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特開2024-179208車用コミュニケーションシステム、車用コミュニケーション方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179208
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車用コミュニケーションシステム、車用コミュニケーション方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241219BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097869
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 貴彦
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】車両の運転者に対してより利便性の高いコミュニケーションを提供することができる車用コミュニケーションシステム、車用コミュニケーション方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】車両に備えられたコミュニケーション装置と、利用者が前記車両を使用した際に得られる車両使用情報を蓄積する蓄積部と、を備え、前記コミュニケーション装置は、前記車両使用情報の蓄積に応じて前記利用者との会話に関するパラメータの値を変化させ、前記パラメータの値に基づいて前記利用者との会話の態様または内容を決定する、車用コミュニケーションシステム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられたコミュニケーション装置と、
利用者が前記車両を使用した際に得られる車両使用情報を蓄積する蓄積部と、
を備え、
前記コミュニケーション装置は、前記車両使用情報の蓄積に応じて前記利用者との会話に関するパラメータの値を変化させ、
前記パラメータの値に基づいて前記利用者との会話の態様または内容を決定する、
車用コミュニケーションシステム。
【請求項2】
前記パラメータの値は、前記車両使用情報の蓄積量に応じて増加する値であって、前記利用者と前記車両との間の親密度の指標値であり、
前記コミュニケーション装置は、前記利用者との会話について、前記パラメータの値が大きくなるほどより親密度の高い態様または内容の会話を決定する、
請求項1に記載の車用コミュニケーションシステム。
【請求項3】
前記蓄積部は、前記車両使用情報として複数種類の情報を蓄積するものであり、
前記パラメータの値は、前記親密度に関して前記複数種類の情報のそれぞれについて求められる指標値を合計したものであり、
前記複数種類の情報のそれぞれについて求められる指標値は、前記パラメータの最大値よりも低い上限値に制限される、
請求項2に記載の車用コミュニケーションシステム。
【請求項4】
前記複数種類の情報は、前記利用者による前記車両の運転に関して得られる情報の分類であるドライビング情報群と、前記利用者と前記コミュニケーション装置との会話に関して得られる情報の分類であるコミュニケーション情報群とのいずれかに分類されるものであり、
前記ドライビング情報群に分類される情報に係る前記上限値の合計は、前記コミュニケーション情報群に分類される情報に係る前記上限値の合計よりも低い、
請求項3に記載の車用コミュニケーションシステム。
【請求項5】
前記ドライビング情報群に分類される各情報に係る前記上限値の合計は、前記パラメータの最大値よりも低い、
請求項4に記載の車用コミュニケーションシステム。
【請求項6】
前記コミュニケーション装置が、前記親密度に関して保持している親密度情報を他の車両または他のコミュニケーション装置に引き継ぐための引継処理を実行する引継処理部をさらに備える、
請求項2に記載の車用コミュニケーションシステム。
【請求項7】
前記蓄積部は、前記車両使用情報として複数種類の情報を蓄積するものであり、
前記複数種類の情報は、前記利用者による前記車両の運転に関して得られる情報の分類であるドライビング情報群と、前記利用者と前記コミュニケーション装置との会話に関して得られる情報の分類であるコミュニケーション情報群とのいずれかに分類されるものであり、
前記引継処理部は、前記利用者が前記車両を他の車両に交換する場合には、前記ドライビング情報群に関する親密度情報を引き継がない、
請求項6に記載の車用コミュニケーションシステム。
【請求項8】
前記コミュニケーション装置は、前記パラメータの値が大きくなるほど、前記利用者との会話量を増加させる、
請求項2に記載の車用コミュニケーションシステム。
【請求項9】
前記車両使用情報は、前記車両の走行履歴を含む、
請求項1に記載の車用コミュニケーションシステム。
【請求項10】
前記車両使用情報は、前記利用者が前記コミュニケーション装置と行った対話に関する情報を含む、
請求項1に記載の車用コミュニケーションシステム。
【請求項11】
前記車両使用情報は、前記利用者が前記車両の使用に際して行った行動に関する情報を含む、
請求項1に記載の車用コミュニケーションシステム。
【請求項12】
車両に備えられたコミュニケーション装置と、利用者が前記車両を使用した際に得られる車両使用情報を蓄積する蓄積部と、を備える車用コミュニケーションシステムにおいて、
前記コミュニケーション装置が、
前記車両使用情報の蓄積に応じて前記利用者との会話に関するパラメータの値を変化させ、
前記パラメータの値に基づいて前記利用者との会話の態様または内容を決定する、
車用コミュニケーション方法。
【請求項13】
車両に備えられたコミュニケーション装置と、利用者が前記車両を使用した際に得られる車両使用情報を蓄積する蓄積部と、を備える車用コミュニケーションシステムの前記コミュニケーション装置に、
前記車両使用情報の蓄積に応じて前記利用者との会話に関するパラメータの値を変化させ、
前記パラメータの値に基づいて前記利用者との会話の態様または内容を決定させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車用コミュニケーションシステム、車用コミュニケーション方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて、ナビゲーション技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。ところで、ナビゲーション技術の一分野として、車両の運転者が発した独り言(つぶやき)に対して提案を行うコミュニケーション装置に関する技術が開発されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-133989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来は、運転者が発したつぶやきのうち一定のフレーズに対して予め設定された内容の返答を行うものであったため、運転者がコミュニケーション装置に対して親近感を覚えるまでには至らない場合があり、必ずしも利便性の高いコミュニケーションを提供できない可能性があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、車両の運転者に対してより利便性の高いコミュニケーションを提供することができる車用コミュニケーションシステム、車用コミュニケーション方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車用コミュニケーションシステム、車用コミュニケーション方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車用コミュニケーションシステムは、車両に備えられたコミュニケーション装置と、利用者が前記車両を使用した際に得られる車両使用情報を蓄積する蓄積部と、を備え、前記コミュニケーション装置は、前記車両使用情報の蓄積に応じて前記利用者との会話に関するパラメータの値を変化させ、前記パラメータの値に基づいて前記利用者との会話の態様または内容を決定するものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記パラメータの値は、前記車両使用情報の蓄積量に応じて増加する値であって、前記利用者と前記車両との間の親密度の指標値であり、前記コミュニケーション装置は、前記利用者との会話について、前記パラメータの値が大きくなるほどより親密度の高い態様または内容の会話を決定するものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記蓄積部は、前記車両使用情報として複数種類の情報を蓄積するものであり、前記パラメータの値は、前記親密度に関して前記複数種類の情報のそれぞれについて求められる指標値を合計したものであり、前記複数種類の情報のそれぞれについて求められる指標値は、前記パラメータの最大値よりも低い上限値に制限されるものである。
【0009】
(4):上記(3)の態様において、前記複数種類の情報は、前記利用者による前記車両の運転に関して得られる情報の分類であるドライビング情報群と、前記利用者と前記コミュニケーション装置との会話に関して得られる情報の分類であるコミュニケーション情報群とのいずれかに分類されるものであり、前記ドライビング情報群に分類される情報に係る前記上限値の合計は、前記コミュニケーション情報群に分類される情報に係る前記上限値の合計よりも低いものである。
【0010】
(5):上記(4)の態様において、前記ドライビング情報群に分類される各情報に係る前記上限値の合計は、前記パラメータの最大値よりも低いものである。
【0011】
(6):上記(2)の態様において、前記コミュニケーション装置が、前記親密度に関して保持している親密度情報を他の車両または他のコミュニケーション装置に引き継ぐための引継処理を実行する引継処理部をさらに備えるものである。
【0012】
(7):上記(6)の態様において、前記蓄積部は、前記車両使用情報として複数種類の情報を蓄積するものであり、前記複数種類の情報は、前記利用者による前記車両の運転に関して得られる情報の分類であるドライビング情報群と、前記利用者と前記コミュニケーション装置との会話に関して得られる情報の分類であるコミュニケーション情報群とのいずれかに分類されるものであり、前記引継処理部は、前記利用者が前記車両を他の車両に交換する場合には、前記ドライビング情報群に関する親密度情報を引き継がないものである。
【0013】
(8):上記(2)の態様において、前記コミュニケーション装置は、前記パラメータの値が大きくなるほど、前記利用者との会話量を増加させるものである。
【0014】
(9):上記(1)の態様において、前記車両使用情報は、前記車両の走行履歴を含むものである。
【0015】
(10):上記(1)の態様において、前記車両使用情報は、前記利用者が前記コミュニケーション装置と行った対話に関する情報を含むものである。
【0016】
(11):上記(1)の態様において、前記車両使用情報は、前記利用者が前記車両の使用に際して行った行動に関する情報を含むものである。
【0017】
(12):この発明の一態様に係る車用コミュニケーション方法は、車両に備えられたコミュニケーション装置と、利用者が前記車両を使用した際に得られる車両使用情報を蓄積する蓄積部と、を備える車用コミュニケーションシステムにおいて、前記コミュニケーション装置が、前記車両使用情報の蓄積に応じて前記利用者との会話に関するパラメータの値を変化させ、前記パラメータの値に基づいて前記利用者との会話の態様または内容を決定するものである。
【0018】
(13):この発明の一態様に係るプログラムは、車両に備えられたコミュニケーション装置と、利用者が前記車両を使用した際に得られる車両使用情報を蓄積する蓄積部と、を備える車用コミュニケーションシステムの前記コミュニケーション装置に、前記車両使用情報の蓄積に応じて前記利用者との会話に関するパラメータの値を変化させ、前記パラメータの値に基づいて前記利用者との会話の態様または内容を決定させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
(1)、(12)、(13)の態様によれば、車両の運転者に対してより利便性の高いコミュニケーションを提供することができる車用コミュニケーションシステム、車用コミュニケーション方法、およびプログラムを提供することができる。
【0020】
さらに(2)の態様によれば、車両使用情報の蓄積量が増加するほど、利用者とコミュニケーション装置との会話をより親密度の高い態様または内容のものとすることができる。換言すれば、利用者は自車両を使用すればするほど、コミュニケーション装置との間で、より親密度が高い態様または内容の会話を楽しむことができる。例えば、(8)の態様によれば、利用者は親密度を高めることで、コミュニケーション装置とより多くの会話を楽しむことができる。なお、利用者の体感的には、利用者とコミュニケーション装置との会話は利用者と自車両との会話ということもできる。
【0021】
また、(3)の態様によれば、車両使用情報のうち特定の種類の情報がパラメータの値に影響を及ぼしすぎてしまうことを抑制し、利用者とコミュニケーション装置との間の親密度をより適切に認識することができる。
【0022】
また、(4)、(5)の態様によれば、親密度に対するコミュニケーション情報群の影響度をドライビング情報群よりも大きくすることができるので、利用者とコミュニケーション装置との会話を促進することができる。
【0023】
また、(6)の態様によれば、自車両の乗り換えの際に、乗り換え元の自車両から新たな自車両に親密度の情報を引き継いでリセットされないようにすることで利用者が引き続き新たな自車両との親密度を上げていこうとするモチベーションを維持することができる。
【0024】
また、(7)の態様によれば、乗り換えの際に、ドライビング情報群に関する親密度を引き継がないことで、新たな自車両との親密度を上げていくために、利用者が自車両を使用するモチベーションを高めることができる。
【0025】
また、(9)の態様によれば、利用者が使用した自車両の走行履歴をもとに親密度を認識することにより、利用者と自車両との親密度をより適切に認識することができる。また、(10)の態様によれば、利用者と自車両との間の会話の態様または内容から、利用者と自車両との親密度をより適切に認識することができる。
【0026】
また、(11)の態様によれば、利用者が自車両の使用に際して行った行動(例えば各種車載機器、車載機能の操作など)をもとに、利用者と自車両との親密度をより適切に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態のコミュニケーション装置の構成例を示す図である。
図2】車両使用情報の概要を説明する図である。
図3】親密度パラメータの値を計算するために注目する事象の一例を示す図である。
図4】コミュニケーション装置が、利用者との会話の内容を決定する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】会話辞書情報の内容の一例を示す図である。
図6】親密度パラメータの値が増加する傾向のイメージを説明する図である。
図7】自車両と利用者との親密化の状況を視覚化して利用者に提示する方法の一例を示す図である。
図8】第2実施形態の車両親密度引継ぎシステムの構成例を示す図である。
図9】第2実施形態のコミュニケーション装置の構成例を示す図である。
図10】利用者に親密度履歴情報を提供する態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明の車用コミュニケーションシステム、車用コミュニケーション方法、およびプログラムの実施形態について説明する。実施形態のコミュニケーション装置は、車両に搭載され、当該車両の利用者と会話をする装置である。車用コミュニケーション装置と、車両使用情報を蓄積する蓄積部とは一体に構成されてもよいし、別体に構成されてもよい。例えば、蓄積部は車用コミュニケーション装置とネットワークを介して通信可能なクラウドサーバとして構成されてもよい。車用コミュニケーション装置と蓄積部とを備えたシステムが車用コミュニケーション装置の一例である。車用コミュニケーション装置は、車両の利用者とコミュニケーションを図ることにより、車両の利便性を向上させることを目的としたものである。ここでいう利用者とは、当該車両の主たる利用者(運転者)であり、典型的には車両の所有者である。以下では、車両の乗員のうち利用者以外の乗員を同乗者と言う場合がある。利用者の車両は同乗者によって運転されてもよい。
【0029】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のコミュニケーション装置100Aの構成例を示す図である。コミュニケーション装置100Aは、音声入力部110と、音声出力部120と、車両通信部130と、入出力部140と、制御部150Aと、記憶部160とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0030】
記憶部150は、上記の各種記憶装置、或いはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。記憶部150は、車両使用情報162および会話辞書情報164を記憶するほか、任意のデータの格納領域として使用されてよい。車両使用情報162および会話辞書情報164の詳細については後述する。
【0031】
音声入力部110は、マイク等の音声入力装置である。音声入力部110は、入力した音声データを制御部150Aに出力する。
【0032】
音声出力部120は、スピーカ等の音声出力装置である。音声出力部120は、制御部150Aから入力した音声信号を音声に変換して出力する。
【0033】
車両通信部130は、コミュニケーション装置100Aを搭載する車両(以下「自車両」という。)と通信するための通信インターフェースである。例えば、車両通信部130は、CAN(Controller Area Network)インターフェースである。車両通信部130は、例えば、自車両のECU(Electronic Control Unit)や、ナビゲーション装置などと通信する。コミュニケーション装置100Aは、ナビゲーション装置の一部として構成されてもよい。
【0034】
入出力部140は、情報の入力機能または出力機能を備えた装置である。例えば、入出力部140は、タッチパネルであってもよい。入出力部140の入力機能は、例えばマウスやキーボード等の入力装置によって実現されてもよい。入出力部140の出力機能は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)などの表示装置によって実現されてもよい。また、入出力部140が音声によって情報を入出力する場合、音声入力部110または/および音声出力部120と一体に構成されてもよい。
【0035】
制御部150Aは、例えば、情報管理部152と、パラメータ更新部154と、会話決定部156と、を備える。情報管理部152は、利用者が自車両を使用した際に得られる情報であって、当該利用者が自車両を使用したことによって得られる車両使用情報162を取得して記憶部160に蓄積する。より具体的には、車両使用情報162には、利用者との会話に関するコミュニケーション情報群162Cと、利用者による自車両の運転に関するドライビング情報群162Dとが含まれる。
【0036】
図2は、車両使用情報162の概要を説明する図である。例えば、ドライビング情報群162Dには、走行距離や乗車時間、自車両が初めて訪れた場所(以下「初訪問場所」という。)などの情報が含まれる。以下では、ドライビング情報群162Dに含まれる走行距離や乗車時間、初訪問場所の情報を、それぞれ、第1~第3のドライビング情報と称する場合がある。
【0037】
一方、コミュニケーション情報群162Cには、例えば、運転者との会話に関する情報、同乗者との会話に関する情報、利用者とのあいさつに関する情報、利用者の趣味や嗜好に関して認識された情報、利用者との会話において認識された新語に関する情報、などが含まれる。以下では、コミュニケーション情報群162Cに含まれる、運転者との会話に関する情報、同乗者との会話に関する情報、利用者とのあいさつに関する情報、利用者の趣味や嗜好に関して認識された情報、利用者との会話において認識された新語に関する情報を、それぞれ、第1~第5のコミュニケーション情報と称する場合がある。
【0038】
ここでいう利用者は運転者であってもよいし、同乗者であってもよいし、その両方であってもよい。コミュニケーション情報群162Cに含まれる情報は、会話の内容に関する情報であってもよいし、会話の量に関する情報であってもよいし、会話の頻度に関する情報であってもよいし、会話のタイミングに関する情報であってもよい。
【0039】
図1に戻る。情報管理部152は、コミュニケーション情報群162Cを取得するための機能として、利用者が発した音声を認識する機能を有する。情報管理部152は、入力された音声データに対して音声認識処理を実行することにより、利用者が発した音声の内容を示すテキストデータを取得する。音声認識処理には、例えば、音響分析や音響モデルなどによって音素や単語を認識する処理や、言語モデルや発音辞書などにより音素の並びを特定して単語に変換する処理などが含まれる。情報管理部152は、取得したテキストデータをもとに利用者との会話の内容を分析し、その分析結果をコミュニケーション情報群162Cとして記憶部160に蓄積する。コミュニケーション情報群162Cは、都度の会話の内容を分析したものであってもよいし、過去の所定期間における会話の内容を分析したものであってもよい。分析に必要なテキストデータは、コミュニケーション情報群162Cと同様に記憶部160に蓄積されてよい。
【0040】
情報管理部152は、利用者が自車両の運転を行った際に、自車両の各部からドライビング情報群162Dを取得する。例えば、情報管理部152は、カーナビゲーションシステムやECU(Electronic Control Unit)などの車載機器からドライビング情報群162Dを取得してもよい。情報管理部152は、このように取得したドライビング情報群162Dを記憶部160に蓄積する。
【0041】
パラメータ更新部154は、記憶部160に蓄積された車両使用情報162に基づいて、利用者と自車両の親密度を表すパラメータ(以下「親密度パラメータ」という。)を更新する。例えば、パラメータ更新部154は、車両使用情報162をもとに、親密度を認識するために定められた所定事象のそれぞれについて親密度に相関する値を算出し、それらの相関値の総和を親密度パラメータの値として計算する。以下、この事象ごとに計算される親密度との相関値を「事象別親密度」という。
【0042】
利用者が自車両に対してどの程度の親近感を抱いているかは、利用者とコミュニケーション装置100Aとの間で行われる会話の態様に現れ得る。また、利用者が自車両に対してどの程度の親近感を抱いているかは、利用者による自車両の使用の態様に現れ得る。そこで、パラメータ更新部154は、車両使用情報162がコミュニケーション装置100Aに蓄積されていくのに応じて、最新の車両使用情報162に基づき親密度パラメータを順次更新していくものである。より具体的には、パラメータ更新部154は、車両使用情報162に含まれる情報種別ごとに注目すべき各事象を認識して事象別親密度を算出し、それらを合算したものを親密度パラメータの値として計算する。
【0043】
会話決定部156は、利用者に対して話しかける会話の内容を親密度パラメータに基づいて決定する。上述のとおり、親密度パラメータは、車両使用情報162の蓄積に応じて、パラメータ更新部154により随時更新されていくので、会話決定部156は、親密度パラメータに基づいて会話内容を決定することにより、利用者との親密度に応じた会話内容を決定することができる。会話決定部156は、このように決定した会話内容の音声データを生成して音声出力部120に出力する。
【0044】
このような構成を備えることにより、コミュニケーション装置100Aは、利用者の発した音声の内容を認識して利用者と自車両の親密度を推定するとともに、利用者との間で親密度に応じた内容の会話を行うことができる。
【0045】
[親密度パラメータの算出方法]
図3は、本実施形態において親密度パラメータの値を計算するために注目する事象の一例を示す図である。図3に示されるように、本実施形態において、パラメータ更新部154は、ドライビング情報群162Dに基づく第1~第3の事象と、コミュニケーション情報群162Cに基づく第4~第8の事象に注目して親密度パラメータの値を計算する。
【0046】
ここで、第1の事象は自車両の走行距離であり、例えば自車両のECUから取得され得る。すなわち、自車両のオドメーターの数値が増加すると親密度パラメータが増加することになる。
【0047】
また、第2の事象は利用者が自車両に乗車した時間(乗車時間)である。ここでいう乗車時間は、利用者による自車両の使用量を時間の経過の観点で表すものであれば、どのように定義されてもよい。例えば、乗車時間は、エンジンの始動操作(スタートボタンの押下やキー操作によるイグニッションオン操作など)が行われてから停止操作が行われるまでの間の時間として計算され得る。すなわち、この時間が長くなると親密度パラメータの値が増加することになる。なお、乗車時間は、累積時間であってもよいし、最長時間であってもよい。
【0048】
また、例えば、乗車時間は、各種センサにより車室内の人の存在が検知されている状態の延べ経過時間として計算され得る。また、例えば、乗車時間は、ドアのキーロックがキー操作によって開錠されてから施錠されるまでの延べ経過時間として計算されてもよい。また、例えば、乗車時間は、自車両が走行状態にある時間の延べ経過時間として計算されてもよい。なお、第2の事象について事象別親密度の算出に必要となる情報(例えば、各種時刻や経過時間などの情報)は、ドライビング情報群162Dとして自車両においてECUなどにより適宜記録されるものとする。また、図1では図示していないが、自車両は、第2の事象について事象別親密度の算出に必要となる情報の取得手段(例えば各種センサなど)を有しているものとする。
【0049】
また、第3の事象は、利用者が自車両を運転して訪れた場所のうち、初めて訪れた場所(初訪問場所)の個数である。例えば、初訪問場所は、公園や施設、観光地などであってもよいし、予め定められた特定の地点であってもよい。第3の事象は、自車両の位置情報をもとに認識され得る。自車両の位置情報は、ドライビング情報群162Dとして自車両において適宜記録されるものとする。また、図1では図示していないが、第3の事象の認識に関し、自車両は、位置情報の取得手段(例えばGPSやGNSSなど)を有しているものとする。第3の事象において、初訪問場所は、厳密に初訪問場所である必要はなく、そのように見做される条件を満たした場所であってよい。
【0050】
例えば、初訪問場所の個数は、ナビゲーションシステムに対して目的地を設定した回数として計算されてもよい。この場合、利用者がナビゲーションシステムに対して目的地設定した回数が増加するほど親密度パラメータの値を増加させてもよい。また、例えば、初訪問場所の個数は、利用者が自宅以外の場所で所定時間(例えば1時間)以上滞在した(例えばエンジンを完全に停止した)場所として計算されてもよい。この場合、例えば、利用者は自車両を運転して自宅以外の場所を訪れ、エンジンを1時間以上完全に停止した状態とした場合に親密度パラメータの値を増加させてもよい。
【0051】
また、第4の事象は、コミュニケーション装置100Aが運転者と行った会話に基づいて認識され得る事象である。例えば、第4の事象は、会話の量や頻度であってもよいし、会話の内容をもとに数値として認識され得る事象であってもよい。例えば、この場合、コミュニケーション装置100Aが、運転者の音声を認識して、運転者と会話をしている(運転者の音声に返答している)時間が増加することに応じて親密度パラメータの値が増加させてもよい。
【0052】
第5の事象も、第4の事象と同様に、コミュニケーション装置100Aが同乗者(運転者以外の乗員)と行った会話に基づいて認識され得る事象である。例えば、この場合、コミュニケーション装置100Aが、同乗者の音声を認識して、同乗者と会話をしている(同乗者の音声に返答している)時間が増加することに応じて親密度パラメータの値を増加させてもよい。
【0053】
また、第6の事象は、コミュニケーション装置100Aが利用者と行った会話のうちあいさつを含む会話に基づいて認識され得る事象である。例えば、第6の事象は、あいさつの量や頻度であってもよいし、あいさつの仕方や内容をもとに数値として認識され得る事象であってもよい。例えば、この場合、利用者が「おはよう」、「こんにちは」、「ただいま」、「ありがとう」、「おやすみ」、「おつかれさま」などのあいさつ文を、上記乗車時間の始めまたは終わりに発するたびに親密度パラメータの値を増加させてもよい。
【0054】
また、第7の事象は、コミュニケーション装置100Aが運転者と行った会話に基づいて認識され得る事象のうち、運転者の趣味や嗜好に関して認識され得る事象である。例えば、第7の事象は、運転者について認識することができた趣味や嗜好の量であってもよいし、予め定められた趣味・嗜好の種別に対し、運転者について認識することができたものの数や割合などであってもよい。例えば、この場合、利用者の音声やラジオの音声などをもとに、利用者の好きな音楽や、利用者の好みの室内温度、利用者が訪れた場所などが認識されるごとに親密度パラメータの値を増加させてもよい。なお、好みの室内温度や利用者が訪れた場所などは、ドライビング情報群162Dをもとに認識されてもよい。
【0055】
第8の事象も、第4の事象と同様に、コミュニケーション装置100Aが利用者と行った会話に基づいて認識され得る事象のうち、新語に関して認識され得る事象であり、例えば、認識することができた新語の量であってもよいし、予め定められた単語に対し、認識することができたものの数や割合などであってもよい。例えば、この場合、コミュニケーション装置100Aは、利用者との会話において新語が認識されるごとに、親密度パラメータの値を増加させてもよい。
【0056】
なお、第7の事象または/および第8の事象は、上述のように、コミュニケーション装置100Aと利用者(運転者または同乗者)とが直接的に行った会話に基づいて認識されるものであってもよいし、コミュニケーション装置100Aが運転者と同乗者の会話から間接的に認識したものであってもよい。
【0057】
パラメータ更新部154は、上述の第1~第8の事象ごとに事象別親密度を算出し、それらの合計を親密度パラメータの値として計算するものである。さらに、本実施形態では、親密度パラメータの値をより適切に計算するために、各事象別親密度に対して、親密度パラメータに計上する際の上限となる割合を設ける。図3は、第1~第3の事象、第5の事象、および第8の事象について10%の上限割合を設け、第6および第7の事象について15%の上限割合を設け、第4の事象について20%の上限割合を設けた場合の例である。例えば、親密度パラメータの上限値を10000とした場合、第1~第3の事象、第5の事象、および第8の事象については、上限割合10%に相当する事象別親密度1000を上限として親密度パラメータに計上される。また、この場合、第6および第7の事象については、上限割合15%に相当する事象別親密度1500を上限として親密度パラメータに計上される。また、この場合、第8の事象については、上限割合20%に相当する事象別親密度2000を上限として親密度パラメータに計上される。なお、上限割合を情報種別ごとに見た場合、図3の例は、ドライビング情報群162Dに30%の上限割合を設け、コミュニケーション情報群162Cに70%の上限割合を設けるものである、ということもできる。
【0058】
このように、親密度パラメータの値を計算する際の各事象別親密度に上限が設けられることにより、コミュニケーション装置100Aは、一部の事象の事象別親密度の影響が大きくなりすぎることを抑制して、親密度パラメータの値をより適切に計算することができる。その結果、コミュニケーション装置100Aは、利用者と自車両の親密度をより適切に推定することが可能となり、利用者との間でより適切な会話を行うことができる。
【0059】
[親密度パラメータに基づく会話内容の決定方法]
図4は、コミュニケーション装置100Aが、利用者との会話の内容を決定する処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、情報管理部152が、音声入力部110を介して自車両の利用者の音声が入力されたか否かを判定する(S101)。ここで、利用者の音声が入力されたと判定した場合、情報管理部152は、入力された音声データについて音声認識処理を実行する(S102)。この音声認識処理において、情報管理部152は、少なくとも、音声の内容を認識するとともに、音声を発した利用者が運転者または同乗者のいずれであるかを認識することができるものとする。このような音声認識を実現するため、音声認識処理には、上述の単語認識処理のほか、入力された音声から人の音声を認識する処理や、音声を発した利用者を識別する処理、音声を発した利用者を特定する処理などが含まれてよい。なお、音声の特徴量をもとに利用者の特定を行う場合、コミュニケーション装置100Aは、特定対象の利用者の音声について参照用の特徴量を予め記憶していてもよい。
【0060】
続いて、会話決定部156が、音声認識処理の結果と、現在の親密度パラメータの値とをもとに、利用者が発した言葉に対して応答すべき会話の内容を決定し(S103)、決定した会話の内容を音声データに変換して音声出力部120に出力する。例えば、会話決定部156は、利用者が発した音声の内容と会話辞書情報164とに基づいて利用者に応答する会話の内容を決定してもよい。図5は、会話辞書情報164の内容の一例を示す図である。会話辞書情報164は、例えば、利用者が発した音声の内容の種別(音声内容種別)に対して、詳細情報と、親密度パラメータと、応答の内容とが対応づけられた情報である。例えば、利用者が発した音声の内容の種別は、利用者が発した会話の話題やトピックなどの情報である。詳細情報は、利用者が発した音声の内容の詳細情報である。親密度パラメータは、対応する音声種別内容および詳細情報の会話に対して、利用者との親密度に応じた応答内容を決定するための親密度パラメータの条件である。例えば、図5の例において、親密度パラメータの値が60である利用者が「今日の天気」という話題について「今日は暑い」という詳細情報を発言した場合、会話決定部156は、利用者に応答する会話の内容として「設定温度を下げたほうがよういでしょうか。」を選択する。
【0061】
なお、このような会話辞書情報164に基づいて応答内容を決定する方法は一例である。会話決定部156は、利用者の発言した内容に対して、親密度パラメータに基づく適切な内容を応答できる方法であれば、応答内容の決定にどのような方法を用いてもよい。例えば、会話決定部156は、利用者が発した音声に関する情報と、親密度パラメータとを入力として応答内容を出力するように構築された会話モデルを用いて利用者との会話内容を決定してもよい。会話モデルは機械学習の手法によって学習されたものであってもよいし、既存の任意の会話モデルに親密度パラメータを組み込んだものであってもよい。親密度パラメータは、会話の内容のほか、口調や応答する言葉の量を変動させるパラメータとして用いられてもよい。すなわち、会話決定部156は、親密度パラメータの値に基づいて利用者との会話の態様または内容を決定するものである。
【0062】
また、親密度パラメータの値は、車両使用情報162の蓄積量に応じて増加する値であってもよい。この場合、会話決定部156は、利用者との会話について、車両使用情報162の蓄積量が増加するほど、より親密度の高い態様または内容の会話を決定するように構成されてもよい。また、会話決定部156は、親密度パラメータの値が大きくなるほど、利用者との会話量を増加させるように会話の態様または内容を決定してもよい。
【0063】
図4に戻る。音声出力部120は、S103で決定された会話の内容を示す音声データを音声に変換して出力する(S104)。続いて、情報管理部152が、その時点で最新の車両使用情報162を取得して記憶部160に保存し(S105:車両使用情報の更新)、パラメータ更新部154が、記憶部160に蓄積されている車両使用情報162に基づいて親密度パラメータの値を更新する(S106)。一方、S101において音声の入力がないと判定された場合、応答すべき音声が発せられていない状況であるので、この場合、コミュニケーション装置100Aは、S102~S104の処理をスキップしてS105に処理を進める。
【0064】
なお、図4の例では、利用者に応答する会話の内容を決定する処理と、最新の車両使用情報162を取得する処理と、親密度パラメータの値を更新する処理とを一連の処理フローの中で実施する場合について説明したが、これらの処理は別々の独立した処理フローの中で実施されてもよい。例えば、最新の車両使用情報162を取得する処理は所定の期間ごと(例えば1日ごと、1時間ごとなど)に行われてもよいし、よりリアルタイムに近いタイミングで行われてもよい。また、例えば、車両使用情報162のうち、コミュニケーション情報群162Cの更新は利用者との会話に応じて行われてもよいし、ドライビング情報群162Dの更新は利用者による自車両の運転操作に応じて行われてもよい。
【0065】
[親密度パラメータの増加傾向]
図6は、親密度パラメータの値が増加する傾向のイメージを説明する図である。上述のとおり、親密度パラメータの値は、第1~第8の事象の各事象別親密度を合算して計算されるものである。図6は、図3の例のように、親密度パラメータの上限値に対して、コミュニケーション情報群162Cの占める割合がドライビング情報群162Dの占める割合よりも大きくなるように事象別親密度の上限割合を設定した場合の増加傾向のイメージを表すものである。この場合、図6に示されるように、親密度パラメータの値は、利用者が自車両の運用を開始した時点T1(乗り始め)のゼロから、運用期間の増大に応じて、情報種別(大分類)ごとの比率を保ちながら増大していくように、増加傾向が制御される。この制御は、事象別親密度に上限割合を設定することにより実現される。
【0066】
また、図6に示されるように、親密度パラメータの値は、T1時点のゼロから、運用期間が増大するにつれて、増加速度が緩やかになっていくように設定されている。具体的には、第3~10の事象の様に情報が初期に多く蓄積され徐々に鈍化される事象に注目することにより設定できる。なお、親密度パラメータの計算式に、乗り始めから現時点までの運用期間の長さの逆数に基づく係数を組み込むことにより実現してもよい。
【0067】
なお、図6に示されるように、親密度パラメータは、事象別親密度の合計値そのものではなく、上限値を最高レベルとしたレベル値に換算されてもよい。図6は、親密度パラメータの上限値を10000とした場合の例であり、この例において最高レベルを100と定義した場合、親密度パラメータの値は、事象別親密度の合計が10000に到達したときにレベル100に到達するものである。
【0068】
[自車両と利用者との親密化の状況の視覚化]
図7は、自車両と利用者との親密化の状況を視覚化して利用者に提示する方法の一例を示す図である。情報管理部152は、現時点における各事象別親密度の値を、現時点における事象別親密度として平均的な値を示す統計値(以下「代表値」という。)と比較可能な態様で表示することにより、自車両との親密化の状況を視覚化して利用者に提示する。代表値は、例えば、平均値や中央値、最頻値などであってもよい。
【0069】
図7の例は、時間を横軸にとり、現時点(図7の例では5年経過時)を示す縦軸L1を代表値に対応させ、現時点における各事象別親密度の値V1~V8と、それぞれの代表値との乖離をイナズマ線で示したものである。ここで、矩形オブジェクトB1~B8は、横軸方向に想定する運用期間(図7の例では10年)に応じた長さを有し、乗り始め時点T1において事象別親密度の初期値(すなわちゼロ)を表し、想定する運用期間の満了時点T2において、T2時点における事象別親密度の代表値を表すものである。このようなグラフが表示されることにより、利用者は自車両との親密度をより詳細に認識することができるので、利用者はより効率良く自車両との親密化を図ることが可能となる。また、このようなグラフが表示されることにより、自車両とのさらなる親密化について具体的な目標を設定しやすくなるので、利用者が自車両を使用するモチベーションを向上させることができる。
【0070】
以上説明した第1実施形態によれば、車両の運転者に対してより利便性の高いコミュニケーションを提供することができる。
【0071】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態の車両親密度引継ぎシステム1の構成例を示す図である。車両親密度引継ぎシステム1は、利用者が自車両の乗り換えを行う際に、自車両と利用者の間の親密度を、乗り換え前の自車両から乗り換え後の自車両に引き継ぐ機能を提供するシステムである。車両親密度引継ぎシステム1は、例えば、第2実施形態のコミュニケーション装置100Bと、サーバ装置200とを備える。コミュニケーション装置100BはネットワークNWを介してサーバ装置200と通信可能である。ネットワークNWは、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、公衆回線、プロバイダ装置、専用回線、無線基地局などを含んでよい。
【0072】
サーバ装置200は、通信部210と、親密度引継ぎ部220と、記憶部230とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0073】
通信部210は、サーバ装置200をネットワークNWに接続する通信インターフェースである。通信部210は、有線でネットワークNWに接続するものであってもよいし、無線でネットワークNWに接続するものであってもよい。通信部210は、自車両Mに搭載されたコミュニケーション装置100BとネットワークNWを介して通信する。
【0074】
親密度引継ぎ部220は、コミュニケーション装置100Bと通信し、親密度の引継ぎ処理を実行する。親密度の引継ぎ処理は、親密度の引継ぎに必要なデータ(以下「引継ぎデータ」という。)を乗り換え前の自車両M1から収集し、収集した引継ぎデータを乗り換え後の自車両M2に送信する処理である。
【0075】
ここで、乗り換え前の自車両M1と、乗り換え後の自車両M2にはそれぞれ別体の異なるコミュニケーション装置100Bが搭載されてもよいし、乗り換え前の自車両M1に搭載されたコミュニケーション装置100Bを乗り換え後の自車両M2に移設して、同一のコミュニケーション装置100Bを継続して使用するようにしてもよい。いずれの場合にも、乗り換え時に親密度の引継ぎ処理を実施することにより、利用者と自車両との間の親密度を乗り換え後の自車両に引き継ぐことができる。
【0076】
記憶部230は、上記の各種記憶装置、或いはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。記憶部150は、引継ぎデータ232を記憶するほか、任意のデータの格納領域として使用されてよい。
【0077】
図9は、第2実施形態のコミュニケーション装置100Bの構成例を示す図である。第2実施形態のコミュニケーション装置100Bは、外部通信部150をさらに備える点、制御部150Aに代えて制御部150Bを備える点で第1実施形態のコミュニケーション装置100Aと異なる。また、制御部150Bは、引継ぎ処理部158をさらに備える点で制御部150Aと異なる。図9では、第1実施形態のコミュニケーション装置100Aと同様の構成については図1と同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0078】
外部通信部150は、コミュニケーション装置100BをネットワークNWに接続する通信インターフェースである。外部通信部150は、無線通信インターフェースである。外部通信部150は、ネットワークNWを介してサーバ装置200と通信する。
【0079】
親密度引継ぎ部220は、自車両の乗り換え時において、利用者との親密度を乗り換え前の自車両から乗り換え後の自車両に引き継ぐための処理(以下「引継ぎ処理」という。)を実行する。引継ぎ処理は、例えば、第1引継ぎ処理と第2引継ぎ処理とを含む。
【0080】
[第1引継ぎ処理]
第1引継ぎ処理は、乗り換え前の自車両に搭載されたコミュニケーション装置100Bにおいて実行されるものであり、乗り換え前のコミュニケーション装置100Bに保存されている事象別親密度の情報を引継ぎデータとしてサーバ装置200に送信する処理である。第1引継ぎ処理で送信された引継ぎデータは、サーバ装置200において自車両の利用者に紐づけて保存される。第2引継ぎ処理は、第1引継ぎ処理でサーバ装置200に保存された引継ぎデータをサーバ装置200から取得し、取得した引継ぎデータを用いて乗り換え前の事象別親密度を乗り換え後のコミュニケーション装置100Bに復元する処理である。
【0081】
より具体的には、引継ぎ処理部158は、記憶部160に保存されている車両使用情報162のうちコミュニケーション情報群162Cをもとに引継ぎデータを生成し、生成した引継ぎデータをサーバ装置200に送信する。引継ぎ処理部158は、コミュニケーション情報群162Cを引継ぎデータとして送信してもよいし、事象別親密度の更新の際にそれ以前のコミュニケーション情報を必要としない場合には現在の事象別親密度の情報を引継ぎデータとして送信してもよい。引継ぎ処理部158は、利用者がコミュニケーション装置100Bに対して所定の操作を行った場合に第1引継ぎ処理を実行するように構成されてもよいし、利用者の操作によらずに予め定められたタイミングで連続的に(例えば定期的に)第1引継ぎ処理を実行するように構成されてもよい。
【0082】
[第2引継ぎ処理]
第2引継ぎ処理は、乗り換え後の自車両に搭載されたコミュニケーション装置100Bにおいて実行されるものであり、第1引継ぎ処理において保存された引継ぎデータをサーバ装置200から取得し、取得した引継ぎデータをもとに、乗り換え後のコミュニケーション装置100Bにおいて乗り換え前の事象別親密度を復元する処理である。例えば、引継ぎデータとしてコミュニケーション情報群162Cが提供される場合には、取得されたコミュニケーション情報群162Cをもとに事象別親密度を計算してもよい。また、例えば、引継ぎデータとして事象別親密度の情報が提供される場合、引継ぎ処理部158は、引継ぎデータを親密度情報として記憶部160に保存してもよい。
【0083】
引継ぎ処理部158は、利用者が自車両を乗り換える際に、上記の第1引継ぎ処理および第2引継ぎ処理を実行することにより、乗り換え前の自車両の使用(自車両を運転したり、自車両の設備を操作したり、自車両に乗降することなど)によって蓄積された親密度をリセットし、新たな自車両の使用に応じて親密度を再び蓄積することができる。一方で、引継ぎ処理部158は、乗り換え前において利用者とのコミュニケーションによって蓄積された親密度を乗り換え後に引き継ぐことができる。このため、利用者は、乗り換えまでの自車両とのコミュニケーションによって得られた親密度を維持しながらも、新たな自車両との親密度を高めようとして、自車両を使用するモチベーションを高く持つことが期待される。
【0084】
[親密度履歴情報の提供]
図10は、利用者に親密度履歴情報を提供する態様の一例を示す図である。上述のとおり、第2実施形態の車両親密度引継ぎシステム1によれば、利用者が自車両を乗り換えた場合であっても、一定の親密度が維持されるので、利用者が自車両を使用するモチベーションを高めることができる。また、そのような親密度の履歴が視覚化されることにより、利用者に自車両に対する愛着を感じさせやすくしたり、達成した実績に対する満足感を感じさせたり、親密度を高めようとするモチベーションを向上させたりすることができる。図10は、このような親密度履歴情報の表示態様の一例として、カレンダー形式の情報提供を例示するものである。
【0085】
図10の例は、1回の乗り換え(モデルAからモデルBへの乗り換え)を含む自車両の運用履歴と、親密度履歴とを対応付けて表示したものである。また、図10の例は、自車両の利用頻度をカレンダーに対応させて表示するとともに、親密度の変遷とともに、達成した親密度のマイルストーンを表示するようにしたものである。このような態様で親密度履歴情報を提供することにより、利用者が自車両を使用するモチベーションを高めることができる。すなわち、上記の実施形態によれば、自車両の運転者に対してより利便性の高いコミュニケーションを提供することができる。
【0086】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
車両に備えられたコミュニケーション装置と、利用者が前記車両を使用した際に得られる車両使用情報を蓄積する蓄積部と、を備える車用コミュニケーションシステムにおいて、
前記コミュニケーション装置が、
前記車両使用情報の蓄積に応じて前記利用者との会話に関するパラメータの値を変化させ、
前記パラメータの値に基づいて前記利用者との会話の態様または内容を決定する、
コミュニケーション装置。
【0087】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0088】
<変形例>
コミュニケーション装置100Bは、親密度の引継ぎ処理が乗り換え時に必ず実行するように構成されてもよい。例えば、コミュニケーション装置100Bは、起動時などの所定のタイミングにおいて自車両の変更(乗り換え)の有無を判定し、自車両が変更されたことを検知した場合に親密度の引継ぎ処理を実行するように構成されてもよい。例えば、コミュニケーション装置100Bは、上記所定のタイミングにおいて自車両に搭載された他の電子機器(例えばECUなど)から自車両の識別情報を取得して記憶部160に保存しておき、次回取得される識別情報と比較することにより自車両の変更の有無を判定するように構成されてもよい。上述のとおり、親密度の引継ぎ処理では、車両使用情報162のうちコミュニケーション情報群162Cについてのみ事象別親密度が引き継がれる。このため、コミュニケーション装置100Bは、自車両の乗り換えを検知して親密度の引継ぎ処理を実行することにより、親密度が不正に引き継がれてしまうことを防止することができる。例えば、移設時に、ドライビング情報群162Dについても事象別親密度が引き継がれてしまうことを防止することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 車両親密度引継ぎシステム
100A、100B コミュニケーション装置
110 音声入力部
120 音声出力部
130 車両通信部
140 入出力部
150 記憶部
150A、150B 制御部
152 情報管理部
154 パラメータ更新部
156 会話決定部
158 処理部
160 記憶部
162 車両使用情報
162C コミュニケーション情報群
162D ドライビング情報群
164 会話辞書情報
170 外部通信部
200 サーバ装置
210 通信部
220 親密度引継ぎ部
230 記憶部
232 引継ぎデータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10