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特開2024-179196アライメント方法および外観検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179196
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】アライメント方法および外観検査方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/00 20210101AFI20241219BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G02B7/00 A
G01M11/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097849
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】三浦 広平
(72)【発明者】
【氏名】古谷 祥雄
(72)【発明者】
【氏名】仁坂 健一
【テーマコード(参考)】
2G086
2H043
【Fターム(参考)】
2G086FF05
2H043AD04
2H043AD13
2H043AD19
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、被検レンズの傾斜角を適切に調整することができる技術を提供する。
【解決手段】アライメント方法は、被検レンズ9に第1照明41から出射された第1スポット光411を照射する工程と、被検レンズ9で反射した第1スポット光411の第1反射光413を、Z軸カメラ21で撮像した第1画像M1を取得する工程と、Z軸カメラ21によって得られた画像における第1反射光413の位置を用いて、被検レンズ9の、Z軸カメラ21の撮像軸211と交差するX軸まわりの傾斜角Rxを調整する工程と、を含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検レンズのアライメント方法であって、
a) 被検レンズに第1照明から出射された第1スポット光を照射する工程と、
b) 前記被検レンズで反射した前記第1スポット光の第1反射光を、第1カメラで撮像した画像を取得する工程と、
c) 前記第1カメラによって得られた画像における前記第1反射光の位置を用いて、前記被検レンズの、前記第1カメラの撮像軸と交差する第1軸まわりの傾斜角を調整する工程と、
を含む、アライメント方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアライメント方法であって、
前記工程b)は、前記撮像軸と、前記被検レンズの中心と、前記第1スポット光と、前記第1軸とが同一平面上に位置する状態で、前記第1カメラが前記第1反射光を撮像する工程を含み、
前記工程c)は、前記被検レンズの前記第1軸まわりの傾斜角を調整する工程を含む、アライメント方法。
【請求項3】
請求項2に記載のアライメント方法であって、
前記工程a)は、
a1) 前記被検レンズの、前記第1軸まわりの角度を第1角度とした状態で、前記被検レンズに前記第1スポット光を照射する工程と、
a2) 前記被検レンズの、前記第1軸まわりの角度を第2角度とした状態で、前記被検レンズに前記第1スポット光を照射する工程と、
を含み、
前記工程b)は、
b1) 前記第1角度の前記被検レンズで反射した前記第1反射光を、前記第1カメラで撮像した第1画像を取得する工程と、
b2) 前記第2角度の前記被検レンズで反射した前記第1反射光を、前記第1カメラで撮像した第2画像を取得する工程と、
を含み、
前記工程c)は、
前記第1画像における前記第1反射光の位置、および、前記第2画像における前記第1反射光の位置を用いて、前記被検レンズの前記第1軸まわりの傾斜角を調整する工程を含む、アライメント方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のアライメント方法であって、
前記工程b)は、前記撮像軸と、前記被検レンズの中心と、前記第1スポット光と、前記撮像軸および前記第1軸と交差する第2軸とが同一平面上に位置する状態で、前記第1カメラが前記第1反射光を撮像する工程を含み、
前記工程c)は、前記被検レンズの前記第2軸まわりの傾斜角を調整する工程を含む、アライメント方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のアライメント方法であって、
d) 前記被検レンズに第2照明から出射された第2スポット光を照射する工程と、
e) 前記被検レンズで反射した前記第2スポット光の第2反射光を、前記第1カメラで撮像した画像を取得する工程と、
をさらに含み、
前記工程c)は、
前記第1カメラによって得られた画像における、前記第1反射光の位置、および、前記第2反射光の位置を用いて、前記被検レンズの前記傾斜角を調整する工程を含む、アライメント方法。
【請求項6】
請求項5に記載のアライメント方法であって、
f) 前記撮像軸および前記第1軸と交差する第2軸まわりにおける前記被検レンズの角度が適正角度であるときの、前記第1反射光および前記第2反射光の適正位置関係を取得する工程、
をさらに含み、
前記工程c)は、前記第1カメラによって得られた画像における前記第1反射光の位置、および、前記第2反射光の位置と、前記適正位置関係とを用いて、前記第2軸まわりの前記被検レンズの角度を調整する、アライメント方法。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載のアライメント方法であって、
g) 第2カメラによって前記被検レンズを撮像した画像において、前記被検レンズのエッジを抽出する工程と、
h) 抽出された前記エッジの傾きを用いて、前記被検レンズの前記第1軸と交差する第2軸まわりの傾斜角を調整する工程と、
をさらに含む、アライメント方法。
【請求項8】
外観検査方法であって、
A) 請求項1または請求項2のアライメント方法によってアライメントされた前記被検レンズを、カメラで撮像する工程と、
B) 前記カメラにより得られた画像に基づいて、前記被検レンズの外観を検査する工程と、
を含む、外観検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、アライメント方法および外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検レンズをカメラで撮像し、得られた画像に基づいて、被検レンズの外観検査をする外観検査装置が知られている。この種の外観検査装置では、被検レンズが検査に適した姿勢となるように、検査前に被検レンズの位置合わせ(アライメント)が行われる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、被検レンズの位置、回転角度および傾斜角を調整するため、変位センサ(レーザ変位計)を用いてレンズ固定用具の水平位置が検出されるとともに、オートコリメータを用いてレンズ固定用具の傾きが検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-026968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術の場合、検査用の第1カメラ以外に対象物の位置、回転角度および傾斜角度を測定するための装置を設ける必要があるため、装置が複雑化してしまう。この場合、装置コストが増大してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構成で、被検レンズの傾斜角を適切に調整することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1態様は、被検レンズのアライメント方法であって、a)被検レンズに第1照明から出射された第1スポット光を照射する工程と、b)前記被検レンズで反射した前記第1スポット光の第1反射光を、第1カメラで撮像した画像を取得する工程と、c)前記第1カメラによって得られた画像における前記第1反射光の位置を用いて、前記被検レンズの、前記第1カメラの撮像軸と交差する第1軸まわりの傾斜角を調整する工程と、を含む。
【0008】
第2態様は、第1態様に記載のアライメント方法であって、前記工程b)は、前記撮像軸と、前記被検レンズの中心と、前記スポット光と、前記第1軸とが同一平面上に位置する状態で、前記第1カメラが前記第1反射光を撮像する工程を含み、前記工程c)は、前記被検レンズの前記第1軸まわりの傾斜角を調整する工程を含む。
【0009】
第3態様は、第2態様に記載のアライメント方法であって、前記工程a)は、a1)前記被検レンズの、前記第1軸まわりの角度を第1角度とした状態で、前記被検レンズに前記第1スポット光を照射する工程と、a2)前記被検レンズの、前記第1軸まわりの角度を第2角度とした状態で、前記被検レンズに前記第1スポット光を照射する工程と、を含み、前記工程b)は、b1)前記第1角度の前記被検レンズで反射した前記第1反射光を、前記第1カメラで撮像した第1画像を取得する工程と、b2)前記第2角度の前記被検レンズで反射した前記第1反射光を、前記第1カメラで撮像した第2画像を取得する工程と、を含み、前記工程c)は、前記第1画像における前記第1反射光の位置、および、前記第2画像における前記第1反射光の位置を用いて、前記被検レンズの前記第1軸まわりの傾斜角を調整する工程を含む。
【0010】
第4態様は、第1態様または第2態様に記載のアライメント方法であって、前記工程b)は、前記撮像軸と、前記被検レンズの中心と、前記第1スポット光と、前記撮像軸および前記第1軸と交差する第2軸とが同一平面上に位置する状態で、前記第1カメラが前記第1反射光を撮像する工程を含み、前記工程c)は、前記被検レンズの前記第2軸まわりの傾斜角を調整する工程を含む。
【0011】
第5態様は、第1態様または第2態様に記載のアライメント方法であって、d)前記被検レンズに第2照明から出射された第2スポット光を照射する工程と、e)前記被検レンズで反射した前記第2スポット光の第2反射光を、前記第1カメラで撮像した画像を取得する工程と、をさらに含み、前記工程c)は、前記第1カメラによって得られた画像における、前記第1反射光の位置、および、前記第2反射光の位置を用いて、前記被検レンズの前記傾斜角を調整する工程を含む。
【0012】
第6態様は、第5態様に記載のアライメント方法であって、f)前記撮像軸および前記第1軸と交差する第2軸まわりにおける前記被検レンズの角度が適正角度であるときの、前記第1反射光および前記第2反射光の適正位置関係を取得する工程、をさらに含み、前記工程c)は、前記第1カメラによって得られた画像における前記第1反射光の位置、および、前記第2反射光の位置と、前記適正位置関係とを用いて、前記第2軸まわりの前記被検レンズの角度を調整する。
【0013】
第7態様は、第1態様または第2態様に記載のアライメント方法であって、g)第2カメラによって前記被検レンズを撮像した画像において、前記被検レンズのエッジを抽出する工程と、h)抽出された前記エッジの傾きを用いて、前記被検レンズの前記第1軸と交差する第2軸まわりの傾斜角を調整する工程と、をさらに含む。
【0014】
第8態様は、外観検査方法であって、A)第1態様または第2態様のアライメント方法によってアライメントされた前記被検レンズを、カメラで撮像する工程と、B)前記工程A)により得られた画像に基づいて、前記被検レンズの外観を検査する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0015】
第1態様から第7態様のアライメント方法によれば、スポット光の反射光の位置から、調整するべき角度を算出できる。これにより、比較的簡単な構成で、被検レンズの傾斜角を調整できる。
【0016】
第4態様のアライメント方法によれば、第1角度から第2角度への角度移動量と、第1画像および第2画像間における第1反射光の座標移動量との関係から、調整するべき傾斜角を算出できる。このため、被検レンズの第1軸まわりの傾斜角を適切に調整できる。
【0017】
第5態様のアライメント方法によれば、2つのスポット光の反射光の位置から、調整するべき第1軸まわりの角度を算出できる。これにより、比較的簡単な構成で、被検レンズの傾斜角を調整できる。
【0018】
第6態様のアライメント方法によれば、第1カメラの画像における、第1反射光および第2反射光が適正位置関係となるように第2軸まわりの角度を調整することによって、第2軸まわりの被検レンズの傾斜角を適正な角度に調整できる。
【0019】
第7態様のアライメント方法によれば、エッジ抽出に基づくアライメントを組み合わせることにより、アライメント時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る外観検査装置の構成を示す図である。
図2図1に示される制御部の構成を示す図である。
図3】第1スポット光が照射されている被検レンズをZ軸カメラが撮像した画像を示す図である。
図4】第1実施形態に係るアライメント方法を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係るアライメント方法を示すフローチャートである。
図6図4に示される撮像ステップによって取得された第1画像を示す図である。
図7図4に示される撮像ステップによって取得された第2画像を示す図である。
図8図5に示される撮像ステップによって取得された第3画像を示す図である。
図9図5に示される撮像ステップによって取得された第4画像を示す図である。
図10】第2実施形態に係る外観検査装置の構成を示す図である。
図11図10に示される制御部の構成を示す図である。
図12】第1スポット光および第2スポット光が照射されている被検レンズをZ軸カメラが撮像した画像を示す図である。
図13】第2実施形態に係るアライメント方法を示すフローチャートである。
図14】第2実施形態に係るアライメント方法を示すフローチャートである。
図15図13に示される撮像ステップによって取得された第5画像を示す図である。
図16図13に示される撮像ステップによって取得された第6画像を示す図である。
図17図13に示される撮像ステップによって取得された第7画像を示す図である。
図18図13に示される撮像ステップによって取得された第8画像を示す図である。
図19】Y軸カメラによって撮像された被検レンズの画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。図1おいては、説明の便宜上、互いに交差する、好ましくは互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が定義されている。Z軸は、鉛直方向に延びる軸であり、X軸およびY軸は、水平方向に延びる軸である。
【0022】
<1. 第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る外観検査装置1の構成を示す図である。外観検査装置1は、検査対象物である被検レンズ9を、カメラによって得られる画像に基づいて検査する装置である。被検レンズ9は、眼内レンズやコンタクトレンズなど、人体に装着されて使用されるレンズである。ただし、被検レンズ9は、光学機器等に用いられるレンズであってもよい。
【0023】
図1に示されるように、外観検査装置1は、支持部10と、Z軸カメラ21(第1カメラ)と、X軸カメラ22と、Y軸カメラ23(第2カメラ)と、移動機構部30と、第1照明41と、制御部50とを備える。
【0024】
支持部10は、被検レンズ9を支持する。支持部10は、複数(本例では、3個)の支持具11を有する。複数の支持具11は、Z軸まわりの周方向において、互いに離れた位置で、被検レンズ9を下側(-Z側)からそれぞれ支持する。支持部10は、被検レンズ9の主面(最も大きな面)が+Z側を向くように、被検レンズ9を支持する。なお、支持具11の数は、3個に限定されるものではない。
【0025】
Z軸カメラ21、X軸カメラ22およびY軸カメラ23は、支持部10に支持された被検レンズ9を撮像する。Z軸カメラ21、X軸カメラ22およびY軸カメラ23は、CCD(Charge-Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などにより構成されたイメージセンサを有する。
【0026】
Z軸カメラ21は、支持部10に支持された被検レンズ9に対して、Z軸方向に離れて位置する。Z軸カメラ21の撮像軸211(カメラの画角を二等分する仮想直線)は、Z軸方向に延びている。Z軸カメラ21は、支持部10に支持された被検レンズ9の主面を撮像する。
【0027】
X軸カメラ22は、支持部10に支持された被検レンズ9に対して、X軸方向に離れて位置する。X軸カメラ22の撮像軸221は、X軸方向に延びている。X軸カメラ22は、支持部10に支持された被検レンズ9の側面(X側面)を撮像する。
【0028】
Y軸カメラ23は、支持部10に支持された被検レンズ9に対して、Y軸方向に離れて位置する。Y軸カメラ23の撮像軸231は、Y軸方向に延びている。Y軸カメラ23は、支持部10に支持された被検レンズ9の側面(Y側面)を撮像する。
【0029】
移動機構部30は、支持部10を平行移動または回転移動させる機構である。移動機構部30は、Xステージ311と、Yステージ313とを有する。Xステージ311は、支持部10をX軸方向に移動させる。Yステージ313は、支持部10をY軸方向に移動させる。Xステージ311およびYステージ313は、例えば、ボールネジ機構またはリニアモータ機構などの直動駆動機構により構成される。
【0030】
なお、Xステージ311またはYステージ313は、Z軸カメラ21側に接続されていてもよい。すなわち、Xステージ311またはYステージ313は、支持部10に対してZ軸カメラ21をX軸方向またはY軸方向に移動させてもよい。
【0031】
移動機構部30は、さらに、Rxステージ321と、Ryステージ323と、Rzステージ325とを有する。Rxステージ321は、支持部10をX軸(第1軸)まわりに回転させる。Ryステージ323は、支持部10をY軸(第2軸)まわりに回転させる。Rzステージ325は、支持部10をZ軸まわりに回転させる。Rxステージ321、Ryステージ323およびRzステージ325は、モータなどの回転駆動機構により構成される。
【0032】
第1照明41は、支持具11に対して+Z側に位置する。第1照明41は、被検レンズ9に対して照射範囲がスポット状となる第1スポット光411を出射する。第1スポット光411の照射範囲は、少なくとも被検レンズ9の主面よりも小さく、その大きさ(スポット径)は、好ましくは、10mm以下、より好ましくは5mm以下である。第1照明41には、例えば、LEDモジュールやレーザポインタなどが用いられる。後述するように、被検レンズ9において反射した第1スポット光411の反射光(第1反射光413)は、Z軸カメラ21により撮像される。
【0033】
図2は、図1に示される制御部50の構成を示す図である。制御部50は、処理部51と、記憶部53とを備える。処理部51は、CPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphical Processing Unit)を含むプロセッサにより構成されている。記憶部53は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、またはハードディスクドライブなどの補助機構装置により構成されている。処理部51は、Z軸カメラ21、X軸カメラ22、Y軸カメラ23、移動機構部30、第1照明41および記憶部53と電気的に接続されている。処理部51は、Z軸カメラ21、X軸カメラ22、Y軸カメラ23によって撮像された画像データを受信する。処理部51は、移動機構部30および第1照明41を制御する。
【0034】
記憶部53は、プログラムPを記憶している。処理部51は、記憶部53に記憶されたプログラムPを実行することによって、アライメント部511および検査部513として機能する。アライメント部511は、Z軸カメラ21によって取得される画像に基づいて、X軸まわりの被検レンズ9の傾斜角Rx、および、Y軸まわりの被検レンズ9の傾斜角Ryを適正角度に調整する。
【0035】
図3は、第1スポット光411が照射されている被検レンズ9をZ軸カメラ21が撮像した画像M01を示す図である。画像M01に出現する第1スポット光411の第1反射光413の位置(座標)は、被検レンズ9の傾斜角Rx,Ryにより変動し得る。本実施形態では、第1反射光413の座標を、傾斜角Rx、Ryが適正なときの第1反射光413の座標(以下、「適正座標」と称する。)と一致させることで、被検レンズ9の傾斜角Rx,Ryを適正角度に調整する。本実施形態では、第1反射光413の適正座標は、被検レンズ9の光学中心CP1の座標と一致するように、第1スポット光411の照射位置および照射角度が調整される。
【0036】
図2に戻って、検査部513は、アライメント部511によってアライメントが実行された被検レンズ9を、Z軸カメラ21、X軸カメラ22およびY軸カメラ23によって撮像した画像を用いて、被検レンズ9の外観検査(欠陥検出など)を行う。
【0037】
記憶部53は、撮像条件データCD1を記憶している。撮像条件データCD1は、第1反射光413をZ軸カメラ21で撮像するための撮像条件を規定している。撮像条件は、例えば、露光時間を含む。また、撮像条件は、被検レンズ9の表裏面の形状(凸状、凹状、平面状など)または曲率などに応じて予め設定されている。撮像条件は、予め様々な形状の被検レンズ9を用いた実験、あるいは、シミュレーションを実行することによって規定される。アライメント部511は、アライメントを実行する前に、被検レンズ9の表面形状の入力を受け付け、そして、入力された表面形状に対応する、撮像条件データCD1に規定された撮像条件にしたがってZ軸カメラ21を制御する。
【0038】
被検レンズ9に対して、第1スポット光411を照射した場合、第1スポット光411の反射光として、被検レンズ9の表面または裏面で1回反射した場合の反射光と、裏面、表面、裏面と3回反射した反射光と、5回以上の奇数回反射した反射光とが出現し得る。反射回数が増えると、反射率の影響で明るさが減衰していく。このため、目的の反射光を適切に検出できるように、露光時間が設定される。
【0039】
<アライメント方法>
図4および図5は、第1実施形態に係るアライメント方法を示すフローチャートである。図4および図5に示されるフローにより、被検レンズ9の傾斜角Rx,Ryが適正角度に調整される。図4および図5に示されるフローは、特に断らない限り、処理部51のアライメント部511の制御下で実行されるものとする。ただし、アライメント方法の少なくとも一部は、人が制御部50に対して指令を入力することによって行われてもよい。
【0040】
アライメント方法が開始されると、アライメント部511は、被検レンズ9を予め設定されたX軸方向およびY軸方向における各位置に移動させる(図4:アライメントステップS1)。具体的には、支持部10に支持されている被検レンズ9をZ軸カメラ21で撮像し、得られた画像を用いて、被検レンズ9のX軸方向およびY軸方向の各位置が特定される。そして、アライメント部511は、被検レンズ9が特定された各位置から適正位置に移動するように、Xステージ311およびYステージ313を制御する。アライメントステップS1では、被検レンズ9の光学中心CP1がZ軸カメラ21の撮像軸211上に位置するように、被検レンズ9が移動される。
【0041】
続いて、アライメント部511は、Rzステージ325を制御して、Z軸カメラ21の撮像軸211、被検レンズ9の光学中心CP1、第1スポット光411の中心、および、Rxステージ321の軸(X軸)が、同一平面上に位置するように、被検レンズ9をZ軸まわりに回転させる(図4:Z軸回転ステップS2)。
【0042】
続いて、アライメント部511は、Rxステージ321を制御して、被検レンズ9を所定の角度Rx(1)[deg]まで回転させる(図4:X軸回転ステップS3)。そして、アライメント部511は、第1照明41を点灯させた状態で、被検レンズ9で反射した第1スポット光411の第1反射光413をZ軸カメラ21で撮像する(図4:撮像ステップS4)。撮像ステップS4により、第1画像M1が取得される。
【0043】
図6は、図4に示される撮像ステップS4によって取得された第1画像M1を示す図である。図6において、横軸(水平軸)はX軸に対応し、縦軸(垂直軸)はY軸に対応している。図6に示されるように、Z軸カメラ21の画像において、第1反射光413が光学中心CP1からX軸方向に離れた位置に出現するように、第1スポット光411の照射位置が設定されている。
【0044】
図4に戻り、撮像ステップS4の後、アライメント部511は、Rxステージ321を制御して、被検レンズ9を角度Rx(2)[deg]まで回転させる(図4:X軸回転ステップS5)。そして、アライメント部511は、第1照明41のみを点灯させた状態で、被検レンズ9で反射した第1スポット光411の第1反射光413をZ軸カメラ21で撮像する(図4:撮像ステップS6)。撮像ステップS6により、第2画像M2が取得される。
【0045】
図7は、図4に示される撮像ステップS6によって取得された第2画像M2を示す図である。図7において、横軸(水平軸)はX軸に対応し、縦軸(垂直軸)はY軸に対応している。図7に示されるように、被検レンズ9がX軸(破線L1)まわりに角度Rx(1)から角度Rx(2)まで回転することで、第1反射光413が破線で示された位置からY軸方向に移動する。
【0046】
図4に戻って、撮像ステップS6の後、アライメント部511は、撮像ステップS4,S6によって得られた第1画像M1および第2画像M2を用いて、光学中心CP1のY軸方向の座標(以下、「Y座標」と称する。)をゼロ(原点)としたときの、第1反射光413のY座標y(1),y(2)を取得する(図4:Y座標取得ステップS7)。
【0047】
例えば、図6に示される第1画像M1において、第1反射光413のY座標を検出する場合、まず、画像認識により第1反射光413が検出され、その中心位置が算出される。そして、Y軸方向における光学中心CP1から第1反射光413の中心位置までの距離が算出されることにより、Y座標y(1)[pix]が取得される。図7に示される第2画像M2についても、第1画像M1と同様に、Y軸方向における光学中心CP1から第1反射光413の中心位置までの距離が算出されることにより、第1反射光413のY座標y(2)[pix]が取得される。
【0048】
図4に戻って、Y座標y(1),y(2)が取得された後、アライメント部511は、単位座標移動量あたりの角度移動量dRx/dy[deg/pix]を算出する(図4:算出ステップS8)。単位座標移動量あたりの角度移動量dRx/dyは、第1反射光413をY軸方向に1ピクセル移動させるために必要なX軸まわりの回転角度に相当する。座標移動量dyおよび角度移動量dRxは、次式(1),(2)で表される。
【0049】
式(1) dy=y(2)-y(1)[pix]
式(2) dRx=Rx(2)-Rx(1)[deg]
【0050】
続いて、アライメント部511は、第1反射光413の現在のY座標y(2)を、傾斜角Rxの適正角度に対応する適正Y座標y(3)に移動させるために必要な回転角度θxを算出する(図4:回転角度算出ステップS9)。回転角度θxは、次式(3)で表される。
【0051】
式(3) θx=(y(3)-y(2))×(dRx/dy)[deg]
【0052】
適正Y座標y(3)は、具体的には、光学中心CP1のY座標(=0)である。このため、上記式(3)にy(3)=0を代入することによって、回転角度θxが算出される。
【0053】
回転角度θxが算出された後、アライメント部511は、Rxステージ321を制御して、被検レンズ9を回転角度θxだけ回転させる(図4:X軸回転ステップS10)。これにより、Z軸カメラ21の画像上で、第1反射光413のY座標が適正座標(ゼロ)となる。すなわち、被検レンズ9の傾斜角Rxが適正角度に調整される。
【0054】
続いて、アライメント部511は、被検レンズ9の傾斜角Ryを適正角度に調整する。具体的には、図5に示されるように、アライメント部511は、Rzステージ325を制御して、Z軸カメラ21の撮像軸211、被検レンズ9の光学中心CP1、第1スポット光411の中心、および、Ryステージ321の軸(Y軸)が、同一平面上に位置するように、被検レンズ9をZ軸まわりに回転させる(図5:Z軸回転ステップS11)。
【0055】
続いて、アライメント部511は、Ryステージ323を制御して、被検レンズ9を所定の角度Ry(1)[deg]まで回転させる(図5:Y軸回転ステップS12)。そして、アライメント部511は、第1照明41を点灯させた状態で、被検レンズ9にて反射した第1スポット光411の第1反射光413をZ軸カメラ21によって撮像する(図5:撮像ステップS13)。撮像ステップS13により、第3画像M3が取得される。
【0056】
図8は、図5に示される撮像ステップS13によって取得された第3画像M3を示す図である。図8において、横軸(水平軸)はY軸に対応し、縦軸(垂直軸)はX軸に対応している。図8に示されるように、Z軸カメラ21の画像において、第1反射光413が光学中心CP1からY軸方向に離れた位置に出現するように、第1スポット光411の照射位置が設定されている。
【0057】
続いて、アライメント部511は、Ryステージ323を制御して、被検レンズ9を所定の角度Ry(2)[deg]まで回転させる(図5:Y軸回転ステップS14)。そして、アライメント部511は、第1照明41を点灯させた状態で、被検レンズ9で反射した第1スポット光411の第1反射光413をZ軸カメラ21によって撮像する(図5:撮像ステップS15)。撮像ステップS15により、第4画像M4が取得される。
【0058】
図9は、図5に示される撮像ステップS15によって取得された第4画像M4を示す図である。図9において、横軸(水平軸)はY軸に対応し、縦軸(垂直軸)はX軸に対応している。図9に示されるように、被検レンズ9がY軸(破線L2)まわりに角度Ry(1)から角度Ry(2)まで回転すると、第1反射光413が破線で示された位置からX軸方向に移動する。
【0059】
アライメント部511は、撮像ステップS13,S15によって取得された第3画像M3および第4画像M4を用いて、光学中心CP1のX軸方向の座標(以下、「X座標」と称する。)をゼロ(原点)としたときの、第1反射光413のX座標x(1),x(2)を取得する(図5:X座標取得ステップS16)。
【0060】
例えば、図8に示される第3画像M3において、第1反射光413のX座標を取得する場合、X軸方向における光学中心CP1から第1反射光413の中心位置までの距離が算出されることによって、X座標x(1)[pix]が取得される。また、図9に示される第4画像M4についても、第3画像M3と同様に、X軸方向における光学中心CP1から第1反射光413の中心位置までの距離が算出されることにより、第1反射光413のX座標x(2)[pix]が取得される。
【0061】
図5に戻って、X座標x(1),x(2)が取得された後、アライメント部511は、単位座標移動量あたりの角度移動量dRy/dx[deg/pix]を算出する(図5:算出ステップS17)。単位座標移動量あたりの角度移動量dRy/dxは、第1反射光413をX軸方向に1ピクセル移動させるために必要なY軸まわりの回転角度に相当する。座標移動量dxおよび角度移動量dRyは、次式(4),(5)で表される。
【0062】
式(4) dx=x(2)-x(1)[pix]
式(5) dRy=Ry(2)-Ry(1)[deg]
【0063】
続いて、アライメント部511は、第1反射光413の現在のX座標x(2)を、適正な傾斜角Ryに対応する適正X座標x(3)に移動させるために必要な回転角度θyを算出する(図5:回転角度算出ステップS18)。回転角度θyは、次式(6)で表される。
【0064】
式(6) θy=(x(3)-x(2))×(dRx/dy)[deg]
【0065】
適正X座標x(3)は、具体的には、光学中心CP1のX座標(=0)である。このため、上記式(6)にx(3)=0を代入することによって、修正角度θyが算出される。
【0066】
修正角度θyが算出されると、アライメント部511は、Ryステージ323を制御して、被検レンズ9を回転角度θyだけ回転させる(図4:回転ステップS19)。これにより、Z軸カメラ21の画像上で、第1反射光413のX座標が適正座標(ゼロ)となる。すなわち、被検レンズ9の傾斜角Ryが適正角度に調整される。
【0067】
以上のように、第1実施形態のアライメント方法によれば、第1スポット光411の第1反射光413の位置から、調整するべきX軸まわりまたはY軸まわりの角度を算出できる。これにより、比較的簡単な構成で、被検レンズの傾斜角Rx,Ryを調整できる。
【0068】
<2. 第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以降の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号又はアルファベット文字を追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0069】
第1実施形態のアライメント方法では、傾斜角Rx,Ryのアライメントを調整するために、Z軸まわりに被検レンズ9を回転させている(Z軸回転ステップS2,S11)。このため、アライメント動作の時間が長くなってしまう。そこで、第2実施形態では、Z軸まわりに被検レンズ9を回転させずに、アライメントを行うことにより、アライメント時間の短縮を図っている。
【0070】
図10は、第2実施形態に係る外観検査装置1Aの構成を示す図である。外観検査装置1Aは、図1に示される外観検査装置1の構成のほか、第2照明42を備える。
【0071】
第2照明42は、支持具11に対して+Z側に位置する。第2照明42は、第1照明41と同様に、被検レンズ9に対して照射範囲がスポット状となる第2スポット光421を出射する。第1照明41および第2照明42は、出射される第1スポット光411の中心および第2スポット光421の中心が互いに同一平面内に位置するように配置されている。被検レンズ9において反射した第2スポット光421の反射光(第2反射光423)は、Z軸カメラ21により撮像される。
【0072】
図11は、図10に示される制御部50の構成を示す図である。図2に示されるように、第2実施形態の処理部51は、第2照明42と電気的に接続されており、第2照明42の点灯を制御する。
【0073】
第2実施形態の記憶部53は、適正位置関係データPD1を記憶している。適正位置関係データPD1は、被検レンズ9の傾斜角Rx,Ryが適正角度にあるときの、Z軸カメラ21の画像における第1反射光413および第2反射光423の位置関係を示す情報である。
【0074】
図12は、第1スポット光411および第2スポット光421が照射されている被検レンズ9をZ軸カメラ21が撮像した画像M02を示す図である。図12に示される画像M02において、横軸(水平軸)はX軸に対応し、縦軸(垂直軸)はY軸に対応している。
【0075】
画像M02に出現する第1スポット光411の第1反射光413および第2スポット光421の第2反射光423の各位置(座標)は、被検レンズ9の傾斜角Rx,Ryにより変動し得る。そこで、被検レンズ9の傾斜角Rxおよび傾斜角Ryが適正角度であるときの、Z軸カメラ21の画像における第1反射光413および第2反射光423の位置関係が、適正位置関係データPD1として予め取得される。具体的には、X軸方向における光学中心CP1から第1反射光413までの距離を「d1」、X軸方向における光学中心CP1から第2反射光423までの距離を「d2」とする。そして、被検レンズ9の傾斜角Rx,Ryが適正角度であるときの、d1に対するd2の比率r(=d2/d1)が、適正位置関係データPD1データとして取得される。
【0076】
<アライメント方法>
図13および図14は、第2実施形態に係るアライメント方法を示すフローチャートである。図13および図14に示されるフローの実行により、被検レンズ9の傾斜角Rx,Ryが適正角度に調整される。図13および図14に示されるフローは、特に断らない限り、処理部51のアライメント部511の制御下で実行されるものとする。ただし、アライメント方法の少なくとも一部は、人が制御部50に対して指令を入力することによって行われてもよい。
【0077】
アライメント方法が開始されると、アライメント部511は、被検レンズ9を予め設定されたX軸方向およびY軸方向における各位置に移動させる(図13:アライメントステップS31)。具体的には、支持部10に支持されている被検レンズ9をZ軸カメラ21で撮像し、得られた画像を用いて、被検レンズ9のX軸方向およびY軸方向の各位置が特定される。そして、アライメント部511は、被検レンズ9が特定された各位置から適正位置に移動するように、Xステージ311およびYステージ313を制御する。アライメントステップS31では、被検レンズ9の光学中心CP1がZ軸カメラ21の撮像軸211上に位置するように、被検レンズ9が移動される。
【0078】
続いて、アライメント部511は、Rxステージ321を制御して、被検レンズ9を所定の角度Rx(1)[deg]まで回転させるとともに、Ryステージ323を制御して、被検レンズ9を所定の角度Ry(1)[deg]まで回転させる(図13:X軸Y軸回転ステップS32)。そして、アライメント部511は、第1照明41を点灯させた状態で、被検レンズ9で反射した第1スポット光411の第1反射光413をZ軸カメラ21で撮像する(図13:撮像ステップS33)。撮像ステップS33により、第5画像M5が取得される。
【0079】
図15は、図13に示される撮像ステップS33によって取得された第5画像M5を示す図である。図13において、横軸(水平軸)はX軸に対応し、縦軸(垂直軸)はY軸に対応している。図15に示されるように、Z軸カメラ21の画像において、第1反射光413が光学中心CP1からX軸方向に離れた位置に出現するように、第1スポット光411の照射位置が設定されている。
【0080】
図13に戻り、撮像ステップS33の後、アライメント部511は、Rxステージ321を制御して、被検レンズ9を角度Rx(2)[deg]まで回転させる(図13:X軸回転ステップS34)。そして、アライメント部511は、第1照明41のみを点灯させた状態で、被検レンズ9で反射した第1スポット光411の第1反射光413をZ軸カメラ21で撮像する(図13:撮像ステップS35)。撮像ステップS35により、第6画像M6が取得される。
【0081】
図16は、図13に示される撮像ステップS35によって取得された第6画像M6を示す図である。図16において、横軸(水平軸)はX軸に対応し、縦軸(垂直軸)はY軸に対応している。被検レンズ9がX軸まわりに角度Rx(1)から角度Rx(2)まで回転することで、図16に示されるように、第1反射光413が破線で示された位置からY軸方向に移動する。
【0082】
図13に戻って、撮像ステップS35の後、アライメント部511は、第1照明41を消灯し、第2照明42のみを点灯させた状態で、被検レンズ9で反射した第2スポット光421の第2反射光423をZ軸カメラ21で撮像する(図13:撮像ステップS36)。撮像ステップS36により、第7画像M7が取得される。
【0083】
図17は、図13に示される撮像ステップS36によって取得された第7画像M7を示す図である。図17において、横軸(水平軸)はX軸に対応し、縦軸(垂直軸)はY軸に対応している。
【0084】
図13に戻って、撮像ステップS36の後、アライメント部511は、Ryステージ323を制御して、被検レンズ9を所定の角度Ry(2)[deg]まで回転させる(図13:Y軸回転ステップS37)。そして、アライメント部511は、第2照明42のみを点灯させた状態で、被検レンズ9で反射した第2スポット光421の第2反射光423をZ軸カメラ21で撮像する(図13:撮像ステップS38)。撮像ステップS38により、第8画像M8が取得される。
【0085】
図18は、図13に示される撮像ステップS38によって取得された第8画像M8を示す図である。図18において、横軸(水平軸)はX軸に対応し、縦軸(垂直軸)はY軸に対応している。被検レンズ9がY軸まわりに角度Ry(1)から角度Ry(2)まで回転することで、図18に示されるように、第1反射光413が破線で示された位置からX軸方向に移動する。
【0086】
撮像ステップS38の後、図14に示されるように、アライメント部511は、撮像ステップS33によって取得された第5画像M5および撮像ステップS35によって取得された第6画像M6を用いて、光学中心CP1のY座標をゼロ(原点)としたときの、第1反射光413のY座標y(1),y(2)を取得する(図14:Y座標取得ステップS39)。
【0087】
例えば、図15に示される第5画像M5において、Y軸方向における光学中心CP1から第1反射光413の中心位置までの距離が算出されることにより、第1反射光413のY座標y(1)[pix]が取得される。図16に示される第6画像M6についても、Y軸方向における光学中心CP1から第1反射光413の中心位置までの距離が算出されることにより、第1反射光413のY座標y(2)[pix]が取得される。
【0088】
図14に戻って、Y座標y(1),y(2)が取得された後、アライメント部511は、単位座標移動量あたりの角度移動量dRx/dy[deg/pix]を算出する(図14:算出ステップS40)。dRx/dyは、第1反射光413をY軸方向に1ピクセル移動させるために必要なX軸まわりの回転角度に相当する。座標移動量dyおよび角度移動量dRxは、上記式(1),(2)で表される。
【0089】
続いて、アライメント部511は、第1反射光413の現在のY座標y(2)を、適正な傾斜角Rxに対応する適正Y座標y(3)に移動させるために必要な回転角度θxを算出する(図14:回転角度算出ステップS41)。回転角度θxは、上記式(3)で表される。
【0090】
適正Y座標y(3)は、具体的には、光学中心CP1のY座標(=0)である。このため、上記式(3)にy(3)=0が代入されることによって、回転角度θxが算出される。
【0091】
回転角度θxが算出されると、アライメント部511は、Rxステージ321を制御して、被検レンズ9を回転角度θxだけ回転させる(図14:回転ステップS42)。これにより、Z軸カメラ21の画像上で、第1反射光413のY座標が適正座標(ゼロ)となる。すなわち、被検レンズ9の傾斜角Rxが適正角度に調整される。
【0092】
続いて、アライメント部511は、被検レンズ9の傾斜角Ryを適正角度に調整する。このため、アライメント部511は、第6画像M6および第7画像M7を用いて、光学中心CP1のX座標をゼロ(原点)としたときの、第1反射光413のX座標x(1)、および、第2反射光423のX座標x(2)を取得する(図14:X座標取得ステップS43)。また、アライメント部511は、第8画像M8を用いて、光学中心CP1のX座標をゼロ(原点)としたときの、第2反射光423のX座標x(3)を取得する(図14:X座標取得ステップS44)。
【0093】
例えば、図16に示される第6画像M6において、X軸方向における光学中心CP1から第1反射光413の中心位置までの距離が算出されることにより、X座標x(1)[pix]が取得される。また、図17に示される第7画像M7において、X軸方向における、光学中心CP1から第2反射光423の中心位置までの距離が算出されることにより、第2反射光423のX座標x(2)[pix]が取得される。さらに、図18に示される第8画像M8において、X軸方向における光学中心CP1から第2反射光423の中心までの距離が算出されることにより、第2反射光423のX座標x(3)[pix]が取得される。
【0094】
図14に戻って、X座標x(1),x(2),x(3)が取得された後、アライメント部511は、dRy/dx[deg/pix](図14:算出ステップS45)。dRy/dxは、第2反射光423をX軸方向に1ピクセル移動させるために必要なY軸まわりの回転角度に相当する。座標移動量dxおよび角度移動量dRyは、次式(7),(8)で表される。
【0095】
式(7) dx=x(3)-x(2)[pix]
式(8) dRy=Ry(2)-Ry(1)[deg]
【0096】
続いて、アライメント部511は、Z軸カメラ21が撮像する画像において第1反射光413と第2反射光423のX軸方向における位置関係を、適正位置関係データPD1が示す適正な位置関係とするために必要な移動量dx(2)を算出する(図14:算出ステップS46)。具体的には、以下の式(9)により、|dx(2)|が求められる。また、X座標x(1)とX座標x(2)の大小関係から、dx(2)の符号が決定される。
【0097】
式(9) (|x(2)|―|dx(2)|)/(|x(1)|-|dx(2)|)=r
【0098】
続いて、アライメント部511は、算出ステップS46によって算出された移動量dx(2)だけ第1反射光413および第2反射光423を移動させるために必要なY軸まわりの回転角度θyを、算出ステップS45によって算出されたdRy/dx(1)を用いて算出する(図14:回転角度算出ステップS47)。回転角度θyは、次式(10)で表される。
【0099】
式(10) θy=dx(2)×dRy/dx(1)[deg]
【0100】
回転角度θyが算出された後、アライメント部511は、Ryステージ323を制御して、被検レンズ9を回転角度θyだけ回転させる(図14:Y軸回転ステップS48)。これにより、Z軸カメラ21の画像上で、第1反射光413および第2反射光423のX軸方向の位置関係が、適正な位置関係に調整される。すなわち、被検レンズ9の傾斜角Ryが適正角度に調整される。
【0101】
以上のように、第2実施形態のアライメント処理によれば、2つのスポット光の反射光の位置から、調整するべき角度を算出できる。これにより、比較的簡単な構成で、被検レンズの傾斜角を調整できる。
【0102】
また、Z軸カメラ21の画像における、第1反射光413および第2反射光423が適正位置関係となるようにY軸まわりの角度を調整することによって、Y軸まわりの被検レンズ9の傾斜角Ryを適正な角度に調整できる。
【0103】
また、第2実施形態のアライメント処理によれば、被検レンズ9をZ軸まわりに回転させることなく、被検レンズ9の傾斜角Rxおよび傾斜角Ryを調整できる。このため、アライメント処理を高速に行うことができる。
【0104】
<3. 第3実施形態>
第1実施形態では、被検レンズ9の傾斜角Rx,Ryの両方を、Z軸カメラ21の画像における第1反射光413の位置に基づいて調整している。また、第2実施形態においても、被検レンズ9の傾斜角Rx,Ryの両方を、Z軸カメラ21の画像における第1反射光413および第2反射光423の位置に基づいて調整している。しかしながら、被検レンズ9の傾斜角Rx,Ryのうち、一方は、反射光の位置に基づかない方法で調整されてもよい。
【0105】
例えば、被検レンズ9の傾斜角Rxの調整については、第1実施形態の図4で説明したフロー、または、第2実施形態の図13および図14で説明したフローを適用してもよい。そして、被検レンズ9の傾斜角Ryの調整については、Y軸カメラ23の画像から被検レンズ9の傾きを算出し、その算出された傾きを用いて調整されてもよい。
【0106】
図19は、Y軸カメラ23によって撮像された被検レンズ9の画像M11を示す図である。図19に示されるように、Y軸カメラ23は、被検レンズ9のY側面を撮像する。このため、画像M11に現れる被検レンズ9の傾きは、被検レンズ9の傾斜角Ryを表している。そこで、被検レンズ9の傾きを検出するため、アライメント部511は、画像M11において、被検レンズ9のエッジE1を抽出する。図19に示される例では、被検レンズ9の下側の縁部がエッジE1として抽出されているが、被検レンズ9の上側の縁部がエッジE1として抽出されてもよい。エッジ抽出には、ソーベルフィルタなどのフィルタを用いることが可能である。アライメント部511は、抽出されたエッジE1の傾きを算出することによって、被検レンズ9の傾斜角Ryを取得する。そして、アライメント部511は、取得された傾斜角Ryを用いて、被検レンズ9の傾斜角Ryを適正角度に調整する。
【0107】
第3実施形態のアライメント方法によれば、エッジ抽出に基づくアライメントを組み合わせることにより、アライメント時間を短縮することができる。特に、被検レンズ9の傾斜角Rxを調整と並行して、傾斜角Ryを調整することによって、アライメント時間をより一層短縮できる。
【0108】
また、被検レンズ9は、レンズ本体の周囲に構造物を有する場合がある。例えば、眼内レンズは、レンズ本体の周囲に、眼内にレンズを固定するための支持部が設けられている場合がある。この場合、X軸カメラ22またはY軸カメラ23の画像において、レンズ本体が構造物に隠れてしまうために、エッジ抽出を適用することが困難な場合が起き得る。これに対して、第1実施形態または第2実施形態のアライメント方法によれば、Z軸カメラ21により被検レンズ9を平面視した画像を用いるため、レンズ本体周囲の構造物に邪魔されずに被検レンズ9の傾斜角を調整できる。したがって、エッジ抽出の適用が可能な傾斜角については、エッジ抽出を適用し、エッジ抽出が困難な傾斜角の調整については、第1実施形態または第2実施形態の方法を適用することによって、アライメントを適切に行いつつ、アライメント時間の短縮を図ることができる。
【0109】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0110】
1 外観検査装置
9 被検レンズ
21 Z軸カメラ(第1カメラ)
22 X軸カメラ(第2カメラ)
23 Y軸カメラ(第2カメラ)
41 第1照明
42 第2照明
211 撮像軸
411 第1スポット光
413 第1反射光
421 第2スポット光
423 第2反射光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19