(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179271
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】泡状の毛髪又は泡状頭飾製品用繊維処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/31 20060101AFI20241219BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K8/31
A61Q5/00
A61K8/891
A61K8/81
A61K8/37
A61K8/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097984
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 優
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD151
4C083AD152
4C083BB13
4C083BB14
4C083CC31
4C083DD08
4C083DD47
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさ、並びに乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさを発現し得る、泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物を提供する。
【解決手段】泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物であって、前記泡状処理剤組成物は、(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンを含有する液状処理剤組成物を泡状に吐出したものであり、前記液状処理剤組成物中の前記成分(A)の含有量が0.1質量%以上75質量%以下であり、前記液状処理剤組成物中の前記成分(B)の含有量が10質量%以上95質量%以下であり、前記液状処理剤組成物の吐出形式がノンエアゾール形式である、泡状処理剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物であって、
前記泡状処理剤組成物は、(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンを含有する液状処理剤組成物を泡状に吐出したものであり、
前記液状処理剤組成物中の前記成分(A)の含有量が0.1質量%以上75質量%以下であり、
前記液状処理剤組成物中の前記成分(B)の含有量が10質量%以上95質量%以下であり、
前記液状処理剤組成物の吐出形式がノンエアゾール形式である、泡状処理剤組成物。
【請求項2】
前記成分(A)が炭化水素油及びシリコーン油からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の泡状処理剤組成物。
【請求項3】
前記成分(B)が1価カルボン酸と1価アルコールとのエステル、1価カルボン酸と多価アルコールとのエステル、及び、多価カルボン酸と1価アルコールとのエステルからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載の泡状処理剤組成物。
【請求項4】
前記成分(C)がトリメチルシロキシケイ酸を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の泡状処理剤組成物。
【請求項5】
泡吐出型の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤であって、
前記泡吐出型処理剤は、(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンを含有する液状処理剤組成物を泡吐出容器に収容してなり、
前記液状処理剤組成物中の前記成分(A)の含有量が、0.1質量%以上75質量%以下であり、
前記液状処理剤組成物中の前記成分(B)の含有量が、10質量%以上95質量%以下であり、
前記泡吐出容器がノンエアゾール形式の泡吐出容器である、泡吐出型処理剤。
【請求項6】
前記ノンエアゾール形式の泡吐出容器が、ポンプフォーマー容器、スクイズフォーマー容器又はトリガースプレー容器である、請求項5に記載の泡吐出型処理剤。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の泡状処理剤組成物を毛髪又は頭飾製品用繊維に適用した後、該組成物を洗い流さずに乾燥させる工程を含む、毛髪又は頭飾製品用繊維の処理方法。
【請求項8】
多剤式の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤であって、
前記多剤式処理剤は、1種の液状組成物を1つの泡吐出容器に収容してなる構成を2以上備えるか、又は、2種以上の液状組成物を、内部に2以上の区画を備えた1つの泡吐出容器の該区画に各々収容してなるものであり、
前記多剤式処理剤の使用時に、すべての前記液状組成物を、泡状に吐出する前、泡状に吐出すると同時に、又は泡状に吐出した後に混合して、泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物を調製して用いるものであり、
前記泡状の処理剤組成物は、(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンを含有し、
前記泡吐出容器がノンエアゾール形式の泡吐出容器である、多剤式処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアオイル等の非水系毛髪化粧料は、毛髪に光沢や滑らかな感触を付与し、スタイリング性も向上させることができる。
低粘度のヘアオイルは毛髪適用時に均一に広がりやすい反面、使用時に垂れやすいという欠点がある。一方でヘアオイルを高粘度化すると、使用時の垂れやすさは改善されるが、毛髪への適用時に均一に広がり難くなり、毛髪への広がりやすさと垂れにくさとの両立が困難であった。
【0003】
そこで、泡吐出容器に収容し、泡状に吐出して用いる各種化粧料組成物が検討されている。泡状の毛髪化粧料組成物によれば、毛髪への広がりやすさと垂れにくさとを両立できると考えられる。
【0004】
泡状に吐出して用いることが可能な化粧料組成物に関して、シリコーン化合物を含むものが知られている。
例えば特許文献1には、空気と混合することによって発泡でき、噴射剤を含まない発泡性透明組成物であって、水非混和性溶媒及びシロキサン樹脂発泡安定剤を含む組成物が、化粧品用途に使用できることが記載されている。
特許文献2には、所定構造のシリコーン化合物、所定のシロキサン系の非イオン性界面活性剤をそれぞれ所定量含有し、さらに水を含む化粧料が、ムース状の製品形態にも適用できること、感触、化粧持続性等に優れることが記載されている。
特許文献3には、親水性官能基を有する特定組成の架橋型オルガノポリシロキサンを含有する化粧料が、ムース状であってもよいこと、安定性が高く、塗布した際の油相と水相による感触の変化度合が大きく、かつ感触の変化が生じるまでの時間が長いことが開示されている。
【0005】
また非特許文献1には、トリメチルシロキシケイ酸、イソドデカン等を含む泡状オイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/003946号
【特許文献2】特開2006-213730号公報
【特許文献3】特開2015-137265号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dow“Foaming Oil Formulation 01914”、[online]、[2023年3月9日検索]、インターネット<URL:https://www.dow.com/documents/en-us/formulation/27/27-17/27-1799-01-air-oil-1914.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記文献に開示された技術では、毛髪又は頭飾製品用繊維(以下、頭飾製品用繊維を単に「繊維」ともいう)への適用時に広がりやすく、使用時に垂れにくいことに加えて、毛髪又は繊維に適用した後には泡が消えやすく、並びに毛髪又は繊維に適用し、次いで乾燥させた後の毛髪又は繊維において良好な指通りが得られるという特性をすべて満たす泡状処理剤組成物は達成されていない。
本発明は、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさ、並びに乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさを発現し得る、泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、揮発性油、25℃で液状の脂肪酸エステル(但し、植物油トリグリセリドを除く)を所定量含有し、及び架橋型シリコーンを含有する液状処理剤組成物を所定の形式で泡状に吐出した泡状処理剤組成物が、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、下記に関する。
[1]泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物であって、
前記泡状処理剤組成物は、(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンを含有する液状処理剤組成物を泡状に吐出したものであり、
前記液状処理剤組成物中の前記成分(A)の含有量が0.1質量%以上75質量%以下であり、
前記液状処理剤組成物中の前記成分(B)の含有量が10質量%以上95質量%以下であり、
前記液状処理剤組成物の吐出形式がノンエアゾール形式である、泡状処理剤組成物。
[2]泡吐出型の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤であって、
前記泡吐出型処理剤は、(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンを含有する液状処理剤組成物を泡吐出容器に収容してなり、
前記液状処理剤組成物中の前記成分(A)の含有量が、0.1質量%以上75質量%以下であり、
前記液状処理剤組成物中の前記成分(B)の含有量が、10質量%以上95質量%以下であり、
前記泡吐出容器がノンエアゾール形式の泡吐出容器である、泡吐出型処理剤。
[3]上記[1]に記載の泡状処理剤組成物を毛髪又は頭飾製品用繊維に適用した後、該組成物を洗い流さずに乾燥させる工程を含む、毛髪又は頭飾製品用繊維の処理方法。
[4]多剤式の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤であって、
前記多剤式処理剤は、1種の液状組成物を1つの泡吐出容器に収容してなる構成を2以上備えるか、又は、2種以上の液状組成物を、内部に2以上の区画を備えた1つの泡吐出容器の該区画に各々収容してなるものであり、
前記多剤式処理剤の使用時に、すべての前記液状組成物を、泡状に吐出する前、泡状に吐出すると同時に、又は泡状に吐出した後に混合して、泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物を調製して用いるものであり、
前記泡状の処理剤組成物は、(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンを含有し、
前記泡吐出容器がノンエアゾール形式の泡吐出容器である、多剤式処理剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさ、並びに乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさを発現し得る、泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[定義]
本明細書において「泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物」とは、液状の毛髪処理剤組成物を泡状に吐出して得られる泡状の毛髪処理剤組成物、又は、液状の頭飾製品用繊維処理剤組成物を泡状に吐出して得られる泡状の頭飾製品用繊維処理剤組成物を意味する。ここでいう「泡状」とは、好ましくは、実施例に記載の方法で評価される発泡倍率が2倍を超えるものをいう。
本明細書において、泡状の毛髪処理剤組成物と泡状の頭飾製品用繊維処理剤組成物とをまとめて「泡状処理剤組成物」ということがある。また、液状の毛髪処理剤組成物と液状の頭飾製品用繊維処理剤組成物とをまとめて「液状処理剤組成物」ということがある。
本明細書において、「毛髪」とは、主としてヒトの頭髪を意味するが、ヒトの頭部から切り離された毛髪も包含する。
本明細書において、「頭飾製品」とは、例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー、ドールヘアー等を意味する。
本明細書において、「頭飾製品用繊維」とは、前記頭飾製品に用いられる繊維を意味する。
本明細書において「液状」とは、25℃において流動性を有することをいう。
本明細書において、液状処理剤組成物中の各成分の含有量は、泡状処理剤組成物中の各成分の含有量と同じであるとみなす。
また本明細書において「成分Xを含む」又は「成分Xを含有する」とは、「成分Xを配合してなる」ことをも意味する。
【0012】
[泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物(泡状処理剤組成物)]
本発明の泡状処理剤組成物は、(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンを含有する液状処理剤組成物を泡状に吐出したものであり、前記液状処理剤組成物中の前記成分(A)の含有量が0.1質量%以上75質量%以下であり、前記液状処理剤組成物中の前記成分(B)の含有量が10質量%以上95質量%以下であり、前記液状処理剤組成物の吐出形式がノンエアゾール形式である。
本発明の泡状処理剤組成物は上記構成であることにより、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさに加え、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさ、並びに乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさを発現し得る。
【0013】
本発明の泡状処理剤組成物が上記効果を奏する理由については定かではないが、以下のように推察される。
本発明の泡状処理剤組成物は、液状処理剤組成物を所定の吐出形式で泡状に吐出されたものである。これにより、該組成物は使用時には高い泡粘度を有するため垂れにくく、毛髪又は繊維への適用時には低粘度化して広がりやすくなると考えられる。
液状処理剤組成物は(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンを含有する。成分(A)及び成分(C)は低表面張力成分であり、高い起泡性を発現する。よって液状処理剤組成物が成分(A)及び成分(C)を含有することで、泡状に吐出した際の発泡倍率が高くなり、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさが向上する。また成分(A)が揮発性であることにより、得られた泡状処理剤組成物を毛髪又は繊維に適用した後に泡が消えやすくなり、取り扱い性が向上すると考えられる。
【0014】
一方で泡状処理剤組成物中の成分(A)の含有量が多すぎると、起泡性が低下したり、毛髪又は繊維への適用後に成分(A)が揮発して乾燥後の毛髪又は繊維の指通りが低下したりする傾向がある。また成分(A)の含有量が少なすぎると、泡粘度が高くなり、泡が消えにくくなる傾向がある。しかしながら、本発明の泡状処理剤組成物では、成分(A)の含有量を所定の範囲とし、且つ所定量の成分(B)を併用することで、乾燥後の毛髪又は繊維においても油剤成分である成分(B)が残留し、良好な指通りが得られると考えられる。また成分(C)であるシリコーンが架橋型であると、起泡性及び泡安定性が高いため、発泡倍率が向上し、さらに、乾燥後の毛髪又は繊維においてもより良好な指通りが得られると考えられる。
なお、本発明の作用メカニズムは上記に限定されるものではない。
【0015】
〔毛髪又は頭飾製品用繊維〕
本発明の処理剤の適用対象は、毛髪又は頭飾製品用繊維である。これらの中でも、毛髪がより好ましい。
頭飾製品用繊維としては、天然由来繊維、合成繊維のいずれでもよいが、天然由来繊維が好ましい。天然由来繊維とは、天然の動植物から採取した繊維(人毛を除く)、又は蛋白質、多糖類等を原料として人工的に製造された繊維をいう。これらのうち、獣毛、又はケラチン、コラーゲン、カゼインのほか、大豆、落花生、トウモロコシ、絹等に由来する蛋白質などの蛋白質若しくは多糖類等を原料として人工的に製造された繊維が好ましく、ケラチン、コラーゲン、カゼイン、大豆蛋白質、落花生蛋白質、トウモロコシ蛋白質、絹蛋白質(例えば絹フィブロイン)等を原料とする再生蛋白質繊維がより好ましく、コラーゲンを原料とする再生コラーゲン繊維、絹フィブロインを原料とする再生絹繊維等の再生蛋白質繊維がより好ましく、再生コラーゲン繊維がさらに好ましい。
再生コラーゲン繊維は、公知の技術で製造することができる。再生コラーゲン繊維の組成はコラーゲン100%である必要はなく、品質改良のための天然ポリマー、合成ポリマー、添加剤等が含まれていてもよい。さらには、再生コラーゲン繊維は後加工又は後処理されたものであってもよい。再生コラーゲン繊維の形態としてはフィラメントが好ましい。フィラメントは一般にボビン巻きしたものや箱詰めした状態から取り出される。また、再生コラーゲン繊維の製造工程で乾燥工程から出てきたフィラメントを直接利用することもできる。
【0016】
合成繊維としては、合成樹脂を主成分として含む繊維が挙げられる。合成繊維の製造容易性の観点、及び、頭髪に近い風合いを得る観点から、該合成樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂であり、より好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、及びモダアクリル樹脂(アクリロニトリルと塩化ビニルの共重合体)からなる群から選ばれる1種以上である。ここでいう「主成分」とは、合成繊維中の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であって、100質量%以下の成分を意味する。
合成繊維は、上記合成樹脂以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に難燃剤、難燃助剤、光又は熱安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等の各種成分を含有することができる。
【0017】
<成分(A):揮発性油>
液状処理剤組成物及び泡状処理剤組成物(以下、これらを纏めて単に「処理剤組成物」ともいう)は、成分(A)として揮発性油を含有する。本明細書において揮発性油とは、25℃で液状であって、常圧(1013.25hPa)における沸点が260℃以下であり、25℃における蒸気圧が1.0×10-1Pa以上の油剤をいう。
【0018】
成分(A)は、発泡倍率、泡粘度、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさ、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさの向上の観点から、炭化水素油及びシリコーン油からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
成分(A)中の炭化水素油及びシリコーン油の含有量は、泡粘度、発泡倍率、毛髪又は繊維への広がりやすさ、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさ、使用時の垂れにくさの向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%以下である。
【0019】
成分(A)として用いられる炭化水素油としては、例えばn-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン等の直鎖状炭化水素;イソデカン、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテン等の分岐鎖状炭化水素;シクロデカン、シクロドデカン等の環状炭化水素が挙げられる。
【0020】
成分(A)として用いられるシリコーン油としては、オクタメチルトリシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、メチルトリメチコン、メチルポリシロキサン等の直鎖状又は分岐鎖状シリコーン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン等の環状シリコーンが挙げられる。
【0021】
成分(A)は、1種又は2種以上を用いることができる。
上記の中でも、発泡倍率、泡粘度、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさ、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさの向上の観点から、成分(A)は、好ましくは炭化水素油を含み、より好ましくは直鎖状炭化水素及び分岐鎖状炭化水素からなる群から選ばれる1種以上を含み、さらに好ましくはイソドデカン、イソヘキサデカン、テトラデカン及び水添ポリイソブテンからなる群から選ばれる1種以上を含む。成分(A)中の炭化水素油、より好ましくは直鎖状炭化水素及び分岐鎖状炭化水素からなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくはイソドデカン、イソヘキサデカン、テトラデカン及び水添ポリイソブテンからなる群から選ばれる1種以上の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であって、100質量%以下である。
【0022】
<成分(B):成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル>
処理剤組成物は、成分(B)として、前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステルを含有する。すなわち成分(B)は、25℃で液状であって、揮発性油及び植物油トリグリセリドのいずれにも該当しない脂肪酸エステルである。なお成分(B)には、25℃でペースト状のものも含まれる。
【0023】
成分(B)は、好ましくは、1価カルボン酸と1価アルコールとのエステル、1価カルボン酸と多価アルコールとのエステル、及び、多価カルボン酸と1価アルコールとのエステルからなる群から選ばれる1種以上を含む。
【0024】
1価カルボン酸と1価アルコールとのエステルとして、下記一般式(1)で表されるエステルが挙げられる。
R1-COO-R2 (1)
一般式(1)において、R1は、ヒドロキシ基が置換していてもよく、炭素数1以上25以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は炭素数6以上24以下の芳香族含有炭化水素基を示し、R2は、炭素数1以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。
【0025】
R1がアルキル基又はアルケニル基の場合、炭素数は、好ましくは7以上であり、そして、好ましくは23以下、より好ましくは21以下、さらに好ましくは19以下、よりさらに好ましくは17以下である。
R1が芳香族含有炭化水素基の場合、炭素数は、好ましくは6以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
R2の炭素数は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは28以下、より好ましくは24以下、さらに好ましくは20以下である。
よりさらに好ましくは、一般式(1)において、R1が炭素数7以上17以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、R2が炭素数2以上24以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基であるエステルである。
【0026】
一般式(1)で表されるエステルの具体例としては、イソオクタン酸セチル、イソオクタン酸ステアリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、酢酸ラノリン、ヒマシ油脂肪酸メチル(リシノレイン酸メチル)、及び安息香酸アルキル(アルキルの炭素数12~15)からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0027】
1価カルボン酸と1価アルコールとのエステルとして、下記一般式(2)で表されるエステルも挙げられる。
R3-COO-(AO)n-R4 (2)
一般式(2)において、R3は、ヒドロキシ基が置換していてもよく、炭素数1以上25以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R4は炭素数6以上24以下の芳香族含有炭化水素基を示す。AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を示し、nは1以上50以下の平均付加モル数を表す。
R3は、好ましくは炭素数が7以上であり、そして、好ましくは23以下、より好ましくは21以下、さらに好ましくは19以下のアルキル基である。
R4は、好ましくは炭素数が6以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下の芳香族含有炭化水素基、よりさらに好ましくはベンジル基である。
AO基は、好ましくはプロピレンオキシ基であり、nは、好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上5以下である。
一般式(2)で表されるエステルの具体例としては、ミリスチン酸とベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体とのエステル(クローダ社製「クロダモルSTS」)、2-エチルヘキサン酸とベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体とのエステル(クローダ社製「クロダモルSFX」)等が挙げられる。
【0028】
1価カルボン酸と多価アルコールとのエステルとして、下記一般式(3)で表されるエステルが挙げられる。
R5-(OCOR6)p (3)
一般式(3)において、R5は多価アルコール残基を示し、好ましくは炭素数2以上10以下の炭化水素基であり、R6は炭素数1以上25以下の1価カルボン酸残基を示し、pは2以上10以下の整数を示す。
なお、R5はエーテル結合を有してもよいが、好ましくは炭素数2以上10以下の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基である。また、pは前記多価アルコールが有するヒドロキシ基と同じ数である。
R6は、好ましくは炭素数が7以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは23以下、より好ましくは21以下、さらに好ましくは19以下のアルキル基である。
よりさらに好ましくは、一般式(3)において、R5がグリセリン残基又はペンタエリスリトール残基であり、R6が炭素数7以上19以下のアルキル基であるエステルである。
【0029】
一般式(3)で表されるエステルの具体例としては、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール、ジイソステアリン酸プロパンジオール、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル〔別名:トリエチルヘキサノイン〕、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0030】
多価カルボン酸と1価アルコールとのエステルとしては、下記一般式(4)で表されるエステルも挙げられる。
R7-(COOR8)q (4)
一般式(4)において、R7は炭素数2以上10以下の多価カルボン酸残基であり、R8は炭素数1以上24以下の1価アルコール残基を示し、qは2以上10以下の整数である。また、qは前記多価カルボン酸が有するカルボキシ基と同じ数である。
R8は、好ましくは炭素数3以上、より好ましくは6以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下である。
よりさらに好ましくは、一般式(4)において、R7がトリメリット酸残基であり、R8が炭素数6以上18以下の分岐鎖アルキル基であるエステルである。
【0031】
一般式(4)で表されるエステルの具体例としては、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、トリメリット酸トリ2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、発泡倍率、泡粘度、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさ、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさの向上の観点から、成分(B)は、好ましくは前記一般式(1)で表される、1価カルボン酸と1価アルコールとのエステル、前記一般式(3)で表される、1価カルボン酸と多価アルコールとのエステル、及び、前記一般式(4)で表される、多価カルボン酸と1価アルコールとのエステルからなる群から選ばれる1種以上を含み、より好ましくは、前記一般式(1)において、R1が炭素数7以上17以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、R2が炭素数2以上24以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であるエステル、及び、前記一般式(3)において、R5がグリセリン残基であり、R6が炭素数7以上19以下のアルキル基であるエステルからなる群から選ばれる1種以上を含み、さらに好ましくはイソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、及びトリエチルヘキサノインからなる群から選ばれる1種以上を含む。
【0033】
なお、発泡倍率及び泡粘度の向上の観点から、本発明に用いる成分(A)の表面張力は、成分(B)の表面張力よりも高いことか好ましい。具体的には、成分(A)の表面張力と、成分(B)を成分(A)に溶かした溶液の表面張力との差が0mN/m超となることが好ましい。
さらに好ましくは、下記方法により算出される成分(A)の表面張力と、成分(B)を成分(A)に溶かした溶液の表面張力との差(静的表面張力の低下量)が、好ましくは0mN/m超であり、より好ましくは0.5mN/m以上、さらに好ましくは0.7mN/m以上、よりさらに好ましくは1.0mN/m以上、よりさらに好ましくは1.5mN/m以上、よりさらに好ましくは1.7mN/m以上、よりさらに好ましくは1.8mN/m以上、よりさらに好ましくは2.0mN/m以上である。
成分(B)を成分(A)に溶解させ、濃度が0.5質量%の溶液を調製する。次いで、該溶液及び成分(A)に対して、表面張力計(たとえば、KRUSS社製表面張力計「製品名:K100」)を用いて、Du Nouy法により1mm/minの速度でリングを引き上げ、25℃での静的表面張力をそれぞれ測定する。次いで、成分(A)単独の静的表面張力から該溶液の静的表面張力を差し引いた値を静的表面張力の低下量(mN/m)として算出する[(静的表面張力の低下量)=(成分(A)単独の静的表面張力)-(成分(B)の成分(A)溶液の静的表面張力)]。
上記静的表面張力の低下量の上限は特に限定されないが、例えば10.0mN/m以下であってもよく、7.0mN/m以下であってもよく、5.0mN/m以下であってもよく、3.5mN/m以下であってもよく、3.0mN/m以下であってもよい。
【0034】
<成分(C):架橋型シリコーン>
処理剤組成物は、成分(C)として架橋型シリコーンを含有する。本明細書において架橋型シリコーンとは、架橋構造を含むシリコーンであり、例えば、RSiO3/2で表されるT単位(Rは置換基を有していてもよい炭化水素基又はヒドロキシ基を示す。)及びSiO4/2で表されるQ単位からなる群から選ばれる1種以上の単位を含むシリコーン、そのクロスポリマー、及びその他のシリコーンクロスポリマーが挙げられる。
発泡倍率、泡粘度、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさ、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさ、並びに乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさの向上の観点から、成分(C)は、好ましくは、SiO4/2で表されるQ単位を含むシリコーン又はそのクロスポリマーを含み、より好ましくは、シロキシケイ酸類又はそのクロスポリマーを含む。
【0035】
成分(C)の具体例としては、トリメチルシロキシケイ酸、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸、フッ素変性アルキルジメチルシロキシケイ酸、及び、これらシロキシケイ酸類をジメチコノールにより架橋したクロスポリマーが挙げられる。
フッ素変性アルキルジメチルシロキシケイ酸としては、トリフルオロアルキルジメチルトリメチルシロキシケイ酸が挙げられ、INCI名「トリフルオロプロピルジメチル/トリメチルシロキシシリケート(Trifluoropropyldimethyl/Trimethylsiloxysilicate)」の、トリフルオロプロピルジメチルトリメチルシロキシケイ酸等が挙げられる。また、シロキシケイ酸類をジメチコノールにより架橋したクロスポリマーとしては、INCI名「(トリメチルシロキシケイ酸/ジメチコノール)クロスポリマー」等が挙げられる。
【0036】
上記の中でも、発泡倍率、泡粘度、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさ、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさ、並びに乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさの向上の観点から、成分(C)は、さらに好ましくは、トリメチルシロキシケイ酸、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸、及びフッ素変性アルキルジメチルシロキシケイ酸からなる群から選ばれる1種以上を含み、よりさらに好ましくはトリメチルシロキシケイ酸を含む。
成分(C)中のトリメチルシロキシケイ酸の含有量は、発泡倍率、泡粘度、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさ、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさ、並びに乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさの向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%以下である。
【0037】
成分(C)として市販品を用いることもできる。トリメチルシロキシケイ酸の市販品としては、信越化学工業(株)製のKF-7312J(50質量%-デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)、KF-9021(50質量%-デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)、X-21-5249(50質量%-デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)、X-21-5595(60質量%-イソドデカン溶液)、X-21-5616(60質量%-イソドデカン溶液)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のSS4267(35質量%-ジメチルポリシロキサン溶液)、SR1000、SS4230(45質量%-シクロペンタシロキサン溶液)、SS4267(35質量%-ジメチルポリシロキサン溶液)、Silsoft74(75質量%-イソドデカン溶液)、ダウ・東レ(株)製のBY11-018(30質量%-シクロペンタシロキサン溶液)、MQ-1600 Solid Resin、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のBELSIL TMS 803等が挙げられる。
フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸の市販品としては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のSilShine 151等が挙げられる。
フッ素変性アルキルジメチルシロキシケイ酸の市販品としては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のXS66-B8226(50質量%-シクロペンタシロキサン溶液)、XS66-C1191、XS66-B8636(50質量%-ジメチコン溶液)等が挙げられる。
また、トリメチルシロキシケイ酸のクロスポリマーの市販品としては、ダウ・東レ(株)製のDOWSIL FC-5002 IDD Resin Gum((トリメチルシロキシケイ酸/ジメチコノール)クロスポリマーの40質量%-イソドデカン溶液)等が挙げられる。
【0038】
なお、発泡倍率及び泡粘度の向上の観点から、本発明に用いる成分(B)の表面張力は、成分(C)の表面張力よりも高いことが好ましい。具体的には、成分(B)の表面張力と、成分(C)を成分(B)に溶かした溶液の表面張力との差が0mN/m超となることが好ましい。
さらに好ましくは、下記方法により算出される成分(B)の表面張力と、成分(C)を成分(B)に溶かした溶液の表面張力との差(静的表面張力の低下量)が、好ましくは0mN/m超であり、より好ましくは0.5mN/m以上、さらに好ましくは0.7mN/m以上、よりさらに好ましくは1.0mN/m以上、よりさらに好ましくは1.5mN/m以上、よりさらに好ましくは1.7mN/m以上、よりさらに好ましくは1.8mN/m以上、よりさらに好ましくは2.0mN/m以上である。
成分(C)を成分(B)に溶解させ、濃度が0.5質量%の溶液を調製する。次いで、該溶液及び成分(B)に対して、表面張力計(たとえば、KRUSS社製表面張力計「製品名:K100」)を用いて、Du Nouy法により1mm/minの速度でリングを引き上げ、25℃での静的表面張力をそれぞれ測定する。次いで、成分(B)単独の静的表面張力から該溶液の静的表面張力を差し引いた値を静的表面張力の低下量(mN/m)として算出する[(静的表面張力の低下量)=(成分(B)単独の静的表面張力)-(成分(C)の成分(B)溶液の静的表面張力)]。
上記静的表面張力の低下量の上限は特に限定されないが、例えば10.0mN/m以下であってもよく、7.0mN/m以下であってもよく、5.0mN/m以下であってもよく、3.5mN/m以下であってもよく、3.0mN/m以下であってもよい。
【0039】
<含有量>
処理剤組成物中の成分(A)の含有量は、毛髪又は繊維への広がりやすさ、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさの向上の観点から、0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上である。また、発泡倍率、泡粘度、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさ、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさ、及び乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさの向上の観点から、75質量%以下であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0040】
処理剤組成物中の成分(B)の含有量は、発泡倍率、泡粘度、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさ、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさ、及び乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさの向上の観点から、10質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。また、発泡倍率、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさの向上の観点から、95質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは75質量%以下、よりさらに好ましくは70質量%以下、よりさらに好ましくは65質量%以下、よりさらに好ましくは60質量%以下、よりさらに好ましくは55質量%以下である。
【0041】
処理剤組成物中の成分(C)の含有量は、発泡倍率、泡粘度、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさ、及び毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさの向上の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、よりさらに好ましくは2質量%以上、よりさらに好ましくは5質量%以上である。また、発泡倍率、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさの向上の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、よりさらに好ましくは25質量%以下、よりさらに好ましくは20質量%以下、よりさらに好ましくは15質量%以下である。
【0042】
処理剤組成物中の成分(A)~(C)の合計含有量は、発泡倍率、泡粘度、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさ、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさ、並びに乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさの向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%以下である。
【0043】
処理剤組成物中の成分(B)の含有量に対する成分(A)の含有量の質量比[(A)/(B)]は、毛髪又は繊維への広がりやすさ、及び毛髪又は繊維適用後の泡の消えやすさの向上の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.60以上、さらに好ましくは0.70以上である。また、使用時の垂れにくさ、及び乾燥後の毛髪又は繊維の指通りの観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下、さらに好ましくは5.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。
【0044】
処理剤組成物中の成分(C)の含有量に対する成分(B)の含有量の質量比[(B)/(C)]は、使用時の垂れにくさ、及び乾燥後の毛髪又は繊維の指通りの向上の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは1.0以上、さらに好ましくは2.0以上である。また、毛髪又は繊維への広がりやすさの向上の観点から、好ましくは100以下、より好ましは50以下、さらに好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下である。
【0045】
処理剤組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計量に対する成分(C)の質量比[(C)/{(A)+(B)}]は、毛髪又は繊維への広がりやすさ、及び毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさの観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.50以上である。また、乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさの向上の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下である。
【0046】
<その他の成分>
処理剤組成物には、以上の成分のほか、通常毛髪化粧料に配合される成分を適宜含有させることができる。該成分としては、例えば、成分(A)~(C)以外の油剤;抗フケ剤;ビタミン剤;殺菌剤;抗炎症剤;防腐剤;キレート剤;保湿剤;染料、顔料等の着色剤;エキス類;パール化剤;香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;光触媒;シアバター;界面活性剤;有機酸等が挙げられる。
【0047】
成分(A)~(C)以外の油剤としては、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ミネラルオイル、ポリブテン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、スクワラン、スクワレン、ペトロラタム、α-オレフィンオリゴマー、流動オゾケライト、プリスタン等の、直鎖又は分岐鎖状の不揮発性炭化水素油;アボガド油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、アマニ油、綿実油、大豆油、パーム油、ヤシ油、ヒマシ油、ホホバ油、ヒマワリ油、ツバキ油、トウモロコシ油、米胚芽油、米ヌカ油、マカデミア油、サフラワー油、くるみ油、けし油、ヒマワリ種子油、ブドウ種子油、あんず核油、かぼちゃ種子油、西洋すもも油、レモン油、茶実油、落花生油、アルガン油、シア脂油、カリテ油、アーモンド油、モモ核油、月見草油、ダイズ油、トウケイソウ油、ブラッククミン油、ルリジサ油、麻実油、ククイナッツ油及びローズヒップ油等の、成分(B)以外の不揮発性植物油;液状ラノリン等の不揮発性動物油;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール等の高級アルコール;ポリジメチルシロキサン、ジメチコノール、ポリヒドロメチルシロキサン、ヒドロシリル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フルオロアルキル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、ポリシロキサンベタイン及びポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性オルガノポリシロキサン等の、成分(C)以外の不揮発性シリコーン油;フルオロポリエーテル等の不揮発性フッ素系油;2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸等の脂肪酸等が挙げられる。
【0048】
光触媒としては、酸化チタン、酸化タングステン等の金属酸化物、8-ヒドロキシキノリン、7-シアノー2-ナフトール、8-キノリノールー1-オキシド等の芳香族ヒドロキシ化合物、その他、スルホン化ピレン化合物、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、ビススルホン誘導体、ジスルホノ誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸エステル誘導体、N-ヒドロキシイミドのスルホン酸エステル等が挙げられる。
【0049】
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、イミダゾリン、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン、アミドスルホベタイン等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。
【0050】
有機酸は、毛髪処理剤組成物に用いる観点から、好ましくはジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及び酸性アミノ酸からなる群から選ばれる1種以上を含み、より好ましくはヒドロキシカルボン酸を含む。ジカルボン酸は、好ましくはマレイン酸及びコハク酸からなる群から選ばれる1種以上を含み、ヒドロキシカルボン酸は、好ましくはグリコール酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選ばれる1種以上を含む。酸性アミノ酸としては、好ましくはグルタミン酸を含む。
【0051】
処理剤組成物中の水の含有量は、発泡倍率、泡粘度、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさの向上の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.01質量%以下であり、実質的に含まないことが好ましい。本明細書において、「水を実質的に含まない」とは意図的に添加していないことを意味し、不純物として少量の水が存在することを排除するものではない。
【0052】
<粘度>
液状処理剤組成物の25℃における粘度は、発泡倍率向上の観点、使用時の垂れにくさの向上の観点から、好ましくは0.1mPa・s以上、より好ましくは0.5mPa・s以上、さらに好ましくは1mPa・s以上、よりさらに好ましくは2mPa・s以上、よりさらに好ましくは3mPa・s以上である。また、発泡倍率及び泡粘度向上の観点、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさの向上の観点から、好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは40mPa・s以下、さらに好ましくは30mPa・s以下、よりさらに好ましくは25mPa・s以下、よりさらに好ましくは20mPa・s以下、よりさらに好ましくは15mPa・s以下である。
液状処理剤組成物の粘度は、レオメーター(例えばMCR-301(Anton Paar社製、治具:CP50-1(Diameter:50mm))を用い、温度25℃にてせん断速度:500s-1で測定できる。
【0053】
<液状処理剤組成物の製造方法>
液状処理剤組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、成分(A)~(C)、並びに必要に応じて用いられるその他の成分を実施例に記載の方法で配合し、公知の撹拌装置等を用いて混合することにより製造できる。
【0054】
<吐出形式>
液状処理剤組成物の吐出形式は、ノンエアゾール形式である。本発明ではノンエアゾール形式で液状処理剤組成物を泡状に吐出し、本発明にかかる泡状処理剤組成物が得られる。
液状処理剤組成物のノンエアゾール形式による泡吐出は、ノンエアゾール形式の泡吐出容器を用いることにより行うことができる。泡吐出容器については後述する。
【0055】
<泡粘度>
泡状処理剤組成物の25℃における泡粘度は、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさ、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさの向上の観点から、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは200mPa・s以上、さらに好ましくは300mPa・s以上、さらに好ましくは400mPa・s以上であり、また、好ましくは5,000mPa・s以下、より好ましくは4,000mPa・s以下、さらに好ましくは3,000mPa・s以下、よりさらに好ましくは2,500mPa・s以下、よりさらに好ましくは2,000mPa・s以下である。
泡状処理剤組成物の泡粘度は、B型粘度計を用いて、実施例に記載の方法で測定できる。
【0056】
<泡状処理剤組成物の種類(製品形態)>
泡状処理剤組成物の種類(製品形態)としては、毛髪又は頭飾製品用繊維処理用の、シャンプー、コンディショナー、トリートメント(洗い流さないタイプを含む)、パック、オイル等が挙げられる。これらの中でも、毛髪又は繊維への広がりやすさ、使用時の垂れにくさ、並びに乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさを有効に発現する観点から、泡状処理剤組成物は好ましくはコンディショナー、トリートメント、又はオイルであり、より好ましくはオイルである。
また泡状処理剤組成物は、毛髪又は繊維に適用した後、該組成物を洗い流さずに乾燥させて用いる、リーブオン型の組成物であることが好ましい。
【0057】
[泡吐出型の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤]
本発明の泡吐出型の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤(泡吐出型処理剤)は、(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンを含有する液状処理剤組成物を泡吐出容器に収容してなり、前記液状処理剤組成物中の前記成分(A)の含有量が、0.1質量%以上75質量%以下であり、前記液状処理剤組成物中の前記成分(B)の含有量が、10質量%以上95質量%以下であり、前記泡吐出容器が、ノンエアゾール形式の泡吐出容器である。
泡吐出型処理剤に用いられる液状処理剤組成物については前記のとおりである。
【0058】
<泡吐出容器>
泡吐出容器としては、ノンエアゾール形式の泡吐出容器を用いることができる。
ノンエアゾール形式の泡吐出容器としては、泡吐出手段を有する公知のポンプフォーマー容器、スクイズフォーマー容器、トリガースプレー容器、電動式泡立て器、蓄圧式ポンプフォーマー容器等を使用することができる。より具体的には、例えば、「食品と容器」( vol.35, No.10, p588-593(1994); vol.35, No.11, p624-627(1994); vol.36, No.3, p154-158(1995))に記載のポンプフォーマーE3タイプ、同F2タイプ(以上、大和製罐(株)製)、スクイズフォーマー(大和製罐(株)製)、電動泡立て器(パナソニック(株)製)、エアスプレーフォーマー(エアスプレーインターナショナル社製)等が挙げられる。
これらの中でも、ノンエアゾール形式の泡吐出容器としては、安価で使い勝手が良いことから、好ましくはポンプフォーマー容器、スクイズフォーマー容器又はトリガースプレー容器であり、より好ましくはポンプフォーマー容器又はスクイズフォーマー容器である。
【0059】
ポンプフォーマー容器又はスクイズフォーマー容器は、泡吐出機構として、少なくとも、液状処理剤組成物と空気とを混合する混合室と、ネット等の泡生成部材と、泡吐出口と、を有するものである。泡生成部材としては、目詰まりを起こした場合に、次回の吐出時に泡の流れによって、直ちに固化物を溶解して目詰まりを解消できるという点から薄肉のネットを有することが好ましい。該ネットのメッシュ数は、好ましくは50~300メッシュ、より好ましくは90~300メッシュである。ここでいうメッシュ数とは、1インチ当たりの目の数をいう。ネットの材質としては、ナイロン、ポリエステル等が挙げられる。
ノンエアゾール形式の泡吐出容器は、泡の安定性、経済性等の観点から、上記メッシュを好ましくは1枚以上、より好ましくは2枚以上配設されたものである。
【0060】
本発明の泡吐出型処理剤は、前記液状処理剤組成物を前記泡吐出容器に収容して得られる。
【0061】
本発明の泡吐出型処理剤から液状処理剤組成物を泡状に吐出することで、泡状処理剤組成物を得ることができる。
泡状処理剤組成物は、毛髪又は繊維に適用後、洗い流す方法で使用しても、洗い流さずに乾燥させる方法で使用してもよいが、毛髪又は繊維に適用後、洗い流さずに乾燥させる方法で使用することが、本発明の効果をより発揮するうえで好ましい。
【0062】
[毛髪又は頭飾製品用繊維の処理方法]
本発明は、前記泡状処理剤組成物を毛髪又は頭飾製品用繊維に適用した後、該組成物を洗い流さずに乾燥させる工程を含む、毛髪又は頭飾製品用繊維の処理方法を提供する。
泡状処理剤組成物を適用する毛髪又は繊維は、乾燥状態、湿潤状態のいずれでもよいが、アウトバスで使用する観点からは、乾燥状態の毛髪又は繊維であることが好ましい。乾燥状態の毛髪又は繊維とは、泡状処理剤組成物を適用する前に湯水で濡らす操作を行わなかった毛髪を意味する。
泡状処理剤組成物がコンディショナー、トリートメント、又はオイルである場合は、乾燥状態又は湿潤状態の毛髪又は繊維に対し、泡吐出容器から吐出された泡状処理剤組成物を塗布して馴染ませた後、該組成物を洗い流さずに乾燥させる方法が挙げられる。組成物の乾燥方法は、自然乾燥、又は、ドライヤー等を用いた強制乾燥によって乾燥させる。これらの乾燥方法は組み合わせてもよい。
【0063】
毛髪又は繊維に適用する泡状処理剤組成物の量は、毛髪又は繊維の質量に対する質量比(泡状処理剤組成物の質量/毛髪又は繊維の質量)で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上、よりさらに好ましくは0.05以上であり、そして、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下である。適用対象となる毛髪は、頭髪の少なくとも一部であればよい。また、適用対象となる頭飾製品用繊維は、頭飾製品中の繊維の少なくとも一部であればよい。
【0064】
[多剤式の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤(多剤式処理剤)]
本発明は、多剤式の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤であって、1種の液状組成物を1つの泡吐出容器に収容してなる構成を2以上備えるか、又は、2種以上の液状組成物を、内部に2以上の区画を備えた1つの泡吐出容器の該区画に各々収容してなるものであり、前記多剤式処理剤の使用時に、すべての前記液状組成物を、泡状に吐出する前、泡状に吐出すると同時、又は泡状に吐出した後に混合して、泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物を調製して用いるものであり、前記泡状の処理剤組成物は、(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンを含有し、前記泡吐出容器がノンエアゾール形式の泡吐出容器である、多剤式処理剤を提供する。
多剤式処理剤における前記「液状組成物」は、多剤式処理剤に含まれるすべての液状組成物を仮想的に混合すると前記液状処理剤組成物となる組成物である。
泡状処理剤組成物及び泡吐出容器については、前記のとおりである。
【0065】
本発明の多剤式処理剤は、1種の液状組成物を1つの泡吐出容器に収容してなる構成を2以上備えるか、又は、2種以上の液状組成物を、内部に2以上の区画を備えた1つの泡吐出容器の該区画に各々収容してなる。多剤式処理剤の使用時には、該多剤式処理剤を構成するすべての液状組成物を、泡状に吐出する前、泡状に吐出すると同時、又は泡状に吐出した後に混合して、泡状処理剤組成物を調製する。多剤式処理剤に含まれるいずれかの液状組成物には(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンが含有されており、得られる泡状処理剤組成物は、(A)揮発性油、(B)前記成分(A)及び植物油トリグリセリド以外の、25℃で液状の脂肪酸エステル、及び(C)架橋型シリコーンを含有する。
泡状処理剤組成物中の成分(A)~(C)の含有量及びその好適態様は、前記と同じである。
【0066】
泡状処理剤組成物は、前記液状組成物を泡状に吐出する前、又は泡状に吐出すると同時に混合して調製してもよく、前記液状組成物を泡状に吐出した後に混合して調製してもよい。
【実施例0067】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
なお、本実施例における各種測定及び評価は以下の方法により行った。
【0068】
<発泡倍率>
各例の泡吐出型毛髪処理剤から組成物を泡状に吐出して、得られた泡について下記方法で評価を行った。発泡倍率が高いほど、泡吐出性が高いことを意味する。なお、比較例3の液状毛髪処理剤組成物は泡状に吐出することができなかった。
(発泡倍率評価)
容量20mLの半球状プラスチック容器に、吐出した泡状毛髪処理剤組成物をすり切りまで入れ、泡の質量を計測し、以下の式より発泡倍率を算出した。
発泡倍率=20mL/泡の質量(g)×液状毛髪処理剤組成物の比重(g/mL)
【0069】
<泡粘度>
各例の泡吐出型毛髪処理剤(比較例3を除く)から泡状の組成物をビーカーに50mL吐出し、吐出20秒後にB型粘度計(東機産業(株)製、M2ローター使用)にセットして、25℃、回転数:6rpmにて泡粘度(mPa・s)を測定した。
【0070】
<評価用毛束の調製>
長さ20cm、根元の毛束幅30mm、総質量3.0gのコーカシアン毛の毛束を準備した。該毛束を、下記組成のプレーンシャンプーで洗浄した後、下記組成のプレーンリンスで処理した。ドライヤー(Panasonic製「EH NE23」、ターボ設定、温風)を用いて完全に乾燥させ、評価用毛束を得た。該評価用毛束を以下の評価に用いた。
【0071】
〔プレーンシャンプー組成〕*配合量は有効成分量である。
(質量%)
ポリオキシエチレン(2.0)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム
(*1) : 47.2
ラウリン酸ジエタノールアミド(*2) : 2.5
安息香酸ナトリウム : 1.1
塩化ナトリウム : 1.2
イオン交換水 : 86.6
合計 :100.0
(*1)花王(株)製「エマール227」(有効成分量 27質量%)として47.2質量%
(*2)アミノーンC-11S(花王(株)製)、有効成分量 100質量%
【0072】
〔プレーンリンス組成〕*配合量は有効成分量である。
(質量%)
ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド(*3)
: 2.22
セタノール(*4) : 1.78
プロピレングリコール : 1.00
フェノキシエタノール : 0.30
イオン交換水 : 94.70
合計 :100.00
(*3)花王(株)製「コータミンE-80K」、有効成分量 45質量%
(*4)花王(株)製「カルコール6870」、有効成分量 100質量%
【0073】
<毛髪への広がりやすさ>
各例の泡吐出型毛髪処理剤から組成物0.15gを泡状に吐出し、手で前記評価用毛束に塗布した後、手ぐしを10回通して毛束全体に塗り広げた。この操作を行った際の、組成物の毛髪への広がりやすさを5名の専門パネリストによって下記5段階基準で評価し、合計点を10点満点に換算して表に示した。比較例3に関しては、液状毛髪処理剤組成物をそのまま評価に用いた。
(評価基準)
5:とても広がりやすい
4:広がりやすい
3:どちらともいえない
2:広がりにくい
1:とても広がりにくい
【0074】
<使用時の垂れにくさ>
各例の泡吐出型毛髪処理剤から組成物0.15gを泡状に吐出し、手で前記評価用毛束に塗布した後、手ぐしを10回通して毛束全体に塗り広げた。この操作を行った際の、組成物の手からの垂れにくさを5名の専門パネリストによって下記5段階基準で評価し、合計点を10点満点に換算して表に示した。比較例3に関しては、液状毛髪処理剤組成物をそのまま評価に用いた。
(評価基準)
5:とても垂れにくい
4:垂れにくい
3:どちらともいえない
2:垂れやすい
1:とても垂れやすい
【0075】
<毛髪適用後の泡の消えやすさ>
各例の泡吐出型毛髪処理剤(比較例3を除く)から組成物0.15gを泡状に吐出し、手で前記評価用毛束に塗布した後、手ぐしを10回通して毛束全体に塗り広げた。この操作を行った際の泡の消えやすさを5名の専門パネリストによって下記5段階基準で評価し、合計点を10点満点に換算して表に示した。
(評価基準)
5:とても消えやすい
4:消えやすい
3:どちらともいえない
2:消えにくい
1:とても消えにくい
【0076】
<乾燥後の毛髪の指通り>
各例の泡吐出型毛髪処理剤から組成物0.15gを泡状に吐出し、濡れた状態の前記評価用毛束に手で塗布した後、手ぐしを10回通して毛束全体に塗り広げた。次いで、ドライヤー(Panasonic製「EH NE23」、ターボ設定)を用いて毛束に温風をあて、1秒間に1回の速度で、3分間手ぐしを通して乾燥させた。乾燥後の毛髪の指通りを、5名の専門パネリストによって下記5段階基準で評価し、合計点を10点満点に換算して表に示した。比較例3に関しては、液状毛髪処理剤組成物をそのまま評価に用いた。
(評価基準)
5:指通りがとてもよい
4:指通りがよい
3:どちらともいえない
2:指通りが悪い
1:指通りがとても悪い
【0077】
実施例1~10、比較例1~4
(液状毛髪処理剤組成物の調製)
撹拌子を入れた200mLビーカーに、表中の各成分を所定量計量した。スリムスターラー(アズワン社製)を用いて、300rpmにて均一になるまで12時間以上撹拌混合し、液状毛髪処理剤組成物を得た。
(泡吐出型毛髪化粧料の作製)
各例の液状毛髪処理剤組成物100mLをノンエアゾール型の泡吐出容器(容量200mL、大和製罐株式会社製、泡吐出機構を有するポンプフォーマーを具備する容器であり、泡形成部材として、2枚のネットを備え、該ネットのメッシュ数は、泡が先に通過するのが100メッシュ、後に通過するのが200メッシュである)に充填して、泡吐出型毛髪処理剤を作製した。
得られた液状毛髪処理剤組成物及び泡吐出型毛髪処理剤を用いて、前記評価を行った。結果を下表に示す。
【0078】
【0079】
表中に記載の成分は下記である。なお表中に記載の配合量(質量%)は、各成分の有効成分量である。
*1:マルカゾールR(丸善石油化学(株)製)
*2:パールリーム3(日油(株)製)
*3:Permethyl 101A(Presperse Corporation製)
*4:テトラデカン(富士フイルム和光純薬(株)製)
*5:エキセパールIPM(花王(株)製)
*6:サラコス99(日清オイリオグループ(株)製)
*7:エキセパールTGO(花王(株)製)
*8:BELSIL TMS 803(旭化成ワッカーシリコーン(株)製)
*9:Carnation(Sonneborn社製)
【0080】
表より、本実施例の泡状毛髪処理剤組成物によれば、毛髪への広がりやすさ、使用時の垂れにくさが良好であることに加えて、毛髪に適用した後の泡の消えやすさ、並びに乾燥後の毛髪の指通りのよさを得ることができる。
【0081】
処方例1(洗い流さない泡状ヘアオイル)
下記組成の液状ヘアオイルを前記泡吐出容器から吐出し、泡状ヘアオイルを得た。配合量は有効成分量である。
(質量%)
(A)水添ポリイソブテン(*1) : 残 部
(B)イソノナン酸イソノニル(*2) : 20.0
(C)トリメチルシロキシケイ酸(*3) : 6.0
オリーブ果実油(*4) : 5.0
合 計 :100.0
(*1)パールリーム4(日油(株)製)
(*2)サラコス99(日清オイリオグループ(株)製)
(*3)BELSIL TMS 803(旭化成ワッカーシリコーン(株)製)
(*4)オリーブ果実油(クローダジャパン社製「クロピュアOL-LQ-(JP)」)
【0082】
処方例2(洗い流さない泡状ヘアオイル)
下記組成の液状ヘアオイルを前記泡吐出容器から吐出し、泡状ヘアオイルを得た。配合量は有効成分量である。
(質量%)
(A)水添ポリイソブテン(*1) : 残 部
(B)イソノナン酸イソノニル(*2) : 20.0
(C)トリメチルシロキシケイ酸(*3) : 10.0
オリーブ果実油(*4) : 5.0
合 計 :100.0
(*1)パールリーム3(日油(株)製)
(*2)サラコス99(日清オイリオグループ(株)製)
(*3)BELSIL TMS 803(旭化成ワッカーシリコーン(株)製)
(*4)オリーブ果実油(クローダジャパン社製「クロピュアOL-LQ-(JP)」)
本発明によれば、毛髪又は繊維に適用した後の泡の消えやすさ、並びに乾燥後の毛髪又は繊維の指通りのよさを発現し得る、泡状の毛髪又は頭飾製品用繊維処理剤組成物を提供できる。