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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179192
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】決定システム及び決定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20241219BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01R31/00
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097845
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 克
【テーマコード(参考)】
2G036
5H030
【Fターム(参考)】
2G036AA06
2G036AA07
2G036AA12
2G036AA13
2G036BB08
5H030AA06
5H030AS20
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】電池異常を抑制可能な制御条件を適切に決定可能な決定システムを提供する。
【解決手段】決定システム100は、二次電池210の充電中又は放電中の少なくとも一方である充放電中の、直流電流値と直流電圧値又は前記二次電池のSOCのうちの少なくとも一方の値とを含む各時系列データから、一方の軸を緩和時間、他方の軸を強度とする二軸座標系でのスペクトルを表すスペクトル情報を算出する算出部15と、算出部15が算出した前記スペクトルの形状に関する形状情報を用いて、二次電池210の制御条件を決定する決定部16と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の充電中又は放電中の少なくとも一方である充放電中の、直流電流値と直流電圧値又は前記二次電池のSOCのうちの少なくとも一方の値とを含む各値の時系列データから、一方の軸を緩和時間、他方の軸を強度とする二軸座標系でのスペクトルを表すスペクトル情報を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記スペクトルの形状に関する形状情報を用いて、前記二次電池の制御条件を決定する決定部と、を備える
ことを特徴とする決定システム。
【請求項2】
前記形状情報は、前記スペクトルにおけるピークの数、前記ピークの位置、前記ピークの面積、前記ピークの半値幅、又は、前記ピークの歪度、のうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項3】
前記算出部は、定電圧充電中、充電後、又は、放電後の少なくとも何れか1つの期間における前記各時系列データから、前記スペクトルを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項4】
前記時系列データは、前記二次電池の温度の時系列データを含み、
前記スペクトルは、前記二次電池の温度と関連付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項5】
異なる時刻間で取得した時系列データから算出されたスペクトル毎に、直流電流値、直流電圧値、又は、温度の少なくとも2つを用いた所定規則に沿って見出しを付与する付与部と、
付与された見出しに沿って、当該見出しを付した前記スペクトルを、直流電流値、直流電圧値、又は、温度の少なくとも2つの条件に関連付けられるように分類する分類部と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項6】
前記条件は、それぞれ、複数の数値範囲を含んで構成され、
1つの前記数値範囲には1つの前記スペクトルが関連付けられる
ことを特徴とする請求項5に記載の決定システム。
【請求項7】
前記スペクトルは、第1時刻から第2時刻迄の時系列データから算出された第1緩和スペクトルと、第3時刻から第4時刻迄の時系列データから算出された第2緩和スペクトルと、を含み、
前記決定部は、前記第1緩和スペクトルから、前記第2緩和スペクトルへの形状の変化に基づき、前記制御条件を決定する
ことを特徴とする請求項5に記載の決定システム。
【請求項8】
前記形状に関する形状情報は、数値化可能な指標を含み、
前記決定部は、
前記指標が正の方向に変化するように前記形状が変化するときに、前記二次電池に電池異常が生じると判定し、
前記二次電池に電池異常が生じると判定された変化を除外するように、前記制御条件を決定する
ことを特徴とする請求項7に記載の決定システム。
【請求項9】
前記決定部は、前記二次電池に電池異常が生じると判定されるスペクトルに対応する異常直流電流値未満の直流電流値、異常直流電圧値未満の直流電圧値、又は、異常温度未満の温度値を、それぞれ前記制御条件として決定する
ことを特徴とする請求項7に記載の決定システム。
【請求項10】
前記二次電池は、劣化した二次電池を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項11】
前記二次電池は、相互に接続された複数の単位二次電池を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項12】
前記算出部は、前記単位二次電池毎に前記スペクトル情報を算出し、
前記決定部は、前記単位二次電池毎に前記制御条件を決定する
ことを特徴とする請求項11に記載の決定システム。
【請求項13】
決定した前記二次電池の制御条件に沿って前記二次電池の充放電を制御する制御部と、
前記制御部による前記二次電池の充放電制御中に、直流電流値、直流電流値又は温度の少なくとも1つが変化したときに前記決定部によって前記単位二次電池毎に前記制御条件を再度決定し、決定した制御条件を前記制御部による制御条件として更新する更新部、とを備える
ことを特徴とする請求項11に記載の決定システム。
【請求項14】
前記二次電池に関するデータを前記二次電池の設置場所とは異なる場所で計測する計測部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項15】
二次電池の充電中又は放電中の少なくとも一方である充放電中の、直流電流値と直流電圧値又は前記二次電池のSOCのうちの少なくとも一方の値とを含む各値の時系列データから、一方の軸を緩和時間、他方の軸を強度とする二軸座標系でのスペクトルを表すスペクトル情報を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出した前記スペクトルの形状に関する形状情報を用いて、前記二次電池の制御条件を決定する決定ステップと、を含む
ことを特徴とする決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、決定システム及び決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池等の二次電池を、船舶、航空機、車両(鉄道、自動車等)の搭載用電源、スマートハウス、スマートグリッド等の蓄電用電源に使用することで、効率的にエネルギを利用する取り組みが進められている。しかし、二次電池は使用方法を誤ると急速に特性劣化する。このため、二次電池を搭載した製品を長期間使用し続けるには、二次電池の使用条件(制御条件)を適切に設定することが好ましい。なお、以下では二次電池の急速な特性劣化を「電池異常」といい、電池異常は、通常の使用に伴う経時的な劣化とは区別される。
【0003】
電池異常の例としては、リチウム析出現象が挙げられる。これは、二次電池を低温かつ大電流値等の条件で使用し続けた際に生じる劣化現象である。リチウム析出現象では、二次電池の電極上に金属リチウムが析出することで、二次電池の容量低下、抵抗増加等が生じる。また、リチウム析出現象が進行し続けると、最終的には二次電池の内部短絡が生じ得る。
【0004】
電池異常を抑制するため、電池内部の状態を解析する検討が行われている。例えば特許文献1の要約には、「所定の周波数帯における緩和時間のピークの変化に基づいて、電池の構成部材の状態変化を検出する電池状態解析部を備える解析装置である。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/179266号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図17は、電池異常が生じる温度及び電流値の各閾値を説明する模式図である。電池異常に起因する二次電池の交換、修理等の頻度を下げるためには、電池異常が生じる条件を特定し、その条件下での二次電池の使用を避けるような電池制御が好ましい。例えば、リチウム析出現象の発生を抑制するには、リチウム析出現象が発生する温度及び電流値の各閾値を事前に特定すればよい。具体的には例えば図17において、当該閾値を表す関数fが、例えば実験、シミュレーション等で決定される。そして、関数fのグラフよりも上方の領域Sでの使用を避けることで、リチウム析出現象を抑制できる。即ち、領域Sを避けるように、二次電池の温度、電流値等を制御することが好ましい。
【0007】
二次電池における異常発生条件の特定方法としては、大きく分けて2つの方法が知られる。一つは、二次電池を一定の温度、電流値で長期間使用し続けて劣化させ、その過程で電池異常が生じるか否かを判定する方法である。こうした方法はサイクル劣化試験と呼ばれ、サイクル劣化試験を複数の温度条件及び電流値条件で実施することで、電池異常の生じる条件を特定できる。一方で、サイクル劣化試験による異常発生条件の特定には、数か月~数年程度の試験期間を要するという課題があり、この方法を用いて二次電池の異常発生リスクを早期発見及び早期対策することは難しい。
【0008】
もう一つの方法は、二次電池を流れる反応電流値(以下、反応モードと記載)を計測する方法である。電池異常が生じるような条件下で二次電池を使用すると、二次電池の充放電過程で計測される反応モードの数が変化する。例えばリチウム析出減少の場合、二次電池の内部では、電極中へのリチウムイオンの挿入反応のモード(正常な電池反応)に加えて、電極表面へリチウムイオンが析出する反応モードが生じる。このため、正常な充放電反応と比較して反応モードの数が増加する。つまり、反応モードの数の変化に着目することで、二次電池の使用条件下において電池異常が生じるか否かを判定できる。反応モードの数の計測は数分程度の試験で完了できるため、サイクル劣化試験と比較して、異常発生リスクを迅速に判定できる点がメリットである。
【0009】
反応モードの数を計測する技術として、特許文献1の段落0064に記載の交流インピーダンス法では、交流電流値が使用される。しかし、高い交流電流は二次電池に印加できない。一方で、二次電池は特に大電流を流したときに電池異常が顕著である。従って、交流電流を使用した交流インピーダンス法では、二次電池の電池異常を適切に評価できず、電池異常を抑制可能な制御条件を適切に決定できない。
【0010】
本開示が解決しようとする課題は、電池異常を抑制可能な制御条件を適切に決定可能な決定システム及び決定方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の決定システムは、二次電池の充電中又は放電中の少なくとも一方である充放電中の、直流電流値と直流電圧値又は前記二次電池のSOCのうちの少なくとも一方の値とを含む各時系列データから、一方の軸を緩和時間、他方の軸を強度とする二軸座標系でのスペクトルを表すスペクトル情報を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記スペクトルの形状に関する形状情報を用いて、前記二次電池の制御条件を決定する決定部と、を備える。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、電池異常を抑制可能な制御条件を適切に決定可能な決定システム及び決定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の決定システムを示すブロック図である。
図2】各温度及び各電流値に対する緩和スペクトルの算出結果を示すマップである。
図3】別の実施形態において、各温度及び各電圧値に対する緩和スペクトルの算出結果を示すマップである。
図4】別の実施形態において、各電圧値及び各電流値に対する緩和スペクトルの算出結果を示すマップである。
図5】緩和スペクトルの一例を示す図である。
図6】別の実施形態に係る決定システムを示すブロック図である。
図7】別の実施形態に係る決定システムを示すブロック図である。
図8】別の実施形態に係る決定システムを示すブロック図である。
図9】決定システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図10】本開示の決定方法を示すフローチャートである。
図11】実際に評価試験を行って得られた、緩和スペクトルから電池異常の発生条件を求めたマップである。
図12】実際に評価試験を行って得られた、電池異常が発生する範囲を除外したマップである。
図13】条件1(実施例)で使用した二次電池の電極表面を撮影した写真である。
図14】条件2(比較例)で使用した二次電池の電極表面を撮影した写真である。
図15】条件1(実施例)で使用した二次電池と条件2(比較例)で使用した二次電池との電池容量の違いを示す検証結果である。
図16】条件1(実施例)で使用した二次電池と条件2(比較例)で使用した二次電池との内部抵抗の違いを示す検証結果である。
図17】電池異常が生じる温度及び電流値の各閾値を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。また、同じ実施形態で、必ずしも全ての構成を備える必要はない。
【0015】
図1は、本開示の決定システム100を示すブロック図である。以下、決定システム100及び二次電池210を総称して電池システム300という。従って、電池システム300は、決定システム100と、二次電池210とを備える。決定システム100は、二次電池210での電池異常の発生を抑制する二次電池210の制御条件(充放電条件)を決定するものである。電池異常は、上記のように、通常の使用に伴う経時的な劣化とは異なる異常であり、例えば電極表面でのリチウム析出現象であるが、これに限られない。
【0016】
二次電池210には、例えばモータ、インバータ等の電力消費機器400及び電源500が接続される。電源500は、二次電池210を充電する。電力消費機器400は、二次電池210の放電により生じた電力で駆動する。従って、これらの充電又は放電のうちの少なくとも一方(好ましくは双方。以下、これらを総称して充放電という)は、決定システム100で決定された制御条件に沿って行われる。
【0017】
二次電池210の制御条件は、例えば、充放電中の直流電流値、充放電中の直流電圧値、又は、二次電池210の温度、のうちの少なくとも1つを含む。以下、直流電流値、直流電圧値、及び、二次電池の温度は、特に断らない限り、適宜単に、電流値、電圧値、及び温度等という。二次電池210は、例えばリチウムイオン二次電池であるが、例えば鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池等の他の種類の二次電池でもよい。
【0018】
決定システム100は、計測部11と、記録部12と、付与部13と、分類部14と、算出部15と、決定部16と、制御部17とを備える。これらは、全て一体に構成されてもよく、少なくとも一部が別体に構成されてもよい。これらが全て一体に構成される場合、決定システム100は、決定装置ということができる。一方で、少なくとも一部が別体に構成される場合、例えば、当該一部は、例えばネットワークを介して遠隔地に設置されたサーバ(不図示)に格納されてもよい。
【0019】
計測部11は、二次電池210の充電中又は放電中の少なくとも一方である充放電中の、直流電流値と直流電圧値又は二次電池210のSOCのうちの少なくとも一方の値とを含む各値の時系列データを計測するものである。即ち、時系列データは、直流電流値の時系列データと、直流電圧値又は二次電池210のSOCのうちの少なくとも一方の値のj系列データとを含む。計測は、二次電池210の充放電中、充放電を行わない待機中等を含む使用中、常に又は所定の時間間隔(例えば1分おき等)で行われる。直流電圧値とSOCとの間には相関があるため、以下では一例として、計測部11は直流電圧値に関する時系列データを計測する。ただし、計測部11は、SOCの時系列データを計測してもよい。また、本開示の例では、時系列データは、更に、二次電池210の温度の時系列データを含む。
【0020】
計測部11は、計測した時系列データの集合体(所謂「生データ」)から、緩和スペクトルを算出可能な期間(タイミング)における時系列データを抽出する。緩和スペクトルは、緩和時間の連続関数であり、一方の軸(例えば横軸)を緩和時間、他方の軸(例えば縦軸)を強度(スペクトル強度)とする二軸座標系でのスペクトル(充放電スペクトル)である。抽出は、例えば、定電圧充電中、充電後、又は、放電後の少なくとも何れか1つの期間における各時系列データを抽出することが好ましい。充電後は、定電圧充電後でもよく、定電流充電後でもよい。放電後は、定電圧放電後でもよく、定電流放電後でもよい。また、異なる期間から抽出された時系列データが複数存在することが好ましい。
【0021】
定電圧充電中の時系列データを抽出する場合、計測部11は、定電圧充電を開始する時刻t1から定電圧充電を終了する時刻t2に至るまでの、二次電池210の電圧値、電流値及び温度の各時系列データを抽出する。「定電圧充電」は、二次電池210を一定の電圧値に保持して充電する充電方法である。更に、計測部11は、二次電池210の充電開始前(好ましくは直前)の電圧値も抽出する。時刻t1から時刻t2迄の時間に制限はないが、好ましくは1分以上30分以下、より好ましくは10分以上20分以下である。
【0022】
充電後(充電終了後)又は放電後(放電終了後)の時系列データを抽出する場合、計測部11は、充電又は放電の終了時刻t3から所定の時刻t4に至るまでの、二次電池210の電圧値、電流値及び温度の各時系列データを抽出する。更に、計測部11は、二次電池210充電又は放電を終了する直前の電流値も取得する。時刻t3から時刻t4迄の時間に制限はないが、好ましくは1分以上30分以下、より好ましくは10分以上20分以下である。
【0023】
計測部11が、二次電池210から計測データ(上記時系列データ、充電開始前の電圧値、充放電直前の電流値等を含むデータ)を取得する方法に制限はない。例えば、計測部11は、二次電池210に関するデータ(例えば計測データ)を二次電池210の設置場所とは異なる場所で計測するようにできる。これにより、例えば車両、船舶、航空機等に二次電池210が設置された場合に、二次電池210の例えば計測データを例えば遠隔地に配置されたサーバ(不図示)で一元管理できる。これにより、利便性を向上できる。
【0024】
具体的には例えば、計測部11は、電気回路、有線LAN等の通信回路を介して二次電池210から計測データを取得してもよいし、遠隔地に置かれた二次電池210から無線LAN等のネットワークを介して取得してもよいし、これらを組み合わせた方法で計測データを取得してもよい。また、計測部11が二次電池210から計測データを取得する過程において、何らかの他の装置を介して計測データを取得してもよい。例えば、計測部11は、充放電装置等の外部装置(不図示)を介して二次電池210から計測データを取得してもよい。また、計測部11は、二次電池210から取得した計測データをサーバ(不図示)上に格納し、その計測データを計測部11が取得してもよい。
【0025】
記録部12は、計測部11で抽出された二次電池210の計測データ(上記時系列データ、充電開始前の電圧値、充放電直前の電流値等を含むデータ)を保存するものである。なお、これらの計測データは、該当データが抽出されたタイミング毎に分類して保存されることが好ましい。例えば、時刻tAから時刻tB迄の間に抽出された計測データDABと、時刻tCから時刻tD迄の間に抽出された計測データDCDとが存在する場合、計測データDAB,DCDは一まとめにせず、取得された期間(例えば時刻tAから時刻tB迄、時刻tCから時刻tD迄等)に紐づけて、記録部12上に個別に保存されることが好ましい。
【0026】
付与部13は、異なる時刻間で取得した時系列データから算出されたスペクトル毎に、直流電流値、直流電圧値、又は、温度の少なくとも2つを用いた所定規則に沿って見出しを付与するものである。付与部13を備えることで、様々な時刻、種類(電流値、電圧値、又は、温度の別)に基づいて取得した時系列データから、複数の緩和スペクトルを含むマップ(後記)を作成できる。
【0027】
本開示の例では、付与部13は、記録部12に保存された計測データを参照し、電流値、電圧値、及び温度の各代表値(見出しの例)を算出する。算出された代表値は、算出された緩和スペクトル及び当該緩和スペクトルの算出に使用される計測データに付与される。詳細は後記するが、緩和スペクトルは、異なる期間で計測された時系列データに基づいて算出される。そして、算出された緩和スペクトルと、代表値とが関連付けられる。
【0028】
記録部12に、異なる時間タイミングで抽出された複数の計測データが保存されている場合、付与部13は、各計測データ毎に代表値を算出する。具体的には例えば時刻tAから時刻tB迄の間に抽出された計測データDABと、時刻tCから時刻tD迄の間に抽出された計測データDCDとが存在する場合、付与部13は、計測データDAB,DCD毎に代表値を算出する。
【0029】
代表値の算出方法(見出しの決定方法)は、時系列データの種類及び期間によらず同じ所定規則に則って算出できれば、特に制限されない。以下、代表値の算出方法を示す2つの例が示される。
【0030】
<代表値の算出方法1:定電圧充電中の計測データから代表値を算出する場合>
例えば電流値の代表値として、定電圧充電を開始した直後の電流値を採用できる。また、電圧値の代表値として、定電圧充電中の平均電圧値を採用できる。更に、温度の代表値として、計測された温度の時系列データの平均値を採用できる。
【0031】
<代表値の算出方法2:充電後又は放電後の計測データから代表値を算出する場合>
例えば電流値の代表値としては、充電終了直前又は放電終了直前の電流値を採用できる。また、電圧値の代表値として、充電終了直前又は放電終了直後の電圧値を採用できる。更に、温度の代表値として、記録された温度の時系列データの平均値を採用できる。
【0032】
分類部14は、付与された見出しに沿って、当該見出しを付した緩和スペクトルを、電流値(直流電流値)、電圧値(直流電圧値)、又は、温度の少なくとも2つの条件に関連付けられるように分類するものである。分類部14を備えることで、様々な時刻、種類に基づいて取得した時系列データから、複数の緩和スペクトルを含むマップ(後記)を作成できる。マップの具体的な内容は、例えば図2等を参照しながら後記する。
【0033】
ここでいう条件は、それぞれ、数値範囲を含んで構成される。従って、緩和スペクトルは、例えば、電流値の範囲、電圧値の範囲、又は、温度の範囲のうちの少なくとも2つの条件において、それぞれの条件を構成する複数の数値範囲の何れかに関連付けられる。
【0034】
本開示の例では、分類部14は、二次電池210を使用する際に想定される制御条件(使用条件)と、付与部13で付与された代表値とを用いて、記録部12に蓄積された各計測データを分類する。制御条件は、二次電池210を例えば充放電する際に想定される電流値、電圧値、及び温度の各使用範囲を含む。制御条件は、例えば、二次電池210の使用用途に基づいて予め決定できる。
【0035】
具体的な分類方法として、例えば、分類部14は、二次電池210の制御条件を、有限個の区分に分割する。例えば、二次電池210を温度範囲Tmin~Tmaxで使用することが想定される場合(Tmin<Tmax)、分類部14は、温度範囲がTmin~T、T~T、T~T、・・・、TN-1~Tmaxとなるように、N個の区間に分割する。Nは1以上の整数である。二次電池210の電流値及び電圧値についても、分類部14は、同様に想定される使用範囲を同様の手順で有限個の区分に分割する。なお、二次電池210の使用条件は、事前に算出部15(後記)に登録されてもよいし、計測部11で取得した二次電池210の計測データを基に判定してもよい。計測データに基づき判定される場合、例えば、計測した時系列データの集合体(生データ)のうち、例えば温度であれば最小値をTmin、最大値をTmaxに設定できる。
【0036】
続いて、分類部14は、付与部13で時系列データ等に付与された代表値がどの上記区分に該当するかを選定する。これにより、記録部12に保存された時系列データ等が区分毎に分類される。もし、記録部12に、上記のように異なる時間タイミングで抽出された複数の時系列データ等が保存されている場合、それぞれの時系列データ等に対して分類が行われる。
【0037】
分類の結果、同一区分上に異なる時間タイミングで測定された複数のデータが割り当てられた場合、分類部14は、電流値、電圧値又は温度に対する時系列データの数がそれぞれ1つに定まるように、時系列データを加工する。これにより、1つの数値範囲には1つの緩和スペクトルが対応付けられる。ここでいう数値範囲は、上記のように、電流値、電圧値、又は、温度の少なくとも2つの条件に含まれる数値範囲であり、例えば温度であれば、温度範囲がTmin~T、T~T、T~T、・・・、TN-1~Tmaxの何れかである。
【0038】
加工方法としては、例えば、最も新しい時間で取得されたデータのみを採用できる。また、同一区分上に割り当てられた全てのデータに対して平均を取った結果を採用できる。具体的には、例えば、電流値の時系列データが複数ある場合、全ての電流値の時系列データに対して平均を取ることで、平均的な電流値の時系列データを作成できる。
【0039】
算出部15は、上記緩和スペクトル(スペクトルの一例)を表すスペクトル情報を算出するものである。スペクトル情報は、緩和スペクトルを表すグラフでもよいし、緩和スペクトルを表す関数でもよいし、緩和スペクトルの形状でもよい。形状は、例えば、緩和スペクトルに含まれるピークの数、ピークの位置、ピークの面積、ピークの半値幅、又は、ピークの歪度等のうちの少なくとも1つを含むことができる。スペクトル情報は、文字情報(例えば数値)でもよく、文字情報以外の情報(例えば形状)でもよい。
【0040】
算出部15は、定電圧充電中、充電後、又は、放電後の少なくとも何れか1つの期間における各時系列データから、緩和スペクトルを算出する。これらの時系列データを使用することで、緩和スペクトルを算出できる。具体的な算出方法は以下のとおりであるが、算出方法は以下の例に限定されない。
【0041】
<計算方法1:定電圧充電中の計測データから緩和スペクトルを算出する場合>
この場合、緩和スペクトルρ(τ)は計測データを用いて式(1)から算出できる。
【0042】
【数1】
【0043】
ρ(τ)は緩和スペクトルを示し、ΔVは充電開始前(好ましくは直前)の電池電圧値と定電圧充電時の電圧値との差、I(t)は定電圧充電中の電流値の時系列データを示す。また、記号L-1(筆記体で示す大文字Lの逆数)は、I(t)/ΔVに対する逆ラプラス変換を示す。
【0044】
<計算方法2:充電後又は放電後の計測データから緩和スペクトルを算出する場合>
この場合、緩和スペクトルρ(τ)は計測データを用いて次式(2)から算出できる。
【数2】
【0045】
ρ(τ)は緩和スペクトルを示し、Iは充電終了直前又は放電終了直前の電流値、V(t)は充電後又は放電後の電圧値の時系列データを示す。また、記号L-1(筆記体で示す大文字Lの逆数)は、V(t)/Iに対する逆ラプラス変換を示す。
【0046】
図2は、各温度及び各電流値に対する緩和スペクトルの算出結果を示すマップである。図2には、一例として、温度をT1~T2、T2~T3、T3~T4(それぞれ数値範囲)に分割するとともに、電流値をI1~I2、I2~I3、I3~I4(それぞれ数値範囲)に分割した例が示される。また、図2に示される9つの緩和スペクトルにおいて、図示の簡略化のために記載を省略しているが、横軸は緩和時間、縦軸はスペクトルの強度である。後記の図3図4図11図12において同様である。
【0047】
上記のように、算出部15(図1)は、分類部14(図1)によって温度及び電流値の各区分に分類された時系列データ等を用いて、区分毎に緩和スペクトルを算出する。従って、例えば、区分の結果、温度T1~T2かつ電流値I1~I2に区分された時系列データ等を用いて算出された緩和スペクトルが、温度T1~T2かつ電流値I1~I2の項目に分類(格納)される。そして、各時系列データ等を用いて各緩和スペクトルを各項目に分類することで、例えば図2に示すようなマップ(緩和スペクトルマップ)が得られる。
【0048】
緩和スペクトルは、例えば図2に示すように、二次電池210の温度と関連付けられる。二次電池210の温度によって、電池異常の発生を抑制可能な電流値及び電圧値は異なり得る。即ち、電流値及び電圧値が同じであっても、二次電池210の温度が異なれば電池異常の生じ易さが異なり得る。そこで、二次電池210の温度も考慮して制御条件を決定することで、二次電池210の電池異常をより効果的に抑制できる。なお、例えば二次電池210の設置環境によっては、ある程度、二次電池210の温度が予測出来ることがある。また、二次電池210は、そもそも電池異常が生じ難い温度、用途等で使用されることもある。そこで、これらの場合には、温度は考慮しなくてもよい。
【0049】
また、各項目に分類される緩和スペクトルは、異なる期間で計測された時系列データ等に基づくことが好ましい。なお、ここでいう期間は、二次電池210の交換、修理等のたびに起算点がリセットされる期間である。そして、図2において、緩和スペクトル200は、例えば、第1時刻から第2時刻迄の時系列データから算出された第1緩和スペクトル221と、第3時刻から第4時刻迄の時系列データから算出された第2緩和スペクトル222と、を含むことが好ましい。複数の緩和スペクトル200を含むことで、詳細は後記するが、緩和スペクトルの形状変化に基づいて、電池異常が発生する制御条件を決定できる。
【0050】
図3は、別の実施形態において、各温度及び各電圧値に対する緩和スペクトルの算出結果を示すマップである。図3には、一例として、温度をT1~T2、T2~T3、T3~T4(それぞれ数値範囲)に分割するとともに、電圧値をV1~V2、V2~V3、V3~V4(それぞれ数値範囲)に分割した例が示される。
【0051】
図3に示す例では、第1範囲R1は、温度がT1~T4かつ電圧値がV1~V3である。一方で、第2範囲R2は、温度がT1~T4かつ電圧値がV3~V4である。第2範囲R2に含まれる第2緩和スペクトル222のピークの半値幅は、第1範囲R1に含まれる第1緩和スペクトル221のピークの半値幅よりも大きい。
【0052】
上記のように、本開示の時系列データは、電流値(図2)、電圧値、及び温度に関する。従って、上記図2はこれらのうちの2つである電流値及び温度に関するマップを示したが、電流値及び温度に限定されず、図3に示す電圧値及び温度に関するマップでもよい。電流値に代えて電圧値に関する時系列データを使用すること以外は、上記図2の実施形態と同様にして、図3のマップを作成できる。
【0053】
図4は、別の実施形態において、各電圧値及び各電流値に対する緩和スペクトルの算出結果を示すマップである。図4には、一例として、電圧値をV1~V2、V2~V3、V3~V4(それぞれ数値範囲)に分割するとともに、温度をT1~T2、T2~T3、T3~T4(それぞれ数値範囲)に分割した例が示される。
【0054】
図4に示す例では、第1範囲R1は、電圧値がV1~T3かつ電流値がI1~I3である。一方で、第2範囲R2は、電圧値がV3~V4かつ電流値がI1~I4、及び、電圧値がV1~V4かつ電流値がI3~I4である。電圧値がV3~V4かつ電流値がI1~I4(第2範囲R2)に含まれる第2緩和スペクトル222のピークの半値幅は、第1範囲R1に含まれる第1緩和スペクトル221のピークの半値幅よりも大きい。また、電圧値がV1~V4かつ電流値がI3~I4(第2範囲R2)に含まれる第2緩和スペクトル222のピークの数は、第1範囲R1に含まれる第1緩和スペクトル221のピークの数よりも大きい。
【0055】
上記のように、本開示の時系列データは、電流値、電圧値、及び温度(図2)に関する。従って、上記図2及び図3の例に限定されず、図4に示す電圧値及び電流値に関するマップでもよい。温度に代えて電圧値に関する時系列データを使用すること以外は、上記図2の実施形態と同様にして、図4のマップを作成できる。
【0056】
本開示の例では、例えば、電流値、電圧値、及び温度の各時系列データに基づき、例えば、図2図4に示す3つのマップを構築できる。そして、3つのマップを用いることで、より精度の高い制御条件を決定できる。特に、測定誤差等の影響によって、マップ間で異なる制御条件が決定され得る。この場合には、例えば二次電池210に対して最も負荷が小さい条件(例えば電流値、電圧値であれば、最も低い電流値、電圧値)、又は、マップ間で共通する制御条件を制御条件として採用すればよい。
【0057】
図1に戻って、決定部16は、算出部15が算出した緩和スペクトルの形状に関する形状情報を用いて、二次電池210の制御条件を決定するものである。決定される制御条件は、上記のように、二次電池210での電池異常の発生を抑制可能な二次電池210の制御条件であり、例えば充放電時の電流値、電圧値、及び温度である。
【0058】
図5は、緩和スペクトル200の一例を示す図である。図5に示す緩和スペクトル200は、2つのピーク201,202を有する。また、ピーク201,202の位置は、緩和時間τ1,τ2である。ピーク201,202の面積はS1,S2である。ピーク201,202の半値幅はW1,W2である。ピーク201,202の歪度はK1,K2である。
【0059】
決定部16により使用さる形状情報は、数値化可能な指標を含むことが好ましい。口体的には、例えば、形状情報は、緩和スペクトル200におけるピーク201,202の数、ピーク201,202の位置、ピーク201,202の面積、ピーク201,202の半値幅、又は、ピーク201,202の歪度、のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。これらは何れも数値化可能な指標であるため、詳細は後記するが、電池異常の判定するときに客観的な指標で異常劣化の発生可能性を判定できる。
【0060】
更に上記図2を参照しながら決定部16(図1)が説明される。図2に示す9つの緩和スペクトルのピーク数に着目すると、温度T1~T3かつ電流値I3~I4を満たす第2範囲R2では、他の範囲である第1範囲R1でのピーク数(2つ)とは異なり、ピーク数が3つである。即ち、温度T1~T3かつ電流値I3~I4を満たす第2範囲R2以外の第1範囲R1から視れば、ピーク数が、第1範囲R1から第2範囲R2で増加する。なお、第1範囲は、温度T1~T4かつ電流値I1~I3の範囲、及び、温度T3~T4かつ電流値I3~I4の範囲である。
【0061】
上記のように、緩和スペクトルの形状情報は、二次電池210の内部における反応モードの発生と対応する。従って、緩和スペクトルの形状変化(例えばピーク数等の増加)は、移動な反応モードの発生が示唆される。そこで、決定部16は、例えば第1範囲R1に分類された第1緩和スペクトル221から、第2緩和スペクトル222への形状の変化に基づき、制御条件を決定する。これにより、電池異常が発生する制御条件を決定できるため、電池異常の発生を抑制可能な制御条件を決定できる。
【0062】
上記のように、緩和スペクトル200におけるピーク201,202の数、ピーク201,202の位置、ピーク201,202の面積、ピーク201,202の半値幅、及び、ピーク201,202の歪度は、何れも、数値化可能な指標である。従って、緩和スペクトルの形状が変化すれば、これらの指標の変化は、数値である「変化量」として表現できる。
【0063】
そして、決定部16は、例えばピーク数等の指標が正の方向に変化するように緩和スペクトルの形状が変化するときに、二次電池210に電池異常が生じると判定する。例えば、指標がピーク数の場合、上記のようにピーク数が2(第1範囲R1)から3(第2範囲R2)に、正の方向(+1)に変化する。このため、決定部16は、第2範囲Rの温度及び電流値で電池異常が生じると判定する。また、ピークの位置の場合、図示は省略するが、第1範囲R1及び第2範囲R2のそれぞれの緩和スペクトルにおいて、対応するピークの位置を示す緩和時間が例えばτ1からτ2(τ1<τ2)に変化すれば、緩和時間は正の方向に変化したといえる。
【0064】
指標がピークの面積の場合、図示は省略するが、第1範囲R1及び第2範囲R2のそれぞれの緩和スペクトルにおいて、対応するピークの面積が例えばS1からS2(S1<S2)に変化すれば、面積は正の方向に変化したといえる。ピークの面積は任意の方法に沿って算出できる。指標がピークの半値幅の場合、図示は省略するが、第1範囲R1及び第2範囲R2のそれぞれの緩和スペクトルにおいて、対応するピークの半値幅が例えばW1からW2(W1<W2)に変化すれば、半値幅は正の方向に変化したといえる。ピークの半値幅は任意の方法に沿って算出できる。指標がピークの歪度の場合、図示は省略するが、第1範囲R1及び第2範囲R2のそれぞれの緩和スペクトルにおいて、対応するピークの歪度が例えばK1からK2(K1<K2)に変化すれば、歪度は正の方向に変化したといえる。ピークの歪度は任意の方法に沿って算出できる。
【0065】
なお、後記の図12に示すように、例えば面積、半値幅、歪度等が正の方向に変化(即ち増えた)場合であっても、電位異常は生じないと判定できる場合もある。そこで、数値化可能な指標毎に、変化量について閾値を予め決定し、当該閾値を超えるような変化量が生じた場合に、電池異常が発生すると判定してもよい。このような閾値は、例えば、実験、シミュレーション、試運転等によって決定できる。また、判定精度を向上させるために、複数の指標を用いて判定してもよい。
【0066】
そして、決定部16は、二次電池210に電池異常が生じると判定された変化を除外するように、制御条件を決定する。図2に即して具体的に説明すれば、決定部16は例えば図2に示すマップのうち、第1範囲R1よりも例えばピーク数等が増える、即ちピーク数が性能方向に変化する第2範囲R2で、電池異常が生じると判定する。これにより、決定部16は、二次電池210に電池異常が発生する条件を、第2範囲R2に対応する温度及び電流値と決定する。このようにすることで、電池異常の発生を避けて二次電池210を制御できる。
【0067】
また、決定部16は、二次電池210に電池異常が生じると判定される緩和スペクトルに対応する異常電流値未満の電流値、異常電圧値未満の電圧値、及び異常温度未満の温度を、それぞれ制御条件として決定する。これにより、電池異常の発生を抑制できる。
【0068】
制御部17は、決定した二次電池210の制御条件に沿って二次電池210の充放電制御するものである。これにより、二次電池210の電池異常を効果的に抑制できる。本開示の例では、制御部17は、決定部16により設定された電池異常の発生条件(第2範囲R2(図2)内での二次電池210の使用頻度を抑制するように、二次電池210の充放電を制御する。充放電制御は、電流値、電圧値、温度の制御により行われる。なお、制御部17は、第2範囲R2での使用を、本開示の決定システム100を使用しない場合よりも抑制できれば、第2範囲R2での使用を全く許容しないものではない。なお、二次電池210の温度制御は、例えば、ファン等の空冷装置、液冷装置等の冷却機構を使用できる。
【0069】
本開示を適用可能な二次電池210は、例えば、二次電池セル、二次電池モジュール、二次電池パック、二次電池システム等の任意の形態を含む。また、二次電池210は、例えば、船舶、航空機、車両(蓄電池電車、電気自動車等)等の電動モビリティに搭載されてもよく、定置用の蓄電池システムに搭載されてもよく、使用中に用途が変更されてもよい。例えば、電動モビリティで使用された二次電池210を、定置用蓄電池システムとして再利用する場合にも適用できる。
【0070】
また、本開示は二次電池210の劣化状態に依らず適用できる。例えば、二次電池210は、新品(未劣化の状態)の電池でもよく、何らかの用途で使用されることで劣化状態(例えば使用済み。中古)になった電池でもよい。また、長期間未使用の結果経時的に劣化した二次電池210でもよい。
【0071】
更に、本開示は、二次電池210における電池異常の発生抑制という用途の他にも、使用中の二次電池210の長寿命化、劣化抑制等のための制御にも適用できる。
【0072】
また、新品の二次電池210及び中古の二次電池210がどのような使用用途に適しているかの判定にも本開示を使用できる。以下に、その判定方法を示す。
【0073】
まず、二次電池210を充放電装置(不図示)に接続して、事前に設定した電流値、電圧値、温度の制御条件により二次電池210が充放電される。このときの時系列データを使用し、上記の方法によって緩和スペクトルが算出される。そして、算出された緩和スペクトルを用いて、電池異常が生じない電流値、電圧値又は温度のうちの少なくとも2つを含む制御条件が決定される。
【0074】
続いて、二次電池210を使用したい用途において、二次電池210がどのような電流値、電圧値及び温度で使用されるかを評価する。例えば、電気自動車の場合、モータ、インバータ性能を基に、車両走行に使用される二次電池210の電流値及び電圧値を求めるとともに、その時に発生するジュール熱から二次電池210の温度を予測する。このように、二次電池210の想定用途から求めた電流値、電圧値及び温度が、緩和スペクトルから求めた電流値、電圧値及び条件内に収まるか否かを評価される。これにより、二次電池210が想定する使用用途に適しているか否かを判定できる。
【0075】
また、決定システム100による制御条件の決定は、どのタイミングで行われてもよい。例えば、二次電池210を搭載した製品の工場出荷時、当該製品のメンテナンス時等に制御条件を決定できる。そして、決定された制御条件に沿って、次回以降の制御を行うことができる。
【0076】
また、例えば、ネットワークを介して決定システム100と二次電池210とが常時接続される場合、遠隔地に配置された決定システム100が二次電池210の状態を常時モニタリングし、例えば所定期間毎に制御条件を決定するようにしてもよい。そして、制御条件が決定される都度、決定された制御条件で次回以降の制御を行うことができる。
【0077】
図6は、別の実施形態に係る決定システム100を示すブロック図である。図6に示す決定システム100による制御対象である二次電池210は、相互に接続された複数の単位二次電池211を含む。単位二次電池211は、例えば、電池セル、電池モジュール、電池パック、電池システム等であり、図示の例では電池モジュールである。なお、図6の例では、1台の決定システム100に対して複数の単位二次電池211が接続されるが、1つの単位二次電池211毎に1台の決定システム100が接続されてもよい。
【0078】
また、図6に示す決定システム100では、制御部17(図1)は、単位二次電池211毎に異なる制御を行う。従って、二次電池210は、全て同程度の特性を有する状態の単位二次電池211(例えば新品の電池)であってもよいが、少なくとも一部に、劣化した単位二次電池211(二次電池の一例。例えば中古の二次電池)を含むことが好ましい。電池システム300の運用によっては、新品の単位二次電池211と劣化した単位二次電池211とが併用される場合がある。このような場合であっても、単位二次電池211毎に異なる制御を行うことで、各単位二次電池211での電池異常を抑制できる。
【0079】
まず、上記図1図5を参照しながら説明した方法により、単位二次電池211毎に、電池異常の発生を抑制する制御条件が決定される。即ち、図6に示す決定システム100は、算出部15は、単位二次電池211毎にスペクトル情報を算出する。決定部16は、単位二次電池211毎に制御条件を決定する。決定された制御条件は、単位二次電池211毎に、記録部12に記録される。
【0080】
複数の単位二次電池211が相互に接続される場合、二次電池210全体への充放電によって、それぞれの単位二次電池211の劣化の程度がバラつき得る。このため、単位二次電池211毎に、電池異常を生じさせない電流値、電圧値、及び温度が異なり得る。そこで、決定部16は単位二次電池211毎に電池異常の発生を抑制する制御条件を決定し、全ての単位二次電池211で電池異常を生じさせない制御条件を決定する。これにより、それぞれの単位二次電池211において、電池異常の発生を抑制できる。
【0081】
上記のように、二次電池210には、例えばモータ、インバータ等の電力消費機器400(図1)が接続される。そして、電力消費機器400が使用する電流値、電圧値及び温度は、電力消費機器400の用途等に応じて、ある程度想定される。従って、決定部16は、電力消費機器400が使用する予定の電流値、電圧値及び温度が、単位二次電池211毎に決定した制御条件の範囲内であるかを、単位二次電池211毎に判定する。判定の結果、使用予定(供給予定)の電流値、電圧値及び温度のうちの少なくとも1つが、決定した制御条件から逸脱する場合には、決定部16は、逸脱した電流値、電圧値及び温度を、決定した制御条件の範囲内に収まるように制限する。制限は、例えば、単位二次電池211毎に、供給予定の電流値、電圧値及び温度を、決定した制御条件の各範囲の上限値になるように実行できる。また、全ての単位二次電池211の各制御条件のうち、共通する制御条件になるように制限してもよい。以上の判定及び適宜の制限を全ての単位二次電池211毎に行った後、二次電池210から電力消費機器400に電力が供給される。
【0082】
なお、ここでは電力消費機器400への放電を説明したが、電源500による充電においても、同様に判定及び適宜制限してよい。
【0083】
図7は、別の実施形態に係る決定システム100を示すブロック図である。図7に示す決定システム100による制御対象である二次電池210は、上記図6と同様に、相互に接続された複数の単位二次電池211を含む。
【0084】
図7に示す決定システム100は、上記図1に示した決定システム100において、更に、更新部18を備える。更新部18は、制御部17による二次電池210の充放電制御中に、電流値、電流値又は温度の少なくとも1つが変化したときに決定部16によって単位二次電池211毎に制御条件を再度決定し、決定した制御条件を制御部17による制御条件として更新するものである。更新部18を備えることで、実際の運用時に単位二次電池211の状態が変化したときでも、単位二次電池211の電池異常を抑制できる。
【0085】
更新部18は、例えば、電流値、電流値又は温度の少なくとも1つを常時監視してもよいし、例えば所定時間(例えば1分毎)に監視してもよい。
【0086】
図8は、別の実施形態に係る決定システム100を示すブロック図である。図8に示す決定システム100は、上記図1に示した決定システム100において、更に、出力部19を備える。出力部19は、決定システム100による決定結果を外部機器600に出力するものである。出力される決定結果は、例えば、決定した制御条件でもよく、例えば上記図2を参照しながら説明したマップでもよく、当枚マップに含まれる複数の緩和スペクトルの少なくとも一部の緩和スペクトルでもよい。また、出力される決定結果は、決定システム100による決定結果(例えば決定した制御条件)を、上記図17を参照して説明したグラフの形態に変換したグラフ、関数等の情報でもよい。
【0087】
外部機器600は、例えば、表示装置(ディスプレイ、モニタ等)、HDD等の外部記憶装置、決定システム100とは独立して備えられ、決定システム100と連携して駆動する外部連携機器でもよい。
【0088】
図9は、決定システム100のハードウェア構成を示すブロック図である。決定システム100は、例えばCPU(Central Processing Unit)1001、RAM(Random Access Memory)1002、ROM(Read Only Memory)1003、I/F(Inter Face)1004、バス1005等を備えて構成される。CPU1001、RAM1002、ROM1003及びI/F1004は、例えばバス1005を介して接続される。決定システム100は、ROM1003に格納されている所定の制御プログラム(例えば本開示の決定方法)がRAM1002に展開され、CPU1001によって実行されることにより具現化される。決定システム100と各種機器(サーバ等)、外部のネットワーク等との信号及び情報の授受は、ハードウェア的にはI/F1004を通じて行われる。
【0089】
図10は、本開示の決定方法を示すフローチャートである。本開示の決定方法は、例えば、上記図1に示した決定システム100によって実行できる。従って、決定システム100に対して説明した事項を、本開示の決定方法に対しても同様に適用できる。
【0090】
本開示の決定方法は、計測ステップS11と、記録ステップS12と、付与ステップS13と、分類ステップS14と、算出ステップS15と、決定ステップS16と、制御ステップS17とを含む。
【0091】
計測部11は、二次電池210の充電中又は放電中の少なくとも一方である充放電中の、直流電流値と直流電圧値又は二次電池210のSOCのうちの少なくとも一方の値とを含む各値の時系列データを計測するステップである。計測ステップS11は、例えば、計測部11(図1)によって実行できる。記録ステップS12は、計測ステップS11で抽出された二次電池210の計測データ(上記時系列データ、充電開始前の電圧値、充放電直前の電流値等を含むデータ)を保存するステップである。記録ステップS12は、例えば、記録部12(図1)によって実行できる。
【0092】
付与ステップS13は、異なる時刻間で取得した時系列データから算出されたスペクトル毎に、直流電流値、直流電圧値、又は、温度の少なくとも2つを用いた所定規則に沿って見出しを付与するステップである。付与ステップS13は、例えば、付与部13(図1)によって実行できる。分類ステップS14は、付与された見出しに沿って、当該見出しを付した緩和スペクトルを、電流値(直流電流値)、電圧値(直流電圧値)、又は、温度の少なくとも2つの条件に関連付けられるように分類するステップである。分類ステップS14は、例えば、分類部14(図1)によって実行できる。
【0093】
算出ステップS15は、上記緩和スペクトル(スペクトルの一例)を表すスペクトル情報を算出するステップである。算出ステップS15は、例えば、算出部15(図1)によって実行できる。決定ステップS16は、算出ステップS15で算出した緩和スペクトルの形状に関する形状情報を用いて、二次電池210の制御条件を決定するステップである。決定ステップS16は、例えば、決定部16(図1)によって実行できる。
【0094】
制御ステップS17は、決定ステップS16で決定した二次電池210の制御条件に沿って二次電池210の充放電制御するステップである。制御ステップS17は、例えば、制御部17(図1)によって実行できる。
【実施例0095】
以下、実施例を挙げて、本開示を更に具体的に説明する。
【0096】
決定システム100を用いた電池異常の発生条件の特定と、決定システム100を用いた二次電池210の制御とについて、実際に評価試験を行った。
【0097】
検証には、電池容量5Ahの円筒型のリチウムイオン二次電池(二次電池210の一例)を使用した。正極(後記の電極50)は、正極活物質としてのLiNiMnCoOを金属集電体に塗布することで構成され、負極はカーボンで構成した。緩和スペクトルを算出するための計測データには、二次電池210を使用中の電流値、電圧値、及び温度の各値の時系列データを使用した。更に、定電圧充電中の時系列データを複数抽出し、抽出した時系列データから、電流値及び温度の各代表値と緩和スペクトルとを計算した。
【0098】
電流値の代表値は、0A~25A、25~50A、50~75A、75A~100A、100A~125Aの区分とした。温度の代表値は、0~10℃、10℃~25℃、25℃~35℃、35℃~45℃の区分とした。そして、これらの区分に沿って、代表値を分類した。
【0099】
続いて、各区分に分類された時系列データを用いて、それぞれ緩和スペクトルを計算した。このとき、各区分の中に異なる時間タイミングで取得された時系列データが複数個含まれる場合、最も新しい時間タイミングで取得された時系列データを使用して緩和スペクトルを計算した。例えば、電流値0A~25A、温度0℃~10℃で指定される区分に、時刻tA~時刻tB及び時刻時刻tC~時刻tDで取得された2種類の時系列データが含まれる場合(ただしtB<tC)、時刻tC~時刻tDで取得された時系列データを用いて緩和スペクトルを計算した。
【0100】
図11は、実際に評価試験を行って得られた、緩和スペクトルから電池異常の発生条件を求めたマップである。図11に示すマップにおいて、得られた緩和スペクトルの形状情報に着目して、電池異常の発生条件を特定した。ここで、緩和スペクトルの形状情報にはピーク数を用いた。この理由は、前述したように、緩和スペクトルの形状情報は電池内部での反応モードと対応しているためであり、特に緩和スペクトル上のピーク数の増加は、電池内部での異常な反応モードの発生を示唆するためである。
【0101】
図12は、実際に評価試験を行って得られた、電池異常が発生する範囲を除外したマップである。網掛けした範囲が上記の第2範囲R2であり、網掛けしていない範囲が上記の第1範囲R1である。第2範囲R2での緩和スペクトルは、温度が0℃~10℃かつ電流値が50A~125A、温度が10℃~25℃かつ電流値が75A~125A、温度が25℃~35℃かつ電流値が100A~125A、の区分に存在する緩和スペクトルである。第1範囲R1での緩和スペクトルは、温度が0℃~10℃かつ電流値が0A~50A、温度が10℃~25℃かつ電流値が0A~75A、温度が25℃~35℃かつ電流値が0A~100A、及び、温度が35℃~45℃かつ電流値が0A~125A、の区分に存在する緩和スペクトルである。
【0102】
網掛けした第2範囲R2内の緩和スペクトルと、網掛けしていない第1範囲R1内の緩和スペクトルとを比較すると、網掛けした緩和スペクトルでピーク数が2つであるのに対し、網掛けしていない緩和スペクトルではピーク数が1つである。従って、網掛けした緩和スペクトルの第2範囲R2では、電池内部での異常な反応モードの発生が示唆される。このため、網掛けした第1範囲R1に対応する温度及び電流値条件で二次電池210をできるだけ使用しないように二次電池210の電流値及び温度を制御することで、電池異常の発生を抑制できると考えられる。
【0103】
更に本開示の効果を検証するために、図9で網掛けした緩和スペクトルに対応する温度及び電流値条件での使用を避けて制御した場合(条件1。実施例)と、当該温度及び電流値条件で重点的に二次電池を使用し続けるように制御した場合(条件2。比較例)とで、電池異常が生じるか否かを検証した。検証では、条件1及び条件2で約4か月間使用し続けた二次電池210を解体し、二次電池210の電極上に異常が生じているかを調査した。
【0104】
図13は、条件1(実施例)で使用した二次電池210(図1)の電極50の表面を撮影した写真である。図13に示すように、電極50の表面は一様な外観を呈しており、電極50の表面に異常は確認されなかった。
【0105】
図14は、条件2(比較例)で使用した二次電池210(図1)の電極50の表面を撮影した写真である。図14に示すように、電極50の表面にリチウム析出異常が生じた帯状の析出部位51が確認された。従って、本開示の決定システム100によれば、電池異常の発生を抑制できることが確認された。
【0106】
別の比較例として、上記特許文献1に記載の交流インピーダンス法による手法も行った。しかし、二次電池210の電流値及び電圧値の時系列データを測定することが不可能だった。この理由は、上記図11及び図12の結果を取得するため、最大100A程度の大電流が二次210に印加されるが、交流電流値の印加時に電圧値が過電圧値に達してしまい測定できなかったためである。このように、上記図11及び図12に示す結果は、直流電流値及び直流電圧値を使用することで初めて取得可能なものであり、本開示が特許文献1に記載の発明よりも有意であることがわかる。
【0107】
次に、別の評価として、二次電池210の劣化を抑制して二次電池210を長寿命に使用可能にする制御方法として本開示が有効である点を検証した。検証では、上記図11及び図12で決定した条件1及び条件2に沿って二次電池210を使用し、使用後の劣化状態を比較した。具体的には、約4か月の使用後、各二次電池210の電池容量及び内部抵抗がそれぞれ新品時からどの程度劣化したかを測定した。
【0108】
図15は、条件1(実施例)で使用した二次電池210と条件2(比較例)で使用した二次電池210との電池容量の違いを示す検証結果である。図15及び後記図16では、新品(未劣化)の二次電池210における電池容量及び内部抵抗をそれぞれ100%としたときの相対的な値を示した。また、図15及び後記図16では、棒グラフの上に記載されている数値は、当該数値の下部に記載の棒グラフを作成するための根拠となった数値である。図15において、縦軸は容量維持率(%)である。
【0109】
図15に示すように、条件1(実施例)では、約4か月の使用後においても、電池容量がわずかに低下したに過ぎなかった(95.6%)。一方で、条件2(比較例)では、約4か月の使用により電池容量が大きく低下し、電池容量は、新品の二次電池210における電池容量の約75%に迄低下した(75.1%)。このように、条件1の制御を行うことで、二次電池210の劣化による電池容量の低下を抑制できることがわかった。
【0110】
図16は、条件1(実施例)で使用した二次電池210と条件2(比較例)で使用した二次電池210との内部抵抗の違いを示す検証結果である。図16において、縦軸は抵抗維持率(%)である。
【0111】
図16に示すように、条件1(実施例)では、約4か月の使用後においても、内部抵抗がわずかに上昇したに過ぎなかった(107.4%)。一方で、条件2(比較例)では、約4か月の使用により内部抵抗が著しく上昇し、内部抵抗は、新品の二次電池210における内部抵抗の約1.9倍に迄増加した(187.1%)。このように、条件1の制御を行うことで、二次電池210の劣化による内部抵抗の上昇を抑制できることがわかった。
【0112】
上記図15及び図16に示すように、決定システム100を用いることで、電池容量の著しい低下及び内部抵抗の著しい増大を避けるような充放電を実行できる。これにより、本開示が二次電池210の劣化抑制に有効であり、二次電池210の長寿命化を達成できる。
【符号の説明】
【0113】
100 決定システム
11 計測部
12 記録部
13 付与部
14 分類部
15 算出部
16 決定部
17 制御部
18 更新部
200 緩和スペクトル
201 ピーク
202 ピーク
210 二次電池
211 単位二次電池
300 電池システム
S11 計測ステップ
S12 記録ステップ
S13 付与ステップ
S14 分類ステップ
S15 算出ステップ
S16 決定ステップ
S17 制御ステップ
図1
図2
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図5
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