(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179202
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241219BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241219BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 652T
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
H01L29/78 652J
H01L29/78 653A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097856
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剣
(72)【発明者】
【氏名】稲本 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】上野 勝典
(57)【要約】
【課題】低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量を実現することが可能な窒化物半導体装置を提供する。
【解決手段】窒化物半導体装置は、窒化物半導体と、窒化物半導体に設けられた縦型電界効果トランジスタとを備える。窒化物半導体は、第1導電型の窒化物半導体基板と、窒化物半導体基板上に設けられた窒化物半導体層とを有する。縦型電界効果トランジスタは、第1導電型のドリフト領域を有する。ドリフト領域は、第1ドリフト領域と、第1ドリフト領域よりも第1導電型の不純物濃度が低く、第1ドリフト領域とウェル領域とにそれぞれ接する第2ドリフト領域と、第1ドリフト領域よりも第1導電型の不純物濃度が高く、第1ドリフト領域と窒化物半導体基板とにそれぞれ接する第3ドリフト領域とを有する。第2ドリフト領域と第3ドリフト領域とが向かい合い、第2ドリフト領域と第3ドリフト領域との間の少なくとも一部に第1ドリフト領域が介在する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体と、
前記窒化物半導体に設けられた縦型電界効果トランジスタと、を備え、
前記窒化物半導体は、
第1導電型の窒化物半導体基板と、
前記窒化物半導体基板上に設けられた窒化物半導体層と、を有し、
前記縦型電界効果トランジスタは、
前記窒化物半導体層に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
前記窒化物半導体層に設けられた第2導電型のウェル領域と、を有し、
前記ドリフト領域は、
第1ドリフト領域と、
前記第1ドリフト領域よりも第1導電型の不純物濃度が低く、前記第1ドリフト領域と前記ウェル領域とにそれぞれ接する第2ドリフト領域と、
前記第1ドリフト領域よりも第1導電型の不純物濃度が高く、前記第1ドリフト領域と前記窒化物半導体基板とにそれぞれ接する第3ドリフト領域と、を有し、
前記窒化物半導体の厚さ方向において、前記第2ドリフト領域と前記第3ドリフト領域とが向かい合い、
前記第2ドリフト領域と前記第3ドリフト領域との間の少なくとも一部に前記第1ドリフト領域が介在する、窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記第2ドリフト領域と前記第3ドリフト領域は互いに離れている、請求項1に記載窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記ウェル領域から前記窒化物半導体基板に向かって、前記第2ドリフト領域、前記第1ドリフト領域、前記第3ドリフト領域がこの順で並んでいる、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記厚さ方向と直交する水平方向であって、複数の前記ウェル領域が並ぶ方向を第1方向とすると、
前記第2ドリフト領域の前記第1方向における長さは、前記厚さ方向の位置によらず一定である、請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記第2ドリフト領域の前記第1方向における長さと、前記第3ドリフト領域の前記第1方向における長さは互いに同一である、請求項4に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記第2ドリフト領域の前記第1方向における長さよりも、前記第3ドリフト領域の前記第1方向における長さの方が短い、請求項4に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記厚さ方向と直交する水平方向であって、複数の前記ウェル領域が並ぶ方向を第1方向とすると、
前記第2ドリフト領域の前記第1方向における長さは、前記ウェル領域から前記窒化物半導体基板に近づくにつれて連続的に又は段階的に短くなる、請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記第2ドリフト領域の前記第1方向における最大長さよりも、前記第3ドリフト領域の前記第1方向における長さの方が短い、請求項7に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記厚さ方向と直交する水平方向であって、複数の前記ウェル領域が並ぶ方向を第1方向とすると、
前記ドリフト領域は、
前記第1ドリフト領域よりも第1導電型の不純物濃度が高く、前記ウェル領域と前記第1方向で接する第4ドリフト領域をさらに有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記縦型電界効果トランジスタは、
前記窒化物半導体層に設けられ、前記ウェル領域と接する第1導電型のソース領域と、
前記窒化物半導体層を挟んで前記窒化物半導体基板の反対側に設けられ、前記ウェル領域と向かい合うゲート電極と、
前記ウェル領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜とをさらに有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記ゲート絶縁膜は、Si酸化膜、Al酸化膜、又は、Si酸化膜及びAl酸化膜の少なくとも一方を含む積層膜である、請求項10に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
前記窒化物半導体層において前記窒化物半導体基板の反対側に位置する面を第1主面とすると、
前記窒化物半導体には前記第1主面側に開口するトレンチが設けられており、
前記縦型電界効果トランジスタは、前記トレンチ内に前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極が配置された、トレンチゲート構造を有する、請求項10に記載の窒化物半導体装置。
【請求項13】
前記縦型電界効果トランジスタは、
前記トレンチの底部に設けられ、前記ウェル領域よりも第2導電型の不純物濃度が高い、第2導電型の第1領域、をさらに有する請求項12に記載の窒化物半導体装置。
【請求項14】
前記第1領域は前記トレンチの底面の角部を覆うように設けられている、請求項13に記載の窒化物半導体装置。
【請求項15】
前記ウェル領域の底部に設けられ、前記ウェル領域よりも第2導電型の不純物濃度が高い、第2導電型の第2領域、をさらに有し、
前記第2ドリフト領域は、前記第2領域を介して前記ウェル領域に隣接する、請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項16】
前記第1導電型はn型であり、前記第1ドリフト領域における実効ドナー濃度は1×1015cm-3以上5×1016cm-3以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項17】
前記第1導電型はn型であり、前記第2ドリフト領域における実効ドナー濃度は5×1014cm-3以上1×1016cm-3以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項18】
前記第1導電型はn型であり、前記第3ドリフト領域における実効ドナー濃度は、1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、窒化ガリウム(GaN)を用いた縦型MOSFETが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
縦型MOSFETにおいて、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量を実現することができれば、駆動時の電力消費を抑えた高パワー、高速スイッチング可能なデバイスを実現することができる。本開示は、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量を実現することが可能な窒化物半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、窒化物半導体と、前記窒化物半導体に設けられた縦型電界効果トランジスタと、を備える。前記窒化物半導体は、第1導電型の窒化物半導体基板と、前記窒化物半導体基板上に設けられた窒化物半導体層と、を有する。前記縦型電界効果トランジスタは、前記窒化物半導体層に設けられた第1導電型のドリフト領域と、前記窒化物半導体層に設けられた第2導電型のウェル領域と、を有する。前記ドリフト領域は、第1ドリフト領域と、前記第1ドリフト領域よりも第1導電型の不純物濃度が低く、前記第1ドリフト領域と前記ウェル領域とにそれぞれ接する第2ドリフト領域と、前記第1ドリフト領域よりも第1導電型の不純物濃度が高く、前記第1ドリフト領域と前記窒化物半導体基板とにそれぞれ接する第3ドリフト領域と、を有する。前記窒化物半導体の厚さ方向において、前記第2ドリフト領域と前記第3ドリフト領域とが向かい合っている。前記第2ドリフト領域と前記第3ドリフト領域との間の少なくとも一部に前記第1ドリフト領域が介在する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量を実現することが可能な窒化物半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の断面図を拡大した図であり、1つの縦型MOSFETを示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法例1を工程順に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法例1を工程順に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法例1を工程順に示す断面図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法例2を工程順に示す断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態1の変形例1に係る縦型MOSFETの構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態1の変形例2に係る縦型MOSFETの構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFETの構成例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFETの製造方法例1を工程順に示す断面図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFETの製造方法例1を工程順に示す断面図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFETの製造方法例2を工程順に示す断面図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFETの製造方法例3を工程順に示す断面図である。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFETの製造方法例3を工程順に示す断面図である。
【
図16】
図16は、本開示の実施形態2の変形例1に係る縦型MOSFETの構成を示す断面図である。
【
図17】
図17は、本開示の実施形態2の変形例2に係る縦型MOSFETの構成を示す断面図である。
【
図18】
図18は、本開示の実施形態2の変形例3に係る縦型MOSFETの構成を示す断面図である。
【
図19】
図19は、本開示の実施形態3に係る縦型MOSFETの構成例を示す断面図である。
【
図20】
図20は、本開示の実施形態4に係る縦型MOSFETの構成例を示す平面図である。
【
図21】
図21は、本開示の実施形態4に係る縦型MOSFETの構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本開示の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0009】
以下の説明では、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の文言を用いて、方向を説明する場合がある。例えば、Z軸方向は、後述のGaN基板10の厚さ方向である。X軸方向及びY軸方向は、GaN基板10の厚さ方向と直交する方向であり、GaN基板10の表面10aに平行な方向である。X軸方向及びY軸方向を水平方向ともいう。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する。
【0010】
以下の説明では、Z軸の正方向を「上」と称し、Z軸の負方向を「下」と称する場合がある。「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」及び「下」は、領域、層、膜及び基板等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本開示の技術的思想を限定するものではない。例えば、紙面を180度回転すれば「上」が「下」に、「下」が「上」になることは勿論である。
【0011】
以下の説明では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。またpやnに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。但し、同じpとp(または、nとn)とが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0012】
<実施形態1>
(構成例)
図1は、本開示の実施形態1に係るGaN(窒化ガリウム)半導体装置100(本開示の「窒化物半導体装置」の一例)の構成例を示す平面図である。
図2は、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置100の構成例を示す断面図である。
図2は、
図1の平面図をA-A´線で切断した断面を示している。
図3は、
図2の断面図を拡大した図であり、1つの縦型MOSFET1を示す図である。
【0013】
図1及び
図2に示すGaN半導体装置100は、パワーデバイスである。
図1及び
図2に示すように、GaN半導体装置100は、表面10a及び裏面10bを有するGaN基板10(本開示の「窒化物半導体」の一例)と、GaN基板10に設けられた複数の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)1とを備える。
【0014】
縦型MOSFET1は、本開示の「縦型電界効果トランジスタ」の一例である。例えば、複数の縦型MOSFET1は、一方向(例えば、X軸方向)に繰り返し設けられている。1つの縦型MOSFET1が繰り返しの単位構造であり、この単位構造が一方向に並んで配置されている。
【0015】
また、複数の縦型MOSFET1のゲート電極22及びソース電極25は、一方向と直交する他方向(例えば、Y軸方向)にストライプ状に配置されている。ソース電極25の下方には、後述するn-型のソース領域23、n--型の第2ドリフト領域16、n+型の第3ドリフト領域17が配置されている。ゲート電極22の下方には、後述するn型の第4ドリフト領域19が配置されている。ソース領域23、第2ドリフト領域16、第3ドリフト領域17や、第4ドリフト領域19も、一方向と直交する他方向(例えば、Y軸方向)にストライプ状に配置されている。
【0016】
図2及び
図3に示すように、GaN基板10は、n++型のGaN単結晶基板101(本開示の「窒化物半導体基板」の一例)と、GaN単結晶基板101上に設けられたGaN層102(本開示の「窒化物半導体層」の一例)と、を有する。
【0017】
GaN単結晶基板101は、例えばn+型のc面GaN単結晶基板である。GaN単結晶基板101に含まれるn型不純物は、Si(シリコン)、O(酸素)及びGe(ゲルマニウム)のうちの一種類以上である。一例を挙げると、GaN単結晶基板101はn型不純物としてSiを含み、GaN単結晶基板101におけるSiの不純物濃度は5×1017cm-3以上である。
【0018】
GaN単結晶基板101は、転位密度が1×107cm-2未満の低転位自立基板であってもよい。GaN単結晶基板101が低転位自立基板であることにより、GaN単結晶基板101上に形成されるGaN層102の転位密度も低くなる。また、低転位自立基板を用いることで、GaN基板10に大面積のパワーデバイスが形成される場合でも、パワーデバイスにおけるリーク電流を少なくすることができる。これにより、製造装置は、パワーデバイスを高い良品率で製造することができる。また、熱処理において、イオン注入された不純物が転位に沿って深く拡散することを防ぐことができる。
【0019】
GaN層102は、GaN単結晶基板101の一方の面上にエピタキシャル成長された単結晶GaN層である。GaN層102は、エピタキシャル成長の過程でn型不純物がドープされることにより形成される。n型不純物は、例えばSiである。GaN層102は、n型不純物として例えばSiを1×1015cm-3以上5×1016cm-3以下の濃度で含む。
【0020】
縦型MOSFET1は、例えば、GaN基板10の平坦な表面10aにゲート絶縁膜21を介してゲート電極22が配置されたプレーナゲート構造を有する。縦型MOSFET1は、GaN基板10に設けられたn型のドリフト領域drfと、p型のウェル領域13と、p+型のコンタクト領域15と、n+型のソース領域23と、を有する。また、縦型MOSFET1は、GaN基板10の表面10a側に設けられたゲート絶縁膜21と、ゲート絶縁膜21上に設けられたゲート電極22と、GaN基板10の表面10a側に設けられてソース領域23及びコンタクト領域15と接するソース電極25と、GaN基板10の裏面10b側に設けられてn+型のGaN単結晶基板101と接するドレイン電極26とを有する。
【0021】
ドリフト領域drfは、n-型の第1ドリフト領域12と、n-型の第1ドリフト領域12とp型のウェル領域13とにそれぞれ接するn--型の第2ドリフト領域16と、n-型の第1ドリフト領域12とn++型のGaN単結晶基板101とにそれぞれ接するn+型の第3ドリフト領域17とを有する。例えば、エピタキシャル成長法で形成されるn-型のGaN層102が、n-型の第1ドリフト領域12である。
【0022】
GaN基板10の厚さ方向(例えば、Z軸方向)において、n--型の第2ドリフト領域16とn+型の第3ドリフト領域17とが向かい合っている。n--型の第2ドリフト領域16とn+型の第3ドリフト領域17は互いに離れている。n--型の第2ドリフト領域16とn+型の第3ドリフト領域17との間に、n-型の第1ドリフト領域12が介在している。ウェル領域13からGaN単結晶基板101に向かって、n--型の第2ドリフト領域16、n-型の第1ドリフト領域12、n+型の第3ドリフト領域17がこの順で並んでいる。
【0023】
複数のウェル領域13が並ぶX軸方向(本開示の「第1方向」の一例)において、第2ドリフト領域16の長さと、第3ドリフト領域17の長さは、互いに同一である。
【0024】
第2ドリフト領域16のX軸方向における長さは、Z軸方向の位置によらず一定である。すなわち、第2ドリフト領域16のX軸方向における長さは、GaN基板10の表面10aからの深さによらず、一定である。より具体的には、
図2及び
図3に示すように、第2ドリフト領域16をX軸方向及びZ軸方向に平行なX-Z平面で切断した断面形状は、例えば矩形である。
【0025】
ドリフト領域drfは、ウェル領域13とX軸方向で接するn型の第4ドリフト領域19をさらに有する。第4ドリフト領域19は、JFET領域と言い換えてもよい。第1ドリフト領域12はn-型であり、第4ドリフト領域19はn型である。第1ドリフト領域12よりも第4ドリフト領域19の方がn型不純物濃度が高いため、第4ドリフト領域19が無い場合と比べて、オン抵抗を低くすることができる。
【0026】
上述したように、n-型の第1ドリフト領域12のn型不純物濃度(例えば、Si濃度)は、例えば1×1015cm-3以上5×1016cm-3以下である。また、n--型の第2ドリフト領域16のn型不純物濃度(例えば、Si濃度)は、例えば5×1014cm-3以上1×1016cm-3以下である。n+型の第3ドリフト領域17のn型不純物濃度(例えば、Si濃度)は、例えば1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下である。n型の第4ドリフト領域19のn型不純物濃度(例えば、Si濃度)は、例えば5×1016cm-3以上5×1017cm-3以下である。
【0027】
n型の第4ドリフト領域19に含まれるn型不純物は、Siに限定されず、酸素(O)であってもよいし、SiとOの両方であってもよい。例えば、n型の第4ドリフト領域19はn型不純物としてOを含み、O濃度が5×1016cm-3以上5×1017cm-3以下であってもよい。あるいは、n型の第4ドリフト領域19はn型不純物としてSi及びOの両方を含み、Si濃度及びO濃度の合計が5×1016cm-3以上5×1017cm-3以下であってもよい。第4ドリフト領域19のみ、n型不純物としてOが使用されてもよい。
【0028】
第1ドリフト領域12、第2ドリフト領域16、第3ドリフト領域17及び第4ドリフト領域19は、例えばn型半導体領域にp型不純物をイオン注入(カウンタードープ)することで形成したり、p型半導体領域にn型不純物をイオン注入(カウンタードープ)することで形成したりすることもできる。したがって、第1ドリフト領域12、第2ドリフト領域16、第3ドリフト領域17及び第4ドリフト領域19の各々のn型不純物濃度は、n型不純物濃度からp型不純物濃度を相殺した実効ドナー濃度で示すことが適切な場合もある。
【0029】
n-型の第1ドリフト領域12の実効ドナー濃度は、例えば1×1015cm-3以上5×1016cm-3以下である。また、n--型の第2ドリフト領域16の実効ドナー濃度は、例えば5×1014cm-3以上1×1016cm-3以下である。n+型の第3ドリフト領域17の実効ドナー濃度は、例えば1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下である。n型の第4ドリフト領域19の実効ドナー濃度は、例えば5×1016cm-3以上5×1017cm-3以下である。
【0030】
ウェル領域13は、GaN基板10の表面10a側にMg等のp型不純物がイオン注入され、熱処理によりp型不純物が活性化されて形成されたp型層である。ウェル領域13は、p型不純物として例えばMgを1×1017cm-3以上3×1018cm-3以下の濃度で含む。
【0031】
ウェル領域13は、GaN基板10の表面10aに面している。ウェル領域13の表面は、ゲート絶縁膜21と接している。ゲート絶縁膜21と接しているウェル領域13の表面及びその近傍に、縦型MOSFET1のチャネルが形成される。
【0032】
ソース領域23は、GaN基板10の表面10a側にSi又はO等のn型不純物がイオン注入され、熱処理によりn型不純物が活性化されて形成されたn+型層である。ソース領域23は、n型不純物として例えばSiを1×1019cm-3以上5×1020cm-3以下の濃度で含む。ソース領域23は、ゲート電極22の両側下のウェル領域13に設けられており、GaN基板10の表面10aに面している。ソース領域23は、ウェル領域13の内側に位置し、ウェル領域13と接している。
【0033】
コンタクト領域15は、例えば、GaN基板10の表面10a側にMg等のp型不純物がイオン注入され、熱処理によりp型不純物が活性化されて形成されたp+型層である。コンタクト領域15は、p型不純物としてMgを3×1018cm-3以上1×1021cm-3以下の濃度で含み、より好ましくは1×1019cm-3以上2×1020cm-3以下の濃度で含む。
【0034】
コンタクト領域15は、GaN基板10の表面10aに面している。コンタクト領域15は、ウェル領域13の内側に位置し、ウェル領域13と接している。また、コンタクト領域15はソース領域23とも接している。
【0035】
コンタクト領域15を介して、ウェル領域13はソース電極25に接続している。これにより、ウェル領域13の電位は、ソース電極25の電位(例えば、接地電位(GND)等の基準電位)に固定される。
【0036】
ゲート絶縁膜21は、ウェル領域13とゲート電極22との間に設けられている。ゲート絶縁膜21は、例えばSiO2膜(本開示の「Si酸化膜」の一例)である。また、ゲート絶縁膜21は、Al2O3膜(本開示の「Al酸化膜」の一例)、SiON膜、AlSiO膜、AlON膜のいずれか1つを含む単層膜であってもよいし、SiO2膜、Al2O3膜、SiON膜、AlSiO膜、AlON膜のいずれか1つ以上を含む積層膜であってもよい。ゲート絶縁膜21の厚さは、例えば50nm以上150nm以下であり、一例を挙げると100nmである。
【0037】
ゲート電極22は、GaN層102を挟んでn++型のGaN単結晶基板101の反対側に設けられており、ウェル領域13と向かい合っている。ゲート電極22は、ゲート絶縁膜21を介してチャネルが形成される領域(以下、チャネル領域)と隣り合っている。ゲート電極22は、Al、Ti、Ni、Wなどの金属又は不純物をドープしたポリシリコンで構成されている。また、ゲート電極22は、WSi、NiSiなどのシリサイドで構成されていてもよい。
【0038】
ソース電極25は、n+型層であるソース領域23とp+型層であるコンタクト領域15とにそれぞれオーミック接続している。ドレイン電極26は、n+型のGaN単結晶基板101の他方の面(すなわち、GaN層102と接する面の反対側の面)にオーミック接続している。
【0039】
ソース電極25及びドレイン電極26は、Al又はAl-Siの合金、Ni、Ni合金、Ti-Al合金、Ni-Au合金などで構成されている。また、ソース電極25は、ソース領域23との間にバリアメタル層を有してもよい。ドレイン電極26は、n+型のGaN単結晶基板101との間にバリアメタル層を有してもよい。バリアメタル層はTi(チタン)で構成されていてもよい。
【0040】
すなわち、ソース電極25及びドレイン電極26は、Ti層及びAl層の積層、又は、Ti層及びAl-Siの合金層の積層であってもよい。ソース電極25は、図示しないソースパッドを兼ねた電極であってもよいし、ソースパッドとは別に設けられた電極であってもよい。ドレイン電極26は、図示しないドレインパッドを兼ねた電極であってもよいし、ドレインパッドとは別に設けられた電極であってもよい。
【0041】
(製造方法)
次に、
図1から
図3に示したGaN半導体装置100の製造方法を説明する。ここでは、2通りの製造方法を説明する。製造方法例1、2のいずれを用いた場合でも、GaN半導体装置100を製造することが可能である。
【0042】
(1)製造方法例1
図4から
図6は、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置100の製造方法例1を工程順に示す断面図である。なお、
図4から
図6は、X軸方向に繰り返し配置される複数の縦型MOSFET1のうちの、1つの縦型MOSFET1について、その製造方法を工程順に示している。また、GaN半導体装置100は、成膜装置、露光装置、エッチング装置、イオン注入装置、熱処理装置など、各種の装置によって製造される。以下、これらの装置を、製造装置と総称する。
【0043】
図4のステップST1に示すように、製造装置は、n++型のGaN単結晶基板101の一方の面上に、n-型のGaN層102(第1ドリフト領域12)をエピタキシャル成長させる。
【0044】
次に、
図4のステップST2に示すように、製造装置は、n-型のGaN層102において、n+型の第3ドリフト領域17が形成される予定領域(以下、第3ドリフト形成領域)に、ドナー元素としてSiをイオン注入する。
【0045】
例えば、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にマスク(図示せず)を形成する。マスクは、GaN基板10に対して選択的に除去可能なSiO2膜又はフォトレジストである。マスクは、第3ドリフト形成領域の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有する。製造装置は、マスクが形成されたGaN基板10の表面10a側にSiをイオン注入する。ここでは、第3ドリフト形成領域におけるSi濃度が1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下となるようにSiをイオン注入する。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクを除去する。
【0046】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、GaN基板10にイオン注入されたSiが活性化される。その結果、GaN基板10にN+型の第3ドリフト領域17が形成される。
【0047】
次に、
図4のステップST3に示すように、製造装置は、n-型のGaN層102(第1ドリフト領域12)上に、n--型のGaN層161をエピタキシャル成長させる。n--型のGaN層161は、第2ドリフト領域16の一部である。
【0048】
次に、
図5のステップST4に示すように、n--型のGaN層161において、第1ドリフト領域12が形成される予定領域(すなわち、第1ドリフト形成領域)にSiをイオン注入する。このイオン注入はマスク(図示せず)を用いて行う。ここでは、GaN層161の第1ドリフト形成領域におけるSi濃度が1×10
15cm
-3以上5×10
16cm
-3以下となるように、Siをイオン注入する。
【0049】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、GaN層161にイオン注入されたSiが活性化される。その結果、GaN層161に第1ドリフト領域12が形成される。
【0050】
次に、
図5のステップST5に示すように、製造装置は、第1ドリフト領域12が形成されたn--型のGaN層161上にn--型のGaN層162をエピタキシャル成長させる。n--型のGaN層162は、第2ドリフト領域16の他の一部である。
【0051】
次に、
図5のステップST6に示すように、n--型のGaN層162の第1ドリフト形成領域にSiをイオン注入する。このイオン注入はマスク(図示せず)を用いて行う。ここでは、GaN層162の第1ドリフト形成領域におけるSi濃度が1×10
15cm
-3以上5×10
16cm
-3以下となるように、Siをイオン注入する。
【0052】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、GaN層162にイオン注入されたSiが活性化される。その結果、GaN層162に第1ドリフト領域12が形成される。以下、GaN層161、162をGaN層16ともいう。
【0053】
次に、
図6のステップST7に示すように、製造装置は、GaN基板10において、p-型のウェル領域13(
図3参照)が形成される予定領域(以下、ウェル形成領域)13´に、アクセプタ元素としてMgをイオン注入する。このイオン注入はマスク(図示せず)を用いて行う。ここでは、GaN層16のウェル形成領域13´におけるMg濃度が1×10
17cm
-3以上3×10
18cm
-3以下となるように、Mgをイオン注入する。
【0054】
また、ウェル形成領域13´へのMgのイオン注入と前後して、製造装置は、GaN基板10において、p+型のコンタクト領域15(
図3参照)が形成される予定領域(以下、コンタクト形成領域)15´に、アクセプタ元素としてMgをイオン注入する。このイオン注入もマスクを用いて行う。ここでは、GaN層16のコンタクト形成領域15´におけるMg濃度が3×10
18cm
-3以上1×10
21cm
-3以下となるように、Mgをイオン注入する。
【0055】
次に、
図6のステップST8に示すように、製造装置は、GaN基板10において、n+型のソース領域23(
図3参照)が形成される予定領域(以下、ソース形成領域)23´に、ドナー元素としてSiをイオン注入する。このイオン注入はマスク(図示せず)を用いて行う。ここでは、GaN層16のソース形成領域23´におけるSi濃度が1×10
19cm
-3以上5×10
20cm
-3以下となるように、Siをイオン注入する。
【0056】
また、製造装置は、GaN基板10において、n型の第4ドリフト領域19が形成される予定領域(以下、第4ドリフト形成領域)19´に、ドナー元素としてSi(または、O)をイオン注入する。このイオン注入はマスク(図示せず)を用いて行う。ここでは、GaN層16のドリフト形成領域19´におけるSi濃度(または、O濃度)が5×1016cm-3以上5×1017cm-3以下となるように、Si(または、O)をイオン注入する。
【0057】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。例えば、製造装置は、GaN基板10に最大温度が1300℃以上2000℃以下の熱処理を施す。この熱処理は、例えば急速加熱処理である。また、この熱処理は、例えば500MPaなどの、高圧N2雰囲気下で行ってもよい。この熱処理により、GaN基板10にイオン注入されたMg及びSi(または、O)が活性化される。その結果、GaN基板10に、p-型のウェル領域13と、p+型のコンタクト領域15と、n型の第4ドリフト領域19と、n+型のソース領域23とが形成される。
【0058】
また、この熱処理により、GaN基板10において、各種のイオン注入により生じた欠陥をある程度回復することができる。
【0059】
なお、この熱処理を行う際に、製造装置は、GaN基板10の表面10a上に保護膜(図示せず)を予め形成してもよい(保護膜の形成は必須ではない)。保護膜は、例えば窒化アルミニウム(AlN)膜である。これにより、GaN基板10のウェル形成領域13´、コンタクト形成領域15´及びソース形成領域23´は保護膜で覆われる。熱処理後、製造装置は、GaN基板10の表面10a上から保護膜を除去する。
【0060】
次に、
図6のステップST9に示すように、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にゲート絶縁膜21を形成する。次に、製造装置は、ゲート電極22(
図3参照)とソース電極25(
図3参照)とを形成する。次に、製造装置は、GaN基板10の裏面10b側にドレイン電極26(
図3参照)を形成する。このような工程を経て、縦型MOSFET1を備えるGaN半導体装置100が完成する。
【0061】
(2)製造方法例2
上記の製造方法例1では、n-型の第2ドリフト領域16を複数回のエピタキシャル成長で形成することを説明した。しかしながら、本開示の実施形態1に係る製造方法はこれに限定されない。第2ドリフト領域16は、n-型のGaN層102にMgをイオン注入(カウンタードープ)することによって形成してもよい。
【0062】
図7は、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置100の製造方法例2を工程順に示す断面図である。
図7のステップST11に示すように、製造装置は、n+型のGaN単結晶基板101の一方の面上に、n-型のGaN層102(第1ドリフト領域12)をエピタキシャル成長させる。
【0063】
次に、製造装置は、n-型のGaN層102の第3ドリフト形成領域にSiをイオン注入する。このイオン注入はマスク(図示せず)を用いて行う。ここでは、第3ドリフト形成領域におけるSi濃度が、例えば1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下となるように、Siをイオン注入する。また、第3ドリフト形成領域は、第2ドリフト形成領域よりもGaN層102の表面から深い位置にある。このため、第3ドリフト形成領域へのSiのイオン注入エネルギーは、上記の製造方法例1のステップST2よりも高い値となる。
【0064】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、第3ドリフト形成領域にイオン注入されたSiが活性化される。その結果、
図7のステップST12に示すように、n-型のGaN層102にn+型の第3ドリフト領域17が形成される。
【0065】
次に、製造装置は、n-型のGaN層102の第2ドリフト形成領域にMgをイオン注入(カウンタードープ)する。このイオン注入はマスク(図示せず)を用いて行う。ここでは、第2ドリフト形成領域における実効ドナー濃度が、例えば5×1014cm-3以上1×1016cm-3以下となるように、Mgをイオン注入する。
【0066】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、第3ドリフト形成領域にイオン注入されたMgが活性化される。その結果、
図7のステップST13に示すように、n-型のGaN層102にn--型の第2ドリフト領域16が形成される。なお、第2ドリフト領域16を形成するための熱処理はここでは行わず、これ以降の工程で行う他の熱処理(例えば、p-型のウェル領域13、p+型のコンタクト領域15、n+型のソース領域23のいずれか1つ以上を形成するための熱処理)と兼用で行ってもよい。
【0067】
これ以降の工程は、上記の製造方法例1と同じである。製造装置は、p-型のウェル領域13と、p+型のコンタクト領域15と、n+型のソース領域23とを形成し(
図6のステップST7)、次にn型の第4ドリフト領域19を形成し(
図6のステップST8)、次にゲート絶縁膜21を形成する(
図6のステップST9)。以上の工程を経て、縦型MOSFET1を備えるGaN半導体装置100が完成する。
【0068】
(実施形態1の効果)
以上説明したように、本開示の実施形態1に係るGaN半導体装置100は、GaN基板10と、GaN基板10に設けられた縦型MOSFET1と、を備える。GaN基板10は、n型のGaN単結晶基板101と、GaN単結晶基板101上に設けられたGaN層102と、を有する。縦型MOSFET1は、GaN層102に設けられたn型のドリフト領域drfと、GaN層102に設けられたp型のウェル領域13と、を有する。
【0069】
ドリフト領域drfは、n-型の第1ドリフト領域12と、第1ドリフト領域12よりもn型の不純物濃度が低く、第1ドリフト領域12とウェル領域13とにそれぞれ接するn--型の第2ドリフト領域16と、第1ドリフト領域12よりもn型の不純物濃度が高く、第1ドリフト領域12とGaN単結晶基板101とにそれぞれ接するn+型の第3ドリフト領域17と、を有する。GaN基板10の厚さ方向(例えば、Z軸方向)において、第2ドリフト領域16と第3ドリフト領域17とが向かい合っている。第2ドリフト領域16と第3ドリフト領域17との間の少なくとも一部に第1ドリフト領域12が介在する。
【0070】
これによれば、GaN基板10の厚さ方向(例えば、Z軸方向)において、p型のウェル領域13とn--型の第2ドリフト領域16とが隣接するため、ウェル領域13からGaN単結晶基板101側へ空乏層を延ばすことができる。これにより、ゲートオフ時の耐圧を高めることができる。
【0071】
また、ウェル領域13からGaN単結晶基板101側へ空乏層を延ばすことができるため、ウェル領域13とドリフト領域drfとの接合容量(寄生容量)を低減することができる。これにより、ゲートをオン、オフするスイッチング時の損失を低減することができる。
【0072】
さらに、ゲートオン時にドレイン電極26からソース電極25に流れる電流(オン電流)は、n+型の第3ドリフト領域17を通るため、電流経路の抵抗成分を低減することができ、オン抵抗を低減することができる。
【0073】
n型の不純物濃度が高い第3ドリフト領域17が存在することにより、ドリフト領域drfの実質的な厚さは薄くなる。一般に、ドリフト領域の厚さが薄くなるほど、ゲートオフ時の耐圧は低くなり易い。しかし、縦型MOSFET1では、n--型の第2ドリフト領域16が存在することによりウェル領域13からGaN単結晶基板101側へ空乏層が伸びるため、上記の耐圧低下はキャンセルされる。ドリフト領域drfの実質的な厚さが薄くなっても、耐圧は高く確保される。以上から、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量のGaN半導体装置100を提供することができる。
【0074】
(実施形態1の変形例)
(1)変形例1
上記の実施形態1では、n+型の第3ドリフト領域17のX軸方向における長さが、第2ドリフト領域16のX軸方向における長さと同じである態様を示した。しかしながら、本開示の実施形態はこれに限定されない。第3ドリフト領域17のX軸方向における長さは、第2ドリフト領域16のX軸方向における長さと異なっていてもよい。
【0075】
図8は、本開示の実施形態1の変形例1に係る縦型MOSFET1Aの構成を示す断面図である。
図8に示すように、変形例1に係る縦型MOSFET1Aにおいて、n--型の第2ドリフト領域16のX軸方向における長さよりも、n+型の第3ドリフト領域のX軸方向における長さの方が短い。
【0076】
このような構成でも、実施形態1と同様の効果を奏する。縦型MOSFET1Aを備えることにより、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量のGaN半導体装置100を提供することができる。
【0077】
(2)変形例2
上記の実施形態1では、p型のウェル領域13の底部にn--型の第2ドリフト領域16が直に接している態様を示した。しかしながら、本開示の実施形態はこれに限定されない。
p型のウェル領域13の底部とn--型の第2ドリフト領域16との間には、p型のウェル領域13よりも高濃度のp+型領域が介在していてもよい。
【0078】
図9は、本開示の実施形態1の変形例2に係る縦型MOSFET1Bの構成を示す断面図である。
図9に示すように、変形例2に係る縦型MOSFET1Bは、p型のウェル領域13の底部に設けられたp+型領域14(本開示の「第2領域」の一例)を有する。p+型領域14は、p型のウェル領域13よりもp型の不純物濃度が高い。n--型の第2ドリフト領域16は、p+型領域14を介してp型のウェル領域13に隣接している。
【0079】
このような構成でも、実施形態1と同様の効果を奏する。縦型MOSFET1Bを備えることにより、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量のGaN半導体装置100を提供することができる。
【0080】
また、p型のウェル領域13とn--型の第2ドリフト領域16との間にp+型領域14が介在することにより、ウェル領域13からGaN単結晶基板101側へ空乏層をさらに延ばすことができる。これにより、ゲートオフ時の耐圧をさらに高めることができる。
【0081】
ウェル領域13からGaN単結晶基板101側へ空乏層をさらに延ばすことができるため、ウェル領域13とドリフト領域drfとの接合容量(寄生容量)をさらに低減することができる。これにより、ゲートをオン、オフするスイッチング時の損失をさらに低減することができる。
【0082】
<実施形態2>
上記の実施形態1では、第2ドリフト領域16のX軸方向における長さはZ軸方向の位置によらず一定であり、より具体的には、X-Z平面で切断した断面形状が矩形であることを説明した。しかしながら、本開示の実施形態において、第2ドリフト領域16の態様はこれに限定されない。第2ドリフト領域16のX軸方向における長さは、Z軸方向の位置によって異なっていてもよい。
【0083】
(構成)
図10は、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFET1Cの構成例を示す断面図である。
図10において、
図1から
図3に示した縦型MOSFET1との違いは、第2ドリフト領域16の形状にある。これ以外の構成は、
図3等に示した縦型MOSFET1と同じである。実施形態2では、
図3等に示した縦型MOSFET1ではなく、
図10に示す縦型MOSFET1CがX軸方向に繰り返し配置されてGaN半導体装置100が構成されている。1つの縦型MOSFET1Cが繰り返しの単位構造であり、この単位構造がX軸方向に並んで配置されている。
【0084】
図10に示すように、実施形態2に係る縦型MOSFET1Cにおいて、第2ドリフト領域16のX軸方向における長さは、Z軸方向の位置によって異なっている。例えば、第2ドリフト領域16のX軸方向における長さは、ウェル領域13からGaN単結晶基板101に近づくにつれて連続的に短くなっている。一例を示すと、
図10に示すように、第2ドリフト領域16をX軸方向及びZ軸方向に平行なX-Z平面で切断した断面形状は、逆三角形である。逆三角形とは、底辺が上に位置し、頂点が下に位置する三角形のことである。
【0085】
(製造方法)
次に、
図10に示した縦型MOSFET1Cの製造方法を説明する。ここでは、3通りの製造方法を説明する。製造方法例1から3のいずれを用いた場合でも、縦型MOSFET1Cを製造することが可能である。
【0086】
(1)製造方法例1
図11及び
図12は、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFET1Cの製造方法例1を工程順に示す断面図である。
図11のステップST21において、製造装置は、n++型のGaN単結晶基板101の一方の面上に、n-型のGaN層102(第1ドリフト領域12)の一部をエピタキシャル成長させる。
【0087】
次に、製造装置は、n-型のGaN層102の第3ドリフト形成領域17´に、ドナー元素としてSiをイオン注入する。このイオン注入は、第3ドリフト形成領域17´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状のマスクM1を用いて行う。また、第3ドリフト形成領域17´におけるSi濃度が1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下となるようにSiをイオン注入する。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクM1を除去する。
【0088】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、GaN基板10にイオン注入されたSiが活性化される。その結果、
図11のステップST22に示すように、GaN基板10にN+型の第3ドリフト領域17が形成される。
【0089】
次に、
図11のステップST22において、製造装置は、第3ドリフト領域17が形成されたn-型のGaN層102上にさらにn-型のGaN層をエピタキシャル成長させて、n-型のGaN層102を厚膜化する。次に、製造装置は、厚膜化されたn-型のGaN層102の第2ドリフト形成領域16´に、アクセプタ元素としてMgをイオン注入(カウンタードープ)する。
【0090】
例えば、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にマスクM2を形成する。マスクM2は、GaN基板10に対して選択的に除去可能なSiO2膜又はフォトレジストである。マスクM2は、第2ドリフト形成領域16´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有する。
【0091】
また、マスクM2は、GaN基板10の表面10aに対してテーパを有する。例えば、第2ドリフト形成領域をX-Z平面で切断した断面形状は逆三角形である。マスクM2は、この逆三角形の頂点の上方から、この逆三角形の底面の端部の上方にかけて、マスクM2の厚さが徐々に厚くなるようなテーパを有する。マスクM2の形成方法は限定されないが、一例を挙げると、フォトレジストに対して位相シフトマスクを用いた露光、現像処理を行うことで形成することができる。
【0092】
製造装置は、マスクM2が形成されたGaN基板10の表面10a側にMgをイオン注入(カウンタードープ)する。ここでは、第2ドリフト形成領域の実効ドナー濃度が、例えば5×1014cm-3以上1×1016cm-3以下となるように、Mgをイオン注入する。Mgの注入ピーク深さは、マスクM2のテーパ形状を反映した深さとなる。X軸方向において、第2ドリフト形成領域の中心にはMgが深く注入され、端部にはMgが浅く注入される。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクM2を除去する。
【0093】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、GaN基板10にイオン注入されたMgが活性化される。その結果、GaN基板10にN--型の第2ドリフト領域16が形成される。
【0094】
次に、
図11のステップST23において、製造装置は、n--型の第2ドリフト領域16が形成されたn-型のGaN層102上にさらにn-型のGaN層をエピタキシャル成長させて、n-型のGaN層102(第1ドリフト領域12)を厚膜化する。
【0095】
次に、製造装置は、GaN基板10のウェル形成領域13´に、アクセプタ元素としてMgをイオン注入する。このイオン注入は、ウェル形成領域13´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状のマスクM3を用いて行う。また、ウェル形成領域13´におけるMg濃度が1×1017cm-3以上3×1018cm-3以下となるように、Mgをイオン注入する。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクM3を除去する。
【0096】
次に、
図12のステップST24において、製造装置は、GaN基板10のコンタクト形成領域15´に、アクセプタ元素としてMgをイオン注入する。このイオン注入は、コンタクト形成領域15´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状のマスクM4を用いて行う。また、コンタクト形成領域15´におけるMg濃度が3×10
18cm
-3以上1×10
21cm
-3以下となるように、Mgをイオン注入する。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクM4を除去する。
【0097】
次に、
図12のステップST25において、製造装置は、GaN基板10のソース形成領域23´に、ドナー元素としてSiをイオン注入する。このイオン注入は、ソース形成領域23´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状のマスクM5を用いて行う。また、ソース形成領域23´におけるSi濃度が1×10
19cm
-3以上5×10
20cm
-3以下となるように、Siをイオン注入する。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクM5を除去する。
【0098】
次に、
図12のステップST26において、製造装置は、GaN基板10の第4ドリフト形成領域19´に、ドナー元素としてSi(または、O)をイオン注入する。このイオン注入は、第4ドリフト形成領域19´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状のマスクM6を用いて行う。また、第4ドリフト形成領域19´におけるSi濃度(または、O濃度)が5×10
16cm
-3以上5×10
17cm
-3以下となるように、Si(または、O)をイオン注入する。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクM6を除去する。
【0099】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、ウェル形成領域13´及びコンタクト領域15´にイオン注入されたMgと、ソース形成領域23´及び第4ドリフト形成領域19´にイオン注入されたSi(または、O)とが活性化される。その結果、n-型のGaN層102にp-型のウェル領域13と、p+型のコンタクト領域15と、n+型のソース領域23と、n型の第4ドリフト領域19が形成される。
【0100】
次に、製造装置は、GaN基板10の表面10a上にゲート絶縁膜21(
図10参照)を形成する。次に、製造装置は、ゲート電極22(
図3参照)とソース電極25(
図10参照)とを形成する。次に、製造装置は、GaN基板10の裏面10b側にドレイン電極26(
図10参照)を形成する。このような工程を経て、縦型MOSFET1Cが完成する。
【0101】
(2)製造方法例2
上記の製造方法例1では、n-型のGaN層102を複数回のエピタキシャル成長で形成することを説明した。しかしながら、本開示の実施形態2に係る製造方法はこれに限定されない。n-型のGaN層102を1回のエピタキシャル成長で形成してもよい。
【0102】
図13は、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFET1Cの製造方法例2を工程順に示す断面図である。
図11のステップST31において、製造装置は、n++型のGaN単結晶基板101の一方の面上に、n-型のGaN層102(第1ドリフト領域12)をエピタキシャル成長させる。ここでは、製造方法例1のステップST21で示したn-型のGaN層102よりも厚膜に、n-型のGaN層102をエピタキシャル成長させる。
【0103】
次に、製造装置は、n-型のGaN層102の第3ドリフト形成領域17´に、ドナー元素としてSiをイオン注入する。このイオン注入は、製造方法例1と同様に、第3ドリフト形成領域の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状のマスクM1を用いて行う。このイオン注入は、製造方法例1のステップST21で示したSiのイオン注入よりも高いエネルギーで行う。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクM1を除去する。
【0104】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、GaN基板10にイオン注入されたSiが活性化される。その結果、GaN基板10にn+型の第3ドリフト領域17が形成される。なお、第3ドリフト領域17を形成するための熱処理はここでは行わず、これ以降の工程で行う他の熱処理(例えば、n--型の第2ドリフト領域16、p-型のウェル領域13、p+型のコンタクト領域15、n+型のソース領域23のいずれか1つ以上を形成するための熱処理)と兼用で行ってもよい。
【0105】
次に、
図13のステップST32に示すように、製造装置は、厚膜化されたn-型のGaN層102の第2ドリフト形成領域16´に、アクセプタ元素としてMgをイオン注入(カウンタードープ)する。このイオン注入は、製造方法例1と同様に、第2ドリフト形成領域16´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有するマスクM2を用いて行う。製造方法1と同様に、マスクM2はGaN基板10の表面10aに対してテーパを有する。また、このイオン注入は、製造方法例1のステップST22で示したMgのイオン注入よりも高いエネルギーで行う。イオン注入後、製造装置は、GaN基板10上からマスクM2を除去する。
【0106】
次に、製造装置は、GaN基板10に熱処理を施す。この熱処理により、GaN基板10にイオン注入されたSiが活性化される。その結果、GaN基板10にn--型の第2ドリフト領域16が形成される。なお、第2ドリフト領域16を形成するための熱処理はここでは行わず、これ以降の工程で行う他の熱処理(例えば、p-型のウェル領域13、p+型のコンタクト領域15、n+型のソース領域23のいずれか1つ以上を形成するための熱処理)と兼用で行ってもよい。
【0107】
次に、
図11のステップST33に示すように、製造装置は、GaN基板10のウェル形成領域13´に、アクセプタ元素としてMgをイオン注入する。このイオン注入は、製造方法例1と同様に、ウェル形成領域13´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状のマスクM3を用いて行う。
【0108】
そして、これ以降は、製造方法例1で説明した
図11のステップST24から
図12のステップST26と同様である。このような工程を経て、縦型MOSFET1Cが完成する。
【0109】
(3)製造方法例3
上記の製造方法例1、2では、n+型の第3ドリフト領域17をイオン注入で形成することを説明した。しかしながら、本開示の実施形態1、2において、第3ドリフト領域17の形成方法はこれに限定されない。n+型の第3ドリフト領域17は、エピタキシャル成長法で形成してもよい。
【0110】
図14及び
図15は、本開示の実施形態2に係る縦型MOSFET1Cの製造方法例3を工程順に示す断面図である。
図14のステップST41に示すように、製造装置は、n++型のGaN単結晶基板101の一方の面上に、n+型の第3ドリフト領域17をエピタキシャル成長させる。
【0111】
次に、
図14のステップST42に示すように、製造装置は、エピタキシャル成長法で形成したn+型の第3ドリフト領域17において、第1ドリフト領域が形成される領域(以下、第1ドリフト形成領域)を部分的にドライエッチングして除去する。このドライエッチングは、第1ドリフト形成領域の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状のマスクM11を用いて行う。ドライエッチング後、製造装置は、GaN基板10上からマスクM11を除去する。
【0112】
次に、
図15のステップST43に示すように、製造装置は、GaN単結晶基板101の一方の面上にn-型のGaN層102(第1ドリフト領域12)をエピタキシャル成長させる。
【0113】
次に、
図15のステップST44に示すように、n-型のGaN層102の第2ドリフト形成領域16´に、アクセプタ元素としてMgをイオン注入(カウンタードープ)する。このイオン注入は、製造方法例1と同様に、第2ドリフト形成領域16´の上方を開口し、他の領域の上方を覆う形状を有するマスクM12を用いて行う。マスクM12は、製造方法例1、2で説明したマスクM2と同様に、GaN基板10の表面10aに対してテーパを有する。マスクM12の形成方法は限定されないが、一例を挙げると、フォトレジストに対して位相シフトマスクを用いた露光、現像処理を行うことで形成することができる。
【0114】
そして、これ以降は、製造方法例1で説明した
図11のステップST23から
図12のステップST26と同様である。このような工程を経て、縦型MOSFET1Cが完成する。
【0115】
(実施形態2の効果)
実施形態1に係る縦型MOSFET1と同様に、実施形態2に係る縦型MOSFET1Cも、p型のウェル領域13と接するn--型の第2ドリフト領域16と、n++型のGaN単結晶基板101と接するn+型の第3ドリフト領域17とを有する。また、n--型の第2ドリフト領域16とn+型の第3ドリフト領域17との間にn-型の第1ドリフト領域12が介在する。これにより、実施形態1と同様の効果を奏する。縦型MOSFET1Cを備えることにより、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量のGaN半導体装置100を提供することができる。
【0116】
(実施形態2の変形例)
(1)変形例1
上記の実施形態2では、n--型の第2ドリフト領域16とn+型の第3ドリフト領域17とが互いに離れている態様を示した。しかしながら、本開示の実施形態2はこれに限定されない。n--型の第2ドリフト領域16はn+型の第3ドリフト領域17と部分的に接していてもよい。
【0117】
図16は、本開示の実施形態2の変形例1に係る縦型MOSFET1Dの構成を示す断面図である。
図16に示すように、変形例1に係る縦型MOSFET1Dにおいて、n--型の第2ドリフト領域16はn+型の第3ドリフト領域17と部分的に接している。例えば、第2ドリフト領域16をX-Z平面で切断した断面形状は逆三角形である。この逆三角形の頂点が第3ドリフト領域17と接している。
【0118】
このような構成でも、ウェル領域13からGaN単結晶基板101側へ空乏層を延ばすことができ、実施形態1と同様の効果を奏する。縦型MOSFET1Dを備えることにより、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量のGaN半導体装置100を提供することができる。
【0119】
(2)変形例2
上記の実施形態2では、n--型の第2ドリフト領域16のX軸方向における長さは、p型のウェル領域13からn++型のGaN単結晶基板101に近づくにつれて連続的に短くなっている態様を示した。例えば、第2ドリフト領域16をX-Z平面で切断した断面形状が逆三角形である態様を示した。しかしながら、本開示の実施形態2はこれに限定されない。第2ドリフト領域16のX軸方向における長さは、ウェル領域13からGaN単結晶基板101に近づくにつれて連続的ではなく、段階的に短くなっていてもよい。
【0120】
図17は、本開示の実施形態2の変形例2に係る縦型MOSFET1Eの構成を示す断面図である。
図17に示すように、変形例1に係る縦型MOSFET1Eにおいて、n--型の第2ドリフト領域16のX軸方向における長さは、p型のウェル領域13からn--型のGaN単結晶基板101に近づくにつれて段階的に短くなっている。例えば、第2ドリフト領域16をX-Z平面で切断した断面形状は、下に向けて凸型となっている。第2ドリフト領域16をX-Z平面で切断した断面形状は、X軸方向における長さが長い第1矩形部と、X軸方向における長さが短い第2矩形部とを組み合わせた形状であり、第1矩形部が上に、第2矩形部が下に配置された形状となっている。
【0121】
このような構成でも、実施形態1と同様の効果を奏する。縦型MOSFET1Eを備えることにより、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量のGaN半導体装置100を提供することができる。
【0122】
(3)変形例3
図8に示した実施形態1の変形例1は、実施形態2においても適用可能である。
図18は、本開示の実施形態2の変形例3に係る縦型MOSFET1Fの構成を示す断面図である。
図18に示すように、X-Z平面で切断した断面形状が逆三角形である第2ドリフト領域16のX軸方向における最大長さは、逆三角形の底面の長さとなる。変形例3に係る縦型MOSFET1Fでは、この逆三角形の底面の長さよりも、第3ドリフト領域17のX軸方向における長さの方が短い。
【0123】
このような構成でも、実施形態1と同様の効果を奏する。縦型MOSFET1Fを備えることにより、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量のGaN半導体装置100を提供することができる。
【0124】
<実施形態3>
上記の実施形態1、2では、プレーナゲート構造の縦型MOSFET1、1Aから1Fを示した。しかしながら、本開示の実施形態において、GaN半導体装置100が備える縦型MOSFETは、プレーナゲート構造に限定されない。GaN半導体装置100が備える縦型MOSFETは、トレンチゲート構造であってもよい。
【0125】
図19は、本開示の実施形態3に係る縦型MOSFET1Gの構成例を示す断面図である。
図19に示すように、縦型MOSFET1Gはトレンチゲート構造を有する。例えば、縦型MOSFET1Gは、GaN基板10に設けられ、GaN基板10の表面10a側に開口するトレンチHを有する。トレンチH内にゲート絶縁膜21を介してゲート電極22が配置されている。
【0126】
実施形態1に係る縦型MOSFET1と同様に、実施形態3に係る縦型MOSFET1Gも、p型のウェル領域13と接するn--型の第2ドリフト領域16と、n++型のGaN単結晶基板101と接するn+型の第3ドリフト領域17とを有する。また、n--型の第2ドリフト領域16とn+型の第3ドリフト領域17との間にn-型の第1ドリフト領域12が介在する。これにより、実施形態1と同様の効果を奏する。縦型MOSFET1Gを備えることにより、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量のGaN半導体装置100を提供することができる。
【0127】
また、縦型MOSFET1Gは、トレンチHの底部に設けられたp+領域31(本開示の「第1領域」の一例)を有する。p+領域31は、p型のウェル領域13よりもp型不純物濃度が高い。p+領域31は、トレンチHの底面の角部HCを覆うように設けられている。例えば、p+領域31のX軸方向における長さは、トレンチHの底面のX軸方向における長さよりも長い。p+領域31は、トレンチHの底面よりも上で、かつ、ゲート絶縁膜21の表面よりも下の位置から、トレンチHの底面よりも下の位置まで設けられている。
【0128】
これにより、トレンチHの底面の角部HCを覆うp+領域31からドリフト領域drf側へ空乏層を延ばすことができ、角部HCへの電界集中を緩和することができる。これにより、ゲートオフ時の耐圧をさらに高めることができる。
【0129】
<実施形態4>
上記実施形態1では、複数の縦型MOSFET1のゲート電極22及びソース電極25がZ軸方向からの平面視でストライプ状に配置されている態様を示した。この態様は、実施形態1だけでなく、実施形態2、3にも適用される、但し、本開示の実施形態1から3において、ゲート電極22及びソース電極25の配置はストライプ状に限定されず、ストライプ以外の配置であってもよい。ソース電極25の下方に位置するソース領域23、第2ドリフト領域16及び第3ドリフト領域17や、ゲート電極22の下方に位置する第4ドリフト領域19についても、同様であり、その配置はストライプ状に限定されない。以下、2つの例を示す。
【0130】
(1)構成例1
図20は、本開示の実施形態4に係る縦型MOSFET1Hの構成例を示す平面図である。
図20に示すように、縦型MOSFET1Hにおいて、n+型のソース領域23及びp+型のコンタクト領域15は、Z軸方向からの平面視で正方形に形成されている。平面視で正方形に形成されたソース領域23及びコンタクト領域15がX軸方向及びY軸方向にそれぞれ一定の間隔で並んで配置されている。
【0131】
ソース領域23及びコンタクト領域15上に位置するソース電極25と、ソース領域23及びコンタクト領域15下に位置する第2ドリフト領域16及び第3ドリフト領域17も、平面視で正方形に形成されており、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ一定の間隔で並んで配置されている。
【0132】
図20に示す平面図をB-B´線で切断すると、例えば
図2に示したような断面となる。このような構成であっても、実施形態1と同様に、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量のGaN半導体装置100を提供することができる。
【0133】
(2)構成例2
図21は、本開示の実施形態4に係る縦型MOSFET1Iの構成例を示す平面図である。
図21に示すように、縦型MOSFET1Iにおいて、n+型のソース領域23及びp+型のコンタクト領域15は、Z軸方向からの平面視で六角形に形成されている。平面視で六角形に形成されたソース領域23及びコンタクト領域15がX軸方向及びY軸方向にそれぞれ一定の間隔で並んで配置されている。
【0134】
ソース領域23及びコンタクト領域15上に位置するソース電極25と、ソース領域23及びコンタクト領域15下に位置する第2ドリフト領域16及び第3ドリフト領域17も、平面視で六角形に形成されており、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ一定の間隔で並んで配置されている。
【0135】
図21に示す平面図をC-C´線で切断すると、例えば
図2に示したような断面となる。このような構成であっても、実施形態1と同様に、低オン抵抗、高耐圧、低寄生容量のGaN半導体装置100を提供することができる。
【0136】
<その他の実施形態>
上記のように、本開示は実施形態1から4及びそれらの変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本開示を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、変形例が明らかとなろう。例えば、
図20及び
図21に示したソース領域23及びコンタクト領域15の平面視による形状は、八角形でもよいし、円形でもよい。
【0137】
このように、本開示はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。上述した実施形態1から4及びそれらの変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。本開示の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0138】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)
窒化物半導体と、
前記窒化物半導体に設けられた縦型電界効果トランジスタと、を備え、
前記窒化物半導体は、
第1導電型の窒化物半導体基板と、
前記窒化物半導体基板上に設けられた窒化物半導体層と、を有し、
前記縦型電界効果トランジスタは、
前記窒化物半導体層に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
前記窒化物半導体層に設けられた第2導電型のウェル領域と、を有し、
前記ドリフト領域は、
第1ドリフト領域と、
前記第1ドリフト領域よりも第1導電型の不純物濃度が低く、前記第1ドリフト領域と前記ウェル領域とにそれぞれ接する第2ドリフト領域と、
前記第1ドリフト領域よりも第1導電型の不純物濃度が高く、前記第1ドリフト領域と前記窒化物半導体基板とにそれぞれ接する第3ドリフト領域と、を有し、
前記窒化物半導体の厚さ方向において、前記第2ドリフト領域と前記第3ドリフト領域とが向かい合い、
前記第2ドリフト領域と前記第3ドリフト領域との間の少なくとも一部に前記第1ドリフト領域が介在する、窒化物半導体装置。
(2)
前記第2ドリフト領域と前記第3ドリフト領域は互いに離れている、前記(1)に記載窒化物半導体装置。
(3)
前記ウェル領域から前記窒化物半導体基板に向かって、前記第2ドリフト領域、前記第1ドリフト領域、前記第3ドリフト領域がこの順で並んでいる、前記(2)に記載の窒化物半導体装置。
(4)
前記厚さ方向と直交する水平方向であって、複数の前記ウェル領域が並ぶ方向を第1方向とすると、
前記第2ドリフト領域の前記第1方向における長さは、前記厚さ方向の位置によらず一定である、前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(5)
前記第2ドリフト領域の前記第1方向における長さと、前記第3ドリフト領域の前記第1方向における長さは互いに同一である、前記(4)に記載の窒化物半導体装置。
(6)
前記第2ドリフト領域の前記第1方向における長さよりも、前記第3ドリフト領域の前記第1方向における長さの方が短い、前記(4)に記載の窒化物半導体装置。
(7)
前記厚さ方向と直交する水平方向であって、複数の前記ウェル領域が並ぶ方向を第1方向とすると、
前記第2ドリフト領域の前記第1方向における長さは、前記ウェル領域から前記窒化物半導体基板に近づくにつれて連続的に又は段階的に短くなる、前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(8)
前記第2ドリフト領域の前記第1方向における最大長さよりも、前記第3ドリフト領域の前記第1方向における長さの方が短い、前記(7)に記載の窒化物半導体装置。
(9)
前記厚さ方向と直交する水平方向であって、複数の前記ウェル領域が並ぶ方向を第1方向とすると、
前記ドリフト領域は、
前記第1ドリフト領域よりも第1導電型の不純物濃度が高く、前記ウェル領域と前記第1方向で接する第4ドリフト領域をさらに有する、前記(1)から(8)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(10)
前記縦型電界効果トランジスタは、
前記窒化物半導体層に設けられ、前記ウェル領域と接する第1導電型のソース領域と、
前記窒化物半導体層を挟んで前記窒化物半導体基板の反対側に設けられ、前記ウェル領域と向かい合うゲート電極と、
前記ウェル領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜とをさらに有する、前記(1)から(9)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(11)
前記ゲート絶縁膜は、Si酸化膜、Al酸化膜、又は、Si酸化膜及びAl酸化膜の少なくとも一方を含む積層膜である、前記(10)に記載の窒化物半導体装置。
(12)
前記窒化物半導体層において前記窒化物半導体基板の反対側に位置する面を第1主面とすると、
前記窒化物半導体には前記第1主面側に開口するトレンチが設けられており、
前記縦型電界効果トランジスタは、前記トレンチ内に前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極が配置された、トレンチゲート構造を有する、前記(10)又は(11)に記載の窒化物半導体装置。
(13)
前記縦型電界効果トランジスタは、
前記トレンチの底部に設けられ、前記ウェル領域よりも第2導電型の不純物濃度が高い、第2導電型の第1領域、をさらに有する前記(12)に記載の窒化物半導体装置。
(14)
前記第1領域は前記トレンチの底面の角部を覆うように設けられている、前記(13)に記載の窒化物半導体装置。
(15)
前記ウェル領域の底部に設けられ、前記ウェル領域よりも第2導電型の不純物濃度が高い、第2導電型の第2領域、をさらに有し、
前記第2ドリフト領域は、前記第2領域を介して前記ウェル領域に隣接する、前記(1)から(14)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(16)
前記第1導電型はn型であり、前記第1ドリフト領域における実効ドナー濃度は1×1015cm-3以上5×1016cm-3以下である、前記(1)から(15)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(17)
前記第1導電型はn型であり、前記第2ドリフト領域における実効ドナー濃度は5×1014cm-3以上1×1016cm-3以下である、前記(1)から(16)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(18)
前記第1導電型はn型であり、前記第3ドリフト領域における実効ドナー濃度は、1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下である、前記(1)から(17)のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【符号の説明】
【0139】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H 縦型MOSFET
10 GaN基板
10a 表面
10b 裏面
12 第1ドリフト領域
13 ウェル領域
13´ ウェル形成領域
14、31 p+型領域
15 コンタクト領域
15´ コンタクト形成領域
16 第2ドリフト領域、(n--型のGaN層)
16´ 第2ドリフト形成領域
17 第3ドリフト領域
17´ 第3ドリフト形成領域
19 第4ドリフト領域
19´ 第4ドリフト形成領域
21 ゲート絶縁膜
22 ゲート電極
23 ソース領域
23´ ソース形成領域
25 ソース電極
26 ドレイン電極
100 GaN半導体装置
101 GaN単結晶基板
102 GaN層
161、162 (n--型の)GaN層
drf ドリフト領域
H トレンチ
HC 角部
M1、M2、M3、M4、M5、M6、M11、M12 マスク