(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179169
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】防塵カバー及びこれを備えた孔開け工具
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/08 20060101AFI20241219BHJP
B23B 47/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B23Q11/08 F
B23B47/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097791
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】391007518
【氏名又は名称】株式会社ハウスビーエム
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】安心院 國雄
【テーマコード(参考)】
3C036
【Fターム(参考)】
3C036LL00
(57)【要約】
【課題】加工位置の視認と孔開け作業中での粉塵の飛散の抑止とを両立させる。
【解決手段】孔開け作業を許容しながら工具本体10を覆う防塵カバー40が提供される。防塵カバー40は、基部42と、透明カバー部46と、蛇腹部44と、を備える。基部42は、孔開け工具の支軸に支持される。透明カバー部46は、カバー先端部46bが被加工物2に当接した状態で加工位置を外部から目視により確認することを可能にする透明度を有する。蛇腹部44は、基部42と透明カバー部46とを支軸に沿う軸方向に相互に連結するとともに、透明カバー部46に対して基部42が相対的に軸方向に前進することを許容するように軸方向に収縮可能な蛇腹状をなす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されながら前記被加工物に押し込まれることにより当該被加工物に孔を開けることが可能な工具本体と、回転駆動力を出力することが可能な回転駆動機に連結される基端部とその反対側の端部であって前記工具本体を保持する先端部とを有して前記回転駆動力を前記工具本体に伝達することにより当該工具本体を回転させる支軸と、を備えた孔開け工具に用いられて、前記被加工物に前記工具本体が押し込まれる孔開け作業を許容しながら前記工具本体を覆う防塵カバーであって、
前記工具本体よりも後方の位置で前記支軸に支持される基部と、
前記工具本体を囲むことが可能な筒状をなし、前記被加工物に当接可能なカバー先端部を含み、前記カバー先端部が前記被加工物に当接した状態で前記工具本体による前記被加工物の加工位置を外部から目視により確認することを可能にする透明度を有する透明カバー部と、
前記基部と前記透明カバー部とを前記支軸に沿う軸方向に相互に連結し、かつ、前記透明カバー部に対して前記基部が相対的に前記軸方向に前進することを許容するように当該軸方向に収縮可能な蛇腹状をなす蛇腹部と、を備える、防塵カバー。
【請求項2】
請求項1に記載の防塵カバーであって、前記防塵カバーの前記基部は前記支軸に対して前進位置と後退位置との間で前記軸方向に相対移動可能に前記支軸に取付けられ、前記前進位置は、前記蛇腹部が収縮していない状態で前記透明カバー部が前記工具本体の少なくとも一部を覆う位置であり、前記後退位置は、前記前進位置よりも前記支軸の基端部に近い位置である、防塵カバー。
【請求項3】
請求項2に記載の防塵カバーであって、前記基部を前記前進位置に向けて付勢する付勢手段をさらに備える、防塵カバー。
【請求項4】
回転駆動されながら前記被加工物に押し込まれることにより当該被加工物に孔を開けることが可能な工具本体と、
回転駆動力を出力することが可能な回転駆動機に連結される基端部とその反対側の端部であって前記工具本体を保持する先端部とを有して前記回転駆動力を前記工具本体に伝達することにより当該工具本体を回転させる支軸と、
請求項1~3の何れかに記載の防塵カバーと、を備える、孔開け工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁、天井、その他の加工物に孔を穿設するための孔開け工具に用いられる防塵カバー及びこれを備えた孔開け工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、孔開け工具に用いられる防塵カバーとして、特許文献1に記載されるものが知られている。この防塵カバーは、蛇腹状のカバー本体と、このカバー本体の基端部につながる基部とを有し、前記基部が回転駆動機の工具保持部に着脱可能に装着される。前記筒体は、前記孔開け工具の工具本体(特許文献1ではセンタードリル及び円筒状のボディ)による孔開け作業の進行に伴って収縮しながら終始工具本体を覆うことが可能であり、これにより、当該孔開け作業によって発生する粉塵が外部に飛散するのを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記防塵カバーは、孔開け作業中に前記工具本体の全体を覆うため、作業者は当該工具本体と被加工物との接触位置を目視で確認することができない。このことは、前記孔開け作業を難しくし、また穿孔位置の精度の向上を妨げるおそれがある。また、前記防塵カバーは前記被加工物への前記工具本体の押し込みを可能にするために伸縮可能な蛇腹状をなしていてその材質も限られているため、当該防塵カバーを透明にして内部の視認を可能にすることは事実上困難である。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するため、作業者が孔開け工具の工具本体と被加工物との接触位置を視認することを可能にしながら当該孔開け工具による孔開け作業中での粉塵の飛散を抑止することができる防塵カバー及びこれを備えた孔開け工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
提供されるのは、孔開け工具に用いられる防塵カバーである。前記孔開け工具は、工具本体と、支軸と、前記防塵カバーと、を備える。前記工具本体は、回転駆動されながら前記被加工物に押し込まれることにより当該被加工物に孔を開けることが可能である。前記支軸は、回転駆動力を出力することが可能な回転駆動機に連結される基端部と、その反対側の端部であって前記工具本体を保持する先端部と、を有し、前記回転駆動力を前記工具本体に伝達して当該工具本体を回転させる。前記防塵カバーは、前記被加工物に前記工具本体が押し込まれる孔開け作業を許容しながら前記工具本体を覆うものであり、基部と、透明カバー部と、蛇腹部と、を備える。前記基部は、前記工具本体よりも後方の位置で前記支軸に支持される。前記透明カバー部は、前記工具本体を囲むことが可能な筒状をなし、前記被加工物に当接可能なカバー先端部を含み、前記カバー先端部が前記被加工物に当接した状態で前記工具本体による前記被加工物の加工位置を外部から目視により確認することを可能にする透明度を有する。前記蛇腹部は、前記基部と前記透明カバー部とを前記支軸に沿う軸方向に相互に連結し、かつ、前記透明カバー部に対して前記基部が相対的に前記軸方向に前進することを許容するように当該軸方向に収縮可能な蛇腹状をなす。
【0007】
前記防塵カバーでは、円筒状の透明カバー部と蛇腹状の伸縮部との組み合わせが、孔開け作業中における粉塵の飛散の抑止と、作業者による加工位置の視認と、の両立を可能にする。具体的に、前記蛇腹部は、前記透明カバー部の前記カバー先端部が前記被加工物に当接した状態で当該蛇腹部の収縮を伴いながら前記透明カバー部に対して前記基部を相対的に前進させるようにして前記孔開け工具の前記工具本体が前記被加工物に押付けられることを可能にし、これにより、前記防塵カバーによって前記工具本体を覆いながら前記工具本体による孔開け作業が行われること、つまり、前記孔開け作業により発生する粉塵が周囲に飛散するのを抑止すること、を可能にする。一方、前記透明度を有する前記透明カバー部は、当該透明カバー部を通じて作業者が前記工具本体と前記被加工物との接触位置を視認することを可能にし、これにより、前記孔開け作業が適切な加工位置で容易に行われることを可能にする。
【0008】
前記防塵カバーの前記基部は前記支軸に移動不能に固定されるものであってもよいが、当該支軸に対して前進位置と後退位置との間で前記軸方向に相対移動可能に前記支軸に取付けられるように構成されていることが、好ましい。前記前進位置は、前記蛇腹部が収縮していない状態で前記透明カバー部が前記工具本体の少なくとも一部を覆う位置であり、前記後退位置は、前記前進位置よりも前記支軸の基端部に近い位置すなわち後側の位置である。前記基部の前記支軸に対する前記軸方向の相対移動は、前記蛇腹部の前記収縮と相俟って、前記カバー先端部を超えて前記工具本体が前進できる距離、すなわち有効加工深さ、をさらに増大させることを可能にする。
【0009】
この場合、前記防塵カバーは、前記基部を前記前進位置に向けて付勢する付勢手段をさらに備えることが好ましい。当該付勢は、加工開始時において前記透明カバー部が確実に前記工具本体の少なくとも一部を覆うことを可能にする。
【0010】
また、提供されるのは、孔開け工具であり、回転駆動されながら前記被加工物に押し込まれることにより当該被加工物に孔を開けることが可能な工具本体と、回転駆動力を出力することが可能な回転駆動機に連結される基端部とその反対側の端部であって前記工具本体を保持する先端部とを有して前記回転駆動力を前記工具本体に伝達することにより当該工具本体を回転させる支軸と、前記防塵カバーと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、作業者が孔開け工具の工具本体と被加工物との接触位置を視認することを可能にしながら当該孔開け工具による孔開け作業中での粉塵の飛散を抑止することができる防塵カバー及びこれを備えた孔開け工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る孔開け工具の部分断面図であって、加工開始時の状態を示す。
【
図2】前記孔開け工具の部分断面図であって、加工終了時の状態を示す。
【
図3】前記孔開け工具のうち防塵カバーのみを断面で表した図であって、加工開始時の状態を示す。
【
図4】前記孔開け工具のうち防塵カバーのみを断面で表した図であって、加工終了時の状態を示す。
【
図5】前記孔開け工具における後側連結具の要部を示す断面図である。
【
図6】前記孔開け工具における前側連結具の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1~
図4は、前記実施の形態に係る孔開け工具を示す。この孔開け工具は、工具本体10と、中継軸20と、アダプタ30と、防塵カバー40と、を備える。
【0015】
前記工具本体10は、センタードリル12と、ホールソー14と、を有し、これらの組み合わせによって被加工物、例えば壁や天井、に円形孔が加工される。前記ホールソー14は、円筒状のボディ14aと、複数の刃14bと、を含み、前記複数の刃14bは前記ボディ14aの先端部において周方向に並ぶ複数の位置にそれぞれ固定されている。前記ホールソー14全体がその中心軸回りに回転駆動されながら前記複数の刃14bが被加工物2に押付けられることにより、当該被加工物2に前記ボディ14aの直径に対応した径の円形孔が加工されることが可能である。前記センタードリル12は、前記ホールソー14に先行して芯出し用の中心孔を穿つように、当該ホールソー14の先端よりも前方に突出するように配置される。
【0016】
本発明に係る工具本体は前記センタードリル12と前記ホールソー14との組み合わせに限定されない。当該工具本体は例えば前記センタードリル12のみからなるものでもよい。
【0017】
前記中継軸20及び前記アダプタ30は互いに軸方向に直列に連結されて支軸を構成する。前記軸方向は、前記工具本体10の回転中心軸に沿う方向である。前記支軸は、図示されない回転駆動機に連結される基端部と、その反対側の先端部と、を有し、前記先端部は前記工具本体10(この実施の形態では前記センタードリル12と前記ホールソー14との双方)を保持する。
【0018】
前記中継軸20は、前記支軸の全長を調整するために前記アダプタ30と前記回転駆動機の出力軸との間に介設される部材であり、駆動連結端部22とアダプタ保持端部24とを有する。前記駆動連結端部22は前記支軸の前記基端部に相当し、前記回転駆動機の出力軸に着脱可能に連結されることが可能である。前記アダプタ保持端部24は前記駆動連結端部と反対側の端部であり、当該アダプタ保持端部24に前記アダプタ30が連結される。
【0019】
前記アダプタ30は、前記工具本体10を保持してこれに前記回転駆動機の回転駆動力を伝達するものであり、被保持端部32と、その反対側の工具本体保持端部34と、を有する。前記被保持端部32は、前記中継軸20の前記アダプタ保持端部24に着脱可能に保持される。前記工具本体保持端部34は、前記支軸の前記先端部に相当し、前記工具本体10を着脱可能に保持する。
【0020】
本発明に係る支軸は前記中継軸20と前記アダプタ30との組み合わせに限定されない。当該支軸は、一方向に延びる単一の軸材のみで構成されてもよい。
【0021】
前記防塵カバー40は、前記被加工物2に前記工具本体10が押し込まれる孔開け作業を許容しながら前記工具本体10を覆うように構成されている。具体的に、前記防塵カバー40は、前記防塵カバー40は、基部42と、蛇腹部44と、透明カバー部46と、後側連結具47と、前側連結具48と、付勢手段50と、を有する。
【0022】
前記基部42は、前記工具本体よりも後方の位置で前記支軸(この実施の形態では前記中継軸20)に支持されながら当該基部42の前方の位置に前記蛇腹部44及び前記透明カバー部46を支持する。
【0023】
具体的に、前記基部42は、後端壁42aと、後側周壁42bと、前端壁42cと、前側周壁42dと、を有する。前記後端壁42aは、前記中継軸20からその径方向外側に広がるドーナツ板状をなし、前記中継軸20の周面に沿って前記軸方向に移動可能となるように当該中継軸20に支持される。前記後側周壁42bは、前記後端壁42aの径方向外側縁から前方(工具本体10の先端に向かう方向;
図1~
図4では左方)に延びる円筒状をなす。前記前端壁42cは、前記後側周壁42bの前端(
図1~
図4では左端)に繋がり、且つ、前記中継軸20からその径方向外側に広がるドーナツ板状をなす。前記前側周壁42dは、前記前端壁42cの外周縁から前方に延び、前記蛇腹部44に連結される。
【0024】
前記後端壁42a及び前記前端壁42cの径方向内側端と前記中継軸20の外周面との間には軸受43が介在し、前記両端壁42a,42cの前記中継軸20に対する相対回転と、前記軸方向に沿った摺動すなわち前記軸方向の相対移動と、を許容する。また、前記後側周壁42bは、作業者によって把持されることが可能なグリップとしても機能することが可能である。
【0025】
前記透明カバー部46は、前記工具本体10の中心軸に沿って延び、且つ、前記工具本体10をその径方向外側の位置で囲む筒状をなす。前記透明カバー部46は、前記工具本体10の中心軸を中心とする円筒状であることが好ましい。しかし、当該透明カバー部46の具体的な横断面形状は限定されない。
【0026】
前記透明カバー部46は、後端部(
図1~
図4では右端部)46aとその反対側の前端部(
図1~
図4では左端部)46bとを有し、前記前端部46bは、前記被加工物2に当接可能なカバー先端部を構成する。この実施の形態に係る前記前端部46b(カバー先端部)は、前記工具本体10を囲みながら前記被加工物2の表面に全周にわたって接触可能な環状をなす。
【0027】
前記透明カバー部46は、透明な材料により形成され、前記材料は、前記前端部46bが前記被加工物2に当接した状態で前記工具本体10による前記被加工物2の加工位置を外部から視認することを可能にする程度の透明度を有する。前記透明な材料は、好ましくは、比較的硬質で剛性が高く、かつ、前記透明度を有する樹脂、例えばポリカーボネート、である。前記透明カバー部46の透明度は100%(完全な透明)であってもよいし、前記視認を可能にするという条件を満たす範囲で100%未満の値であってもよい。また、透明カバー部46は必ずしもその全体が透明であるものに限らず、前記加工位置の視認を可能にするという条件を満たす範囲で不透明な部分を含んでいてもよい。この実施の形態に係る前記透明カバー部46では、僅かに前記前端部(カバー先端部)46bが被加工物と密着しやすいゴム等の環状シール材で構成されていて当該前端部46bは不透明であるが、それ以外の円筒状の本体部分が前記透明度を有することにより、前記孔開け工具を操作する作業者が前記加工位置を視認することを可能にする。
【0028】
図1~
図4に例示される前記透明カバー部46は、前記工具本体10の前記ホールソー14の全長よりもやや小さい全長を有し、その範囲内で前記工具本体10が前記透明カバー部46を通じて外部から視認されることを可能にする。当該透明カバー部46の前記軸方向の長さ、特に透明な部分の長さは、前記加工位置の視認を可能にする範囲で適宜設定されることが可能である。
【0029】
前記蛇腹部44は、前記基部42と前記透明カバー部46とを前記軸方向に相互に連結し、かつ、当該軸方向に収縮可能な蛇腹状をなす。前記収縮は、前記透明カバー部46に対して前記基部42が
図2及び
図4に示されるように相対的に前記軸方向に前進することを可能にする。
【0030】
蛇腹部44は、全体が比較的軟質で弾性変形しやすい材料(例えば低密度ポリエチレンをはじめとする合成樹脂)で一体に形成されている。前記蛇腹部44は、後端部44aとその反対側の前端部44bとを有し、前記後端部44aが前記基部42の前記前側周壁42dに前記後側連結具47を介して着脱可能に連結される一方、前記前端部44bが前記透明カバー部46の前記後端部46aに前記前側連結具48を介して着脱可能に連結される。
【0031】
前記後側連結具47は、前記基部42の前記前側周壁42dに着脱可能に連結されるとともに前記蛇腹部44の前記後端部44aに着脱可能に連結され、これにより、前記基部42と前記蛇腹部44とを相互に連結する。具体的に、前記後側連結具47は、ゴム等の弾性変形可能な材料により前記前側周壁42d及び前記後端部44aに対応する環状に形成され、
図5に示される周溝47a及び蛇腹対応内周面47bを有する。前記周溝47aは前記前側周壁42dの前端(
図1~
図5では左端)に対応する環状をなして後方(
図5では右方)に開放され、当該周溝47aに前記前側周壁42dが後側から圧入されることにより前記前側周壁42dに前記後側連結具47が連結される。前記蛇腹対応内周面47bは、前記蛇腹部44の前記後端部44aの谷型形状(軸方向中央に向かうに従ってその両側部分が次第に縮径する形状)に対応する内向き山型形状(軸方向中央に向かうに従ってその両側部分が縮径する形状)を有し、当該蛇腹対応内周面47bが前記後端部44aの前記谷型形状部分に圧入されることにより前記後端部44aに前記後側連結具47が連結される。また、前記後側連結具47には、前記後端部44aへの圧入を容易にするための切欠溝47cが形成されている。前記切欠溝47cは、前記蛇腹対応内周面47bの頂部(最小内径部分)から径方向外側(
図5では上側)に向かって延びるように形成され、これにより、前記圧入のための前記後側連結具47の変形を促進する。
【0032】
前記前側連結具48は、前記後側連結具47の構成と同様の構成により、前記透明カバー部46の前記後端部46aに着脱可能に連結されるとともに前記蛇腹部44の前記前端部44bに着脱可能に連結され、これにより、前記透明カバー部46と前記蛇腹部44とを相互に連結する。具体的に、前記前側連結具48は、ゴム等の弾性変形可能な材料により前記後端部46a及び前記前端部44bに対応する環状に形成され、
図6に示される周溝48a及び蛇腹対応内周面48bを有する。前記周溝48aは前記透明カバー部46の前記後端部46aに対応する環状をなして前方(
図6では左方)に開放され、当該周溝48aに前記後端部46aが前側から圧入されることにより前記後端部46aに前記前側連結具48が連結される。前記蛇腹対応内周面48bは、前記蛇腹部44の前記前端部44bの谷型形状(軸方向中央に向かうに従ってその両側部分が次第に縮径する形状)に対応する内向き山型形状(軸方向中央に向かうに従ってその両側部分が縮径する形状)を有し、当該蛇腹対応内周面48bが前記前端部44bの前記谷型形状部分に圧入されることにより前記前端部44bに前記前側連結具48が連結される。また、前記前側連結具48にも、前記前端部44bへの圧入を容易にするための切欠溝48cが形成されている。前記切欠溝48cは、前記蛇腹対応内周面48bの頂部(最小内径部分)から径方向外側(
図6では上側)に向かって延びるように形成され、これにより、前記圧入のための前記前側連結具48の変形を促進する。
【0033】
前記付勢手段50は、前記支軸(この実施の形態では前記中継軸20及び前記アダプタ30)及び前記工具本体10に対する前記防塵カバー40の軸方向についての相対移動範囲を
図1に示される前進位置と
図2に示される後退位置との間に規定するとともに、当該防塵カバー40を前方に(つまり前記前進位置に向けて)付勢する。前記前進位置は、前記蛇腹部44が収縮していない状態(つまり軸方向の外力を受けていない自然状態)において前記透明カバー部46が前記工具本体10の少なくとも一部を覆う位置であり、好ましくは、前記透明カバー部46の前記前端部46b(カバー先端部)が前記工具本体10の先端(この実施の形態では前記センタードリル12の先端)の近傍に位置する位置、つまり前記透明カバー部46が前記工具本体10の略全体を覆う位置、である。前記後退位置は、前記前進位置よりも前記支軸の基端部に近い位置すなわち後側の位置であり、この実施の形態では、前記蛇腹部44が収縮した状態において前記透明カバー部46の前記前端部46b(カバー先端部)が前記工具本体10の後端(この実施の形態では前記ホールソー14の前記ボディ14aの後端)と同等またはそれよりも後側(
図1では右側)に位置する位置、つまり前記透明カバー部46の前方に前記防塵カバー40全体を突出させる位置、である。
【0034】
具体的に、この実施の形態に係る前記付勢手段50は、
図1及び
図2に示されるばね座51及び圧縮コイルばね52を含む。前記ばね座51は、前記支軸の適当な部位(この実施の形態では前記中継軸20の中間部位)に軸受43を介して取付けられて当該支軸の外周面(この実施の形態では前記中継軸20の外周面)から径方向外向きに突出する。前記軸受43によって前記中継軸20に対する前記ばね座51の相対回転は許容されるが、前記中継軸20に対する前記ばね座51の軸方向の相対移動は止め輪によって阻止されている。つまり、前記ばね座51は支軸に対する軸方向の相対移動が規制された状態で当該支軸に取付けられている。前記支軸に対する前記ばね座51の相対回転の可否は問わない。前記圧縮コイルばね52は、前記ばね座51と前記基部42の適当な部位(この実施の形態では前記前端壁42cの径方向内側縁部)との間に介在し、これにより、前記基部42を含む前記透明カバー部46全体を前記前進位置に保持する一方、当該圧縮コイルばね52の圧縮弾性変形によって前記基部42の前記後退位置に向けての(つまり後方への)前記支軸に対する軸方向の相対変位を許容するとともに、当該圧縮コイルばね52の弾発力によって前記基部42を前記前進位置に向けて(つまり前方に)付勢する。
【0035】
次に、以上説明した防塵カバー40及びこれを備えた孔開け工具の作用について説明する。
【0036】
前記孔開け工具による孔開け加工の前の状態、すなわち、前記防塵カバー40及び前記工具本体10のいずれにも軸方向の荷重が作用していない状態、では、前記防塵カバー40の蛇腹部44が収縮しておらず、かつ、前記付勢手段50の前記圧縮コイルばね52によって前記防塵カバー40の前記基部42が
図1に示される前端位置に保持される。従って、前記防塵カバー40のカバー先端部である前記透明カバー部46の前端部46bは前記工具本体10の先端(この実施の形態では前記センタードリル12の先端)の近傍となる位置に保持される。このことは、前記孔開け加工の開始時において、前記透明カバー部46が確実に前記工具本体10の少なくとも一部を覆うこと、この実施の形態では前記前端部46b(カバー先端部)が確実に前記被加工物2に接触ないし近接すること、を可能にする。
【0037】
前記加工前の段階で、図略の回転駆動機から中継軸20の駆動連結端部22に回転駆動力が入力されると、当該中継軸20及びアダプタ30からなる支軸さらには当該アダプタ30に保持される工具本体10が回転駆動される。前記中継軸20と前記防塵カバー40の前記基部42との間には軸受43が介在するが、当該防塵カバー40は前記軸受43の抵抗で前記支軸と多少連れ回りをしてもよい。
【0038】
このように工具本体10が回転駆動された状態で前記孔開け工具が被加工物2に押し当てられる。このとき、前記工具本体10に先行して前記防塵カバー40のカバー先端部(前記前端部46b)が前記被加工物2に当接し、あるいは、作業者が前記基部42の後側周壁42bを把持することにより、当該防塵カバー40の回転(前記連れ回り)が止まり、その内側の工具本体10及び支軸のみが回転する状態となる。
【0039】
この状態で前記孔開け工具が前記被加工物2にさらに押付けられると、前記透明カバー部46の位置はそのままで、前記蛇腹部44の収縮を伴う前記基部42の前記透明カバー部46に対する相対変位と、前記圧縮コイルばね52の収縮を伴う前記中継軸20の前記基部42に対する相対変位と、によって、前記工具本体10が前記被加工物2に押し込まれ、これによって当該被加工物2の孔開け加工が行われる。この孔開け加工中、前記工具本体10は常に前記防塵カバー40により覆われており、よって当該孔開け加工により発生する粉塵の周囲への飛散が有効に抑止される。
【0040】
この実施の形態に係る前記孔開け加工では、まずセンタードリル12が穿孔を開始して被加工物2に対する孔開け工具の位置決めを行い、次にその周囲をホールソー14の複数の刃14bが削ることにより、当該ホールソー14のボディ14aの直径とほぼ同径の孔が加工されるが、前記センタードリル12が前記被加工物2に接触する際、その接触の位置すなわち加工位置は透明カバー部46を通じて作業者により前記防塵カバー40の外部から視認されることが可能である。このことは、前記位置決め作業を容易にし、また加工位置の精度の向上を可能にする。
【0041】
一方、前記蛇腹部44の収縮による前記透明カバー部46に対する前記基部42の相対変位と、前記基部42に対する前記中継軸20の相対変位と、の組み合わせは、前記透明カバー部46に対して前記工具本体10が軸方向に相対変位可能な量を大きくし、これにより、前記工具本体10による有効加工深さを大きく確保することを可能にする。例えば、前記透明カバー部46に対する前記工具本体10の相対変位は、(前記蛇腹部44を省略して)前記圧縮コイルばね52の弾性変形のみによっても実現することが可能であるが、この場合、大きな有効加工深さを確保するためには前記圧縮コイルばね52の軸長さらには孔開け工具全体の軸長の著しい増大を要する。これに対し、前記蛇腹部44の収縮と前記支軸に対する前記基部42の相対変位との組み合わせは、コンパクトな構造で大きな有効加工深さを確保することを可能にする。
【0042】
本発明において前記支軸に対する前記基部42の相対変位は必須ではない。例えば、
図2に示される後退位置で前記基部42が前記中継軸20に固定されていてもよい。ただし、この場合において前記透明カバー部46の前端部46bすなわちカバー先端部を
図1に示されるように前記工具本体10の先端よりも前側に位置させるためには、前記蛇腹部44の軸長を増加させなければならず、その分だけ防塵カバー40全体の形状安定性は低下するのに対し、前記蛇腹部44と前記支軸に対する前記基部42の相対変位との組み合わせは、前記蛇腹部44の軸長を適度に抑えて良好な保形性を確保しながら大きな有効加工深さを確保することを可能にする。
【0043】
本発明に係る基部と蛇腹部とは互いに一体に(つまり分離不能に)つながっていてもよいし、同様に前記蛇腹部と透明カバー部とが互いに一体につながっていてもよい。その一方、前記基部42と前記蛇腹部44の後端部44aとを着脱可能に相互連結する後側連結具47と、前記蛇腹部44の前端部44bと前記透明カバー部46とを着脱可能に相互連結する前側連結具48と、の具備は、例えば前記工具本体10の軸長に応じた前記蛇腹部44の交換を可能にし、また、各部のメンテナンスのための作業を容易にする。
【符号の説明】
【0044】
2 被加工物
10 工具本体
12 センタードリル
14 ホールソー
20 中継軸(支軸)
22 駆動連結端部(支軸の基端部)
30 アダプタ(支軸)
34 工具本体保持端部(支軸の先端部)
40 防塵カバー
42 基部
44 蛇腹部
46 透明カバー部
46b 前端部(カバー先端部)
50 付勢手段