(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179211
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】プログラム、端末装置、情報処理方法、及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20241219BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097872
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉井 雅子
(72)【発明者】
【氏名】船橋 一樹
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 才明
(72)【発明者】
【氏名】松岡 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】坂井 直樹
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】計測データに基づいて、ユーザの健康状態に関する情報を管理する情報処理システムにおいて、ユーザの計測による負担を減らすことを目的とする。
【解決手段】プログラムは、ユーザの健康状態に関する情報を含む状態情報を管理する管理処理と、前記状態情報に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する決定処理と、前記計測データを計測する端末装置に前記計測時間を通知する通知処理と、をコンピュータに実行させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの健康状態に関する情報を含む状態情報を管理する管理処理と、
前記状態情報に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する決定処理と、
前記計測データを計測する端末装置に前記計測時間を通知する通知処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項2】
前記状態情報は、前記ユーザの前記計測データの計測履歴を含み、
前記決定処理は、前記計測履歴に基づいて前記計測時間を変更する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記決定処理は、前記ユーザの前記計測データの計測頻度、又は計測間隔に基づいて前記計測時間を変更する、請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記状態情報は、前記ユーザの客観評価結果を含み、
前記決定処理は、前記ユーザの客観評価結果、又は前記客観評価結果の変化傾向に基づいて前記計測時間を変更する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記状態情報は、前記ユーザの主観評価結果を含み、
前記決定処理は、前記ユーザの主観評価結果、又は前記主観評価結果の変化傾向に基づいて前記計測時間を変更する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記状態情報は、前記ユーザの勤務状況に関する情報を含み、
前記決定処理は、前記ユーザの前記勤務状況に関する情報に基づいて前記計測時間を変更する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記決定処理は、前記状態情報に加えて、計測環境に基づいて前記計測時間を変更する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
ユーザの健康状態に関する情報を含む状態情報を取得する取得部と、
前記状態情報に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する決定部と、
前記計測時間に基づいて、前記計測データを計測する計測部と、
を有する、端末装置。
【請求項9】
ユーザの健康状態に関する情報を含む状態情報を管理する管理処理と、
前記状態情報に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する決定処理と、
前記計測データを計測する端末装置に前記計測時間を通知する通知処理と、
をコンピュータが実行する、情報処理方法。
【請求項10】
サーバ装置と、前記サーバ装置と通信可能な端末装置が実行するプログラムとを含む情報処理システムであって、
前記サーバ装置は、
ユーザの健康状態に関する情報を含む状態情報を管理する管理部と、
前記状態情報に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する決定部と、
前記計測データを計測する前記端末装置に前記計測時間を通知する通知部と、
を有し、
前記プログラムは、
前記サーバ装置から通知された測定時間に従って、前記計測データを計測する計測処理を、
前記端末装置に実行させる、
情報処理システム。
【請求項11】
ユーザの健康状態に関する情報を含む状態情報を取得する処理と、
前記状態情報に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する処理と、
前記計測時間に基づいて、前記計測データを計測する処理と、
を端末装置に実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、端末装置、情報処理方法、及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
PC(Personal Computer)、又はスマートフォン等の利用者端末が備えるカメラで利用者端末を利用する利用者を撮影し、撮影した動画像に基づいて利用者の脈波、及び脈波伝搬速度等を測定する測定システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、生体情報を測定するシステムにおいて、ユーザの負担感を軽減するために、ユーザの健康度合を示す健康度合情報に基づいて、ユーザに対する生体情報測定装置の計測間隔、又は計測タイミングを決定する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの生体情報を計測した計測データに基づいて、ユーザの健康状態を管理したいという要求がある。しかし、計測データに基づいて、ユーザの健康状態を管理するためには、ユーザによる計測データの定期的な計測が必要になる。
【0005】
例えば、特許文献2に開示された技術により、ユーザの健康度合情報に基づいて、計測間隔、又は計測タイミングを変えることができる。ただし、この方法だけでは、1回の計測による負担がまだ大きく、ユーザが定期的に計測データの計測を継続することには困難を伴っていた。
【0006】
本発明の一実施形態は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、計測データに基づいて、ユーザの健康状態に関する情報を管理する情報処理システムにおいて、ユーザの計測による負担を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、一実施形態に係るプログラムは、ユーザの健康状態に関する情報を含む状態情報を管理する管理処理と、前記状態情報に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する決定処理と、前記計測データを計測する端末装置に前記計測時間を通知する通知処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、計測データに基づいて、ユーザの健康状態に関する情報を管理する情報処理システムにおいて、ユーザの計測による負担を減らすことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る情報処理システムのシステム構成の例を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。
【
図3】一実施形態に係る情報端末のハードウェア構成の例を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る情報処理システムの機能構成の例を示す図(1)である。
【
図5】一実施形態に係る情報処理システムの機能構成の例を示す図(2)である。
【
図6】一実施形態に係る情報処理システムの処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態に係る主観評価画面のイメージを示す図である。
【
図8】一実施形態に係る判定処理の例を示すフローチャートである。
【
図9】一実施形態に係る客観指標の算出処理の例を示すフローチャートである。
【
図10】第1の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャートである。
【
図11】第2の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャート(1)である。
【
図12】第2の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャート(2)である。
【
図13】第3の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャートである。
【
図14】第4の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャートである。
【
図15】第5の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャートである。
【
図16】第6の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャートである。
【
図17】第7の実施形態に係る情報処理システムの処理の例を示すフローチャートである。
【
図18】第7の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態(本実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<システム構成>
図1は、一実施形態に係る情報処理システムのシステム構成の例を示す図である。情報処理システム1は、例えば、インターネット、及びLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNに接続された、端末装置100、サーバ装置10、及び管理者端末20等を含む。
【0012】
端末装置100は、管理対象となるユーザ101が利用する、例えば、PC(Personal Computer)、タブレット端末、又はスマートフォン等の情報端末である。一例として、ユーザ101は、企業の従業員であり、端末装置100は、従業員が業務に利用する情報端末である。ユーザは、例えば、企業の事業所、自宅、又はリモートワーク場所等で、端末装置100を用いて業務を行う。ただし、これは一例であり、ユーザは、端末装置100とは異なる情報端末を用いて業務を行うものであってもよい。また、ユーザは、企業の従業員に限られない。
【0013】
端末装置100は、ユーザの脈波を計測するための計測デバイス102を備えている。計測デバイス102は、例えば、カメラ、脈波センサ、又は心電センサ等、ユーザの脈波を計測できる任意のデバイスであってよい。計測デバイス102は、端末装置100に内蔵されていてもよいし、端末装置100の外部に接続されていてもよい。例えば、計測デバイス102は、有線ケーブルで端末装置100に接続されていてもよいし、無線通信により端末装置100に接続されていてもよい。ここでは、計測デバイス102が、端末装置100に内蔵されたカメラであるものとして、以下の説明を行う。
【0014】
端末装置100は、所定のプログラム(計測アプリケーション)を実行することにより、計測デバイス102を用いて、ユーザ101の客観評価データである脈波データを計測する。なお、客観評価データ、及び脈波データは、ユーザ101の健康状態を判定するための計測データの一例である。
【0015】
サーバ装置10は、例えば、コンピュータの構成を備えた情報処理装置、又は複数のコンピュータで構成されるシステムである。サーバ装置10は、所定のプログラムを実行することにより、ユーザの健康状態に関する情報である状態情報を管理し、必要な情報を管理者端末20に通知する。
【0016】
情報処理システム1は、端末装置100が計測した客観評価データに基づいて、ユーザの健康状態を判定する判定機能、及びサーバ装置10が管理する状態情報に基づいて、客観評価データの計測に要する計測時間を決定する決定機能を有している。また、情報処理システム1は、端末装置100を用いて、例えば、アンケートの回答等の主観評価データを取得し、客観評価データと主観評価データとに基づいて、ユーザの健康状態を判定してもよい。なお、判定機能、及び決定機能は、端末装置100が有していてもよいし、サーバ装置10が有していてもよい。
【0017】
管理者端末20は、ユーザ101の健康状態を管理する管理者21が利用する、例えば、PC、タブレット端末、又はスマートフォン等の情報端末である。なお、管理者21には、例えば、ユーザ101が所属する企業の上司、人事担当者、産業医、又は保健師等が含まれる。管理者21は、例えば、企業の事業所、自宅、又はリモートワーク場所等で、管理者端末20を用いて、ユーザ101の健康状態を管理することができる。
【0018】
(健康状態の判定について)
人の心拍間隔は自律神経系である交感神経と副交感神経の神経活動のバランスを反映してゆらいでおり、このことを心拍変動(HRV: Heart Rate Variability)と呼ぶ。交感神経は身体的、又は精神的負荷に対して抵抗するため身体を活性化させる働きを持ち、副交感神経は休息、又は休養を要求する働きを持つ。身体的、又は精神的負荷により、交感神経の亢進が起これば心拍数は増加し、心拍間隔が短縮することからストレスを表す指標となる。例えば、心拍間隔の時系列変化を見ることによって、身体的、又は精神的ストレスの指標になるということが知られている。
【0019】
また、心拍変動には、2つの周波数帯域の異なる成分があることが知られている。第1の成分は呼吸に由来する周波数帯域0.15Hz~0.4Hzの成分であり、HF(High Frequency component)と呼ばれる。HFは、副交感神経系の活動が低下すると小さくなるといわれている。第2の成分は血圧のMayer波に由来するとされている周波数帯域0.04Hz~0.15Hzの成分であり、LF(Low Frequency component)と呼ばれる。LFは、交感神経系と副交感神経系の両方の活動を反映するので、両者の比を取ったLF/HFは、生体の疲労度やストレス度を評価する指標として活用されている。また、慢性疲労を表す指標としてLFとHFの和であるTP(Total Power)も活用されている。
【0020】
計測を実施していくと、LF、及びHFは、年齢や個人差の影響もあり、定期的に健康状態を評価するには各値の変化量を見ることが重要であることが分かった。また、ストレスが高くなるとHFが減衰する傾向、又は疲労が蓄積してくるとLFとHFの両値が減衰する傾向があることも分かった。
【0021】
本実施形態に係る情報処理システム1は、一例として、上述したHF、LF、LF/HF、及びTP等の自律神経の状態を表す指標を用いて、ユーザの健康状態を判定する。
【0022】
(処理の概要)
自律神経の状態を示す指標を正確に計測するためには、着座・閉眼の安静な状態で少なくとも90秒、望ましくは3分程度の時間を要する。また、ユーザ101の健康状態の管理に利用するためには、毎日、又は数日ごと等、定期的な計測が必要である。従って、例えば、特許文献2に開示された技術のように、計測間隔、又は計測タイミングを変えただけでは1回の計測ごとの負担がまだ大きく、ユーザ101が定期的に計測データの計測を継続することには困難を伴っていた。
【0023】
そこで、本実施形態に係る情報処理システム1は、ユーザ101の健康状態に関する情報である状態情報を管理し、状態情報に基づいて、ユーザ101の健康状態を判定するための客観評価データ(計測データ)の計測に要する計測時間を決定する。例えば、情報処理システム1は、ユーザ101の健康状態が比較的良好である場合、計測時間をより短く変更する。
【0024】
具体的な一例として、HFは0.15Hz~0.40Hzの周波数帯のパワー積分値から算出するため、最低でも6.6秒、精度を担保するためにはその数倍程度の15~30秒程度の計測データを要する。また、LFは、0.04Hz~0.15Hzの周波数帯のパワー積分値から算出するため、最低でも25秒、精度を担保するためにはその数倍程度の1分~3分程度の計測データを要する。
【0025】
例えば、情報処理システム1は、基本的に、LFとHFとを算出可能な計測時間(計測時間2)でLFとHFとを算出するが、ユーザ101の健康状態が比較的良好である場合、HFを算出可能な計測時間(計測時間1)でHFを算出する。なお、この場合でも、情報処理システム1は、例えば、サーバ装置10が管理しているユーザ101の過去のLF値を利用して、LF/HF、TP等の指標を推定することができる。
【0026】
このように、本実施形態に係る情報処理システム1によれば、健康状態が比較的良好なユーザ101の計測の負担を低減することができる。また、情報処理システム1は、健康状態が比較的良好でないユーザ101の情報を、管理者21に通知する。これにより、管理者21は、当該ユーザ101に対して適切な対応が可能になる。
【0027】
このように、本実施形態によれば、計測データに基づいて、ユーザ101の健康状態に関する情報を管理する情報処理システム1において、ユーザが定期的に計測データの計測を継続することが容易になる。
【0028】
<ハードウェア構成>
端末装置100、サーバ装置10、及び管理者端末20、及びは、一例として、
図2に示すようなコンピュータ200のハードウェア構成を備えている。別の一例として、サーバ装置10は、複数のコンピュータ200によって構成されるものであってもよい。また、端末装置100、又は管理者端末20は、
図3で後述する情報端末のハードウェア構成を有していてもよい。
【0029】
(コンピュータのハードウェア構成)
図2は、一実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。コンピュータ200は、例えば、
図2に示されるように、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、HD(Hard Disk)204、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ205、ディスプレイ206、外部機器接続I/F(Interface)207、ネットワークI/F208、キーボード209、ポインティングデバイス210、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ212、メディアI/F214、及びバスライン215等を備えている。
【0030】
これらのうち、CPU201は、コンピュータ200全体の動作を制御する。ROM202は、例えば、起動用ファイル等のコンピュータ200の起動に用いられるプログラム、及びデータ等を記憶する。RAM203は、例えば、CPU201のワークエリア等として使用される。
【0031】
HD204は、例えば、OS(Operating System)、アプリケーション、デバイスドライバ等のプログラム、及び各種データ等を記憶する。HDDコントローラ205は、例えば、CPU201の制御に従ってHD204に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。なお、HD204、及びHDDコントローラ205は、コンピュータ200が備えるストレージデバイスの一例である。
【0032】
ディスプレイ206は、例えば、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像などの各種情報を表示する。なお、ディスプレイ206は、コンピュータ200の外部に設けられていてもよい。外部機器接続I/F207は、コンピュータ200に、外部装置を接続するためのインタフェースである。ここで、外部装置には、例えば、カメラ等の計測デバイス102が含まれる。なお、コンピュータ200は、計測デバイス102を内蔵していてもよい。
【0033】
ネットワークI/F208は、例えば、通信ネットワークN等を利用してデータ通信をするためのインタフェースである。キーボード209は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス210は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行なう入力手段の一種である。なお、キーボード209、及びポインティングデバイス210は、コンピュータ200の外部に設けられていてもよい。
【0034】
DVD-RWドライブ212は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW211に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。なお、DVD-RW211は、DVD-RWに限らず、他の着脱可能な記録媒体であってもよい。メディアI/F214は、フラッシュメモリ等のメディア213に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。バスライン215は、上記の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバス、データバス及び各種の制御信号等を含む。
【0035】
(情報端末のハードウェア構成)
図3は、一実施形態に係る情報端末のハードウェア構成の一例を示す図である。端末装置100、又は管理者端末20は、例えば、
図3に示すような情報端末300のハードウェア構成を有していてもよい。
【0036】
図3に示されているように、情報端末300は、CPU301、ROM302、RAM303、ストレージデバイス304、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ305、撮像素子I/F306、加速度・方位センサ307、メディアI/F309、GPS(Global Positioning System)受信部310を備えている。
【0037】
これらのうち、CPU301は、所定のプログラムを実行することにより情報端末300全体の動作を制御する。ROM302は、例えば、IPL(Initial Program Loader)等のCPU301の起動に用いられるプログラムを記憶する。RAM303は、CPU301のワークエリア等として使用される。ストレージデバイス304は、OS、アプリケーション等のプログラム、及び各種のデータ等を記憶する大容量の記憶装置である。
【0038】
CMOSセンサ305は、CPU301の制御に従って被写体(主に自画像)を撮像して画像データを得る内蔵型の撮像手段の一種である。なお、情報端末300は、CMOSセンサ305に代えて、CCD(Charge Coupled Device)センサ等の撮像手段を有していてもよい。撮像素子I/F306は、CMOSセンサ305の駆動を制御する回路である。なお、CMOSセンサ305、及び撮像素子I/F306は、端末装置100が内蔵する撮像装置11の一例である。
【0039】
加速度・方位センサ307は、地磁気を検知する電子磁気コンパスやジャイロコンパス、加速度センサ等の各種センサである。メディアI/F309は、フラッシュメモリ等のメディア(記憶メディア)308に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。GPS受信部310は、GPS衛星からGPS信号(測位信号)を受信する測位デバイスである。
【0040】
また、情報端末300は、遠距離通信回路311、遠距離通信回路311のアンテナ311a、CMOSセンサ312、撮像素子I/F313、マイク314、スピーカ315、音入出力I/F316、ディスプレイ317、外部機器接続I/F318、近距離通信回路319、近距離通信回路319のアンテナ319a、及びタッチパネル320等を備えている。
【0041】
これらのうち、遠距離通信回路311は、例えば、通信ネットワークNを介して、他の装置と通信する回路である。CMOSセンサ312は、CPU301の制御に従って被写体を撮像して画像データを得る内蔵型の撮像手段の一種である。撮像素子I/F313は、CMOSセンサ312の駆動を制御する回路である。マイク314は、音を電気信号に変える内蔵型のデバイスである。スピーカ315は、電気信号を物理振動に変えて音楽や音声などの音を生み出す内蔵型のデバイスである。音入出力I/F316は、CPU301の制御に従ってマイク314及びスピーカ315との間で音波信号の入出力を処理する回路である。
【0042】
ディスプレイ317は、被写体の画像や各種アイコン等を表示する液晶や有機EL(Electro Luminescence)等の表示手段の一種である。外部機器接続I/F318は、各種の外部機器を接続するためのインタフェースである。近距離通信回路319は、近距離無線通信を行う回路を含む。タッチパネル320は、利用者がディスプレイ317を押下することで、情報端末300を操作する入力手段の一種である。
【0043】
また、情報端末300は、バスライン321を備えている。バスライン321は、
図3に示されているCPU301等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバス、データバス、及び各種の制御信号等を含む。
【0044】
<機能構成>
図4は、一実施形態に係る情報処理システムの機能構成の例を示す図(1)である。この図は、情報処理システム1の機能構成の一例を示している。
【0045】
(サーバ装置の機能構成)
サーバ装置10は、例えば、HD204等の記憶媒体に記憶した所定のプログラムをCPU201が実行することにより、通信部401、取得部402、判定部403、管理部404、決定部405、通知部406、及び情報提供部407等の各機能構成を実現している。なお、上記の各機能構成のうち、少なくとも一部は、ハードウェアによって実現されるものであってもよい。
【0046】
また、サーバ装置10は、例えば、CPU201が実行するプログラム、HD204、及びHDDコントローラ205等により、記憶部408を実現している。
【0047】
通信部401は、例えば、ネットワークI/F208等を用いて、サーバ装置10を通信ネットワークNに接続し、端末装置100、又は管理者端末20等の他の装置と通信する通信処理を実行する。
【0048】
取得部402は、端末装置100が送信する、ユーザ101の客観評価データ、又はユーザ101の客観評価データと主観評価データ等の評価データを取得する取得処理を実行する。ここで、客観評価データは、例えば、端末装置100が計測したユーザ101の脈波データである。また、主観評価データは、例えば、端末装置100で、アンケート等の主観評価を行った場合、ユーザ101による主観評価の回答(アンケートの回答)等である。
【0049】
判定部403は、取得部402が取得した評価データに基づいて、ユーザ101の健康状態(精神的な健康状態)を判定する判定処理を実行する。なお、判定部403が実行する判定処理の処理内容については、フローチャートを用いて後述する。
【0050】
管理部404は、取得部402が取得した評価データ、判定部403が判定したユーザ101の健康状態等を含む状態情報409を管理する管理処理を実行する。例えば、管理部404は、取得部402が取得した評価データ、判定部403が判定したユーザ101の健康状態、及び日時情報(評価データを取得した日時、又は健康状態を判定した日時)等を、記憶部408の状態情報409に記憶する。
【0051】
決定部405は、管理部404が管理する状態情報に基づいて、ユーザの健康状態を判定するための計測データである客観評価データの計測に要する計測時間を決定する決定処理を実行する。なお、決定部405が実行する決定処理の処理内容については、フローチャートを用いて後述する。
【0052】
通知部406は、客観評価データを計測する端末装置100に、決定部405が決定した計測時間を通知する通知処理を実行する。端末装置100は、通知部406から通知された計測時間に基づいて、ユーザ101の客観評価データを計測する。
【0053】
情報提供部407は、管理部404が管理する状態情報409に基づいて、管理者端末20、又は端末装置100等に情報を提供する情報提供処理を実行する。例えば、情報提供部407は、状態情報409に基づいて、必要な情報を管理者端末20等に通知する。
【0054】
記憶部408は、例えば、状態情報409を含む様々な情報、データ、及びプログラム等を記憶する。
【0055】
(端末装置の機能構成)
ここでは、端末装置100が、
図2に示すようなコンピュータ200のハードウェア個性を有しているものとして、以下の説明を行う。
【0056】
端末装置100は、例えば、HD204等の記憶媒体に記憶した所定のプログラム(計測アプリケーション)をCPU201が実行することにより、通信部411、計測部412、表示制御部413、操作受付部414、及び送信部415等の各機能構成を実現している。なお、上記の各機能構成のうち、少なくとも一部は、ハードウェアによって実現されるものであってもよい。
【0057】
通信部411は、例えば、ネットワークI/F208等を用いて、端末装置100を通信ネットワークNに接続し、サーバ装置10等の他の装置と通信する通信処理を実行する。
【0058】
計測部412は、サーバ装置10から通知された計測時間に基づいて、ユーザ101の客観評価データを計測する計測処理を実行する。具体的な一例として、計測部412は、カメラ(計測デバイス102の一例)でユーザ101の動画像を撮影し、ユーザ101の肌領域のRGB値を抽出し、抽出したRGB値から脈波データ(客観評価データの一例)を計測する。例えば、計測部412は、肌領域のRGB値の時系列データから、独立主成分分析の手法を用いて脈拍に伴う信号変化成分である脈波成分を抽出し、脈波データとする。なお、計測部412が計測する客観評価データは、脈波データに限られず、例えば、心電センサ等で計測した心拍データ等であってもよい。
【0059】
表示制御部413は、例えば、後述する主観評価画面等の様々な表示画面を、ディスプレイ206等に表示させる表示制御処理を実行する。操作受付部414は、ユーザ101による端末装置100への操作を受け付ける操作受付処理を実行する。例えば、操作受付部414は、表示制御部413が表示した主観評価画面等に対する、ユーザの回答を受け付ける。
【0060】
なお、表示制御部413は、端末装置100が実行する評価アプリケーションが作成した主観表示画面を表示させてもよいし、サーバ装置10が提供する主観表示画面を表示するためのウェブページを表示させてもよい。
【0061】
送信部415は、計測部412が計測した客観評価データを含む評価データを、サーバ装置10に送信する送信処理を実行する。なお、端末装置100が実行する評価アプリケーションで主観評価データを取得した場合、送信部415は、客観評価データと主観評価データとを含む評価データを、サーバ装置10に送信する。
【0062】
なお、
図4に示した情報処理システム1の機能構成は一例である。例えば、情報処理システム1は、
図5に示すように、端末装置100が、判定部403、及び決定部405を有していてもよい。
【0063】
図5の例では、端末装置100が、判定部403による判定処理、及び決定部405による決定処理等を実行する。この場合、決定部405は、サーバ装置10から、状態情報409を取得し、取得した状態情報409に基づいて、客観評価データの計測に要する計測時間を決定する。この場合、サーバ装置10は、通知部406を有していなくてもよい。この場合、送信部415は、例えば、評価データと、判定部403が判定したユーザ101の健康状態を、サーバ装置10に送信する。
【0064】
別の一例として、端末装置100は、管理部404、及び情報提供部407等をさらに有していてもよい。この場合、管理部404は、状態情報409を、情報処理システム1の外部のストレージサーバ、又はクラウドストレージ等に記憶して管理してもよい。このように、情報処理システム1の機能構成は、様々な構成とすることができる。
【0065】
<処理の流れ>
続いて、本実施形態に係る情報処理方法の処理の流れについて説明する。
【0066】
(情報処理システムの処理)
図6は、一実施形態に係る情報処理システムの処理の例を示すフローチャートである。この処理は、情報処理システム1が実行する処理の概要を示している。なお、ここでは、情報処理システム1が、
図4に示すような機能構成を有しているものとして、以下の説明を行う。
【0067】
ステップS601において、決定部405は、管理部404が管理する状態情報409に基づいて、ユーザ101の健康状態を判定するための客観評価データ(計測データ)の計測に要する計測時間を決定する決定処理を実行する。なお、決定部405が実行する計測時間の決定処理の具体的な処理内容については後述する。
【0068】
なお、
図5に示すように、端末装置100が決定部405を有している場合、端末装置100の決定部405は、サーバ装置10から状態情報409を取得し、取得した状態情報409に基づいて、客観評価データの計測に要する計測時間を決定する決定処理を実行する。
【0069】
ステップS602において、取得部402は、決定部405が決定した計測時間に基づいて、計測部412が計測した客観評価データ(例えば、脈波データ)を含む評価データを端末装置100から取得する。
【0070】
なお、取得部402は、計測部412が計測した客観評価データと共に、主観評価データを含む評価データを取得してもよい。主観評価データは、例えば、
図7に示すような主観評価画面700を、表示制御部413がディスプレイ206等に表示させ、ユーザ101による回答を操作受付部414が受け付けたアンケート結果等である。主観評価画面700に表示する設問の内容は、精神的な健康状態に関連する設問、例えば、ストレス、睡眠不足、仕事の満足度、又は人間関係等について問う設問を設定する。また、回答の取得方法は、例えば、
図7に示すように、数段階の選択肢などが望ましいが、設問にたいする回答を取得することができれば他の方法でもよい。例えば、回答の取得方法は、スケールを表示して現在の状態の位置を回答してもらうVAS法(Visual Analogue Scale法)、又はフリーコメントで入力してもらう方法等であってもよい。
【0071】
なお、
図5に示すように、端末装置100が判定部403を有している場合、ステップS602において、端末装置100の判定部403は、計測部412が計測した客観評価データを取得する。また、端末装置100の判定部403は、表示制御部413、又は操作受付部414から、主観評価結果をさらに取得してもよい。
【0072】
ステップS603において、判定部403は、取得した評価データに基づいて、ユーザ101の健康状態(精神的な健康状態)を判定する判定処理を実行する。なお、判定部403が実行する判定処理の具体的な処理内容については後述する。
【0073】
ステップS604において、管理部404は、取得部402が取得した評価データ、判定部403が判定したユーザ101の健康状態の判定結果、及び日時情報等を状態情報409に記憶する。ここで、日時情報は、例えば、評価データを取得した日時、又は健康包袋を判定した日時等を含む。
【0074】
なお、
図5に示すように、端末装置100が判定部403を有している場合、端末装置100の送信部415は、判定部403が取得した評価データ、ユーザ101の健康状態の判定結果、及び日時情報等を、サーバ装置10に送信する。サーバ装置10の管理部404は、取得部402が端末装置100から取得した評価データ、ユーザ101の健康状態の判定結果、及び日時情報等を、状態情報409に記憶する。
【0075】
ステップS605において、情報提供部407は、必要な情報を管理者端末20等に通知する。必要な情報には、注意すべきユーザの情報と、当該ユーザの精神状態の不調を防止するための勧告とが含まれることが望ましい。注意すべきユーザとは、判定部403が、健康状態が悪いと判定したユーザである。またユーザの精神状態の不調を防止するための勧告とは、被験者の精神的健康状態を改善するために役立つ情報である。精神的健康状態を改善するために役立つ情報は、例えば働き方、運動、食品、サプリメント、睡眠、マッサージ、リラクゼーション、マインドフルネス、癒しグッズ、疲労軽減グッズ、環境、又はカウンセリング等に関する情報である。情報提供部407は、例えば、管理者端末20が実行する評価アプリケーションに、上述した必要な情報を表示することにより、管理者21に必要な情報を通知することができる。
【0076】
なお、必要な情報には、上述した各情報以外の情報が含まれていてもよい。また、情報提供部407は、ユーザ101の精神状態の不調を防止するための勧告を、ユーザ101が利用する端末装置100に通知してもよい。また、情報提供部407による通知方法は、管理者21に必要な情報を通知することができれば、他の方法で通知してもよい。例えば、情報提供部407は、必要な情報を電子メール等で管理者21等に通知してもよい。
【0077】
図6の処理により、管理者21は、注意すべきユーザ101を容易に把握できるため、ユーザ101の精神的な健康状態が悪化する前に早期に対応することが可能になる。また
図6の処理により、管理者21はユーザ101の精神状態の不調を防止するための勧告を容易に把握できるため、ユーザ101に対して、より効果的な対応をとることが可能になる。従って、本実施形態に係る情報処理システム1によれば、ユーザ101のメンタルヘルス不調等の症状を未然に防止することが容易になる。
【0078】
(判定処理)
図8は、一実施形態に係る判定処理の例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、
図6のステップS603において、判定部403が、ユーザ101の健康状態を判定する判定処理の一例を示している。
【0079】
ステップS801において、判定部403は、
図6のステップS602で取得した客観評価データに基づいて、客観指標を算出する。ここでは、一例として、判定部403は、客観評価データの一例である脈波データに基づいて、自律神経指標のTP(トータルパワー)を算出し、TPを客観指標として用いるものとして、以下の説明を行う。なお、脈波データから、自律神経指標のTPを算出する処理の詳細については後述する。
【0080】
TPは疲労の蓄積と関連する指標であり、疲労が蓄積すると意欲低下、又は抑うつ傾向等の精神的健康状態の不調に繋がることが知られている。従って、TPを客観指標として用いることで、客観的に精神的な健康状態を評価することができる。
【0081】
ただし、判定部403が算出する客観指標は、精神的健康状態を表す指標であれば他の指標であってもよい。判定部403が算出する客観指標は、例えば、HR(平均心拍数)、SDNN(心拍間隔の標準偏差)、LF(主に交感神経の活性度を表す指標)、HF(副交感神経の活性度を表す指標)、又はLF/HF(自律神経機能のバランスを指標)等であってもよい。
【0082】
また、判定部403が算出する客観指標は、1つである必要はなく、複数の指標を用いてもよい。例えば、判定部403は、自律神経指標のTPとLF/HFの両方を客観指標として用いてもよい。さらに、判定部403が算出する客観指標は、
図6のステップS602で取得した客観評価データに加えて、過去の客観評価データに基づいて算出されるものであってもよい。例えば、判定部403が算出する客観指標は、直近1か月のTPの平均値、又は前回のTPからの変化量等であってもよい。また、判定部403は、上述した様々な指標を組み合わせ、健康状態の分類、又は点数化等を行って、客観指標としてもよい。
【0083】
ステップS802において、判定部403は、
図6のステップS602で取得した評価データに含まれる主観評価データに基づいて、主観指標を算出する。なお、
図6のステップS602で取得した評価データに、主観評価データが含まれていない場合、判定部403は、ステップS802の処理を省略することができる。
【0084】
ここでは、一例として、判定部403は、
図7に示すような主観評価画面700において、ユーザ101が選択した疲労度(例えば、1:非常に感じる、2:感じる、3:どちらとも言えない、4:感じない、5:全く感じない)を主観指標として用いるものとして、以下の説明を行う。疲労の主観値である疲労感も精神的な健康状態を判定する上で重要な指標であることが知られている。従って、判定部403は、疲労感の数値を主観指標として用いることで、主観的な健康状態を評価することができる。
【0085】
なお、判定部403が算出する主観指標は、精神的な健康状態を表す指標であれば他の指標でもよい。例えば、判定部403が算出する主観指標は、ストレス感、又は睡眠不足等を問う設問にたいする回答を数値化した指標等であってもよい。また、判定部403が算出する主観指標は、1つである必要はなく、複数の指標を用いてもよい。例えば、判定部403が算出する主観指標は、疲労感の数値とストレス感の数値の両方を主観指標として用いてもよい。
【0086】
また、判定部403が算出する主観指標は、
図6のステップS602で取得した主観評価データに加え、過去の主観評価データに基づいて算出されるものであってもよい。例えば、判定部403が算出する主観指標は、直近1か月の疲労感の数値の平均値、又は前回の疲労感の数値からの変化量等であってもよい。
【0087】
なお、判定部403は、ステップS802の処理を、ステップS801の処理を実行する前に実行してもよい。また、判定部403が実行する判定処理には、ステップS802の処理が含まれていなくてもよい。
【0088】
ステップS803において、判定部403は、例えば、ステップS801で算出した客観指標に基づいて、ユーザ101の健康状態(精神的な健康状態)を判定する。一例として、判定部403は、「客観指標であるTPが基準値以下」の場合に、精神的健康状態が悪いと判定し、管理者21に必要な情報を通知する指示を行う。ここで、基準値は、ユーザ101の健康状態が悪いか否かを判定するための値が予め設定されているものとする。
【0089】
なお、判定部403は、ユーザ101の精神的な健康状態を判定することができれば、他の客観指標を用いて、ユーザ101の健康状態を判定してもよい。例えば、判定部403は、前述したHR、SDNN、LF、HF、又はLF/HF等を用いて、ユーザ101の健康状態を判定してもよい。また、判定部403が、ユーザ101の健康状態の判定に用いる客観指標は、1つである必要はなく、複数の指標を用いてもよい。例えば、判定部403は、自律神経指標のTPとLF/HFの両方、又はさらに多くの客観指標値をパラメータとした評価式を作成し、算出した評価値を所定の基準値と比較することで、ユーザ101の健康状態を判定してもよい。
【0090】
また、判定部403は、ユーザ101の健康状態を、良い、悪い、の2段階ではなく、例えば、良い、注意、要注意等、3段階以上の判定を行ってもよい。
【0091】
なお、上述した基準値は、管理者21が変更できることが望ましい。これにより、管理者21は、基準値を厳しくして精神的な健康状態が悪い被験者を漏れなく抽出する、又は基準値を緩くして精神的な健康状態が特に悪い被験者のみを抽出したりする等、状況に応じてアラートが出る被験者の数をコントロールすることが可能となる。
【0092】
また、判定部403は、ステップS801で算出した客観指標だけでなく、ステップS802で算出した主観指標に基づいて、ユーザ101の健康状態を判定してもよい。例えば、判定部403は、「主観指標である疲労感の数値が第1の基準値以下」の場合、又は「主観指標である疲労感の数値は第1の基準値より大きいが、客観指標であるTPが第2の基準値以下」の場合に、ユーザ101の健康状態が悪いと判定してもよい。ここで、第1の基準値、及び第2の基準値は、ユーザ101の健康状態が悪いか否かを判定するための値が予め設定されているものとする。
【0093】
発明者らのこれまでの検討により、主観的な疲労度が高いユーザは、客観的な疲労度も高くなるケースが多いことが分かっている。よって、前者の「主観指標である疲労感の数値が第1の基準値以下」の条件により、本ケースに該当する精神的健康状態が悪いユーザを判定することができる。また前述した検討により、主観的な疲労度が低いユーザでも、客観的な疲労度が高いケースがあることが分かっている。よって、後者の「主観指標である疲労感の数値は第1の基準値より大きいが、客観指標であるTPが第2の基準値以下」の条件により、本ケースに該当する精神的健康状態が悪いユーザを判定することができる。
【0094】
ステップS804において、判定部403は、ユーザ101の健康状態の判定結果を、例えば、管理部404に出力する。なお、判定部403は、ユーザ101の健康状態の判定結果を、端末装置100に送信して、端末装置100にユーザ101の健康状態の判定結果を表示させてもよい。
【0095】
(客観指標の算出処理)
図9は、一実施形態に係る客観指標の算出処理の例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、
図8のステップS801において、判定部403が、客観評価データの一例である脈波データに基づいて、自律神経指標のTPを算出する処理の例を示している。
【0096】
ステップS901において、判定部403は、脈波データから脈拍間隔を算出する。脈拍間隔の算出は、既存の技術を用いればよい。例えば、判定部403は、脈波データから、脈波信号がピークとなる時間を検出し、隣り合うピーク間の時間間隔から脈拍間隔を算出してもよい。
【0097】
ステップS902において、判定部403は、脈拍間隔データの周波数解析を行うために、リサンプリングにより脈拍間隔を等間隔にする。リサンプリングの時間間隔は、例えば、0.25秒とする。リサンプリングする経過時間における信号値は、例えば補間により求めればよい。補間の方法としては、例えば、線形補間、又はスプライン補間等を用いることができる。
【0098】
ステップS903において、判定部403は、リサンプリングした脈拍間隔の時系列データから、パワースペクトルを算出する。パワースペクトルを算出する方法は、公知の周波数解析手法を用いることができる。例えば最大エントロピー法等によって指定の周波数におけるパワーを求めることができる。
【0099】
ステップS904において、判定部403は、ステップS903で算出したパワースペクトルに基づき、自律神経指標を算出する。自律神経指標は例えば自律神経機能のバランスを表すLF/HF、又は自律神経機能全体の働きを表すTPを用いることができる。LF/HF、又はTPは、既知の方法を用いて算出すればよい。例えば、判定部403は、0.04~0.15Hzの周波数帯のパワー積分値をLF、0.15~0.40Hzの周波数帯のパワー積分値をHFとして、両者の比をとることでLF/HFを算出し、両者の和をとることでTPを算出することができる。
【0100】
<計測時間の決定処理>
続いて、例えば、
図6のステップS601において、決定部405が実行する計測時間の決定処理について、複数の実施形態を例示して説明する。
【0101】
[第1の実施形態]
図10は、第1の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、
図6のステップS601で決定部405が実行する計測時間の決定処理の一例を示している。
【0102】
ステップS1001において、決定部405は、ユーザ101の客観指標の履歴を取得する。一例として、決定部405は、管理部404が管理している状態情報409から、直近の1ヶ月間のユーザ101の客観指標の履歴を取得する。
【0103】
ステップS1002において、決定部405は、ユーザ101の直近の1ヶ月間の客観指標の変化傾向(以下、Δ客観指標と呼ぶ)を算出し、「Δ客観指標>0」であるかを判断する。「Δ客観指標>0」である場合、ユーザ101の疲労、又はストレス等が増加傾向であることを示している。この場合、決定部405は、処理をステップS1004に移行させる。一方、「Δ客観指標>0」でない場合、ユーザ101の疲労、又はストレス等が変わらない若しくは減少傾向であることを示している。この場合、決定部405は、処理をステップS1003に移行させる。
【0104】
ステップS1003に移行すると、決定部405は、ユーザ101の健康状態を判定するための客観評価データ(計測データ)の計測に要する計測時間を、「計測時間2」より短い「計測時間1」に決定する。一方ステップS1004に移行すると、決定部405は、計測時間を、「計測時間1」より長い「計測時間2」に決定する。
【0105】
「計測時間1」の具体的な一例として、HFは、0.15Hz~0.40Hzの周波数帯のパワー積分値から算出するため、最低でも6.6秒、精度を担保するためにはその数倍程度の15秒~30秒程度を要する。一例として、このHFの算出に要する時間(例えば、15秒~30秒程度)を「計測時間1」とする。
【0106】
また、「計測時間2」の具体的な一例として、LFは、0.04Hz~0.15Hzの周波数帯のパワー積分値から算出するため、最低でも25秒、精度を担保するためにはその数倍程度の1分~3分程度を設定する。一例として、このLFの算出に要する時間(例えば、1分~3分程度)を「計測時間2」とする。
【0107】
「計測時間2」に決定した場合、情報処理システム1は、LFとHFとを計測し、例えば、LF/HF、又はTP等を算出して客観指標とする。一方、「計測時間1」に決定した場合、情報処理システム1は、HFのみを計測し、HFを客観指標とする、なお、情報処理システム1は、状態情報409に記憶されているユーザ101の過去のLFを暫定的に使用して、LF/HF、又はTP等を算出して客観指標としてもよい。
【0108】
なお、使用する計測履歴は、直近1か月に限定されるものではなく、利用する計測履歴の期間、又は計測回数等を用いて自由に設定できることが望ましい。また、計測時間の決定に利用する評価履歴は上述した例に限られず、算出している客観指標、例えば、HR、SDNN、LF、HF、又はLF/HF等のうち、1つ以上の指標を用いてもよい。
【0109】
また、「計測時間1」で計測した場合、管理部404は、「計測時間1」で計測したことを示す情報を、状態情報409に記憶して管理することが望ましい。
【0110】
ステップS1005において、決定部405は、決定した計測時間を計測部412に通知する。なお、サーバ装置10が決定部405を有している場合、決定部405は、通知部406を利用して、決定した計測時間を端末装置100に通知する。
【0111】
図10の処理により、決定部405は、ユーザ101の客観評価結果の変化傾向に基づいて計測時間を変更することができる。
【0112】
[第2の実施形態]
図11は、第2の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャート(1)である。この処理は、例えば、
図6のステップS601で決定部405が実行する計測時間の決定処理の別の一例を示している。なお、ここでは、第1の実施形態で説明した処理と同様の処理に対する詳細な説明は省略する。
【0113】
ステップS1101において、決定部405は、ユーザ101の客観評価データの計測履歴を取得する。一例として、決定部405は、管理部404が管理している状態情報409から、客観評価データの計測日時の履歴を取得する。
【0114】
ステップS1102において、決定部405は、ユーザ101の客観評価データの計測頻度を算出し、算出した計測頻度が、予め定められた計測頻度の基準値Thより高いか(「計測頻度>Th」であるか)を判断する。ここで、基準値Thは、ユーザ101の計測頻度が高いか否かを判断するための値が予め設定されているものとする。なお、この基準値Thは、管理者12等が設定可能であってもよい。
【0115】
「計測頻度>Th」である場合、決定部405は、処理をステップS1103に移行させる。一方、「計測頻度>Th」でない場合、決定部405は、処理をステップS1104に移行させる。
【0116】
ステップS1103に移行すると、決定部405は、ユーザ101の健康状態を判定するための客観評価データ(計測データ)の計測に要する計測時間を、「計測時間2」より短い「計測時間1」に決定する。これは、計測頻度の高いユーザは、健康状態の変化傾向を確認しやすいため、計測時間がより短い「計測時間1」でも健康状態を評価することができるためである。
【0117】
一方、ステップS1104に移行すると、決定部405は、客観評価データの計測に要する計測時間を、「計測時間2」に決定する。また、ステップS1105において、決定部405は、決定した計測時間を計測部412に通知する。
【0118】
図11の処理により、決定部405は、ユーザ101の客観評価データの計測頻度に基づいて計測時間を変更することができる。
【0119】
なお、
図11に示した処理は一例である。例えば、決定部405は、
図12に示すように、「計測時間1」による計測が続いた場合、計測時間を「計測時間2」に決定する処理を追加してもよい。
【0120】
図12は、第2の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャート(2)である。
図12の処理では、決定部405は、
図11のステップS1002の処理に代えて、ステップS1201、S1202の処理を実行する。なお、ステップS1201、S1202以外の処理は、
図11で説明した処理と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0121】
ステップS1201において、決定部405は、ユーザ101の客観評価データの計測頻度を算出し、算出した計測頻度が、予め定められた計測頻度の基準値Th1より高いか(「計測頻度>Th1」であるか)を判断する。ここで、基準値Th1は、ユーザ101の計測頻度が高いか否かを判断するための値が予め設定されているものとする。なお、この基準値Th1は、管理者12等が設定可能であってもよい。
【0122】
「計測頻度>Th1」である場合、決定部405は、処理をステップS1103に移行させる。一方、「計測頻度>Th1」でない場合、決定部405は、処理をステップS1104に移行させる。
【0123】
ステップS1202に移行すると、決定部405は、計測時間1の頻度を算出し、計測時間1の頻度が予め定められた計測時間1の基準値Th2より低いか(「計測時間1の頻度<Th2」であるか)を判断する。ここで、基準値Th2は、ユーザ101が「計測時間1」で客観評価データを計測した頻度が低いか否かを判断するための値が予め設定されているものとする。なお、この基準値Th2は、管理者12等が設定可能であってもよい。
【0124】
図12の処理により、決定部405は、ユーザ101が「計測時間1」で客観評価データを計測した頻度が高い場合、計測時間を「計測時間2」に決定し、「計測時間1」では更新されないLFの値を更新することができるようになる。
【0125】
[第3の実施形態]
図13は、第3の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、
図6のステップS601で決定部405が実行する計測時間の決定処理の別の一例を示している。なお、ここでは、第1、2の実施形態で説明した処理と同様の処理に対する詳細な説明は省略する。
【0126】
ステップS1301において、決定部405は、ユーザ101の客観評価データの計測履歴を取得する。一例として、決定部405は、管理部404が管理している状態情報409から、客観評価データの計測日時の履歴を取得する。別の一例として、決定部405は、管理部404が管理している状態情報409から、ユーザ101が、前回の客観評価データを計測した日時のみを取得してもよい。
【0127】
ステップS1302において、決定部405は、ユーザ101が、前回の客観評価データを計測した日時から、現在の日時までの間隔(以下、計測間隔と呼ぶ)を算出する。また、決定部405は、算出した計測間隔が、予め定められた計測間隔の基準値Th3より長いか(「計測間隔>Th3」であるか)を判断する。ここで、基準値Th3は、ユーザ101の計測間隔が長いか否かを判断するための値が予め設定されているものとする。なお、この基準値Th3は、管理者12等が設定可能であってもよい。
【0128】
「計測間隔>Th3」である場合、決定部405は、処理をステップS1304に移行させる。一方、「計測間隔>Th3」でない場合、決定部405は、処理をステップS1303に移行させる。
【0129】
ステップS1303に移行すると、決定部405は、ユーザ101の客観評価データの計測に要する計測時間を、「計測時間2」より短い「計測時間1」に決定する。一方、ステップS1304に移行すると、決定部405は、客観評価データの計測に要する計測時間を、「計測時間2」に決定する。また、ステップS1305において、決定部405は、決定した計測時間を計測部412に通知する。
【0130】
図13の処理により、決定部405は、ユーザ101の客観評価データの計測間隔に基づいて計測時間を変更することができる。
【0131】
[第4の実施形態]
図14は、第4の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、
図6のステップS601で決定部405が実行する計測時間の決定処理の別の一例を示している。なお、ここでは、第1~3の実施形態で説明した処理と同様の処理に対する詳細な説明は省略する。
【0132】
ステップS1401において、決定部405は、ユーザ101の客観指標を取得する。一例として、決定部405は、管理部404が管理している状態情報409から、ユーザ101の前回の客観指標を取得する。別の一例として、決定部405は、状態情報409から、ユーザ101の客観指標の代表値(例えば、平均値、中間値、又は最低値等)を取得してもよい。また、前回の客観指標値だけでなく、前回までの客観指標の変化傾向を取得してもよい。
【0133】
ステップS1402において、決定部405は、取得したユーザ101の客観指標が、予め定められた客観指標の基準値Th4より大きいか(「客観指標>Th4」であるか)を判断する。ここで、基準値Th4は、ユーザ101の客観指標が良好であるか否かを判断するための値が予め設定されているものとする。なお、この基準値Th4は、管理者12等が設定可能であってもよい。
【0134】
「客観指標>Th4」である場合(ユーザ101の客観指標が良好である場合)、決定部405は、処理をステップS1403に移行させる。一方、「客観指標>Th4」でない場合、決定部405は、処理をステップS1404に移行させる。
【0135】
ステップS1403に移行すると、決定部405は、ユーザ101の客観評価データの計測に要する計測時間を、「計測時間2」より短い「計測時間1」に決定する。一方、ステップS1404に移行すると、決定部405は、客観評価データの計測に要する計測時間を、「計測時間2」に決定する。また、ステップS1405において、決定部405は、決定した計測時間を計測部412に通知する。
【0136】
図14の処理により、決定部405は、ユーザ101の過去の客観指標に基づいて計測時間を変更することができる。なお、
図14の処理においても、決定部405は、ユーザ101が「計測時間1」で客観評価データを計測した頻度が高い場合、計測時間を「計測時間2」に決定してもよい。
【0137】
[第5の実施形態]
図15は、第5の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、
図6のステップS601で決定部405が実行する計測時間の決定処理の別の一例を示している。なお、ここでは、第1~4の実施形態で説明した処理と同様の処理に対する詳細な説明は省略する。
【0138】
ステップS1401において、決定部405は、ユーザ101の主観指標を取得する。一例として、決定部405は、管理部404が管理している状態情報409から、ユーザ101の前回の主観指標を取得する。別の一例として、決定部405は、状態情報409から、ユーザ101の主観指標の代表値(例えば、平均値、中間値、又は最低値等)を取得してもよい。また、前回の主観指標値だけでなく、前回までの主観指標の変化傾向を取得してもよい。
【0139】
ステップS1402において、決定部405は、取得したユーザ101の主観指標が、予め定められた主観指標の基準値Th5より大きいか(「主観指標>Th5」であるか)を判断する。ここで、基準値Th5は、ユーザ101の主観指標が良好であるか否かを判断するための値が予め設定されているものとする。なお、この基準値Th5は、管理者12等が設定可能であってもよい。
【0140】
「主観指標>Th5」である場合(ユーザ101の主観指標が良好である場合)、決定部405は、処理をステップS1503に移行させる。一方、「主観指標>Th5」でない場合、決定部405は、処理をステップS1504に移行させる。
【0141】
ステップS1503に移行すると、決定部405は、ユーザ101の客観評価データの計測に要する計測時間を、「計測時間2」より短い「計測時間1」に決定する。一方、ステップS1504に移行すると、決定部405は、客観評価データの計測に要する計測時間を、「計測時間2」に決定する。また、ステップS1505において、決定部405は、決定した計測時間を計測部412に通知する。
【0142】
図14の処理により、決定部405は、ユーザ101の過去の主観指標に基づいて計測時間を変更することができる。なお、
図14の処理においても、決定部405は、ユーザ101が「計測時間1」で客観評価データを計測した頻度が高い場合、計測時間を「計測時間2」に決定してもよい。
【0143】
[第6の実施形態]
図16は、第6の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、
図6のステップS601で決定部405が実行する計測時間の決定処理の別の一例を示している。なお、ここでは、第1~5の実施形態で説明した処理と同様の処理に対する詳細な説明は省略する。
【0144】
ステップS1601において、決定部405は、ユーザ101の勤務時間を取得する。一例として、情報処理システム1は、
図7に示すような主観評価画面700において、「直近一週間の勤務時間は何時間ですか?」、又は「残業時間は何時間ですか?」等の設問を表示し、ユーザ101による回答を状態情報409に記憶しておく。この場合、決定部405は、管理部404が管理している状態情報409から、ユーザ101の勤務時間(例えば、直近の所定の期間の勤務時間、又は残業時間等)を取得する。
【0145】
ステップS1602において、決定部405は、取得したユーザ101の勤務時間が、予め定められた勤務時間の基準値Th6より大きいか(「勤務時間>Th6」であるか)を判断する。ここで、基準値Th6は、ユーザ101の勤務時間が多いか否かを判断するための値が予め設定されているものとする。なお、この基準値Th6は、管理者12等が設定可能であってもよい。
【0146】
これまでの計測結果から、長時間の勤務後、又は業務のボリュームが多いとき等に、疲労が蓄積し、ユーザの精神的な健康状態が悪化する可能性があることがわかっている。従って、好適な一例として、決定部405は、ユーザ101の勤務情報に基づいて、ユーザ101の客観指標を計測する計測時間を決定することができる。
【0147】
「勤務時間>Th6」である場合(ユーザ101の勤務時間が基準値以上である場合)、決定部405は、処理をステップS1604に移行させる。一方、「勤務時間>Th6」でない場合、決定部405は、処理をステップS1603に移行させる。
【0148】
ステップS1603に移行すると、決定部405は、ユーザ101の客観評価データの計測に要する計測時間を、「計測時間2」より短い「計測時間1」に決定する。一方、ステップS1604に移行すると、決定部405は、客観評価データの計測に要する計測時間を、「計測時間2」に決定する。また、ステップS1605において、決定部405は、決定した計測時間を計測部412に通知する。
【0149】
図16の処理により、決定部405は、ユーザ101の勤務時間に基づいて計測時間を変更することができる。なお、
図16の処理においても、決定部405は、ユーザ101が「計測時間1」で客観評価データを計測した頻度が高い場合、計測時間を「計測時間2」に決定してもよい。
【0150】
なお、勤務時間は、ユーザ101の勤務情報の一例である。例えば、ユーザ101の勤務情報は、ユーザ101の出勤時、及び退勤時等の打刻情報等であってもよい。また、決定部405は、ユーザ101の勤務情報を、システム外の勤務管理システム等から取得してもよい。勤務情報には、例えば、ユーザ101の業務時間、残業時間、会議時間、会議数、上司との1on1会議の時間、上司との1on1会議の件数、メール送受信件数、メール利用時間帯、チャット送受信件数、又はチャットの利用時間帯等も含まれる。また、勤務情報には、例えば、スケジュールが登録されている時間帯、業務内容、休憩時間、業務で使用するPCの電源ONOFF回数等のイベントログ、又は出勤日数等も含まれる。
【0151】
また、決定部405は、上述で説明した勤務情報以外にも、例えばリモートワーク、若しくは出張等の周りの人が体調を把握しにくい情報に基づいて、計測データに関する計測時間を決定することも可能である。さらに、決定部405は、休み明け、復職後、異動直後、又は入社直後等の自律神経が乱れやすい時期若しくは状態等の情報に基づいて、計測データに関する計測時間を決定することも可能である。
【0152】
また、決定部405は、別途会社で行う健康診断、ストレスチェック、エンゲージメントサーベイ等の調査結果が悪い場合、上司からのフィードバック頻度若しくは回数、又は有休取得のし易さ等の情報に基づいて、計測データに関する計測時間を決定してもよい。さらに、決定部405は、テレワーク、フレックスワーク、若しくは時間短縮勤務等の利用率等の働き方の柔軟さ度合い、又は事故効力感若しくはレジリエンス等の個人の資質度合い等の情報に基づいて、計測データに関する計測時間を決定してもよい。さらにまた、決定部405は、復職後、又は何らかのトラブルの後等、上司又は周りの人が不安に感じていて状態を確認したい場合等のユーザに対する情報に基づいて計測データに要する計測時間を決定することも可能である。
【0153】
[第7の実施形態]
図17は、第7の実施形態に係る情報処理システムの処理の例を示すフローチャートである。この処理は、情報処理システム1が実行する処理の概要の別の一例を示している。なお、
図17の処理のうち、ステップS604、S605の処理は、
図6で説明した、一実施形態に係る情報処理システムの処理と同様なので、ここでは説明を省略する。また、ここでは、
図6で説明した、一実施形態に係る情報処理システムの処理と同様に対する詳細な説明は省略する。
【0154】
ステップS1701において、取得部402は、計測部412が計測した客観評価データを端末装置100から取得する。例えば、取得部402は、HFの算出に必要な客観評価データ(少なくとも7秒、より精度を担保するためには15秒~30秒程度の脈波データ)を、端末装置100から取得する。
【0155】
ステップS1702において、決定部405は、取得部402が取得した客観評価データに基づいて、ユーザ101の客観評価データの計測に要する計測時間を決定する。例えば、決定部405は、
図18に示すような計測時間の決定処理を実行する。
【0156】
図18は、第7の実施形態に係る計測時間の決定処理の例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、
図17のステップS1702において、決定部405が実行する計測時間の決定処理の一例を示している。
【0157】
ステップS1801において、決定部405は、取得部402が取得した客観評価データに基づいて、ユーザ101の客観指標の1つであるHFを算出する。
【0158】
ステップS1802において、決定部405は、算出したHFが、基準値Th7より高いか(「HF>Th7」であるか)を判断する。ここで、基準値Th7は、例えば、状態情報409に記憶されているユーザ101のHFの平均値、又は最後に測定したHFの値等である。
【0159】
「HF>Th7」である場合、決定部405は、処理をステップS1803に移行させる。一方、「HF>Th7」でない場合、決定部405は、処理をステップS1804に移行させる。
【0160】
ステップS1803に移行すると、決定部405は、ユーザ101の客観評価データの計測に要する計測時間を、「計測時間2」より短い「計測時間1」に決定する。これにより、情報処理システム1は、HFの値が良好である可能性が高いユーザ101の計測時間を短縮することができる。一方、ステップS1804に移行すると、決定部405は、客観評価データの計測に要する計測時間を、「計測時間2」に決定する。また、ステップS1805において、決定部405は、決定した計測時間を計測部412等に通知する。
【0161】
ここで、
図17に戻り、
図17の処理の説明を続ける。ステップS1703において、
取得部402は、決定部405が決定した計測時間に基づいて、計測部412が計測した客観評価データを含む評価データを端末装置100から取得する。
【0162】
ステップS1704において、判定部403は、取得した評価データに基づいて、ユーザ101の健康状態(精神的な健康状態)を判定する判定処理を実行する。
【0163】
図17、18の処理により、決定部405は、ユーザ101の現在の客観指標に基づいて、客観評価データを計測する計測時間を変更することができる。
【0164】
以上、本発明の各実施形態によれば、計測データに基づいて、ユーザの健康状態に関する情報を管理する情報処理システム1において、ユーザの計測負担を軽減し、ユーザが定期的に計測データの計測を継続することが容易になる。
【0165】
また、上述の実施形態では、情報処理システム1が、ユーザ情報に基づいて、ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する決定処理の例を説明した。ただし、これに限られず、情報処理システム1は、ユーザ情報に代えて、又は加えて、客観計測の環境として良好な計測ができそうな環境の情報に基づいて、客観評価データを計測する計測時間を変更してもよい。ここで、環境の情報には、例えば、コンピュータ性能、計測時のコンピュータ負荷、データ蓄積量、客観計測に利用するカメラ若しくはセンサ等の性能、又は照明の明るさ若しくはちらつき等の照明環境等が含まれ得る。また、環境の情報には、例えば、周囲が静かである、振動が少ない、若しくは周囲からの刺激が少ない等の周囲の環境、又は、ユーザの動作、ユーザの呼吸、若しくはユーザの状態が安定している等の情報が含まれ得る。
<補足>
上記で説明した各実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0166】
また、実施例に記載された装置群は、本明細書に開示された実施形態を実施するための複数のコンピューティング環境のうちの1つを示すものにすぎない。ある実施形態では、サーバ装置10は、サーバクラスタといった複数のコンピューティングデバイスを含む。複数のコンピューティングデバイスは、ネットワークや共有メモリなどを含む任意のタイプの通信リンクを介して互いに通信するように構成されており、本明細書に開示された処理を実施する。同様に、端末装置100は、互いに通信するように構成された複数のコンピューティングデバイスを含むことができる。
【0167】
また、サーバ装置10、及び端末装置100は、開示された処理ステップ、例えば、
図6、8~18の処理を、様々な組み合わせで共有するように構成できる。例えば、サーバ装置10の所定のユニットによって実行されるプロセスは、端末装置100によって実行され得る。同様に、端末装置100の所定のユニットによって実行されるプロセスは、サーバ装置10によって実行され得る。また、サーバ装置10の各機能構成は、1つのサーバ装置にまとめられていてもよいし、複数のサーバ装置に分散して設けられていてもよい。
【0168】
<付記>
本明細書には、下記の各項のプログラム、端末装置、情報処理方法、及び情報処理システムが開示されている。
(第1項)
ユーザの健康状態に関する情報を含む状態情報を管理する管理処理と、
前記状態情報に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する決定処理と、
前記計測データを計測する端末装置に前記計測時間を通知する通知処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
(第2項)
前記状態情報は、前記ユーザの前記計測データの計測履歴を含み、
前記決定処理は、前記計測履歴に基づいて前記計測時間を変更する、
第1項に記載のプログラム。
(第3項)
前記決定処理は、前記ユーザの前記計測データの計測頻度、又は計測間隔に基づいて前記計測時間を変更する、第2項2に記載のプログラム。
(第4項)
前記状態情報は、前記ユーザの客観評価結果を含み、
前記決定処理は、前記ユーザの客観評価結果、又は前記客観評価結果の変化傾向に基づいて前記計測時間を変更する、
第1項に記載のプログラム。
(第5項)
前記状態情報は、前記ユーザの主観評価結果を含み、
前記決定処理は、前記ユーザの前記主観評価結果に基づいて前記計測時間を変更する、
第1項に記載のプログラム。
(第6項)
前記状態情報は、前記ユーザの勤務状況に関する情報を含み、
前記決定処理は、前記ユーザの前記勤務状況に関する情報に基づいて前記計測時間を変更する、
第1項に記載のプログラム。
(第7項)
前記決定処理は、前記状態情報に加えて、計測環境に基づいて前記計測時間を変更する、第1項に記載のプログラム。
(第8項)
ユーザの健康状態に関する情報を含む状態情報を取得する取得部と、
前記状態情報に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する決定部と、
前記計測時間に基づいて、前記計測データを計測する計測部と、
を有する、端末装置。
(第9項)
ユーザの健康状態に関する情報を含む状態情報を管理する管理処理と、
前記状態情報に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する決定処理と、
前記計測データを計測する端末装置に前記計測時間を通知する通知処理と、
をコンピュータが実行する、情報処理方法。
(第10項)
サーバ装置と、前記サーバ装置と通信可能な端末装置が実行するプログラムとを含む情報処理システムであって、
前記サーバ装置は、
ユーザの健康状態に関する情報を含む状態情報を管理する管理部と、
前記状態情報に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する決定部と、
前記計測データを計測する前記端末装置に前記計測時間を通知する通知部と、
を有し、
前記プログラムは、
前記サーバ装置から通知された測定時間に従って、前記計測データを計測する計測処理を、
前記端末装置に実行させる、
情報処理システム。
(第11項)
ユーザの健康状態に関する情報を含む状態情報を取得する処理と、
前記状態情報に基づいて、前記ユーザの健康状態を判定するための計測データの計測に要する計測時間を決定する処理と、
前記計測時間に基づいて、前記計測データを計測する処理と、
を端末装置に実行させる、プログラム。
【0169】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、及び応用が可能である。
【符号の説明】
【0170】
1 情報処理システム
10 サーバ装置
100 端末装置
101 ユーザ
402 取得部
403 判定部
404 管理部
405 決定部
406 通知部
507 情報提供部
412 計測部
415 送信部
409 状態情報
【先行技術文献】
【特許文献】
【0171】
【特許文献1】国際公開第2014/136310号
【特許文献2】特開2019-117612号公報