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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001792
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】H形鋼の接続構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20231227BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
E04B1/58 503G
F16B7/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100677
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】517187751
【氏名又は名称】株式会社テム
(74)【代理人】
【識別番号】100180264
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】大熊 重行
【テーマコード(参考)】
2E125
3J039
【Fターム(参考)】
2E125AB01
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG41
2E125AG43
2E125BB02
2E125BB22
2E125BB24
2E125BE02
2E125CA03
2E125CA14
3J039AA01
3J039BB02
3J039GA04
(57)【要約】
【課題】 トロリーのレールなどに用いられるH形鋼の接続構造であって、接続が簡易であり、かつ、H形鋼のフランジどうしを平坦に接続できるものを提供する。
【解決手段】 2枚のフランジ12a,12b及びそのフランジどうしを繋ぐウェブ13からなるH形鋼10の端面どうしを突き合せて接続するH形鋼の接続構造であって、H形鋼どうしを跨ぎそのウェブを両面から挟んで設けられる一組のジョイント板20a,20bを有し、そのジョイント板は略四角形であって、一辺の端面に調整ボルト用ねじ穴21を複数箇所備え、その調整ボルト用ねじ穴に螺合され、ボルト頭の突出量を調整可能な調整ボルト30を有し、ジョイント板は、2枚のフランジの間に配置され、調整ボルトを設けた端面とは反対側の端面と、調整ボルトのボルト頭と、を2枚のフランジにそれぞれ当接させて位置固定可能な構造であり、かつ、ウェブを貫通する取付ボルト40を用いてウェブに押圧固定される接続構造とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のフランジ及び該フランジどうしを繋ぐウェブからなるH形鋼の端面どうしを突き合せて接続するH形鋼の接続構造であって、
前記H形鋼どうしを跨ぎ前記ウェブを両面から挟んで設けられる一組のジョイント板を有し、
前記ジョイント板は略四角形であって、一辺の端面に調整ボルト用ねじ穴を複数箇所備え、該調整ボルト用ねじ穴に螺合され、ボルト頭の突出量を調整可能な調整ボルトを有し、
前記ジョイント板は、前記2枚のフランジの間に配置され、前記調整ボルトを設けた端面とは反対側の端面と、前記調整ボルトのボルト頭と、を前記2枚のフランジにそれぞれ当接させて位置固定可能な構造であり、かつ、前記ウェブを貫通する取付ボルトを用いて前記ウェブに押圧固定されることを特徴とするH形鋼の接続構造。
【請求項2】
前記ウェブを挟む一方の前記ジョイント板に皿穴、相対する他方の前記ジョイント板に取付ボルト用ねじ穴、をそれぞれ備え、前記ウェブを貫通する取付ボルトが皿ボルトであって、前記皿ボルトは前記皿穴から前記ウェブを貫通して前記取付ボルト用ねじ穴で螺合されることを特徴とする請求項1に記載のH形鋼の接続構造。
【請求項3】
前記ウェブが平行に2本設けられていることを特徴とする請求項1に記載のH形鋼の接続構造。
【請求項4】
前記調整用ボルトのボルト頭の角部が切り欠かれており、さらに、前記フランジに当接する前記ジョイント板の端面の前記ウェブ側の角部が切り欠かれていることを特徴とする前記H形鋼の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場に設置されるトロリーのレールなどに用いられるH形鋼の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設現場において、資材などを吊るためにトロリーを使用することがある。そのとき、アルミ製のH形鋼などを用いてトロリー用のレールが組み立てられる。図6は、H形鋼をレールとしたトロリーの参考図である。H形鋼10は、フランジを上下に配し、上フランジの上面にトロリー100の車輪が載るように設置される。レールに用いられるH形鋼10は現場にて接続されるので、できればH形鋼どうしの接続作業を減らすために、H形鋼10を長くしたいところであるが、そうするとH形鋼10の運搬や設置が困難になるので、あまり長くすることはできない。そこで、H形鋼10の接続部分は、トロリー100を使用できる程度の強度を備えつつ、できるだけ簡易なものにするのが望ましい。
【0003】
また、H形鋼10をレールとしてトロリーが通過するためには、接続されたH形鋼のフランジ12aの上面が平坦になっている必要がある。従って、一般的なH形鋼の接続構造のように、突き合せたフランジどうしを跨いで添え板を当て、ボルト固定するような接続構造は避ける必要がある。
【0004】
図7は、フランジの突出を無くした継手構造の例である(特許文献1参照)。この継手構造は、フランジ12a、12bからの突出を無くしたものであり、ウェブ13だけを繋ぐものである。しかし、この継手構造は、そもそも構造部材の継手であるため、コの字型の添え板80を溶接81や高力ボルト82で強固にH形鋼に固定しており、接続構造が簡易であるとは言えない。また、建設現場に設置されるトロリーのレールに用いられるH形鋼は、アルミ製であったり断面が小さかったりして、構造部材に用いられるH形鋼10cよりも比較的強度が低く、また、何度も使用するために、歪みを有している場合もあって、ウェブに対してフランジが傾いていることもある。したがって、特許文献1に記載の継手構造をトロリー用のレール接続に用いようとすると、フランジの間に添え板80が入らなかったりして、接続が難しい場面が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-145717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
斯かる事情に鑑み、本発明は、建設現場においてトロリーのレールなどに用いられるH形鋼の接続構造に関し、接続が簡易であり、かつ、H形鋼のフランジどうしを平坦に接続できるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るH形鋼の接続構造は、2枚のフランジ及びそのフランジどうしを繋ぐウェブからなるH形鋼の端面どうしを突き合せて接続するH形鋼の接続構造であって、H形鋼どうしを跨ぎそのウェブを両面から挟んで設けられる一組のジョイント板を有し、そのジョイント板は略四角形であって、一辺の端面に調整ボルト用ねじ穴を複数箇所備え、その調整ボルト用ねじ穴に螺合され、ボルト頭の突出量を調整可能な調整ボルトを有し、ジョイント板は、2枚のフランジの間に配置され、その調整ボルトを設けた端面とは反対側の端面と、調整ボルトのボルト頭と、を2枚のフランジにそれぞれ当接させて位置固定可能な構造であり、かつ、ウェブを貫通する取付ボルトを用いてウェブに押圧固定されることを特徴とするものである。
【0008】
ここで、ウェブを挟む一方のジョイント板に皿穴、相対する他方のジョイント板に取付ボルト用ねじ穴、をそれぞれ備え、ウェブを貫通する取付ボルトが皿ボルトであって、その皿ボルトは前記皿穴からウェブを貫通して前記取付ボルト用ねじ穴で螺合されることにしてもよい。また、H形鋼は、ウェブが平行に2本設けられているものであってもよい。また、調整用ボルトのボルト頭の角部が切り欠かれており、さらに、フランジに当接するジョイント板の端面のウェブ側の角部が切り欠かれていることにするとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、H形鋼どうしの接続を簡易に行うことができるという効果を奏する。また、ジョイント板は、2枚のフランジの間に配置され、一辺の端面と調整ボルトとをそれぞれフランジに当接させて位置固定可能であることから、H形鋼どうしの接続を強固かつ簡易に行うことができ、また、接続したH形鋼のフランジの平坦性を保つことにも寄与する。
【0010】
さらに、ジョイント板の端面や調整ボルトのボルト頭に切欠を設けることで、H形鋼のフランジとウェブの接続部分が、ジョイント板や調整ボルトと干渉することを避けることができるので、ジョイント板をフランジやウェブにしっかりと当接させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】H形鋼の斜視図及び断面図であって、(a)はウェブが1本のもの、(b)はウェブが2本のものである。
図2】本発明の接続構造に用いられるジョイント板である。
図3】接続構造の正面図である。
図4】接続構造の断面図である。
図5】ジョイント板及び調整ボルトの切欠を説明する図である。
図6】H形鋼をレールとしたトロリーの参考図である。
図7】フランジの突出を無くした継手構造の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、建設現場のトロリー用のレールなどに用いられるH形鋼の接続構造に関するものである。以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0013】
本発明の接続構造は、同形状のH形鋼の端面どうしを突き合せて接続するものである。図1は、本発明の接続構造を用いるH形鋼の斜視図及び断面図であって、(a)はウェブが1本のもの、(b)はウェブが2本のものである。本発明で接続されるH形鋼のサイズや材質などは様々であり、特に限定しないが、一般的な建設現場において架設されるトロリーのレールに用いられるH形鋼10a,10bは、サイズは100mm×100mm程度であって、材質としてはアルミなどが用いられる。なお、H形鋼は、ロールH、ビルドHのどちらの場合も考えられる。
【0014】
図1(a)は一般的なH形鋼10aであって、相対するフランジ12a,12bの中心どうしをウェブ13で繋いだものである。図1(b)は、ウェブ13が平行に二本設けられたもので、このようなH形鋼10bは、捻じれに強く、フランジ12a,12bの平坦性を保持するのに優れており、トロリーのレールとして用いるのに適している。また、接続に用いられる取付ボルトのボルト貫通孔14がH形鋼10a,10bのウェブ13を貫通している。この実施例では、片側のH形鋼10a,10bに4個ずつ一列にあけられているが、これは例示であり、ボルト貫通孔14の個数や配列は、H形鋼のサイズによって決定すればよい。また、このボルト貫通孔14は、使用するボルトサイズよりも少し大きめの穴径となる。
【0015】
図2は、本発明の接続構造に用いられるジョイント板である。一組のジョイント板20a,20bは、図1のように端面を突き合せたH形鋼どうしを跨ぎ、2枚のフランジ12a,12bの間に配置され、ウェブ13を両面から挟んで取付ボルトを用いてウェブ13に押圧されて設けられる。
【0016】
ジョイント板20a,20bは略四角形であって、一辺の端面に調整ボルト用ねじ穴21を複数箇所備え、その調整ボルト用ねじ穴21に螺合される調整ボルト21を備えている。この調整ボルト21は、回転させることでジョイント板20a,20bの端面からのボルト頭の突出量が調整可能となっている。
【0017】
図3は、接続構造の正面図である。また、図4は、接続構造の断面図である。ジョイント板20a,20bは、調整ボルト21を設けた端面とは反対側の端面と、調整ボルト30のボルト頭と、を2枚のフランジ12a,12bにそれぞれ当接させて位置固定することができる。ここで、調整ボルト30は、ねじを回転させることで、ボルト頭の突出量を調整できるので、ジョイント板20a,20bの一方の端面をフランジ12aに当接させた状態で、調整ボルト30の突出量を調整して、2枚のフランジ12a,12bの間にしっかりと嵌め込んで固定することができる。
【0018】
また、ジョイント板20a,20bをウェブ13に押圧固定するときは、ウェブ13を貫通する取付ボルト40が用いられる。取付ボルト40のサイズや種類などは特に限定しないが、トロリーの邪魔にならないように、M16程度の皿ボルトが好ましく、一方のジョイント板20aに皿穴25、相対する他方のジョイント板20bに取付ボルト用ねじ穴26、をそれぞれ設け、皿穴25とウェブ13にあけられたボルト貫通孔14を貫通させた皿ボルト40を取付ボルト用ねじ穴26に螺合させてボルト締めすることで、ジョイント板20a,20bをウェブ13に押圧固定することができる。なお、取付ボルト40は、トロリーと干渉しなければ、皿穴や取付ボルト用ねじ穴を用いないで、ボルトナットなどを用いる構成でもよい。
【0019】
以上より、ジョイント板20a,20bは、調整ボルト30と取付ボルト40とを使用することで、フランジ12a,12b及びウェブ13のいずれに対してもしっかりと固定されるので、ウェブ13どうしだけを繋いだだけでも接続構造としては強固なものとなる。また、調整ボルト30を用いて、ジョイント板20a,20bの位置決めを行うことができるので、接続作業を簡易に行うことができる。
【0020】
また、トロリーのレールに用いられるH形鋼10aは、あまり強固ではなく、繰り返し使用されることから、形が歪んでいるものがある。例えば、2枚のフランジ12a,12bの間の隙間が、ウェブ13の左右で異なるような場合がある。そのとき、2枚のフランジ20a,20bの間が狭い箇所に本発明に係るジョイント板20a,20bを挿入して、調整ボルト30を回転することで、フランジ20a,20bの間を押し広げることができ、2枚のフランジ20a,20bの間隔が同程度になるように調整することができる。これにより、突き合せたH形鋼どうしのフランジ上面を平坦にすることが可能となる。
【0021】
さらに、H形鋼10a,10bの2枚のフランジ12a,12bとウェブ13との結合部分の角に、溶接の隅肉や圧延による凸部分15が残っている場合に、調整ボルト30のボルト頭やジョイント板20a,20bの端面がその凸部分15と干渉することがある。そうすると、ジョイント板20a,20bが、フランジ12a,12bやウェブ13にぴったりと接触できないという状態になる可能性がある。そこで、ジョイント板20a,20bや調整ボルト30のボルト頭の角部に切欠を入れておくとよい。図5は、ジョイント板及び調整ボルトの切欠を説明する図である。調整用ボルト30のボルト頭の角部に切欠32、さらに、フランジ12a,12bに当接するジョイント板20a,20bの端面のウェブ側の角部にも切欠28を設けておくとよい。切欠28,32は、直線的に角を落とす形状でもよいし、R30程度の曲面であってもよい。
【0022】
以上のようなH形鋼の接続構造を用いることで、現場におけるトロリーのレールを簡易かつ強固に設置することが可能となる。それによって接続箇所が増えても作業が簡易なので、H形鋼を長くする必要が無く、現場におけるH形鋼の運搬や設置の労力を軽減することができる。
【符号の説明】
【0023】
10、10a、10b、10c H形鋼
12a、12b フランジ
13 ウェブ
14 ボルト貫通孔
15 凸部分
20a、20b ジョイント板
21 調整ボルト用ねじ穴
22 ジョイント板の端面
25 皿穴
26 取付ボルト用ねじ穴
28 切欠
30 調整ボルト
31 ボルト頭
32 切欠
40 取付ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7