめ設定された一定の寸法である。
【0025】
1つの貫通孔53で互いに対向する幅方向Wdに沿った2つの内面のうち、一方が測定面54となる。検査ゲージ51では、第2端面52b側(紙面上右側)の内面を測定面54としており、第1端面52aに最も近くに位置し、測定基準である貫通孔53aの測定面54が、測定の始点となるゼロ基準面54aである。検査ゲージ51を用いた工作機械の位置決め精度は、第1端面52aに最も近くに位置し、測定基準である貫通孔53aの測定面54(ゼロ基準面54a)から他の各貫通孔53のそれぞれの測定面54までの距離を順次測定することにより求めることができる。測定には、例えば変位センサが用いられ、その距離は、各貫通孔53の測定面54の実位置と変位センサの示す値との差によって求める。
【0026】
また、互いに隣り合う貫通孔53の距離L2は、あらかじめ設定された一定の寸法である。従って、互いに隣り合う貫通孔53において、一方の貫通孔53が有する測定面54と、他方の貫通孔53が有する測定面54との距離L3は一定(L1+L2)となり、これが基準ピッチ(基準寸法)Mとなる。基準ピッチMは、例えば20mmまたは25mmのように、合成数が採用される。
【0027】
しかしながら、検査ゲージ51を用いた工作機械の位置決め精度の測定方法では、あらかじめ固定された合成数からなる基準ピッチMでの測定に限定されてしまう。
【0028】
前述したように、例えば送り要素であるボールねじでは、周期的なリード誤差を持つのが実情である。そして、その周期的なリード誤差は、全体的な系統誤差と、部分的な周期誤差と、ランダム誤差とから構成され、ボールねじの送り量に対して影響を及ぼすのが全体的な系統誤差と部分的な周期誤差である。系統誤差の成分は、周期的なサンプリングにより推定することが可能である。すなわち、検査ゲージ51の合成数からなる基準ピッチMの測定点において測定すれば、系統誤差の成分の推定が可能となる。しかし、周期誤差の成分は、周期的なサンプリングの測定点の位置如何によっては、全く捕捉することができない場合がある。
【0029】
実際には、ボールねじに部分的な周期誤差が生じていても、検査ゲージ51の合成数からなる基準ピッチMのみでの測定では、周期誤差の成分は検出されず、見かけ上の周期的なリード誤差が実際の周期的なリード誤差よりも小さい値となってしまうことがある。このため、検査ゲージ51では、工作機械の位置決め精度が正しく評価できないという課題がある。
【0030】
ボールねじに生じた部分的な周期誤差の影響を捕捉する方法として、例えばレーザ干渉測定機を用いてランダムな任意の位置におけるリード誤差を測定し、これを多数の任意の位置で行う方法がある。しかし、前述したように、レーザ干渉測定機による測定には多くの準備と時間を要し、さらに、初期投資が必要不可欠であることから、ボールねじに生じた部分的な周期誤差の影響を捕捉することのみにレーザ干渉測定機を使用することは望ましくない。
【0031】
以下に述べる本実施の形態による検査ゲージは、このような課題を解決するための手段である。以下、本実施の形態による検査ゲージの構造について詳細に説明する。
(実施の形態1)
≪検査ゲージの構造≫
【0032】
実施の形態1による検査ゲージの構造について、図2を用いて説明する。図2(a)および(b)は、それぞれ実施の形態1による検査ゲージを示す上面図および同図(a)のA-A´線に沿った断面図である。
【0033】
図2(a)および(b)に示すように、検査ゲージ1は、母材2と、延伸方向(第1方向)Ldに沿って、互いに離間して母材2に一列(第1列C1)に設けられた複数の第1貫通孔(第1測定部位)3と、幅方向(第2方向)Wdに複数の第1貫通孔3と離間し、かつ、延伸方向Ldに沿って、互いに離間して母材2に一列(第2列C2)に設けられた複数の第2貫通孔(第2測定部位)4とから構成される。
【0034】
母材2は、平面視において略四角形状であり、延伸方向Ldおよび幅方向Wdに直交する高さ方向(第3方向)Tdに所定の厚さを有する。母材2の延伸方向Ld、幅方向Wdおよび高さ方向Tdのそれぞれの寸法は、例えば325mm、50mmおよび8mmである。また、母材2は、幅方向Wdに沿った第1端面2aと、第1端面2aと反対側に位置する第2端面2bとを有する。母材2の材質は、熱膨張および耐久性を考慮し、例えば鋼鉄またはセラミックスなどである。
【0035】
第1列C1を構成する複数の第1貫通孔3と、第2列C2を構成する複数の第2貫通孔4とは、幅方向Wdに所定の間隔W1を有して設けられている。さらに、第1列C1を構成する複数の第1貫通孔3にそれぞれ設けられた測定面(第1測定面)5は、合成数からなる第1基準ピッチ(第1基準寸法)MCで配置され、第2列C2を構成する複数の第2貫通孔4にそれぞれ設けられた測定面(第2測定面)6は、素数からなる第2基準ピッチ(第2基準寸法)MPで配置されている。
【0036】
また、検査ゲージ1には、延伸方向Ldに沿った第1側面2c、および第1側面2cと反対側に位置する第2側面2dが母材2に形成されているが、どちらか一方がアライメント基準面AS1となる。検査ゲージ1では、第1側面2cをアライメント基準面AS1としており、アライメント基準面AS1は、上面視において第1基準ピッチMCで配置された複数の測定面5の延長線および第2基準ピッチMPで配置された複数の測定面6の延長線と直交する。検査ゲージ1を検査対象の工作機械のテーブルに設置する際、テーブルの運動方向と測定面5,6とは直交状態になければならない。直交状態にないと互いに隣接する測定面5の間隔および互いに隣接する測定面6の間隔がそれぞれ見かけ上小さくなり、誤差を生じることになる。そこで、母材2の第1側面2cに形成されたアラインメント基準面AS1を用いて、工作機械のテーブルの運動方向と測定面5,6とが平行になるよう調整を行う。
(第1列C1を構成する第1貫通孔3について)
【0037】
第1列C1では、複数の第1貫通孔3は、母材2の第1端面2aから第2端面2bに向かって、互いに一定の距離(間隔)L2を有して設けられており、第1端面2aに最も近くに位置する第1貫通孔3aが測定基準となる。
【0038】
各第1貫通孔3には、互いに対向して、幅方向Wdに沿った平坦な内面が2つ形成されており、互いに対向する2つの内面間の距離L1は、あらかじめ設定された一定の寸法である。
【0039】
1つの第1貫通孔3で互いに対向する幅方向Wdに沿った2つの内面のうち、一方が測定面5となる。第1列C1では、第2端面2b側(紙面上右側)の内面を測定面5としており、第1端面2aに最も近くに位置し、測定基準である第1貫通孔3aの測定面5が、測定の始点となるゼロ基準面5aである。検査ゲージ1を用いた工作機械の位置決め精度は、第1端面2aに最も近くに位置し、測定基準である第1貫通孔3aの測定面5(ゼロ基準面5a)から、他の各第1貫通孔3のそれぞれの測定面5までの距離を順次測定することにより求めることができる。測定には、例えば変位センサが用いられ、その距離は、各第1貫通孔3の測定面5の実位置と変位センサの示す値との差によって求める。
【0040】
また、互いに隣り合う第1貫通孔3の距離L2は、あらかじめ設定された一定の寸法である。従って、互いに隣り合う第1貫通孔3において、一方の第1貫通孔3が有する測定面5と、他方の第1貫通孔3が有する測定面5との距離L3は一定(L1+L2)となり、これが第1基準ピッチMCとなる。
【0041】
以降、第1基準ピッチMCで第2端面2b方向に第1貫通孔3が距離MCnまで繰り返して設けられている。距離MCnは検査ゲージ1の測定対象に応じて定められており、距離L3のN倍の値となる。第1基準ピッチMC、および測定基準である第1貫通孔3aの測定面5(ゼロ基準面5a)から他の各第1貫通孔3のそれぞれの測定面5の実位置までの距離は、この検査ゲージ1の使用に際し予め三次元測定機などでその値を校正することは言うまでもない。
【0042】
この第1基準ピッチMCには、合成数からなる値が採用される。言い換えると、実施の形態1による検査ゲージ1の第1列C1では、合成数が測定面5の第1基準ピッチMCとなる。従って、合成数を第1基準ピッチMCとする複数の測定面5を用いて工作機械の位置決め精度を測定することにより、主にボールねじの周期的な誤差のうちの系統誤差の成分を検出することができる。なお、合成数とは、2以上の自然数で、1とその数以外の正の約数を持つ数である。
【0043】
検査ゲージ1においては、第1基準ピッチMCが小さいほど、より細かく誤差を捕捉することが可能となる。しかし、第1基準ピッチMCが小さすぎると、母材2の加工の困難さが増加するという問題がある。また、第1貫通孔3が形成される領域には、工具および測定器具が入るスペース、例えば6mm程度が必要となるので、第1基準ピッチMCは、加工の容易さと測定長さとの兼ね合いから選択することが好ましい。これらのことから、第1基準ピッチMCとしては、例えば15mm以上が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。また、量産に適した値としては20mmまたは25mmが考えられる。
(第2列C2を構成する第2貫通孔4について)
【0044】
第2列C2では、複数の第2貫通孔4は、母材2の第1端面2aから第2端面2bに向かって、互いに一定の距離(間隔)L5を有して設けられており、第1端面2aに最も近くに位置する第2貫通孔4aが測定基準となる。
【0045】
各第2貫通孔4には、互いに対向して、幅方向Wdに沿った平坦な内面が2つ形成されており、互いに対向する2つの内面間の距離L4は、あらかじめ設定された一定の寸法である。
【0046】
1つの第2貫通孔4で互いに対向する幅方向Wdに沿った2つの内面のうち、一方が測定面6となる。第2列C2では、第2端面2b側(紙面上右側)の内面を測定面6としており、第1端面2aに最も近くに位置し、測定基準である第2貫通孔4aの測定面6が、測定の始点となるゼロ基準面6aである。検査ゲージ1を用いた工作機械の位置決め精度は、第1端面2aに最も近くに位置し、測定基準である第2貫通孔4aの測定面6(ゼロ基準面6a)から、他の各第2貫通孔4のそれぞれの測定面6までの距離を順次測定することにより求めることができる。測定には、例えば変位センサが用いられ、その距離は、各第2貫通孔4の測定面6の実位置と変位センサの示す値との差によって求める。
【0047】
また、互いに隣り合う第2貫通孔4の距離L5は、あらかじめ設定された一定の寸法である。従って、互いに隣り合う第2貫通孔4において、一方の第2貫通孔4が有する測定面6と、他方の第2貫通孔4が有する測定面6との距離L6は一定(L4+L5)となり、これが第2基準ピッチMPとなる。
【0048】
以降、第2基準ピッチMPで第2端面2b方向に第2貫通孔4が距離MPnまで繰り返して設けられている。距離MPnは検査ゲージ1の測定対象に応じて定められており、距離L6のN倍の値となる。第2基準ピッチMP、および測定基準である第2貫通孔4aの測定面6(ゼロ基準面6a)から他の各第2貫通孔4のそれぞれの測定面6の実位置までの距離は、この検査ゲージ1の使用に際し予め三次元測定機などでその値を校正することは言うまでもない。
【0049】
また、第1列C1を構成し、測定基準である第1貫通孔3aの測定面5(ゼロ基準面5a)と、第2列C2を構成し、測定基準である第2貫通孔4aの測定面6(ゼロ基準面6a)とは、幅方向Wdに沿った同一線上に位置する。
【0050】
この第2基準ピッチMPには、素数からなる値が採用される。言い換えると、実施の形態1による検査ゲージ1の第2列C2では、素数が測定面6の第2基準ピッチMPとなる。従って、素数を第2基準ピッチMPとする複数の測定面6を用いて工作機械の位置決め精度を測定することにより、主にボールねじの周期的な誤差のうちの周期誤差の成分を検出することができる。なお、素数とは、2以上の自然数で、1とその数以外に正の約数を持たない数である。50以下の素数は、2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、41、43、47である。
【0051】
前述した第1基準ピッチMCと同様に、検査ゲージ1においては、第2基準ピッチMPが小さいほど、より細かく誤差を捕捉することが可能となる。しかし、第2基準ピッチMPが小さすぎると、母材2の加工の困難さが増加するという問題がある。また、第2貫通孔4が形成される領域には、工具および測定器具が入るスペース、例えば6mm程度が必要となるので、第2基準ピッチMPは、加工の容易さと測定長さとの兼ね合いから選択することが好ましい。これらのことから、第2基準ピッチMPとしては、例えば15mm以上が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。また、量産に適した値としては17mm、19mm、23mmまたは31mmが考えられる。
【0052】
表1に、第2基準ピッチMPを19mmとした場合における、ボールねじのリードと、測定位置との関係をまとめる。測定位置とは、測定基準である第2貫通孔4aの測定面6(ゼロ基準面6a)から他の各第2貫通孔4のそれぞれの測定面6までの距離である。例えば、ボールねじのリードが5mmの場合、測定位置が19mmでは「5×3+4」と記載されているが、これは、リードが5mmのボールねじが3回転と4/5回転していることを表す。従って、測定位置が38mm、57mmおよび76mmのそれぞれの端数部は、ボールねじが3/5回転、2/5回転および1/5回転していることを表す。
【0053】
【表1】
【0054】
このように、第2列C2を構成する複数の第2貫通孔4にそれぞれ設けられた測定面6を用いて、素数からなる第2基準ピッチMPで工作機械の位置決め精度を測定することにより、1周期内の端数部分が測定対象となり、ボールねじの周期誤差の成分を検出することができる。
【0055】
端数部の影響をより分かりやすくするには、第2基準ピッチMPは、第1基準ピッチMCに近い素数を選ぶことが好ましい。例えば第1基準ピッチMCが20mmであれば、第2基準ピッチMPは、20mmに最も近い素数である19mmが好適である。
【0056】
なお、実施の形態1の検査ゲージ1では、第1列C1を構成する複数の第1貫通孔3の第2端面2b側(紙面上右側)の幅方向に沿った内面を測定面5とし、第2列C2を構成する複数の第2貫通孔4の第2端面2b側の幅方向に沿った内面を測定面6としたが、これに限定されるものではない。例えば、第1列C1を構成する複数の第1貫通孔3の第1端面2a側(紙面上左側)の幅方向に沿った内面を測定面とし、第2列C2を構成する複数の第2貫通孔4の第1端面2a側の幅方向に沿った内面を測定面としてもよい。
【0057】
また、実施の形態1の検査ゲージ1では、第1貫通孔3に、幅方向Wdに沿った平坦な内面を2つ形成し、その一方を測定面5としたが、幅方向Wdに沿った平坦な内面は1つであってもよい。同様に、第2貫通孔4に、幅方向Wdに沿った平坦な内面を2つ形成し、その一方を測定面6としたが、幅方向Wdに沿った平坦な内面は1つであってもよい。すなわち、位置決め精度の測定に用いられる測定面のみを幅方向Wdに沿った平坦な形状とすればよい。
【0058】
また、実施の形態1の検査ゲージ1では、測定基準を第1端面2aに最も近くに位置する第1貫通孔3および第2貫通孔4としたが、他の第1貫通孔3および第2貫通孔4を測定基準としてもよい。他の第1貫通孔3および第2貫通孔4をそれぞれ測定基準である第1貫通孔3aおよび第2貫通孔4aとする場合も、第1貫通孔3aの測定面5(ゼロ基準面5a)と第2貫通孔4aの測定面6(ゼロ基準面6a)とは、幅方向Wdに沿った同一線上に位置することが好ましい。
【0059】
また、実施の形態1の検査ゲージ1では、母材2の上面から下面まで高さ方向Tdに母材2を貫通する複数の第1貫通孔3および複数の第2貫通孔4を設けたが、母材2を貫通する孔を形成する必要はなく、例えば変位センサを用いて物理変化量が検知できる測定面を有する凹部を設けてもよい。
≪検査ゲージの構造の変形例≫
【0060】
実施の形態1による検査ゲージの構造の変形例について、図3を用いて説明する。図3(a)および(b)は、それぞれ実施の形態1の変形例による検査ゲージを示す上面図および同図(a)のB-B´線に沿った断面図である。
【0061】
前述した検査ゲージ1では、母材2の内部に第1基準ピッチMCを有する複数の第1貫通孔3および第2基準ピッチMPを有する複数の第2貫通孔4を設けた。しかし、図3(a)および(b)に示すように、変形例による検査ゲージ11では、母材12の延伸方向Ldに沿った第1側面12c、および第1側面12cと反対側に位置する第2側面12dに、それぞれ第1基準ピッチMCを有する複数の第1溝(第1測定部位)13および第2基準ピッチMPを有する複数の第2溝(第2測定部位)14が設けられている。
【0062】
第1側面12cに互いに離間して形成された複数の第1溝13にそれぞれ設けられた測定面(第1測定面)15が、合成数からなる第1基準ピッチMCで配置され、第2側面12dに互いに離間して形成された複数の第2溝14にそれぞれ設けられた測定面(第2測定面)16が、素数からなる第2基準ピッチMPで配置されている。
【0063】
また、検査ゲージ11では、前述した検査ゲージ1と同様に、母材12の第1側面12cまたは第2側面12dのどちらか一方がアライメント基準面AS2となる。検査ゲージ11では、第1側面12cをアライメント基準面AS2としており、アライメント基準面AS2は、上面視において第1基準ピッチMCで配置された複数の測定面15の延長線および第2基準ピッチMPで配置された複数の測定面16の延長線と直交する。母材12の第1側面12cに形成されたアラインメント基準面AS2を用いて、工作機械のテーブルの運動方向と測定面15,16とが平行になるよう調整を行う。
(第1溝13について)
【0064】
母材12は、幅方向Wdに沿った第1端面12aと、第1端面12aと反対側に位置する第2端面12bとを有する。
【0065】
複数の第1溝13は、母材12の第1端面12aから第2端面12bに向かって、互いに一定の距離L2を有して第1側面12cに設けられており、第1端面12aに最も近くに位置する第1溝13aが測定基準となる。なお、検査ゲージ11では、測定基準となる第1溝13aは、第1端面12aの延長線と第1側面12cの延長線とが直交する母材12の角に設けたが、これに限定されるものではなく、第1端面12aから所定の距離を有して第1側面12cに設けてもよい。
【0066】
各第1溝13には、互いに対向して、幅方向Wdに沿った平坦な内面が2つ形成されており、互いに対向する2つの内面間の距離L1は、あらかじめ設定された一定の寸法である。なお、前述したように、測定基準となる第1溝13aでは、母材12の角に設けられているため、幅方向Wdに沿った平坦な内面は1つである。
【0067】
1つの第1溝13で互いに対向する幅方向Wdに沿った2つの内面のうち、一方が測定面15となる。検査ゲージ11では、第2端面12b側(紙面上右側)の内面を測定面15としており、第1側面12c側では、第1端面12aに最も近くに位置し、測定基準である第1溝13aの測定面15が、測定の始点となるゼロ基準面15aである。検査ゲージ11を用いた工作機械の位置決め精度は、第1端面12aに最も近くに位置し、測定基準である第1溝13aの測定面15(ゼロ基準面15a)から、他の各第1溝13のそれぞれの測定面15までの距離を順次測定することにより求めることができる。測定には、例えば変位センサが用いられ、その距離は、各第1溝13の測定面15の実位置と変位センサの示す値との差によって求める。
【0068】
また、互いに隣り合う第1溝13の距離L2は、あらかじめ設定された一定の寸法である。従って、互いに隣り合う第1溝13において、一方の第1溝13が有する測定面15と、他方の第1溝13が有する測定面15との距離L3は一定(L1+L2)となり、これが第1基準ピッチMCとなる。
【0069】
以降、第1基準ピッチMCで第2端面12b方向に第1溝13が距離MCnまで繰り返して設けられている。距離MCnは検査ゲージ11の測定対象に応じて定められており、距離L3のN倍の値となる。第1基準ピッチMC、および測定基準である第1溝13aの測定面15(ゼロ基準面15a)から他の各第1溝13のそれぞれの測定面15の実位置までの距離は、この検査ゲージ11の使用に際し予め三次元測定機などでその値を校正することは言うまでもない。
【0070】
この第1基準ピッチMCには、合成数からなる値が採用される。従って、合成数を第1基準ピッチMCとする複数の測定面15を用いて工作機械の位置決め精度を測定することにより、主にボールねじの周期的な誤差のうちの系統誤差の成分を検出することができる。
【0071】
また、前述した検査ゲージ1と同様に、第1基準ピッチMCは、加工の容易さと測定長さとの兼ね合いから選択することが好ましいことから、第1基準ピッチMCとしては、例えば15mm以上が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。また、量産に適した値としては20mmまたは25mmが考えられる。
(第2溝14について)
【0072】
複数の第2溝14は、母材12の第1端面12aから第2端面12bに向かって、互いに一定の距離L5を有して第2側面12dに設けられており、第1端面12aに最も近くに位置する第2溝14aが測定基準となる。なお、検査ゲージ11では、測定基準となる第2溝14aは、第1端面12aの延長線と第2側面12dの延長線とが直交する母材12の角に設けたが、これに限定されるものではなく、第1端面12aから所定の距離を有して第2側面12dに設けてもよい。
【0073】
各第2溝14には、互いに対向して、幅方向Wdに沿った平坦な内面が2つ形成されており、互いに対向する2つの内面間の距離L4は、あらかじめ設定された一定の寸法である。なお、前述したように、測定基準となる第2溝14aでは、母材12の角に設けられているため、幅方向Wdに沿った平坦な内面は1つである。
【0074】
1つの第2溝14で互いに対向する幅方向Wdに沿った2つの内面のうち、一方が測定面16となる。検査ゲージ11では、第2端面12b側(紙面上右側)の内面を測定面16としており、第2側面12d側では、第1端面12aに最も近くに位置し、測定基準である第2溝14aの測定面16が、測定の始点となるゼロ基準面16aである。検査ゲージ11を用いた工作機械の位置決め精度は、第1端面12aに最も近くに位置し、測定基準である第2溝14aの測定面16(ゼロ基準面16a)から、他の各第2溝14のそれぞれの測定面16までの距離を順次測定することにより求めることができる。測定には、例えば変位センサが用いられ、その距離は、各第2溝14の測定面16の実位置と変位センサの示す値との差によって求める。
【0075】
また、互いに隣り合う第2溝14の距離L5は、あらかじめ設定された一定の寸法である。従って、互いに隣り合う第2溝14において、一方の第2溝14が有する測定面16と、他方の第2溝14が有する測定面16との距離L6は一定(L4+L5)となり、これが第2基準ピッチMPとなる。
【0076】
以降、第2基準ピッチMPで第2端面12b方向に第2溝14が距離MPnまで繰り返して設けられている。距離MPnは検査ゲージ11の測定対象に応じて定められており、距離L6のN倍の値となる。第2基準ピッチMP、および測定基準である第2溝14aの測定面16(ゼロ基準面16a)から他の各第2溝14のそれぞれの測定面16の実位置までの距離は、この検査ゲージ11の使用に際し予め三次元測定機などでその値を校正することは言うまでもない。
【0077】
また、第1側面12cに形成された測定基準である第1溝13aの測定面15(ゼロ基準面15a)と、第2側面12dに形成された測定基準である第2溝14aの測定面16(ゼロ基準面16a)とは、幅方向Wdに沿った同一線上に位置する。
【0078】
この第2基準ピッチMPには、素数からなる値が採用される。従って、素数を第2基準ピッチMPとする複数の測定面16を用いて工作機械の位置決め精度を測定することにより、主にボールねじの周期的な誤差のうちの周期誤差の成分を検出することができる。
【0079】
また、前述した検査ゲージ1と同様に、第2基準ピッチMPは、加工の容易さと測定長さとの兼ね合いから選択することが好ましいことから、第2基準ピッチMPとしては、例えば15mm以上が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。また、量産に適した値としては17mm、19mm、23mmまたは31mmが考えられる。
【0080】
なお、実施の形態1の変形例による検査ゲージ11では、母材12の上面から下面まで高さ方向Tdに母材12を貫通する複数の第1溝13および複数の第2溝14を設けたが、母材12を貫通する溝を形成する必要はなく、例えば変位センサを用いて物理変化量が検知できる測定面を有する凹部を設けてもよい。
≪位置決め精度の測定方法≫
【0081】
次に、実施の形態1によるボールねじのリード誤差に基づくNC(Numerically Control)工作機械の位置決め精度の測定方法について、図4図6を用いて説明する。図4は、実施の形態1による工作機械の構成例を示す概略斜視図である。図5は、実施の形態1による工作機械の位置決め精度の測定手順を説明するフロー図である。図6は、実施の形態1による変位センサの概略図である。なお、一例として、前述した検査ゲージ1を用いたNC工作機械の位置決め精度の測定方法について説明する。
【0082】
図4に示すように、NC工作機械21では、X方向、Y方向およびZ方向にそれぞれ延伸するねじ軸(送りねじ)22を用いて、テーブル23をX方向、Y方向およびZ方向に、それぞれ自在に移動することができる。互いに直交し、水平面を構成する2つの方向がX方向とY方向であり、水平面に対して垂直の方向がZ方向である。テーブル23の主面上には、加工対象物または検査ゲージ1などが搭載される。なお、図4には、X方向の送り機構の位置決め精度を測定する際の態様を示している。
【0083】
前述したように、NC工作機械21の送り要素には、ボールねじが使用される。ボールねじは、ねじ軸22、ナット(図示は省略)およびボール(図示は省略)などからなる。ボールねじでは、ねじ軸22がテーブル23を軸方向に直線運動させることから、ナットを介してねじ軸22に軸方向の荷重が加わるが、それ以外の静的な荷重(例えば垂直荷重、モーメント荷重)などはガイドレール24が受け持つ構造となっている。従って、ボールねじを含む送り機構は、主に、ボールねじと、ガイドレール24と、送りモータ(動力源)25からなる。なお、図4中、符号26で示す部位が主軸ユニット、符号27で示す部位が変位センサである。加工時は主軸ユニット26を介して切削力がNC工作機械21の本体に加わるが、位置決めなどの静的な精度試験の場合は切削力の影響は無視することができる。
【0084】
検査ゲージ1を用いたNC工作機械21の位置決め精度の測定は、X方向の送り機構、Y方向の送り機構およびZ方向の送り機構に適用することができる。
【0085】
図5に、NC工作機械21の位置決め精度を測定する手順を示す。
まず、測定用プログラムを作成する(工程S1)。測定用プログラムでは、NC工作機械21の原点の定義、検査ゲージ1の第1列において測定開始点となる第1測定原点の位置座標の決定、検査ゲージ1の第2列において測定開始点となる第2測定原点の位置座標の決定、および具体的な動作指令などが指示される。
【0086】
次に、測定用プログラムを実行し、テーブル23の主面上に固定した検査ゲージ1を用いて、NC工作機械21の位置決め精度を測定する(工程S2)。検査ゲージ1は、アラインメント基準面AS1(図2参照)とテーブル23の運動方向とが平行になるように固定されている。
【0087】
検査ゲージ1の各測定面におけるそれぞれの位置決め精度の測定には、例えば図6に示す、挺子式ダイヤルゲージなどの接触式変位センサ27を用いる。変位センサ27の先端には、変位量を検出するプローブ28が取り付けられており、さらに、プローブ28の先端には測定子29が取り付けられている。この測定子29を検査ゲージ1の各測定面に接触させて、それぞれの測定値を測定する。変位センサ27は、チャック30を介して、工具位置を代表する主軸ユニット26の先端に取り付けられる。
【0088】
検査ゲージ1において、各測定面の第1基準ピッチおよび第2基準ピッチ、並びにゼロ基準面からの各測定面までのそれぞれの距離を予め校正しておくことは言うまでもない。
【0089】
次に、得られた測定結果からNC工作機械21の位置決め精度を評価する(工程S3)。
【0090】
表2に、X方向の送り機構の位置決め精度の測定結果の一例を示す。測定には、第1列の第1基準ピッチが20mm、第2列の第2基準ピッチが19mmの検査ゲージ1を用いた。検査ゲージ1の各測定面(A1~A16,B1~B16)においてそれぞれの校正値を確認し、その校正値に基づいて、各測定面(A1~A16,B1~B16)におけるそれぞれの誤差を計算する。このような測定結果に基づきNC工作機械21の位置決め精度を評価する。
【0091】
【表2】
【0092】
例えば、合成数からなる値を第1基準ピッチとする第1列の測定から得られた誤差、および素数からなる値を第2基準ピッチとする第2列の測定から得られた誤差が共に大きい場合は、NC工作機械21のメンテナンス不良が疑われる。
【0093】
また、合成数からなる値を第1基準ピッチとする第1列の測定結果と、素数からなる値を第2基準ピッチとする第2列の測定結果との比較を行い、両者の差が大きい場合は、偏心(例えば送りモータ25とねじ軸22との偏心、フィードバックエンコーダと送りモータ25との偏心)などに起因するサイクリック誤差が疑われ、さらなる検討が行われる。一方、合成数からなる値を第1基準ピッチとする第1列の測定結果と、素数からなる値を第2基準ピッチとする第2列の測定結果との比較を行い、両者が互いに同一傾向の場合は、偏心などに起因するサイクリック誤差が小さいと判定することができる。
【0094】
また、暖気運転(ウォーミングアップ)を行わず測定した場合と、暖気運転を行なった後に測定した場合とを比較することにより、暖気運転の効果を判定することができる。
【0095】
なお、実施の形態1では、NC工作機械21の位置決め精度の測定方法について説明したが、これに限定されるものではなく、他の機械装置の位置決め精度の測定にも適用できることは言うまでもない。
【0096】
このように、実施の形態1によれば、第1列を、合成数を基として配置された測定面を有する複数の第1測定部位(第1貫通孔3,第1溝13)によって構成し、第2列を、素数を基として配置された測定面を有する複数の第2測定部位(第2貫通孔4,第2溝14)によって構成した検査ゲージ1,11を使用することで、ボールねじの系統誤差の成分および周期誤差の成分を検出することができる。これにより、ボールねじのリード誤差に基づく工作機械の位置決め精度を容易に、かつ正しく評価することができる。
(実施の形態2)
≪検査ゲージの構造≫
【0097】
実施の形態2による検査ゲージの構造について、図7を用いて説明する。図7は、実施の形態2による検査ゲージを示す上面図である。
【0098】
図7に示すように、検査ゲージ31の基本的な構造は、前述した実施の形態1による検査ゲージ1と同様である。すなわち、検査ゲージ31は、母材32と、延伸方向Ldに沿って、互いに離間して母材32に一列(第1列C1)に設けられた複数の第1貫通孔(第1測定部位)33と、幅方向Wdに複数の第1貫通孔33と離間し、かつ、延伸方向Ldに沿って、互いに離間して母材32に一列(第2列C2)に設けられた複数の第2貫通孔(第2測定部位)34とから構成される。
母材32は、幅方向Wdに沿った第1端面32aと、第1端面32aと反対側に位置する第2端面32bとを有する。
【0099】
また、第1列C1を構成する複数の第1貫通孔33と、第2列C2を構成する複数の第2貫通孔34とは、幅方向Wdに所定の間隔W2を有して設けられている。さらに、第1列C1を構成する複数の第1貫通孔33にはそれぞれ測定面(第1測定面)35が設けられ、第2列C2を構成する複数の第2貫通孔34にはそれぞれ測定面(第2測定面)36が設けられている。
【0100】
また、検査ゲージ31には、延伸方向Ldに沿った第1側面32c、および第1側面32cと反対側に位置する第2側面32dが母材32に形成されているが、どちらか一方がアライメント基準面AS3となる。検査ゲージ31では、第1側面32cをアライメント基準面AS3としており、アライメント基準面AS3は、上面視において複数の測定面35の延長線および複数の測定面36の延長線と直交する。母材32の第1側面32cに形成されたアラインメント基準面AS3を用いて、工作機械のテーブルの運動方向と測定面35,36とが平行になるよう調整を行う。
【0101】
また、第1列C1を構成する複数の第1貫通孔33にそれぞれ設けられた測定面(第1測定面)35は、合成数からなる第1基準ピッチMCで配置されている。しかし、第2列C2においては、測定の始点となる第2貫通孔34aの測定面36(ゼロ基準面36a)から、延伸方向Ldに順次設けられた他の各第2貫通孔34のそれぞれの測定面(第2測定面)36までの距離を、第1列C1を構成する複数の第1貫通孔33にそれぞれ設けられた測定面35の第1基準ピッチMCの倍数近傍の素数としている。
【0102】
以下に、第2列C2を構成する複数の第2貫通孔34について説明する。第1列C1を構成する複数の第1貫通孔33は、前述した実施の形態1による複数の第1貫通孔3と同じであるので、説明は省略する。
(第2列C2を構成する第2貫通孔34について)
【0103】
第2列C2では、複数の第2貫通孔34は、母材32の第1端面32aから第2端面32bに向かって、互いに所定の距離(間隔)L8を有して設けられており、第1端面32aに最も近くに位置する第2貫通孔34aが測定基準となる。
【0104】
各第2貫通孔34には、互いに対向して、幅方向Wdに沿った平坦な内面が2つ形成されており、互いに対向する2つの内面間の距離L7は、あらかじめ設定された一定の寸法である。
【0105】
1つの第2貫通孔34で互いに対向する幅方向Wdに沿った2つの内面のうち、一方が測定面36となる。第2列C2では、第2端面32b側(紙面上右側)の内面を測定面36としており、第1端面32aに最も近くに位置し、測定基準である第2貫通孔34aの測定面36が、測定の始点となるゼロ基準面36aである。検査ゲージ31を用いた工作機械の位置決め精度は、第1端面32aに最も近くに位置し、測定基準である第2貫通孔34aの測定面36(ゼロ基準面36a)から、他の各第2貫通孔34のそれぞれの測定面36までの距離を順次測定することにより求めることができる。測定には、例えば変位センサが用いられ、その距離は、各第2貫通孔34の測定面36の実位置と変位センサの示す値との差によって求める。
【0106】
また、第1列C1を構成し、測定基準である第1貫通孔33aの測定面35(ゼロ基準面35a)と、第2列C2を構成し、測定基準である第2貫通孔34aの測定面36(ゼロ基準面36a)とは、幅方向Wdに沿った同一線上に位置する。
【0107】
しかし、第2列C2においては、互いに隣り合う第2貫通孔34の距離L8は一定ではなく、第1端面32aに最も近くに位置し、測定基準である第2貫通孔34aの測定面36(ゼロ基準面36a)から、延伸方向Ldに順次設けられた他の各第2貫通孔34のそれぞれの測定面36までの距離を、第1列C1を構成する複数の第1貫通孔33にそれぞれ設けられた測定面35の第1基準ピッチMCの倍数近傍の素数としている。例えば第1列C1の第1基準ピッチMCが20mmの場合、測定基準である第2貫通孔34aの測定面36(ゼロ基準面36a)から、他の各第2貫通孔34のそれぞれの測定面36までの距離は、17mm、37mm、59mm、79mmのように、20mmの倍数近傍の素数となっている。
【0108】
検査ゲージ31においても、互いに隣接する第2貫通孔34のそれぞれの測定面36の距離(L7+L8)が短いほど、より細かく誤差を捕捉することが可能となる。しかし、その距離(L7+L8)が短すぎると、母材32の加工の困難さが増加するという問題がある。また、第2貫通孔34が形成される領域には、工具および測定器具が入るスペース、例えば6mm程度が必要となるので、その距離(L7+L8)は、加工の容易さと測定長さとの兼ね合いから選択することが好ましい。これらのことから、互いに隣接する第2貫通孔34のそれぞれの測定面36の距離(L7+L8)としては、例えば15mm以上が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。
【0109】
なお、実施の形態2の検査ゲージ31では、母体32の内部に複数の第1貫通孔33および複数の第2貫通孔34を形成したが、母体32の延伸方向Ldに沿った2つの側面(第1側面32c,第2側面32d)のそれぞれに、合成数からなる第1基準ピッチMCで配置された測定面を有する複数の第1溝を形成し、ゼロ基準面からの距離を第1基準ピッチMCの倍数近傍の素数とする測定面を有する複数の第2溝を形成してもよい。
【0110】
また、実施の形態2の検査ゲージ31では、第1貫通孔33に、幅方向Wdに沿った平坦な内面を2つ形成し、その一方を測定面35としたが、幅方向Wdに沿った平坦な内面は1つであってもよい。同様に、第2貫通孔34に、幅方向Wdに沿った平坦な内面を2つ形成し、その一方を測定面36としたが、幅方向Wdに沿った平坦な内面は1つであってもよい。すなわち、位置決め精度の測定に用いられる測定面のみを幅方向Wdに沿った平坦な形状とすればよい。
【0111】
このように、実施の形態2によれば、第1列C1を、合成数を基として配置された測定面35を有する複数の第1貫通孔33によって構成し、第2列C2を、素数を基として配置された測定面36を有する複数の第2貫通孔34によって構成した検査ゲージ31を使用することで、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態3)
≪検査ゲージの構造≫
【0112】
実施の形態3による検査ゲージの構造について、図8および図9を用いて説明する。図8および図9は、それぞれ実施の形態3による検査ゲージを示す上面図および図9のC-C´線に沿った断面図である。
【0113】
図8および図9に示すように、検査ゲージ41は、ガラス、セラミックスまたは金属からなる母材42と、母材42の主面上に、例えば蒸着法により形成された線群とから構成される。すなわち、母材42の主面上には、延伸方向Ldに沿って、互いに離間して一列(第1列C1)に設けられた複数の第1目盛線(第1測定部位)43と、幅方向Wdに複数の第1目盛線43と離間し、かつ、延伸方向Ldに沿って、互いに離間して一列(第2列C2)に設けられた複数の第2目盛線(第2測定部位)44とが形成されている。複数の第1目盛線43および複数の第2目盛線44は、例えば蒸着法により形成されるニッケルまたはクロムからなる。
【0114】
母材42は、平面視において略四角形状であり、幅方向Wdに沿った第1端面42aと、反対側に位置する第2端面42bとを有する。
【0115】
第1列C1を構成する複数の第1目盛線43と、第2列C2を構成する複数の第2目盛線44とは、幅方向Wdに所定の間隔W3を有して設けられている。さらに、第1列C1を構成する複数の第1目盛線43は、合成数からなる第1基準ピッチMCで配置され、第2列C2を構成する複数の第2目盛線44は、素数からなる第2基準ピッチMPで配置されている。
【0116】
また、母材42の主面上には、第1目盛線43および第2目盛線44のそれぞれの延長線と直交し、延伸方向Ldに延在するアライメント補助線ALが形成されている。検査ゲージ41を検査対象の工作機械のテーブルに設置する際、テーブルの運動方向と第1目盛線43および第2目盛線44とは直交状態になければならない。直交状態にないと互いに隣接する第1目盛線43の間隔および互いに隣接する第2目盛線44の間隔が見かけ上小さくなり、誤差を生じることになる。そこで、母材42の主面上に形成されたアラインメント補助線ALを用いて、工作機械のテーブルの運動方向と第1目盛線43および第2目盛線44とが平行になるよう調整を行う。
(第1列C1を構成する第1目盛線43について)
【0117】
第1列C1では、複数の第1目盛線43は、母材42の第1端面42aから第2端面42bに向かって、互いに一定の距離(間隔)L9を有して設けられており、第1端面42aに最も近くに位置する第1目盛線43aが測定基準となる。
【0118】
第1目盛線43は、幅方向Wdに延在し、所定の長さLL1および所定の線幅WL1を有する。長さLL1は、線分として認識できる長さであればよく、例えば2~3mm程度である。また、線幅WL1は、例えば10~20μm、第1目盛線43の厚さdp1は、例えば2~3μm程度である。
【0119】
第1目盛線43の延伸方向Ldの中心位置を測定点(第1測定点)とし、第1列C1では、第1端面42aに最も近くに位置し、測定基準である第1目盛線43aの測定点が、測定の始点となるゼロ基準点である。検査ゲージ41を用いた工作機械の位置決め精度は、第1端面42aに最も近くに位置し、測定基準である第1目盛線43aの測定点(ゼロ基準点)から、他の各第1目盛線43のそれぞれの測定点までの距離を順次測定することにより求めることができる。測定には、例えば目視により目盛線の位置を読み取ることのできる読取顕微鏡(例えば測微顕微鏡)が用いられ、その距離は、各第1目盛線43の測定点の実位置と読取顕微鏡の示す値との差によって求める。
【0120】
また、互いに隣り合う第1目盛線43の測定点の距離(L9+WL1)は、あらかじめ設定された一定の寸法であり、これが第1基準ピッチMCとなる。
【0121】
以降、第1基準ピッチMCで第2端面42b方向に第1目盛線43が距離MCnまで繰り返して設けられている。距離MCnは検査ゲージ41の測定対象に応じて定められており、距離(L9+WL1)のN倍の値となる。
【0122】
この第1基準ピッチMCには、合成数からなる値が採用される。言い換えると、実施の形態3による検査ゲージ41の第1列C1では、合成数が測定点の第1基準ピッチMCとなる。従って、合成数を第1基準ピッチMCとする複数の測定点を用いて工作機械の位置決め精度を測定することにより、主にボールねじの周期的な誤差のうちの系統誤差の成分を検出することができる。
【0123】
検査ゲージ41においても、第1基準ピッチMCが小さいほど、より細かく誤差を捕捉することが可能となる。従って、第1基準ピッチMCは、第1目盛線43の形成の容易さと測定長さとの兼ね合いから選択することが好ましい。これらのことから、第1基準ピッチMCとしては、例えば15mm以上が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。また、量産に適した値としては20mmまたは25mmが考えられる。
(第2列C2を構成する第2目盛線44について)
【0124】
第2列C2では、複数の第2目盛線44は、母材42の第1端面42aから第2端面42bに向かって、互いに一定の距離(間隔)L10を有して設けられており、第1端面42aに最も近くに位置する第2目盛線44aが測定基準となる。
【0125】
第2目盛線44は、幅方向Wdに延在し、所定の長さLL2および所定の線幅WL2を有する。長さLL2は、線分として認識できる長さであればよく、例えば2~3mm程度である。また、線幅WL2は、例えば10~20μmであり、第2目盛線44の厚さdp2は、例えば2~3μm程度である。
【0126】
第2目盛線44の延伸方向Ldの中心位置を測定点(第2測定点)とし、第2列C2では、第1端面42aに最も近くに位置し、測定基準である第2目盛線44aの測定点が、測定の始点となるゼロ基準点である。検査ゲージ41を用いた工作機械の位置決め精度は、第1端面42aに最も近くに位置し、測定基準である第2目盛線44aの測定点(ゼロ基準点)から、他の各第2目盛線44のそれぞれの測定点までの距離を順次測定することにより求めることができる。測定には、例えば読取顕微鏡が用いられ、その距離は、各第2目盛線44の測定点の実位置と読取顕微鏡の示す値との差によって求める。
【0127】
また、互いに隣り合う第2目盛線44の測定点の距離(L10+WL2)は、あらかじめ設定された一定の寸法であり、これが第2基準ピッチMPとなる。
【0128】
以降、第2基準ピッチMPで第2端面42b方向に第2目盛線44が距離MPnまで繰り返して設けられている。距離MPnは検査ゲージ41の測定対象に応じて定められており、距離(L10+WL2)のN倍の値となる。
【0129】
また、第1列C1を構成し、測定基準である第1目盛線43aの測定点(ゼロ基準点)と、第2列C2を構成し、測定基準である第2目盛線44aの測定点(ゼロ基準点)とは、幅方向Wdに沿った同一線上に位置する。
【0130】
この第2基準ピッチMPには、素数からなる値が採用される。言い換えると、実施の形態3による検査ゲージ41の第2列C2では、素数が測定点の第2基準ピッチMPとなる。従って、素数を第2基準ピッチMPとする複数の測定点を用いて工作機械の位置決め精度を測定することにより、主にボールねじの周期的な誤差のうちの周期誤差の成分を検出することができる。
【0131】
検査ゲージ41においても、第2基準ピッチMPが小さいほど、より細かく誤差を捕捉することが可能となる。従って、第2基準ピッチMPは、第2目盛線44の形成の容易さと測定長さとの兼ね合いから選択することが好ましい。これらのことから、第2基準ピッチMPとしては、例えば15mm以上が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。また、量産に適した値としては17mm、19mmまたは31mmが考えられる。
【0132】
なお、実施の形態3の検査ゲージ41では、母体42の主面上に複数の第1目盛線43および複数の第2目盛線44を蒸着法により形成したが、母体42の主面上に先ず蒸着法により被膜を形成し、エッチング法などにより、その被膜に目盛線を刻むことにより、複数の第1目盛線43および複数の第2目盛線44を形成してもよい。
【0133】
また、実施の形態3の検査ゲージ41では、第1目盛線43の延伸方向Ldの中心位置および第2目盛線44の延伸方向Ldの中心位置をそれぞれ測定点としたが、これに限定されるものではない。例えば、第1目盛線43の第1端面42a側のエッジの位置および第2目盛線44の第1端面42a側のエッジの位置をそれぞれ測定点としてもよい。または、第1目盛線43の第2端面42b側のエッジの位置および第2目盛線44の第2端面42b側のエッジの位置をそれぞれ測定点としてもよい。
【0134】
また、実施の形態3の検査ゲージ41では、第2列C2を構成する複数の第2目盛線44を第2基準ピッチMPで配置したが、前述した実施の形態2のように、測定の始点となる第2目盛線44aの測定点(ゼロ基準点)から、延伸方向Ldに順次設けられた他の各第2目盛線44のそれぞれの測定点までの距離を、第1列C1を構成する複数の第1目盛線43にそれぞれ設けられた測定点の第1基準ピッチMCの倍数近傍の素数としてもよい。
【0135】
また、実施の形態3では、第1目盛線43および第2目盛線44の位置の検出に、例えば読取顕微鏡を用いたが、これに限定されるものではなく、第1目盛線43および第2目盛線44の位置の検出を1μm以下の精度で検出できる光学的手段であればよい。例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラを応用した顕微鏡を用いることができる。
【0136】
このように、実施の形態3によれば、第1列C1を、合成数を基として配置された測定点を有する複数の第1目盛線43によって構成し、第2列C2を、素数を基として配置された測定点を有する複数の第2目盛線44によって構成した検査ゲージ41を使用することで、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0137】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0138】
前述した実施の形態では、母材に測定部位として複数の第1貫通孔および複数の第2貫通孔を設けた検査ゲージ、母材に測定部位として複数の第1溝および複数の第2溝を設けた検査ゲージ、母材に測定部位として複数の第1目盛線および複数の第2目盛線を設けた検査ゲージを説明したが、これらに限定されるものではない。すなわち、合成数を基として一列に配置された複数の第1測定面または複数の第1測定点と、素数を基として一列に配置された複数の第2測定面または複数の第2測定点とが規定できる検査ゲージであればよい。
【0139】
また、前述した実施の形態では、母材を加工して測定部位を形成した検査ゲージについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、合成数からなる第1基準ピッチで配置されたステップゲージと、素数からなる第2基準ピッチで配置されたステップゲージとを互いに平行に並べて一体とした検査ゲージであってもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 検査ゲージ
2 母材
2a 第1端面
2b 第2端面
2c 第1側面
2d 第2側面
3 第1貫通孔(第1測定部位)
3a 第1貫通孔(測定基準)
4 第2貫通孔(第2測定部位)
4a 第2貫通孔(測定基準)
5 測定面(第1測定面)
5a ゼロ基準面
6 測定面(第2測定面)
6a ゼロ基準面
11 検査ゲージ
12 母材
12a 第1端面
12b 第2端面
12c 第1側面
12d 第2側面
13 第1溝(第1測定部位)
13a 第1溝(測定基準)
14 第2溝(第2測定部位)
14a 第2溝(測定基準)
15 測定面(第1測定面)
15a ゼロ基準面
16 測定面(第2測定面)
16a ゼロ基準面
21 NC工作機械
22 ねじ軸(送りねじ)
23 テーブル
24 ガイドレール
25 送りモータ(動力源)
26 主軸ユニット
27 変位センサ
28 プローブ
29 測定子
30 チャック
31 検査ゲージ
32 母材
32a 第1端面
32b 第2端面
32c 第1側面
32d 第2側面
33 第1貫通孔(第1測定部位)
33a 第1貫通孔(測定基準)
34 第2貫通孔(第2測定部位)
34a 第2貫通孔(測定基準)
35 測定面(第1測定面)
35a ゼロ基準面
36 測定面(第2測定面)
36a ゼロ基準面
41 検査ゲージ
42 母材
42a 第1端面
42b 第2端面
42c 第1側面
42d 第2側面
43 第1目盛線(第1測定部位)
43a 第1目盛線(測定基準)
44 第2目盛線(第2測定部位)
44a 第2目盛線(測定基準)
51 検査ゲージ
52 母材
52a 第1端面
52b 第2端面
53 貫通孔
53a 貫通孔(測定基準)
54 測定面
54a ゼロ基準面
AL アライメント補助線
AS1,AS2,AS3 アライメント基準面
C1 第1列
C2 第2列
dp1,dp2 厚さ
L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7,L8,L9,L10 距離
LL1,LL2 長さ
M 基準ピッチ
MC 第1基準ピッチ(第1基準寸法)
MP 第2基準ピッチ(第2基準寸法)
MCn,MPn 距離
W1,W2,W3 間隔
WL1,WL2 線幅
Ld 延伸方向(第1方向)
Wd 幅方向(第2方向)
Td 高さ方向(第3方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9