(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017926
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62M 9/16 20060101AFI20240201BHJP
B62M 9/10 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B62M9/16 Z
B62M9/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120894
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 直樹
(57)【要約】
【課題】チェーンスライダのランニングコストを低減できる鞍乗り型車両を提供する。
【解決手段】鞍乗り型車両は、チェーン(53)と、チェーンスライダ(70、270、370)と、を有する鞍乗り型車両において、前記チェーンスライダ(70、270、370)は、第1チェーンスライダ(80、380)と第2チェーンスライダ(90、290)とを有し、前記第1チェーンスライダ(80、380)と前記第2チェーンスライダ(90、290)とは別体である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーン(53)と、チェーンスライダ(70、270、370)と、を有する鞍乗り型車両において、
前記チェーンスライダ(70、270、370)は、第1チェーンスライダ(80、380)と第2チェーンスライダ(90、290)とを有し、
前記第1チェーンスライダ(80、380)と前記第2チェーンスライダ(90、290)とは別体であることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
駆動源(12)と、前記駆動源(12)からの駆動力を出力するスプロケット軸(51)と、前記スプロケット軸(51)に支持されたドライブスプロケット(52)と、を有し、
前記チェーン(53)は、前記ドライブスプロケット(52)に巻き掛けられ、
前記第1チェーンスライダ(80、380)と前記第2チェーンスライダ(90、290)とは車両前後方向に離間して配置され、
前記第2チェーンスライダ(90、290)は、前記第1チェーンスライダ(80、380)よりも前記スプロケット軸(51)の遠くに配置されることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
スイングアーム(16)を備え、
前記スイングアーム(16)は車幅方向に膨出する膨出部(61a1、61b1)を有し、
前記第1チェーンスライダ(80、380)と前記第2チェーンスライダ(90、290)とは前記膨出部(61a1、61b1)にのみ配置されることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記第1チェーンスライダ(80、380)および前記第2チェーンスライダ(90、290)の少なくともいずれか一方は、上側チェーン接触部(82、92)と、下側チェーン接触部(83、93、293)と、前記上側チェーン接触部(82、92)と前記下側チェーン接触部(83、93、293)とを接続する接続部(84、91、384)と、を有することを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
車両前後方向において、前記接続部(91)の長さ(L1)は前記上側チェーン接触部(92)または前記下側チェーン接触部(93、293)の長さ(L2、L3)よりも短いことを特徴とする請求項4に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
駆動源(12)と、前記駆動源(12)からの駆動力を出力するスプロケット軸(51)と、前記スプロケット軸(51)に支持されたドライブスプロケット(52)と、を有し、
前記チェーン(53)は、前記ドライブスプロケット(52)に巻き掛けられ、
前記第1チェーンスライダ(80、380)は、前記第2チェーンスライダ(90)に比べて前記スプロケット軸(51)の近くに配置され、
前記第1チェーンスライダ(80、380)の上側チェーン接触部(82)は、上側チェーン(53a)の移動方向に対する上流端部が湾曲していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項7】
前記第2チェーンスライダ(290)の下側チェーン接触部(293)は、下側チェーン(53b)の移動方向に対する上流端部が湾曲していることを特徴とする請求項6に記載の鞍乗り型車両。
【請求項8】
ピボットフレーム(19b)と、前記ピボットフレーム(19b)に揺動可能に支持されたスイングアーム(16)と、を有し、
前記第1チェーンスライダ(80、380)または前記第2チェーンスライダ(90、290)の一方は、、前記ピボットフレーム(19b)に車両側面視で重なった状態で、前記スイングアーム(16)に締め付け固定され、
前記締め付け固定の位置(61e1)は車両側面視で前記ピボットフレーム(19b)と重ならない位置に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項9】
前記第2チェーンスライダ(90、290)は、上側チェーン接触部(92)と、下側チェーン接触部(93、293)と、を備え、
前記上側チェーン接触部(92)および下側チェーン接触部(93、293)の少なくともいずれか一方には、スイングアーム(16)の外表面(61f、61g)との間に隙間を形成する薄肉部(92a、93a)が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チェーンの揺動を抑制したりするチェーンスライダが設けられた鞍乗り型車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、スイングアームに設けられたチェーンスライダが記載されており、チェーンの上側直線部と下側直線部とを案内するチェーンスライダが記載されている。特許文献1に記載のチェーンスライダは、車両側面視において、ピボット軸から後方に延びて後輪に重複している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来は、チェーンスライダが一体の構成であり、ランニングコスト、大きさ、重さ、摺動抵抗、交換時のメンテナンス性において改善の余地があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、チェーンスライダのランニングコストを低減できる鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鞍乗り型車両は、チェーンと、チェーンスライダと、を有する鞍乗り型車両において、前記チェーンスライダは、第1チェーンスライダと第2チェーンスライダとを有し、前記第1チェーンスライダと前記第2チェーンスライダとは別体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
チェーンスライダのランニングコストを低減できる鞍乗り型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図2】ピボットフレームおよびスイングアームの周辺を示す側面図である。
【
図3】ピボットフレームおよびスイングアームの周辺を示す斜視図である。
【
図4】スイングアームの前部の周辺を示す側面図である。
【
図5】スイングアームの前部の周辺を示す斜視図である。
【
図6】スイングアームの前部の周辺を示す平面図である。
【
図7】チェーンスライダの前上方からの斜視図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態に係るチェーンスライダの説明図である。
【
図9】本発明の第3の実施の形態に係るチェーンスライダの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
本実施の形態では、フロントフレーム19は、ヘッドパイプ18から後下方に延びる左右一対のメインフレーム19aと、メインフレーム19aの後端部から下方に延びる左右一対のピボットフレーム19bと、ヘッドパイプ18の下部からメインフレーム19aよりも急傾斜で後下方に延びる左右一対のダウンフレーム19cと、を備える。
【0016】
リアフレーム20は、左右のピボットフレーム19bの上部から後上がりに車両後端部まで延びる左右一対のシートフレーム20aと、左右のピボットフレーム19bの上下方向中間部からシートフレーム20aの後端部まで延びる左右一対のリアサブフレーム20bと、を備える。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11及びパワーユニット12等によって構成される車体を覆う車体カバー30を備える。
【0017】
図2は、ピボットフレーム19bおよびスイングアーム16の周辺を示す側面図である。
図3は、ピボットフレーム19bおよびスイングアーム16の周辺を示す斜視図である。
図1~
図3に示すように、ピボットフレーム19bには、左右方向(車幅方向)に貫通するピボット軸孔19b1が形成される。ピボット軸孔19b1には、ピボット軸22が挿通される。ピボット軸孔19b1の後方には、上下一対のブラケット締結部19b2、19b3が形成される。ブラケット締結部19b2、19b3には、
図1に示すように、略三角形状のステップブラケット41が固定される。ステップブラケット41の後端部には。ステップ28が設けられる。
ステップ28と同軸状にはペダル42が揺動可能に支持される。ステップブラケット41の上部には、ガードプレート43が支持される。
【0018】
図4は、スイングアーム16の前部の周辺を示す側面図である。
図5は、スイングアーム16の前部の周辺を示す斜視図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11とスイングアーム16との間に掛け渡されるクッションユニット46(
図3参照)を備える。
クッションユニット46は、上下方向に延在する。クッションユニット46の上端部は、車体フレーム11に接続される。クッションユニット46は、スイングアーム16のクッション挿通孔65(
図3参照)に挿通される。クッションユニット46の下端部は、リンク機構47(
図2参照)を介してスイングアーム16に接続される。リンク機構47は、ピボットフレーム19bのリンク支持部19b4(
図2参照)に揺動可能に支持される。
【0019】
車両側面視において、ピボット軸孔19a1の前方には、パワーユニット(駆動源)12の出力軸であるスプロケット軸51が配置される(
図2参照)。スプロケット軸51には、トランスミッションギア50(
図5参照)を介して駆動力が伝達される。スプロケット軸51の左端部(車幅方向一端部)には、ドライブスプロケット52が固定支持される。ドライブスプロケット52には、上述の駆動力伝達部材である無端状のチェーン53が巻き掛けられている。チェーン53は、スイングアーム16に沿って後方に延び、後輪15に固定されたドリブンスプロケット54(
図1参照)に巻き掛けられている。ドリブンスプロケット54は、ドライブスプロケット52よりも大径である。以下、ドライブスプロケット52とドリブンスプロケット54との間において、チェーン53の上方で延びる部分を上側チェーン53aと呼び、チェーン53の下方で延びる部分を下側チェーン53bと呼ぶ。
【0020】
図6は、スイングアーム16の前部の周辺を示す平面図である。
スイングアーム16は、後輪15の左右方向一側(車幅方向一側)に位置する左側アーム部61と、後輪15の左右方向他側(車幅方向他側)に位置する右側アーム部62と、左側アーム部61の前端部と右側アーム部62の前端部とを左右方向に接続する略円筒状のピボット部63と、ピボット部63の後方で左側アーム部61と右側アーム部62とを左右方向に繋ぐ中間クロス部64とを一体に備える。
【0021】
スイングアーム16には、上下方向に貫通するクッション挿通孔65が形成される。換言すれば、クッション挿通孔65は、左右両側のアーム部61、62と、ピボット部63と、中間クロス部64とにより囲まれた孔形状である。また、スイングアーム16には、後方に開口する後輪配置開口66(
図1、
図3参照)が形成される。換言すれば、後輪配置開口66は、左右両側のアーム部61、62と、中間クロス部64とにより形成される開口形状である。
【0022】
ピボット部63には、ピボット軸22が挿通される。ピボット軸22は、ピボットボルト22aと、ピボットボルト22aに締結されるピボットナット22bと、を備える。ピボット軸22は、ピボット部63内に設けられる軸受(不図示)を介し、ピボット部63に連結される。ピボット部63の左右両側には、フランジ付きのカラー31、32が配置される。カラー31、32を介して、ピボット軸22は、左右のピボット軸孔19a1に支持される。スイングアーム16は、ピボットフレーム19bにピボット軸22を回転中心として揺動可能に支持される。
【0023】
各アーム部61、62の後端部には、車軸支持部材68(
図1参照)が設けられる。車軸支持部材68には、車軸15aが支持される。車軸15aには、後輪15が回転可能に支持される。後輪15は後輪配置開口66に配置される。
【0024】
左側アーム部61および右側アーム部62は、平面視では、ピボット部63から後方に延びるアーム部前部61a,62aと、アーム部前部61a,62aから後方に延びるアーム部後部61b,62bと、を有する。アーム部前部61a,62aには、クッション挿通孔65が形成される。アーム部後部61b,62bには、後輪配置開口66が形成される。
【0025】
各アーム部61、62のアーム部前部61a、62aにおいて、前端部には、車幅方向外側に膨出する前部膨出部61a1、62a1が形成されている。前部膨出部61a1、62a1は、前方に進むに連れて車幅方向外側に膨出している。左側アーム部61の前部膨出部61a1は、平面視でチェーン53と重複する(
図6参照)。
【0026】
アーム部後部61b、62bは、アーム部前部61a、62aの後端から連続的に延びる。アーム部後部61b、62bは、後方に進むに連れて車幅方向外側に膨出した後に、後方に延出する。アーム部後部61b、62bは、前端部に、車幅方向外側に膨出する後部膨出部61b1、62b1を有する。後部膨出部61b1、62b1は、後方に進むに連れて車幅方向外側に膨出している。左側アーム部61の後部膨出部61b1は、平面視でチェーン53と重複する(
図6参照)。
【0027】
前部膨出部61a1、62a1と、後部膨出部61b1、62b1との間に対応して、前部膨出部61a1、62a1と、後部膨出部61b1、62b1とにより、各アーム部61、62には、平面視で、車幅方向内側に凹んだ凹部61c、62cが形成される。左側アーム部61の凹部61cは、チェーン53よりも車幅方向内側に凹んでいる。
【0028】
左側アーム部61のアーム部後部61bには、前後方向に延びる貫通スペース状のチェーン通し部61d(
図2、
図4参照)が形成される。チェーン通し部61dを、ドライブスプロケット52からドリブンスプロケット54に向けて下側チェーン53bが貫通している。
【0029】
チェーン通し部61dに応じて、左側アーム部61には、左面(車幅方向外表面)61eと、左面61eの上端に接続される上面61fと、チェーン通し部61dの前方において左面61eの下端に接続される下面61gと、が形成される。上面61fは、上側チェーン53aの内周面に対向して上側チェーン53aに沿って延びている。下面61gは、下側チェーン53bの内周面に対向して下側チェーン53bに沿って延びている。車両側面視において、アーム部前部61aでは、上面61fと下面61gとは後方に進むに連れて上下方向に離間する。
【0030】
平面視において、前部膨出部61a1の左面61eは、後方に進むに連れて車幅方向内側に傾斜している。後部膨出部61b1の左面61eは、後方に進むに連れて車幅方向外側に傾斜している。凹部61cの左面(底面)61eは、チェーン53よりも車幅方向内側に位置する。チェーン53と凹部61a3における左面(底面)61eとの間には、上下方向に貫通する貫通空間S1(
図6参照)が形成される。凹部61cの左面61eの前端部には、左面61eに対して左側に突出する台座状の締結座61e1(
図6参照)が形成される。締結座61e1は、ピボットフレーム19bよりも後方に形成される(
図2参照)。
【0031】
アーム部後部61b、62bの上面61f、62f(
図6参照)には、ハガーフェンダー56が支持される。ハガーフェンダー56は、後輪15の前部を覆うように、断面略U字状で弧状に延びる。ハガーフェンダー56は、車両側面視では、扇形状である。
ハガーフェンダー56は、外周側に形成された複数の固定部56b、56c、56d(
図3~
図6参照)に締結部材の一例としてのボルト100、102が挿通されてアーム部後部61b、62bの上面61f、62fに締結、支持される。ハガーフェンダー56の左部には、前後方向の貫通孔を形成するチェーン通し開口56aが形成されている。チェーン通し開口56aを、ドリブンスプロケット54からドライブスプロケット52に向けて上側チェーン53aが貫通している。
【0032】
図7は、チェーンスライダ70の前上方からの斜視図である。
スイングアーム16には、チェーンスライダ70が支持される。チェーンスライダ70は、チェーン53の揺動を抑えたり、チェーン53をガイドする。本実施の形態のチェーンスライダ70は、第1チェーンスライダ80と、第1チェーンスライダ80とは別体の第2チェーンスライダ90と、を有する。第1チェーンスライダ80と、第2チェーンスライダ90とは、前後方向に離間して配置される。第2チェーンスライダ90は、第1チェーンスライダ80よりも、ドライブスプロケット52が支持されるスプロケット軸51から遠くに配置される。第1チェーンスライダ80と、第2チェーンスライダ90とは、それぞれ樹脂で形成される。
【0033】
第1チェーンスライダ80は、車両側面視で環状に形成されている。第1チェーンスライダ80は、左側アーム部61のピボット部63の周辺に取り付けられる。第1チェーンスライダ80は、左右幅を有する帯板状の前部81を有する。前部81は、車両側面視で略C字状に形成されている(
図4参照)。前部81の上端には、後方に延びる上側チェーン接触部82が形成される。また、前部81の下端には、後方に延びる下側チェーン接触部83が形成されている。
【0034】
上側チェーン接触部82および下側チェーン接触部83は、前部81と同様に、左右幅を有する帯板状に形成される。上側チェーン接触部82および下側チェーン接触部83の後端部には、上下方向に延びる接続部84が形成される。接続部84は、前後幅を有する帯板状に形成される。接続部84は、上側チェーン接触部82および下側チェーン接触部83の車幅方向内端側(右端側)に接続される。
第1チェーンスライダ80では、上側チェーン接触部82と下側チェーン接触部83とが接続部84で接続されるため、第1チェーンスライダ80の剛性を向上させることができる。
【0035】
接続部84の後端部には、上下一対の補強部85、86が形成される。補強部85、86は接続部84の左面(外表面)から左方に突出する立壁形状である。上側の補強部85は、上側チェーン接触部82から連続的に後方に延びる。上側の補強部85は、後方に進むに連れて左右幅(接続部84に対する高さ)を小さくしながら下方に湾曲する。上側の補強部85は、後上方に凸に湾曲する。上側の補強部85は、上側チェーン接触部82と一体形状をなす。すなわち、上側の補強部85は上側チェーン接触部82の一部であり、上側チェーン接触部82の後端部を形成する。
【0036】
下側の補強部86は、下側チェーン接触部83の後端から上方に延びる。下側の補強部86は、上方に進むに連れて左右幅(接続部84に対する高さ)を小さくしながら上方に延びる。下側の補強部86は、下側チェーン接触部83と一体形状をなす。すなわち、下側の補強部86は下側チェーン接触部83の一部であり、下側チェーン接触部83の後端部を形成する。よって、車両側面視において、下側チェーン接触部83の後端部は角張っている。
したがって、換言すれば、上側チェーン53aの移動方向に対して、上側チェーン接触部82は、後端部(上流端部)に、下側チェーン接触部83の後端部よりも曲率が小さい湾曲形状の補強部85を有する。
【0037】
上側の補強部85と下側の補強部86との間には、固定孔84a(
図4参照)が形成される。固定孔84aは、接続部84の上下方向中央部に形成される。固定孔84aは、接続部84を厚み方向に貫通する。固定孔84aには、締結部材の一例としてのボルト101が左側(車幅方向外側)から挿通される。ボルト101は、スイングアーム16の左面61eの締結座61e1(
図3参照)に締結される。第1チェーンスライダ80は、スイングアーム16に一点で締め付け固定される。締結座(締め付け固定の位置)61e1は車両側面視でピボットフレーム19bと重ならない位置に設けられている。よって、締結座61e1に締結されるボルト101に車幅方向外側からアクセスし易くなっている。
【0038】
第1チェーンスライダ80には、上側チェーン接触部82および下側チェーン接触部83に対応して、ガイドリブ80a、80b(
図4参照)が形成される。ガイドリブ80a、80bは、上側チェーン接触部82および下側チェーン接触部83に対して、対向する上側チェーン53a、下側チェーン53bに向かって突出する。ガイドリブ80a、80bは、接触したチェーン53をガイド可能である。
【0039】
第1チェーンスライダ80は、スイングアーム16に対してピボット部63の左側から装着され、ピボット部63の前側外周面に前部81の内周面が当接して配置される。また、第1チェーンスライダ80は、上側チェーン接触部82が上面61fに当接され、下側チェーン接触部83が下面61gに当接される。そして、第1チェーンスライダ80は、固定孔84aにボルト101が挿通され締結座61e1に締結される。これにより、第1チェーンスライダ80は、左側アーム部61の前部膨出部61a1に装着される。
【0040】
第1チェーンスライダ80は、平面視において、前部膨出部61a1から凹部61cまで直線状に延びる。ここで、凹部61cには、スイングアーム16の上面61f、下面61gが無いために、第1チェーンスライダ80は、凹部61cでは、いわば、浮いた状態であり変形し易い。よって、チェーン53との接触時の衝撃を逃がし易くなっている。
【0041】
特に、上側チェーン接触部82の後端部は、湾曲した補強部85であるため、後方から前方に移動する上側チェーン53aが第1チェーンスライダ80に引っ掛かり難くすることができる。また、第1チェーンスライダ80の上側チェーン接触部82の後端部が湾曲するため、上側チェーン53aが上方から下方に揺動した際に、第1チェーンスライダ80及びチェーン53が傷つき難くすることができる。
【0042】
図7に示すように、第2チェーンスライダ90は、車両側面視で略H字状である。第2チェーンスライダ90は、上下方向に延びる接続部91を有する。接続部91は、左右方向に厚みを有する板状である。接続部91は、平面視では、後方に進むに連れて左側(車幅方向外側)に傾斜する(
図6参照)。接続部91の前部には、車両側面視で略U字状に切り欠かれて前方に開口する開口部91aが形成される。
【0043】
接続部91の上端部には、上方に進むに連れて右側(車幅方向内側)に湾曲する上側チェーン接触部92が形成されている。上側チェーン接触部92は、上下方向に厚みを有し前後方向に延びる板状である。上側チェーン接触部92は接続部91よりも後方に延びる。上側チェーン接触部92の後部には、下面が切り欠かれた形状の薄肉部92aが形成されている。上側チェーン接触部92の前部右端部には、右側に延出する上側固定部94が形成される。上側固定部94には、上下方向に貫通する貫通孔94aが形成される。貫通孔94aには、上方から締結部材の一例としてのボルト102が挿通され、スイングアーム16に締結される。
【0044】
また、接続部91の下端部には、下方に進むに連れて右側に湾曲する下側チェーン接触部93が形成されている。下側チェーン接触部93は、上下方向に厚みを有し前後方向に延びる板状である。下側チェーン接触部93は接続部91よりも後方に延びる。下側チェーン接触部93の後部には、上面が切り欠かれた形状の薄肉部93aが形成されている。下側チェーン接触部93の前部右端部には、下方に突出する片状の下側固定部95が形成される。下側固定部95には、左右方向に貫通する貫通孔95aが形成される。貫通孔95aには、左方からボルト103(
図4参照)が挿通され、スイングアーム16に締結される。
【0045】
上側チェーン接触部92と下側チェーン接触部93とが接続部91で接続されるため、第2チェーンスライダ90の剛性を向上させることができる。
また、車両前後方向において、
図4に示すように、開口部91aにおける接続部91の長さL1は上側チェーン接触部92の長さL2よりも短い。また、開口部91aにおける接続部91の長さL1は下側チェーン接触部93の長さL3よりも短い。したがって、上下方向に延びる接続部91の前後幅(長さL1)が、上側チェーン接触部92および下側チェーン接触部93の長さL2,L3よりも小さいため、第2チェーンスライダ90の剛性を高めつつ、第2チェーンスライダ90を軽量化することができる。
【0046】
第2チェーンスライダ90は、後部膨出部61b1に装着される。第2チェーンスライダ90は、上側チェーン接触部92が上面(外表面)61fに当接され、下側チェーン接触部93が下面(外表面)61gに当接され、接続部91が左面61eに当接される。そして、上側固定部94には、ハガーフェンダー56の固定部56bが重ねられ、ハガーフェンダー56の固定部56bと共に、ボルト102によりスイングアーム16に共締めされる(
図3参照)。また、第2チェーンスライダ90の下側固定部95は、下面61gの下方で、ボルト103によりスイングアーム16に締結される(
図4参照)。第2チェーンスライダ90は、車両側面視で、後輪15に重複する。
【0047】
このとき、第2チェーンスライダ90では、上側チェーン接触部92は、薄肉部92aにより、スイングアーム16の上面61fとの間に隙間を形成する。また、下側チェーン接触部93は、薄肉部93aにより、スイングアーム16の下面61gとの間に隙間を形成する。よって、第2チェーンスライダ90では、チェーン53が上下に揺動して、上側チェーン接触部92や下側チェーン接触部93に接触する際に、上側チェーン接触部92や下側チェーン接触部93が変形して衝撃が吸収され易くなっている。
【0048】
なお、第2チェーンスライダ90の下方には、チェーン53を挟んで、外周側チェーンスライダ71が配置される(
図4参照)。外周側チェーンスライダ71は、チェーン53の外周側に接触してチェーン53の揺動を抑制したり、チェーン53をガイドする。
【0049】
図1~
図7に示すように、本実施の形態では、スプロケット軸51が回転すると、ドライブスプロケット52、チェーン53、および、ドリブンスプロケット54を介して、後輪15に駆動力が伝達されて回転し、鞍乗り型車両10が走行する。
【0050】
鞍乗り型車両10の走行時に、スイングアーム16が揺動すると、チェーン53も揺動する。すなわち、ドライブスプロケット52とドリブンスプロケット54との位置関係が変化することにより、チェーン53とスイングアーム16との位置関係が変化してチェーン53が揺動し、チェーン53がチェーンスライダ70に接触する。このとき、チェーンスライダ70がチェーン53を滑らせガイドするため、チェーン53の揺動が抑制された状態で、チェーン53が回転でき、駆動力が後輪15に伝達される。
【0051】
ここで、チェーンスライダ70はチェーン53と接触して摩耗するため、メンテンナンスなどにより、交換が必要となる。一般に、チェーンスライダ70は、スプロケット軸51に近い部分が摩耗し易く、特に下側部分が摩耗し易い。
【0052】
本実施の形態では、チェーンスライダ70は、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90との分割構造である。その上、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90は車両前後方向に離間されて配置されている。よって、チェーンスライダ70の一部分である第1チェーンスライダ80または第2チェーンスライダ90のみの交換が可能になる為、ランニングコストを抑制し易くなっている。また、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90とが車両前後方向に配置されることで、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90とを消耗し易い位置と消耗し難い位置に分けて配置することができる。すなわち、スプロケット軸51に近い第1チェーンスライダ80が摩耗し易い一方で、スプロケット軸51から離間した第2チェーンスライダ90の摩耗は抑制し易くなっている。よって、一体の構造のように部品全体を交換する必要がなく、必要箇所の部品交換で済む。したがって、無駄な部品の消費を抑え易く、必要十分な部品交換で済ませ易く、メンテナンスが容易である。
【0053】
また、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90とは、前部膨出部61a1と後部膨出部61b1とのみに配置される。よって、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90とをそれぞれの膨出部61a1、61b1の長さに応じた形状とすることにより、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90の小型化及び軽量化をし易くできる。また、チェーン53と第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90との接触面積を小さくし易くできるため、チェーン53と第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90との摺動抵抗を低減し易くできる。
【0054】
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、鞍乗り型車両10は、チェーン53と、チェーンスライダ70と、を有する鞍乗り型車両10において、チェーンスライダ70は、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90とを有し、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90とは別体である。
この構成によれば、チェーンスライダ70の一部分である第1チェーンスライダ80または第2チェーンスライダ90のみの交換が可能になるため、チェーンスライダ70のランニングコストを低減できる。
【0055】
本実施の形態では、パワーユニット12と、パワーユニット12からの駆動力を出力するスプロケット軸51と、スプロケット軸51に支持されたドライブスプロケット52と、を有し、チェーン53は、ドライブスプロケット52に巻き掛けられ、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90とは車両前後方向に離間して配置され、第2チェーンスライダ90は、第1チェーンスライダ80よりもスプロケット軸51の遠くに配置される。
この構成によれば、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90とが車両前後方向に配置されることで、第2チェーンスライダ90を消耗し難い位置に配置することができ、必要十分な部品交換で済ませ易く、メンテナンスが容易であると共に、不要な部品交換を抑制し易くできる。
【0056】
本実施の形態では、スイングアーム16を備え、スイングアーム16はスイングアーム16の一部で車幅方向に膨出する膨出部61a1、61b1を有し、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ90とは膨出部61a1、61b1にのみ配置される。
この構成によれば、膨出部61a1、61b1にのみチェーンスライダ80、90が設けられるため、チェーンスライダ80、90の小型化及び軽量化をし易くできる。また、チェーン53とチェーンスライダ80、90との接触面積を小さくし易くできるため、チェーン53とチェーンスライダ80、90との摺動抵抗を低減し易くできる。
【0057】
本実施の形態では、第1チェーンスライダ80および第2チェーンスライダ90は、上側チェーン接触部82、92と、下側チェーン接触部83、93と、上側チェーン接触部82、92と下側チェーン接触部83、93とを接続する接続部84、91と、を有する。
この構成によれば、上側チェーン接触部82、92と下側チェーン接触部83、93とが接続部84、91で接続されるため、チェーンスライダ80、90の剛性を向上させることができる。
【0058】
本実施の形態では、車両前後方向において、接続部91の長さL1は上側チェーン接触部92と下側チェーン接触部93の長さL2、L3よりも短い。
この構成によれば、チェーンスライダ80、90の剛性を高めつつ、チェーンスライダ80、90を軽量化することができる。
【0059】
本実施の形態では、パワーユニット12と、パワーユニット12からの駆動力を出力するスプロケット軸51と、スプロケット軸51に支持されたドライブスプロケット52と、を有し、チェーン53は、ドライブスプロケット52に巻き掛けられ、第1チェーンスライダ80は、第2チェーンスライダ90に比べてスプロケット軸51の近くに配置され、第1チェーンスライダ80の上側チェーン接触部82は、上側チェーン53aの移動方向に対する上流端部としての後端部が湾曲している。
この構成によれば、チェーン53が第1チェーンスライダ80に引っ掛かり難くすることができる。また、この構成によれば、チェーン53が上方から下方に揺動した際に、チェーン53が引っ掛からずに摺動し易いため、第1チェーンスライダ80及びチェーン53が傷つくことを低減することができる。
【0060】
本実施の形態では、ピボットフレーム19bと、ピボットフレーム19bに揺動可能に支持されたスイングアーム16と、を有し、第1チェーンスライダ80は、ピボットフレーム19bに車両側面視で重なった状態で、スイングアーム16に一点で締め付け固定され、締め付け固定の締結座61e1は車両側面視でピボットフレーム19bと重ならない位置に設けられている。
この構成によれば、スプロケット軸51に近くて消耗の早い第1チェーンスライダ80を車両側面視でピボットフレーム19bと重ならない位置で固定することによって、車幅方向外側から第1チェーンスライダ80の締め付け固定の解除ができる。
【0061】
本実施の形態では、第2チェーンスライダ90は、上側チェーン接触部92と、下側チェーン接触部93と、を備え、上側チェーン接触部92および下側チェーン接触部93には、スイングアーム16の上面61fまたは下面61gとの間に隙間を形成する薄肉部92a、93aが形成されている。
この構成によれば、第2チェーンスライダ90では、チェーン53が上下に揺動して、上側チェーン接触部92や下側チェーン接触部93に接触する際に、接触する上側チェーン接触部92や下側チェーン接触部93が変形して衝撃が吸収され易くなっている。
【0062】
[第2の実施の形態]
本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
【0063】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るチェーンスライダ270の説明図である。
第2の実施の形態では、チェーンスライダ270は、第2チェーンスライダ90に代えて、第2チェーンスライダ290を有する。第2実施の形態の第2チェーンスライダ290は、下側チェーン接触部93に代えて下側チェーン接触部293を有する点が、第1の実施の形態の第2チェーンスライダ90とは異なる。
【0064】
第2の実施の形態の下側チェーン接触部293は、前端部に湾曲面293aを有する。湾曲面293aは、前方に進むに連れて上方に湾曲する。湾曲面293aは前下方に凸に湾曲する。車両側面視において、下側チェーン接触部293の後端部は角張っている。よって、換言すれば、下側チェーン53bの移動方向に対して、下側チェーン接触部293は、前端部(上流端部)に、後端部(下流端部)よりも曲率が小さい湾曲形状の湾曲面293aを有する。第2チェーンスライダ290の下側チェーン接触部293は、車両側面視で直線状に延びる第2チェーンスライダ290の上側チェーン接触部92に比べて大きな曲率を有する。したがって、前方から後方に移動する下側チェーン53bが上下に揺動して、第2チェーンスライダ90の下側チェーン接触部93に当接しても、引っ掛かり難くすることができる。
【0065】
以上説明したように、本発明を適用した第2の実施の形態によれば、チェーンスライダ270は、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ290とを有し、第1チェーンスライダ80と第2チェーンスライダ290とは別体である。よって、第2の実施の形態でも、チェーンスライダ270の一部分である第1チェーンスライダ80または第2チェーンスライダ290のみの交換が可能になるため、実施の形態1と同様に、ランニングコストを低減し易くできる。
【0066】
本実施の形態では、第2チェーンスライダ290の下側チェーン接触部293は、下側チェーン53bの移動方向に対する上流端部としての前端部が湾曲している。
この構成によれば、チェーン53が第2チェーンスライダ290に引っかかり難くすることができる。また、この構成によれば、チェーン53が下方から上方に揺動した際に、チェーン53が引っ掛からずに摺動し易いため、第2チェーンスライダ290及びチェーン53が傷つくことを低減することができる。
【0067】
[第3の実施の形態]
本発明を適用した第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
【0068】
図9は、本発明の第3の実施の形態に係るチェーンスライダ370の説明図である。
第3の実施の形態に係るチェーンスライダ370は、第1チェーンスライダ80に代えて、第3の実施の形態の第1チェーンスライダ380を有する。
第3の実施の形態の第1チェーンスライダ380は、接続部84に代えて、連結接続部384を有する点が、第1の実施の形態の第1チェーンスライダ80とは異なる。
【0069】
第1チェーンスライダ380の連結接続部384は、第1の実施の形態の接続部84が固定孔84a部分で分割されて重ね合わせ可能な構造を有する。すなわち、連結接続部384は、上側の補強部85が形成された第1連結接続部385と、下側の補強部86が形成された第2連結接続部386と、を有する。
【0070】
第1連結接続部385は、上側チェーン接触部92に接続された基部385aを有する。基部385aの下端には、固定孔84aが形成された環状の共締め部385bが形成される。
第2連結接続部386は、下側チェーン接触部93に接続された基部386aを有する。基部386aの上端には、固定孔84aが形成された環状の共締め部386bが形成される。
第1連結接続部385の共締め部385bに、第2連結接続部386の共締め部386bが左右方向に重ね合わされ、ボルト101により、締結座61e1に締結される。
【0071】
第3の実施の形態では、連結接続部384が分離可能である。このため、第1チェーンスライダ380のボルト101を取り外すことにより、スイングアーム16がピボットフレーム19bに連結された状態で、第1チェーンスライダ380をスイングアーム16から取り外し易くなっている。また、スイングアーム16がピボットフレーム19bに連結された状態で、第1チェーンスライダ380をスイングアーム16に装着させることできる。
【0072】
以上説明したように、本発明を適用した第3の実施の形態によれば、チェーンスライダ370は、第1チェーンスライダ380と第2チェーンスライダ90とを有し、第1チェーンスライダ380と第2チェーンスライダ90とは別体である。よって、第3の実施の形態でも、チェーンスライダ370の一部分である第1チェーンスライダ380または第2チェーンスライダ90のみの交換が可能になるため、実施の形態1と同様に、ランニングコストを低減し易くできる。
【0073】
特に、本実施の形態では、第1チェーンスライダ380は、スイングアーム16に一点で締め付け固定され、締結座61e1は車両側面視でピボットフレーム19bと重ならない位置に設けられており、締結座61e1に締結される部分は分割可能な連結接続部384である。
この構成によれば、ピボット軸22を取り外さずに、第1チェーンスライダ380の着脱が可能であり、交換が容易にできる。
【0074】
[他の実施の形態]
上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0075】
上記実施の形態では、チェーンスライダ70、270、370の第1チェーンスライダ80、380と第2チェーンスライダ90、290とは、車両前後方向に離間する別体構造を例示したが、これに限定されない。例えば、上下方向に離間する別体構造でもよい。例えば、第1チェーンスライダ80、380の上側チェーン接触部82と、第2チェーンスライダ90、290の上側チェーン接触部92とを一体とし、第1チェーンスライダ80、380の下側チェーン接触部83と第2チェーンスライダ90、290の下側チェーン接触部93、293とを一体として、上下方向に離間する第1チェーンスライダと、第2チェーンスライダとしてもよい。
【0076】
上記実施の形態では、チェーンスライダ70、270、370は、第1チェーンスライダ80、380と第2チェーンスライダ90、290とを有する構成を説明したが、第3チェーンスライダを有してもよい。すなわち、チェーンスライダ70、270、370の分割構造は、二つに限定されず、任意の複数のチェーンスライダに分割された構造とし、それぞれを別体にしてもよい。
【0077】
上記実施の形態では、車両前後方向において、第2チェーンスライダ90、290では、接続部91の長さL1は、上側チェーン接触部92の長さL2と下側チェーン接触部93、293の長さL3の両方よりも短い構成を例示したが、これに限定されない。例えば、接続部91の長さL1は、上側チェーン接触部92の長さL2、または、下側チェーン接触部93、293の長さL3の一方よりも短ければよい。
【0078】
上記実施の形態では、駆動源の一例としてのパワーユニット12は、内燃機関の構成を例示したが、これに限定されない。例えば、駆動源としては、バッテリから電力を受けて駆動する電動モータでもよい。
【0079】
上記実施の形態では、鞍乗り型車両10として前輪13と後輪15とを有する自動二輪車を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、前輪または後輪を2つ備えた3輪の鞍乗り型車両や4輪以上を備えた鞍乗り型車両に適用可能である。
【0080】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0081】
(構成1)チェーンと、チェーンスライダと、を有する鞍乗り型車両において、前記チェーンスライダは、第1チェーンスライダと第2チェーンスライダとを有し、前記第1チェーンスライダと前記第2チェーンスライダとは別体であることを特徴とする鞍乗り型車両。
この構成によれば、チェーンスライダの一部分である第1チェーンスライダまたは第2チェーンスライダのみの交換が可能になるため、チェーンスライダのランニングコストを低減できる。
【0082】
(構成2)駆動源と、前記駆動源からの駆動力を出力するスプロケット軸と、前記スプロケット軸に支持されたドライブスプロケットと、を有し、前記チェーンは、前記ドライブスプロケットに巻き掛けられ、前記第1チェーンスライダと前記第2チェーンスライダとは車両前後方向に離間して配置され、前記第2チェーンスライダは、前記第1チェーンスライダよりも前記スプロケット軸の遠くに配置されることを特徴とする構成1に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、第1チェーンスライダと第2チェーンスライダとが車両前後方向に配置されることで、第2チェーンスライダを消耗し難い位置に配置することができ、必要十分な部品交換で済ませ易く、メンテナンスが容易であると共に、不要な部品交換を抑制し易くできる。
【0083】
(構成3)スイングアームを備え、前記スイングアームは、前記スイングアームの一部で車幅方向に膨出する膨出部を有し、前記第1チェーンスライダと前記第2チェーンスライダとは前記膨出部にのみ配置されることを特徴とする構成1または2に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、膨出部にのみチェーンスライダが設けられるため、チェーンスライダの小型化及び軽量化をし易くできる。また、チェーンとチェーンスライダとの接触面積を小さくし易くできるため、チェーンとチェーンスライダとの摺動抵抗を低減し易くできる。
【0084】
(構成4)前記第1チェーンスライダおよび前記第2チェーンスライダの少なくともいずれか一方は、上側チェーン接触部と、下側チェーン接触部と、前記上側チェーン接触部と前記下側チェーン接触部とを接続する接続部と、を有することを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、上側チェーン接触部と下側チェーン接触部とが接続部で接続されるため、チェーンスライダの剛性を向上させることができる。
【0085】
(構成5)車両前後方向において、前記接続部の長さは前記上側チェーン接触部または前記下側チェーン接触部の長さよりも短いことを特徴とする構成4に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、チェーンスライダの剛性を高めつつ、チェーンスライダを軽量化することができる。
【0086】
(構成6)駆動源と、前記駆動源からの駆動力を出力するスプロケット軸と、前記スプロケット軸に支持されたドライブスプロケットと、を有し、前記チェーンは、前記ドライブスプロケットに巻き掛けられ、前記第1チェーンスライダは、前記第2チェーンスライダに比べて前記スプロケット軸の近くに配置され、前記第1チェーンスライダの上側チェーン接触部は、上側チェーンの移動方向に対する上流端部が湾曲していることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、チェーンが第1チェーンスライダに引っ掛かり難くすることができる。また、この構成によれば、チェーンが上方から下方に揺動した際に、チェーンが引っ掛からずに摺動し易いため、第1チェーンスライダ及びチェーンが傷つくことを低減することができる。
【0087】
(構成7)前記第2チェーンスライダの下側チェーン接触部は、下側チェーンの移動方向に対する上流端部が湾曲していることを特徴とする構成6に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、チェーンが第2チェーンスライダに引っかかり難くすることができる。また、この構成によれば、チェーンが下方から上方に揺動した際に、チェーンが引っ掛からずに摺動し易いため、第2チェーンスライダ及びチェーンが傷つくことを低減することができる。
【0088】
(構成8)ピボットフレームと、前記ピボットフレームに揺動可能に支持されたスイングアームと、を有し、前記第1チェーンスライダまたは前記第2チェーンスライダの一方は、前記ピボットフレームに車両側面視で重なった状態で、前記スイングアームに締め付け固定され、前記締め付け固定の位置は車両側面視で前記ピボットフレームと重ならない位置に設けられていることを特徴とする構成1から7のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、第1チェーンスライダまたは第2チェーンスライダの一方のチェーンスライダが、ピボットフレームによって保護されると共に、一方のチェーンスライダを車両側面視でピボットフレームと重ならない位置で固定することによって、車幅方向外側から一方のチェーンスライダの締め付け固定の解除ができる。
【0089】
(構成9)前記第2チェーンスライダは、上側チェーン接触部と、下側チェーン接触部と、を備え、前記上側チェーン接触部および下側チェーン接触部の少なくともいずれか一方には、スイングアームの外表面との間に隙間を形成する薄肉部が形成されていることを特徴とする構成1から8のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、第2チェーンスライダでは、チェーンが上下に揺動して、上側チェーン接触部や下側チェーン接触部に接触する際に、接触する上側チェーン接触部や下側チェーン接触部が変形して衝撃が吸収され易くなっている。
【符号の説明】
【0090】
10 鞍乗り型車両
12 パワーユニット(駆動源)
16 スイングアーム
51 スプロケット軸
52 ドライブスプロケット
53 チェーン
53a 上側チェーン
53b 下側チェーン
61f 上面(外表面)
61g 下面(外表面)
61a1 前部膨出部(膨出部)
61b1 後部膨出部(膨出部)
61e1 締結座(締め付け固定の位置)
70 チェーンスライダ
80 第1チェーンスライダ
82 上側チェーン接触部
83 下側チェーン接触部
84 接続部
90 第2チェーンスライダ
91 接続部
92 上側チェーン接触部
92a 薄肉部
93 下側チェーン接触部
93a 薄肉部
270 チェーンスライダ
290 第2チェーンスライダ
293 下側チェーン接触部
370 チェーンスライダ
380 第1チェーンスライダ
384 連結接続部(接続部)
L1 接続部の長さ
L2 上側チェーン接触部の長さ
L3 下側チェーン接触部の長さ