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特開2024-179234液体吐出ヘッド、液体吐出装置および制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179234
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/18 20060101AFI20241219BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20241219BHJP
   B41J 2/05 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/175 501
B41J2/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097926
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出田 智士
(72)【発明者】
【氏名】戸田 恭輔
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056EC16
2C056EC17
2C056EC18
2C056EC32
2C056FA03
2C056KA05
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB15
2C056KB16
2C056KB26
2C056KB35
2C057AF80
2C057AG29
2C057AG46
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】生産性の低下を抑制することができる液体吐出ヘッド、液体吐出装置および制御方法を提供する。
【解決手段】供給流路408から圧力室を経て回収流路409へと流れる第1流路以外に設けられ、第1圧力制御室404から第2圧力制御室412へ送液可能な送液手段を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出可能な吐出手段と、
供給流路を介して前記吐出手段に液体を供給し、前記供給流路の圧力を調整可能な第1圧力制御部と、
回収流路を介して前記吐出手段から液体を回収し、前記回収流路の圧力を調整可能な第2圧力制御部と、
前記第2圧力制御部と前記第1圧力制御部との間に設けられ、前記第2圧力制御部から前記第1圧力制御部に送液可能な第1ポンプ手段と、
前記供給流路から前記吐出手段を経て前記回収流路へと流れる第1流路以外に設けられ、前記吐出手段を経ることなく前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な送液手段と、を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記送液手段は、前記第1圧力制御部と前記第2圧力制御部とを繋ぎ、前記第1ポンプ手段と並列に設けられた第2流路に設けられ、前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な第2ポンプ手段であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第2圧力制御部における圧力を計測可能な圧力計を備えることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1ポンプ手段および前記第2ポンプ手段は、圧電ダイヤフラムポンプであることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記送液手段は、前記第1圧力制御部と前記第2圧力制御部とを繋ぎ、前記第1ポンプ手段と並列に設けられた第2流路であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第2流路は、前記第1流路よりも流抵抗が低いことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第2流路に、前記第2流路の開閉が可能なバルブを備えることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記送液手段は、前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部に送液可能な前記第1ポンプ手段であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記吐出手段は、発熱抵抗素子を駆動することで液体を吐出することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
液体を吐出可能な液体吐出ヘッドと、
供給流路を介して前記液体吐出ヘッドに液体を供給し、前記供給流路の圧力を調整可能な第1圧力制御部と、
回収流路を介して前記液体吐出ヘッドから液体を回収し、前記回収流路の圧力を調整可能な第2圧力制御部と、
前記第2圧力制御部と前記第1圧力制御部との間に設けられ、前記第2圧力制御部から前記第1圧力制御部に送液可能な第1ポンプ手段と、
前記供給流路から前記液体吐出ヘッドを経て前記回収流路へと流れる第1流路以外に設けられ、前記液体吐出ヘッドを経ることなく前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な送液手段と、を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
液体を吐出可能な吐出手段と、
供給流路を介して前記吐出手段に液体を供給し、前記供給流路の圧力を調整可能な第1圧力制御部と、
回収流路を介して前記吐出手段から液体を回収し、前記回収流路の圧力を調整可能な第2圧力制御部と、
前記第2圧力制御部と前記第1圧力制御部との間に設けられ、前記第2圧力制御部から前記第1圧力制御部に送液可能な第1ポンプ手段と、
前記供給流路から前記吐出手段を経て前記回収流路へと流れる第1流路以外に設けられ、前記吐出手段を経ることなく前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な送液手段と、を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項12】
前記送液手段は、前記第1圧力制御部と前記第2圧力制御部とを繋ぎ、前記第1ポンプ手段と並列に設けられた第2流路に設けられ、前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な第2ポンプ手段であることを特徴とする請求項11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
液体を吐出可能な吐出手段と、
供給流路を介して前記吐出手段に液体を供給し、前記供給流路の圧力を調整可能な第1圧力制御部と、
回収流路を介して前記吐出手段から液体を回収し、前記回収流路の圧力を調整可能な第2圧力制御部と、
前記第2圧力制御部と前記第1圧力制御部との間に設けられ、前記第2圧力制御部から前記第1圧力制御部に送液可能な第1ポンプ手段と、
前記供給流路から前記吐出手段を経て前記回収流路へと流れる第1流路以外に設けられ、前記吐出手段を経ることなく前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な送液手段と、
前記吐出手段における吐出状態を回復するための回復手段と、
を備える液体吐出ヘッドの制御方法であって、
前記第1ポンプ手段を駆動することにより前記第1流路の液体を循環させながら、前記吐出手段に吐出動作を行わせる吐出工程と、
前記吐出工程の後に、前記第1ポンプ手段を停止させ前記送液手段を駆動させる送液工程と、
前記送液工程により前記循環が停止した後、前記回復手段に液体吐出ヘッドの回復動作を行わせる工程と、を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、循環ポンプを駆動し、レギュレータで供給圧と回収圧とを制御することで供給圧と回収圧との差圧によって記録ヘッド内のインクを循環させて、気泡などの異物を除去し、インクの吐出信頼性を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-64254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に記録ヘッドにおける吐出状態を回復させるために、キャップ吸引動作や吐出口面のワイピング動作が行われる。インクを循環させる構成の場合、このようなキャップ吸引動作やワイピング動作を行う際には、インクの循環を停止させることが好ましい。インクを循環した状態でキャップ吸引動作やワイピング動作を行うと、吐出口から混入した廃インクが循環流路内に流入して混色を引き起こす懸念が生じるためである。
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、レギュレータによる供給圧と回収圧とに差を生じさせる構成において、インクの循環を短時間に停止さることは困難である。循環ポンプを停止すれば循環速度は徐々に低下するものの、供給圧と回収圧とが等しくなるまで循環は継続する。
【0006】
このように、循環ポンプを停止してからインクの循環が完全停止するまでには長い時間を要することがある。インクの循環が完全停止するまでの時間が長いと、ダウンタイムが長くなって生産性の低下につながる。
【0007】
よって本発明は、生産性の低下を抑制することができる液体吐出ヘッド、液体吐出装置および制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため本発明の液体吐出ヘッドは、液体を吐出可能な吐出手段と、供給流路を介して前記吐出手段に液体を供給し、前記供給流路の圧力を調整可能な第1圧力制御部と、回収流路を介して前記吐出手段から液体を回収し、前記回収流路の圧力を調整可能な第2圧力制御部と、前記第2圧力制御部と前記第1圧力制御部との間に設けられ、前記第2圧力制御部から前記第1圧力制御部に送液可能な第1ポンプ手段と、前記供給流路から前記吐出手段を経て前記回収流路へと流れる第1流路以外に設けられ、前記吐出手段を経ることなく前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な送液手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産性の低下を抑制することができる液体吐出ヘッド、液体吐出装置および制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】液体吐出ヘッドを搭載可能な液体吐出装置の概略斜視図である。
図2】液体吐出ヘッドを示す外観斜視図である。
図3】液体吐出ヘッドの分解斜視図である。
図4】従来の構成の1色分の循環ユニットを示した概略図である。
図5】圧力制御部を示す模式図である。
図6】吐出動作中の循環の流れを模式的に示した図である。
図7】第1ポンプを停止させた際の循環の流れを模式的に示した図である。
図8】循環ユニットにおける循環の流れを模式的に示した図である。
図9】循環ユニットにおける循環の流れを模式的に示した図である。
図10】1色分の循環ユニットを示した概略図である。
図11】循環ユニットにおける循環の流れを模式的に示した図である。
図12】循環ユニットにおける循環の流れを模式的に示した図である。
図13】循環ユニットにおける循環の流れを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態を適用可能な液体吐出ヘッドを搭載可能な液体吐出装置110の概略斜視図である。液体吐出装置110は、液体を吐出可能な液体吐出ヘッド100、101を搭載可能であり、液体吐出ヘッド100、101から液体(以下、インクともいう)を吐出して記録媒体Pに画像を形成するシリアルスキャン方式のインクジェット記録装置である。なお、液体吐出装置110は、シリアルスキャン方式のインクジェット記録装置に限らず、例えば記録媒体に対して液体吐出ヘッドが走査しないラインヘッドであってもよい。
【0013】
液体吐出ヘッド100、101はキャリッジ102に搭載され、キャリッジ102は、ガイド軸103に沿って矢印X方向の主走査方向に移動する。記録媒体Pは、搬送ローラ104、105によって、主走査方向と交差(本実施形態の場合は、直交)する矢印Y方向の副走査方向に搬送される。液体吐出ヘッド100、101には、メインタンク108から供給チューブ107を介してインクが供給される。液体吐出ヘッド100、101には、インク循環ユニットが搭載され、後述する吐出ユニットのインク循環が行われる。ただし、インク循環ユニットは、液体吐出ヘッド以外の箇所に搭載されてもよい。記録媒体Pの搬送路から外れた位置に、キャップ部材106が配置される。液体吐出ヘッド100、101が記録動作を行わない時には、液体吐出ヘッド100、101は、キャップ部材106が吐出口面を覆う位置に移動し、吐出口の乾燥の防止や充填や回復のための吸引動作や、吐出口面を払拭するワイピング動作を行なう。このような吸引動作やワイピング動作は、記録動作中にも記録動作を中断して行われることがある。
【0014】
図2は、液体吐出ヘッド100、101を示す外観斜視図であり、図3は、液体吐出ヘッド100、101の分解斜視図である。液体吐出ヘッド100、101は、インク循環ユニット300を有する。インク循環ユニット300は、各インクにそれぞれ対応した循環ユニット304、305、306を備え、各循環ユニット304、305、306は、筐体301に接続される。筐体301は、液体吐出装置110からのインクを受け入れるためのジョイント部200を備えており、ジョイント部200は、各循環ユニットに連通しているジョイント201、202、203を備える。
【0015】
液体吐出ヘッド100、101を液体吐出装置110に装着する際に、各ジョイント201、202、203に、各インクに対応した供給チューブ107を接続する。供給チューブ0107から供給された各インクは、筐体301のジョイント201、202、203を経由し、各循環ユニット304、305、306に供給される。
【0016】
筐体301の底面には、開口プレートと記録素子基板とからなる吐出モジュール302を搭載した支持部材303が接続される。インク循環ユニット300に供給されたインクは、筐体301を経由し、支持部材303に供給される。吐出モジュール302と支持部材303とは、接着剤によって接着される。吐出モジュール302は、厚さ0.5mmから1mmのシリコン基板と、そのシリコン基板の片面に設けられ、液体を吐出するためのエネルギー発生素子と、を備える。
【0017】
本実施形態では、エネルギー発生素子として複数の発熱抵抗素子(ヒータ)を用いており、各発熱抵抗素子に電力を供給する電気配線が成膜技術によりシリコン基板上に形成される。シリコン基板には、発熱抵抗素子に対応する複数の圧力室と、インクを吐出する複数の吐出口とがフォトリソグラフィ技術により形成される。シリコン基板の裏面には、複数の圧力室にインクを供給する共通供給流路と複数の供給口、および圧力室からインクを回収する共通回収流路と複数の回収口が開口する。
【0018】
上述したような構成を備える液体吐出装置は、中規模または大規模な事務所に設置されることが多く、そのような環境では液体吐出装置に高い生産性が求められる。上述の吸引動作時や吐出口面の清掃のためのワイピング動作時に記録動作を中断することで発生するダウンタイムは液体吐出装置の生産性を低下させる要因となる。
【0019】
以下、図4から図7を用いて、従来の構成の液体吐出ヘッドの循環ユニットにおける循環動作や圧力制御部による圧力調整動作について説明する。なお、圧力制御部による圧力調整動作については、本実施形態の圧力制御部と同様である。
【0020】
図4は、従来の構成の1色分の循環ユニット414を含む循環システムを示した概略図である。液体吐出装置から供給されたインクは、フィルタ401を通りごみ等を除去された後、第1のレギュレータ402内の第1バルブ室403に供給される。第1圧力制御室404は圧力を調整可能に構成されており、第1バルブ室403に供給されたインクは、第1バルブ室403とバルブを介して連通する第1圧力制御室404にインクが流れ込み圧力が調整される。第1ポンプ405は、ダイヤフラムに貼り付けた圧電素子に駆動電圧を入力することでポンプ室内の容積を変化させ、圧力変動により2つの逆止弁が交互に動いて送液される圧電ダイヤフラムポンプである。第1ポンプ405は、下流側となる第1ポンプ入口流路406から上流側となる第1ポンプ出口流路407へとインクを送液する。
【0021】
第1ポンプ405の駆動によって、第1圧力制御室404内の圧力調整されたインクが、供給流路408及びバイパス流路413へ供給される。第1供給流路0408は、吐出モジュール302の個別供給流路へ接続され、また回収流路409は、吐出モジュール302の個別回収流路へと接続される。供給流路408に供給されたインクは、吐出モジュール302内の個別供給流路から吐出口を通り、個別回収流路を通った後、回収流路409へと供給され、更にその後、第2のレギュレータ410の第2圧力制御室412に供給される。
【0022】
また、バイパス流路413を介して第2のレギュレータ410の第2バルブ室411へ供給されたインクは、第2バルブ室411とバルブを介して連通した第2圧力制御室412とへ供給される。第2圧力制御室412に供給されたインクは、第1ポンプ入口流路406に供給され、第1ポンプ405を通った後、第1ポンプ出口流路407へと供給されさらにその後第1圧力制御室404へと供給される。
【0023】
このように第1ポンプ405によって吐出モジュール416内を通過し循環するように構成することで、吐出モジュール416の吐出口近傍のインクの増粘を抑制することが可能となる。
【0024】
図5は、圧力制御部(レギュレータ)510を示す模式図である。圧力制御部510は、連通口501を介して第1バルブ室500と連通する第1圧力制御室502を備える。第1バルブ室500には、開閉することで、第1バルブ室500と第1圧力制御室502とが連通した開状態と、第1バルブ室500と第1圧力制御室502が連通していない閉状態と、に切り替えることが可能なバルブ503が設けられる。バルブ503は、バルブばね504によって連通口501を閉める方向へ付勢される。例えば、バルブ503は、一部が弾性体にて形成されており、バルブばね504によって筐体側に弾性体部が押し付けることで連通口501を閉状態にすることが可能である。
【0025】
一方で、第1圧力制御室502は、開口した一面に可撓性部材505及び圧力板506を備えており、圧力板506は、可撓性部材505の変位に伴って変位可能に構成される。例えば、圧力板506は、樹脂成形部品、可撓性部材505は、樹脂フィルムで構成され、圧力板506が可撓性部材505に熱溶着され構成される。可撓性部材505及び圧力板506は、圧力調整ばね507によって第1圧力制御室502の内容積が増加する方向に付勢される。第1圧力制御室502における圧力が下がると、圧力板506及び可撓性部材505は、内容積が減少する方向に変位し、所定の圧力まで下がると圧力板506はバルブ503に当接する。圧力板506がバルブ503に当接すると、連通口501が開状態となる方向に変位する。
【0026】
バルブ503が開状態となった時の第1バルブ室500の圧力を第1圧力制御室502の圧力よりも高く設定しておくと、第1バルブ室500から第1圧力制御室502へとインクが流入する。第1圧力制御室502へのインクの流入により、第1圧力制御室502の内容積が増加する方向へ可撓性部材505及び圧力板506が変位し、第1圧力制御室502の圧力が高くなる。第1圧力制御室502の圧力が高くなり所定の圧力になると、バルブ503の変位によって連通口501は閉状態となり、第1バルブ室500から第1圧力制御室502へのインクの流入は停止する。
【0027】
このように、第1圧力制御室502の圧力が所定の圧力より下がると、第1バルブ室500から連通口501を介してインクが流入することで圧力が所定の圧力よりも低くならないよう構成される。このようにして第1圧力制御室502における圧力を所定の範囲内の圧力に制御することができる。
【0028】
図6は、従来の形態の循環流路における吐出動作中の循環の流れを模式的に示した図である。吐出動作中は、第1ポンプ405がONの状態となっており、第1圧力制御室404からでたインクは供給流路408及びバイパス流路413へと供給される。供給流路408へ供給されたインクは、吐出モジュール302を通過した後、回収流路409へと供給され、その後、第2圧力制御室412へ供給される。
【0029】
一方で、第1圧力制御室404からバイパス流路413へ供給されたインクは、第2バルブ室411を介して第2圧力制御室412へと供給される。第2圧力制御室412に供給されたインクは、第1ポンプ入口流路406、第1ポンプ405、第1ポンプ出口流路407を介して第1圧力制御室404へ供給される。第1バルブ室403及び第1圧力制御室404の圧力は、第1圧力制御部402内のばねのばね力やバルブの受圧面積によって決定される。第1バルブ室403の制御圧力を第1圧力制御室404の制御圧力よりも高く設定することで、第1圧力制御室404から供給流路408を介して吐出モジュール302に供給される。その後、吐出モジュール302に供給されたインクは、回収流路409を介して第2圧力制御室412に至る。このようにして、吐出モジュール内の循環が行われる。
【0030】
吐出モジュール内のインクの循環量は、第1圧力制御室404及び第2圧力制御室412の制御圧の差圧によって決定され、吐出モジュール内の吐出口近傍のインクの増粘を抑制可能な循環量となるように設定される。また、吐出によって消費したインクは、メインタンク108(図1参照)からフィルタ401、第1バルブ室403を介して第1圧力制御室404に供給される。
【0031】
図7は、従来の形態の循環流路において、インクが循環している状態から第1ポンプを停止させた際の循環の流れを模式的に示した図である。
【0032】
図7のように従来の構成では、インクが循環している状態から第1ポンプ405を停止させると、第1圧力制御室404よりも第2圧力制御室412内の負圧が高いため、インクは第1圧力制御室404から第2圧力制御室412に向かって流れる。この時、第2圧力制御室412と第2バルブ室411とにおけるバルブは閉状態であり、バイパス流路0413にはインクは流れず、吐出モジュール302を介して第1圧力制御室404から第2圧力制御室412にインクが流れる。前述の通り、吐出モジュール302を構成するシリコン基板の裏面には、複数の圧力室にインクを供給する共通供給流路と複数の供給口、および圧力室からインクを回収する共通回収流路と複数の回収口が開口している。インクは、吐出モジュール302内において共通供給流路、供給口、圧力室、共通回収流路、回収口を通って流れる。
【0033】
吐出モジュール302内の圧力損失は非常に大きく、吐出モジュール302内におけるインクの流速は非常に遅い。第1圧力制御室404から第2圧力制御室412に向かうインクの流れは、第1圧力制御室404と第2圧力制御室412との内圧が等しくなるまで継続し、その間、吐出モジュール302内のインクの流れも継続する。
【0034】
また、液体吐出装置では、吐出モジュール302の吐出口や吐出口面を清掃し、吐出状態を回復させるために定期的に吸引動作やワイピング動作を行う。その際、複数色分の吐出口をまとめて吸引するため、ワイピングの際に他の色のインクが吐出口から入り込み、吐出モジュール内において混色を引き起こすことがある。その場合、追加の吸引動作を行って、吐出モジュール内において混色したインクを吸い出して廃棄することで、その後の吐出に混色の影響が出ないようにしている。
【0035】
ここで、吐出モジュール302内にインクの流れがある場合、吐出モジュールから混入した別の色のインクはインクの流れに乗って吐出モジュール302から第2レギュレータ410、第1ポンプ405、第1レギュレータ402へと拡散する。この場合、循環流路内の混色を解消することは不可能であり、印刷においては色味が変わってしまうなどの事態が発生する。これを防ぐためには、予め吐出モジュール内のインク流れを完全に停止させ、その状態で吸引動作やワイピング動作を行う必要がある。
【0036】
前述の通り、第1ポンプ405を停止しても暫くの間吐出モジュール302内ではインクの流れが継続しているため、第1圧力制御室404と第2圧力制御室412との内圧が等しくなるまでの数十秒~数分の間は液体吐出装置を停止させる必要がある。このように定期的に発生する数十秒~数分の待ち時間は大きなダウンタイムとなり、業務効率を低下させる。
【0037】
そこで、本実施形態では、第1ポンプ405と並列に、第1ポンプ405とは逆方向にインクを送り出す第2ポンプを備えた構成とする。
【0038】
図8図9は、本実施形態の液体吐出ヘッド100、101における循環の流れを模式的に示した図である。なお、従来の構成と同じ部材については、同一の符号を用いて説明する。
【0039】
インクの吐出を伴うインク循環時、第2ポンプ800は停止(OFF)しており、第1ポンプ405を稼働する(ON)ことでインクを循環させる。この場合、インクの循環経路は図6の場合と同様である。吐出モジュール302内のインクの循環量は、第1圧力制御室404及び第2圧力制御室412の制御圧の差圧によって決定され、吐出口近傍のインクの増粘を抑制可能なインクの循環量となるように設定される。第2ポンプ800には、第1ポンプ405と同様に圧電ダイヤフラムポンプ等が用いられる。
【0040】
インク循環を停止する場合、図9に示すように、第1ポンプ405を停止(OFF)したのち、第2ポンプ800を稼働する(ON)。これにより、第2レギュレータ410に第2ポンプ800からインクが流入し、第2圧力制御室412内の負圧が低くなり、第1圧力制御室404内の負圧と同等になることで、第1圧力制御室404と第2圧力制御室412との差圧が解消される。
【0041】
第2ポンプ800は、順方向の流れがほぼゼロに近い状態でポンプが止まるように、駆動時間を予め設定されている。少なくとも逆流が発生する前に第2ポンプ800の駆動を止める。その後、キャップ吸引動作や吐出口面のワイピング動作等の回復動作が行われる。
【0042】
第2ポンプ800により第1圧力制御室404から第2圧力制御室412へインクを送る送液(第2流路)では、第1圧力制御室404から第2圧力制御室412へ吐出モジュール302を介した流れ(第1流路)より多くの流量を短時間で流すことができる。よって、第2ポンプ800を用いることで、第1圧力制御室404と第2圧力制御室412との差圧を解消するのに要する時間は、従来と比較して短くなりダウンタイムを短くすることができる。
【0043】
このように、第1圧力制御室404と第2圧力制御室412との差圧が解消されることで、吐出モジュール302内に差圧によるインクの流れは発生せず、キャップ吸引動作やワイピング動作を行っても混色が発生することは無い。本実施形態のように、第2ポンプ800を駆動することで、積極的に第1圧力制御室404と第2圧力制御室412との差圧を解消する。この構成により、第1圧力制御室404と第2圧力制御室412との間の差圧を解消するのに要するダウンタイムを短くすることができ、生産性の低下を抑制することができる。
【0044】
図10は、本実施形態の1色分の循環ユニット304を含む循環システムを示した概略図である。従来の構成と同じ部材については、同一の符号を用いている。図10では、循環ユニット304を例に説明するが、循環ユニット305、306も同様の構成である。本実施形態の循環ユニットは、第1ポンプ405と並列に、第1ポンプ405とは逆方向にインクを送り出す第2ポンプを備える。
【0045】
なお、本実施形態では、液体吐出ヘッドが、第1圧力制御室と第2圧力制御室と、第1ポンプと第2ポンプとを備えた構成を説明したが、これに限定するものではない。液体吐出ヘッドとは別に、第1圧力制御室と第2圧力制御室と、第1ポンプと第2ポンプとを備えた構成でもよい。
【0046】
このように、供給流路408から吐出モジュール302の圧力室を経て回収流路409へと流れる第1流路以外に設けられ、第1圧力制御室404から第2圧力制御室412へ送液可能な送液手段を備える。これによって、生産性の低下を抑制することができる液体吐出ヘッド、液体吐出装置および制御方法を提供することができる。
【0047】
(変形例)
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0048】
図11は、本実施形態の変形例の循環ユニットにおける循環の流れを模式的に示した図である。第2ポンプ800を駆動することによって、第2レギュレータ410内に過剰にインクが流入すると、第2レギュレータ410内の圧力が正圧になる場合がある。その場合、第2レギュレータ410内の正圧を解消するために吐出モジュール302からインクが漏れ出し、液体吐出装置内がインクによって汚染される可能性がある。このように、第2レギュレータ410内の圧力が正圧になるのを防ぐために、第2ポンプ800と第2レギュレータ410との間に、第2レギュレータ410内の圧力を計測可能な圧力計1000を設置して、第2レギュレータ410内の圧力をモニターする。これによって、第2レギュレータ410内が正圧とならないよう第2ポンプ800を制御することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成について説明する。
【0050】
図12は、本実施形態の循環ユニットにおける循環の流れを模式的に示した図である。上記実施形態では、第2レギュレータ410内の負圧を解消するための方法として、第1ポンプ405と並列に、第1ポンプ405とは反対向きにインクを送り出す第2ポンプ800を追加した。
【0051】
第2ポンプ800を設けることなく、第1ポンプ405を逆向きにもインクを送ることのできる双方向ポンプ(チューブポンプ等)1100にし、循環停止時には双方向ポンプ1100を逆回転することで負圧を解消してもよい。
【0052】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成について説明する。
【0053】
図13は、本実施形態の循環ユニットにおける循環の流れを模式的に示した図である。本変形例では、上記実施形態における第2ポンプ800の代わりにバルブ1300を備える。バルブ1300を開いた場合、吐出モジュール302を介した供給流路408および回収流路409の流抵抗よりも流抵抗が低い状態でインクを流すことができる負圧解消流路1301を第1圧力制御室404と第2圧力制御室412との間に設ける。そして、インク吐出時の循環の際には、バルブ1300を閉じ、インク循環を停止する場合、第1ポンプ405を停止したのち、バルブ1300を開くことで第1圧力制御室404と第2圧力制御室412との差圧を解消する。このような構成によって第1圧力制御室404と第2圧力制御室412との差圧を解消してもよい。
【0054】
なお、負圧解消流路1301における流抵抗は、吐出モジュール302を介した供給流路408および回収流路409の流抵抗と同じでもよい。負圧解消流路1301により第1圧力制御室404から第2圧力制御室412へインクを供給することができれば、本発明における効果を得ることができる。
【0055】
本実施形態の開示は、以下の構成、方法を含む。
【0056】
(構成1)
液体を吐出可能な吐出手段と、
供給流路を介して前記吐出手段に液体を供給し、前記供給流路の圧力を調整可能な第1圧力制御部と、
回収流路を介して前記吐出手段から液体を回収し、前記回収流路の圧力を調整可能な第2圧力制御部と、
前記第2圧力制御部と前記第1圧力制御部との間に設けられ、前記第2圧力制御部から前記第1圧力制御部に送液可能な第1ポンプ手段と、
前記供給流路から前記吐出手段を経て前記回収流路へと流れる第1流路以外に設けられ、前記吐出手段を経ることなく前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な送液手段と、を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【0057】
(構成2)
前記送液手段は、前記第1圧力制御部と前記第2圧力制御部とを繋ぎ、前記第1ポンプ手段と並列に設けられた第2流路に設けられ、前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な第2ポンプ手段であることを特徴とする構成1に記載の液体吐出ヘッド。
【0058】
(構成3)
前記第2圧力制御部における圧力を計測可能な圧力計を備えることを特徴とする構成2に記載の液体吐出ヘッド。
【0059】
(構成4)
前記第1ポンプ手段および前記第2ポンプ手段は、圧電ダイヤフラムポンプであることを特徴とする構成2または3に記載の液体吐出ヘッド。
【0060】
(構成5)
前記送液手段は、前記第1圧力制御部と前記第2圧力制御部とを繋ぎ、前記第1ポンプ手段と並列に設けられた第2流路であることを特徴とする構成1に記載の液体吐出ヘッド。
【0061】
(構成6)
前記第2流路は、前記第1流路よりも流抵抗が低いことを特徴とする構成5に記載の液体吐出ヘッド。
【0062】
(構成7)
前記第2流路に、前記第2流路の開閉が可能なバルブを備えることを特徴とする構成5または6に記載の液体吐出ヘッド。
【0063】
(構成8)
前記送液手段は、前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部に送液可能な前記第1ポンプ手段であることを特徴とする構成1に記載の液体吐出ヘッド。
【0064】
(構成9)
前記吐出手段は、発熱抵抗素子を駆動することで液体を吐出することを特徴とする構成1ないし8のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【0065】
(構成10)
液体を吐出可能な液体吐出ヘッドと、
供給流路を介して前記液体吐出ヘッドに液体を供給し、前記供給流路の圧力を調整可能な第1圧力制御部と、
回収流路を介して前記液体吐出ヘッドから液体を回収し、前記回収流路の圧力を調整可能な第2圧力制御部と、
前記第2圧力制御部と前記第1圧力制御部との間に設けられ、前記第2圧力制御部から前記第1圧力制御部に送液可能な第1ポンプ手段と、
前記供給流路から前記液体吐出ヘッドを経て前記回収流路へと流れる第1流路以外に設けられ、前記液体吐出ヘッドを経ることなく前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な送液手段と、を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【0066】
(構成11)
液体を吐出可能な吐出手段と、
供給流路を介して前記吐出手段に液体を供給し、前記供給流路の圧力を調整可能な第1圧力制御部と、
回収流路を介して前記吐出手段から液体を回収し、前記回収流路の圧力を調整可能な第2圧力制御部と、
前記第2圧力制御部と前記第1圧力制御部との間に設けられ、前記第2圧力制御部から前記第1圧力制御部に送液可能な第1ポンプ手段と、
前記供給流路から前記吐出手段を経て前記回収流路へと流れる第1流路以外に設けられ、前記吐出手段を経ることなく前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な送液手段と、を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【0067】
(構成12)
前記送液手段は、前記第1圧力制御部と前記第2圧力制御部とを繋ぎ、前記第1ポンプ手段と並列に設けられた第2流路に設けられ、前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な第2ポンプ手段であることを特徴とする構成11に記載の液体吐出装置。
【0068】
(方法1)
液体を吐出可能な吐出手段と、
供給流路を介して前記吐出手段に液体を供給し、前記供給流路の圧力を調整可能な第1圧力制御部と、
回収流路を介して前記吐出手段から液体を回収し、前記回収流路の圧力を調整可能な第2圧力制御部と、
前記第2圧力制御部と前記第1圧力制御部との間に設けられ、前記第2圧力制御部から前記第1圧力制御部に送液可能な第1ポンプ手段と、
前記供給流路から前記吐出手段を経て前記回収流路へと流れる第1流路以外に設けられ、前記吐出手段を経ることなく前記第1圧力制御部から前記第2圧力制御部へ送液可能な送液手段と、
前記吐出手段における吐出状態を回復するための回復手段と、
を備える液体吐出ヘッドの制御方法であって、
前記第1ポンプ手段を駆動することにより前記第1流路の液体を循環させながら、前記吐出手段に吐出動作を行わせる吐出工程と、
前記吐出工程の後に、前記第1ポンプ手段を停止させ前記送液手段を駆動させる送液工程と、
前記送液工程により前記循環が停止した後、前記回復手段に液体吐出ヘッドの回復動作を行わせる工程と、を有する制御方法。
【符号の説明】
【0069】
302 吐出モジュール
401 フィルタ
404 第1圧力制御室
405 第1ポンプ
412 第2圧力制御室
414 循環ユニット
800 第2ポンプ
1100 双方向ポンプ
1300 バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13