(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179224
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】乗用型苗植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A01C11/02 350H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097906
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今泉 大介
【テーマコード(参考)】
2B064
【Fターム(参考)】
2B064AA05
2B064AA07
2B064AB02
2B064CA04
2B064CA16
2B064CA19
2B064CA22
2B064CA23
2B064CA27
2B064CA30
2B064CB07
(57)【要約】
【課題】走行車体の後側に苗植付部を装備した乗用型苗植機において、走行車体の後部に機体左右方向に長い予備苗載台を設けている。然しながら、予備苗載台の後方に苗植付部の苗載台を配置しているので、機体の全長が長くなり、前後バランスや旋回性能において課題があった。そこで、機体の全長を短くできて、前後バランスや旋回性能に優れた乗用型苗植機を提供する。
【解決手段】走行車体2の後側に苗植付部4を昇降可能に装着し、走行車体2の後部に機体左右方向に長い予備苗載台6を設けた乗用型苗植機において、該予備苗載台6に載置する苗箱または苗取板を左右スライド移動自在に支持する機体左右方向に長い前後のレールを設け、該前後のレール間に臨む位置に苗載台41の上端部41aを設けて、予備苗載台6を苗植付部4の苗載台41の上端部41aの上方位置に前後方向で重なる位置に設ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後側に苗植付部(4)を昇降可能に装着し、走行車体(2)の後部に機体左右方向に長い予備苗載台(6)を設けた乗用型苗植機において、該予備苗載台(6)に載置する苗箱(Na)または苗取板(Nb)を左右スライド移動自在に支持する機体左右方向に長い前後のレール(23M,23R)を設け、該前後のレール(23M,23R)間に臨む位置に苗載台(41)の上端部(41a)を設けて、予備苗載台(6)を苗植付部(4)の苗載台(41)の上端部(41a)の上方位置に前後方向で重なる位置に設けたことを特徴とする乗用型苗植機。
【請求項2】
前後のレール(23F,23M,23R)を後方程高い位置とし、最後部のレール(23R)が苗取板(Nb)の底面を支持せずに載置される苗取板(Nb)の後方移動を規制することを特徴とする請求項1に記載の乗用型苗植機。
【請求項3】
苗取板(Nb)が苗取面(50)の基端側に把持部(51)を設け、該把持部(51)の左右両側から苗取面(50)の先端側に向けて左右側壁(52)を苗取面(50)の途中まで設け、苗取面(50)の先端側部の左右を解放し、苗取面(50)の先端側部の左右幅を基端側の左右幅よりも狭くしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗用型苗植機。
【請求項4】
最前部のレール(23F)と最後部のレール(23R)を載置された苗箱(Na)または苗取板(Nb)の上方を迂回する複数の連結フレーム(25)により連結し、該連結フレーム(25)の上端部を前後のフレーム(27)にて連結し、該前後のフレーム(27)が苗箱(Na)を載置支持して左右方向にスライド移動自在な間隔で配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗用型苗植機。
【請求項5】
最前部のレール(23F)に縦方向の枢支軸(29a)にて前回転ローラ(28a)を複数個設け、最前部のレール(23F)の後方のレール(23M)に前後方向の枢支軸(29b)にて後回転ローラ(28b)を複数個設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗用型苗植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体の後側に苗植付部を装備した乗用型苗植機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行車体の後側に苗植付部を装備した乗用型苗植機において、走行車体の後部に機体左右方向に長い予備苗載台を設けている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
予備苗載台の後方に苗植付部の苗載台を配置しているので、機体の全長が長くなり、前後バランスや旋回性能において課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、機体の全長を短くできて、前後バランスや旋回性能に優れた乗用型苗植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、走行車体2の後側に苗植付部4を昇降可能に装着し、走行車体2の後部に機体左右方向に長い予備苗載台6を設けた乗用型苗植機において、該予備苗載台6に載置する苗箱Naまたは苗取板Nbを左右スライド移動自在に支持する機体左右方向に長い前後のレール23M,23Rを設け、該前後のレール23M,23R間に臨む位置に苗載台41の上端部41aを設けて、予備苗載台6を苗植付部4の苗載台41の上端部41aの上方位置に前後方向で重なる位置に設けた乗用型苗植機である。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、予備苗載台6を苗植付部4の苗載台41の上端部41aの上方位置に前後方向で重なる位置に設けたので、苗植付部4を走行車体2後部に近づけて配置できて前後長さを短くでき、前後バランスの良い湿田走行性能が良く、また、旋回性能の高い作業性の良い乗用型田植機を得ることができる。
【0008】
また、予備苗載台6に載置する苗箱Naまたは苗取板Nbを左右スライド移動自在に支持する機体左右方向に長い前後のレール23M,23Rを設け、該前後のレール23M,23R間に臨む位置に苗載台41の上端部41aを設けたので、予備苗載台6に載置された苗箱Naまたは苗取板Nbの予備苗を前後のレール23M,23Rの間から容易に且つ作業性良く苗載台41に供給することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、前後のレール23F,23M,23Rを後方程高い位置とし、最後部のレール23Rが苗取板Nbの底面を支持せずに載置される苗取板Nbの後方移動を規制する請求項1に記載の乗用型苗植機である。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、前後のレール23F,23M,23Rを後方程高い位置としたので、苗取板Nbは前側が低い傾斜状に載置され、苗取板Nb上の苗が安定して支持される。
【0011】
また、苗取板Nbの前壁が最前部のレール23Fに常に接当した状態となり、左右スライド移動が引っ掛かることなくスムーズに行える。
【0012】
また最後部のレール23Rが苗取板Nbの底面を支持せずに載置される苗取板Nbの後方移動を規制するので、苗載台41に苗供給する際には、苗載台41の上端部41aが前後のレール23M,23R間に臨む位置で、作業者が苗取板Nbの前側を把持して持ち上げて、苗取板Nbの先部を下方に回動させると、作業性良く苗取板Nb上の苗を容易に苗載台41に供給することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、苗取板Nbが苗取面50の基端側に把持部51を設け、該把持部51の左右両側から苗取面50の先端側に向けて左右側壁52を苗取面50の途中まで設け、苗取面50の先端側部の左右を解放し、苗取面50の先端側部の左右幅を基端側の左右幅よりも狭くした請求項1または請求項2に記載の乗用型苗植機である。
【0014】
請求項4記載の発明は、最前部のレール23Fと最後部のレール23Rを載置された苗箱Naまたは苗取板Nbの上方を迂回する複数の連結フレーム25により連結し、該連結フレーム25の上端部を前後のフレーム27にて連結し、該前後のフレーム27が苗箱Naを載置支持して左右方向にスライド移動自在な間隔で配置されている請求項1または請求項2に記載の乗用型苗植機である。
【0015】
請求項5記載の発明は、最前部のレール23Fに縦方向の枢支軸29aにて前回転ローラ28aを複数個設け、最前部のレール23Fの後方のレール23Mに前後方向の枢支軸29bにて後回転ローラ28bを複数個設けた請求項1または請求項2に記載の乗用型苗植機である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態にかかる乗用型田植機の平面図である。
【
図6】苗取板を予備苗載台に載置した作用説明用の平面図である。
【
図7】第2実施形態を示す予備苗載台の作用説明用の正面図である。
【
図8】第2実施形態を示す予備苗載台の作用説明用の側面図である。
【
図9】第3実施形態を示す予備苗載台の作用説明用の側面図である。
【
図10】第4実施形態を示す予備苗載台の側面図である。
【
図11】第4実施形態を示す予備苗載台の斜視図である。
【
図12】第5実施形態を示す予備苗載台の側面図である。
【
図13】第5実施形態を示す予備苗載台の斜視図である。
【
図14】第6実施形態を示す予備苗載台の側面図である。
【
図15】第7実施形態を示す予備苗載台の側面図である。
【
図16】第8実施形態を示す予備苗載台の側面図である。
【
図17】第2実施形態を示す苗取板の斜視図である。
【
図18】第2実施形態を示す苗取板の側面図である。
【
図19】第2実施形態を示す苗取板の要部の斜視図である。
【
図20】第2実施形態を示す苗取板の作用説明用の側面図である。
【
図21】第2実施形態を示す苗取板の作用説明用の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0018】
<全体構成>
図1及び
図2は、本発明の一実施形態である乗用型田植機の平面図及び側面図である。
【0019】
乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部には、車体左右方向に長い予備苗載台6が設けられている。なお、乗用型田植機1の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0020】
<走行車体2>
図1及び
図2に示すように、走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪9,9及び左右一対の後輪10,10を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケースが配置され、そのミッションケースの左右側方にキャスタ角をつけて前輪ファイナルケースが設けられ、該左右前輪ファイナルケースの操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪9,9が各々取り付けられている。
【0021】
また、ミッションケースの背面部にメインフレームの前端部が固着されており、そのメインフレームの後端部に左右サスペンションを介して左右後輪ギヤケースが各々独立して上下動自在に支持され、その左右後輪ギヤケースから外向きに突出する左右後輪車軸に後輪10,10が取り付けられている。
【0022】
エンジン12は車体前部に搭載されており、該エンジン12の回転動力が、ベルト伝動装置及びHSTを介してミッションケースに伝達される。ミッションケースに伝達された回転動力は、該ミッションケース内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が左右前輪ファイナルケースに伝達されて左右前輪9,9を駆動すると共に、残りが左右後輪駆動軸を介して左右後輪ギヤケースに伝達されて左右後輪10,10を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケースに伝達され、それから植付伝動軸によって苗植付部4へ伝動される。
【0023】
エンジン12はボンネット13で覆われており、該ボンネット13内に各種操作機構を内蔵し後上部に操作パネル13aを設け、その上方に前輪9,9を操向操作するハンドル14が設けられている。
【0024】
ハンドル14の後方には、座席15が設けられている。
【0025】
ボンネット13の下端左右両側及び後方は、水平状のフロアステップ17になっている。フロアステップ17は一部格子状になっており、該フロアステップ17を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ17上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ18となっている。
【0026】
フロアステップ17の左右両外側には、フロアステップ17と同一平面状の拡張ステップ19が設けられている。
【0027】
拡張ステップ19は、フロアステップ17と同一平面の拡張フロアステップ19aとリヤステップ18と同一平面の拡張リヤステップ19bから構成される。
【0028】
<苗植付部4>
図1及び
図2に示すように、苗植付部4は10条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口に供給するとともに横一列分の苗を全て各苗取出口に供給する苗送りベルトにより苗を下方に移送する苗載台41、苗取出口に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置を備えている。
【0029】
苗植付部4の下部には中央部に2つのセンター整地フロート43、その左右両側にサイド整地フロート44がそれぞれ設けられている。これら整地フロート43,44を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、整地フロート43,44が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置により苗が植付けられる。各整地フロート43,44は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンター整地フロート43の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じて昇降リンク装置を上下作動させる昇降油圧シリンダを制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0030】
<予備苗載台6>
図1~
図4に示すように、予備苗載台6は、走行車体2後部のメインフレームに基部が固定された固定支持フレーム21の上部に固定された中央予備苗載台6aと該中央予備苗載台6aの左右両側部に平行リンク機構22にて前後方向に回動及び固定自在に設けた左右予備苗載台6bから構成される。
【0031】
そして、左右予備苗載台6bは、中央予備苗載台6aの左右両側部に位置して中央予備苗載台6aと同一載せ面をなす後方位置(イ)と平行リンク機構22を前方に回動させて中央予備苗載台6a前方下方の座席15左右両側に位置する前方位置(ロ)に固定自在である。
【0032】
中央予備苗載台6a及び左右予備苗載台6bは、L型鋼からなる前レール23F及び後レール23Rと両者の前後中間位置にある平鋼からなる中レール23Mにて構成され、中央予備苗載台6aには4個の苗箱Naまたは苗取板Nbを前レール23F、中レール23M及び後レール23R上に左右方向に並べて載置でき、左右予備苗載台6bには各々5個の苗箱Naまたは苗取板Nbを前レール23F、中レール23M及び後レール23R上に左右方向に並べて載置できる。
【0033】
そして、中央予備苗載台6aの左右両側部の後方位置(イ)に左右予備苗載台6bを位置させると、中央予備苗載台6aと左右予備苗載台6bの前レール23F、中レール23M及び後レール23Rは左右方向で同一載せ面となり、載置した苗箱Naまたは苗取板Nbを左右方向に自由にスライド移動することができる。
【0034】
特に、中央予備苗載台6aの左右両側部の後方位置(イ)に左右予備苗載台6bを位置させた時に、中レール23Mと後レール23Rの間に苗植付部4の苗載台41の上端部41aが臨む位置になるように予備苗載台6を配置している。
【0035】
従って、機体左右方向に長い予備苗載台6を苗植付部4の苗載台41の上端部41aの上方位置に前後方向で重なる位置に設けたので、苗植付部4を走行車体2後部に近づけて配置できて乗用型田植機1の前後長さを短くできて、前後バランスの良い湿田走行性能が良く、また、旋回性能の高い作業性の良い乗用型田植機を得ることができる。
【0036】
また、苗植付部4を上昇させて苗載台41に苗供給をする際に、苗載台41の上端部41aが予備苗載台6の中レール23Mと後レール23Rの間に臨む位置になるので、予備苗載台6に載置された苗箱Naまたは苗取板Nbの予備苗を中レール23Mと後レール23Rの間から容易に且つ作業性良く苗載台41に供給することができる。
【0037】
また、田植作業中は、左右あわせて10個の苗箱Naまたは苗取板Nbが載置された左右予備苗載台6bを平行リンク機構22の前方回動にて中央予備苗載台6a前方下方の座席15左右両側に位置する前方位置(ロ)にしおくと、重心が前方に移動して機体の前後バランスが良くなって湿田走行性能が向上して適切な田植作業が行なえる。
【0038】
また、左右予備苗載台6bを中央予備苗載台6a前方下方の座席15左右両側に位置する前方位置(ロ)にすることにより、畦から左右予備苗載台6bに苗箱Naまたは苗取板Nbを載置する際に、左右予備苗載台6bが機体前よりの低い位置にあることとなり該載置作業が容易に効率良く行なえる。
【0039】
図5及び
図6は、苗取板Nbの詳細構成と作用を説明する斜視図及び作用説明用平面図である。
【0040】
苗取板Nbは、苗を掬い取る苗取面50の一端側に把持部51を設け、苗取面50の他端側に苗を掬い取る先が尖った斜面先端50aを設け、把持部51の左右端部から苗取面50に沿って左右側壁52を苗取面50の他端側に向けて設けている。
【0041】
把持部51は、苗取面50よりも高い位置に設けられ、把持部51の下面には空間51aが形成されている。
【0042】
左右側壁52は、苗取面50の長手方向の半分から7割くらいの位置まであり、他端側の苗を掬い取る先が尖った斜面先端50a側には設けていない。なお、左右側壁52の高さは、苗取面50上面から10mmである。
【0043】
左右側壁52の先端側端部は、外に広がる斜面52aとしている。
【0044】
苗取面50の斜面先端50aを設けた側の左右側壁52が設けられていない先部50bは、基部よりも幅狭になっている。
【0045】
従って、作業者は、把持部51を把持して先が尖った斜面先端50aを苗箱Naの一端側に挿し込んで苗箱Naの底面と苗床の間をスライド移動させると、苗を苗取面50上面に掬い取ることができる。
【0046】
この時、苗を掬い取る先が尖った斜面先端50a側には左右側壁52が設けられていないので、容易に作業性良く先が尖った斜面先端50aを苗箱Naの一端側に挿し込んで苗箱Naの底面と苗床の間をスライド移動させることができ、また、左右側壁52の先端側端部が外に広がる斜面52aとなっているので、掬い取られた苗が適切に左右側壁52間に移動し、掬い取った苗を苗取面50と左右側壁52で安定良く支持できる。
【0047】
また、
図6に示すように、予備苗載台6上に苗を掬い取った苗取板Nbを並べて載置した際に、各苗取板Nb間に空間Aが形成され、作業者は片手で把持部51を把持し、他方の手を空間Aに入れて、容易に且つ作業性良く苗取板Nbを予備苗載台6(前レール23F、中レール23M及び後レール23R)上で左右方向にスライド移動させることができる。
【0048】
また、1個の苗取板Nbを左右方向にスライド移動させる作業で隣接する苗取板Nbの左右側壁52が接当しているので、スライド移動する方向の苗取板Nbをまとめて容易にスライド移動させることができる。
【0049】
なお、畦や道路から圃場内にある乗用型田植機1の予備苗載台6に苗箱Naまたは苗取板Nbを補給する作業は、乗用型田植機1を畦や道路に横着けにして、畦や道路に居る作業者が畦や道路のすぐ近くにある予備苗載台6の左右方向の端部に苗箱Naまたは苗取板Nbを載置して、機体上の作業者が該端部に載置された苗箱Naまたは苗取板Nbを予備苗載台6の他端側に向けてスライド移動させて、順次、予備苗載台6上に苗箱Naまたは苗取板Nbを満載する。
【0050】
<別実施形態>
【0051】
(1)
図7及び
図8は、予備苗載台6の第2実施形態を示す。
【0052】
即ち、中央予備苗載台6aの支持機構を前後方向に回動及び固定自在の平行リンク機構21とし、中央予備苗載台6aも平行リンク機構21にて前後方向に回動及び固定自在に設け、後方位置(イ)と前方下方の座席15上部に位置する前方位置(ロ)に固定自在としている。
【0053】
平行リンク機構21は、座席15の左右外側位置に配置され、中央予備苗載台6aを前方下方の座席15上部に位置する前方位置(ロ)にした時に、中央予備苗載台6aの中レール23Mと後レール23R間の空間に座席15の背凭れが挿通し、中央予備苗載台6aと座席15が干渉することはない。
【0054】
従って、中央予備苗載台6a及び左右予備苗載台6bを前方下方の前方位置(ロ)にすれば、低い位置で中央予備苗載台6a及び左右予備苗載台6bが左右方向に連通した載置状態となるので、低い畦から予備苗載台6への苗補給や小柄な作業者の苗補給作業が容易に行なえる。
【0055】
また、座席15を前部回動支点15aまわりに前方回動させてから、中央予備苗載台6a及び左右予備苗載台6bを前方下方の前方位置(ロ)にすれば、中央予備苗載台6a及び左右予備苗載台6b間を載置した苗箱Naまたは苗取板Nbを自由に左右スライド移動させることができ、また、作業者が予備苗載台6と苗植付部4の苗載台41との間でリヤステップ18及び拡張リヤステップ19b上に立って作業を行なうこともできる。
【0056】
また、
図7に示すように、左右予備苗載台6bを内側部分6b-1と外側部分6b―2に分割して、外側部分6b―2を回動支点6cまわりに内側部分6b-1上方に回動収納する構成にしている。
【0057】
従って、中央予備苗載台6a及び左右予備苗載台6bを前方下方の前方位置(ロ)にして、左右予備苗載台6bの外側部分6b―2を回動支点6cまわりに内側部分6b-1上方に回動収納すれば、機体の車高を低く、且つ、左右幅を狭くすることができ、機体をトラックに搭載する際や納屋等に格納する際に搭載スペースや格納スペースが狭くて済む。
【0058】
【0059】
即ち、上記第2実施形態において、中央予備苗載台6aの平行リンク機構21及び左右予備苗載台6bの平行リンク機構22の形状を変更して、中央予備苗載台6a及び左右予備苗載台6bを前方下方の前方位置(ロ)にした際に、苗箱Naまたは苗取板Nbの載置部が座席15の上方位置で前が低い傾斜状になるようにしている。
【0060】
従って、中央予備苗載台6a及び左右予備苗載台6bを前方下方の前方位置(ロ)にしても、中央予備苗載台6a及び左右予備苗載台6bの載置部が左右に連通状態となり、載置した苗箱Naまたは苗取板Nbを中央予備苗載台6a及び左右予備苗載台6b間を自由に左右スライド移動させることができる。
【0061】
(3)
図10及び
図11は、予備苗載台6の第4実施形態を示す。
【0062】
即ち、前レール23Fと中レール23Mは、左右方向の複数個所を載置面の下方で下連結フレーム24により連結し、前レール23Fと後レール23Rは、左右方向の複数個所を載置面に載置された苗箱Naまたは苗取板Nbの上方を迂回するようにコ字状の上連結フレーム25により連結し、上連結フレーム25の上端部を左右フレーム26にて連結している。
【0063】
従って、中レール23Mと後レール23Rの間には、フレームが無い空間となっており、苗載台41の上端部41aが中レール23Mと後レール23Rの間に臨む位置で障害物が無く、作業性良く予備苗載台6に載置された苗箱Naまたは苗取板Nbの予備苗を中レール23Mと後レール23Rの間から容易に苗載台41に供給することができる。
【0064】
(4)
図12及び
図13は、予備苗載台6の第5実施形態を示す。
【0065】
即ち、上記の第4実施形態において、上連結フレーム25の上端部を左右フレーム26にて連結する構成に換えて、L型鋼からなる前後のフレーム27にて連結する。
【0066】
そして、前後のフレーム27は、苗箱Naを横置きできる間隔になっており、苗供給後の空になった苗箱Naを横置きで左右スライド移動させることができる苗箱回収レールとして機能する。
【0067】
従って、乗用型田植機1を畦や道路に横着けにして、予備苗載台6に苗箱Naを補給する作業の際に、機体上の作業者が予備苗載台6にある空の苗箱Naを前後のフレーム27に載置して畦や道路側にスライド移動させて、容易に機体から畦や道路に空の苗箱Naを回収することができる。
【0068】
また、予備苗載台6に苗箱Naを補給する作業の際に、前後のフレーム27にも苗箱Naを載置すれば、前後のフレーム27が増量補助苗枠としての機能も果たす。
【0069】
(5)
図14は、予備苗載台6の第6実施形態を示す。
【0070】
即ち、上記の第4実施形態において、前レール23Fよりも中レール23Mを高い位置とし、中レール23Mよりも後レール23Rを高い位置とし、後レール23Rが平鋼を縦に設けた構成としている。
【0071】
よって、苗取板Nbは、前側が低い傾斜状に前レール23Fと中レール23M上に載置され、後方への移動が後レール23Rにて受け止められた状態となる。
【0072】
従って、苗取板Nbは前側が低い傾斜状に載置されるので、苗取板Nbの苗取面50上の苗が把持部51と左右側壁52にて安定して保持される。
【0073】
また、苗取板Nbの前壁が前レール23Fに常に接当した状態となり、左右スライド移動が引っ掛かることなくスムーズに行える。
【0074】
そして、苗載台41に苗供給する際には、苗載台41の上端部41aが中レール23Mと後レール23Rの間に臨む位置で、作業者が苗取板Nbの把持部51を把持して中レール23Mを回動支点にして持ち上げて、苗取板Nbの先部50bを下方に回動させると、作業性良く苗取板Nb上の苗を容易に苗載台41に供給することができる。
【0075】
なお、上連結フレーム25は、前レール23Fに載置する苗取板Nbの把持部51と干渉しないように前方に回避した形状としており、また、上連結フレーム25内で上記のように苗取板Nbが回動できる大きさにしている。
【0076】
(6)
図15は、苗取板Nbを載置する予備苗載台6の第7実施形態を示す。
【0077】
即ち、上記の第5実施形態において、前レール23Fは、平鋼を縦に配置して前回転ローラ28aを前レール23Fと平行に設けた縦方向の枢支軸29aにて回転自在に設けている。
【0078】
なお、前回転ローラ28aは、前レール23Fに沿って苗取板Nbの左右幅よりも狭い間隔にて等間隔で複数個設けられている。
【0079】
中レール23Mは、平鋼を横に配置して後回転ローラ28bを中レール23Mと平行に設けた前後方向の枢支軸29bにて回転自在に設けている。
【0080】
なお、後回転ローラ28bは、中レール23Mに沿って苗取板Nbの左右幅よりも狭い間隔にて等間隔で複数個設けられている。
【0081】
従って、予備苗載台6に苗取板Nbを載置すると、前レール23Fの上端にて苗取板Nbの把持部51裏面が支持され、前レール23Fの前回転ローラ28aにて苗取板Nbの前壁が支持され、中レール23Mの後回転ローラ28bにて苗取板Nbの苗取面50裏面が支持される。
【0082】
苗取板Nbを左右スライド移動させる際には、苗取板Nbが前回転ローラ28a及び後回転ローラ28bにて支持されているので、軽い力で安定して移動させることができ、作業労力の削減及び作業効率の向上が図れる。
【0083】
また、前レール23Fも平鋼にて構成して、安価な構成とすることができる。
【0084】
(7)
図16は、苗箱Naを載置する予備苗載台6の第8実施形態を示す。
【0085】
即ち、上記の第6実施形態において、前レール23Fは、L型鋼にて構成して、苗箱Naの前部底面を支持できるようにしている。
【0086】
【0087】
即ち、苗取板Nbには、苗取面50中央部に苗カウント用スイッチ37を設け、該苗カウント用スイッチ37部の苗取面50裏面に半球体状の突起30を設け、該突起30にカウンタ表示部31を設けている。
【0088】
苗カウント用スイッチ37は、苗取面50に掬い取った苗が載ると押されて苗取面50よりも下方に位置し、カウンタ表示部31の数を1だけ増やす。
【0089】
また、把持部51の右端には、手動カウント用スイッチ32とカウント表示部33を設けている。
【0090】
手動カウント用スイッチ32は、作業者が押し操作するとカウント表示部33の数を1だけ増やす。
【0091】
従って、田植作業開始時にカウンタ表示部31を0にリセットしておき、苗取板Nbにて苗箱Naから苗を苗取面50上に掬い取るとカウンタ表示部31にその掬い取った苗数を表示するので、圃場での苗使用数を容易に把握できる。
【0092】
また、田植作業開始時にカウント表示部33も0にリセットしておき、肥料袋を1つ施肥装置の肥料タンクに供給する度に、手動カウント用スイッチ32を押し操作することにより、圃場での肥料袋使用数を容易に把握できる。
【0093】
そして、苗取面50裏面の中央部に半球体状の突起30を設けているので、作業者は、片手で把持部51を把持して斜面先端50aを苗箱Naの一端側に挿し込んで苗箱Naの底面と苗床の間を他端側に向けてスライド移動させると、苗を苗取面50上面に掬い取ることができるが、その際に、
図20に示すように、苗取面50裏面の中央部に設けた半球体状の突起30を苗箱Naに接当させておくことにより、苗を掬い取るのに最適な角度20~30度を維持して軽い力で苗箱Naの一端側から他端側に向けてスライド移動させることがで、また、他端側に至ると把持部51を下方に押すと、
図21に示すように、突起30を支点にして苗取面50が水平状態になるように回動させることができ、水平状になった斜面先端50aを他方の手で持って、両手で容易に安定良く苗取板Nbを持ち上げることができる。よって、苗取板Nbにて苗箱Naから苗を苗取面50上に掬い取る作業が、容易に且つ作業性良く行なえる。
【符号の説明】
【0094】
2 走行車体
4 苗植付部
6 予備苗載台
23F レール(前レール)
23M レール(中レール)
23R レール(後レール)
25 連結フレーム
27 フレーム
28a 前回転ローラ
28b 後回転ローラ
29a 枢支軸
29b 枢支軸
41 苗載台
41a 上端部
50 苗取面
51 把持部
52 左右側壁
Na 苗箱
Nb 苗取板