(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179243
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】端子台装置
(51)【国際特許分類】
H01R 9/00 20060101AFI20241219BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20241219BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01R9/00 B
H01R13/52 B
H05K5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097943
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 賢仁
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮祐
【テーマコード(参考)】
4E360
5E086
5E087
【Fターム(参考)】
4E360AB12
4E360ED12
4E360GA07
4E360GA60
4E360GB92
4E360GC08
5E086DD15
5E086JJ13
5E086LL04
5E086LL06
5E086LL12
5E087EE02
5E087EE07
5E087FF04
5E087HH01
5E087LL04
5E087LL17
5E087MM08
5E087QQ03
5E087QQ04
5E087RR15
(57)【要約】
【課題】スナップフィット結合部を介して互いに固定される端子台およびカバーを含む端子台装置において、部品点数の増加やコストアップを抑制しつつ、端子台およびカバーの固定不良やガタつきを良好に抑制する。
【解決手段】
本開示の端子台装置は、少なくとも1つの端子を有する端子台と、端子を覆うように端子台に取り付けられるカバーとを含み、端子台およびカバーは、少なくとも1つのスナップフィット結合部を介して互いに固定され、端子台は、カバーの内面に向けて突出する壁部を含み、端子台およびカバーは、壁部の上端面の一部がカバーの内面に当接せず、かつ上端面の当該一部以外がカバーの内面に当接するように形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの端子を有する端子台と、前記端子を覆うように前記端子台に取り付けられるカバーとを含み、前記端子台および前記カバーが、スナップフィット結合部を介して互いに固定される端子台装置であって、
前記端子台は、前記カバーの内面に向けて突出する壁部を含み、
前記端子台および前記カバーは、前記壁部の上端面の一部が前記カバーの前記内面に当接せず、かつ前記上端面の前記一部以外が前記カバーの前記内面に当接するように形成されている端子台装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スナップフィット結合部を介して互いに固定される端子台およびカバーを含む端子台装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケースと、ケースの開口部を塞ぐコネクタ内蔵カバーとを含み、ケースとコネクタ内蔵カバーとがスナップフィット結合部を介して固定される電子装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この電子装置のケースの開口部周りには、スナップフィットによる固定方向に突出する環状の凸状部が形成されており、当該凸状部は、コネクタ内蔵カバーに形成された環状の凹状部に嵌合される。更に、凸状部の先端面と凹状部の底面との間には、防水のためのパッキンが配置され、当該パッキンは、ケースとコネクタ内蔵カバーとがスナップフィット結合部を介して固定された状態で、上記固定方向に圧縮される。これにより、スナップフィット結合のためにケースとコネクタ内蔵カバーとの間に設定された隙間が固定方向に圧縮されたパッキンの反発力により詰められるので、ケースとコネクタ内蔵カバーとのガタつきを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電子装置のように、スナップフィット結合部の採用に伴うガタつきを抑制するためにパッキン等の弾性部材が追加された場合、部品点数の増加やコストアップを招いてしまう。また、スナップフィット結合部を介して互いに固定される2つの部材では、振動等により当該2つの部材の接触部同士の摩耗が進行すると、パッキン等の弾性部材を含む場合であっても、2つの部材のガタつきが大きくなり、場合によっては、2つの部材の一方が他方から脱落してしまうおそれがある。一方、上記摩耗の進行を抑制するためには、2つの部材同士の接触面積を拡大することが考えられる。ただし、2つの部材同士の接触面積を拡大した場合、接触部の寸法のバラつき等により、スナップフィット結合部における嵌合不良、すなわち2つの部材の固定不良が発生してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、スナップフィット結合部を介して互いに固定される端子台およびカバーを含む端子台装置において、部品点数の増加やコストアップを抑制しつつ、端子台およびカバーの固定不良やガタつきを良好に抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の端子台装置は、少なくとも1つの端子を有する端子台と、前記端子を覆うように前記端子台に取り付けられるカバーとを含み、前記端子台および前記カバーが、少なくとも1つのスナップフィット結合部を介して互いに固定される端子台装置であって、前記端子台が、前記カバーの内面に向けて突出する壁部を含み、前記端子台および前記カバーが、前記壁部の上端面の一部が前記カバーの前記内面に当接せず、かつ前記上端面の前記一部以外が前記カバーの前記内面に当接するように形成されたものである。
【0007】
本開示の端子台装置において、端子台およびカバーは、端子台の壁部の上端面の一部がカバーの内面に当接せず、かつ上端面の当該一部以外がカバーの内面に当接するように形成されている。これにより、壁部における寸法、すなわち上端面の高さのバラつきにより、スナップフィット結合部における嵌合不良が発生するのを良好に抑制することが可能になる。また、本開示の端子台装置では、上端面(壁部)のカバーの内面に当接する部分が振動等により摩耗すると、それまでカバーの内面に当接してなかった上端面の一部を当該内面に当接させることができる。これにより、端子台とカバーとの接触面積を大きくして壁部の更なる摩耗を抑制することが可能になり、追加の弾性部材なしに、スナップフィット結合部を介して固定される端子台およびカバーのガタつきが大きくなるのを抑制することができる。この結果、スナップフィット結合部を介して互いに固定される端子台およびカバーを含む端子台装置において、部品点数の増加やコストアップを抑制しつつ、端子台およびカバーの固定不良やガタつきを良好に抑制可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の端子台装置を示す分解斜視図である。
【
図2】本開示の端子台装置のカバーを示す平面図である。
【
図3】(a)は、端子台とカバーとの固定不良を例示する断面図であり、(b)および(c)は、本開示の端子台装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示の端子台装置1を示す分解斜視図である。同図に示す端子台装置1は、車両に搭載される電動機(モータジェネレータ)に取り付けられると共に、図示しない2本の電力ケーブルが電気的接続されるものである。端子台装置1は、端子台2と、2つのスナップフィット結合部SFを介して当該端子台2に固定されるカバー3とを含む。端子台2は、
図1に示すように、電動機の適所に固定される本体20と、それぞれ本体20に固定された2つのスタッドボルトBおよび2つの端子Tとを含む。各スタッドボルトBは、各電力ケーブルの端部に取り付けられた端子の孔部に挿通され、各スタッドボルトBに図示しないナットを螺合することにより、各電力ケーブルが対応する端子Tに電気的に接続される。
【0011】
端子台2の本体20は、例えば樹脂等により形成されており、
図1に示すように、底部21と、2つの壁部22,23とを含む。底部21は、2つの端子Tを間隔をおいて隣り合うように保持すると共に、それぞれ対応する端子Tを貫通するように2つのスタッドボルトBを保持する。また、壁部22,23は、底部21からスタッドボルトBの延在方向に突出するように当該底部21と一体に形成されている。
【0012】
壁部22は、略L字状の断面形状を有し、一方の端子Tに電気的に接続される電力ケーブルの出口が形成されるように、当該一方の端子Tおよびそれに挿通されるスタッドボルトBを外側(2方向)から囲う。また、壁部22には、
図1における上端側で開口する複数の切り欠きが形成されており、それにより、壁部22は、間隔をおいて並ぶ複数の平坦な上端面22a,22b,22cを有する。本実施形態において、壁部22は、上端面22a,22b,22cの底部21の底面からの高さが互いに同一になるように形成されている。更に、壁部22の上端面22aを含む部分には、一方のスナップフィット結合部SFを構成する爪部(嵌合部)25が外方に突出するように形成されている。
【0013】
壁部23は、略コの字状(略C字状)の断面形状を有し、他方の端子Tに電気的に接続される電力ケーブルの出口が形成されるように、当該他方の端子Tおよびそれに挿通されるスタッドボルトBを3方向から囲む。すなわち、壁部23は、一方のスタッドボルトBおよび端子Tが配置されるスペースと、他方のスタッドボルトBおよび端子Tが配置されるスペースとを仕切る仕切り壁部24を含む。また、壁部23にも、
図1における上端側で開口する複数の切り欠きが形成されており、それにより、壁部23は、間隔をおいて並ぶ複数の平坦な上端面23a,23b,23cを有する。本実施形態において、壁部23は、上端面23a,23b,23cの底部21の底面からの高さが互いに同一になり、かつ壁部22の上端面22a,22b,22cの底部21の底面からの高さと同一になるように形成されている。更に、壁部23の上端面23aを含む部分と上端面23bを含む部分との間には、他方のスナップフィット結合部SFを構成する爪部(嵌合部)25が外方に突出するように形成されている。壁部23側の爪部25は、仕切り壁部24を介して壁部22側の爪部25の反対側に位置する。
【0014】
カバー3は、例えば樹脂等により形成されており、当該カバー3の内面(天井面)30に向けて突出する端子台2の壁部22,23と、2つのスタッドボルトBと、2つの端子Tとを覆うように、端子台2に固定される。また、カバー3の内面30のうち、
図2に示す領域31,32,33は、周囲の部分から下方(端子台2側)に突出するように平坦に形成されている。内面30の領域31は、端子台2の壁部22の上端面22a,22bと対向し、領域32は、壁部22の上端面22cと壁部23(仕切り壁部24)の上端面23cとに対向する。また、領域33は、壁部23の上端面23a,23bと対向する。更に、カバー3には、それぞれ端子台2の対応する爪部25と共にスナップフィット結合部SFを構成する2つの孔部(被嵌合部)35が互いに対向するように形成されている。各孔部35には、端子台2の対応する爪部25がガタをもって嵌合される
【0015】
ここで、車両に搭載される端子台装置1では、2つのスナップフィット結合部SFを介して端子台2とカバー3とがガタをもって固定されるため、車両からの振動により端子台2とカバー3との接触部同士の摩耗が進行する。また、接触部同士の摩耗が進行すると、端子台2とカバー3とのガタつきが大きくなり、場合によっては、カバー3が端子台2から脱落してしまうおそれがある。このため、端子台2とカバー3との接触面積を拡大して摩耗の進行を抑制するために、端子台2の壁部22,23の上端面22a,22b,22c,23a,23b,23cのすべてをカバー3の内面30の対応する領域31,32または33に当接させることが考えられる。
【0016】
ただし、上端面22a,22b,22c,23a,23b,23cの底部21の底面からの高さや、領域31,32,33の突出量(高さ)には、バラつきが存在している。また、壁部22の爪部25と、それに比較的近接した上端面22a,22bとの間の寸法のバラつきや、壁部23の爪部25と、それに比較的近接した上端面23a,23bとの間の寸法のバラつきに比べて、壁部22または23の爪部25と、それらから比較的離間した壁部22の上端面22cおよび壁部23(仕切り壁部24)の上端面23cとの間の寸法のバラつきは大きくなる。このため、例えば、
図3(a)に示すように、壁部23(仕切り壁部24)の上端面23cの底部21の底面からの高さが、他の上端面22a,22b,22c,23a,23bよりも高くなっている場合、端子台2にカバー3を固定する際に、上端面23cがカバー3の内面30に先に突き当たってしまい(干渉してしまい)、何れか一方または双方の爪部25を対応する孔部35に嵌合し得なくなるスナップフィット結合部SFにおける嵌合不良が発生してしまうおそれがある。
【0017】
これを踏まえて、端子台装置1の端子台2およびカバー3は、
図3(b)に示すように、当該端子台2の壁部22,23に含まれる複数の上端面22a,22b,22c,23a,23b,23cの一部、すなわち、各爪部25から比較的離間している壁部22の上端面22c(
図3(b)では、図示省略)および壁部23の上端面23cがカバー3の内面30の領域32に当接せず、かつ複数の上端面22aの当該一部以外、すなわち対応する爪部25に比較的近接している上端面22a,22b,23a,23bがカバー3の内面30の領域31または33に当接するように形成されている。本実施形態では、
図3(b)に示すように、カバー3の内面30の領域32の突出量(高さ)が他の領域31,33に比べて小さく(低く)定められており、上端面22c,23cと領域32との間には、隙間が形成される。
【0018】
これにより、複数の上端面22a,22b,22c,23a,23b,23cの高さ(寸法)のバラつきにより、スナップフィット結合部SFにおける嵌合不良が発生するのを良好に抑制することが可能になる。本実施形態において、領域32の突出量(高さ)と、領域31,33の突出量との差dは、製造公差による寸法のバラつきが最大になったとしてもスナップフィット結合部SFにおける嵌合不良を発生させないように定められ、例えば、0.1-0.3mm程度とすることができる。
【0019】
また、端子台装置1では、車両の走行距離が増加し、カバー3の内面30すなわち領域31または33に当接する上端面22a,22b,23a,23b(壁部22,23の一部)が当該車両で発生する振動等により摩耗すると、
図3(c)に示すように、それまでカバー3の内面30すなわち領域32に当接してなかった一部の上端面22c,23cを当該領域32に当接させることができる。これにより、端子台2とカバー3との接触面積をより大きくして壁部22,23の更なる摩耗を抑制することが可能になり、スナップフィット結合部SFを介して固定される端子台2およびカバー3のガタつきが大きくなるのを抑制することができる。更に、端子台装置1では、端子台2およびカバー3のガタつきを抑制するために、パッキン等の弾性部材を採用する必要がなくなる。この結果、スナップフィット結合部SFを介して互いに固定される端子台2およびカバー3を含む端子台装置1では、部品点数の増加やコストアップを抑制しつつ、端子台2およびカバー3の固定不良や、両者のガタつきが大きくなることを抑制可能になる。
【0020】
なお、上記実施形態では、上端面22c,23cがカバー3の内面30の領域32に当接せず、かつ上端面22a,22b,23a,23bがカバー3の内面30の領域31または33に当接するように、上端面22a,22b,22c,23a,23b,23cの底部21の底面からの高さが互いに同一とされ、かつ領域32の突出量(高さ)が他の領域31,33に比べて小さく(低く)定められているが、これに限られるものではない。すなわち、端子台装置1において、カバー3の内面30の領域31,32,33が同一平面内に含まれるようにすると共に、
図3(b)において破線で示すように、上端面22c,23cの底部21の底面からの高さが残余の上端面22a等の底部21の底面からの高さよりも低く定められてもよい。
【0021】
また、端子台装置1において、端子台2の壁部22,23が一体化されてもよい。すなわち、端子台2は、複数の上端面を有する単一の壁部を含むものであってもよい。更に、端子台2は、連続した単一の上端面を有する単一の壁部を含むものであってもよい。この場合、端子台2およびカバー3は、端子台2の壁部の上端面の一部がカバー3の内面30に当接せず、かつ上端面の当該一部以外がカバー3の内面30に当接するように形成されてもよい。また、端子台装置1において、仕切り壁部24が壁部23から分離されてもよい。すなわち、端子台2は、それぞれ、少なくとも1つの上端面を有する3つ以上の壁部を含むものであってもよい。この場合、端子台2およびカバー3は、端子台2の複数の壁部のうち、一部の壁部の上端面がカバー3の内面30に当接せず、かつ当該一部以外の壁部の上端面がカバー3の内面30に当接するように形成されてもよい。更に、端子台装置1は、単一のスナップフィット結合部SFを含むものであってもよく、3つ以上のスナップフィット結合部SFを含むものであってもよい。
【0022】
以上説明したように、本開示の端子台装置(1)は、少なくとも1つの端子(T)を有する端子台(2)と、端子(T)を覆うように端子台(2)に取り付けられるカバー(3)とを含む。端子台(2)およびカバー(3)は、少なくとも1つのスナップフィット結合部(SF)を介して互いに固定される、また。端子台(2)は、カバー(3)の内面(30)に向けて突出する壁部(22,23)を含む。更に、端子台(2)およびカバー(3)は、壁部(22,23)の上端面(22a,22b,22c,23a,23b,23c)の一部(22c,23c)がカバー(3)の内面(30,32)に当接せず、かつ上端面(22a,22b,22c,23a,23b,23c)の一部(22c,23c)以外(22a,22b,23a,23b)がカバー(3)の内面(30,31,33)に当接するように形成されている。これにより、スナップフィット結合部を介して互いに固定される端子台およびカバーを含む端子台装置において、部品点数の増加やコストアップを抑制しつつ、端子台およびカバーの固定不良やガタつきを良好に抑制可能になる。
【0023】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本開示の発明は、スナップフィット結合部を介して互いに固定される端子台およびカバーを含む端子台装置の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 端子台装置、2 端子台、20 本体、21 底部、22,23 壁部、22a,22b,22c,23a,23b,23c 上端面、24 仕切り壁部、25 爪部、3 カバー、30 内面、31,32,33 領域、35 孔部、B スタッドボルト、SF スナップフィット結合部、T 端子。