(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179222
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】圧電素子発振回路
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H03B5/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097897
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】523228118
【氏名又は名称】カーネルチップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147740
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 俊
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昌明
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA22
5J079BA41
5J079EA06
5J079EA16
5J079FA04
5J079FA14
5J079FA21
5J079FB03
5J079GA05
5J079GA09
(57)【要約】
【課題】発振起動促進回路付き圧電素子発振回路の位相ノイズを低減する手段を提供する。
【解決手段】
本発明は、発振増幅回路、発振出力回路、発振起動促進回路および発振検出回路からなる圧電素子発振回路において、前記発振検出回路が前記発振増幅回路からの発振信号を検出して前記発振起動促進回路の機能を停止する機能を有する圧電素子発振回路であり、さらに前記発振促進回路がその動作を停止した後に、前記発振検出回路からの信号によって、前記発振出力回路より発振信号が出力される圧電素子発振回路である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振増幅回路、発振出力回路、発振起動促進回路および発振検出回路からなる圧電素子発振回路において、
前記発振検出回路が前記発振増幅回路からの発振信号を検出すると、前記発振増幅回路は前記発振起動促進回路の機能から分断された状態で動作することを特徴とする圧電素子発振回路。
【請求項2】
前記発振検出回路が前記発振増幅回路からの発振信号を検出すると、前記発振起動促進回路は機能を停止するとともに電流消費が低減されることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子発振回路。
【請求項3】
前記発振起動促進回路がその動作を停止した後に前記発振出力回路より発振信号が出力されることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子発振回路。
【請求項4】
前記発振検出回路が前記発振促進回路の動作を停止する信号と前記停止信号から一定の遅延後に前記発振出力回路の動作を開始させる信号を出力することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の圧電素子発振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振起動促進回路を有する圧電素子発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、通信の高速化が急速に進む中、より高い周波数で且つ低い位相ノイズの圧電素子発振器(主に水晶発振器)への需要が高まってきている。圧電振動子の周波数が高周波になるにつれて発振増幅器単体では、発振に必要な能力(発振能力)が不足してきて、通常の発振状態になるまでの時間が長くなったり、発振ができないなどの問題が生じる。圧電素子を用いた発振回路においては、この発振能力は負性抵抗値により決定されている。確実且つ短時間で発振を開始させるためには発振回路の負性抵抗をある水準に保つ必要があるが、発振器の高周波化にともない十分な負性抵抗を得ることが困難となってきている。発振を確実かつ速やかに開始するために必要とされる負性抵抗値は経験則により圧電素子の等価直列抵抗R1の数倍と言われている。この負性抵抗の条件を満たすために、高周波の発振器では発振起動促進回路が有効である。すなわち、発振増幅器に発振起動促進回路を付加して発振増幅器の発振能力を補うことが必要となる。しかしながら、この発振促進回路は発振信号品質の重要指標の一つである周波数揺らぎ・位相ノイズを大幅に劣化させる要因となっている。
【0003】
図6は、従来使用されている発振起動促進回路を備えた圧電素子発振回路を示す図である。圧電素子発振回路30は、発振増幅器(回路)31、発振起動促進回路32、発振出力回路33、および定電圧源41から構成される。発振増幅器31は、従来から使用されている圧電振動子を有するインバータ型発振増幅回路であり、圧電振動子12、圧電振動子12を動作させるためのインバータ21および帰還抵抗R2からなる増幅回路、この増幅回路の入出力端子に接続される負荷容量C1およびC2、並びに抵抗R3から構成される。圧電素子12の一例は水晶振動子であり、通常は圧電素子発振回路等を内蔵するICに外付けされる。発振増幅器31からの出力(発振信号)XDは、発振出力回路33の発振出力回路本体36へ入力され、OUT端子から出力される。圧電振動子の周波数が高周波になるにつれて発振増幅器単体では、発振能力が低下してきて、通常の発振状態になるまでの時間が長くなったり、発振しないなどの問題が生じる。そこで
図6に示すように、発振増幅器31の入力に発振起動促進回路32を付加して発振能力を補う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示す従来回路の実施例において、発振起動促進回路32は2つのインバータ34および35を直列に接続して、その後段のインバータ35の出力を、容量C4を介して発振増幅器31の入力に供給し、また抵抗R8を介して前段のインバータ34の入力としている。前段のインバータ34は帰還抵抗R7を有し、その出力が後段のインバータ35に入力する。電源を入れると、2つのインバータ34および35が動作して、後段のインバータ35の出力が容量を介して前段のインバータに帰還されている。この発振起動促進回路32との相互作用により、発振増幅器31の発振が促進される。この結果、発振起動時の負性抵抗を発振起動回路がない場合と比べて、数倍向上することが容易になり、圧電振動子が高周波になっても短時間で容易に発振することができる。
【0006】
一旦発振が開始すれば、発振増幅回路31の負性抵抗が圧電素子の等価直列抵抗に等しくなるまで発振は成長し飽和する。発振起動促進回路32は発振の成長には大きな効果を発揮するが、発振が成長して定常状態になった後は、発振信号の周波数揺らぎの原因となり、位相ノイズの劣化を招いていることが分かってきた。本発明はこの問題を解決するための手段を提供し、位相ノイズの低減を実現するものである。また、発振が定常状態になった後は、発振起動促進回路32は不要であるにもかかわらず、発振起動促進回路32が動作していると、余分な消費電力を使用するという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発振促進回路を具備しながら位相ノイズが低く発振信号品質を劣化させない圧電素子発振回路を提供するものであり、具体的には以下の特徴を有する。
(1)本発明は、発振増幅回路、発振出力回路、発振起動促進回路および発振検出回路からなる圧電素子発振回路において、前記発振検出回路が前記発振増幅回路からの発振信号を検出して前記発振起動促進回路の機能を停止する機能を有する圧電素子発振回路である。
【0008】
(2)本発明は、(1)に加えて、前記発振検出回路が前記発振増幅回路からの発振信号を検出して前記発振起動促進回路の機能を停止すると同時に、前記発振検出回路の出力により前記発振起動促進回路は前記発振回路から遮断されて前記発振増幅回路に作用しないことを特徴とする。
(3)本発明は、(1)または(2)に加えて、前記発振起動促進回路がその動作を停止した後に、前記発振検出回路からの信号によって、前記発振出力回路より発振信号が出力される圧電素子発振回路である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の圧電素子発振回路は、電源が入り発振が始まるまでは発振(起動)促進回路により発振増幅器の発振が助長されるが、発振が始まると発振起動促進回路が動作しなくなるので、位相ノイズのない発振信号が発振増幅回路から出力される。また、発振起動促進回路が停止した後に発振出力回路が動作するので、位相ノイズのない発振信号が発振出力回路から外部回路へ出力される。さらに、発振中は、発振起動促進回路が停止して、その消費電力は低減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の圧電素子発振回路のブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の圧電素子発振回路の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、発振起動促進回路が常に動作している場合(従来回路)における位相ノイズと発振後に起動促進回路を分離した本発明の回路における位相ノイズを比較したグラフである。
【
図4】
図4は、電圧検出回路の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、電圧検出回路の各部における電圧の変化を示す図である。
【
図6】
図6は、従来使用されている発振起動促進回路を備えた圧電素子発振回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の圧電素子発振回路のブロック図である。本発明の圧電素子発振回路10は、圧電振動子12を含む発振増幅器11、発振出力回路15、発振起動促進回路13および発振検出回路14から構成される。圧電素子発振回路10に電源を印加すると、発振起動促進回路13および発振増幅器11が動作するが、発振増幅器11が発振を開始するには一定の時間を要する。その間に発振起動促進回路13によって、まだ発振していないか発振途上にある発振増幅器11の発振が助長されることにより発振が成長する。
【0012】
発振増幅器11の発振信号は、発振検出回路14に入力する。発振増幅器11の発振信号の振幅が一定の大きさ以上になると発振検出回路14において発振増幅器11が発振したことを検知して、その情報(検知信号)を出力して発振起動促進回路13へ送る。発振起動促進回路13は発振検出回路14からの信号によって、発振起動促進回路13の動作を停止して、発振起動促進回路13から発振増幅器への発振促進信号(電圧)は出力されなくなる。加えて、発振起動促進回路13は電気的に発振増幅器から分離されるので、発振回路は発振促進回路13の影響を受けずに動作することになる。従って、発振起動促進回路13に入力した検知信号は発振起動促進回路13の動作停止命令と言える。
【0013】
発振増幅器11の出力(発振信号)は発振出力回路15へも送られるが、発振信号振幅が十分でないときには発振出力回路15は動作しない。発振増幅器11の発振信号の振幅が一定の大きさ以上になると、発振検出回路14において発振増幅器11が発振したことを検知して、その情報(検知信号)を発振出力回路15へ出力する。発振出力回路15へ入力された検知信号により、発振出力回路15は動作を開始して、発振出力信号を発振出力回路15から出力(発振出力)する。従って、発振検出回路14から発振出力回路への検知信号は、発振出力回路への出力命令と言える。ここで、発振出力回路15からの発振出力信号は、発振起動促進回路13が停止した後に出力されるようにする。この結果、発振起動促進回路13からの出力信号に起因した位相ノイズのない発振信号が発振増幅器11から発振出力回路15へ入力されて、発振出力回路15から出力される。
【0014】
図2は、本発明の圧電素子発振回路10の一例を示す図である。
図1で示すブロック図との対応関係が分るようにそれぞれの回路を破線で囲って示す。発振増幅器11からの信号は発振検出回路14のインバータ22に入力する。インバータ22の出力は抵抗R6と容量C4により平滑されて電圧検出回路25へ入り(DUin端子)、論理処理をされて出力される。電圧検出回路25には、インバータ22からの出力の他に、クロック信号(CK、CKz)が入力される。すなわち、発振増幅器11からのクロック出力はインバータ23を介して電圧検出回路25のCKに入り、さらにインバータ24を介して電圧検出回路25のCKzに入る。これらの3種類の信号を受けて、電圧検出回路25は4種類の信号Q0、Q0z、Q1、Q1zを主力する。
【0015】
図2における発振増幅器11は、従来から使用されている代表的なインバータ型発振増幅回路であり、圧電振動子12、圧電振動子12を動作させるためのインバータ21および帰還抵抗R2からなる増幅回路、増幅回路の入出力端子に接続される負荷容量C1およびC2、並びに抵抗R3から構成される。圧電素子12の一例は水晶振動子であり、通常は圧電素子発振回路等を内蔵するICに外付けされる。また、発振増幅器11を駆動する電源は定電圧源41から供給される。
【0016】
発振増幅器11の出力信号XDは発振出力回路15および発振検出回路14へ入力する。発振検出回路14は、出力信号XDが入力するインバータ22およびインバータ23、インバータ23の出力を入力とするインバータ24、並びに電圧検出回路25から構成される。インバータ22の出力は抵抗R6を通して電圧検出回路25へ入力する。抵抗R6と容量C4からなるRC回路はインバータ22の出力信号を平均化しており、発振増幅器11の発振振幅により増大するDC信号を電圧検出回路25に送る役割を果たしている。インバータ23の出力は電圧検出回路25(CK端子)のクロック信号(CK)として入力する。またインバータ23の出力はさらにインバータ24へ入力し、そのインバータ24の出力は電圧検出回路25(CKz端子)のクロック信号(CKz:CK信号の負論理信号)として入力する。電圧検出回路25は、上記の3つの入力端子<DUin端子、2つのクロック端子(CL端子、CLz端子)>を備え、これらの入力を論理処理し、2組の信号(Q0とQ0z、Q1とQ1z)を出力する。
【0017】
図2の発振起動促進回路13は、2つのインバータ26および27を直列に接続した発振起動促進回路の一例である。その出力は発振増幅器11と結合されている。すなわち、前段のインバータ26は、帰還抵抗R5を有し、その出力が後段のインバータ27へ入力する。後段のインバータ27の出力は、容量C3を介して発振増幅器11に入力され、発振増幅器11の発振を助長する。前段のインバータ26及び後段のインバータ27は、クロックドインバータの構成となっていて、その動作は電圧検出回路25のQ0とQ0Zにより制御されている。即ちQ0が“L”の時には2つインバータはともに動作し、Q0が“H”の時には2つインバータはともに動作停止となる。また、発振起動促進回路13の電源は、定電圧源41から供給される。発振開始するまでは、電圧検出回路25の出力Q0は“L”の状態に、出力Q0zは“H”の状態になっているので、2つのインバータ26および27が動作して、発振増幅器(回路)11の発振起動を促進する。
【0018】
発振増幅器(回路)11の信号XDは発振検出回路14のインバータ22へ出力している。インバータ22はXDからの信号振幅がある程度の振幅になるまでは動作しないように設計されている。XDからの信号振幅が大きくなり、発振検出回路14のインバータ22が動作するとその出力は抵抗R6とキャパシタC4で平滑されてDUin端子に入力される。このDUin端子の電圧が一定の大きさになると電圧検出回路25の出力Q0が“H”に、出力Q0zが“L”に反転する。その結果、発振起動促進回路13の2つのインバータ26および27が動作を停止して、発振起動促進回路13から発振増幅器11への出力が停止し、かつ発振起動促進回路13は発振増幅回路11から分離される。この後は、発振増幅回路11だけの自力により発振を成長させ維持することになる。従って、本発明の圧電素子発振回路においては、発振増幅器11単体における負性抵抗を少なくとも振動子の実効抵抗R1よりも大きくなるように設定しておくことが肝要である。
【0019】
図3は、発振起動促進回路が常に動作している場合(従来回路)における位相ノイズと発振後に発振起動促進回路を分離(停止)した本発明の回路における位相ノイズを比較したグラフである。離調周波数が10kHz以下において、本発明の位相ノイズが大幅に低下している。このように、発振成長後に発振起動促進回路を分離(停止)することによって、発振信号の位相ノイズが(特に低周波側で)劇的に改善することが分かる。
【0020】
発振増幅器11からの出力XDは、発振検出回路14の他に発振出力回路15へ入力する。本発明の発振出力回路15では、発振増幅器11からの出力XDはまずクロックドCMOSインバータ28へ入力して、このクロックドCMOSインバータ28の出力が出力回路本体29へ入力する。
【0021】
本発明の発振信号検出回路14における電圧検出回路25では、Q0、Q0zの他にQ1およびQ1z(Q1の負論理)の出力を具備する。電圧検出回路25のQ1z端子は発振出力回路のクロックドCMOSインバータ28のPMOSトランジスタP7のゲートに接続し、電圧検出回路25のQ1端子は発振出力回路のクロックドインバータ28のNMOSトランジスタN7のゲートに接続する。
【0022】
Q1およびQ1zに関して、発振開始前には、Q0およびQ0zと同様にQ1は“L”にQ1zは“H”になっているので、クロックドCMOSインバータ28は動作していない。Q1が“H”にQ1zが“L”になる(反転する)と、クロックドCMOSインバータ28は動作を開始する。
【0023】
電圧検出回路25における論理処理によって、Q1およびQ1z(Q1の負論理)は、Q0およびQ0z(Q0の負論理)が反転(Q0が“H”にQ0zが“L”になる)した後に遅れて信号が反転する出力である。従って、発振増幅回路11からの出力XDが一定の振幅以上になると、発振検出回路14の電圧検出回路25から反転したQ0およびQ0zが出力して発振起動促進回路13が停止する。その後、Q1およびQ1zが反転(Q1が“H”に、Q1zが“L”になる)しインバータ28が動作して、発振増幅回路11の出力XDの発振信号が発振出力回路本体29のOUTから出力される。この結果、発振起動促進回路13が分離(停止)された後の発振増幅回路11と圧電振動子12から生成される出力XDは位相ノイズが少なく安定した信号となっているから、発振出力回路のOUT端子からの出力も位相ノイズが少なく安定した信号となる。尚、本発明の圧電素子発振回路10において、発振出力回路本体29は従来使用されている種々の発振出力回路を使用できる。また、Q1およびQ1zの代わりにQ0及びQ1zを使用することができることは言うまでもない。
【0024】
図4は、電圧検出回路25の一例を示す図である。電圧検出回路25は1つのコンパレータと3つのDFF(D型フリップフロップ)から構成される。インバータ22(
図2参照)からの出力は抵抗R4とキャパシタC4で平滑された信号DUinがコンパレータ42へ入力して、その出力が1段目のDFF43へ入力(Di端子)する。その信号は1段目のDFF43でクロック信号CKとCKZにより同期処理され、DFF43からの出力Qは、電圧検出回路25のQ0として出力される。また、DFF43からの出力Qz(Qの負論理)は、電圧検出回路25のQ0z(Q0の負論理)として出力される。次に、DFF43からの出力Qは2段目のDFF44へも入力((Di端子)する。その信号は2段目のDFF44でクロック信号CKとCKZと同期処理され、DFF44からの出力Qは、3段目のDFF45へ入力((Di端子)する。その信号は3段目のDFF45でクロック信号CKとCKZと同期処理され、DFF45からの出力Qは、電圧検出回路25のQ1として出力される。また、DFF43からの出力Qz(Qの負論理)は、電圧検出回路25のQ1z(Q1の負論理)として出力される。
【0025】
尚、クロック信号CKおよびCKZ(CKの反転)は、それぞれ
図2の発振検出回路のインバータ23およびインバータ24からの出力であり、各DFF43、44、45へクロック信号として入力する。
図4に示す電圧検出回路から分かるように、Q0およびQ0zは1つのDFF(43)から出力されるが、Q1およびQ1zはさらに2つのDFF(44と45)を介して出力されるので、Q1およびQ1zの信号はQ0およびQ0zの信号から遅延して出力される。この遅延時間は、これらDFF45の段数により調節される。反転したQ0およびQ0zが発振起動促進回路13の各インバータ26、27に配置されたクロックドCMOSインバータへ送られると、これらのクロックドCMOSインバータは直ちにOFFしてインバータ26、27の動作を停止する。従って、インバータ26、27の動作が停止した後に、反転したQ1およびQ1zの信号が電圧検出回路25から出力される。すなわち、インバータ26、27の動作が停止した後に、発振出力回路15に配置されたインバータ28を動作させて、発振増幅器11の出力XDを発振出力回路本体29へ送ることができる。
【0026】
図5は、電圧検出回路の各部における電圧の変化を示す図である。
図5(a)は、CK(クロック)信号の時間変化を示す図であり、矩形波の連続パルス電圧となっている。
図5(b)は、インバータ22からの出力が抵抗R6を介した電圧検出回路25への入力信号(DUin)の時間変化を示す図である。発振増幅器11からの出力XDによりインバータ22が動作し、DUinの電圧は信号XDの発振振幅が大きくなるにつれ直線的に増加する。この電圧がコンパレータ42の-入力側の設定電圧を超えるとコンパレータ42の出力、即ち1段目のDFF43への入力信号Diは急激に立ち上がって大きくなる。
図5(c)にその時間変化を示す。この入力信号Diは1段目のDFF43によりCKクロック信号に同期してQ0及びQ0zとして出力される。
【0027】
図5(d)は、出力信号Q0を示す図である。
図5(e)は、電圧検出回路25の出力信号Q1を示す図である。出力信号Q1はクロックCKの一周期分遅れて急激に立ち上がっている。これだけの遅延時間があれば、発振起動回路13は完全停止となるので、その後(発振起動回路が停止した後に)発振出力回路15が動作してそのOUT端子から発振信号を出力する。本回路でDFFの段数を変えることで上記遅延時間を容易に調節できることは言うまでも無い。
【0028】
以上、詳細に説明したように、本発明の圧電素子発振回路10は、停止状態から電源を投入すると発振増幅器11および発振起動促進回路13が動作を開始するが、発振増幅器11の発振までには時間がかり、その間に発振起動促進回路13が動作して発振増幅器11の発振能力、即ち負性抵抗を高めることができ、その結果、発振増幅器11の発振が助長促進される。発振増幅器11の発振が一定程度の振幅以上になるとその出力信号(XD)によって、発振検出回路14で発振を検出して、発振検出回路から反転信号(Q0、Q0z)を発振起動促進回路13へ送る。その結果、発振起動促進回路13は動作を停止して発振起動促進回路13は発振増幅器11から切り離される。発振検出回路14では、反転信号(Q0、Q0z)から遅延して別の反転信号(Q1、Q1z)を発振出力回路15へ送り、発振出力回路15が動作する。発振出力回路15は発振増幅器11からの出力信号(XD)を受けてOUT端子から発振信号を出力する。この結果、発振成長後に発振起動促進回路13が分離された後に発振出力回路15から発振信号が出力される事になり、OUT端子からの発振信号の位相ノイズを劇的に低減することができる。さらに、発振起動促進回路13の切り離しにより、圧電素子発振回路10における消費電力の低減も実現できる。
【0029】
尚、本明細書において、明細書のある部分に記載し説明した内容について記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることは言うまでもない。さらに、前記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が前記実施形態に限定されないことも言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
10圧電素子発振回路、11発振増幅器、12圧電素子、13発振起動促進回路、14発振検出回路、15発振出力回路、21インバータ、22インバータ、23インバータ、24インバータ、25電圧検出回路、26クロックドインバータ、27クロックドインバータ、28クロックドインバータ、30圧電素子発振回路、31発振増幅器、32発振起動促進回路、33発振出力回路、34インバータ、35インバータ、36発振出力回路本体、38出力点、39出力点、41定電圧源、