(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179232
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】冷却モジュール及び電子機器
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20241219BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20241219BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20241219BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F28D15/02 102A
F28D15/02 M
F28D15/02 101H
H01L23/46 B
G06F1/20 B
G06F1/20 C
H05K7/20 Q
H05K7/20 H
H05K7/20 R
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097922
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン ハオユー
(72)【発明者】
【氏名】星野 鷹典
(72)【発明者】
【氏名】橋場 惇輝
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AA06
5E322AA07
5E322AA10
5E322BA01
5E322BA03
5E322BA05
5E322BB03
5E322DB08
5E322DB10
5E322DB12
5E322FA04
5F136CC12
5F136CC13
5F136CC14
(57)【要約】
【課題】冷却能力を向上することができるベーパーチャンバ、冷却モジュール及び電子機器を提供する。
【解決手段】ベーパーチャンバは、密閉空間の一方の面を形成する第1の金属プレート部と、前記密閉空間の他方の面を形成する第2の金属プレート部とを備え、前記密閉空間に作動流体が封入されたプレート型のベーパーチャンバであって、前記第1の金属プレート部の一部が一方向に突出するように曲げられることで、前記第1の金属プレート部の表面に形成された突出面部と、前記突出面部に対向する位置において前記第2の金属プレート部の一部が前記一方向に曲げられることで、前記第2の金属プレート部の表面に形成された凹み面部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉空間の一方の面を形成する第1の金属プレート部と、前記密閉空間の他方の面を形成する第2の金属プレート部とを備え、前記密閉空間に作動流体が封入されたプレート型のベーパーチャンバであって、
前記第1の金属プレート部の一部が一方向に突出するように曲げられることで、前記第1の金属プレート部の表面に形成された突出面部と、
前記突出面部に対向する位置において前記第2の金属プレート部の一部が前記一方向に曲げられることで、前記第2の金属プレート部の表面に形成された凹み面部と、
を備える
ことを特徴とするベーパーチャンバ。
【請求項2】
請求項1に記載のベーパーチャンバであって、
さらに、前記密閉空間に収容されたウィックを備え、
前記ウィックは、前記突出面部の内側に配置された部分が他の部分よりも密である
ことを特徴とするベーパーチャンバ。
【請求項3】
冷却モジュールであって、
密閉空間の一方の面を形成する第1の金属プレート部と、前記密閉空間の他方の面を形成する第2の金属プレート部とを有し、前記密閉空間に作動流体が封入されたプレート型のベーパーチャンバを備え、
前記ベーパーチャンバは、
前記第1の金属プレート部の一部が一方向に突出するように曲げられることで、前記第1の金属プレート部の表面に形成された突出面部と、
前記突出面部に対向する位置において前記第2の金属プレート部の一部が前記一方向に曲げられることで、前記第2の金属プレート部の表面に形成された凹み面部と、
を有する
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の冷却モジュールであって、
さらに、一部が前記凹み面部に収容されると共に該凹み面部の表面に接続されたヒートパイプを備える
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項5】
請求項3に記載の冷却モジュールであって、
さらに、
排気口を有するファンと、
前記ファンの排気口に面して配置されたヒートシンクと、
を備え、
前記ファンは、上面及び下面を形成するカバープレートを有し、
前記ベーパーチャンバは、前記上面及び下面のうちの一方を形成するカバープレートとして兼用されると共に、前記第1の金属プレート部の表面が前記ファンの内部を臨む方向に配置されている
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項6】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
密閉空間の一方の面を形成する第1の金属プレート部と、前記密閉空間の他方の面を形成する第2の金属プレート部とを有し、前記密閉空間に作動流体が封入されたプレート型のベーパーチャンバを有し、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、
を備え、
前記ベーパーチャンバは、
前記第1の金属プレート部の一部が一方向に突出するように曲げられることで、前記第1の金属プレート部の表面に形成された突出面部と、
前記突出面部に対向する位置において前記第2の金属プレート部の一部が前記一方向に曲げられることで、前記第2の金属プレート部の表面に形成された凹み面部と、
を有し、
前記突出面部の表面が前記発熱体と接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器であって、
前記冷却モジュールは、さらに、一部が前記凹み面部に収容されると共に該凹み面部の表面に接続されたヒートパイプを有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項6に記載の電子機器であって、
前記冷却モジュールは、さらに、前記ベーパーチャンバを前記発熱体に押し付けるための押付部品を備え、
前記押付部品は、前記凹み面部に収容されると共に前記凹み面部の表面に当接し、前記ベーパーチャンバを前記発熱体に向かって押圧する押圧部を有する
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーパーチャンバ、冷却モジュール及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器はCPU等の発熱体を搭載している。このような電子機器は、発熱体が発生する熱を吸熱して外部に放熱する冷却モジュールを筐体内に搭載している。本出願人は、特許文献1において、CPUとヒートシンクの間をフラットなプレート型のベーパーチャンバで接続した構成を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレート型のベーパーチャンバは大きな表面積を有するため、筐体の上下方向での配置を柔軟に変更することが難しい。そこで、上記特許文献1の構成では、ベーパーチャンバとCPUとの間に、例えば銅ブロックで形成された受熱部材を挟んでいる。受熱部材はCPUとベーパーチャンバとの間で熱抵抗となるため、モジュールの冷却能力を低下させる要因の一つとなっていた。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、冷却能力を向上することができるベーパーチャンバ、冷却モジュール及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るベーパーチャンバは、密閉空間の一方の面を形成する第1の金属プレート部と、前記密閉空間の他方の面を形成する第2の金属プレート部とを備え、前記密閉空間に作動流体が封入されたプレート型のベーパーチャンバであって、前記第1の金属プレート部の一部が一方向に突出するように曲げられることで、前記第1の金属プレート部の表面に形成された突出面部と、前記突出面部に対向する位置において前記第2の金属プレート部の一部が前記一方向に曲げられることで、前記第2の金属プレート部の表面に形成された凹み面部と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様に係る冷却モジュールは、密閉空間の一方の面を形成する第1の金属プレート部と、前記密閉空間の他方の面を形成する第2の金属プレート部とを有し、前記密閉空間に作動流体が封入されたプレート型のベーパーチャンバを備え、前記ベーパーチャンバは、前記第1の金属プレート部の一部が一方向に突出するように曲げられることで、前記第1の金属プレート部の表面に形成された突出面部と、前記突出面部に対向する位置において前記第2の金属プレート部の一部が前記一方向に曲げられることで、前記第2の金属プレート部の表面に形成された凹み面部と、を有する。
【0008】
本発明の第3態様に係る電子機器は、筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、密閉空間の一方の面を形成する第1の金属プレート部と、前記密閉空間の他方の面を形成する第2の金属プレート部とを有し、前記密閉空間に作動流体が封入されたプレート型のベーパーチャンバを有し、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、を備え、前記ベーパーチャンバは、前記第1の金属プレート部の一部が一方向に突出するように曲げられることで、前記第1の金属プレート部の表面に形成された突出面部と、前記突出面部に対向する位置において前記第2の金属プレート部の一部が前記一方向に曲げられることで、前記第2の金属プレート部の表面に形成された凹み面部と、を有し、前記突出面部の表面が前記発熱体と接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、冷却能力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、冷却モジュールを
図2とは反対側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2中のIV-IV線に沿う模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る冷却モジュールの平面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す冷却モジュールを反対側から見た底面図である。
【
図7】
図7は、
図5中のVII-VII線に沿う模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子機器及び冷却モジュールについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、電子機器10は、蓋体12と筐体14をヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。本出願の電子機器はノート型PC以外、例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、又はゲーム機等でもよい。
【0013】
蓋体12は薄い扁平な箱体である。蓋体12はディスプレイ18を搭載している。ディスプレイ18は、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイで構成される。
【0014】
以下、筐体14及びこれに搭載された各構成要素について、
図1に示すように蓋体12を筐体14から開いてディスプレイ18を視認するユーザから見た方向を基準とし、左右方向をそれぞれX1,X2方向、前後方向をそれぞれY1,Y2方向、上下方向(筐体14の厚み方向)をそれぞれZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向をまとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向及びZ1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶことがある。
【0015】
筐体14は薄い扁平な箱体である。筐体14は、上面及び四周側面を形成するカバー部材14Aと、下面を形成するカバー部材14Bとで構成されている。上側(Z1側)のカバー部材14Aは下面が開口した略バスタブ形状を有する。下側(Z2側)のカバー部材14Bは略平板形状を有し、カバー部材14Aの下面開口を閉じる蓋となる。カバー部材14A,14Bは厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。カバー部材14Aが平板形状で、カバー部材14Bがバスタブ形状でもよい。筐体14の上面にはキーボード20及びタッチパッド21が設けられている。
【0016】
筐体14の内部には冷却モジュール22が搭載されている。筐体14の内部には、さらに、CPU(Central Processing Unit)24等を実装したマザーボード25(
図4参照)、記憶装置、及びバッテリ装置等が搭載されている。冷却モジュール22は、CPU24等が発生する熱を吸熱及び拡散し、さらに筐体14外へと放熱する。
【0017】
図2は、冷却モジュール22をZ2側から見た斜視図である。
図3は、冷却モジュール22をZ1側から見た斜視図である。
図4は、
図2中のIV-IV線に沿う模式的な断面図である。
図4は、冷却モジュール22を構成するベーパーチャンバ30及びその周辺部での筐体14の内部構造を模式的に示している。
【0018】
図2及び
図3に示すように、冷却モジュール22は、ファン26,27と、ヒートシンク28と、ベーパーチャンバ30と、押付部品32と、熱伝導プレート34とを備える。
【0019】
ファン26,27はヒートシンク28に送風するためのものである。ファン26,27は互いに隣接して左右に並んでいる。ファン26,27は左右一対ではなく、1台のみで用いられてもよい。
【0020】
ファン26は、ファン筐体26aの内部に収容したインペラ26bをモータによって回転させる遠心ファンである。ファン筐体26aには制御基板及びモータ等も支持されている。ファン26は、ファン筐体26aの上面及び下面に開口した吸気口26cから吸い込んだ筐体14内の空気を後側面の排気口26dから排出する。吸気口26cはファン筐体26aの上下面の一方のみに設けられてもよい。ファン筐体26aは、Z1側表面及び外周側面を形成する略バスタブ状のカバープレート26a1と、Z2側表面を形成するフラットなカバープレート26a2とで構成されている(
図4も参照)。カバープレート26a1はアルミニウムやステンレス等の金属プレートに立壁を形成したものである。カバープレート26a2はベーパーチャンバ30で兼用されている。
【0021】
他方のファン27は、外形の大きさや吸気口の形状等が異なる以外、基本的な構成は上記したファン26と同一又は同様でよい。そこで、ファン27の各構成要素については、ファン26の各構成要素と同一の参照符号を図中に付して詳細な説明は省略する。
【0022】
ヒートシンク28はベーパーチャンバ30が輸送した熱を受け、この熱をファン26,27からの送風によって放熱するものである。ヒートシンク28は、例えば複数の薄い金属フィンをX方向に等間隔に並べた構造である。ヒートシンク28は2つのファン26,27の左右方向の幅全長に亘って延在している。つまりヒートシンク28は左右のファン26,27の排気口26d,26dに面して配置されている。ヒートシンク28のZ2側表面には後述するベーパーチャンバ30の部分30eが接続されている。ヒートシンク28は各ファン26,27に対して個別に設けられてもよい。
【0023】
熱伝導プレート34は銅又はアルミニウム等の高い熱伝導率を有する金属プレートである。熱伝導プレート34はベーパーチャンバ30のY1側縁部に接続されている。より具体的には、熱伝導プレート34は後述する突出面部40のY1側縁部に接続されている。熱伝導プレート34はベーパーチャンバ30による吸熱及び放熱を補完する。熱伝導プレート34は省略されてもよい。
【0024】
次に、本実施形態のベーパーチャンバ30の構成例を説明する。
【0025】
図2~
図4に示すように、ベーパーチャンバ30はプレート型の熱輸送デバイスである。ベーパーチャンバ30は、2枚の薄い金属プレート部36,37の間に密閉空間38を形成し、この密閉空間38に作動流体を封入したものである。ベーパーチャンバ30の厚みは、例えば0.8mmである。
【0026】
金属プレート部36,37はアルミニウム又は銅等の熱伝導率が高い金属で形成される。第1の金属プレート部36は密閉空間38の一方の面を形成する。第2の金属プレート部37は密閉空間38の一方の面を形成する。密閉空間38は封入された作動流体が相変化を生じながら流通する流路となる。作動流体としては、水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。密閉空間38内には凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィック39が配設される。ウィック39は例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等の多孔質体で形成される。
【0027】
ベーパーチャンバ30は突出面部40及び凹み面部41を有する。
【0028】
突出面部40はフラットなベーパーチャンバ30の一部をZ方向に膨出させた部分である。突出面部40は一方の金属プレート部36をZ1側に曲げることで一方の金属プレート部36の表面(第1面30a)に形成したものである。つまり突出面部40の表面40aは第1面30aの一部をZ1側にオフセットした位置に配置したものとも言える。
【0029】
より具体的には、ベーパーチャンバ30は2枚の金属プレート部36,37の一部をZ1方向に突出するように曲げた一対の曲げ部30c,30dを有する。曲げ部30c,30dは密閉空間38を確保した状態で2枚の金属プレート部36,37をZ1方向へと所定角度(例えば45度程度)曲げた部分である。曲げ部30c,30dは、例えばY方向に延在し、互いにX方向に所定距離離隔して平行している。曲げ部30c,30dはベーパーチャンバ30の第1面30aにZ1側に一段下がる段差をそれぞれ形成する。突出面部40はこれら曲げ部30c,30dの間に形成されている。
【0030】
凹み面部41はフラットなベーパーチャンバ30の一部をZ方向に窪ませた部分である。凹み面部41は、突出面部40とZ方向に対向する位置において他方の金属プレート部37をZ1側に曲げることで他方の金属プレート部36の表面(第2面30b)に形成したものである。凹み面部41は突出面部40と表裏一体の関係にあり、突出面部40とZ方向にオーバーラップしている。つまり凹み面部41も曲げ部30c,30dの間に形成されている。このため凹み面部41の表面41aは第2面30bの一部をZ1側にオフセットした位置に配置したものとも言える。
【0031】
図4に示すように、突出面部40は、その表面40aがCPU24に接続され、CPU24の熱を受ける受熱部となる。
図3及び
図4中の参照符号44は、突出面部40の表面40aとCPU24との間に塗布される熱伝導グリースである。つまりベーパーチャンバ30は、熱伝導グリース44は介在させているものの、突出面部40の表面40aがCPU24に対して実質的にダイレクトタッチされる。
【0032】
CPU24は、例えば矩形状のパッケージ基板24aの表面中央にダイ24bを実装した構成である。パッケージ基板24aはダイ24bの周囲にキャパシタ24cも実装されている。パッケージ基板24aの表面外縁には枠状の補強材24dが設置されている。CPU24の構成はこれに限定されない。突出面部40の接続対称はCPU以外、例えばGPU(Graphics Processing Unit)等の他の発熱体でもよい。
【0033】
押付部品32は、ベーパーチャンバ30の第1面30a、具体的には突出面部40の表面40aをCPU24(ダイ24b)に押し付ける部品である。押付部品32は、例えば120度刻みで放射状に設けられた3本のばね部32aを有する。ばね部32aは例えば板ばねである。押付部品32は各ばね部32aの付勢力によりベーパーチャンバ30をCPU24に対して付勢する。各ばね部32aは一端部が押圧部32bに一体的に接続され、押圧部32bを介してベーパーチャンバ30を付勢する。押圧部32bは例えば薄い板状の金属で形成された枠体であり、凹み面部41の表面41aに当接する。各ばね部32aの他端部は例えばマザーボード25に固定される。これにより押付部品32は、ばね部32aの付勢力によって押圧部32bが凹み面部41の表面41aをCPU24に向かって押圧する。ベーパーチャンバ30はばね部32aが挿入される板厚方向の繰り抜き孔が適宜形成されている。
図3及び
図4に示すように、押圧部32bは凹み面部41の窪みに収容されることで第2面30bから突出しないか、又は第2面30bからの突出高さは僅かとなる。このため押付部品32が冷却モジュール22の薄型化を妨げることが抑制される。
【0034】
ベーパーチャンバ30は、一方の曲げ部30cの突出面部40とは反対側にある部分30eがファン26,27のカバープレート26a2として兼用されている。部分30eはヒートシンク28にも接続されている。部分30eは他方のカバープレート26a1と兼用されてもよい。カバープレート26a2はベーパーチャンバ30で兼用せず、ベーパーチャンバ30とは別体の金属プレート等で構成してもよい。
【0035】
ベーパーチャンバ30は、他方の曲げ部30cの突出面部40とは反対側にある部分30fがマザーボード25に実装された電子部品46を覆っている。電子部品46は、例えばDCDCコンバータであり、ある程度の発熱を伴う。
【0036】
以上のように構成された冷却モジュール22において、ベーパーチャンバ30は、第1の金属プレート部36の一部が一方向に突出するように曲げられることで、その表面(第1面30a)に形成された突出面部40を備える。ベーパーチャンバ30は、さらに、突出面部40に対向する位置において第2の金属プレート部37の一部が方向に曲げられることで、その表面(第2面30b)に形成された凹み面部41を備える。そして、突出面部40の表面40aが冷却対象となるCPU24に対して実質的にダイレクトタッチされている。
【0037】
このように、冷却モジュール22はベーパーチャンバ30とCPU24との間に銅ブロックのような受熱部材を設けていない。これによりベーパーチャンバ30はCPU24の熱をダイレクトに受け取ることができ、受熱部材による熱抵抗の影響を受けずに高い熱効率が得られる。このため電子機器10は冷却モジュール22の冷却性能が向上し、CPU24等のパフォーマンスも向上する。なお、ベーパーチャンバ30に伝達された熱は、ベーパーチャンバ30で拡散及び放熱され、同時にヒートシンク28に伝達されてファン26,27からの送風によって筐体14の外部へと効率よく排出される。
【0038】
ここで、突出面部40を設けない従来構成のベーパーチャンバを突出面部40の高さと同じ厚みの受熱部材(銅ブロック)を介してCPU24に接続した比較例に係る冷却モジュールと、本実施形態の冷却モジュール22との冷却性能を測定した実験について説明する。当該実験の結果、CPU24の温度が略同一の状態において、冷却モジュール22を搭載した筐体14のカバー部材14Bの表面温度が47.9℃であったのに対し、比較例の冷却モジュールを搭載した筐体14のカバー部材14Bの表面温度は49.2℃であった。筐体14の下面を形成するカバー部材14Bの表面温度は、例えばユーザが電子機器10を膝上等で使用することを想定した際に特に重要な温度であり、可能な限り低いことが望ましい。この結果より、本実施形態の冷却モジュール22の冷却性能が比較例の冷却モジュールよりも高いことが確認できた。
【0039】
ところで、ベーパーチャンバ30は曲げ部30c,30dを有するため、CPU24からの熱で蒸発した作動流体の流通性が問題となる。この点、本実施形態のベーパーチャンバ30は2枚の金属プレート部36,37を同時に同一方向に曲げているため、密閉空間38にボトルネックとなる部分が形成されない。このため密閉空間38は曲げ部30c,30d内で滑らかなスロープ形状を描き、作動流体の円滑な流通を妨げない。その結果、突出面部40の内側で蒸発した作動流体は曲げ部30c,30dを円滑に通過するため熱輸送性への影響はほとんどなく、これが上記実験結果にも表れていると考えられる。
【0040】
なお、本実施形態の冷却モジュール22を用いた実験でのカバー部材14Bの表面温度が比較例よりも大幅に低下した別の要因として凹み面部41が考えられる。
図4に示すように、本実施形態のベーパーチャンバ30は高温となるCPU24の直上に凹み面部41がある。つまりベーパーチャンバ30の第2面30bとカバー部材14Bとの間の隙間Gが凹み面部41のところではその凹み分だけ拡大する。その結果、電子機器10はベーパーチャンバ30からの熱がカバー部材14Bに伝達されにくくなっており、カバー部材14Bの表面温度を一層抑制できる。
【0041】
冷却モジュール22において、ファン26,27のファン筐体26aはカバープレート26a2がベーパーチャンバ30で兼用されている。このためベーパーチャンバ30は、ファン筐体26a内で旋回する空気からの冷却効果も受けることができる。この際、ベーパーチャンバ30は、第1面30aがファン26,27の内部を臨む方向、つまり突出面部40の第1面30aからの突出方向と同一方向に配置されている(
図4参照)。これにより冷却モジュール22は、構成部品の中でもZ方向の厚みが最大のファン26,27の高さ範囲に突出面部40を設置できる。このため冷却モジュール22は突出面部40を設けたことでモジュール全体の厚みが増大することを防止できる。
【0042】
このように冷却モジュール22はその一部に突出面部40を設けている。換言すれば、突出面部40の側方の部分30e,30fの第1面30aは、突出面部40の表面40aよりもZ2側にオフセットした位置にある。すなわちマザーボード25に実装された各電子部品には、例えば電子部品46のようにCPU24よりも高さが高いものもある。この場合、ベーパーチャンバ30は、部分30fがZ2側にオフセットした位置にあることで、このような電子部品46に干渉することを回避しつつ、電子部品46からの受熱が可能となっている。部分30eとマザーボード25との間にも発熱を伴う電子部品が実装されていてもよい。
【0043】
次に、変形例に係る冷却モジュール50の構成例を説明する。
【0044】
図5は、変形例に係る冷却モジュール50をZ1側から見た平面図である。
図6は、
図5に示す冷却モジュール50をZ2側から見た底面図である。
図7は、
図5中のVII-VII線に沿う模式的な断面図である。
図5~
図7に示す冷却モジュール50において、上記した
図1~
図4に示す冷却モジュール22と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0045】
図5~
図7に示す冷却モジュール50は、
図1~
図4に示す冷却モジュール22と比べて、ベーパーチャンバ30と形状の異なるベーパーチャンバ51と、ヒートパイプ52とを備える点が異なる。冷却モジュール22は、ベーパーチャンバ30でCPU24の熱を吸熱及び拡散しつつ、ヒートシンク28まで輸送する構成であった。一方、冷却モジュール50は、ベーパーチャンバ51でCPU24の熱を吸熱及び拡散しつつ、ヒートパイプ52を介してヒートシンク28への熱輸送を行う構成である。
【0046】
冷却モジュール50は、互いに離隔して配置されたファン26,27の相互間に略矩形状の外形を有するベーパーチャンバ51を設置した構成である。冷却モジュール50はCPU24に加えてGPU54も冷却可能である(
図5中に2点鎖線で示すGPU54参照)。
図5中の参照符号56は、突出面部40の表面40aとGPU54との接続部に設けられる熱伝導グリースである。
図7は、CPU24と突出面部40との接続構造を例示しているが、GPU54と突出面部40との接続構造も
図7に示すものと同様でよい。
【0047】
ベーパーチャンバ51は、全体の形状や突出面部40及び凹み面部41の形状等が異なる以外、基本的な構成は上記したベーパーチャンバ30と同一又は同様でよい。
図7中の参照符号30gは金属プレート部36,37の外周縁部同士を押し潰し、溶接して接合した耳状の接合部である。接合部30gは、2枚の金属プレート部36,37を強固に固定し、密閉空間38を囲んで封止する部分である。接合部30gは、
図1~
図4に示すベーパーチャンバ30にも同様に設けられる。
【0048】
ヒートパイプ52はパイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ52は、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成し、金属パイプ内に形成された密閉空間に作動流体を封入した構成である。ヒートパイプ52での熱輸送は、上記したベーパーチャンバ30での熱輸送と同様であり、作動流体が相変化を生じながら流通し、凝縮した作動流体はウィックで搬送される。本実施形態では、2本のヒートパイプを前後に2本1組で並列し、これらの両端部を左右のヒートシンク28,28にそれぞれ接続した構成を例示している。ヒートパイプ52は1本又は3本以上で用いてもよく、その本数や経路は限定されない。
【0049】
ヒートパイプ52は受熱部となる中央部がベーパーチャンバ51の凹み面部41に収容され、凹み面部41の表面41aに接続されている。換言すれば、ヒートパイプ52はベーパーチャンバ51に埋め込まれている。このため、ベーパーチャンバ51の曲げ部30c,30dの軌跡はヒートパイプ52の軌跡に沿って形成されることが好ましく、例えばY方向に湾曲しつつX方向に延在している。ヒートパイプ52の放熱部となる両端部は各ヒートシンク28に接続されている。
【0050】
冷却モジュール50では、ベーパーチャンバ51がファン筐体26aと兼用されていない。但し、ベーパーチャンバ51の部分30e,30fの第1面30aも、
図4に示す構成例と同様に突出面部40よりもZ2側にオフセットしている。このため、ベーパーチャンバ51の部分30e,30fも、
図4に示すようなCPU24よりも高さのある電子部品46等を覆って冷却することができる。
【0051】
このように、冷却モジュール50においても、ベーパーチャンバ51の突出面部40が冷却対象となるCPU24及びGPU54に対して実質的にダイレクトタッチされる。これによりベーパーチャンバ51がCPU24等の熱をダイレクトに受け取ることができ、受熱部材による熱抵抗の影響を受けずに高い熱効率が得られる。このため電子機器10は冷却モジュール50の冷却性能が向上し、CPU24等のパフォーマンスも向上する。
【0052】
しかも冷却モジュール50はヒートパイプ52を凹み面部41に収容している。このため冷却モジュール50は単にベーパーチャンバ30の表面にヒートパイプを接続した従来の構成と比べ、ヒートパイプ52の厚み分の薄型化が可能である。ヒートパイプ52は凹み面部41内で表面41aに加えて曲げ部30c,30dの壁面にも接触する。このため冷却モジュール50はベーパーチャンバ51からヒートパイプ52への熱伝達効率が一層向上する。
【0053】
なお、
図5~
図7に示す冷却モジュール50についても
図1~
図4に示す冷却モジュール22と同様にファン26,27を隣接して配置してもよい。反対に
図1~
図4に示す冷却モジュール22についても
図5~
図7に示す冷却モジュール50と同様にファン26,27を離隔して配置してもよい。
【0054】
ところで、上記したベーパーチャンバ30も同様であるが、ベーパーチャンバ51も2枚の金属プレート部36,37を同時に曲げて曲げ部30c,30dを形成している。つまりベーパーチャンバ30,51は、単にCPU24側の金属プレート部36のみを曲げ変形させて突出面部40を形成したものではない。このため、ベーパーチャンバ30,51の容積は、突出面部40の側方の部分30e,30fでも減少せず、換言すれば増大されているとも言える。例えば
図6中に1点鎖線で示す領域R1,R2は部分30e,30fに対応する領域であり、突出面部40でX1側に突出したベーパーチャンバ51の厚みをZ2側に増大させた領域であると言うことができる。このため、ベーパーチャンバ30,51は、単に一方の金属プレート部36のみを曲げ変形させて突出面部を形成した構成に比べて、全体の熱輸送性能が向上する。
【0055】
ベーパーチャンバ30,51は、銅ブロックのような従来の受熱部材を設けず、高い熱効率でCPU24の熱を吸収することができる。このため、ベーパーチャンバ30,51は、受熱部となる突出面部40の内部で作動流体が不足する、いわゆるドライアウトを生じる可能性がある。そこで、突出面部40に形成された密閉空間38内のウィック39(以下、「ウィック39a」と呼ぶこともある。)は、他の部分30e,30f内のウィック39(以下、「ウィック39b」と呼ぶこともある。)よりも密に設置することが好ましい。これによりベーパーチャンバ30,51は、密なウィック39aに対して液体の作動流体が毛細管現象によって集まり易くなり、ウィック39aでのドライアウトを抑制できる。ウィック39aは、例えばウィック39bよりもメッシュの密度を高めることで構成してもよい。
【0056】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0057】
突出面部40は2本の曲げ部30c,30dの間に形成される構成以外でもよく、例えば3本又は4本の曲げ部で囲まれた領域に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 電子機器
14 筐体
22,50 冷却モジュール
24 CPU
26,27 ファン
28 ヒートシンク
30,51 ベーパーチャンバ
36,37 金属プレート部
38 密閉空間
39,39a,39b ウィック
40 突出面部
41 凹み面部
52 ヒートパイプ
【手続補正書】
【提出日】2024-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却モジュールであって、
密閉空間の一方の面を形成する第1の金属プレート部と、前記密閉空間の他方の面を形成する第2の金属プレート部とを有し、前記密閉空間に作動流体が封入されたプレート型のベーパーチャンバを備え、
前記ベーパーチャンバは、
前記第1の金属プレート部の一部が一方向に突出するように曲げられることで、前記第1の金属プレート部の表面に形成された突出面部と、
前記突出面部に対向する位置において前記第2の金属プレート部の一部が前記一方向に曲げられることで、前記第2の金属プレート部の表面に形成された凹み面部と、
前記密閉空間に収容され、前記突出面部の内側に配置された部分が他の部分よりも密であるウィックと、
を有し、
さらに、一部が前記凹み面部に収容されると共に該凹み面部の表面に接続されたヒートパイプを備える
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項2】
冷却モジュールであって、
密閉空間の一方の面を形成する第1の金属プレート部と、前記密閉空間の他方の面を形成する第2の金属プレート部とを有し、前記密閉空間に作動流体が封入されたプレート型のベーパーチャンバを備え、
前記ベーパーチャンバは、
前記第1の金属プレート部の一部が一方向に突出するように曲げられることで、前記第1の金属プレート部の表面に形成された突出面部と、
前記突出面部に対向する位置において前記第2の金属プレート部の一部が前記一方向に曲げられることで、前記第2の金属プレート部の表面に形成された凹み面部と、
前記密閉空間に収容され、前記突出面部の内側に配置された部分が他の部分よりも密であるウィックと、
を有し、
さらに、
排気口を有するファンと、
前記ファンの排気口に面して配置されたヒートシンクと、
を備え、
前記ファンは、上面及び下面を形成するカバープレートを有し、
前記ベーパーチャンバは、前記上面及び下面のうちの一方を形成するカバープレートとして兼用されると共に、前記第1の金属プレート部の表面が前記ファンの内部を臨む方向に配置されている
ことを特徴とする冷却モジュール。
【請求項3】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
密閉空間の一方の面を形成する第1の金属プレート部と、前記密閉空間の他方の面を形成する第2の金属プレート部とを有し、前記密閉空間に作動流体が封入されたプレート型のベーパーチャンバを有し、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、
を備え、
前記ベーパーチャンバは、
前記第1の金属プレート部の一部が一方向に突出するように曲げられることで、前記第1の金属プレート部の表面に形成された突出面部と、
前記突出面部に対向する位置において前記第2の金属プレート部の一部が前記一方向に曲げられることで、前記第2の金属プレート部の表面に形成された凹み面部と、
前記密閉空間に収容され、前記突出面部の内側に配置された部分が他の部分よりも密であるウィックと、
を有し、
前記突出面部の表面が前記発熱体と接続され、
前記冷却モジュールは、さらに、一部が前記凹み面部に収容されると共に該凹み面部の表面に接続されたヒートパイプを有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
密閉空間の一方の面を形成する第1の金属プレート部と、前記密閉空間の他方の面を形成する第2の金属プレート部とを有し、前記密閉空間に作動流体が封入されたプレート型のベーパーチャンバを有し、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、
を備え、
前記ベーパーチャンバは、
前記第1の金属プレート部の一部が一方向に突出するように曲げられることで、前記第1の金属プレート部の表面に形成された突出面部と、
前記突出面部に対向する位置において前記第2の金属プレート部の一部が前記一方向に曲げられることで、前記第2の金属プレート部の表面に形成された凹み面部と、
前記密閉空間に収容され、前記突出面部の内側に配置された部分が他の部分よりも密であるウィックと、
を有し、
前記突出面部の表面が前記発熱体と接続され、
前記冷却モジュールは、さらに、前記ベーパーチャンバを前記発熱体に押し付けるための押付部品を備え、
前記押付部品は、前記凹み面部に収容されると共に前記凹み面部の表面に当接し、前記ベーパーチャンバを前記発熱体に向かって押圧する押圧部を有する
ことを特徴とする電子機器。