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特開2024-179257リサイクル方法、及び該方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー又はポリカーボネート樹脂を含む組成物
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  • 特開-リサイクル方法、及び該方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー又はポリカーボネート樹脂を含む組成物 図1
  • 特開-リサイクル方法、及び該方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー又はポリカーボネート樹脂を含む組成物 図2
  • 特開-リサイクル方法、及び該方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー又はポリカーボネート樹脂を含む組成物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179257
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】リサイクル方法、及び該方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー又はポリカーボネート樹脂を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20241219BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
C08L33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097966
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】西見 穂香
(72)【発明者】
【氏名】浴中 達矢
(72)【発明者】
【氏名】稲田 達
【テーマコード(参考)】
4F401
4J002
【Fターム(参考)】
4F401AA17
4F401AA23
4F401AD01
4F401CA32
4F401CA46
4F401CA58
4F401EA46
4F401EA59
4F401EA70
4J002BG051
4J002GH00
4J002HA05
(57)【要約】
【課題】(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層を含む積層体から、両層を構成する樹脂をそれぞれ純度よく得ることができるリサイクル方法、及び該方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー又はポリカーボネート樹脂を含む組成物を提供する。
【解決手段】本開示のリサイクル方法は、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層 及びポリカーボネート樹脂層を含む共押出積層体に水及び脂肪族アルコールを含む混合液を適用して前記共押出積層体から前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を溶解させ、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液と、ポリカーボネート樹脂層とを得ることを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層を含む共押出積層体に水及び脂肪族アルコールを含む混合液を適用して前記共押出積層体から前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を溶解させ、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液と、ポリカーボネート樹脂層とを得ることを含む、リサイクル方法。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層における前記ポリカーボネート樹脂層の反対側の面に他の層が積層されている、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項3】
前記他の層が、オーバーコート層である、請求項2に記載のリサイクル方法。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層が、ポリメチルメタクリレート樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項5】
前記脂肪族アルコールの炭素原子数が、1~6である、請求項1~3のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液を留去及び乾燥させて、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを得ることをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項7】
前記共押出積層体から前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を除去して得られた前記ポリカーボネート樹脂層を溶融することをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項8】
前記共押出積層体から前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を除去して得られた前記ポリカーボネート樹脂層を用いて添加剤と溶融混錬することをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項9】
前記添加剤が、前記共押出積層体の前記ポリカーボネート樹脂層中に含まれる成分と、前記共押出積層体から前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を除去して得られた前記ポリカーボネート樹脂層中の成分とを比較したときに、減少している成分である、請求項8に記載のリサイクル方法。
【請求項10】
前記添加剤の配合量が、減少している成分の減少量以上である、請求項9に記載のリサイクル方法。
【請求項11】
前記添加剤の配合量が、減少している成分の減少量よりも少ない量である、請求項9に記載のリサイクル方法。
【請求項12】
前記添加剤が、リン原子を含む剤である、請求項9に記載のリサイクル方法。
【請求項13】
請求項6に記載のリサイクル方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー含有組成物。
【請求項14】
請求項7に記載のリサイクル方法によって得られたポリカーボネート樹脂を含む、ポリカーボネート樹脂含有組成物。
【請求項15】
請求項8に記載のリサイクル方法によって得られたポリカーボネート樹脂及び添加剤を含む、ポリカーボネート樹脂含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リサイクル方法、及び該方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー又はポリカーボネート樹脂を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、ポリカーボネート樹脂で構成される成形品の表面にハードコート層など適用する技術、或いは、プラスチック成形品に適用した層を除去してプラスチック成形品をリサイクルする技術などが種々開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂成形品に紫外線硬化型塗料をトップコートしてポリカーボネート樹脂成形品の表面を硬化する方法において、該ポリカーボネート樹脂成形品として、予め、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートからなる群から選ばれたモノマーから得られるポリマー、コポリマー又はこれらの混合物を有機溶剤に溶解したプライマー塗料を下塗りした成形品を使用する、ポリカーボネート樹脂成形品の表面硬化法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、プラスチック成形品の表面から塗膜を剥離液にて剥離除去した後、プラスチック成形品を再利用するプラスチック成形品のリサイクル方法であって、塗膜が熱可塑性樹脂バインダーを含有し、剥離液が、低級アルコール又は低級アルコール-水の混合溶媒に、低級アルコールを除く他の有機溶媒、有機酸及び界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の剥離促進剤を加えたものである、プラスチック成形品のリサイクル方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-143448号公報
【特許文献2】特開2005-046770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1にも記載されるように、ポリカーボネート樹脂から構成される成形品などの表面に対し、種々の樹脂層が適用されるが、かかる樹脂層は、典型的にはコーティングによって適用される。
【0007】
しかし、コーティングによる方法は、一般的に溶剤を使用するため、ポリカーボネート樹脂層に対してコーティングを実施すると、ポリカーボネート樹脂層の表面が溶剤によって溶解するため、ポリカーボネート樹脂層とコーティング層との間に両者の樹脂成分が混合した中間層が形成される。その結果、ポリカーボネート樹脂層、又は適用したコーティング層を分離して得られた各樹脂成分をリサイクルしようと試みたとき、形成された中間層中の混合樹脂成分が、得られた各樹脂成分に混ざってしまうため、ポリカーボネート樹脂層及び適用したコーティング層から各層を構成する樹脂成分を純度よく得ることは難しかった。
【0008】
したがって、本開示の目的は、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層を含む積層体から、両層を構成する樹脂成分をそれぞれ純度よく得ることができるリサイクル方法、及び該方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー又はポリカーボネート樹脂を含む組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〈態様1〉
(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層を含む共押出積層体に水及び脂肪族アルコールを含む混合液を適用して前記共押出積層体から前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を溶解させ、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液と、ポリカーボネート樹脂層とを得ることを含む、リサイクル方法。
〈態様2〉
前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層における前記ポリカーボネート樹脂層の反対側の面に他の層が積層されている、態様1に記載のリサイクル方法。
〈態様3〉
前記他の層が、オーバーコート層である、態様2に記載のリサイクル方法。
〈態様4〉
前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層が、ポリメチルメタクリレート樹脂を含む、態様1~3のいずれかに記載のリサイクル方法。
〈態様5〉
前記脂肪族アルコールの炭素原子数が、1~6である、態様1~4のいずれかに記載のリサイクル方法。
〈態様6〉
前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液を留去及び乾燥させて、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを得ることをさらに含む、態様1~5のいずれかに記載のリサイクル方法。
〈態様7〉
前記共押出積層体から前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を除去して得られた前記ポリカーボネート樹脂層を溶融することをさらに含む、態様1~6のいずれかに記載のリサイクル方法。
〈態様8〉
前記共押出積層体から前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を除去して得られた前記ポリカーボネート樹脂層を用いて添加剤と溶融混錬することをさらに含む、態様1~6のいずれかに記載のリサイクル方法。
〈態様9〉
前記添加剤が、前記共押出積層体の前記ポリカーボネート樹脂層中に含まれる成分と、前記共押出積層体から前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を除去して得られた前記ポリカーボネート樹脂層中の成分とを比較したときに、減少している成分である、態様8に記載のリサイクル方法。
〈態様10〉
前記添加剤の配合量が、減少している成分の減少量以上である、態様9に記載のリサイクル方法。
〈態様11〉
前記添加剤の配合量が、減少している成分の減少量よりも少ない量である、態様9に記載のリサイクル方法。
〈態様12〉
前記添加剤が、リン原子を含む剤である、態様9~11のいずれかに記載のリサイクル方法。
〈態様13〉
態様6に記載のリサイクル方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー含有組成物。
〈態様14〉
態様7に記載のリサイクル方法によって得られたポリカーボネート樹脂を含む、ポリカーボネート樹脂含有組成物。
〈態様15〉
態様8~12のいずれかに記載のリサイクル方法によって得られたポリカーボネート樹脂及び添加剤を含む、ポリカーボネート樹脂含有組成物。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層を含む積層体から、両層を構成する樹脂成分をそれぞれ純度よく得ることができるリサイクル方法、及び該方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー又はポリカーボネート樹脂を含む組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層を含む共押出積層体を、水及びエタノールを含む混合液に浸漬させたときの結果をまとめた図である。
図2図2は、共押出積層体から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を溶解させた後の溶液から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー(PMMA)を取得したときの写真である。
図3図3は、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層を含む共押出積層体の(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層に対してオーバーコート層を適用した積層体を、水及びエタノールを含む混合液に浸漬させたときの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0013】
本開示のリサイクル方法は、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層を含む共押出積層体に水及び脂肪族アルコールを含む混合液を適用して前記共押出積層体から前記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を溶解させ、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液と、ポリカーボネート樹脂層とを得ることを含む。
【0014】
原理によって限定されるものではないが、本開示のリサイクル方法が、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層を含む積層体から、両層を構成する樹脂成分をそれぞれ純度よく得ることができる作用原理は以下のとおりであると考える。
【0015】
本開示のリサイクル方法では、ポリカーボネート樹脂層に対し、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層をコーティングによって適用した積層体を用いるのではなく、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を共押出法によって適用した積層体を用いている。共押出法による積層体は、コーティング法による積層体とは異なり、溶剤を用いないため、ポリカーボネート樹脂層と(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層との界面においてそれらの成分が混合された中間層(単に「混合層」と称する場合がある。)が形成されにくいと考えている。そして、かかる積層体のうちの(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層のみが、水及び脂肪族アルコールを含む混合液に溶解するため、混合層が形成されるコーティングによる積層体に比べ、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層をより厳密に分離することができ、その結果、両層を構成する樹脂成分をそれぞれ純度よく得ることができると考えている。
【0016】
また、いくつかの実施形態において、本開示のリサイクル方法は、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層を含む共押出積層体の(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層の表面にオーバーコート層(例えばハードコート層)などを適用した積層体を用いることもできる。従来の方法では、このようなオーバーコート層はポリカーボネート樹脂層の表面に直接的に適用されていた。その結果、オーバーコート層とポリカーボネート樹脂層との界面においてもそれらの樹脂成分が混合された中間層が形成されるため、両層を簡易に分離することができず、このような積層体は廃棄処分していた。本開示のリサイクル方法によれば、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層が、水及び脂肪族アルコールを含む混合液に溶解するため、オーバーコート層などが適用された共押出積層体を廃棄処分することなく、オーバーコート層とポリカーボネート樹脂層を容易に分離することができるようになったと考えている。
【0017】
本開示における用語の定義は以下のとおりである。
【0018】
本開示において「リサイクル」とは、共押出積層体から、該積層体を構成する(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層に関しては(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液の形態で入手し、ポリカーボネート樹脂層に関しては層構造の形態で入手し、それらのうちの少なくとも一方からそれらの少なくとも樹脂成分を入手し、かかる樹脂成分を再利用することを意図する。
【0019】
本開示において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0020】
《リサイクル方法》
本開示のリサイクル方法は、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層、並びに任意に追加の他の層を含む共押出積層体(単に「積層体」と称する場合がある。)を使用する。
【0021】
〈共押出積層体〉
本開示の共押出積層体は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層を含む。これら二種の層構成としては特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及びポリカーボネート樹脂層の二層構成であってもよく、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層/ポリカーボネート樹脂層/(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層、又はポリカーボネート樹脂層/(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層/ポリカーボネート樹脂層の三層構成であってもよく、或いは、四層以上の構成であってもよい。なお、本開示では、水及び脂肪族アルコールを含む混合液に溶解する層(例えば(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層)を「溶解層」と称することができ、逆に、かかる混合液に溶解しない層(例えばポリカーボネート樹脂層)を「非溶解層」と称することができる。
【0022】
本開示の共押出積層体の形状としては特に制限はなく、例えば、フィルム状、シート状、板状、曲面状、及び三次元形状などの形状を挙げることができる。
【0023】
次いで、本開示の共押出積層体を構成する各層について以下に説明する。
【0024】
((メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層)
本開示の積層体を構成する(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層としては特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを、層の樹脂成分の全量に対し、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上含む層、或いは層の樹脂成分として(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーのみからなる層を使用することができる。(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層が、他の樹脂成分を、50質量%以下、30質量%以下、又は10質量%以下の割合で含む場合、他の樹脂成分は(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーと同様に、後述する、水及び脂肪族アルコールを含む混合液に対して溶解する性能を奏する樹脂であることが好ましい。かかる他の樹脂成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーとしては、水及び脂肪族アルコールを含む混合液に溶解する性能を奏する限り特に制限はない。(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー及びメタクリル酸エステル類を含むコポリマーからなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。なかでも、水及び脂肪族アルコールを含む混合液への溶解性、及びそれに伴うリサイクル性等の観点から、アクリル酸エステル類のホモポリマー及びメタクリル酸エステル類のホモポリマーが好ましく、メタクリル酸エステル類のホモポリマーがより好ましく、ポリメタクリル酸メチル(「ポリメチルメタクリレート樹脂」と称する場合がある。)が特に好ましい。
【0027】
アクリル酸エステル類のホモポリマーとしては、例えば、アクリル酸と、アリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマー、及び、アクリル酸と、炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーが挙げられる。アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸t-ブチル、及びポリアクリル酸ベンジルが挙げられ、また、アクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸グリシジルが挙げられる。
【0028】
アクリル酸エステル類を含むコポリマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマー、アクリル酸エステル類とメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸エステル類とアクリル酸エステル類のコポリマー、アクリル酸エステル類とメタクリル酸エステル類のコポリマー、及びアクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマーが挙げられる。
【0029】
メタクリル酸エステル類のホモポリマーとしては、例えば、メタクリル酸と、アリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマー、及び、メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーが挙げられる。メタクリル酸と、アリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸t-ブチル、ポリメタクリル酸ベンジル、及びポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチルが挙げられ、また、メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーとしては、例えば、ポリメタクリル酸グリシジルが挙げられる。
【0030】
メタクリル酸エステル類を含むコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸エステル類とメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸エステル類とアクリル酸エステル類のコポリマー、メタクリル酸エステル類とメタクリル酸エステル類のコポリマー、メタクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマー等が挙げられる。メタクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸エステル類と下記式Iで表わされるモノマーのコポリマーを挙げることができる:
【化1】
【0031】
ここで、式Iにおいて、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、シアノ基、低級アルキル基、ビニルオキシ基、アリール基又はハロゲン原子で置換されたアリール基であるか;又は、RとRは、RとRが結合している二重結合と一緒になって、2,5-ジヒドロフラン-2,5-ジオンを形成し、かつ、RとRは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、シアノ基、低級アルキル基、ビニルオキシ基、アリール基又はハロゲン原子で置換されたアリール基である。
【0032】
アクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸とのコポリマー;及び、アクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸とのコポリマーが挙げられる。アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸とのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとアクリル酸のコポリマー、アクリル酸エチルとアクリル酸のコポリマー、アクリル酸ブチルとアクリル酸のコポリマー、アクリル酸t-ブチルとアクリル酸のコポリマー、及びアクリル酸ベンジルとアクリル酸のコポリマーが挙げられ、また、アクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸とのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジルとアクリル酸のコポリマーが挙げられる。
【0033】
アクリル酸エステル類とメタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とのコポリマー;及び、アクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とのコポリマーが挙げられる。アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸エチルとメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸ブチルとメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸t-ブチルとメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸ベンジルとメタクリル酸のコポリマーが挙げられ、また、アクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジルとメタクリル酸のコポリマーが挙げられる。
【0034】
アクリル酸エステル類とアクリル酸エステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマー;及びアクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;及びアクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとの別のエステル類が挙げられる。アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとアクリル酸エチルのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリル酸t-ブチルのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリル酸ベンジルのコポリマーが挙げられ、また、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとアクリル酸グリシジルのコポリマーが挙げられる。
【0035】
アクリル酸エステル類とメタクリル酸エステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;アクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;並びに、アクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;が挙げられる。
【0036】
アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルのコポリマー、アクリル酸メチルとメタクリル酸エチルのコポリマー、アクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルのコポリマー、アクリル酸メチルとメタクリル酸t-ブチルのコポリマー、アクリル酸メチルとメタクリル酸ベンジルのコポリマーが挙げられる。アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルのコポリマーが挙げられる。
【0037】
アクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマーとしては、例えば、上述したアクリル酸エステル類と上記式Iで表わされるモノマーとのコポリマーが挙げられる。上述したアクリル酸エステル類と上記式Iで表わされるモノマーとのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、式Iで表わされるモノマーのコポリマー;並びにアクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、式Iで表わされるモノマーのコポリマーが挙げられる。
【0038】
アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、上記式Iで表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルと無水マレイン酸のコポリマー、アクリル酸エチルと塩化ビニルのコポリマー、アクリル酸ブチルとビニルエーテルのコポリマー、アクリル酸t-ブチルと無水マレイン酸のコポリマー、アクリル酸ベンジルと塩化ビニルのコポリマー、アクリル酸メチルとスチレンのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリロニトリルのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリルアミドのコポリマーが挙げられる。アクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、式Iで表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジルとビニルエーテルのコポリマーが挙げられる。
【0039】
メタクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマー;並びに、メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーが挙げられる。メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸エチルとアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸ブチルとアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸t-ブチルとアクリル酸のコポリマー、及びメタクリル酸ベンジルとアクリル酸のコポリマーが挙げられる。メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジルとアクリル酸のコポリマーが挙げられる。
【0040】
メタクリル酸エステル類とメタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマー;並びに、メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーが挙げられる。メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸エチルとメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸t-ブチルとメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸ベンジルとメタクリル酸のコポリマーが挙げられる。メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジルとメタクリル酸のコポリマーが挙げられる。
【0041】
メタクリル酸エステル類とメタクリル酸エステル類のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマー;メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;並びに、メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマー;が挙げられる。
【0042】
メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸エチルのコポリマー、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルのコポリマー、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸ベンジルのコポリマーが挙げられる。メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルのコポリマーが挙げられる。
【0043】
メタクリル酸エステル類と上記式Iで表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、式Iで表わされるモノマーのコポリマー;並びに、メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、式Iで表わされるモノマーのコポリマーが挙げられる。
【0044】
メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい炭素原子数1~6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、上記式Iで表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルと無水マレイン酸のコポリマー、メタクリル酸エチルと塩化ビニルのコポリマー、メタクリル酸ブチルとビニルエーテルのコポリマー、メタクリル酸t-ブチルと無水マレイン酸のコポリマー、メタクリル酸ベンジルと塩化ビニルのコポリマー、メタクリル酸メチルとスチレンのコポリマー、メタクリル酸メチルとアクリロニトリルのコポリマー、メタクリル酸メチルとアクリルアミドのコポリマー、メタクリル酸メチルと4-クロロメチルスチレンのコポリマーが挙げられる。メタクリル酸と炭素原子数2~6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、式Iで表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジルとビニルエーテルのコポリマー等が挙げられる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを製造するときの重合法としては特に制限はなく、例えば、ラジカル重合法、及びイオン重合法を採用することができる。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーがコポリマーの場合、構成する各モノマー単位の組成比は限定されず、例えば、そのポリマーの、水及び脂肪族アルコールを含む混合液に対する溶解性等を考慮して適宜設定することができる。コポリマーのモノマー配列は、ランダム型であてもよく、ブロック型であってもよい。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーの分子量としては特に制限はなく、例えば、水及び脂肪族アルコールを含む混合液に対する溶解性の観点から、数平均分子量としては、1,000以上、2,000以上、又は3,000以上、100,000,000以下、50,000,000以下、又は20,000,000以下とすることができ、また、重量平均分子量としては、1,000以上、2,000以上、又は3,000以上、150,000,000以下、80,000,000以下、又は40,000,000以下とすることができる。本開示における数平均分子量及び重量平均分子量は、標準ポリスチレンを基準としたゲル浸透クロマトグラフィー法により測定することができる。
【0048】
本開示の(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーは、本開示の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、各種成分を適宜配合することができる。このような任意成分としては、例えば、光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤、補強剤、無機及び有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤、衝撃改質剤、染料、顔料を挙げることができる。任意成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層の厚さとしては特に制限はなく、積層体の使用用途等に応じて適宜設定することができる。かかる厚さとしては、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上、7μm以上、又は10μm以上とすることができる。厚さの上限値としては特に制限はなく、例えば、500μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、70μm以下、50μm以下、30μm以下、20μm以下、又は10μm以下とすることができる。(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層のような溶解層の厚さは、本開示のリサイクル方法を短時間に効率的に実施する観点から、非溶解層の厚さよりも薄いことが好ましい。本開示の積層体を構成する各層の厚さは、光学顕微鏡若しくは走査型電子顕微鏡を使用して積層構成の厚さ方向断面を測定し、積層構成のうちの目的とする層、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層における任意の少なくとも5箇所の厚さの平均値として定義することができる。
【0050】
(ポリカーボネート樹脂層)
ポリカーボネート樹脂層としては特に制限はなく、例えば、ポリカーボネート樹脂を、層の樹脂成分の全量に対し、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上含む層、或いは層の樹脂成分としてポリカーボネート樹脂のみからなる層を使用することができる。ポリカーボネート樹脂層が、他の樹脂成分を、50質量%以下、30質量%以下、又は10質量%以下の割合で含む場合、他の樹脂成分はポリカーボネート樹脂と同様に、後述する、水及び脂肪族アルコールを含む混合液に対して溶解しない性能を奏する樹脂であることが好ましい。かかる他の樹脂成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0051】
ポリカーボネート樹脂としては特に制限はなく、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂を挙げることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、二価フェノールとカーボネート前駆体を反応させて得ることができる。かかる反応の方法としては、例えば、界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、及び、環状カーボネート化合物の開環重合法を挙げることができる。ポリカーボネート樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0052】
二価フェノールとして特に制限はなく、具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル)フェニル}メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(3-イソプロピル-4-ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-フェニル)フェニル}プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルブタン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}フルオレン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-o-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、及び4,4’-ジヒドロキシジフェニルエステルが挙げられる。二価フェノールは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0053】
二価フェノールのうち、ビスフェノールA、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、及びα,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体又は共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパン、又は、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼンとの共重合体がより好ましく使用される。
【0054】
カーボネート前駆体としては、例えば、カルボニルハライド、カーボネートエステル、及び、ハロホルメートが挙げられ、具体的には、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、及び二価フェノールのジハロホルメートが挙げられる。
【0055】
界面重縮合法及びエステル交換法によるポリカーボネート樹脂の合成方法ついて以下に簡単に説明するが、ポリカーボネート樹脂の合成方法はこの方法に限定されない。
【0056】
カーボネート前駆体としてホスゲンを用いる界面重縮合法では、一般に、酸結合剤及び有機溶媒の存在下において、二価フェノール成分とホスゲンとの反応を行う。酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、又は、ピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。反応促進のために、例えば、第三級アミン、第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量調節剤として、例えばフェノール、p-tert-ブチルフェノールのようなアルキル置換フェノール等の末端停止剤を用いることもできる。
【0057】
反応温度としては、例えば0℃~40℃の範囲で適宜設定することができ、反応時間としては、例えば10分~5時間の範囲で適宜設定することができ、反応中のpHとしては、例えば10以上の範囲で適宜設定することができる。
【0058】
カーボネート前駆体として炭酸ジエステルを用いるエステル交換法(溶融法)は、不活性ガスの存在下に所定割合の二価フェノール成分と炭酸ジエステルとを加熱しながら撹拌し、生成するアルコール又はフェノール類を留出させる方法である。
【0059】
反応温度は生成するアルコール又はフェノール類の沸点により異なるが、例えば120℃~350℃の範囲で適宜設定することができる。反応方法は、反応の初期から減圧にして、生成するアルコール又はフェノール類を留出させながら反応させる方法を好適に用いることができる。
【0060】
反応を促進するために、エステル交換反応触媒を用いることができる。このエステル交換反応に用いる炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジブチルカーボネートが挙げられ、特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0061】
いくつかの実施形態において、ポリカーボネート樹脂層に含まれるポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量が17,000以上又は20,000以上、40,000以下又は30,000以下のポリカーボネート樹脂を使用することができる。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量がこのような範囲であると、得られる積層体は、十分な強度及び良好な溶融流動性を有するため、耐候性、耐沸性及び耐摩耗性を向上させることができ、なかでも耐候性を好適に向上させることができる。粘度平均分子量はポリカーボネート樹脂が2種以上の混合物の場合は混合物全体での分子量を表す。ここで、粘度平均分子量とは、塩化メチレン100mLにポリカーボネート0.7gを溶解した溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式a及びbから粘度平均分子量(M)を算出したものである:
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c …式a
[η]=1.23×10-40.83 …式b
(但し、c=0.7g/dL、[η]は極限粘度である。)
【0062】
いくつかの実施形態において、ポリカーボネート樹脂層は、上述した粘度平均分子量が17,000~40,000以外のポリカーボネート樹脂、及び、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含んでもよい。粘度平均分子量が17,000~40,000以外のポリカーボネート樹脂は、基材の樹脂成分の全量に対し、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、又は100質量%とすることができる。
【0063】
本開示におけるポリカーボネート樹脂層には、透明性等を損なわない範囲で、該ポリカーボネート樹脂と相溶し得る他のポリマーが含まれていてもよい。かかる他のポリマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。特に、後述するポリエステル系熱可塑性エラストマーは、透明性及び熱成形性の観点から好ましく、また、ポリカーボネート樹脂層のガラス転移温度を適度に制御することができる。
【0064】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、透明性及び熱成形性の観点から、ポリブチレンテレフタレート単位からなるハードセグメントと、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸をジカルボン酸成分とし、炭素原子数が5~15のジオールをジオール成分とするポリエステル単位からなるソフトセグメントとから構成されるマルチブロック共重合体であることが好ましい。
【0065】
該ポリブチレンテレフタレート単位からなるハードセグメントは、ポリカーボネート樹脂との相溶性に優れ、透明性及び熱成形性等の観点から好ましく、強度等の面でも良好な特性を呈することができる。ポリブチレンテレフタレート単位は、本開示の効果を損なわない範囲で他の成分を共重合成分として含んでもよい。かかる共重合成分の割合は、ジカルボン酸成分及びジオール成分共にそれぞれの全成分100モル%中、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。ハードセグメントとなるポリマーの固有粘度は、好ましくは0.2~2.0、より好ましくは0.5~1.5の範囲である。
【0066】
該芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸をジカルボン酸成分とし、炭素原子数が5~15のジオールをジオール成分とするポリエステル単位からなるソフトセグメントは、該セグメントから形成されたポリマーの融点が100℃以下、又は100℃において液状で非晶性を示すセグメントのことを指す。ソフトセグメントとなるポリマーの固有粘度は、好ましくは0.2~2.0、より好ましくは0.5~1.5の範囲である。使用されるソフトセグメントは、芳香族ジカルボン酸及び/又は脂肪族カルボン酸をジカルボン酸成分とし、炭素原子数が5~15のジオールをジオール成分するポリエステル単位からなるソフトセグメントである(以下「SS-1」と称する場合がある)。SS-1は極めて良好な透明性が得られる点から好適である。
【0067】
ソフトセグメントSS-1は、より良好な透明性を得る観点から、ジカルボン酸成分の合計100モル%中、芳香族ジカルボン酸の含有量が60~99モル%及び脂肪族ジカルボン酸の含有量が1~40モル%であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸の含有量が70~95モル%及び脂肪族ジカルボン酸の含有量が5~30モル%であることがより好ましい。芳香族ジカルボン酸の含有量が85~93モル%及び脂肪族ジカルボン酸の含有量が7~15モル%であることがさらに好ましい。芳香族ジカルボン酸の含有量が89~92モル%及び脂肪族ジカルボン酸の含有量が8~11モル%であることが特に好ましい。
【0068】
SS-1の芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルカルボン酸、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン及びビス(4-カルボキシフェニル)スルホンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好適であり、テレフタル酸及びイソフタル酸がより好適であり、特に結晶性低下の観点から、イソフタル酸が好適である。
【0069】
SS-1の脂肪族ジカルボン酸として、コハク酸、アジピン酸、及びセバチン酸等の炭素原子数が4~12の直鎖状脂肪族ジカルボン酸が好適であり、特にセバシン酸が好適である。
【0070】
SS-1の炭素原子数が5~15のジオール成分としては、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、3-メチルペンタンジオール、及び2-メチルオクタメチレンジオール等の炭素原子数が6~12の直鎖状脂肪族ジオールがより好ましく、特にヘキサメチレングリコールが好ましい。
【0071】
SS-1は、ポリカーボネート樹脂との相溶性が高く、透明性が高いものを得ることができ、熱成形後の表面性及び透明性も良好であるという観点から特に好ましい。SS-1としてより具体的には、イソフタル酸及びセバシン酸とヘキサメチレングリコールからなるポリエステルが好ましい。
【0072】
本開示では、ポリエステル系熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメントとソフトセグメントとの割合は、エラストマー100質量%中、ハードセグメントが20~70質量%及びソフトセグメントが80~30質量%であることが好ましく、ハードセグメントが20~40質量%及びソフトセグメントが80~60質量%であることがより好ましい。ポリエステル系熱可塑性エラストマーの固有粘度は、シート強度の観点から、0.6以上が好ましく、0.8~1.5の範囲がより好ましく、0.8~1.2の範囲がさらに好ましい。ここで、固有粘度とは、o-クロロフェノール中、35℃での測定された値である。
【0073】
ポリカーボネート樹脂層のガラス転移温度を好適な範囲に設定することができ、その結果、熱成形性を向上させ得ることから、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリカーボネート樹脂層中のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、1質量部以上、3質量部以上、又は5質量部以上、20質量部以下、18質量部以下、又は15質量部以下の範囲で、ポリカーボネート樹脂層に含まれていることが好ましい。
【0074】
本開示のポリカーボネート樹脂層は、本開示の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、各種成分を適宜配合することができる。このような任意成分としては、例えば、熱安定剤、離型剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、補強剤(例えば、タルク、マイカ、クレー、ワラストナイト、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、セラミック粒子、セラミック繊維、アラミド粒子、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、グラファイト、導電性カーボンブラック、及び各種ウイスカー)、難燃剤(例えば、ハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、金属塩系難燃剤、赤リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、フッ素系難燃剤、及び金属水和物系難燃剤)、着色剤(例えば、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料、及び染料)、光拡散剤(例えば、アクリル架橋粒子、シリコーン架橋粒子、極薄ガラスフレーク、及び炭酸カルシウム粒子)、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、帯電防止剤、流動改質剤、結晶核剤、無機及び有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(例えば、微粒子酸化チタン、及び微粒子酸化亜鉛)、グラフトゴムに代表される衝撃改質剤、並びにフォトクロミック剤を挙げることができる。任意成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0075】
ポリカーボネート樹脂層の厚さとしては特に制限はなく、積層体の使用用途等に応じて適宜設定することができる。かかる厚さとして、例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上、7μm以上、10μm以上、30μm以上、50μm以上、100μm以上、又は150μm以上とすることができる。厚さの上限値としては特に制限はなく、例えば、20mm以下、15mm以下、10mm以下、5.0mm以下、3.0mm以下、1.0mm以下、500μm以下、300μm以下、又は100μm以下とすることができる。
【0076】
なお、例えば、ポリカーボネート樹脂層の厚さが、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及び任意の他の層の厚さよりも厚く、積層体の厚さをデジマチックノギス(ABSデジマチックキャリパCD-AX、株式会社ミツトヨ製)若しくは高精度デジマチックマイクロメータ(MDH-25MB、株式会社ミツトヨ製)を用いて測定できる場合には、積層体における任意の少なくとも5箇所の厚さを求め平均値を算出した後、かかる値から、光学顕微鏡若しくは走査型電子顕微鏡を使用して得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層及び任意の他の層(オーバーコート層等)の厚さを差し引くことで、ポリカーボネート樹脂層の厚さを求めることもできる。
【0077】
ポリカーボネート樹脂層における(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層の反対側の面に対して任意の表面処理を実施してもよい。例えば、かかる面に対し、洗浄処理を実施してもよく、或いは、後述する他の層との密着性を向上させる目的でコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を実施してもよい。
【0078】
〈他の層〉
本開示の共押出積層体は、本開示の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、使用用途等に応じて、任意の他の層を一層又は二層以上さらに備えてもよい。他の層も共押出法によって積層体に適用されてもよく、或いは、コーティング法等の他の手段を用いて適用されてもよい。他の層は、積層体の全面に適用されてもよく、或いは部分的に適用されてもよい。
【0079】
他の層が水及び脂肪族アルコールを含む混合液に溶解しない層(非溶解層)であるときに、例えば、共押出積層体のうち、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を溶解し、その溶液から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを採取することを目的とする場合には、他の層は、共押出法で適用される場合には、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層におけるポリカーボネート樹脂層の反対側の面に適用されてもよく、或いは、ポリカーボネート樹脂層に直接的に適用されてもよく、また、コーティング法で適用される場合には、取得するポリマーの純度の観点から、ポリカーボネート樹脂層に直接的に適用されることが好ましい。また、ポリカーボネート樹脂層を採取することを目的とする場合には、他の層は、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層におけるポリカーボネート樹脂層の反対側の面に適用されていることが好ましい。なお、他の層が共押出法で適用される場合には、他の層が、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層におけるポリカーボネート樹脂層の反対側の面に積層されていると(例えば、他の層/(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層/ポリカーボネート樹脂層の構成、或いは、他の層/(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層/ポリカーボネート樹脂層/(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層/他の層の構成であると)、他の層も含めた三種の成分をリサイクルすることもできる。
【0080】
他の層が水及び脂肪族アルコールを含む混合液に溶解する層(溶解層)であるときに、例えば、共押出積層体のうちのポリカーボネート樹脂層を採取することを目的とする場合には、他の層は、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層におけるポリカーボネート樹脂層の反対側の面に積層されるか、或いは、共押出法によってポリカーボネート樹脂層に直接的に適用されてもよい。
【0081】
他の層としては特に制限はなく、様々な層、例えば、オーバーコート層、接着層、帯電防止層、導電層、意匠層などの任意の機能を付与し得る機能層を適宜採用することができる。例えば、以下にオーバーコート層及び接着層について詳細に説明するが、他の層はこれらに限定されない。
【0082】
(オーバーコート層)
本開示の共押出積層体には、様々なオーバーコート層を適用することができる。オーバーコート層は、耐擦傷性等の性能を有するハードコート層であってもよく、かかる性能を有しない層(例えば防汚層、防曇層、ガスバリア層)であってもよい。オーバーコート層は、単層構成であってもよく、或いは積層構成であってもよい。オーバーコート層は、積層体の全面に適用されてもよく、或いは部分的に適用されてもよい。なお、本開示における「オーバーコート層」には、接着層は包含されない。
【0083】
オーバーコート層の材料としては、特に制限はなく、例えば、無機材料及び樹脂材料を挙げることができる。
【0084】
無機材料としては特に制限はなく、例えば、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、白金、クロム、鉄、スズ、インジウム、チタニウム、鉛、亜鉛、及びゲルマニウムからなる群から選択される少なくとも一種の金属、又はこれらの合金若しくは化合物を挙げることができる。この他に、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物、金属酸化ホウ化物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオビウム、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化窒化アルミニウム、酸化窒化ケイ素、酸化窒化ホウ素、酸化ホウ化ジルコニウム、酸化ホウ化チタン、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。無機材料は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0085】
無機材料から構成される層は、例えば、物理気相成長法又は化学気相成長法を用いて形成することができる。例えば、かかる層は、スパッタリング(例えば、カソード又は平面マグネトロンスパッタリング)、蒸着(例えば、抵抗又は電子ビーム蒸着)、化学蒸着、プラズマ蒸着、原子層蒸着(ALD)、めっきなどのドライコーティング技術を使用して形成することができる。このようなドライコーティング法によって形成されるオーバーコート層は、後述するウェットコーティング法によって形成された層と区別するために、「オーバードライコート層」と称することもできる。
【0086】
樹脂材料としては特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を挙げることができる。樹脂材料は、電離放射線(例えば紫外線、X線、電子線)硬化型樹脂であってもよく、熱硬化型樹脂であってもよい。硬化型樹脂を硬化させた樹脂層は非溶解層にすることができる。樹脂材料は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。樹脂材料から構成されるオーバーコート層は、公知のウェットコーティング法などによって適用することができる。このようなウェットコーティング法によって形成されるオーバーコート層は、上述したドライコーティング法によって形成された層と区別するために、「オーバーウェットコート層」と称することもできる。
【0087】
樹脂材料から構成されるオーバーコート層には、本開示の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、各種成分を適宜配合することができる。このような任意成分としては、例えば、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、レベリング剤、消泡剤、防汚剤(例えば界面活性剤)、分散剤、シランカップリング剤、表面改質剤、染料、顔料、及びフィラー(例えば有機フィラー及び無機フィラー)を挙げることができる。任意成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0088】
オーバーコート層の厚みとしては特に制限はなく、用途に応じた所望の性能(例えば耐摩耗性)が発揮し得るように適宜設定することができる。かかる厚みとして、例えば、10nm以上、50nm以上、100nm以上、500nm以上、1μm以上、3μm以上、又は5μm以上とすることができる。かかる厚みの上限値としては特に制限はなく、例えば、100μm以下、50μm以下、30μm以下、20μm以下、又は10μm以下とすることができる。
【0089】
(接着層)
本開示の共押出積層体には、様々な接着層を適用することができる。接着層は、単層構成であってもよく、或いは積層構成であってもよい。接着層は、積層体の全面に適用されてもよく、或いは部分的に適用されてもよい。接着層は、典型的には、本開示の積層体を被着体に貼り合わせるときに使用され得る。
【0090】
接着層を形成し得る接着剤としては特に制限はない。接着剤として、例えば、一般に使用される、(メタ)アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を使用することができる。接着剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。接着層は、公知のウェットコーティング法などによって適用することができる。
【0091】
接着層には、本開示の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、各種成分を適宜配合することができる。このような任意成分としては、例えば、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、粘着付与剤、分散剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、防汚剤(例えば界面活性剤)、シランカップリング剤、表面改質剤、染料、顔料、及びフィラー(例えば有機フィラー及び無機フィラー)を挙げることができる。任意成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0092】
接着層の厚さは、次のものに限定されないが、例えば、5μm以上、10μm以上、又は20μm以上とすることができ、200μm以下、100μm以下、又は80μm以下とすることができる。
【0093】
(共押出積層体の製造方法)
本開示の共押出積層体は、公知の共押出法により製造することができる。ここで、共押出法は、一般的には、二種の成形材料(例えば(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー及びポリカーボネート樹脂)を別々の押出機を用いて溶融押出しし、フィードブロック、又はマルチマニホールドダイを用いて積層することにより多層シートを得る方法であり、各押出機の押出量及び製膜速度、ダイスリップ間隔等を調整することにより、得られる積層体の総厚み、及び厚み組成をコントロールすることが可能である。
【0094】
共押出法は次の方法に限定されないが、より具体的には、マルチマニホールドダイ又はフィードブロックダイから押出された積層体を、回転中心軸が平行で同一平面上にある位置関係にあり、かつ、接近して配置した3本の冷却ロールを用いて成形し、その後にある一対の引取りロールにて引き取る方法である。第1冷却ロール、及び第2冷却ロールは金属ロール、又は金属弾性ロールで構成してもよく、金属ロールと金属弾性ロールとを組み合わせて構成してもよい。
【0095】
〈共押出積層体から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を溶解させる工程〉
本開示のリサイクル方法は、水及び脂肪族アルコールを含む混合液(単に「混合液」と称する場合がある。)を共押出積層体に適用し、該積層体から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を溶解させる工程(単に「溶解工程」と称する場合がある。)を含み、かかる工程を経て、共押出積層体を、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液と、ポリカーボネート樹脂層に分離することができる。
【0096】
共押出積層体に混合液を適用する方法としては特に制限はなく、例えば、共押出積層体を混合液中に浸漬させてもよく、或いは、共押出積層体の(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層等の溶解層に対して噴霧してもよく、或いは、これらの組み合わせであってもよい。共押出積層体に混合液を適用する方法は、1回又は複数回実施することができる。共押出積層体を混合液中に浸漬させる場合には、攪拌、振とう、超音波処理などの物理的な刺激を適宜付与してもよい。
【0097】
混合液の適用時間としては特に制限はなく、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層の種類又は厚さに応じた溶解性等を考慮して適宜設定することができる。例えば、かかる時間として、1分以上、5分以上、10分以上、20分以上、又は30分以上とすることができる。時間の上限値としては特に制限はなく、例えば、1週間以下、5日以下、3日以下、1日以下、12時間以下、又は1時間以下とすることができる。
【0098】
共押出積層体に混合液を適用するときに、混合液を適宜加温してもよい。加温するときの温度としては、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層の種類又は厚さに応じた溶解性等を考慮して適宜設定することができる。例えば、かかる温度として、30℃以上、40度以上、又は50℃以上とすることができ、また、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0099】
(水及び脂肪族アルコールを含む混合液)
溶解工程では、共押出積層体の少なくとも(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層に対し、水及び脂肪族アルコールを含む混合液を適用することによって、共押出積層体から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を溶解させることができる。
【0100】
混合液は、共押出積層体から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を溶解させ得る限り、水及び脂肪族アルコール以外に他の成分を含んでもよいが、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を効率よく溶解させる観点から、混合液中の水及び脂肪族アルコールの総量は、混合液の全量に対し、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0101】
混合液における水及び脂肪族アルコールの混合割合としては、共押出積層体から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を溶解させ得る限り特に制限はない。例えば、水と脂肪族アルコールは、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、20:80、10:90、5:95、3:97、2:98、1:99の質量比の中から、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層の厚さなどを考慮して、その範囲を適宜選択することができる。なかでも、本開示のリサイクル方法を短時間に効率的に実施する観点から、水と脂肪族アルコールの質量比は、50:50~1:99の範囲が好ましく、40:60~5:95の範囲がより好ましく、30:70~10:90の範囲が特に好ましい。
【0102】
a.水
本開示のリサイクル法において使用し得る水としては特に制限はなく、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、及び水道水を使用することができる。
【0103】
b.脂肪族アルコール
脂肪族アルコールは、共押出積層体を構成する(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層の溶解性を考慮しながら適宜採用することができる。脂肪族アルコールとしては、例えば、水酸基を1つ以上有する炭素原子数が1~8の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコール、好ましくは1~3つの水酸基を有する炭素原子数が1~6の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコール、より好ましくは1つの水酸基を有する炭素原子数が1~3の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコールが挙げられる。具体的には、脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール(2-プロパノール)、n-ブタノール、2-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、t-アミルアルコール、n-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、n-オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2-エトキシエタノール、2-メトキシエタノールが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を効率よく溶解させる観点から、エタノール及びi-プロパノール(2-プロパノール)が好ましい。脂肪族アルコールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0104】
〈追加の工程〉
本開示のリサイクル方法によれば、上述した溶解工程によって、共押出積層体を、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液と、ポリカーボネート樹脂層に分離することができるため、例えば、得られたポリカーボネート樹脂層をそのまま再度使用することができる。したがって、本開示のリサイクル方法は、上述した溶解工程が含まれていれば足りるが、いくつかの実施形態では、本開示のリサイクル方法は、追加の工程をさらに含み得る。
【0105】
追加の工程としては特に制限はなく、例えば、上述した溶解工程の後に、得られたポリカーボネート樹脂層を新鮮な混合液などを用い、リンスして洗浄する工程を備えることができる。この他、例えば、得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー成分を採取する工程、得られたポリカーボネート樹脂層を、例えば新たな共押出積層体のポリカーボネート樹脂層の材料として再利用する工程などを備えることができる。これらの工程について以下に詳細に説明するが、追加の工程はこれらに限定されない。
【0106】
((メタ)アクリル酸エステル系ポリマー成分を採取する工程)
本開示のリサイクル方法によれば、上述した溶解工程によって、共押出積層体から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液を得ることができる。かかる溶液は、水、脂肪族アルコール及び溶解した(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液である。かかる溶液を留去及び乾燥させることによって、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを回収することができる。回収した(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーは、例えば、共押出積層体の材料として再利用することができる。
【0107】
留去及び乾燥の条件としては特に制限はなく、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーに悪影響を及ぼさない範囲で、温度条件、減圧条件、加熱条件、実施時間等を適宜設定することができる。
【0108】
回収した(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを再利用する場合には、必要に応じ、溶融混錬などの公知の技術を使用して上述した任意成分を適宜配合してもよい。
【0109】
(得られたポリカーボネート樹脂層の再利用工程)
本開示のリサイクル方法によって得られたポリカーボネート樹脂層は、そのまま再利用してもよいが、かかるポリカーボネート樹脂層を加工して新たな樹脂材料として再利用してもよい。
【0110】
得られたポリカーボネート樹脂層を新たな樹脂材料として再利用する場合、本開示のリサイクル方法は、かかるポリカーボネート樹脂層を溶融する工程をさらに備えることができる。そして、溶融した樹脂を、例えば、ポリカーボネート樹脂成形品の材料として使用したり、或いは、上述したような、共押出積層体のポリカーボネート樹脂層の材料として使用したりすることができる。ポリカーボネート樹脂層を溶融するとき、ポリカーボネート樹脂層は、その形態のまま直接溶融してもよく、或いは、得られたポリカーボネート樹脂層を粉砕してから溶融してもよい。
【0111】
いくつかの実施形態において、本開示のリサイクル方法は、共押出積層体から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を除去して得られたポリカーボネート樹脂層を用いて添加剤を溶融混錬することをさらに含む。具体的には、例えば、得られたポリカーボネート樹脂層を、任意に粉砕した後(例えばペレット状に粉砕した後)、加熱して溶融し、得られた溶融樹脂に対して添加剤を適宜配合して溶融混錬してもよい。
【0112】
本開示のリサイクル方法は、共押出積層体に水及び脂肪族アルコールを含む混合液を適用して共押出積層体から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を溶解させ、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液と、ポリカーボネート樹脂層とを得ている。そのため、ポリカーボネート樹脂層中に含まれている添加剤が、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液中に溶出する場合がある。したがって、配合する添加剤としては、共押出積層体のポリカーボネート樹脂層中に含まれる成分と、共押出積層体から(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層を除去して得られたポリカーボネート樹脂層中の成分とを比較したときに、減少している成分を採用することが好ましい。このような添加剤としては、例えば、リン原子を含む剤を挙げることができる。具体的には、リン原子を含む、酸化防止剤及びキレート剤などを挙げることができる。なかでも、リン原子を含む酸化防止剤を配合すると、ポリカーボネート樹脂をリサイクル材料として1回又は複数回使用した場合にも、酸化に伴うポリカーボネート樹脂の熱分解を好適に低減又は抑制することができる。
【0113】
ここで、リン原子を含む酸化防止剤としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる:
【化2】
【0114】
リン原子を含むキレート剤としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる:
【化3】
【0115】
添加剤として上述した減少している成分を採用する場合、かかる添加剤の配合量は、減少している成分の減少量以上であってもよい。その一方で、本開示のリサイクル方法では、ポリカーボネート樹脂層から、ポリカーボネート樹脂の熱分解等に影響を及ぼし得る有害な不純物も(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む溶液中に同時に溶出し得る。したがって、添加剤として上述した減少している成分(例えばリン原子を含む酸化防止剤)を採用する場合において、かかる添加剤の配合量は、減少している成分の減少量よりも少ない量にすることもできる。例えば、添加剤の配合量は、減少している成分の減少量の100質量%未満、98質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下とすることができ、また、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上とすることができる。このような量であっても、本開示のリサイクル方法によって得られるポリカーボネート樹脂を用いた場合には、酸化に伴う熱分解を好適に低減又は抑制することができる。
【0116】
(その他の工程)
本開示のリサイクル方法で使用する共押出積層体には、上述したように、任意の他の層が積層され得る。他の層が非溶解層である場合、例えば、水及び脂肪族アルコールを含む混合液中に積層体を浸漬させた後の溶液中には、ポリカーボネート樹脂層と、他の層が溶解せずに別々に残存し得るため、非溶解性の他の層であれば、かかる他の層もポリカーボネート樹脂層と同様にリサイクルすることができる。
【0117】
《本開示のリサイクル方法によって得られた樹脂成分を含む組成物》
本開示のリサイクル方法によれば、上述したように、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー、ポリカーボネート樹脂、及び任意の他の層を構成する樹脂成分を得ることができる。
【0118】
なお、少なくともこれらの成分は、本開示のリサイクル方法以外の方法によって得られた樹脂成分と微視的にみれば相違すること(例えば、樹脂を構成する分子鎖の局所的な切断状態の相違など)は明らかであるが、そのような相違を一義的に規定し得る統一した分析技術が現状では不明である。また、先願主義を採用する我が国において、多大な時間をかけてかかる相違を分析することが致命的な結果になり得るという状況が存在する中で、このような相違箇所を厳密に分析することは非実際的である。
【0119】
〈(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー含有組成物含有組成物〉
本開示のリサイクル方法によれば、上述したリサイクル方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー含有組成物を得ることができる。なお、共押出積層体を構成する(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層は、典型的には、樹脂成分以外に各種の添加剤が含まれており、得られた(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを含む樹脂材料は、典型的には組成物の形態を呈している。仮に、かかる樹脂材料が(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーのみであった場合には、かかるポリマーに対し添加剤を別途混合して組成物の形態にすることもできる。
【0120】
〈ポリカーボネート樹脂含有組成物〉
本開示のリサイクル方法によれば、上述したリサイクル方法によって得られたポリカーボネート樹脂を含む、ポリカーボネート樹脂含有組成物を得ることができる。なお、共押出積層体を構成するポリカーボネート樹脂層は、典型的には、樹脂成分以外に各種の添加剤が含まれており、得られたポリカーボネート樹脂を含む樹脂材料は、典型的には組成物の形態を呈している。仮に、かかる樹脂材料がポリカーボネート樹脂のみであった場合には、かかる樹脂に対し添加剤を別途混合して組成物の形態にすることもできる。
【0121】
〈他の層を構成する樹脂成分を含有する組成物〉
本開示のリサイクル方法によれば、共押出積層体に対しさらに非溶解性の他の層が適用され、ポリカーボネート樹脂層と他の層を別々に採取できる場合には、上述したリサイクル方法によって得られた他の層を構成する樹脂成分を含む組成物を得ることもできる。なお、かかる他の層も典型的には、樹脂成分以外に各種の添加剤が含まれており、得られた他の層を構成する樹脂成分を含む樹脂材料は、典型的には組成物の形態を呈している。仮に、かかる樹脂材料が他の層を構成する樹脂のみであった場合には、かかる樹脂に対し添加剤を別途混合して組成物の形態にすることもできる。
【実施例0122】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例、比較例で行った物性測定は以下の方法で行っている。また、実施例に記載される各種物性の測定方法は、実施例に記載される積層体及びその製造方法並びにリサイクル方法に限らず、上述した積層体及びその製造方法並びにリサイクル方法に対しても同様に実施することができる。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。本実施例に記載する「PC」とは「ポリカーボネート樹脂」を意味し、「PMMA」とは(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーに該当する「ポリメチルメタクリレート樹脂」を意味する。また、「(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー」を簡略化するために「アクリル樹脂」と表記する場合がある。
【0123】
《実施例1~4及び比較例1~6》
〈各種物性の測定方法〉
(FT-IRによるPC面及びPMMA面における樹脂成分の検出)
PC面又はPMMA面の表面に対し、ATR法によるFT-IRスペクトルの測定を行った。測定装置及び測定条件は以下の通りである:
測定装置:NICOLET iS50(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
測定条件:検出器 MCT/A
ビームスプリッタ KBr
ATRプリズム 結晶Ge
ATR入射角 30°
測定範囲 650cm-1~4000cm-1
【0124】
得られたスペクトルから、PC樹脂のカーボネート結合に由来する1780cm-1のピーク強度とPMMA樹脂のエステル結合に由来する1740cm-1のピーク強度を比較することで測定した表面におけるPC又はPMMA樹脂成分およびその存在比率を確認した。
【0125】
(樹脂の組成分析)
積層体におけるポリカーボネート樹脂層及び(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層の中間付近(以下「中間層」と称する。)の樹脂成分、並びにリサイクル方法を経て得られたポリカーボネート樹脂中のポリカーボネート成分及び(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー成分の組成分析を以下に示す方法を用いて測定した。
【0126】
a.中間層の組成分析
水及び脂肪族アルコールの混合溶液に積層体を浸漬し、ポリカーボネート及び(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーが混合した中間層の有無を目視で確認した。かかる中間層が形成されている場合には、該中間層を採取し、それを重クロロホルムで溶かし、以下に示す測定装置及び測定条件を用いて組成分析を行った。
【0127】
b.ポリカーボネート樹脂の組成分析
水及び脂肪族アルコールの混合溶液に積層体を浸漬し、溶解せずに残ったポリカーボネート樹脂を採取し、該ポリカーボネート樹脂をジクロロメタンで溶かし、以下に示す測定装置及び測定条件で測定し、PC樹脂の芳香族環に由来する7~7.5ppmのピークの面積とPMMA樹脂のエステルメチル基に由来する3.6~3.9ppmのピークの面積を比較することで組成分析を行った。
【0128】
測定装置:JNM-400(日本電子株式会社製)
測定条件:
共鳴周波数:400MHz
SCM磁場強度:9.39T
SCMボア径:54mmφ
測定核種:プロトン
緩和時間:2.74秒
【0129】
〈アクリル樹脂層形成用コート剤(AC-1~AC-4)の調製〉
(AC-1)
三菱レイヨン株式会社製Acrypet(商標)VH-001(メタクリル酸メチル95モル%とアクリル酸メチル5モル%を共重合した熱可塑性アクリル樹脂)20質量部を4-メチル-2-ペンタノン40質量部、2-ブタノン20質量部、2-メトキシ-1-プロパノール20質量部に溶解させてアクリル樹脂層形成用コート剤(AC-1)100質量部を調製した。なお、このアクリル樹脂(Acrypet(商標)VH-001)は、本開示の(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーに該当する。
【0130】
(AC-2~AC-4)
表1記載の組成にしたこと以外は、上述したAC-1と同様にしてアクリル樹脂層形成用コート剤(AC-2~AC-4)を各々調製した。
【0131】
【表1】
【0132】
〈オーバーコート層形成用コート剤(HC-1)の調製〉
多官能(メタ)アクリレートとして、東亞合成株式会社製のアロニックスM-350(トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート)420質量部、共栄社化学株式会社製の1,9-DA(1,9-ノナンジオールジアクリレート)を1,820質量部、ウレタンアクリレートとして大成ファインケミカル株式会社製の8UX-116A(固形分濃度63.5質量%のMEK溶液)31.5質量部、無機微粒子として有機溶剤分散型表面修飾コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、MEK-AC-2140Z(固形分濃度40%))50質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としてチヌビン405(BASF株式会社製)4質量部、ヒンダードアミン光安定剤として、LA-52(株式会社ADEKA製)2質量部、チヌビン123(BASF株式会社製)1質量部、光重合開始剤としてフェニル1-ヒドロキシエチルケトン(BASF株式会社製のイルガキュア184)1質量部、メチルエチルケトン(MEK)20質量部、メトキシプロパノール(MIBK)50質量部、イソプロパノール40質量部を加え、オーバーコート層形成用コート剤(HC-1)を調製した。なお、このコート剤で形成されるオーバーコート層は、一般に「ハードコート層」と称される層に該当する。
【0133】
〈共押出フィルム(A-1)の作製〉
帝人株式会社製のパンライト(登録商標)L1250WPペレット((ビスフェノールAのホモポリカーボネート樹脂(PC-A、粘度平均分子量23,900))と、三菱レイヨン株式会社製のAcrypet(商標)VH-001を、それぞれスクリュー径40mmの単軸押出機を用いて、シリンダー温度290℃(ポリカーボネート樹脂)、250℃(アクリル樹脂)、スクリュー回転数109rpm(ポリカーボネート樹脂)、11rpm(アクリル樹脂)の条件で、フィードブロック方式にて650mm幅のTダイから押出し、溶融樹脂を金属ロールと金属スリーブロールで狭圧して冷却した後、エッジトリミングして巻取速度10.3m/minで巻き取り、ポリカーボネート樹脂層/アクリル樹脂層((メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層)の2層構造(ポリカーボネート樹脂層240μm、アクリル樹脂層60μm)を有する幅400mmの共押出フィルム(A-1)を作製した。
【0134】
〈アクリル樹脂コート層積層フィルム(B-1~B-6)の作製〉
(B-1)
帝人株式会社製の200μm厚のパンライト(登録商標)L1250フィルム((ビスフェノールAのホモポリカーボネート樹脂(PC-A、粘度平均分子量23,900)を用いて形成されたフィルムの片面に、上述したアクリル樹脂層形成用コート剤(AC-1)を、バーコーター(#20)を用いて塗工し、100℃の乾燥炉で5分間熱風乾燥させた。なお、この過程でポリカーボネート樹脂フィルムとアクリル樹脂コート層の界面には、ポリカーボネート樹脂70質量%とアクリル樹脂30質量%が混ざり合った厚さ6.0μmの中間層が形成されていた。したがって、得られた積層フィルム(B-1)は、196μm厚のポリカーボネート樹脂層と、ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂が混合した構成の6.0μm厚の中間層と、3.0μm厚のアクリル樹脂層((メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層)の3層構造であった。
【0135】
(B-2~B-6)
表2に記載の条件で作製したこと以外は、B-1と同様にして積層フィルム(B-2~B-6)を各々作製した。
【0136】
〈実施例1〉
実施例1では、共押出フィルムからのアクリル樹脂層((メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層)の溶解性と、共押出フィルムからのポリカーボネート樹脂層及びアクリル樹脂の分離性について検討した。
【0137】
撹拌翼とコンデンサーを備えた500mLの三ツ口フラスコに純水40質量部、エタノール160質量部を加えて80%エタノール水(混合液)200質量部とし、60℃に加温した。そこに共押出フィルム(A-1)を1cm×5cmの大きさに切断した試験片を図1に示すようにピンセットを用いて投入した。
【0138】
試験片を80%エタノール水浴に10分間浸漬すると、試験片の表面は白濁しており、FT-IRで共押出フィルムのアクリル樹脂層面を測定するとアクリル樹脂(PMMA)が残存していることが確認できた。試験片を追加で10分以上さらに浸漬すると、アクリル樹脂層面にはアクリル樹脂が検出されなかったことから、かかる条件では、共押出フィルムを水と脂肪族アルコールの混合溶液に20分以上浸漬すると、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層が溶解して除去される結果、共押出フィルムからポリカーボネート樹脂層を分離し得ることが分かった。
【0139】
また、試験後の80%エタノール水を放冷すると、図2に示すように、しだいに白濁することが確認できた。この状態の80%エタノール水に対し、エバボレーターを用いて溶媒を留去し、さらに減圧乾燥下で24時間乾燥させると、図2に示すように、白色のアクリル樹脂(PMMA)が得られることが確認できた。
【0140】
〈実施例2〉
実施例2では、共押出フィルムから高純度のポリカーボネート樹脂層が得られるかをさらに検討した。
【0141】
撹拌翼とコンデンサーを備えた500mLの三ツ口フラスコに純水40質量部、エタノール160質量部を加えて80%エタノール水(混合液)200質量部とし、70℃に加温した。そこに共押出フィルム(A-1)を1cm角に切断した試験片20枚を投入し、70℃に加温した状態のままで1時間撹拌した。
【0142】
投入した試験片を回収し、70℃の80%エタノール水浴で試験片を2回リンスした。回収した試験片はアクリル樹脂層が完全に溶解し、アクリル樹脂とポリカーボネート樹脂が混合した中間層は形成されていなかった。
【0143】
得られたポリカーボネート樹脂フィルムをジクロロメタンに溶解させ、組成分析を行ったところ、かかるフィルムの樹脂組成はポリカーボネート樹脂100質量%であった。
【0144】
〈実施例3〉
実施例3では、脂肪族アルコールを変更したときの共押出フィルムからのポリカーボネート樹脂層及びアクリル樹脂((メタ)アクリル酸エステル系ポリマー)の分離性について検討した。
【0145】
80%エタノール水(混合液)を、純水40質量部と2-プロパノール160質量部を加えて80%2-プロパノール水200gに変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行った。その結果、80%2-プロパノール水であっても、実施例2と同様に、回収した試験片はアクリル樹脂層が完全に溶解し、アクリル樹脂とポリカーボネート樹脂が混合した中間層は形成されていなかった。
【0146】
得られたポリカーボネート樹脂フィルムをジクロロメタンに溶解させ、組成分析を行ったところ、かかるフィルムの樹脂組成はポリカーボネート樹脂100質量%であった。
【0147】
〈実施例4〉
実施例4では、共押出フィルムのアクリル樹脂層((メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層)側にオーバーコート層を積層したフィルムからのアクリル樹脂層の溶解性と、かかるフィルムからのポリカーボネート樹脂層の分離性について検討した。
【0148】
上述した共押出フィルム(A-1)のアクリル樹脂層側に、オーバーコート層形成用コート剤(HC-1)を、バーコーター(#40)を用いて塗工し、100℃の乾燥炉で5分間熱風乾燥させた。得られた積層フィルムに高圧水銀ランプを用いて照射強度250mW/cm、照射量2,000mJ/cmの紫外線を照射し、20μm厚のオーバーコート層(ハードコート(HC)層)を有する積層フィルムを得た。
【0149】
次いで、撹拌翼とコンデンサーを備えた500mLの三ツ口フラスコに純水40質量部、エタノール160質量部を加えて80%エタノール水(混合液)200質量部とし、60℃に加温した。そこに得られた積層フィルムを1cm×5cmの大きさに切断した試験片を図3に示すようにピンセットを用いて投入した。
【0150】
試験片を80%エタノール水浴に20分間浸漬すると、試験片のエッジ部が白濁し、さらに浸漬時間を延ばしていくと、エッジ部からオーバーコート層が剥がれていき、最終的には、積層フィルムからオーバーコート層が分離し得ることが分かった。
【0151】
〈実施例5〉
実施例5では、オーバーコート層を積層した共押出フィルムから高純度のポリカーボネート樹脂層が得られるかをさらに検討した。
【0152】
上述した共押出フィルム(A-1)のアクリル樹脂層側に、オーバーコート層形成用コート剤(HC-1)を、バーコーター(#8)を用いて塗工し、100℃の乾燥炉で5分間熱風乾燥させた。なお、この過程でアクリル樹脂層とオーバーコート層の界面には、アクリル樹脂とオーバーコート形成用組成物が混ざり合った厚さ1.5μmの中間層が形成されていた。
【0153】
得られた積層フィルムに高圧水銀ランプを用いて照射強度250mW/cm、照射量2,000mJ/cmの紫外線を照射し、240μm厚のポリカーボネート樹脂層、59μm厚のアクリル樹脂層、1.5μm厚の中間層及び3.5μm厚のオーバーコート層の4層構造の積層フィルムを得た。
【0154】
得られた積層フィルムを実施例2と同様に処理した結果、ポリカーボネート樹脂はフィルムの形態で残存し、アクリル樹脂層は溶解した。また、中間層及びオーバーコート層は溶解しなかったが、いずれの層も薄く脆いため、砕け散った破片のような形態で処理液中に浮遊していた。
【0155】
次いで、実施例2と同様にして試験片をリンスしたところ、回収した試験片はアクリル樹脂層が完全に溶解しており、ポリカーボネート樹脂層には、アクリル樹脂とポリカーボネート樹脂が混合した中間層は形成されていなかった。
【0156】
得られたポリカーボネート樹脂フィルムをジクロロメタンに溶解させ、組成分析を行ったところ、かかるフィルムの樹脂組成はポリカーボネート樹脂100質量%であった。
【0157】
〈比較例1〉
比較例1では、ポリカーボネート樹脂フィルムにアクリル樹脂((メタ)アクリル酸エステル系ポリマー)をコーティングして適用した積層フィルムから高純度のポリカーボネート樹脂層が得られるかを検討した。
【0158】
上述のアクリル樹脂コート層積層フィルム(B-1)を用いた以外は、実施例2と同様にしてポリカーボネート樹脂フィルムの回収を試みた。
【0159】
その結果、アクリル樹脂層は溶解したが、アクリル樹脂とポリカーボネート樹脂が混合したような中間層は溶解せずに、ポリカーボネート樹脂フィルムに密着していた。この中間層の樹脂組成を分析したところ、その組成はポリカーボネート樹脂70質量%、アクリル樹脂30質量%であり、中間層は、アクリル樹脂とポリカーボネート樹脂が混合した状態の層であることが分かった。
【0160】
得られたポリカーボネート樹脂フィルムをジクロロメタンに溶解させ、組成分析を行ったところ、かかるフィルムの樹脂組成はポリカーボネート樹脂99.1質量%、アクリル樹脂0.9質量%であった。この結果より、コーティング法を用いて調製した積層フィルムからポリカーボネート樹脂層を得た場合には、コーティング層を構成する樹脂成分が、ポリカーボネート樹脂に含まれてしまうため、高純度のポリカーボネート樹脂が得られないことが分かった。
【0161】
〈比較例2~6〉
積層フィルム(B-1)を積層フィルム(B-2~B-6)に変更したこと以外は、比較例1と同様にしてポリカーボネート樹脂フィルムの回収を試みた。その結果を表2に示す。
【0162】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0163】
(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー層とポリカーボネート樹脂層とを含む積層体から、これらの樹脂成分を純度よく採取する技術はこれまでになく、そのためこのような積層体は廃棄処分されていた。本開示のリサイクル方法によれば、これらの樹脂成分を純度よく採取することができ、それを再利用することができるため、本開示のリサイクル方法は、環境負荷の低減及び省資源化に貢献することができる。そして、例えば、得られたポリカーボネート樹脂は、光学レンズ、光ディスク、光学フィルム、プラセル基板、光カード、液晶パネル、ヘッドランプレンズ、導光板、拡散板、保護フィルム、前面板、筐体、トレー、水槽、照明カバー、看板、又は樹脂窓などの部材として好適に使用することができる。
図1
図2
図3