IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

特開2024-179253締結用部材、ネジ構造、ネジ締結構造及びネジ締結構造の締結方法
<>
  • 特開-締結用部材、ネジ構造、ネジ締結構造及びネジ締結構造の締結方法 図1
  • 特開-締結用部材、ネジ構造、ネジ締結構造及びネジ締結構造の締結方法 図2
  • 特開-締結用部材、ネジ構造、ネジ締結構造及びネジ締結構造の締結方法 図3
  • 特開-締結用部材、ネジ構造、ネジ締結構造及びネジ締結構造の締結方法 図4
  • 特開-締結用部材、ネジ構造、ネジ締結構造及びネジ締結構造の締結方法 図5
  • 特開-締結用部材、ネジ構造、ネジ締結構造及びネジ締結構造の締結方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179253
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】締結用部材、ネジ構造、ネジ締結構造及びネジ締結構造の締結方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 43/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
F16B43/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097960
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 涼
【テーマコード(参考)】
3J034
【Fターム(参考)】
3J034AA04
3J034AA09
3J034BA06
3J034BA09
3J034BA12
3J034BB06
3J034BC04
3J034BD01
3J034CA01
3J034CA03
(57)【要約】
【課題】再締結が容易でシール性に優れる、締結用部材、ネジ構造、ネジ締結構造及びネジ締結構造の締結方法を提供する。
【解決手段】頭部と軸部とを有するネジを締結するための締結用部材であって、塑性ワッシャを有し、前記塑性ワッシャは、前記ネジの締結により前記塑性ワッシャの内周面が前記軸部に押し付けられるまで塑性変形でき又はしている、締結用部材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と軸部とを有するネジを締結するための締結用部材であって、
塑性ワッシャを有し、
前記塑性ワッシャは、前記ネジの締結により前記塑性ワッシャの内周面が前記軸部に押し付けられるまで塑性変形でき又はしている、締結用部材。
【請求項2】
前記塑性ワッシャは、前記ネジの締結により前記塑性ワッシャの内周面が前記軸部のネジ山に押し付けられるまで塑性変形でき又はしている、請求項1に記載の締結用部材。
【請求項3】
前記頭部側から前記軸部側に向けて、ばねワッシャ、第1平ワッシャ、第2平ワッシャ及び前記塑性ワッシャをこの順に有する、請求項1に記載の締結用部材。
【請求項4】
前記第2平ワッシャと前記塑性ワッシャとは隣合い、
前記塑性ワッシャは、前記第2平ワッシャの外径よりも小さい外径を有する、請求項3に記載の締結用部材。
【請求項5】
前記第1平ワッシャと前記第2平ワッシャとの摩擦係数は、前記第2平ワッシャと前記塑性ワッシャとの摩擦係数よりも低い、請求項3に記載の締結用部材。
【請求項6】
請求項1に記載の締結用部材と、前記ネジとを有する、ネジ構造。
【請求項7】
請求項6に記載のネジ構造と、前記ネジが締結される被締結部とを有する、ネジ締結構造。
【請求項8】
前記被締結部は、前記締結用部材に接触する接触面と、前記軸部を挿入される挿入穴と、前記接触面と前記挿入穴の内周面との間の面取り部とを有し、
前記塑性ワッシャは、前記ネジの締結によって、前記面取り部に押し付けられるまで塑性変形でき又はしている、請求項7に記載のネジ締結構造。
【請求項9】
前記被締結部は、前記締結用部材に接触する接触面と、前記軸部を挿入される挿入穴と、前記接触面と前記挿入穴の内周面との間の面取り部とを有し、
前記塑性ワッシャは、前記ネジの締結によって、前記面取り部に押し付けられることにより、前記塑性ワッシャの前記内周面が前記軸部に押し付けられるまで塑性変形でき又はしている、請求項7に記載のネジ締結構造。
【請求項10】
前記面取り部はC面取り部である、請求項8に記載のネジ締結構造。
【請求項11】
前記軸部に対する直交面に対する前記面取り部としての前記C面取り部の傾斜角度は、30°以上60°以下である、請求項10に記載のネジ締結構造。
【請求項12】
請求項7に記載のネジ締結構造を有する医療機器。
【請求項13】
ネジ締結構造の締結方法であって、
前記ネジ締結構造は、ネジ構造と、前記ネジが締結される被締結部とを有し、
前記ネジ構造は、締結用部材と、前記ネジとを有し、
前記締結用部材は、頭部と軸部とを有するネジを締結するためのものであって塑性ワッシャを有し、
前記ネジの締結によって、前記塑性ワッシャを前記塑性ワッシャの内周面が前記軸部に押し付けられるまで塑性変形させる締結ステップを有する、ネジ締結構造の締結方法。
【請求項14】
前記被締結部は、前記締結用部材に接触する接触面と、前記軸部を挿入される挿入穴と、前記接触面と前記挿入穴の内周面との間の面取り部とを有し、
前記締結ステップにおいて、前記ネジの締結によって前記塑性ワッシャを前記面取り部に押し付けられるまで塑性変形させる、請求項13に記載のネジ締結構造の締結方法。
【請求項15】
前記被締結部は、前記締結用部材に接触する接触面と、前記軸部を挿入される挿入穴と、前記接触面と前記挿入穴の内周面との間の面取り部とを有し、
前記締結ステップにおいて、前記ネジの締結によって前記塑性ワッシャを、前記面取り部に押し付けることにより、前記塑性ワッシャの前記内周面が前記軸部に押し付けられるまで塑性変形させる、請求項13に記載のネジ締結構造の締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は締結用部材、ネジ構造、ネジ締結構造及びネジ締結構造の締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネジを締結するための締結用部材が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6274551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような締結用部材は、締結した状態から一旦取り外して再締結することがある。その際に、締結用部材がネジから分離してしまうと、再締結に手間がかかる。また、上記のような締結用部材はシール性が要求される場合がある。
【0005】
そこで本開示の目的は、再締結が容易でシール性に優れる、締結用部材、ネジ構造、ネジ締結構造及びネジ締結構造の締結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は以下のとおりである。
【0007】
[1]
頭部と軸部とを有するネジを締結するための締結用部材であって、
塑性ワッシャを有し、
前記塑性ワッシャは、前記ネジの締結により前記塑性ワッシャの内周面が前記軸部に押し付けられるまで塑性変形でき又はしている、締結用部材。
【0008】
[2]
前記塑性ワッシャは、前記ネジの締結により前記塑性ワッシャの内周面が前記軸部のネジ山に押し付けられるまで塑性変形でき又はしている、[1]に記載の締結用部材。
【0009】
[3]
前記頭部側から前記軸部側に向けて、ばねワッシャ、第1平ワッシャ、第2平ワッシャ及び前記塑性ワッシャをこの順に有する、[1]又は[2]に記載の締結用部材。
【0010】
[4]
前記第2平ワッシャと前記塑性ワッシャとは隣合い、
前記塑性ワッシャは、前記第2平ワッシャの外径よりも小さい外径を有する、[3]に記載の締結用部材。
【0011】
[5]
前記第1平ワッシャと前記第2平ワッシャとの摩擦係数は、前記第2平ワッシャと前記塑性ワッシャとの摩擦係数よりも低い、[3]又は[4]に記載の締結用部材。
【0012】
[6]
[1]~[5]の何れか1項に記載の締結用部材と、前記ネジとを有する、ネジ構造。
【0013】
[7]
[6]に記載のネジ構造と、前記ネジが締結される被締結部とを有する、ネジ締結構造。
【0014】
[8]
前記被締結部は、前記締結用部材に接触する接触面と、前記軸部を挿入される挿入穴と、前記接触面と前記挿入穴の内周面との間の面取り部とを有し、
前記塑性ワッシャは、前記ネジの締結によって、前記面取り部に押し付けられるまで塑性変形でき又はしている、[7]に記載のネジ締結構造。
【0015】
[9]
前記被締結部は、前記締結用部材に接触する接触面と、前記軸部を挿入される挿入穴と、前記接触面と前記挿入穴の内周面との間の面取り部とを有し、
前記塑性ワッシャは、前記ネジの締結によって、前記面取り部に押し付けられることにより、前記塑性ワッシャの前記内周面が前記軸部に押し付けられるまで塑性変形でき又はしている、[7]又は[8]に記載のネジ締結構造。
【0016】
[10]
前記面取り部はC面取り部である、[8]又は[9]に記載のネジ締結構造。
【0017】
[11]
前記軸部に対する直交面に対する前記面取り部としての前記C面取り部の傾斜角度は、30°以上60°以下である、[10]に記載のネジ締結構造。
【0018】
[12]
[7]~[11]の何れか1項に記載のネジ締結構造を有する医療機器。
【0019】
[13]
ネジ締結構造の締結方法であって、
前記ネジ締結構造は、ネジ構造と、前記ネジが締結される被締結部とを有し、
前記ネジ構造は、締結用部材と、前記ネジとを有し、
前記締結用部材は、頭部と軸部とを有するネジを締結するためのものであって塑性ワッシャを有し、
前記ネジの締結によって、前記塑性ワッシャを前記塑性ワッシャの内周面が前記軸部に押し付けられるまで塑性変形させる締結ステップを有する、ネジ締結構造の締結方法。
【0020】
[14]
前記被締結部は、前記締結用部材に接触する接触面と、前記軸部を挿入される挿入穴と、前記接触面と前記挿入穴の内周面との間の面取り部とを有し、
前記締結ステップにおいて、前記ネジの締結によって前記塑性ワッシャを前記面取り部に押し付けられるまで塑性変形させる、[13]に記載のネジ締結構造の締結方法。
【0021】
[15]
前記被締結部は、前記締結用部材に接触する接触面と、前記軸部を挿入される挿入穴と、前記接触面と前記挿入穴の内周面との間の面取り部とを有し、
前記締結ステップにおいて、前記ネジの締結によって前記塑性ワッシャを、前記面取り部に押し付けることにより、前記塑性ワッシャの前記内周面が前記軸部に押し付けられるまで塑性変形させる、[13]又は[14]に記載のネジ締結構造の締結方法。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、再締結が容易でシール性に優れる、締結用部材、ネジ構造、ネジ締結構造及びネジ締結構造の締結方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の一実施形態のネジ構造を示す一部断面外観図である。
図2図1に示すネジ構造を有する本発明の一実施形態のネジ締結構造を示す断面図である。
図3】面取り部の傾斜角度が45°である場合の、面取り部による軸部側への押し付け効果を説明するための説明図である。
図4】面取り部の傾斜角度が30°である場合の、面取り部による軸部側への押し付け効果を説明するための説明図である。
図5】面取り部の傾斜角度が60°である場合の、面取り部による軸部側への押し付け効果を説明するための説明図である。
図6】面取り部の傾斜角度と、面取り部による軸部側への押し付け効果との関係を示すシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本開示の実施形態を例示説明する。
【0025】
図1に示すように、本開示の一実施形態において、締結用部材1は、頭部2aと軸部2bとを有するネジ2を締結するための締結用部材1であって、塑性ワッシャ1aを有し、塑性ワッシャ1aは、ネジ2の締結により塑性ワッシャ1aの内周面1a1が軸部2bに押し付けられるまで塑性変形できる。本実施形態の締結用部材1は、図1に示す状態から、ネジ2の締結により、塑性ワッシャ1aの内周面1a1が軸部2bに押し付けられるまで塑性変形している図2に示す状態にできる。つまり、図2に示す締結用部材1は、ネジ2の締結により塑性ワッシャ1aの内周面1a1が軸部2bに押し付けられるまで塑性変形している。
【0026】
上記構成によれば、ネジ2の締結により塑性ワッシャ1aの内周面1a1が軸部2bに押し付けられるまで塑性変形することで、塑性ワッシャ1aが軸部2bに保持される。したがって、再締結が容易でシール性に優れる締結用部材1を実現できる。塑性ワッシャ1aは、例えば、塑性変形できる樹脂で形成できる。そのような樹脂としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)若しくはETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系樹脂を含む軟質樹脂が挙げられる。なお大きな締結力が実行可能な場合や、高温下での操作を行う場合、後述する被締結部5が金属等の硬質な材料である場合には、前述した軟質樹脂に限定されず、締結実施条件下でその他の塑性変形可能な樹脂が選択可能である。この場合、条件に応じて、POM(ポリオキシメチレン)等が適宜使用可能である。
【0027】
前述のように、塑性ワッシャ1aは、ネジ2の締結により塑性ワッシャ1aの内周面1a1が軸部2bに押し付けられるまで塑性変形でき又はしている。塑性ワッシャ1aの内周面1a1が押し付けられる部分は、軸部2bのうち、ネジ山2b1であっても、ネジ山2b1が切られていない非ネジ部2b2であっても、ネジ山2b1と非ネジ部2b2との両方からなる部分であってもよい。図1図2に示す本実施形態では、塑性ワッシャ1aの内周面1a1が押し付けられる部分がネジ山2b1であり、塑性ワッシャ1aが、ネジ2の締結により塑性ワッシャ1aの内周面1a1が軸部2bのネジ山2b1に押し付けられるまで塑性変形でき又はしている。しかし、塑性ワッシャ1aの内周面1a1が押し付けられる部分がネジ山2b1と非ネジ部2b2との両方からなる部分であり、塑性ワッシャ1aが、ネジ2の締結により塑性ワッシャ1aの内周面1a1が軸部2bのネジ山2b1に押し付けられるまで塑性変形でき又はしている構成としてもよい。何れにしても、塑性ワッシャ1aが、ネジ2の締結により塑性ワッシャ1aの内周面1a1が軸部2bのネジ山2b1に押し付けられるまで塑性変形でき又はしている構成によれば、軸部2bのネジ山2b1に押し付けられるまで塑性変形することで、塑性ワッシャ1aがネジ山2b1に食い込むことができるので、塑性ワッシャ1aを軸部2bにより良好に保持できる。ネジ山2b1以外の構成によって保持力を向上させる構成としては、塑性ワッシャ1aが塑性変形しやすい樹脂を選択する、塑性ワッシャ1aの厚さを厚くする、締結用部材1が後述するばねワッシャ1b、第1平ワッシャ1c及び第2平ワッシャ1dを有する場合には、ばねワッシャ1b、第1平ワッシャ1c及び第2平ワッシャ1dを軽量化する、軸部2b上に塑性ワッシャ1aが接触可能なネジ山2b1以外の凹凸を設ける等がある。これらの構成は、非ネジ部2b2に塑性ワッシャ1aの内周面1a1が押し付けられる構成とする場合に好適である。このように、ネジ2を締結することにより、軸部2bにばねワッシャ1b、第1平ワッシャ1c、第2平ワッシャ1d及び塑性ワッシャ1aが保持された後述するネジ構造3を形成できる。
【0028】
締結用部材1は、頭部2a側から軸部2b側に向けて、ばねワッシャ1b、第1平ワッシャ1c、第2平ワッシャ1d及び塑性ワッシャ1aをこの順に有する。上記構成によれば、ばねワッシャ1bによってネジ2の緩みを抑制でき、第1平ワッシャ1cによって、ばねワッシャ1bから塑性ワッシャ1aに向かう弾性力を均一化でき、適切な硬度及び形状に設定された第2平ワッシャ1dによって、塑性ワッシャ1aを効率的に塑性変形させることができる。つまり、第1平ワッシャ1cとは別に第2平ワッシャ1dを設けることで、塑性ワッシャ1aに隣接する部分を、塑性ワッシャ1aを効率的に塑性変形させるのに適した硬度及び形状にすることができる。またこのとき、第1平ワッシャ1cと第2平ワッシャ1dとの摩擦係数が第2平ワッシャ1dと塑性ワッシャ1aとの摩擦係数よりも低く、第1平ワッシャ1cと第2平ワッシャ1dとの間の円滑性が高いほど、第2平ワッシャ1dが塑性ワッシャ1aを効率的に塑性変形させることができるので、後述するように、第1平ワッシャ1cと第2平ワッシャ1dとの摩擦係数が第2平ワッシャ1dと塑性ワッシャ1aとの摩擦係数よりも低い構成とすることが好ましい。また、塑性ワッシャ1aが軸部2bに保持されることにより、ばねワッシャ1b、第1平ワッシャ1c及び第2平ワッシャ1dを頭部2aと塑性ワッシャ1aとによってネジ2に保持できる後述するネジ構造3を形成できる。したがって、例えば何らかの理由で、ネジ2の締結後に形成されたネジ構造3を一旦後述する被締結部5から取り外した時に、ネジ2、ばねワッシャ1b、第1平ワッシャ1c、第2平ワッシャ1d及び塑性ワッシャ1aがバラバラにならないため、再度ネジ構造3を被締結部5に締結する時に、締結作業を容易にできる。ばねワッシャ1b、第1平ワッシャ1c及び第2平ワッシャ1dはそれぞれ、例えば、金属又は樹脂で形成できる。
【0029】
第2平ワッシャ1dと塑性ワッシャ1aとは隣合い、塑性ワッシャ1aは、塑性変形前又は塑性変形後の状態で、第2平ワッシャ1dの外径D2よりも小さい外径D1を有する。上記構成とは異なり、塑性ワッシャ1aが塑性変形前の状態で第2平ワッシャ1dの外径D2よりも小さい外径D1を有さない構成の場合は、被締結部5に対するネジ2の締結時の塑性ワッシャ1aの塑性変形によって第2平ワッシャ1dの外周部が食い込む等、塑性ワッシャ1aの軸部2b方向への十分量の塑性変形が誘導されにくく、ネジ構造3の形成不良等が発生する虞がある。また、このとき塑性ワッシャ1aの外周部に段差が生じる虞がある。これに対し、塑性ワッシャ1aが塑性変形前の状態で第2平ワッシャ1dの外径D2よりも小さい外径D1を有する構成の場合は、上記のようなネジ構造3の形成不良及び段差の発生を抑制できる。また、塑性ワッシャ1aが塑性変形後の状態で第2平ワッシャ1dの外径D2よりも小さい外径D1を有する構成の場合は、上記のような段差がないため、上記のようなネジ構造3の形成不良及び段差の発生の虞がない。本実施形態のネジ構造3とは異なり、被締結部5からネジ構造3を分離した後、ネジ2、ばねワッシャ1b、第1平ワッシャ1c、第2平ワッシャ1d及び塑性ワッシャ1aがバラバラになる場合、再締結時に、塑性ワッシャ1aの外周部に段差があると、再使用時に第2平ワッシャ1dが塑性ワッシャ1aに乗り上げる虞がある。このような乗り上げが生じると、締結が不安定になりシール性に影響を及ぼす虞がある。しかし、本実施形態のネジ構造3は、塑性ワッシャ1aによりばねワッシャ1b、第1平ワッシャ1c、第2平ワッシャ1dがネジ2に一体化されるため、上記乗り上げが生じにくい。
【0030】
締結用部材1は、第1平ワッシャ1cと第2平ワッシャ1dとの摩擦係数は、第2平ワッシャ1dと塑性ワッシャ1aとの摩擦係数よりも低い構成としてもよい。上記構成によれば、締結時にネジ2の回転に伴い、ネジ2に対して連れ回るばねワッシャ1b及び第1平ワッシャ1cに対し、第2平ワッシャ1dが滑ることで、塑性ワッシャ1aに対する第2平ワッシャ1dの回転が抑制されるので、塑性ワッシャ1aを安定して塑性変形させることができる。
【0031】
本開示の一実施形態において、ネジ構造3は、前述した実施形態の締結用部材1と、ネジ2とを有する。上記構成によれば、再締結が容易でシール性に優れるネジ構造3を実現できる。ネジ2は、例えば、金属又は樹脂で形成できる。
【0032】
本開示の一実施形態において、ネジ締結構造4は、前述した実施形態のネジ構造3と、ネジ2が締結される被締結部5とを有する。上記構成によれば、再締結が容易でシール性に優れるネジ締結構造4を実現できる。被締結部5は、例えば、金属又は樹脂で形成できる。
【0033】
被締結部5は、締結用部材1に接触する接触面5aと、軸部2bを挿入される挿入穴5bと、接触面5aと挿入穴5bの内周面5b1との間の面取り部5cとを有し、塑性ワッシャ1aは、ネジ2の締結によって、面取り部5cに押し付けられるまで塑性変形でき又はしている。上記構成によれば、軸部2bを挿入穴5bに挿入し、ネジ2を被締結部5に締結することで、締結用部材1を頭部2aと接触面5aとによって挟み込んで圧縮し、塑性変形させることができる。また、塑性ワッシャ1aが面取り部5cに押し付けられるまで塑性変形することにより、径方向外側への塑性ワッシャ1aの変形が面取り部5cによるアンカー効果によって抑制される。したがって、第2平ワッシャ1dの外周部が食い込むことにより塑性ワッシャ1aの外周部に段差が生じることを抑制でき、その結果、上記段差の発生によるシール性の低下を抑制できる。また、塑性ワッシャ1aが面取り部5cに篏合できる形状にでき又はなっているので、ネジ2の締結後に一旦ネジ2を取り外し、再度ネジ2を被締結部5に締結する時に、被締結部5への位置決めを容易にできる。
【0034】
被締結部5は、締結用部材1に接触する接触面5aと、軸部2bを挿入される挿入穴5bと、接触面5aと挿入穴5bの内周面5b1との間の面取り部5cとを有し、塑性ワッシャ1aは、ネジ2の締結によって、面取り部5cに押し付けられることにより、塑性ワッシャ1aの内周面1a1が軸部2bに押し付けられるまで塑性変形でき又はしている。上記構成によれば、軸部2bを挿入穴5bに挿入し、ネジ2を被締結部5に締結することで、締結用部材1を頭部2aと接触面5aとによって挟み込んで圧縮し、塑性変形させることができる。また、面取り部5cによって塑性変形の方向を軸部2bに向かう方向に誘導する押し付け効果を得ることができるので、塑性ワッシャ1aを軸部2bに押し付けられるまで塑性変形させ易くできるため、塑性ワッシャ1aを軸部2bに良好に保持できる。
【0035】
面取り部5cはC面取り部である。上記構成によれば、簡単な構成により面取り部5cを実現できる。なお、面取り部5cはC面取り部に限らず、例えばR面取り部等であってもよい。
【0036】
軸部2bに対する直交面に対する面取り部5cとしてのC面取り部の傾斜角度θは、30°以上60°以下である。上記構成によれば、上記押し付け効果を効率的に得ることができるので、塑性ワッシャ1aを軸部2bにより一層良好に保持できる。
【0037】
図3図5は、面取り部5cの傾斜角度θが45°、30°又は60°である場合の、面取り部5cによる軸部2b側への押し付け効果を説明するための説明図である。図6は、面取り部5cの傾斜角度θと、面取り部5cによる軸部2b側への押し付け効果との関係を示すシミュレーション結果である。図3に示す荷重F1は、ネジ2の締結によって、塑性変形して面取り部5cに押し付けられる締結用部材1から面取り部5cに対して作用する荷重であり、荷重F2は、荷重F1における面取り部5cに対する垂直方向成分をさらに軸部2bの軸方向成分と径方向成分に分けた場合の径方向成分に相当する。したがって、面取り部5cによる垂直抗力の径方向成分すなわち軸部2bの径方向内側への押し付け力は、荷重F2に対して反対向き且つ同等の大きさとなる。つまり、荷重F2/荷重F1が大きいほど、効率的に押し付け効果が得られるといえる。図6の結果から、面取り部5cの傾斜角度θは、30°以上60°以下が好ましく、45°が最も好ましいことがわかる。
【0038】
本開示の一実施形態において、医療機器6は、前述した実施形態のネジ締結構造4を有する。上記構成によれば、再締結が容易でシール性に優れるネジ締結構造4を有する医療機器6を実現できる。医療機器6は、例えば、輸液ポンプ、シリンジポンプ、インスリンポンプ等の各種ポンプ、血中酸素計、血糖計、活動量計、人工呼吸器、除細動器等である。
【0039】
本開示の一実施形態において、電子機器7は、前述した実施形態のネジ締結構造4を有する。上記構成によれば、再締結が容易でシール性に優れるネジ締結構造4を有する電子機器7を実現できる。本実施形態の電子機器7は、前述した実施形態の医療機器6である。しかし、電子機器7の種類は、前述した実施形態のネジ締結構造4を有するものであれば特に限定されず、例えば、PC関連機器、各種リモコン、ゲーム機、切削用機器、組立用機器等であってもよく、家庭用又は工業用の何れであってもよい。なお、電子機器7は再締結が容易でシール性に優れるネジ締結構造4を有することから、電子機器7が浸水可能性がある場合に特に適する。
【0040】
本開示の一実施形態において、ネジ締結構造4の締結方法は、ネジ締結構造4が、ネジ構造3と、ネジ2が締結される被締結部5とを有し、ネジ構造3が、締結用部材1と、ネジ2とを有し、締結用部材1が、頭部2aと軸部2bとを有するネジ2を締結するためのものであって塑性ワッシャ1aを有し、ネジ2の締結によって、塑性ワッシャ1aを塑性ワッシャ1aの内周面1a1が軸部2bに押し付けられるまで塑性変形させる締結ステップを有する。
【0041】
上記構成によれば、締結ステップにおいて、ネジ2の締結により塑性ワッシャ1aの内周面1a1が軸部2bに押し付けられるまで塑性変形することで、塑性ワッシャ1aが軸部2bに保持される。したがって、再締結が容易でシール性に優れるネジ締結構造4の締結方法を実現できる。
【0042】
ネジ締結構造4の締結方法は、被締結部5が、締結用部材1に接触する接触面5aと、軸部2bを挿入される挿入穴5bと、接触面5aと挿入穴5bの内周面5b1との間の面取り部5cとを有し、ネジ締結構造4の締結方法が、締結ステップにおいて、ネジ2の締結によって塑性ワッシャ1aを面取り部5cに押し付けられるまで塑性変形させる。上記構成によれば、締結ステップにおいて、塑性ワッシャ1aが面取り部5cに押し付けられるまで塑性変形することにより、径方向外側への塑性ワッシャ1aの変形が面取り部5cによるアンカー効果によって抑制される。また、締結ステップにより、塑性ワッシャ1aが面取り部5cに篏合できる形状にできるので、ネジ2の締結後に形成されたネジ構造3を一旦被締結部5から取り外し、再度ネジ構造3を被締結部5に締結する時に、被締結部5への位置決めを容易にできる。
【0043】
ネジ締結構造4の締結方法は、被締結部5が、締結用部材1に接触する接触面5aと、軸部2bを挿入される挿入穴5bと、接触面5aと挿入穴5bの内周面5b1との間の面取り部5cとを有し、ネジ締結構造4の締結方法が、締結ステップにおいて、ネジ2の締結によって塑性ワッシャ1aを、面取り部5cに押し付けることにより、塑性ワッシャ1aの内周面1a1が軸部2bに押し付けられるまで塑性変形させる。上記構成によれば、締結ステップにおいて、面取り部5cによって塑性変形の方向を軸部2bに向かう方向に誘導する押し付け効果を得ることができるので、塑性ワッシャ1aを軸部2bに押し付けられるまで塑性変形させ易くできるため、塑性ワッシャ1aを軸部2bに良好に保持できる。
【0044】
ネジ締結構造4の締結方法は、より具体的には、前述した実施形態のネジ締結構造4を用いる。
【0045】
本開示は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 締結用部材
1a 塑性ワッシャ
1a1 内周面
1b ばねワッシャ
1c 第1平ワッシャ
1d 第2平ワッシャ
2 ネジ
2a 頭部
2b 軸部
2b1 ネジ山
2b2 非ネジ部
3 ネジ構造
4 ネジ締結構造
5 被締結部
5a 接触面
5b 挿入穴
5b1 内周面
5c 面取り部
6 医療機器
7 電子機器
D1 塑性ワッシャの外径
D2 第2平ワッシャの外径
F1、F2 荷重
θ 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6