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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017923
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】液体フィルター用基材
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/26 20060101AFI20240201BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20240201BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B01D71/26
B01D69/00
B01D69/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120889
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 優
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA07
4D006MA03
4D006MA22
4D006MA24
4D006MA31
4D006MB02
4D006MB20
4D006MC22X
4D006MC23
4D006MC88
4D006NA35
4D006NA36
4D006NA39
4D006NA54
4D006NA62
4D006PA01
4D006PC01
(57)【要約】
【課題】小孔径でもろ過時間のバラツキが抑えられる液体フィルター用基材を提供すること。
【解決手段】液体フィルター用基材は、ポリオレフィン微多孔膜を含み、前記ポリオレフィン微多孔膜の孔径の平均値が、1nm~50nmであり、前記ポリオレフィン微多孔膜の水流量の平均値が、0.003L/min/ft/psi~0.180L/min/ft/psiであり、前記ポリオレフィン微多孔膜の水流量の変動係数が、0.100以下であるものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン微多孔膜を含む液体フィルター用基材であって、
前記ポリオレフィン微多孔膜の孔径の平均値が、1nm~50nmであり、
前記ポリオレフィン微多孔膜の水流量の平均値が、0.003L/min/ft/psi~0.180L/min/ft/psiであり、
前記ポリオレフィン微多孔膜の水流量の変動係数が、0.100以下である液体フィルター用基材。
【請求項2】
前記ポリオレフィン微多孔膜の孔径の変動係数が、0.100以下である請求項1に記載の液体フィルター用基材。
【請求項3】
前記ポリオレフィン微多孔膜の膜厚の変動係数が、0.100以下である請求項1に記載の液体フィルター用基材。
【請求項4】
前記ポリオレフィン微多孔膜の空孔率の変動係数が、0.100以下である請求項1に記載の液体フィルター用基材。
【請求項5】
前記ポリオレフィン微多孔膜の膜厚の平均値が、3μm~20μmである請求項1に記載の液体フィルター用基材。
【請求項6】
前記ポリオレフィン微多孔膜の空孔率の平均値が、35%~60%である請求項1に記載の液体フィルター用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体フィルター用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ますます電子機器の小型化及び高性能化が進んでいる。特に、パーソナルコンピューター及びスマートフォンを代表とするデジタル機器及び携帯端末は、飛躍的な進化を遂げている。その進化を牽引し、サポートするさまざまな技術の中でも、半導体産業の技術革新が大きな役割を果たしているのは周知の事実である。近年の半導体産業において、配線パターン寸法は10nmを下回る領域での開発競争となっており、各社が最先端の製造ラインの構築を急いでいる。
【0003】
リソグラフィ工程は、半導体部品製造にてパターンを形成する工程である。近年のパターン微細化と共に、リソグラフィ工程で使用する薬液そのものの性状のみならず、ウェハー上へ塗布するまでの薬液の取扱いも、非常に高度な技術が要求されるようになってきている。
【0004】
高度に調製された薬液は、ウェハー上へ塗布する直前に緻密な液体フィルターで濾過され、パターン形成や歩留りに大きな影響を与える微小異物及び薬液由来のゲル状異物が除去される。パターンサイズが10nmを下回る最先端の配線パターンの形成においては、配線パターン寸法が10nm~数nmと微細化するに従い、薬液中の5nm以下の微細な異物を捕集するため、より微細な孔径と良好な透過性を両立する液体フィルターが必要である。そのため、各社フィルターメーカーは先端半導体用の液体フィルターの開発を精力的に進めているところである。
緻密な液体フィルターに適用可能な液体フィルター用基材として、小孔径のポリオレフィン微多孔膜を含む液体フィルター用基材が知られている(例えば、特許文献1~7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-218563号公報
【特許文献2】特開2014-217800号公報
【特許文献3】特許第5684951号公報
【特許文献4】特許第5684952号公報
【特許文献5】特許第5684953号公報
【特許文献6】特開2018-167198号公報
【特許文献7】特許第6805371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
孔径が50nm以下の微細孔径を有する液体フィルター用基材では、液体フィルター用基材の幅方向における、ろ過時間のバラツキの課題が生じやすい。液体フィルターのろ過時間が均一でない場合、例えば、フィルターの中央部では低圧、フィルターの端部では高圧と、フィルターの幅方向にかかる圧力が不均一となりやすく、フィルター全体で液体を均一に濾過できない。その結果、フィルター性能やろ過寿命が低下してしまったり、半導体の製造歩留まりが低下したりする懸念がある。
本開示は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、小孔径でもろ過時間のバラツキが抑えられる液体フィルター用基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> ポリオレフィン微多孔膜を含む液体フィルター用基材であって、
前記ポリオレフィン微多孔膜の孔径の平均値が、1nm~50nmであり、
前記ポリオレフィン微多孔膜の水流量の平均値が、0.003L/min/ft/psi~0.180L/min/ft/psiであり、
前記ポリオレフィン微多孔膜の水流量の変動係数が、0.100以下である液体フィルター用基材。
<2> 前記ポリオレフィン微多孔膜の孔径の変動係数が、0.100以下である<1>に記載の液体フィルター用基材。
<3> 前記ポリオレフィン微多孔膜の膜厚の変動係数が、0.100以下である<1>又は<2>に記載の液体フィルター用基材。
<4> 前記ポリオレフィン微多孔膜の空孔率の変動係数が、0.100以下である<1>~<3>のいずれか1項に記載の液体フィルター用基材。
<5> 前記ポリオレフィン微多孔膜の膜厚の平均値が、3μm~20μmである<1>~<4>のいずれか1項に記載の液体フィルター用基材。
<6> 前記ポリオレフィン微多孔膜の空孔率の平均値が、35%~60%である<1>~<5>のいずれか1項に記載の液体フィルター用基材。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、小孔径でもろ過時間のバラツキが抑えられる液体フィルター用基材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0010】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0011】
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜に関し、「長手方向」とは、長尺状に製造されるポリオレフィン微多孔膜の長尺方向を意味し、「幅方向」とは、ポリオレフィン微多孔膜の長手方向に直交する方向を意味する。以下、「幅方向」を「TD」とも称し、「長手方向」を「MD」とも称する。
また、液体フィルター用基材における「幅方向」は、ポリオレフィン微多孔膜における長手方向に直交する方向と同方向を意味する。
【0012】
[液体フィルター用基材]
本開示の液体フィルター用基材は、ポリオレフィン微多孔膜を含む液体フィルター用基材であって、前記ポリオレフィン微多孔膜の孔径の平均値が、1nm~50nmであり、前記ポリオレフィン微多孔膜の水流量の平均値が、0.003L/min/ft/psi~0.180L/min/ft/psiであり、前記ポリオレフィン微多孔膜の水流量の変動係数が、0.100以下であるものである。
本開示の液体フィルター用基材によれば、小孔径でもろ過時間のバラツキが抑えられる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
本開示の液体フィルター用基材では、ポリオレフィン微多孔膜の水流量の平均値が0.003L/min/ft/psi~0.180L/min/ft/psiとされるため、液体フィルターとしての透水性能を十分に得られやすくなるばかりでなく、フィルターを介した送液の安定性が長期に渡って得られやすくなる。また、本開示の液体フィルター用基材では、ポリオレフィン微多孔膜の孔径の平均値が1nm~50nmとされるため、十分な液体透過性を得ることできると共に、例えば、約10nm以下の微小粒子を非常に高度に捕集することができる。以上のことから、本開示の液体フィルター用基材は、先端半導体用の液体フィルターとして有効に機能しうると推察される。
一方、ポリオレフィン微多孔膜の孔径の平均値が50nm以下と小孔径になると、液体フィルター用基材の幅方向におけるろ過時間のバラツキが生じやすくなる傾向にある。しかしながら、本開示ではポリオレフィン微多孔膜の水流量の変動係数が0.100以下とされるため、フィルターの幅方向にかかる圧力が不均一となりにくく、ろ過時間のバラツキが抑えられると推察される。
以上のことから、本開示の液体フィルター用基材によれば、フィルター全体で液体を均一に濾過しやすくなる結果、フィルター性能の劣化やろ過寿命の低下が抑制されやすくなる傾向にある。
【0013】
(ポリオレフィン微多孔膜)
本開示の液体フィルター用基材は、ポリオレフィン微多孔膜を含む。本開示の液体フィルター用基材は、ポリオレフィン微多孔膜のみからなる基材であってもよいし、ポリオレフィン微多孔膜と他の層(例えば、塗布層又は多孔質基材)とが積層された基材であってもよい。また、ポリオレフィン微多孔膜は、複数のポリオレフィン多孔質層が積層された構造を有する積層膜であってもよい。
ポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィンを含んで構成された微多孔膜である。ここで、微多孔膜とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能となった膜を意味する。
なお、ポリオレフィン微多孔膜において、ポリオレフィンはポリオレフィン微多孔膜100質量部に対して90質量部以上含まれていることが好ましく、残部として本開示の効果に影響を与えない範囲で有機フィラー、無機フィラー、界面活性剤等の添加剤が含まれてもよい。
【0014】
(孔径)
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜は、孔径の平均値が1nm~50nmである。孔径の平均値が1nm~50nmであることは、小孔径であることを示す。ポリオレフィン微多孔膜の孔径の平均値が1nm以上であれば、液体フィルターとしての十分な液体透過性を得ることできる。このような観点から、孔径の平均値は10nm以上が好ましく、11nm以上がより好ましく、さらには13nm以上が好ましい。一方、ポリオレフィン微多孔膜の孔径の平均値が50nm以下であると、例えば10nm程度の微小な粒子を非常に高度に捕集することができる。このような観点から、孔径の平均値は40nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、さらには25nm以下が好ましく、特に20nm以下が好ましい。
【0015】
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜は、ろ過時間のバラツキをより抑制する観点から、孔径の変動係数が0.100以下であることが好ましく、0.095以下であることがより好ましく、0.093以下であることがさらに好ましく、0.085以下であることが特に好ましい。孔径の変動係数は、0.0015以上であってもよく、好ましくは0.020以上であってもよい。孔径の変動係数は、0.0015~0.100であることが好ましい。
【0016】
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜の孔径の値並びにその平均値及び変動係数は、実施例の欄に記載された方法により求められた値をいう。
【0017】
(水流量)
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜は、水流量の平均値が、0.003L/min/ft/psi~0.180L/min/ft/psiである。ポリオレフィン微多孔膜の水流量の平均値が0.003L/min/ft/psi以上であれば、液体フィルターとしての透水性能を十分に得られやすくなるばかりでなく、フィルターを介した送液の安定性(例えば、一定の送液量を維持するための動力負荷の安定性や一定の送液圧力(一定の動力負荷)下での送液量の安定性)が長期に渡って得られやすくなるため好ましい。このような観点から、ポリオレフィン微多孔膜の水流量の平均値は0.004L/min/ft/psi以上が好ましく、0.005L/min/ft/psi以上がより好ましい。一方、ポリオレフィン微多孔膜の水流量の平均値が0.180L/min/ft/psi以下である場合、例えば、約10nm以下の微小粒子を高度に捕集しやすくなるため、好ましい。このような観点から、ポリオレフィン微多孔膜の水流量の平均値は0.150L/min/ft/psi以下が好ましく、0.100L/min/ft/psi以下がより好ましい。
【0018】
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜は、ろ過時間のバラツキをより抑制する観点から、水流量の変動係数が0.100以下であることが好ましく、0.095以下であることがより好ましく、0.090以下であることがさらに好ましく、0.080以下であることが特に好ましい。水流量の変動係数は、0.010以上であってもよく、好ましくは0.015以上であってもよい。水流量の変動係数は、0.010~0.100であることが好ましい。
【0019】
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜の水流量の値並びにその平均値及び変動係数は、実施例の欄に記載された方法により求められた値をいう。
【0020】
(膜厚)
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚の平均値は、3μm~20μmであることが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜の膜厚の平均値が3μm以上である場合、十分な力学強度が得られやすく、ポリオレフィン微多孔膜の加工時等におけるハンドリング性、及びフィルターカートリッジの長期使用における耐久性が得られやすくなるため好ましい。このような観点から、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚の平均値は4μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましく、6μm以上が特に好ましい。一方、膜厚の平均値が20μm以下である場合、ポリオレフィン微多孔膜単膜で幅方向の厚さ変動が少なくなるばかりでなく、十分な液体透過性を得ることができ、所定の大きさのフィルターカートリッジにおいて、より多くのろ過面積を得られやすくなり、ポリオレフィン微多孔膜の加工時のフィルターの流量設計及び構造設計がし易くなるため好ましい。このような観点から、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚の平均値は18μm以下がより好ましく、16μm以下がさらに好ましく、14μm以下が特に好ましい。
【0021】
例えば、同じ大きさのハウジングにフィルターカートリッジを収めることを想定した場合、濾材(フィルター用基材を含む構成材全体)の厚さが薄いほど、濾材面積を大きくすることができるため、液体フィルターとして好ましい高流量及び低ろ過圧力の設計が可能になる。すなわち、液体フィルターとして、同じ流量を維持したい場合にはろ過圧力が低くなり、同じろ過圧力を維持したい場合には流量が高くなるように設計することが可能になる。特に、ろ過圧力が低くなることによって、一旦捕集された異物が、濾材内部でろ過圧力に継続して曝されることにより、時間の経過とともに濾材内部からろ過液とともに押し出されて漏れ出す確率が著しく低下するといった効果が期待できる。また、ろ過圧力が低くなることによって、ろ過する液体中に溶存するガスが、ろ過前後での圧力差(ろ過後の圧力低下)によって微小な気泡となって現れる確率が著しく低下するといった効果が期待できる。さらに、薬液等のろ過対象物のろ過歩留まりが向上するといった効果、及び、薬液等のろ過対象物の品質を長時間に渡って高度に維持する効果が期待できる。
【0022】
その一方で、濾材の厚さが薄いほど、濾材の強度及び耐久性能が低下するが、例えば、フィルター設計において、粗目の高強度支持体と複合化する(例えば、重ね合せて折込む等の加工を行う)ことで補強しながら、耐久性と流量の設計を調整することも可能になる。
【0023】
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜は、ろ過時間のバラツキをより抑制する観点から、膜厚の変動係数が0.100以下であることが好ましく、0.095以下であることがより好ましく、0.090以下であることがさらに好ましく、0.065以下であることが特に好ましい。膜厚の変動係数は、0.0015以上であってもよく、好ましくは0.020以上であってもよい。膜厚の変動係数は、0.0015~0.100であることが好ましい。
【0024】
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚の値並びにその平均値及び変動係数は、実施例の欄に記載された方法により求められた値をいう。
【0025】
(空孔率)
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率の平均値は、35%~60%であることが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜の空孔率の平均値が35%以上である場合、透液性能が良好なものとなり、このような観点から36%以上がより好ましく、38%以上がさらに好ましく、40%以上が特に好ましい。一方、空孔率の平均値が60%以下である場合、ポリオレフィン微多孔膜の力学強度が良好なものとなりハンドリング性も向上する点で好ましい。このような観点からポリオレフィン微多孔膜の空孔率の平均値は、58%以下がより好ましく、55%以下が更に好ましい。
【0026】
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜は、ろ過時間のバラツキをより抑制する観点から、空孔率の変動係数が0.100以下であることが好ましく、0.095以下であることがより好ましく、0.090以下であることがさらに好ましく、0.075以下であることが特に好ましい。空孔率の変動係数は、0.020以上であってもよく、好ましくは0.025以上であってもよい。空孔率の変動係数は、0.020~0.100であることが好ましい。
【0027】
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率の値並びにその平均値及び変動係数は、実施例の欄に記載された方法により求められた値をいう。
【0028】
(カルシウム含有量)
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜におけるカルシウムの含有量が2000ppb以下であることが好ましい。カルシウム含有量が2000ppb以下であると、フィルターカートリッジを製造する際の洗浄時間を著しく短縮できるだけでなく、洗浄時に使用する水等の溶媒も大きく削減することができる。このような観点からポリオレフィン微多孔膜のカルシウム含有量は1500ppb以下がより好ましく、1300ppb以下であることがさらに好ましく、1000ppb以下であることが特に好ましく、800ppb以下であることが極めて好ましい。一方、カルシウム含有量はできるだけ少ない方がフィルターカートリッジの製造効率という観点では好ましい。しかし、現実的には製造原料に微量のカルシウムが含まれていたり、ポリオレフィン微多孔膜の製造工程において微量のカルシウムが混入する場合があるため、カルシウム含有量を少なくすることは難しい。ポリオレフィン微多孔膜のカルシウム含有量は0ppb以上であってもよく、1ppb以上であってもよく、10ppb以上であってもよく、50ppbであってもよい。カルシウム含有量が2000ppb以下であれば、フィルターカートリッジの製造効率を大幅に向上させることができる。
【0029】
また、本開示では、孔径の平均値が1nm~50nmという微小な空孔を有するポリオレフィン微多孔膜を適用する。このような微小な空孔を有するポリオレフィン微多孔膜では比表面積が格段に大きくなり、溶出する金属イオン等も増加する傾向にある。しかしながら、カルシウム含有量が2000ppb以下であれば、このような微小な空孔を有するポリオレフィン微多孔膜であっても、フィルターカートリッジの製造効率を大幅に向上させることができる。また、ポリオレフィン微多孔膜のカルシウム含有量が1ppb以上であれば、ポリオレフィンに微量に残留する恐れがある重合触媒由来の塩化物イオンを十分に中和でき、ポリオレフィン微多孔膜の製造設備におけるステンレス等の配管を腐食する恐れがなくなる。このような観点から、ポリオレフィン微多孔膜のカルシウム含有量は10ppb以上が好ましく、50ppb以上がより好ましい。
【0030】
なお、本開示において、ポリオレフィン微多孔膜のカルシウム含有量を2000ppb以下に調整する方法としては特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン原料としてカルシウムの含有量が0ppb以上1000ppb以下のものを使用すること、ポリオレフィン微多孔膜の製造後に酸等で長時間洗浄すること等が挙げられる。ポリオレフィン微多孔膜の内部までカルシウム含有量を十分に低減できる観点から、カルシウム含有量の低いポリオレフィン原料を用いることが好ましい。
【0031】
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜におけるカルシウムの含有量は、実施例の欄に記載された方法により求められた値をいう。
【0032】
また、ポリオレフィン微多孔膜の多孔質構造の制御方法は特に制限されるものではない。例えば、ポリオレフィン樹脂の組成、原料中のポリオレフィン樹脂濃度、原料中に複数の溶剤を混合して使用する場合はその混合比率、押出シート状物内部の溶剤を絞り出すための加熱温度、押し圧力、加熱時間、延伸倍率、延伸後の熱処理(熱固定)温度、抽出溶媒への浸漬時間、アニール処理の温度及び時間等によって制御し得る。
【0033】
(ポリオレフィン)
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等の単独重合体若しくは共重合体、又はこれらの2種以上の混合物を用いることができる。この中でも、ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンとの混合物等が好適である。また、ポリエチレンとそれ以外の成分とを組み合わせて用いてもよい。ポリエチレン以外の成分としては、例えばポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンとポリエチレンとの共重合体などが挙げられる。また、ポリオレフィンとして、性質の相互に異なるポリオレフィン同士を組み合わせて用いてもよい。具体的に、重合度又は分岐度が互いに異なる、相溶性に乏しいポリオレフィン同士を組み合わせて用いてもよく、換言すれば結晶性、延伸性又は分子配向性が互いに異なるポリオレフィン同士を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
特に、本開示に用いるポリオレフィンとしては、重量平均分子量が300万~600万である高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量が20万~80万である低分子量ポリエチレンと、を混合させたポリエチレン組成物を用いることが好ましい。これは、2種以上のポリエチレンを適量配合することによって、延伸時のフィブリル化に伴うネットワーク網状構造を形成させ、空孔発生率を増加させる効果がある。
特に、高分子量ポリエチレンと低分子量ポリエチレンとの配合比は、質量比で15:85~85:15であることが好ましく、19:81~81:19であることがより好ましい。
低分子量ポリエチレンとしては、密度が0.92g/cm~0.98g/cmである高密度ポリエチレンが好ましい。
【0035】
なお、重量平均分子量は、ポリオレフィン微多孔膜の試料をo-ジクロロベンゼン中に加熱溶解し、GPC(Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム;GMH6-HT及びGMH6-HTL)により、カラム温度135℃、流速1.0mL/分の条件にて測定することで得られる。分子量の校正には単分散ポリスチレン(東ソー社製)を用いることができる。
【0036】
本開示において、ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィンは、カルシウムの含有量が0ppb以上1000ppb以下であることが好ましく、50ppb以上500ppb以下がより好ましく、100ppb以上300ppb以下が更に好ましい。
カルシウムの含有量を1000ppb以下に調整する方法としては、重合後のポリオレフィンへ添加する金属石鹸(ステアリン酸カルシウム等)の量を調整する方法が挙げられる。また、市販のポリオレフィン原料を酸洗浄して調整する方法も挙げられる。
本開示において、ポリオレフィンのカルシウムの含有量は、実施例の欄に記載された方法により求められた値をいう。
【0037】
<液体フィルター>
上述した本開示の液体フィルター用基材は、薬液との親和性付与加工が適宜行われた上で、カートリッジ形体に加工され、液体フィルターとして用いることができる。液体フィルターは、有機物及び無機物の少なくとも一方からなる粒子を含む、又は、当該粒子を含んでいる可能性がある被処理液から、当該粒子を除去するための器具である。粒子は被処理液中において固体状又はゲル状で存在する。本開示の液体フィルターは、粒径が数nm程度の非常に微細な粒子を除去する場合に好適である。また、液体フィルターは半導体の製造工程のみならず、例えばディスプレイ製造、研磨等の他の製造工程においても用いることができる。
【0038】
液体フィルター用基材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等の多孔質基材がよく知られている。上述した本開示のポリオレフィン微多孔膜を含む基材を液体フィルター用基材として用いた場合、ポリテトラフルオロエチレン多孔質基材と比べると、薬液との親和性がよい。そのため、例えば、フィルターの薬液との親和性付与加工が容易になること、フィルターハウジング内にフィルターカートリッジを装填して薬液のろ過を開始する際のフィルター内への薬液充填の際に、フィルターカートリッジ内に空気溜りが出来にくく、薬液のろ過歩留まりが良くなる等の効果が発現する。さらに、ポリエチレンの構造そのものにハロゲン元素が含まれないため、使用済みのフィルターカートリッジの取扱いが容易であり、環境負荷を低減できる等の効果がある。
【0039】
<ポリオレフィン微多孔膜の製造方法及び孔構造の制御方法>
本開示の液体フィルター用基材に含まれるポリオレフィン微多孔膜は、下記に示す方法で好ましく製造することができる。即ち、
(I)ポリオレフィン組成物と溶剤とを含む溶液を調製する工程、
(II)調製した溶液を溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押出し、冷却固化してゲル状成形物を得る工程、
(III)ゲル状成形物から予め一部の溶剤を絞り出す工程、
(IV)一部の溶剤が絞り出されたゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸する工程、
(V)延伸した中間成形物の内部から溶剤を抽出洗浄する工程、
を順次実施することにより、好ましく製造することができる。
【0040】
工程(I)ではポリオレフィン組成物と溶剤とを含む溶液を調製する。溶剤は、少なくとも大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤であることが好ましい。溶液は好ましくは熱可逆的ゾル・ゲル溶液である。工程(I)では、具体的に、ポリオレフィン組成物を溶剤に加熱溶解させることによりゾル化させ、熱可逆的ゾル・ゲル溶液を調製する。大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤としては、ポリオレフィンを膨潤できるもの又は溶解できるものであれば特に制限はなく、例えば、テトラリン、エチレングリコール、デカリン、トルエン、キシレン、ジエチルトリアミン、エチレンジアミン、ジメチルスルホキシド、ヘキサン等の液体溶剤が好ましく挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、デカリン又はキシレンが好ましい。また、本溶液の調製においては、上記の大気圧における沸点が210℃未満の揮発性の溶剤以外に、流動パラフィン、パラフィン油、鉱油、ひまし油などの、沸点が210℃以上の不揮発性の溶剤を含ませることもできる。
【0041】
工程(I)の溶液においては、ポリオレフィン微多孔膜の液体透過性能と濾材としての除去性能とを制御する観点から、ポリオレフィン組成物の濃度は15質量%~40質量%であることが好ましく、20質量%~30質量%であることがより好ましい。ポリオレフィン組成物の濃度が15質量%以上であると、力学強度が低くなり過ぎない傾向にあるためハンドリング性が良好に保たれ、更には、ポリオレフィン微多孔膜の製膜において割れの発生頻度が抑えられる傾向にある。また、ポリオレフィン組成物の濃度が40質量%以下であると、空孔が形成され易くなる傾向がある。
【0042】
工程(II)は、工程(I)で調製された溶液を溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押出し、冷却固化してゲル状成形物を得る。好ましくはポリオレフィン組成物の融点ないし融点より65℃高い温度の温度範囲においてダイより押出して押出物を得て、次いで前記押出物を冷却してゲル状成形物を得る。成形物はシート状に賦形されることが好ましい。
押出物の冷却方法は特に限定されず、水又は有機溶媒へのクエンチによる方法でもよいし、冷却された金属ロールへのキャスティングによる方法でもよい。一般的には、水、又はゾル・ゲル溶液時に使用した揮発性溶媒へのクエンチによる方法が使用される。冷却温度は、10℃~40℃が好ましい。なお、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながらゲル状シートを作製することが好ましい。
【0043】
工程(III)はゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸する前にゲル状成形物内の溶媒の一部を予め絞り出す工程である。工程(III)の工程では、例えば、上下2つのベルト又はローラーの間隙を通過させる等の方法によりゲル状成形物の面に圧力をかけることによって、好適に実施することが可能である。絞り出す溶媒の量は、ポリオレフィン微多孔膜に要求される液体透過性能及び濾過対象物の除去性能により、調整する必要がある。具体的には上下のベルト又はローラー間の押し圧力、絞り出し工程の温度、及び押し回数により絞り出す溶媒の量を適正な範囲に調整することができる。なお、ゲル状成形物が受ける圧力を、ローラー等を用いて、0.01MPa~0.5MPaの範囲に設定することが好ましい。0.05MPa~0.2MPaの範囲がさらに好ましい。絞り出し温度は40℃~100℃であることが好ましい。また、押し回数は、設備の許容スペースによるため、特に制限なく設定することは可能である。なお、必要に応じて、溶媒の絞り出し前に一段又は複数段の予備加熱を行い、一部の揮発性溶媒をシート内から除去してもよい。その場合、予備加熱温度は50℃~100℃が好ましい。また、この予備加熱を行う際、時間は1段につき5分間~9分間であることが好ましい。この場合、除去する揮発性溶媒の量は、加熱装置における搬送距離及び搬送速度で調節する。
【0044】
工程(IV)は、ゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸する工程である。工程(IV)での延伸は、二軸延伸が好ましく、縦延伸及び横延伸を別々に実施する逐次二軸延伸、縦延伸及び横延伸を同時に実施する同時二軸延伸、いずれの方法も好適に用いることが可能である。また、縦方向に複数回延伸した後に横方向に延伸する方法、縦方向に延伸し横方向に複数回延伸する方法、逐次二軸延伸した後にさらに、縦方向及び/又は横方向に1回もしくは複数回延伸する方法も好ましい。
【0045】
延伸倍率(縦延伸倍率と横延伸倍率の積)は、ポリオレフィン微多孔膜の液体透過性能と濾過対象物の除去性能を制御する観点から、好ましくは40倍~105倍であり、より好ましくは50倍~100倍である。延伸倍率が40倍以上であれば、ポリオレフィン微多孔膜の厚み斑の発生を抑制しやすくなる傾向にある。延伸倍率が105倍以下であれば、ポリオレフィン微多孔膜の製膜において割れの発生頻度が低くなる傾向にある。延伸は、溶媒を好適な状態に残存させた状態で行うことが好ましい。延伸温度は80℃~125℃が好ましい。特に100℃~120℃が好ましい。
【0046】
また(IV)の延伸工程に次いで熱固定処理を行ってもよい。
熱固定温度は、ポリオレフィン微多孔膜の液体透過性能と濾過対象物の除去性能を制御する観点から、100℃~143℃であることが好ましい。105℃~138℃がさらに好ましい。熱固定温度が100℃以上であれば、ポリオレフィン微多孔膜の液体透過性能がより向上する傾向にある。熱固定温度が143℃以下であれば、ポリオレフィン微多孔膜の濾過対象物の除去性能がより向上する傾向にある。
【0047】
工程(V)は延伸した中間成形物の内部から溶媒を抽出するために、延伸した中間成形物を洗浄する工程である。ここで、工程(V)は、延伸した中間成形物(延伸フィルム)の内部から溶媒を抽出するために、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、ヘキサン等の炭化水素の溶媒で洗浄することが好ましい。溶媒を溜めた槽内に中間成形物を浸漬して洗浄する場合は、20秒~150秒の時間を掛けることが、溶出分が少ないポリオレフィン微多孔膜を得るために好ましく、より好ましくは25秒~150秒であり、特に好ましくは30秒~120秒である。さらに、より洗浄の効果を高めるためには、槽を数段に分け、ポリオレフィン微多孔膜の搬送工程の下流側から、洗浄溶媒を注ぎ入れ、搬送工程の上流側に向けて洗浄溶媒を流し、下流槽における洗浄溶媒の純度を上流槽のものよりも高くすることが好ましい。溶媒を溜めた槽を数段に分ける場合、2槽であってもよく3槽以上であってもよい。各槽における洗浄溶媒の純度の勾配をより緩やかにする観点から、溶媒を溜めた槽は3槽以上が好ましい。
また、ポリオレフィン微多孔膜への要求性能によっては、アニール処理(加熱処理)により熱セットを行っても良い。なお、アニール処理は、工程での搬送性等の観点から50℃~150℃で実施することが好ましく、60℃~140℃がさらに好ましい。経時でのポリオレフィン微多孔膜の収縮を抑制する観点からは、アニール処理は、100℃~130℃が好ましい。
アニール処理を行う場合、ポリオレフィン微多孔膜の幅方向の収縮を抑制することが好ましい。幅方向の収縮を抑制することで、ポリオレフィン微多孔膜についての水流量等の変動係数が小さくなる傾向にある。例えば、ポリオレフィン微多孔膜の幅方向の両端部をクリップ等で固定した状態でアニール処理を行うことで、ポリオレフィン微多孔膜が幅方向に収縮するのが抑制される傾向にある。
また、ポリオレフィン微多孔膜の孔径、膜厚、空孔率及び水流量は、ポリオレフィンの配合、ポリオレフィン溶液中のポリオレフィン組成物の濃度、ベーステープの作成方法、ポリオレフィン溶液中の溶剤の除去方法、ベーステープの延伸条件及び熱処理条件等を適宜調整することで、所定の範囲とすることができる。
【実施例0048】
以下、本開示の実施例、比較例及び各種測定方法について説明するが、本開示はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
[測定方法]
(膜厚)
ポリエチレン微多孔膜の膜厚は、接触式の膜厚計(株式会社ミツトヨ製)にて測定した。ここで接触端子は底面が直径0.5cmの円柱状のものを用いた。測定圧は0.1Nとした。
-平均値-
ポリオレフィン微多孔膜の幅方向(TD方向)に沿って、製品幅の中心とその中心から各端面に向かって26mm間隔になるように5点ずつ計11点の膜厚を上述のようにして測定し、各測定箇所における膜厚の算術平均として算出された値を、膜厚の平均値とした。
-変動係数-
ポリエチレン微多孔膜の幅方向(TD方向)に沿って、製品幅の中心とその中心から各端面に向かって26mm間隔になるように5点ずつ計11点の膜厚を上述のようにして測定し、各測定箇所における膜厚の値に基づいて標準偏差σTD1を求めた。次いで、σTD1を計11点の膜厚の平均値で除算して変動係数CVTD1を求めた。同様の操作を、ポリエチレン微多孔膜の長手方向に沿って50mm毎にさらに9回繰り返し、合計10回分の変動係数CVTD1~CVTD10を算出した。得られた変動係数CVTD1~CVTD10の算術平均を、膜厚の変動係数とした。
【0050】
(空孔率)
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率(ε)は、下記式により算出した。
ε(%)={1-Ws/(ds・t)}×100
Ws:ポリオレフィン微多孔膜の目付け(g/m
ds:ポリオレフィンの真密度(g/cm
t:ポリオレフィン微多孔膜の膜厚(μm)
なお、ポリオレフィン微多孔膜の目付けは、サンプルを2cm×2cmに切り出し、その質量を測定し、質量を面積で割ることで求めた。
-平均値-
ポリエチレン微多孔膜の幅方向(TD方向)に沿って、製品幅の中心とその中心から各端面に向かって20mm間隔になるように3点ずつ計7点において2cm×2cmのサンプルを切り出し、このサンプルについて上述のようにして空孔率を測定した。各測定サンプルについての算術平均として算出された値を、空孔率の平均値とした。
-変動係数-
ポリエチレン微多孔膜の幅方向(TD方向)に沿って、製品幅の中心とその中心から各端面に向かって20mm間隔になるように3点ずつ計7点の空孔率を上述のようにして測定し、各測定箇所における空孔率の値に基づいて標準偏差σTD1を求めた。次いで、σTD1を計7点の空孔率の平均値で除算して変動係数CVTD1を求めた。同様の操作を、ポリエチレン微多孔膜の長手方向に沿って50mm毎にさらに9回繰り返し、合計10回分の変動係数CVTD1~CVTD10を算出した。得られた変動係数CVTD1~CVTD10の算術平均を、空孔率の変動係数とした。
【0051】
(孔径)
下記方法により測定された平均流量孔径を、ポリエチレン微多孔膜の孔径とした。
気・液相置換によるポリエチレン微多孔膜の平均流量孔径は、PMI社製のパームポロメータ多孔質材料自動細孔径分布測定システム〔Capillary Flow Porometer〕を用い、細孔径分布測定試験法〔ハーフドライ法(ASTM E1294-89)〕を適用することにより測定した。なお、使用した試液はフッ素系不活性液体(商品名:フロリナート)であり(界面張力値:16.0dyne/cm)、測定温度は25℃であり、測定圧力は0psi~500psiの範囲で以下の条件で測定を実施した。
・バブルポイントパラメータ: BUBLFLOW = 50、F/PT = 100、MINBPPRES = 0、ZEROTIME = 1 PULSEDELAY = 2
・ウェットパラメータ: V2INCR = 15、PREGINC = 0.9、MINEQTIME = 30、PRESSLEW = 30、FLOWSLEW = 30、EQITER = 50、AVEITER = 10、MAXPDIF = 1、MAXFDIF = 30
・ドライパラメータ: V2INCR = 40、PREGINC = 2.4、MINEQTIME = 30、PRESSLEW = 30、FLOWSLEW = 30、EQITER = 40、AVEITER = 10、MAXPDIF = 1、MAXFDIF = 30
-平均値-
ポリエチレン微多孔膜の幅方向(TD方向)に沿って、製品幅の中心とその中心から各端面に向かって50mm間隔になるように2点ずつ計5点の孔径を上述のようにして測定し、各測定箇所における孔径の算術平均として算出された値を、孔径の平均値とした。
-変動係数-
ポリエチレン微多孔膜の幅方向(TD方向)に沿って、製品幅の中心とその中心から各端面に向かって50mm間隔になるように2点ずつ計5点の孔径を上述のようにして測定し、各測定箇所における孔径の値に基づいて標準偏差σTD1を求めた。次いで、σTD1を計5点の孔径の平均値で除算して変動係数CVTD1を求めた。同様の操作を、ポリエチレン微多孔膜の長手方向に沿って50mm毎にさらに9回繰り返し、合計10回分の変動係数CVTD1~CVTD10を算出した。得られた変動係数CVTD1~CVTD10の算術平均を、孔径の変動係数とした。
【0052】
(水流量)
ポリオレフィン微多孔膜をエタノールに浸漬し、室温(24℃)下で乾燥した。このポリオレフィン微多孔膜を40mm四方に切出し、直径37mmのステンレス製の透液セル(透液面積S:10.75cm)にセットした。透液セル上の該ポリオレフィン微多孔膜を少量(0.5ml)のエタノールで湿潤させた後、90kPaの差圧で予め計量した純水V(100ml)を透過させて、純水全量が透過するのに要した時間Tl(min)を計測した。その純水の液量と純水の透過に要した時間から、1psi差圧下における単位時間(min)・単位面積(ft)当たりの透水量Vs(L/min/ft/psi)を以下の式より計算した。測定は室温24℃の温度雰囲気下で行った。
Vs=(V/1000)/Tl/(S/929.03)/(90/6.895)
-平均値-
ポリオレフィン微多孔膜の幅方向(TD方向)に沿って、製品幅の中心とその中心から各端面に向かって15mm間隔になるように2点ずつ計5点において40mm四方のサンプルを切り出し、このサンプルについて上述のようにして水流量を測定した。各測定サンプルについての算術平均として算出された値を、水流量の平均値とした。
-変動係数-
ポリオレフィン微多孔膜の幅方向(TD方向)に沿って、製品幅の中心とその中心から各端面に向かって15mm間隔になるように2点ずつ計5点の水流量を上述のようにして測定し、各測定箇所における水流量の値に基づいて標準偏差σVs1を求めた。次いで、σVs1を計5点の水流量の平均値で除算して変動係数CVVs1を求めた。同様の操作を、ポリエチレン微多孔膜の長手方向に沿って50mm毎にさらに9回繰り返し、合計10回分の変動係数CVVs1~CVVs10を算出した。得られた変動係数CVVs1~CVVs10の算術平均を、水流量の変動係数とした。
【0053】
(ろ過時間のバラツキ)
ろ過流体である試験液として、フナコシ社製の平均粒子径5nmの金属コロイド(金コロイド)を粒子濃度40ppb含む水溶液を調整して使用した。
濾過寿命を評価するために、ポリエチレン微多孔膜のTD方向に沿って、製品幅の中心部と両端面の3箇所より5cm四方にポリエチレン微多孔膜を切出した。切出したポリエチレン微多孔膜を、直径37mmのステンレス製の透液セル(透液面積S:10.75cm)にセットした。透液セル上のポリエチレン微多孔膜を少量(0.5ml)のエタノールで湿潤させた後、差圧0.1MPaで前記試験液200mlを通液濾過させて、試験液全量が通過するのに要した時間TFを計測した。一番短いろ過時間の値をTFを1としたときに、ろ過時間が一番長い値の比が1.2以下である場合をAとし、1.3を超える場合をBと評価した。
【0054】
(捕集性能)
ろ過時間の測定前における上述の試験液の金属コロイド濃度(M1)と、ろ過時間の測定で使用したポリエチレン微多孔膜を通過したろ液の金属コロイド濃度(M2)とから、下記式により粒子の捕集率を求めた。ポリエチレン微多孔膜のTD方向に沿って、製品幅の中心部と両端面の3箇所で測定した捕集率の算術平均値を算出し、ポリエチレン微多孔膜の捕集率とした。溶液の金属濃度は、ICP-OES法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法、装置名:Agilent-ICP-OES-5100、アジレント・テクノロジー株式会社)を用い、標準試薬を希釈し、0ppb~100ppbの濃度範囲に5点以上をとった検量線をもって金属濃度を決定した。捕集性能は以下の基準で評価した。
捕集率(%)=((M1-M2)/(M1))×100
-評価基準-
・A:捕集率が80%以上である場合
・B:捕集率が60%以上80%未満の場合
・C:捕集率が30%以上60%未満の場合
【0055】
(カルシウム(Ca)含有量)
測定試料0.1gをフッ素樹脂製容器に正確に秤量し、超高純度硝酸を添加してマイクロウェーブ分解し、ICP(高周波誘導結合プラズマ)質量分析法(ICP-MS法 装置名:Aglient7500cs、アジレント・テクノロジー株式会社)によりカルシウム含有量をppbの桁で定量した。
【0056】
(多孔膜からのカルシウム(Ca)溶出量)
表面のゴミを取り除いたポリオレフィン微多孔膜の試料4000cmをフッ素樹脂製容器に入れ、イソプロピルアルコールを60質量%含む10質量%塩酸抽出液を200g注いだ。この容器中に試料を24時間浸漬させた後、液体中のCa濃度をICP-OES法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法、装置名:Agilent-ICP-OES-5100、アジレント・テクノロジー株式会社)にて0.1ppbの桁まで定量した。ポリエチレン微多孔膜からのCa溶出量を、抽出液質量、ポリエチレン微多孔膜の表面積、および抽出液中のCa濃度の値から算出し、μg/mの単位にて求めた。
【0057】
(ポリエチレン微多孔膜の製造方法)
以下に、各実施例及び比較例における、ポリエチレン微多孔膜の製造方法の詳細について言及する。
実施例と比較例との製法上の主な相違点は、実施例では塩化メチレン浴を3槽とする一方比較例では2槽である点、及び、加熱処理を実施する際に実施例ではTD方向に対して幅を一定に固定して行う一方比較例では幅の固定を行わない点である。
【0058】
<実施例1>
重量平均分子量が460万でCa含有量140ppbである超高分子量ポリエチレン22質量部と、重量平均分子量が50万でCa含有量230ppbである高密度ポリエチレン5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が27質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン72質量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)1質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度190℃にてダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率5倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度112℃にて倍率15倍で延伸し(横延伸)、その後温度115℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に、熱処理済みのベーステープを3槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第3槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽<第3層(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、TD方向に対して幅を一定に固定しながら110℃で1分間TD方向への加熱処理を実施し、60℃で20秒間冷却することで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
得られた液体フィルター用基材の物性を表1に示す。なお、以下の実施例及び比較例の物性についても同様に、表1又は表2に示す。
【0059】
<実施例2>
縦延伸倍率を6倍にした以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0060】
<実施例3>
縦延伸倍率を6.5倍、横延伸倍率を13.8倍にした以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0061】
<実施例4>
重量平均分子量が460万でCa含有量110ppbである超高分子量ポリエチレン21質量部と、重量平均分子量が50万でCa含有量230ppbである高密度ポリエチレン5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が26質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン73質量部とデカリン1質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度190℃にてダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率5倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度115℃にて倍率15倍で延伸し(横延伸)、その後温度125℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを3槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第3槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽<第3層(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、TD方向に対して幅を一定に固定しながら120℃で1分間TD方向への加熱処理を実施し、60℃で20秒間冷却することで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0062】
<実施例5>
重量平均分子量が460万でCa含有量140ppbである超高分子量ポリエチレン18質量部と、重量平均分子量が50万でCa含有量230ppbである高密度ポリエチレン5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が23質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン76質量部とデカリン1質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度190℃にてダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率4倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度115℃にて倍率15倍で延伸し(横延伸)、その後温度125℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを3槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第3槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽<第3層(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、TD方向に対して幅を一定に固定しながら120℃で1分間TD方向への加熱処理を実施し、60℃で20秒間冷却することで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0063】
<実施例6>
重量平均分子量が420万でCa含有量31ppmである超高分子量ポリエチレン3質量部と、重量平均分子量が40万でCa含有量34ppmである高密度ポリエチレン14質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が17質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン51質量部とデカリン32質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度190℃にてダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率4.5倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度115℃にて倍率8倍で延伸し(横延伸)、その後温度125℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを3槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第3槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽<第3層(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、TD方向に対して幅を一定に固定しながら120℃で1分間TD方向への加熱処理を実施し、60℃で20秒間冷却することで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0064】
<実施例7>
重量平均分子量が420万でCa含有量31ppmである超高分子量ポリエチレン12質量部と、重量平均分子量が40万でCa含有量34ppmである高密度ポリエチレン5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が17質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン51質量部とデカリン32質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度190℃にてダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率4倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度115℃にて倍率9倍で延伸し(横延伸)、その後温度125℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを3槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第3槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽<第3層(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、TD方向に対して幅を一定に固定しながら120℃で1分間TD方向への加熱処理を実施し、60℃で20秒間冷却することで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0065】
<実施例8>
重量平均分子量が420万でCa含有量31ppmである超高分子量ポリエチレン6質量部と、重量平均分子量が40万でCa含有量34ppmである高密度ポリエチレン24質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が30質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン68質量部とデカリン2質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度190℃にてダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度95℃にて倍率4倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度110℃にて倍率11倍で延伸し(横延伸)、その後温度120℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを3槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第3槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽<第3層(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、TD方向に対して幅を一定に固定しながら120℃で1分間TD方向への加熱処理を実施し、60℃で20秒間冷却することで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0066】
<実施例9>
重量平均分子量が420万でCa含有量31ppmである超高分子量ポリエチレン15質量部と、重量平均分子量が40万でCa含有量34ppmである高密度ポリエチレン15質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が30質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン68質量部とデカリン2質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度190℃にてダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率4倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度115℃にて倍率10倍で延伸し(横延伸)、その後温度125℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを3槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第3槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽<第3層(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、TD方向に対して幅を一定に固定しながら120℃で1分間TD方向への加熱処理を実施し、60℃で20秒間冷却することで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0067】
<実施例10>
重量平均分子量が420万でCa含有量31ppmである超高分子量ポリエチレン17質量部と、重量平均分子量が40万でCa含有量34ppmである高密度ポリエチレン4質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が21質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン78質量部とデカリン1質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度190℃にてダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率4倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度115℃にて倍率8倍で延伸し(横延伸)、その後温度125℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを3槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第3槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽<第3層(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、TD方向に対して幅を一定に固定しながら120℃で1分間TD方向への加熱処理を実施し、60℃で20秒間冷却することで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0068】
<比較例1>
重量平均分子量が460万でCa含有量140ppbである超高分子量ポリエチレン22質量部と、重量平均分子量が50万でCa含有量230ppbである高密度ポリエチレン5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が27質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン72質量部とデカリン1質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度190℃にてダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率8倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度112℃にて倍率10倍で延伸し(横延伸)、その後温度115℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に、熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、110℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0069】
<比較例2>
縦延伸倍率を9倍にした以外は比較例1と同様にポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を作製した。
【0070】
<比較例3>
縦延伸倍率を10倍、横延伸倍率を8倍にした以外は比較例1と同様にポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を作製した。
【0071】
<比較例4>
重量平均分子量が420万でCa含有量31ppmである超高分子量ポリエチレン3質量部と、重量平均分子量が40万でCa含有量34ppmである高密度ポリエチレン14質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が17質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン51質量部とデカリン32質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度190℃にてダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率6倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度115℃にて倍率6倍で延伸し(横延伸)、その後温度125℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0072】
<比較例5>
重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン5質量部と、重量平均分子量が56万でCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン23質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が28質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン69質量部とデカリン3質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度160℃にてダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で25℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを55℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、85℃に加熱したローラー上を20kgf/m(1.96MPa)の押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率5.8倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度100℃にて倍率14倍で延伸し(横延伸)、その後温度118℃で熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、45℃で塩化メチレンを乾燥除去し、110℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることでポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0073】
<比較例6>
比較例5において、ベーステープを40℃に加熱したローラー上で40kgf/m(3.92MPa)の押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した後、長手方向に温度90℃にて倍率5.8倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度90℃にて倍率14倍で延伸し(横延伸)、その後温度124℃で熱処理(熱固定)を行った以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0074】
<比較例7>
比較例5において、ベーステープを95℃に加熱したローラー上で5kgf/m(0.49MPa)の押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した後、長手方向に温度95℃にて倍率6.5倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度95℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後温度114℃で熱処理(熱固定)を行った以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0075】
<比較例8>
比較例5において、重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン4質量部と、重量平均分子量が56万のCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン31質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いて、ポリエチレン樹脂総量の濃度が35質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン55質量部とデカリン10質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製し、流動パラフィンの一部を除去したベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率5倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度100℃にて倍率9倍で延伸し(横延伸)、その後温度114℃で熱処理(熱固定)を行った以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0076】
<比較例9>
比較例5において、重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン8質量部と、重量平均分子量が56万のCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン24質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いて、ポリエチレン樹脂総量の濃度が32質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン53質量部とデカリン15質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製し、流動パラフィンの一部を除去したベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率4倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度100℃にて倍率15倍で延伸した(横延伸)以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0077】
<比較例10>
重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン14質量部と、重量平均分子量が56万でCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン6質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が20質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン55質量部とデカリン25質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度160℃にてダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で25℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを55℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、85℃に加熱したローラー上を20kgf/m(1.96MPa)の押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率5倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度100℃にて倍率14倍で延伸し(横延伸)、その後温度128℃で熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、45℃で塩化メチレンを乾燥除去し、110℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることでポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0078】
<比較例11>
比較例10において、重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン12質量部と、重量平均分子量が56万でCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン8質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0079】
<比較例12>
比較例10において、二軸延伸した後の熱処理(熱固定)温度を134℃とした以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0080】
<比較例13>
比較例10において、重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン20質量部と、重量平均分子量が56万でCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いて、ポリエチレン樹脂総量の濃度が25質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン50質量部とデカリン25質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。このポリエチレン溶液を比較例10と同様に押出し、得られたベーステープを加熱乾燥した後に、引き続き95℃に加熱したローラー上を10kgf/m(0.98MPa)の押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープから流動パラフィンの一部を除去した以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0081】
<比較例14>
重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン3質量部と、重量平均分子量が56万でCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン12質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が15質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン60質量部とデカリン25質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度160℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で25℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを55℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、85℃に加熱したローラー上を20kgf/m(1.96MPa)の押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率6倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度100℃にて倍率12倍で延伸し(横延伸)、その後温度136℃で熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、45℃で塩化メチレンを乾燥除去し、110℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることでポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0082】
<比較例15>
比較例14において、重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン2質量部と、重量平均分子量が56万でCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン18質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いて、ポリエチレン樹脂総量の濃度が20質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン55質量部とデカリン25質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0083】
<比較例16>
比較例14において、二軸延伸した後の熱処理(熱固定)温度を142℃とした以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0084】
<比較例17>
比較例14において、重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン6.5質量部と、重量平均分子量が56万でCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン18.5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いて、ポリエチレン樹脂総量の濃度が25質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン50質量部とデカリン25質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。このポリエチレン溶液を用い、比較例14と同様に押出し、得られたベーステープを加熱乾燥した後に、引き続き95℃に加熱したローラー上を10kgf/m(0.98MPa)の押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0085】
<比較例18>
重量平均分子量が510万でCa含有量140ppbである超高分子量ポリエチレン18.4質量部と、重量平均分子量が65万でCa含有量270ppbである高密度ポリエチレン4.6質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が23質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン74.5質量部とデカリン2.5質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度155℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度115℃にて倍率5.8倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後130℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0086】
<比較例19>
重量平均分子量が510万でCa含有量140ppbである超高分子量ポリエチレン18.4質量部と、重量平均分子量が65万でCa含有量270ppbである高密度ポリエチレン4.6質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が23質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン75.9質量部とデカリン1.1質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度158℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で18℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度95℃にて倍率5.8倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後140℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0087】
<比較例20>
重量平均分子量が510万でCa含有量140ppbである超高分子量ポリエチレン12.5質量部と、重量平均分子量が65万でCa含有量270ppbである高密度ポリエチレン12.5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が25質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン72.5質量部とデカリン2.5質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度156℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で18℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、110℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度115℃にて倍率5.8倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後115℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0088】
<比較例21>
重量平均分子量が510万でCa含有量140ppbである超高分子量ポリエチレン6質量部と、重量平均分子量が65万でCa含有量270ppbである高密度ポリエチレン24質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が30質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン67.5質量部とデカリン2.5質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度164℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で16℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、30℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度115℃にて倍率5.8倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後140℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、125℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0089】
<比較例22>
重量平均分子量が510万でCa含有量140ppbである超高分子量ポリエチレン4.6質量部と、重量平均分子量が65万でCa含有量270ppbである高密度ポリエチレン18.4質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が23質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン74.5質量部とデカリン2.5質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度164℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で16℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、30℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度115℃にて倍率5.8倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後128℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0090】
<比較例23>
重量平均分子量が510万でCa含有量140ppbである超高分子量ポリエチレン4.6質量部と、重量平均分子量が65万でCa含有量270ppbである高密度ポリエチレン18.4質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が23質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン74.5質量部とデカリン2.5質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度164℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で16℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、30℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度115℃にて倍率7倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率11倍で延伸し(横延伸)、その後125℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0091】
<比較例24>
重量平均分子量が510万でCa含有量140ppbである超高分子量ポリエチレン10.0質量部と、重量平均分子量が65万でCa含有量270ppbである高密度ポリエチレン10.0質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が20質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン77.3質量部とデカリン2.7質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度156℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を16℃の水浴中で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、30℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度115℃にて倍率7倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後135℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0092】
<比較例25>
重量平均分子量が510万でCa含有量140ppbである超高分子量ポリエチレン24質量部と、重量平均分子量が65万でCa含有量270ppbである高密度ポリエチレン6質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が30質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン67.7質量部とデカリン2.3質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度158℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で16℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、30℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度115℃にて倍率7倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率9倍で延伸し(横延伸)、その後130℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、105℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0093】
<比較例26>
重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン15質量部と、重量平均分子量が56万でCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン15質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が30質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン67.5質量部とデカリン2.5質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度155℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度90℃にて倍率5.9倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後130℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0094】
<比較例27>
重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン18質量部と、重量平均分子量が56万でCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が23質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン75.9質量部とデカリン1.1質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度158℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で18℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、90℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度90℃にて倍率7.0倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後130℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、100℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0095】
<比較例28>
重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン18質量部と、重量平均分子量が56万でCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン5質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が23質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン75.9質量部とデカリン1.1質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度156℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で18℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、110℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度105℃にて倍率6.5倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度115℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後130℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、100℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0096】
<比較例29>
重量平均分子量が460万でCa含有量30ppmである超高分子量ポリエチレン15質量部と、重量平均分子量が56万でCa含有量36ppmである高密度ポリエチレン15質量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が30質量%となるように予め準備しておいた流動パラフィン67.5質量部とデカリン2.5質量部の混合溶剤とポリエチレン組成物を混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度164℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で16℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ベーステープを作製した。該ベーステープを60℃で7分、さらに、95℃で7分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、30℃に加熱したローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度90℃にて倍率5.9倍で延伸し(縦延伸)、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率13倍で延伸し(横延伸)、その後120℃にて熱処理(熱固定)を行った。
次に熱処理済みのベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、40℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながら加熱処理をすることで、ポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材を得た。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
表1及び表2に記載の評価結果から、以下のことがわかる。
水流量の変動係数が0.100以下である実施例1~10のポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材は、水流量の変動係数が0.100を超える比較例1~29のポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材に比較して、ろ過時間のバラツキに優れることがわかる。
原料用に用いられたポリエチレンに含まれるCa含有量が1ppm未満の実施例1~5のポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材は、Ca含有量が1ppm以上の実施例6~10のポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材に比較して、Ca溶出量が抑制されることがわかる。
孔径の平均値が20nm以下の実施例1~5及び8~10のポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材は、孔径の平均値が20nmを超える実施例6~7のポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材に比較して、捕集性能に優れることがわかる。