(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179176
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】アンテナデバイス
(51)【国際特許分類】
H01P 5/107 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H01P5/107 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097808
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大薮 弘和
(72)【発明者】
【氏名】李 政彦
(72)【発明者】
【氏名】片山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】城崎 俊文
(72)【発明者】
【氏名】高畑 利彦
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、導波路を多層化させるアンテナデバイスを提供する。
【解決手段】導波管70は、第1アンテナ21と厚み方向に対向している開口703と、開口および導波管の外部空間と連通している内部空間705と、を有し、第1突出部71は、第1アンテナ21および開口の間を囲っており、第2突出部72は、第2アンテナ22および対向面702の間を囲っているとともに、導波管の外部空間と一方向に連通する連通空間720を形成しており、グランド配線60と導波管とが導通していることにより、導波管、第1突出部および第2突出部は、基準電位とされており、第1アンテナ、第1突出部、開口および内部空間によって、第1アンテナが送受信する電波を伝搬する第1導波路81が形成されており、第2アンテナ、グランド配線、第2突出部、対向面および連通空間によって、第2アンテナが送受信する電波を伝搬する第2導波路82が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナデバイスであって、
基板(15)と、
前記基板の表面である基板表面(151)に形成されているとともに、電波を送受信する第1アンテナ(21)と、
前記基板表面に形成されているとともに、電波を送受信する第2アンテナ(22)と、
前記基板表面に形成されているとともに、電位が基準電位とされているグランド配線(60)と、
前記基板表面と前記基板の厚み方向(DT)に対向しているとともに、電波を伝搬する導波管(70)と、
前記導波管のうち前記第1アンテナと前記厚み方向に対向している面である第1対向面(701)から前記基板表面に向かう方向に突出している第1突出部(71)と、
前記導波管のうち前記第2アンテナおよび前記グランド配線と前記厚み方向に対向している面である第2対向面(702)から前記基板表面に向かう方向に突出している第2突出部(72)と、
を備え、
前記導波管は、
前記第1アンテナと前記厚み方向に対向している開口(703)と、
前記開口および前記導波管の外部空間と連通している内部空間(705)と、
を有し、
前記第1突出部は、前記第1アンテナおよび前記開口の間を囲っており、
前記第2突出部は、前記第2アンテナおよび前記第2対向面の間を囲っているとともに、前記導波管の外部空間と一方向(Da)に連通する連通空間(720)を形成しており、
前記グランド配線と前記導波管とが導通していることにより、前記導波管、前記第1突出部および前記第2突出部は、前記基準電位とされており、
前記第1アンテナ、前記第1突出部、前記開口および前記内部空間によって、前記第1アンテナが送受信する電波を伝搬する第1導波路(81)が形成されており、
前記第2アンテナ、前記グランド配線、前記第2突出部、前記第2対向面および前記連通空間によって、前記第2アンテナが送受信する電波を伝搬する第2導波路(82)が形成されているアンテナデバイス。
【請求項2】
前記第1導波路に誘電体が充填されている請求項1に記載のアンテナデバイス。
【請求項3】
前記第2導波路に誘電体が充填されている請求項1に記載のアンテナデバイス。
【請求項4】
前記グランド配線は、第1グランド配線であって、
前記アンテナデバイスは、
前記基板のうち前記基板表面とは反対側の面である基板裏面(153)に形成されている第2グランド配線と、
前記第1グランド配線および前記第2グランド配線と接続されているビア(33)と、
を備え、
前記第2アンテナは、前記第1グランド配線、前記第2グランド配線および前記ビアに囲まれている請求項1ないし3のいずれか1つに記載のアンテナデバイス。
【請求項5】
前記電波は、ミリ波である請求項1ないし3のいずれか1つに記載のアンテナデバイス。
【請求項6】
アンテナデバイスであって、
信号を送受信する送受信部(50)と、
電波を送受信する第1アンテナ(21)と、
電波を送受信する第2アンテナ(22)と、
前記送受信部、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナを覆う被覆部(55)と、
前記第1アンテナと厚み方向(DT)に対向しているとともに前記厚み方向に延びている第1穴(161)および前記第2アンテナと前記厚み方向に対向しているとともに前記厚み方向に延びている第2穴(162)を有する基板(15)と、
前記第1穴における前記基板の内面である第1内面(171)に形成されているとともに、電位が基準電位とされている第1グランド配線(61)と、
前記基板のうち前記被覆部とは反対側の面である基板表面(151)に形成されているとともに、前記第1グランド配線と接続されている第2グランド配線(62)と、
前記第2穴における前記基板の内面である第2内面(172)に形成されている第3グランド配線(63)と、
前記基板表面に形成されているとともに、前記第2グランド配線および前記第3グランド配線と接続されていることにより電位が前記基準電位とされている第4グランド配線(64)と、
前記基板表面と前記厚み方向に対向しているとともに、電波を伝搬する導波管(70)と、
前記導波管のうち前記第1穴および前記第2グランド配線と前記厚み方向に対向している面である第1対向面(701)から前記基板表面に向かう方向に突出している第1突出部(71)と、
前記導波管のうち前記第2穴および前記第4グランド配線と前記厚み方向に対向している面である第2対向面(702)から前記基板表面に向かう方向に突出している第2突出部(72)と、
を備え、
前記導波管は、
前記第1穴と前記厚み方向に対向している開口(703)と、
前記開口および前記導波管の外部空間と連通している内部空間(705)と、
を有し、
前記第1突出部は、前記第1穴および前記開口の間を囲っており、
前記第2突出部は、前記第2穴および前記第2対向面の間を囲っているとともに、前記導波管の外部空間と一方向(Da)に連通している連通空間(720)を形成しており、
前記第1グランド配線、前記第2グランド配線、前記第3グランド配線および前記第4グランド配線のいずれかと前記導波管とが導通していることにより、前記導波管、前記第1突出部および前記第2突出部は、前記基準電位とされており、
前記第1アンテナ、前記第1穴、前記第1グランド配線、前記第1突出部、前記開口および前記内部空間によって、前記第1アンテナが送受信する電波を伝搬する第1導波路(81)が形成されており、
前記第2アンテナ、前記第2穴、前記第3グランド配線、前記第4グランド配線、前記第2突出部、前記第2対向面および前記連通空間によって、前記第2アンテナが送受信する電波を伝搬する第2導波路(82)が形成されているアンテナデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、マイクロストリップから導波管への変換を行う変換器が知られている。この変換器は、プリント基板と、導波管とを備える。プリント基板は、マイクロストリップ伝送線およびマイクロストリップ伝送線に接続されたパッチアンテナを備える。導波管は、パッチアンテナと対向する導波路を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2021/0376439号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された変換器を、受信信号、送信信号や複数のICを同期させる信号等の多数の信号を用いるレーダ装置等に適用することがある。この場合、導波路およびプリント基板上の配線等が多層化される。これにより、レーダ装置が複雑化されるため、レーダ装置のコストが増加する。
【0005】
本開示は、簡易な構成で、導波路を多層化させるアンテナデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、アンテナデバイスであって、基板(15)と、基板の表面である基板表面(151)に形成されているとともに、電波を送受信する第1アンテナ(21)と、基板表面に形成されているとともに、電波を送受信する第2アンテナ(22)と、基板表面に形成されているとともに、電位が基準電位とされているグランド配線(60)と、基板表面と基板の厚み方向(DT)に対向しているとともに、電波を伝搬する導波管(70)と、導波管のうち第1アンテナと厚み方向に対向している面である第1対向面(701)から基板表面に向かう方向に突出している第1突出部(71)と、導波管のうち第2アンテナおよびグランド配線と厚み方向に対向している面である第2対向面(702)から基板表面に向かう方向に突出している第2突出部(72)と、を備え、導波管は、第1アンテナと厚み方向に対向している開口(703)と、開口および導波管の外部空間と連通している内部空間(705)と、を有し、第1突出部は、第1アンテナおよび開口の間を囲っており、第2突出部は、第2アンテナおよび第2対向面の間を囲っているとともに、導波管の外部空間と一方向(Da)に連通する連通空間(720)を形成しており、グランド配線と導波管とが導通していることにより、導波管、第1突出部および第2突出部は、基準電位とされており、第1アンテナ、第1突出部、開口および内部空間によって、第1アンテナが送受信する電波を伝搬する第1導波路(81)が形成されており、第2アンテナ、グランド配線、第2突出部、第2対向面および連通空間によって、第2アンテナが送受信する電波を伝搬する第2導波路(82)が形成されているアンテナデバイスである。
【0007】
また、請求項6に記載の発明は、アンテナデバイスであって、信号を送受信する送受信部(50)と、電波を送受信する第1アンテナ(21)と、電波を送受信する第2アンテナ(22)と、送受信部、第1アンテナおよび第2アンテナを覆う被覆部(55)と、第1アンテナと厚み方向(DT)に対向しているとともに厚み方向に延びている第1穴(161)および第2アンテナと厚み方向に対向しているとともに厚み方向に延びている第2穴(162)を有する基板(15)と、第1穴における基板の内面である第1内面(171)に形成されているとともに、電位が基準電位とされている第1グランド配線(61)と、基板のうち被覆部とは反対側の面である基板表面(151)に形成されているとともに、第1グランド配線と接続されている第2グランド配線(62)と、第2穴における基板の内面である第2内面(172)に形成されている第3グランド配線(63)と、基板表面に形成されているとともに、第2グランド配線および第3グランド配線と接続されていることにより電位が基準電位とされている第4グランド配線(64)と、基板表面と厚み方向に対向しているとともに、電波を伝搬する導波管(70)と、導波管のうち第1穴および第2グランド配線と厚み方向に対向している面である第1対向面(701)から基板表面に向かう方向に突出している第1突出部(71)と、導波管のうち第2穴および第4グランド配線と厚み方向に対向している面である第2対向面(702)から基板表面に向かう方向に突出している第2突出部(72)と、を備え、導波管は、第1穴と厚み方向に対向している開口(703)と、開口および導波管の外部空間と連通している内部空間(705)と、を有し、第1突出部は、第1穴および開口の間を囲っており、第2突出部は、第2穴および第2対向面の間を囲っているとともに、導波管の外部空間と一方向(Da)に連通している連通空間(720)を形成しており、第1グランド配線、第2グランド配線、第3グランド配線および第4グランド配線のいずれかと導波管とが導通していることにより、導波管、第1突出部および第2突出部は、基準電位とされており、第1アンテナ、第1穴、第1グランド配線、第1突出部、開口および内部空間によって、第1アンテナが送受信する電波を伝搬する第1導波路(81)が形成されており、第2アンテナ、第2穴、第3グランド配線、第4グランド配線、第2突出部、第2対向面および連通空間によって、第2アンテナが送受信する電波を伝搬する第2導波路(82)が形成されているアンテナデバイスである。
【0008】
これにより、アイソレーションの高い2つの導波路が2層構造となる。このため、アンテナデバイスでは、簡易な構成で、導波路が多層化される。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態のアンテナデバイスでは、簡易な構成で、導波路が多層化される。また、アンテナデバイスは、例えば、図示しないミリ波レーダ装置に用いられる。
【0013】
具体的に、
図1および
図2に示すように、アンテナデバイス10は、基板15、第1アンテナ21、第1ビア31、第1端子41、第2アンテナ22、第2ビア32および第2端子42を備える。また、アンテナデバイス10は、電波送受信回路50、被覆部55、グランド配線60、導波管70、第1突出部71、第2突出部72、第1導波路81および第2導波路82を備える。
【0014】
基板15は、プリント基板である。さらに、基板15は、基板表面151および基板裏面153を有する。基板表面151は、基板15のうち厚み方向DTの一方側の面である。基板裏面153は、基板15のうち基板表面151とは反対側の面である。
【0015】
第1アンテナ21は、パッチアンテナであって、電波を送受信する。また、第1アンテナ21は、基板表面151に形成されている。第1ビア31は、基板15に形成された厚み方向DTに延びるビアホールに形成されている。さらに、第1ビア31は、第1アンテナ21に接続されている。第1端子41は、基板裏面153に形成されている。また、第1端子41は、第1ビア31に接続されている。したがって、第1端子41は、第1ビア31を介して第1アンテナ21と導通している。
【0016】
第2アンテナ22は、パッチアンテナであって、電波を送受信する。また、第2アンテナ22は、基板表面151に形成されている。第2ビア32は、基板15に形成された厚み方向DTに延びるビアホールに形成されている。さらに、第2ビア32は、第2アンテナ22に接続されている。第2端子42は、基板裏面153に接続されている。また、第2端子42は、第2ビア32に接続されている。よって、第2端子42は、第2ビア32を介して第2アンテナ22と導通している。
【0017】
電波送受信回路50は、ICを含み、送受信部に対応している。さらに、電波送受信回路50は、図示しない配線やはんだ等を介して第1端子41および第2端子42と電気的に接続されている。また、電波送受信回路50は、信号を第1端子41および第1ビア31を介して第1アンテナ21に送信したり、第1アンテナ21にて受信された信号を、第1ビア31および第1端子41を介して受信したりする。さらに、電波送受信回路50は、信号を第2端子42および第2ビア32を介して第2アンテナ22に送信したり、第2アンテナ22にて受信された信号を、第2ビア32および第2端子42を介して受信したりする。なお、ICは、Integrated Circuitの略である。
【0018】
被覆部55は、樹脂等で形成されている。また、被覆部55は、電波送受信回路50を覆っている。さらに、被覆部55は、基板裏面153と厚み方向DTに対向している。このため、ここでは、基板表面151は、基板15のうち被覆部55とは反対側の面とされている。
【0019】
グランド配線60は、基板表面151に形成されている。また、グランド配線60の電位は、基準電位とされている。
【0020】
導波管70は、金属等で形成されていることにより、導電性を有する。さらに、導波管70は、基板表面151と厚み方向DTに対向している。また、導波管70は、第1アンテナ21および第2アンテナ22からの電波信号を伝搬したり、アンテナデバイス10の外部からの電波信号を第1アンテナ21および第2アンテナ22へ伝搬したりする。さらに、導波管70は、第1対向面701、第2対向面702、開口703および内部空間705を有する。
【0021】
第1対向面701は、第1アンテナ21と厚み方向DTに対向している面である。第2対向面702は、第2アンテナ22およびグランド配線60と厚み方向DTに対向している面である。
【0022】
開口703は、第1アンテナ21と厚み方向DTに対向している空間である。内部空間705は、開口703およびアンテナデバイス10の外部空間と連通している。ここでは、内部空間705は、第1空間711、第2空間712および第3空間713を含む。第1空間711は、開口703に連通している。また、第1空間711は、厚み方向DTに延びている。第2空間712は、第1空間711に連通している。さらに、第2空間712は、第1空間711から厚み方向DTと直交する方向の一方向Daに延びている。第3空間713は、第2空間712およびアンテナデバイス10の外部空間に連通している。また、第3空間713は、第2空間712から厚み方向DTおよび一方向Daと直交する方向に延びている。
【0023】
第1突出部71は、金属等で形成されていることにより、導電性を有する。さらに、第1突出部71は、第1対向面701から厚み方向DTに突出している。また、第1突出部71は、複数並んでいることにより、第1アンテナ21および開口703の間を囲っている。なお、厚み方向DTは、第1対向面701から基板表面151に向かう方向に対応する。
【0024】
第2突出部72は、金属等で形成されていることにより、導電性を有する。さらに、第2突出部72は、第2対向面702から厚み方向DTに突出している。また、第2突出部72は、複数並んでいることにより、第2アンテナ22および第2対向面702の間を囲っている。さらに、第2突出部72は、アンテナデバイス10の外部空間と一方向Daに連通する連通空間720を形成している。なお、厚み方向DTは、第2対向面702から基板表面151に向かう方向に対応する。
【0025】
また、グランド配線60と導波管70とは、図示しない配線およびねじ等により接続されていることで導通している。これにより、導波管70、第1突出部71および第2突出部72は、基準電位とされている。このため、第1アンテナ21、第1突出部71、開口703および内部空間705によって区画形成される空間では、電波の漏洩が抑制されている。さらに、第2アンテナ22、グランド配線60、第2突出部72、第2対向面702および連通空間720によって区画形成される空間では、電波の漏洩が抑制されている。したがって、導波管70では、アイソレーションが高い2つの導波路が形成されている。なお、アイソレーションは、アンテナ間で一方からもう一方への信号の漏れの程度を示す量であって、例えば、アンテナへの入力信号と漏洩信号との電力の比で示される。
【0026】
よって、第1導波路81は、第1アンテナ21、第1突出部71、開口703および内部空間705によって区画形成された空間である。また、第1導波路81は、第1アンテナ21が送受信する電波を伝搬する。
【0027】
さらに、第2導波路82は、第2アンテナ22、グランド配線60、第2突出部72、第2対向面702および連通空間720によって区画形成された空間である。また、第2導波路82は、第2アンテナ22が送受信する電波を伝搬する。さらに、第2導波路82は、ここでは、一方向Daに延びている。また、一方向Daと直交する方向における第2導波路82の長さは、第2アンテナ22が送受信する電波の波長に応じた長さとされている。これにより、第2導波路82に電波が伝搬されやすくなっている。なお、一方向Daと直交する方向は、厚み方向DTに対応する。また、一方向Daと直交する方向は、例えば、
図1の紙面と直交する方向に対応する。
【0028】
以上のように、第1実施形態のアンテナデバイス10は、構成されている。次に、このアンテナデバイス10がミリ波レーダ装置に用いられるときの作動について説明する。
【0029】
例えば、電波送受信回路50によって、ミリ波の信号が生成される。生成された信号は、第1端子41および第1ビア31を介して第1アンテナ21に送信される。第1アンテナ21からのミリ波は、第1導波路81を経由してアンテナデバイス10の外部空間に放射される。放射されたミリ波は、対象物にて反射する。反射したミリ波は、第2導波路82を経由して第2アンテナ22にて受信される。第2アンテナ22にて受信したミリ波の信号は、第2ビア32および第2端子42を介して電波送受信回路50にて受信される。電波送受信回路50では、送受信されたミリ波の情報に基づいて、ミリ波レーダ装置から対象物までの距離やミリ波レーダ装置に対する対象物の相対速度等が測定される。なお、ここでは、第1アンテナ21からミリ波が放射され、第2アンテナ22にてミリ波が受信されるが、第2アンテナ22からミリ波が放射され、第1アンテナ21にてミリ波が受信されてもよい。
【0030】
また、例えば、電波送受信回路50によって、ミリ波レーダ装置内の複数のICを同期させる信号が生成される。生成された同期信号は、第1端子41および第1ビア31を介して第1アンテナ21に送信される。第1アンテナ21からの同期信号は、第1導波路81を経由してミリ波レーダ装置内の1つのICに送信される。さらに、生成された同期信号は、第2端子42および第2ビア32を介して第2アンテナ22に送信される。第2アンテナ22からの同期信号は、第2導波路82を経由してミリ波レーダ装置内のもう1つのICに送信される。したがって、ミリ波レーダ装置内の複数のICが同期する。
【0031】
以上のように、アンテナデバイス10は、ミリ波レーダ装置に用いられる。次に、本実施形態のアンテナデバイス10では、簡易な構成で、導波路が多層化されることについて説明する。
【0032】
本実施形態のアンテナデバイス10では、グランド配線60と導波管70とが導通していることにより、導波管70、第1突出部71および第2突出部72は、基準電位とされている。また、第1アンテナ21、第1突出部71、開口703および内部空間705によって、第1アンテナ21が送受信する電波を伝搬する第1導波路81が形成されている。さらに、第2アンテナ22、グランド配線60、第2突出部72、第2対向面702および連通空間720によって、第2アンテナ22が送受信する電波を伝搬する第2導波路82が形成されている。
【0033】
これにより、アイソレーションの高い2つの導波路が2層構造となる。このため、アンテナデバイス10では、簡易な構成で、導波路が多層化される。また、アンテナデバイス10が簡易な構成であるため、ミリ波レーダ装置におけるアンテナデバイス10の位置自由度が向上する。さらに、例えば、第1アンテナ21からミリ波が放射され、第2アンテナ22にてミリ波が受信される場合、第2アンテナ22が第1アンテナ21からのミリ波を誤受信することが抑制される。また、複数のICを同期させる信号が第1アンテナ21および第2アンテナ22から送信される場合、同期信号がアンテナデバイス10の周囲に漏洩することが抑制される。このため、EMCが確保される。なお、EMCは、Electromagnetic Compatibilityの略である。
【0034】
(第2実施形態)
第2実施形態では、
図3および
図4に示すように、第1導波路81および第2導波路82に、二酸化ケイ素やフッ素樹脂等の誘電体が充填されている。これ以外は、第1実施形態と同様である。このような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第2実施形態では、以下に記載する効果も奏する。
【0035】
[2]ここで、電波が第1導波路81および第2導波路82を伝搬しやすくするため、電波の伝搬方向と直交する方向における第1導波路81および第2導波路82の長さは、波長に応じた長さとされる。このため、電波の波長に応じて、電波の伝搬方向と直交する方向における第1導波路81および第2導波路82の長さが長くなることから、導波管70の大きさが大きくなる。これにより、アンテナデバイス10の体格が大型化する。
【0036】
これに対して、第2実施形態のアンテナデバイス10では、第1導波路81および第2導波路82に誘電体が充填されている。
【0037】
これにより、空気中を伝搬する電波の波長と比較して、第1導波路81および第2導波路82を伝搬する電波の波長が短くなる。このため、第1導波路81および第2導波路82内が空気で満たされている場合と比較して、電波の伝搬方向と直交する方向における第1導波路81および第2導波路82の長さを短くすることができる。したがって、導波管70の大きさを小さくすることができる。よって、アンテナデバイス10の体格の大型化が抑制される。
【0038】
(第3実施形態)
第3実施形態では、
図5に示すように、アンテナデバイス10は、グランド配線60に代えて、第1グランド配線61および第2グランド配線62を備える。また、アンテナデバイス10は、第1ビア31および第2ビア32に加えて、第3ビア33を備える。さらに、第2アンテナ22の形態が第1実施形態と異なる。これら以外は、第1実施形態と同様である。
【0039】
第1グランド配線61は、グランド配線60に対応しており、基板表面151に形成されている。また、第1グランド配線61の電位は、基準電位とされている。
【0040】
第2グランド配線62は、基板裏面153に形成されている。第3ビア33は、基板15に形成された厚み方向DTに延びるビアホールに形成されている。また、第3ビア33は、第1グランド配線61および第2グランド配線62に接続されている。したがって、第2グランド配線62が第3ビア33を介して第1グランド配線61と導通していることにより、第2グランド配線62の電位は、基準電位とされている。
【0041】
第2アンテナ22は、基板表面151に形成されていることに代えて、基板15の内部に形成されている。さらに、第2アンテナ22は、第1グランド配線61、第2グランド配線62および第3ビア33に囲まれている。これにより、第2アンテナ22、第1グランド配線61、第2グランド配線62および第3ビア33に囲まれた基板15の内部にて導波路が形成されている。また、この導波路は、第2導波路82とつながる。なお、第2アンテナ22は、基板表面151に形成されてもよい。
【0042】
以上のように、第3実施形態のアンテナデバイス10は、構成されている。このような第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第3実施形態では、以下に記載する効果も奏する。
【0043】
[3]第2アンテナ22は、第1グランド配線61、第2グランド配線62および第3ビア33に囲まれている。これにより、第2アンテナ22から第2アンテナ22の外部への電波の漏洩が抑制される。
【0044】
(第4実施形態)
第4実施形態では、
図6に示すように、第1アンテナ21および第2アンテナ22の形態が第1実施形態と異なる。また、アンテナデバイス10は、第1ビア31、第2ビア32、第1端子41および第2端子42を有していない。さらに、基板15の形態が第1実施形態と異なる。また、アンテナデバイス10は、グランド配線60に代えて、第1グランド配線61、第2グランド配線62、第3グランド配線63および第4グランド配線64を備える。さらに、第1導波路81および第2導波路82の形態が第1実施形態と異なる。これら以外は、第1実施形態と同様である。
【0045】
ここでは、第1アンテナ21および第2アンテナ22は、電波送受信回路50とともに、被覆部55に覆われている。また、第1アンテナ21および第2アンテナ22は、図示しない配線により、電波送受信回路50と電気的に接続されている。
【0046】
基板15は、基板表面151および基板裏面153に加えて、第1穴161、第1内面171、第2穴162および第2内面172を有する。
【0047】
第1穴161は、第1アンテナ21と厚み方向DTに対向している。また、第1穴161は、厚み方向DTに延びており、基板表面151および基板裏面153を貫通している。さらに、第1穴161および開口703の間は、第1突出部71に囲まれている。第1内面171は、第1穴161における基板15の内面である。
【0048】
第2穴162は、第2アンテナ22と厚み方向DTに対向している。また、第2穴162は、厚み方向DTに延びており、基板表面151および基板裏面153を貫通している。さらに、第2穴162および第2対向面702の間は、第2突出部72に囲まれている。第2内面172は、第2穴162における基板15の内面である。
【0049】
第1グランド配線61は、第1内面171に形成されている。また、第1グランド配線61の電位は、基準電位とされている。第2グランド配線62は、基板表面151に形成されている。さらに、第2グランド配線62は、第1グランド配線61と接続されている。
【0050】
第3グランド配線63は、第2内面172に形成されている。第4グランド配線64は、基板表面151に形成されている。また、第4グランド配線64は、第2グランド配線62および第3グランド配線63と接続されている。したがって、第2グランド配線62、第3グランド配線63および第4グランド配線64の電位は、第1グランド配線61の電位となるため、基準電位とされている。
【0051】
また、第1グランド配線61、第2グランド配線62、第3グランド配線63および第4グランド配線64のいずれかと導波管70とが、図示しない配線およびねじ等により接続されていることで導通している。これにより、導波管70、第1突出部71および第2突出部72は、基準電位とされている。このため、第1アンテナ21、第1穴161、第1グランド配線61、第1突出部71、開口703および内部空間705によって区画形成された空間では、電波の漏洩が抑制されている。さらに、第2アンテナ22、第2穴162、第3グランド配線63、第4グランド配線64、第2突出部72、第2対向面702および連通空間720によって区画形成された空間では、電波の漏洩が抑制されている。したがって、導波管70では、アイソレーションが高い2つの導波路が形成されている。
【0052】
よって、第1導波路81は、第1アンテナ21、第1穴161、第1グランド配線61、第1突出部71、開口703および内部空間705によって区画形成された空間である。また、第1導波路81は、上記と同様に、第1アンテナ21が送受信する電波を伝搬する。
【0053】
さらに、第2導波路82は、第2アンテナ22、第2穴162、第3グランド配線63、第2突出部72、第2対向面702および連通空間720によって区画形成された空間である。また、第2導波路82は、上記と同様に、第2アンテナ22が送受信する電波を伝搬する。
【0054】
以上のように、第4実施形態のアンテナデバイス10は、構成されている。このような第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第4実施形態では、以下に記載する効果も奏する。
【0055】
[4]電波送受信回路50、第1アンテナ21および第2アンテナ22が被覆部55に覆われている。
【0056】
これにより、第1アンテナ21および第2アンテナ22が基板15に形成されている場合と比較して、電波送受信回路50と、第1アンテナ21および第2アンテナ22とを接続する配線の長さが短くなる。このため、電波送受信回路50からの信号の伝送損失および漏洩が抑制される。
【0057】
(他の実施形態)
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に対して、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0058】
本開示に記載の送受信部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の送受信部およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の送受信部およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0059】
上記各実施形態では、アンテナデバイス10に用いられる電波は、ミリ波である。これに対して、アンテナデバイス10に用いられる電波は、ミリ波に限定されないで、マイクロ波、極超短波、超短波、短波等であってもよい。
【0060】
上記各実施形態は、適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0061】
15 基板
21 第1アンテナ
22 第2アンテナ
60 グランド配線
70 導波管
703 開口
705 内部空間
720 連通空間
81 第1導波路
82 第2導波路