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特開2024-1792443次元印刷方法、力センサの製造方法及び3次元印刷装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179244
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】3次元印刷方法、力センサの製造方法及び3次元印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20241219BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20241219BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241219BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20241219BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20241219BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y50/02
B29C64/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097944
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】西村 斉寛
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 哲陽
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC02
4F213AR06
4F213AR08
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL24
4F213WL27
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】複数の材料を用いた場合でも、材料種によらず、一度に造形可能な3次元印刷方法、力センサの製造方法及び3次元印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】この3次元印刷方法は、第1材料を用いて支持体を造形する第1工程と、前記第1材料と異なる第2材料を前記支持体に印刷する第2工程と、を有し、前記第2工程において、前記第2材料が印刷される部分を構成する前記第1材料を溶かしながら、前記第2材料を前記支持体に印刷する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料を用いて支持体を造形する第1工程と、
前記第1材料と異なる第2材料を前記支持体に印刷する第2工程と、を有し、
前記第2工程において、前記第2材料が印刷される部分を構成する前記第1材料を溶かしながら、前記第2材料を前記支持体に印刷する、3次元印刷方法。
【請求項2】
前記支持体に印刷された前記第2材料を第3材料で覆う第3工程をさらに備える、請求項1に記載の3次元印刷方法。
【請求項3】
前記第2工程において、前記第2材料を射出するノズルを加熱して、前記支持体に前記ノズルを押し当てる、請求項1に記載の3次元印刷方法。
【請求項4】
前記ノズルの先端を前記第1材料の融点以上まで加熱する、請求項3に記載の3次元印刷方法。
【請求項5】
前記第2材料は、センサを含むファイバーである、請求項1に記載の3次元印刷方法。
【請求項6】
前記第2工程において、前記ファイバー内の前記センサの位置を測定し、前記第2材料の送り速度、前記第2材料を射出するノズルの移動速度及び前記第2材料を射出するノズルの移動経路のうちの少なくとも一つを調整する、請求項5に記載の3次元印刷方法。
【請求項7】
請求項1に記載の3次元印刷方法を用いた、力センサの製造方法。
【請求項8】
第1ノズルと第2ノズルとを備え、
前記第1ノズルは、第1材料を射出し、
前記第2ノズルは、前記第1材料と異なる第2材料を射出し、前記第1材料を用いて造形した支持体に押し当て可能に構成されている、3次元印刷装置。
【請求項9】
前記第2ノズルは、前記第2材料を送り出すローラーを有し、
前記第2ノズルのローラーは、前記第2材料の送り出し方向が周方向となる円形ローラーであり、
前記第2ノズルのローラーの送り出し面は、第2材料に対する静止摩擦が0.1以上である、請求項8に記載の3次元印刷装置。
【請求項10】
前記第1ノズルは、前記第1材料を送り出すローラーを有し、
前記第1ノズルのローラーは、前記第1材料の送り出し方向が周方向となる円形ローラーであり、
前記第1ノズルのローラーの送り出し面は、凹凸を有する、請求項8に記載の3次元印刷装置。
【請求項11】
前記第2ノズルは、撮像素子をさらに備え、
前記撮像素子は、前記第2ノズルに送り込まれる前記第2材料を測定できる、請求項8に記載の3次元印刷装置。
【請求項12】
前記第2ノズルは、前記第2材料を送り出すローラーと、前記ローラーを制御する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記撮像素子の測定結果に基づいて、前記ローラー又は前記第2ノズルの動きを制御する、請求項11に記載の3次元印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元印刷方法、力センサの製造方法及び3次元印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元印刷装置(3Dプリンター)は、設計データを基に、スライスされた2次元の層を積み重ねることで、立体モデルを製作する機械である。3次元印刷装置は、加工の自由度の高さ及び生産性の高さから注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱溶解積層方式の3次元印刷装置が開示されている。特許文献1には、押出ノズルとプリント表面との間のギャップを制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-54057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3次元印刷装置を用いて力センサを一括で作製する試みが検討されている。しかしながら、支持体となる材料とセンサとの密着を十分確保できない場合がある。例えば、ファイバー・ブラック・グレーティング(FBG)センサは、物体に力が加わった際に物体に生じる歪を検出するのに適したセンサの一つであるが、センサを含むファイバー自体に他の物体との接着機能がないため、支持体とセンサの間の十分な密着を確保することが難しい。支持体とセンサの間の十分な密着を確保しようとすると、センサを含むファイバーの材料に制限が生じる。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、複数の材料を用いた場合でも、材料種によらず、一度に造形することができる3次元印刷方法、力センサの製造方法及び3次元印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0008】
(1)第1の態様に係る3次元印刷方法は、第1材料を用いて支持体を造形する第1工程と、前記第1材料と異なる第2材料を前記支持体に印刷する第2工程と、を有し、前記第2工程において、前記第2材料が印刷される部分を構成する前記第1材料を溶かしながら、前記第2材料を前記支持体に印刷する。
【0009】
(2)上記態様に係る3次元印刷方法は、前記支持体に印刷された前記第2材料を第3材料で覆う第3工程をさらに備えてもよい。
【0010】
(3)上記態様に係る3次元印刷方法は、前記第2工程において、前記第2材料を射出するノズルを加熱して、前記支持体に前記ノズルを押し当ててもよい。
【0011】
(4)上記態様に係る3次元印刷方法において、前記ノズルの先端を前記第1材料の融点以上まで加熱してもよい。
【0012】
(5)上記態様に係る3次元印刷方法において、前記第2材料は、センサを含むファイバーでもよい。
【0013】
(6)上記態様に係る3次元印刷方法は、前記第2工程において、前記ファイバー内の前記センサの位置を測定し、前記第2材料の送り速度、前記第2材料を射出するノズルの移動速度及び前記第2材料を射出するノズルの移動経路のうちの少なくとも一つを調整してもよい。
【0014】
(7)第2の態様に係る力センサの製造方法は、上記態様に係る3次元印刷方法を用いる。
【0015】
(8)第3の態様に係る3次元印刷装置は、第1ノズルと第2ノズルとを備える。前記第1ノズルは、第1材料を射出する。前記第2ノズルは、前記第1材料と異なる第2材料を射出し、前記第1材料を用いて造形した支持体に押し当て可能に構成されている。
【0016】
(9)上記態様に係る3次元印刷装置において、前記第2ノズルは、前記第2材料を送り出すローラーを有してもよい。前記第2ノズルのローラーは、前記第2材料の送り出し方向が周方向となる円形ローラーであり、前記第2ノズルのローラーの送り出し面は、第2材料に対する静止摩擦が0.1以上である。
【0017】
(10)上記態様に係る3次元印刷装置において、前記第1ノズルは、前記第1材料を送り出すローラーを有してもよい。前記第1ノズルのローラーは、前記第1材料の送り出し方向が周方向となる円形ローラーであり、前記第1ノズルのローラーの送り出し面は、凹凸を有する。
【0018】
(11)上記態様に係る3次元印刷装置において、前記第2ノズルは、撮像素子をさらに備えてもよい。前記撮像素子は、前記第2ノズルに送り込まれる前記第2材料を測定できる。
【0019】
(12)上記態様に係る3次元印刷装置において、前記第2ノズルは、前記第2材料を送り出すローラーと、前記ローラーを制御する制御部と、をさらに備えてもよい。前記制御部は、前記撮像素子の測定結果に基づいて、前記ローラー又は前記第2ノズルの動きを制御する。
【発明の効果】
【0020】
本実施形態に係る3次元印刷方法、力センサの製造方法及び3次元印刷装置によれば、材料種によらず、異なる材料を用いて一度に3次元構造体を造形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る3次元印刷装置の模式図である。
図2】第1実施形態に係る3次元印刷装置の第1ノズルの断面図である。
図3】第1実施形態に係る3次元印刷装置の第2ノズルの断面図である。
図4】第1実施形態に係る力センサの製造方法の第1工程を説明するための模式図である。
図5】第1実施形態に係る力センサの製造方法の第2工程を説明するための模式図である。
図6】第1実施形態に係る力センサの製造方法の第2工程を説明するための模式図である。
図7】第1実施形態に係る力センサの製造方法の第3工程を説明するための模式図である。
図8】第1実施形態に係る力センサの製造方法で作製される力センサの模式図である。
図9】実施例1において、支持体に第2材料を印刷した図である。
図10】実施例1に係る力センサのテスト結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態について詳細に説明する。以下の説明は本発明の一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0023】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態に係る3次元印刷装置100の模式図である。3次元印刷装置100は、第1ノズル10と第2ノズル20とを備える。第1ノズル10は、第1材料1を射出する。第2ノズル20は、第2材料2を射出する。第2材料2は、第1材料1と異なる。
【0024】
図2は、第1実施形態に係る3次元印刷装置100の第1ノズル10の断面図である。第1ノズル10は、例えば、ローラー11と加熱部12とを有する。第1ノズル10は、ノズルの先端部13から第1材料1を射出する。
【0025】
ローラー11は、第1材料1を送り出す。ローラー11は、断面が円形の円形ローラーである。ローラー11は、球状でも円筒状でもよい。ローラー11の周方向は、第1材料1の送り出し方向と一致する。ローラー11は、例えば、送り出し面11Sに凹凸を有する。ローラー11の送り出し面11Sの凹凸が第1材料1に噛みこむことで、第1材料1を所望の条件で送り出すことができる。ローラー11は、一つでも複数でもよい。
【0026】
加熱部12は、第1ノズル10を加熱し、第1材料1を加熱する。第1材料1は、加熱部12で加熱され、融解する。融解した第1材料1は、先端部13から射出される。
【0027】
第1材料1は、例えば、樹脂材料である。第1材料1は、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート、ポリ乳酸樹脂(PLA樹脂)等である。第1材料1は、先端部13から射出後に冷えることで固まる。
【0028】
図3は、第1実施形態に係る3次元印刷装置100の第2ノズル20の断面図である。第2ノズル20は、例えば、ローラー21と加熱部22と撮像素子24と制御部25と駆動部26とを有する。第2ノズル20は、ノズルの先端部23から第2材料2を射出する。
【0029】
ローラー21は、第2材料2を送り出す。ローラー21は、断面が円形の円形ローラーである。ローラー21は、球状でも円筒状でもよい。ローラー21の周方向は、第2材料2の送り出し方向と一致する。
【0030】
ローラー21は、例えば、送り出し面21Sが平坦である。ローラー21の送り出し面21Sが平坦であることで、ローラー21が第2材料2を傷つけることを防ぐことができる。第2材料2が光ファイバーである場合、ローラー21に凹凸があると、光ファイバーの表面を傷つけ、光学特性を低下させる恐れがある。
【0031】
ローラー21の送り出し面21Sは、第2材料2に対する静止摩擦係数が0.1以上であることが好ましい。ローラー21の送り出し面21Sは、例えば、シリコン又はゴムであることが好ましい。ローラー21の送り出し面21Sが第2材料2に対して十分な摩擦力を有すると、第2材料2を送り出す際に第2材料2がローラー21に対して滑ることを防ぎ、第2材料2を所望の条件で送り出すことができる。ローラー21は、一つでも複数でもよい。
【0032】
加熱部22は、第2ノズル20を加熱する。加熱部22は、例えば、第2ノズル20の先端部23を第1材料1の融点以上の温度まで加熱する。先端部23を加熱することで、第2材料2が射出される部分に接する第1材料1が融解する。加熱部22は、第2材料2が融解する材料の場合、第2ノズル20の先端部23を第2材料2の融点以上の温度まで加熱してもよい。
【0033】
第2材料2は、第1材料1と異なる。第2材料2は、例えば、センサを含むファイバーである。センサは、例えば、ファイバー・ブラック・グレーティング(FBG)センサである。センサがファイバー・ブラック・グレーティング(FBG)センサの場合、第2材料2は、回折格子を含むコアと、コアの周囲を覆うクラッドと、を含むファイバーである。クラッドの屈折率は、コアより低い。
【0034】
撮像素子24は、第2ノズル20に送り込まれる第2材料2を測定できる。撮像素子24は、例えば、カメラである。撮像素子24は、例えば、第2材料2の第2ノズル20への入り口近傍を撮影する。例えば、第2材料2がセンサ2Aを含むファイバーの場合、撮像素子24は、センサ2Aを検出する。センサ2Aがファイバー・ブラック・グレーティング(FBG)センサの場合、撮像素子24は、第2ノズル20の入り口に至った回折格子を検出する。
【0035】
制御部25は、例えば、撮像素子24とローラー21と駆動部26とに接続されている。撮像素子24で撮像された情報は、制御部25に送られる。撮像素子24と制御部25との間の情報伝達は、有線でも無線でもよい。制御部25は、例えば、撮像素子24の測定結果に基づいて、第2ノズル20に送り込まれる第2材料2のセンサ2Aの位置を把握する。制御部25は、撮像素子24の測定結果に基づいて、ローラー21又は駆動部26の動きを制御する。例えば、撮像素子24の測定結果に基づいて、センサ2Aを設置したい位置(以下、希望設置位置と称する。)に対して、実際にセンサ2Aが設置される位置がずれることが予想される場合、制御部25は、ローラー21の回転速度、第2ノズル20の移動速度及び第2ノズル20の移動経路のうちの少なくとも一つを変更する。ローラー21の回転速度を変えることで、第2材料2の送り速度を変え、センサ2Aの設置位置を希望設置位置に合わせることができる。また第2ノズル20の移動速度又は移動経路を変えることで、第2材料2が支持体30に射出される相対速度又は経路を変え、センサ2Aの設置位置を希望設置位置に合わせることができる。
【0036】
駆動部26は、第2ノズル20に接続されている。駆動部26は、第2ノズル20の上下方向への昇降動作と、水平方向への並進動作と、を制御する。駆動部26は、昇降動作によって、第2ノズル20を支持体に押し当てることができる。すなわち、第2ノズル20は、駆動部26によって、支持体に押し当て可能に構成されている。
【0037】
ここでは、第1実施形態に係る3次元印刷装置の一例について説明したが、本発明に係る3次元印刷装置はこの例に限られない。例えば、3次元印刷装置100の第2ノズル20は、撮像素子24、制御部25のいずれか又は両方を有さなくてもよい。
【0038】
次いで、第1実施形態にかかる力センサの製造方法について説明する。第1実施形態にかかる力センサは、例えば、上述の3次元印刷装置100を用いて作製できる。
【0039】
第1実施形態に係る力センサの製造方法は、第1実施形態に係る3次元印刷方法を用いて作製できる。第1実施形態に係る3次元印刷方法は、例えば、第1工程と第2工程と第3工程とを有する。
【0040】
図4は、第1工程を説明するための模式図である。第1工程では、第1材料1を用いて支持体30を造形する。第1工程は、例えば、3次元印刷装置100の第1ノズル10を用いて行う。第1工程では、設計データを基に、スライスされた2次元の層を積み重ね、支持体30を作製する。第1ノズル10は、設計データに基づいて、第1材料1を射出する。第1材料1は、第1ノズル10から射出された後に、冷えて固まる。第1工程は、例えば、熱溶解積層方式(FDM方式)で行われる。支持体30は、第1材料からなる。
【0041】
図5は、第2工程を説明するための模式図である。第2工程では、第2材料2を支持体30に印刷する。支持体30に印刷された第2材料2は、例えば、ファイバー40となる。ファイバー40は、例えば、内部にセンサ40Aを有する。ファイバー40は、第2材料2が支持体30に設置されたものである。センサ40Aは、センサ2Aが支持体30に設置されたものである。センサ40Aの設置位置は、例えば、第2材料2におけるセンサ2Aの位置を測定し、第2材料2の送り速度、第2材料2を射出する第2ノズル20の移動速度及び第2材料2を射出する第2ノズル20の移動経路のうちの少なくとも一つを調整することで、調整できる。
【0042】
第2工程では、第2材料2が印刷される部分に接する第1材料1を溶かしながら、第2材料2を支持体30に印刷する。融解する第1材料1は、支持体30の一部である。図6は、第2工程の一例を説明するための模式図である。第2工程は、例えば、移動工程と、融解工程と、射出工程と、を有する。
【0043】
まず移動工程では、ファイバー40を設置したい位置に、第2ノズル20を移動させる。
【0044】
次いで、融解工程では、第2ノズル20を加熱し、加熱された第2ノズル20を支持体30に押し当てる。例えば、第2ノズル20は、加熱部22に電流を流すことで、加熱される。例えば、第2ノズル20の先端部23は、第1材料1の融点以上の温度になる。第2ノズル20の先端部23は、駆動部26によって、第2ノズル20全体を支持体30に向かって下すことで、支持体30に押し当てられる。加熱された第2ノズル20の先端部23を支持体30に押し当てると、支持体30の先端部23と接触する部分の第1材料1が融解する。
【0045】
融解工程において、第2ノズル20の先端部23は、支持体30の表面より下方に位置する。融解工程における先端部23の支持体30の表面に対する深さは、例えば、固化後のファイバー40の径の半分以上であることが好ましく、固化後のファイバー40の径以下であることがより好ましい。例えば、融解工程における先端部23の支持体30の表面に対する深さは、0.1 mm以上5mm以下が好ましい。支持体30に対して先端部23を押し付けすぎると、第2ノズル20に負荷がかかり、第2ノズル20の故障の原因となりうる。また支持体30に対して先端部23を押し付けすぎると、第2ノズル20を並進する際に、支持体30が動き、造形面がずれてしまう場合もある。また支持体30に対して先端部23を押し当てが不十分だと、ファイバー40と支持体30との密着力が低くなる場合がある。
【0046】
ここでは、加熱した第2ノズル20の先端部23を支持体30に押し当てることで、支持体30の一部の第1材料1を融解する例を示した。第1材料1の融解方法はこの例に限られない。例えば、第2材料2を射出する予定箇所に、レーザーを照射し、第2ノズル20の進行方向に位置する第1材料1を融解させてもよい。
【0047】
次いで、射出工程では、第2ノズル20から第2材料2を射出しながら、第2ノズル20を並進させる。第2ノズル20を並進することで、第2材料2がファイバー40となる。ファイバー40を印刷後に、融解していた第1材料1が再度固化する。第1材料1の再固化により、支持体30とファイバー40とが密着する。ファイバー40は、例えば、支持体30に埋め込まれる。
【0048】
第2ノズル20の移動速度は、例えば、5mm/秒未満が好ましく、1mm/秒以下がより好ましい。また第2ノズル20の移動速度は、例えば、0.1mm/秒以上が好ましい。第2ノズル20の移動速度を適切な範囲とすることで、生産効率を確保しつつ、第1材料1の溶解、再固化の時間を確保することができる。また第2ノズル20の移動速度は、常に一定である必要はなく、状況に応じて変えてもよい。第2ノズル20の移動速度を調整することで、ファイバー40内のセンサ40Aを所望の位置に設置できる。
【0049】
第2ノズル20からの第2材料2の送り速度は、例えば、5mm/秒未満が好ましく、1mm/秒以下がより好ましい。また第2ノズル20からの第2材料2の送り速度は、例えば、0.1mm/秒以上が好ましい。第2ノズル20からの第2材料2の送り速度を適切な範囲とすることで、生産効率を確保しつつ、第1材料1の溶解、再固化の時間を確保することができる。また第2ノズル20からの第2材料2の送り速度は、常に一定である必要はなく、状況に応じて変えてもよい。送り速度を調整することで、ファイバー40内のセンサ40Aを所望の位置に設置できる。
【0050】
図7は、第3工程を説明するための模式図である。第3工程では、支持体30に印刷された第2材料2によって形成されたファイバー40を第3材料で覆う。第3材料は、ファイバー40を直接覆ってもよいし、空間を介して間接的に覆ってもよい。第3工程では、設計データを基に、スライスされた2次元の層を積み重ね、カバー50を作製する。第3工程は、例えば、熱溶解積層方式(FDM方式)で行われる。カバー50は、第3材料からなる。
【0051】
第3材料は、第1材料1と同じでもよいし、異なってもよい。第3材料が第1材料1と同じ場合は、第1ノズル10を用いてカバー50を形成する。第3材料が第1材料1と異なる場合は、第1ノズル10及び第2ノズル20と異なる第3ノズルを用いてカバー50を造形する。
【0052】
次いで、図8に示すように、ファイバー40の一端を測定装置60に接続することで、力センサが得られる。外力Fが力センサに加わると、ファイバー40のセンサ40Aが歪む。例えば、ファイバー40がFBGセンサを含むファイバーの場合、センサ40Aが歪むと回折格子からの反射光の波長が変わる。すなわち、測定装置60で検出される反射光の波長に変化を観測することで、力センサへの外力Fの印加及び外力Fの強度等を算出できる。外力Fは、歪みに限られず、圧力、温度でもよい。
【0053】
上述のように、本実施形態に係る力センサの製造方法は、第1材料1を融解しながら第2材料2を印刷する工程を有する。そのため、融解した第1材料1の再固化を利用することで、第2材料2によらず、支持体30とファイバー40との密着を十分確保できる。そのため、本実施形態に係る力センサの製造方法によれば、所定の位置にセンサ40Aが配置された力センサを、3次元印刷方法を用いて一括で作製することができる。また本実施形態に係る3次元印刷装置100は、この3次元印刷方法に適している。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例0055】
(実施例1)
実施例1では、ポリ乳酸(PLA)樹脂からなる板材を準備した。この板材は、図4図8の支持体30に対応する。
【0056】
次いで、FBGセンサを含むファイバーを第2材料2として、板材に印刷した。実施例1では、印刷時におけるノズルの先端部の温度は200度とした。実施例1では、ノズルの先端をPLA樹脂からなる板材に押し当てながら、FBGセンサを含むファイバーを射出した。実施例1におけるノズルの移動速度は1mm/秒とし、ファイバーの送り速度は1mm/秒とした。
【0057】
図9は、実施例1の加工後の試料の画像である。図9に示すように、ファイバーが板材に溶着されており、ファイバーと板材は強く密着していた。また板材の端部からファイバーを突出させることもでき、図8に示す測定装置60との接続部分を形成することもできた。
【0058】
次いで、作製した実施例1の試料に外力を加え、力センサのテストを行った。力センサのテストでは、第1方向に負荷(曲げモーメント)を印加した後に、第2方向に負荷(曲げモーメント)を印加した。第1方向と第2方向は、反対の方向である。
【0059】
図9に示すように、実施例1の力センサは、負荷の印加により生じた歪を適切に計測した。また実施例1の力センサは、負荷の印加方向の違いも検出した。また実施例1の力センサに負荷を印加しても、ファイバーと板材との密着は確保できた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本実施形態に係る3次元印刷方法は、力センサの製造方法として適用できる。また本実施形態に係る3次元印刷方法は、力センサの製造に限られず、使用可能な材料に制限があり、異なる複数の材料間の密着の確保が難しい場合に、適用できる。またこの方法で作製した力センサは、ロボット等に使用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…第1材料、2…第2材料、2A…センサ、10…第1ノズル、20…第2ノズル、11,21…ローラー、11S,21S…送り出し面、13,23…先端部、24…撮像素子、25…制御部、26…駆動部、30…支持体、40…ファイバー、40A…センサ、50…カバー、60…測定装置、100…3次元印刷装置
図1
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図8
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図10