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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179216
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20241219BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C08G18/00 L ZAB
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097884
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(74)【代理人】
【識別番号】100201710
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 佑佳
(72)【発明者】
【氏名】東海 真平
(72)【発明者】
【氏名】児玉 優輝
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF21
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034DQ16
4J034EA11
4J034EA12
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD07
4J034KD12
4J034KE02
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB17
4J034QB19
4J034QC01
4J034RA03
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】揮発性有機化合物の発生が低減可能なポリウレタンフォームを提供すること。
【解決手段】本技術では、ポリオール、イソシアネート、及び反応型アミン触媒を含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、前記組成物中のポリオール100質量部に対する非反応型アミン系触媒の含有量が、0質量部以上0.15質量部以下である、ポリウレタンフォームを提供する。前記ポリウレタンフォームは、前記組成物中に難燃剤を含んでいてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、イソシアネート、及び反応型アミン触媒を含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記組成物中のポリオール100質量部に対する非反応型アミン系触媒の含有量が、0質量部以上0.15質量部以下である、ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記組成物中に難燃剤を含む、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記組成物中に前記非反応型アミン系触媒を含まない、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記ポリオールが、バイオマス由来ポリオールを含む、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ポリウレタンフォームに関する。より詳しくは、揮発性有機化合物の発生が低減可能なポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、ソファーや椅子等の家具、マットレスや枕等の寝具、下着等の衣類、食器用スポンジ、掃除用スポンジ、化粧用スポンジ等の生活必需品、車内シート等の車両・航空機内装用製品、玩具、雑貨等に至るまで、様々な分野で幅広く使用されている。そして、それぞれの分野や目的に応じて、品質を向上させたり、新たな機能を付与させたりと、様々な開発が進められている。
【0003】
ここで、近年、地球温暖化防止や循環型社会構築のため、環境に配慮した製品の開発が世界規模で求められている。これに対し、例えば、特許文献1には、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、整泡剤及び触媒を少なくとも含む原料組成物を反応させて得られるポリウレタンフォームであって、前記ポリオールが、植物由来ポリオール(A)と、フタル酸系ポリオール(B)、ダイマー酸系ポリオール(C)及びアジペート系ポリオール(D)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールとを含むことを特徴とする、フレームラミネート用ポリウレタンフォームが開示されている。特許文献1では、これにより、植物度が高いポリウレタンフォームと表皮素材とが高い接着強度で接着積層された、環境負荷軽減に有利な、軽量かつ耐久性に優れる積層材料を得ることができることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-202026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、環境に配慮した製品と言っても多角的なアプローチが存在しており、特許文献1のように植物度が高い素材を用いることで環境負荷軽減に貢献するといったアプローチの他にも、揮発性有機化合物の発生低減などのアプローチも存在する。特に、車両内装用用途の目的でポリウレタンフォームを用いる場合には、欧州等では揮発性有機化合物の種類によっては放散量について制限値が定められている。
【0006】
そこで、本技術では、揮発性有機化合物の発生が低減可能なポリウレタンフォームを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術では、まず、ポリオール、イソシアネート、及び反応型アミン触媒を含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、前記組成物中のポリオール100質量部に対する非反応型アミン系触媒の含有量が、0質量部以上0.15質量部以下である、ポリウレタンフォームを提供する。
本技術では、前記組成物中に難燃剤を更に含んでいてよい。
本技術では、前記組成物中に前記非反応型アミン系触媒を含まなくてもよい。
本技術では、前記ポリオールが、バイオマス由来ポリオールを含んでいてよい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。
以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0009】
1.ポリウレタンフォーム
本技術に係るポリウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート、及び反応型アミン触媒を含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、前記組成物中のポリオール100質量部に対する非反応型アミン系触媒の含有量が、0質量部以上0.15質量部以下である。また、その他の成分として、反応型アミン触媒以外の触媒、難燃剤、整泡剤等を含有させることができる。
【0010】
本技術に係るポリウレタンフォームは、上記の構成を採用したことで、揮発性有機化合物の発生低減効果が得られる。なお、本技術の効果はこれに限定されない。
【0011】
本技術に係るポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォームのいずれであってもよい。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0012】
(1)ポリオール
本技術に係るポリウレタンフォームには、ポリオールとして、例えば、バイオマス由来ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリマーポリオール等のポリオールを1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。また、ポリオールとして、市販のものを用いてもよい。
【0013】
バイオマス由来ポリオールとは、動植物を由来とするポリオールであり、例えば、植物由来ポリオール等が挙げられる。植物由来ポリオールとしては、例えば、ヒマシ油ポリオール、大豆油ポリオール、パーム油ポリオール、パーム核油ポリオール、ヤシ油ポリオール、カシュー油ポリオール、オリーブ油ポリオール、綿実油ポリオール、サフラワー油ポリオール、ゴマ油ポリオール、ヒマワリ油ポリオール、アマニ油ポリオール等が挙げられる。
【0014】
ヒマシ油ポリオールとしては、例えば、ヒマシ油、ヒマシ油とポリオールとの反応物等が挙げられる。
ヒマシ油と反応させるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の2価のポリオール、又はグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ソルビトール等の3価以上のポリオール等が挙げられる。
大豆油ポリオールとしては、例えば、大豆油、大豆油とポリオールとの反応物、大豆油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物等が挙げられる。パーム油ポリオール、カシュー油ポリオール等についても、大豆油ポリオールの場合と同様である。
【0015】
なお、上述した「ヒマシ油」には、未変性ヒマシ油、変性ヒマシ油、脱水ヒマシ油、水素添加されたヒマシ油等のいずれも包含する。ここで、未変性ヒマシ油は、脂肪酸とグリセリンとのエステルである。未変性ヒマシ油は、リシノレイン酸を主成分とし、その他の成分として、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸などを含有する。
【0016】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸;リシノレイン酸等の脂肪族カルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族ジカルボン酸;又はこれらの酸エステル若しくは酸無水物と、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等、若しくは、これらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリプロピレングリコールなどのポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン、メチルバレロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等を挙げることができる。また、これらの他に、ポリエステルポリオールとして、例えば、天然由来のエステル基を有するポリオール等が挙げられる。
【0017】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールの少なくとも1種と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等と、を反応させて得られるもの等を挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及び、これらのコポリエーテル等が挙げられる。また、グリセリンやトリメチロールエタン等の多価アルコールを用い、上記の環状エーテルを重合させて得られるもの等が挙げられる。
【0019】
ポリエステルエーテルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族ジカルボン酸;又はこれらの酸エステル若しくは酸無水物と、ジエチレングリコール若しくはプロピレンオキシド付加物等のグリコール等、又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られるもの等を挙げることができる。
【0020】
ポリマーポリオールとは、ポリオール中でエチレン性不飽和モノマーを重合させて得られるもの、又はポリオール中にエチレン性不飽和モノマーの重合物を乳化分散させて得られるもの等である。具体的には、例えば、ポリオールにアクリロニトリル、スチレン等をグラフト重合させたものや、ポリオール中にポリスチレンやポリアクリロニトリルを分散させたもの等が挙げられる。
【0021】
本技術では、環境負荷を低減する観点から、ポリオールが、バイオマス由来ポリオールを含んでいることが好ましい。バイオマス由来ポリオールとして、特に植物由来のポリオールが好ましく、植物由来のポリオールとして、特にヒマシ油由来のポリオールが好ましく、ヒマシ油としては、特に未変性のものを用いることが好ましい。
【0022】
前記組成物中のポリオールに対する植物由来ポリオールの含有量は、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。前記組成物中のポリオール100質量部に対する植物由来ポリオールの含有量の下限値は、例えば、50質量部以上、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上、更に好ましくは80質量部以上である。ポリオール中の植物由来ポリオールの含有量を、この範囲に設定することで、バイオマス度を向上させることができ、環境に配慮したポリウレタンフォームを提供できる。
【0023】
前記組成物中のポリオール100質量部に対する植物由来ポリオールの含有量の上限値は、例えば、100質量部以下、好ましくは95質量部以下である。ポリオール中の植物由来ポリオールの含有量を、この範囲に設定することで、ポリウレタンフォームの物性低下を抑制することができる。
【0024】
前記組成物中のバイオマス度は、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。前記組成物中のバイオマス度の下限値は、例えば、40%以上、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは55%以上である。バイオマス度を、この範囲に設定することで、COの排出量を削減し、カーボンニュートラルの達成に貢献できる。
【0025】
前記組成物中のバイオマス度の上限値は、例えば、80%以下、75%以下、70%以下、又は65%以下とすることができる。バイオマス度を、この範囲に設定することで、ポリウレタンフォームの成形性を向上させることができる。
【0026】
なお、バイオマス度は、合計添加部数中のバイオマス由来原料の割合である。この場合、算出方法は、下記式(1-1)に示すように算出することができる。
バイオマス度=バイオマス由来原料÷合計添加部数×100・・・(1-1)
【0027】
また、バイオマス由来原料そのものではなく、バイオマス由来ポリオールの場合は、割合に応じて、バイオマス度が減少する。例えば、バイオマス由来原料比が50%のバイオマス由来ポリオールの場合、算出方法は、下記式(1-2)に示すように算出することができる。
(「バイオマス由来原料比の50%ポリオール」70g)÷合計添加部数230g×100=(70×1/2)÷230×100=15.2%・・・(1-2)
【0028】
(2)イソシアネート
本技術に係るポリウレタンフォームには、イソシアネートとして、例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及びこれらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等のイソシアネートを1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。また、イソシアネートとして、市販のものを用いてもよい。
【0029】
芳香族イソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(クルードMDI)、フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0031】
本技術では、これらの中でも特に、芳香族イソシアネートが好ましく、芳香族イソシアネートの中でも特に、トルエンジイソシアネート(TDI)が好ましい。
【0032】
本技術では、イソシアネートインデックスも、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。イソシアネートインデックスの下限値は、例えば、90以上、好ましくは95以上、より好ましくは100以上である。イソシアネートインデックスの下限値を、この範囲に設定することで、製造するポリウレタンフォームの強度を向上させることができる。
【0033】
イソシアネートインデックスの上限値は、例えば130以下、好ましくは120以下、より好ましくは110以下、更に好ましくは105以下である。イソシアネートインデックスの含有量の上限値を、この範囲に設定することで、ポリウレタンフォームの硬度が硬くなりすぎて脆くなり、柔軟性が損なわれることを防止し、ポリウレタンフォームの弾性を向上させることができる。
【0034】
なお、本技術において、イソシアネートインデックスは、下記式(1)で算出した値である。また、下記式(1)における「ポリウレタンフォーム製造用組成物」とは、本技術に係るポリウレタンフォームを製造する際に用いられる各成分を組み合わせた組成物をいう。
イソシアネートインデックス=(ポリウレタンフォーム製造用組成物中のイソシアネート当量/ポリウレタンフォーム製造用組成物中の活性水素の当量)×100
【0035】
(3)触媒
本技術に係るポリウレタンフォームには、触媒として、アミン触媒の中でも、反応型アミン触媒を含む。また、その他の触媒として、例えば、非反応型アミン触媒、第4級アンモニウム塩触媒、金属触媒等の触媒を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。また、触媒として、市販のものを用いてもよい。
【0036】
アミン触媒としては、例えば、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、Ν,Ν,Ν’-トリメチル-N’-3-アミノプロピル-ビス(アミノエチル)エーテル、2-[(2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エチル)メチルアミノ]エタノール、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-オクタデシルモルホリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール等の第3級アミン触媒、トリエチレンジアミンのギ酸塩及び他の塩、第一及び第二アミンのアミノ基のオキシアルキレン付加物、N-N-ジアルキルピペラジン類のようなアザ環化合物、種々のN,N’,N’-トリアルキルアミノアルキルヘキサヒドロトリアジン類、N,N,N",N"-テトラメチルジエチレントリアミンのような官能基としてアミノ基を有するアミン触媒等が挙げられる。
【0037】
本技術に係るポリウレタンフォームは、上述した通り、反応型アミン触媒を含む組成物より得られる。「反応型」アミン触媒とは、イソシアネートと反応する官能基を有するものであり、反応の過程でアミン触媒がウレタン樹脂骨格に組み込まれるものをいう。本技術においては、反応型アミン触媒を用いることにより、揮発性有機化合物の発生の抑制に効果がある。一方で、「非反応型」アミン触媒とは、反応の過程でアミン触媒がウレタン樹脂骨格に組み込まれないものをいう。
【0038】
反応型アミン触媒としては、特に、少なくとも一つのOH基、NH基又はSH基を有するアミン系化合物が好ましく、当該化合物の中でも特に、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、Ν,Ν,Ν’-トリメチル-N’-3-アミノプロピル-ビス(アミノエチル)エーテル、2-[(2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エチル)メチルアミノ]エタノールが好ましい。
【0039】
また、反応型アミン触媒の中でも、特に線対称の構造を有する第3級アミン触媒が好ましい。第3級アミン触媒を用いることで、樹脂化や泡化を促進することが知られているが、その中でも線対称の構造を有する第3級アミン触媒は、特に泡化反応が強いからである。
【0040】
前記組成物中の反応型アミン触媒の含有量は、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。前記組成物中のポリオール100質量部に対する反応型アミン触媒の含有量の下限値は、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.4質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上である。反応型アミン触媒の含有量を、この範囲に設定することで、揮発性有機化合物の発生をより抑制させることができる。
【0041】
前記組成物中のポリオール100質量部に対する反応型アミン触媒の上限値は、例えば、2質量部以下、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.2質量部以下である。反応型アミン触媒の含有量の上限値を、この範囲に設定することで、樹脂化反応や泡化反応の不安定化を防止し、樹脂化反応と泡化反応のバランスを良好に保つことができる。
【0042】
非反応型アミン触媒としては、トリエチレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル等が挙げられる。本技術において、前記組成物中のポリオール100質量部に対する非反応型アミン系触媒の含有量は、0質量部以上0.15質量部以下である。非反応型アミン触媒の含有量を、この範囲に設定することで、揮発性有機化合物の発生を抑制させることができる。
【0043】
また、本技術では、前記組成物中に前記非反応型アミン系触媒を含まないことが、特に好ましい。これにより、揮発性有機化合物の発生量をより抑制させることができる。
【0044】
第4級アンモニウム塩触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物;水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物;テトラメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類等が挙げられる。
【0045】
金属触媒としては、例えば、Sn(錫)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Zr(ジルコニウム)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)等の金属塩、有機酸金属塩等が挙げられる。具体的には、下記の金属触媒を用いることができる。
Sn触媒:オクチル酸スズ(II)(2-エチルヘキサン酸スズ、スタナスジオクトエート)、酢酸スズ(II)、スタナスジアセテート、オクタン酸スズ(II)、スズスタナスジオレエート、ネオデカン酸スズ(II)スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズジアセテート等
Pb触媒:オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛等
Bi触媒:オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ロジン酸ビスマス等
Fe触媒:鉄アセチルアセトナート等
Zr触媒:ジルコニウムアセチルアセトナート等
Ni触媒:ニッケルアセチルアセトナート、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル等
Co触媒:コバルトアセチルアセトナート、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト等
【0046】
前記組成物中の金属触媒の含有量は、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。前記組成物中のポリオール100質量部に対する金属触媒の含有量の下限値は、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上である。金属触媒の含有量を、この範囲に設定することで、ポリウレタンフォームの製造時における樹脂化反応や泡化反応を十分に促進させることができる。
【0047】
前記組成物中のポリオール100質量部に対する金属触媒の含有量の上限値は、例えば、0.5質量部以下、好ましくは0.4質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。金属触媒の含有量を、この範囲に設定することで、金属触媒に由来する揮発性有機化合物の発生を抑制できる。
【0048】
(4)難燃剤
本技術に係るポリウレタンフォームは、難燃剤を含む組成物より得られることが好ましい。前記組成物中に難燃剤を含む場合、本技術に係るポリウレタンフォームを車内シート等の車両内装用製品として用いることできる。この場合、車両火災の場合などを考慮して、難燃性が求められ、車両に用いるために良好な熱特性(特に、耐熱性、熱安定性など)が求められるからである。
【0049】
難燃剤としては、例えば、ハロゲン化又は非ハロゲン化リン酸エステル、五酸化二リン・オキシラン・トリエチル=ホスファート重合物、リン酸アミデート等のリン含有難燃剤、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン等のハロゲン化ポリマー、メラミン樹脂、ウレア樹脂等の有機系難燃剤;酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤等が挙げられ、これらの難燃剤を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。また、難燃剤として、市販のものを用いてもよい。更に、難燃剤の状態は、液体、又は固体のいずれでもよい。
【0050】
本技術では、これらの中でも特に、リン含有難燃剤が好ましく、リン含有難燃剤の中でも特に、非ハロゲン化リン酸エステル、五酸化二リン・オキシラン・トリエチル=ホスファート重合物、リン酸アミデートが好ましい。
【0051】
前記組成物中の難燃剤の含有量は、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。前記組成物中のポリオール100質量部に対する難燃剤の含有量の下限値は、例えば、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。難燃剤の含有量を、この範囲に設定することで、低燃焼性や難燃性を十分に向上させることができる。
【0052】
前記組成物中のポリオール100質量部に対する難燃剤の含有量の上限値は、例えば、10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。難燃剤の含有量を、この範囲に設定することで、発泡時の化学反応に悪影響を及ぼすことを防ぎ、良好なポリウレタンフォームが得られる。
【0053】
(5)発泡剤
本技術に係るポリウレタンフォームには、発泡剤として、例えば、水、炭化水素、ハロゲン系化合物等の発泡剤を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。また、発泡剤として、市販のものを用いてもよい。
【0054】
水としては、例えば、イオン交換水、水道水、蒸留水、RO水等が包含される。
炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等が挙げられる。
ハロゲン系化合物としては、例えば、塩化メチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ヘプタフルオロイソプロピルメチルエーテル等が挙げられる。
【0055】
本技術では、これらの中でも特に、水が好ましい。
【0056】
前記組成物中の発泡剤の含有量は、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。前記組成物中のポリオール100質量部に対する発泡剤の含有量の下限値は、例えば、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。発泡剤の含有量を、この範囲に設定することで、発泡性を向上させることができ、その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0057】
前記組成物中のポリオール100質量部に対する発泡剤の含有量の上限値は、例えば、5質量部以下、好ましくは4.5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。発泡剤の含有量を、この範囲に設定することで、発泡過剰による形成不良を抑制することができる。
【0058】
(6)整泡剤
本技術に係るポリウレタンフォームには、整泡剤として、例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤、界面活性剤等の整泡剤を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。また、整泡剤として、市販のものを用いてもよい。
【0059】
シリコーン系整泡剤としては、シロキサン鎖主体からなるもの、シロキサン鎖とポリエーテル鎖が線状の構造をとるもの、分岐し枝分かれしたもの、ポリエーテル鎖がシロキサン鎖にペンダント状に変性されたもの等が挙げられる。
【0060】
前記組成物中の整泡剤の含有量は、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。前記組成物中のポリオール100質量部に対する整泡剤の含有量の下限値は、例えば、0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上である。整泡剤の含有量を、この範囲に設定することで、発泡反応を安定化することができ、その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0061】
前記組成物中のポリオール100質量部に対する整泡剤の含有量の上限値は、例えば、3質量部以下、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下である。整泡剤の含有量を、この範囲に設定することで、コスト削減に貢献することができる。
【0062】
(7)その他
本技術に係るポリウレタンフォームには、本技術の作用や効果を損なわない限り、その他の成分として、通常用いられる各種成分を、必要に応じて、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
【0063】
その他の成分としては、例えば、安定剤、可塑剤、着色剤、顔料、酸化防止剤、架橋剤、抗菌剤、分散剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0064】
2.ポリウレタンフォームの物性
以下、上述した各成分を含む組成物から得られたポリウレタンフォームの物性について説明する。
【0065】
(1)ポリウレタンフォームの密度
ポリウレタンフォームの密度は、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。ポリウレタンフォームの密度の下限値は、例えば、15kg/m以上、好ましくは20kg/m以上、より好ましくは25kg/m以上である。ポリウレタンフォームの密度を、この範囲に設定することで、適用できる用途の幅を広げることができる。
【0066】
ポリウレタンフォームの密度の上限値は、例えば、50kg/m以下、好ましくは40kg/m以下、より好ましくは35kg/m以下である。ポリウレタンフォームの密度を、この範囲に設定することで、ポリウレタンフォームの柔軟性を損なうことなく(硬くなり過ぎるのを防止し)、クッション性を付与することでき、感触を向上させることができる。
【0067】
なお、ポリウレタンフォームの密度は、例えば、JIS K7222に基づく方法に準拠して測定することができる。
【0068】
(2)ポリウレタンフォームの硬さ
ポリウレタンフォームの硬さは、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。ポリウレタンフォームの硬さ(25%ILD)の下限値は、例えば、50N以上、好ましくは60N以上、より好ましくは65N以上である。ポリウレタンフォームの硬さ(25%ILD)を、この範囲に設定することで、適用できる用途の幅を広げることができる。
【0069】
ポリウレタンフォームの硬さ(25%ILD)の上限値は、例えば、110N以下、好ましくは100N以下、より好ましくは95N以下である。ポリウレタンフォームの硬さ(25%ILD)を、この範囲に設定することで、ポリウレタンフォームの柔軟性を損なうことなく(硬くなり過ぎるのを防止し)、クッション性を付与することでき、感触を向上させることができる。
【0070】
なお、ポリウレタンフォームの硬さ(25%ILD)は、例えば、JIS K6400-2D法に基づく方法に準拠して測定することができる。
【0071】
(3)ポリウレタンフォームの剥離強度
ポリウレタンフォームの剥離強度は、本技術の作用や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。ポリウレタンフォームの初期剥離強度の下限値は、例えば、1N/25mm以上、好ましくは1.5N/25mm以上、より好ましくは2N/25mm以上、更に好ましくは2.5N/25mm以上である。また、ポリウレタンフォームの最終剥離強度の下限値は、例えば、5N/25mm以上、好ましくは5.5N/25mm以上、より好ましくは6N/25mm以上である。初期剥離強度又は最終剥離強度の下限値を、この範囲に設定することで、優れた融着性を発揮できる。
【0072】
ポリウレタンフォームの初期剥離強度の上限値は、例えば、6N/25mm以下、5N/25mm以下、又は4.5N/25mm以下である。また、ポリウレタンフォームの最終剥離強度の上限値は、例えば、11N/25mm以下、10N/25mm以下、又は9.5N/25mm以下である。初期剥離強度又は最終剥離強度の上限値を、この範囲に設定することで、被着体へのダメージの軽減や、リサイクル性の向上を図ることができる。
【0073】
なお、剥離強度は、例えば、以下の方法により測定することができる。
ポリウレタンフォームからフォーム片(25mm×200mm×10mm)を切り出し、幅170mmのLPガスバーナーの火炎上を20m/minで通過させ、表面を溶融させた後、表面にナイロン製の積層材料を重ね合せ、ロールにて圧着した。得られた試料の端部の一部のポリウレタンフォームを剥がし、その部分をチャックで挟み、続いて、200mm/minの速度で剥がし、その時の荷重の平均値を測定し、その値に基づいて剥離強度を測定した。なお、初期剥離強度は、積層材料を圧着して1分後の剥離強度であり、最終剥離強度は、積層材料を圧着して24時間後の剥離強度である。
【0074】
(4)燃焼性
本技術に係るポリウレタンフォームを車両内装用製品として用いる場合に、火災の影響をなるべく受けないことが好ましい。したがって、燃焼性については、車両内で発生する火災の影響を想定し、米国自動車安全基準であるFMVSS302燃焼性試験に基づく方法に準拠して評価することができる。
【0075】
FMVSS 302燃焼試験の判定基準としては、
・A標線手前で自消するもの
・燃焼距離51mm以内(且つ60秒以内)で自消するもの
・燃焼速度102mm/min以下のもの
のいずれかを満たすものが、FMVSS 302規格適合となる。
本技術において、ポリウレタンフォームを車両内装用製品として用いる場合は、これらのいずれかの判定基準を満たすことが好ましい。
【0076】
(5)高及び中揮発性有機化合物(以下、「VOC」と称する)、及び低揮発性有機化合物(以下、「FOG」と称する)
本技術に係るポリウレタンフォームを車両内装用製品として用いる場合に、VOC、及びFOGの発生量は少ないことが好ましい。したがって、これら揮発性有機化合物については、車両内で発生するVOC及びFOGを想定し、ドイツ自動車工業会規格であるVDA278発生ガス試験に基づく方法に準拠して評価することができる。
【0077】
ポリウレタンフォームのVOC排出量の上限値は、例えば、160ppm以下、好ましくは150ppm以下、より好ましくは130ppm以下、更に好ましくは120ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。ポリウレタンフォームのVOC排出量を、この範囲に設定することで、ポリウレタンフォームを車両内装用製品として用いた場合の安全性が担保される。なお、欧州におけるVOC排出量の上限値は、100ppm以下と定められている。
【0078】
ポリウレタンフォームのFOG排出量の上限値は、例えば、250ppm以下、好ましくは230ppm以下、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。ポリウレタンフォームのFOG排出量を、この範囲に設定することで、ポリウレタンフォームを車両内装用製品として用いた場合の安全性が担保される。なお、欧州におけるFOG排出量の上限値は、250ppm以下と定められている。
【0079】
3.本技術に係るポリウレタンフォームの用途
本技術に係るポリウレタンフォームは、その品質の高さを利用して、あらゆる分野であらゆる用途に用いることができる。具体的には、例えば、ソファーや椅子等の家具、マットレスや枕等の寝具、下着等の衣類、食器用スポンジ、掃除用スポンジ等の生活必需品、車内シート等の車両・航空機内装用製品、建築目地材、建築用緩衝材、建築用シール材、家電用シール材、吸音材、防音材、梱包材、車両用断熱材、結露防止材、内装材、家電断熱材、配管断熱材、各種カバー、クッション材、玩具、雑貨等に好適に用いることができる。
【0080】
また、本技術に係るポリウレタンフォームが、難燃剤を含む組成物より得られたものである場合、上述した通り、本技術に係るポリウレタンフォームを車内シート等の車両内装用製品として好適に用いることできる。
【0081】
4.本技術に係るポリウレタンフォームの製造方法
本技術に係るポリウレタンフォームは、上述した各成分を含む組成物から得られ、前記組成物を構成する各成分を混合して組成物を調製し、発泡させることにより製造することができる。発泡の方法は、本技術の作用や効果を損なわない限り、従来公知の方法を自由に組み合わせて用いることができる。
【0082】
製造時における発泡は、スラブ発泡及びモールド発泡のいずれも採用することもできる。スラブ発泡は、前記組成物(ポリウレタンフォームの原料)を混合して吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。一方で、モールド発泡は、モールド(金型)のキャビティに前記組成物(ポリウレタンフォームの原料)を混合して注入し、キャビティ形状に発泡させる方法である。
【0083】
なお、本技術では、以下のように構成することも可能である。
〔1〕
ポリオール、イソシアネート、及び反応型アミン触媒を含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、
前記組成物中のポリオール100質量部に対する非反応型アミン系触媒の含有量が、0質量部以上0.15質量部以下である、ポリウレタンフォーム。
〔2〕
前記組成物中に難燃剤を含む、〔1〕に記載のポリウレタンフォーム。
〔3〕
前記組成物中に前記非反応型アミン系触媒を含まない、〔1〕又は〔2〕に記載のポリウレタンフォーム。
〔4〕
前記ポリオールが、バイオマス由来ポリオールを含む、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載のポリウレタンフォーム。
〔5〕
ドイツ自動車工業会規格(VDA 278)に基づく方法に準拠し、加熱温度90℃、加熱時間30分の条件で測定したVOCの値が160ppm以下である、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載のポリウレタンフォーム。
〔6〕
ドイツ自動車工業会規格(VDA 278)に基づく方法に準拠し、加熱温度120℃、加熱時間60分の条件で測定したFOGの値が250ppm以下である、〔1〕から〔5〕のいずれかに記載のポリウレタンフォーム。
【実施例0084】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0085】
(1)ポリウレタンフォームの原料
・ポリオール1(ヒマシ油由来、未変性(精製処理)、バイオマス度:100%、官能基数:2.7、水酸基価:160mgKOH/g、重量平均分子量:947、品名:H-30、伊藤製油株式会社製)
・ポリオール2(アクリロニトリル-スチレングラフトポリマーポリオール、品名:エクセノール941、旭硝子株式会社製)
・発泡剤(水)
・整泡剤(シリコーン系整泡剤、品名:B-8244、エボニック・ジャパン社製)
・難燃剤1(ハロゲン系リン酸エステル化合物、品名:CR-504L、大八化学工業社製)
・難燃剤2(五酸化二リン・オキシラン・トリエチル=ホスファート重合物、品名:OMNISTABFR 5152、DELTACHEM(QINGDAO)CO.,LTD.製)
・アミン触媒1(反応型)(N,N-ジメチルアミノヘキサノール、品名:カオライザーNo.25、花王社製(1級OHを有する))
・アミン触媒2(反応型)(Ν,Ν,Ν’-トリメチル-N’-3-アミノプロピル-ビス(アミノエチル)エーテル、品名:DABCONE-300、エボニック・ジャパン社製(1級NHを有する))
・アミン触媒3(反応型)(2-[(2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エチル)メチルアミノ]エタノール、品名:DABCONE-310、エボニック・ジャパン社製(1級OHを有する))
・アミン触媒4(非反応型)(トリエチレンジアミン33%、品名:DABCO33LSI、エボニック・ジャパン社製)
・アミン触媒5(非反応型)(ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル70%、品名:NIAXCATALYST A-1、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)
・金属触媒(オクチル酸スズ(II)、品名:MRH110、城北化学工業社製)
・イソシアネート(トルエンジイソシアネート(TDI))
【0086】
(2)ポリウレタンフォームの製造
下記表1及び表2に示す各成分を撹拌混合して組成物を調製した後、調製した組成物を大気圧下、発泡BOXの中に吐出し、大気圧下、常温で発泡(スラブ発泡)させることにより、各ポリウレタンフォームを製造した。
【0087】
(3)評価
製造した各ポリウレタンフォームについて、フォーム外観、密度、硬さ(25%ILD)、初期剥離強度、最終剥離強度、燃焼性、VOC排出量、及びFOG排出量について評価した。
【0088】
密度、硬さ(25%ILD)、初期剥離強度、及び最終剥離強度については、「2.ポリウレタンフォームの物性」で記載した方法と同様の方法にて測定した。なお、下記表1及び表2中、最終剥離強度の行において、「ff」とは、剥離試験において材料破壊であることを示す。
【0089】
フォーム外観については、以下の基準により評価した。
[フォーム外観]
A:外観に問題なし。
B:フォームとして成立しているが、商品性の観点で外観に問題あり。
C:フォームとして成立していない(シュリンクしている等)。
【0090】
燃焼性については、上述した米国自動車安全基準(FMVSS302)燃焼性試験に基づく方法に準拠して評価した。すなわち、以下のいずれかに該当するものを「A」(合格)とし、いずれにも該当しないものを「B」(不合格)とした。
・A標線手前で自消するもの
・燃焼距離51mm以内(且つ60秒以内)で自消するもの
・燃焼速度102mm/min以下のもの
【0091】
VOC排出量については、上述したドイツ自動車工業会規格(VDA 278)に基づく方法に準拠して測定した。すなわち、90℃で30minの条件で加熱し、発生したVOCの量を測定した。
[VOC排出量]
A:100ppm以下(欧州VOC基準値)
B:160ppm以下
C:200ppm以下
D:200ppm超
【0092】
FOG排出量についても、上述したドイツ自動車工業会規格(VDA 278)に基づく方法に準拠して測定した。すなわち、120℃で60minの条件で加熱し、発生したFOGの量を測定した。
[FOG排出量]
A:250ppm以下(欧州FOG基準値)
B:250ppm超
【0093】
(4)結果
結果を下記表1及び表2に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
(5)考察
上記表1及び表2に示す通り、比較例1~比較例4のポリウレタンフォームは、実施例1~実施例9のポリウレタンフォームと比較して、VOC排出量が高く検出された。一方で、実施例1~実施例9のポリウレタンフォームは、VOC排出量が低く、またFOG排出量も低いことから、特に、実施例1~実施例3については、欧州VOC基準値及び欧州FOG基準値を満たすことが分かった。また、実施例1~実施例9のポリウレタンフォームは、その他の物性(フォーム外観、密度、硬さ(25%ILD)、初期剥離強度、最終剥離強度、及び燃焼性)についても問題がなく、良好な物性を有していることが分かった。
【0097】
これらの結果から、ポリオール、イソシアネート、及び反応型アミン触媒を含む組成物から得られるポリウレタンフォームであって、前記組成物中のポリオール100質量部に対する非反応型アミン系触媒の含有量が、0質量部以上0.15質量部以下である、ポリウレタンフォームを用いることで、揮発性有機化合物の発生を低減できることが分かった。