(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179286
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ポンプ制御装置及び流体圧制御システム
(51)【国際特許分類】
F15B 11/028 20060101AFI20241219BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F15B11/028 A
F15B11/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098011
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇多
(72)【発明者】
【氏名】江川 祐弘
(72)【発明者】
【氏名】小島 正成
【テーマコード(参考)】
3H089
【Fターム(参考)】
3H089AA03
3H089AA24
3H089AA60
3H089BB01
3H089BB14
3H089BB15
3H089BB17
3H089CC01
3H089DA03
3H089DB03
3H089DB13
3H089DB43
3H089DB55
3H089EE36
3H089FF07
3H089FF08
3H089GG02
(57)【要約】
【課題】流体圧制御システムによる多様な制御を実現する。
【解決手段】ポンプ制御装置30の排出制御部31は、排出通路15に設けられ排出通路15の圧力が所定の開弁圧に達すると開弁するリリーフ弁40と、供給通路11から排出通路15に導かれリリーフ弁40を通過した作動油の流れに抵抗を付与する下流絞り32と、リリーフ弁40から抵抗部に導かれる作動油の圧力を測定する圧力センサ35aと、を有し、コントローラ50は、操作入力の増加に伴ってポンプPの吐出流量を増加させ、下流絞り32における圧力損失と通過流量との関係である圧力流量特性を予め記憶し、下流絞り32の圧力流量特性と圧力センサ35aが測定した圧力とに基づいて下流絞り32を通過する作動油の流量を取得し、下流絞り32を通過する作動油の流量に応じてポンプPの吐出容量及びリリーフ弁40の開弁圧を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給通路を通じて流体圧アクチュエータに作動流体を吐出する可変容量型のポンプと、前記流体圧アクチュエータを駆動する作業者の操作入力に応じて前記流体圧アクチュエータに給排される作動流体の流れを制御する制御弁と、を備える流体圧制御システムにおける前記ポンプの吐出容量を制御するポンプ制御装置であって、
前記供給通路の作動流体をタンクに導く排出通路と、
前記排出通路を通じて前記タンクに排出される作動流体の流れを制御する排出制御部と、
作業者の前記操作入力に応じて前記ポンプの前記吐出容量及び前記排出制御部の作動を制御するコントローラと、を備え、
前記排出制御部は、
前記排出通路に設けられ前記排出通路の圧力が所定の開弁圧に達すると開弁し、入力される電気信号によって前記開弁圧が可変となるように構成されるリリーフ弁と、
前記供給通路から前記排出通路に導かれ前記リリーフ弁を通過した作動流体の流れに抵抗を付与する抵抗部と、
前記抵抗部の前後差圧を取得するための圧力測定部と、を有し、
前記コントローラは、
前記抵抗部における圧力と通過流量との関係である圧力流量特性を予め記憶し、
前記抵抗部の前記圧力流量特性と前記圧力測定部によって取得した前記前後差圧とに基づいて前記抵抗部を通過する作動流体の流量を取得し、
前記抵抗部を通過する作動流体の流量に応じて前記ポンプの前記吐出容量及び前記リリーフ弁の前記開弁圧の少なくとも一方を変更することを特徴とするポンプ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ制御装置であって、
前記排出制御部は、前記排出通路に設けられ前記供給通路から前記リリーフ弁に向かう作動流体の流れに抵抗を付与する追加抵抗部を有することを特徴とするポンプ制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポンプ制御装置であって、
前記コントローラは、前記抵抗部を通過する作動流体の流量の増加に伴い、前記リリーフ弁の前記開弁圧を増加させると共に前記ポンプの前記吐出容量を減少させることを特徴とするポンプ制御装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポンプ制御装置であって、
前記圧力測定部は、
前記リリーフ弁から前記抵抗部に導かれる作動流体の圧力を測定する上流圧測定部と、
前記タンクの圧力を測定するタンク圧測定部をさらに備え、
前記コントローラは、前記上流圧測定部と前記タンク圧測定部前記圧力測定部が測定した圧力と前記タンク圧測定部が測定した圧力との差圧に基づいて前記抵抗部を通過する作動流体の流量を取得することを特徴とするポンプ制御装置。
【請求項5】
流体圧アクチュエータの作動を制御する流体圧制御システムであって、
供給通路を通じて作動流体を吐出する可変容量型のポンプと、
作業者による操作入力がない中立時に前記ポンプから吐出される作動流体をタンクに導く中立ポジションを有し、前記操作入力に応じて前記流体圧アクチュエータに給排される作動流体の流れを制御する制御弁と、
前記ポンプの吐出容量を制御するポンプ制御装置と、を備え、
前記ポンプ制御装置は、
前記供給通路の作動流体を前記タンクに導く排出通路と、
前記排出通路を通じて前記タンクに排出される作動流体の流れを制御する排出制御部と、
前記流体圧アクチュエータを作動させる作業者の前記操作入力に応じて前記ポンプの前記吐出容量及び前記排出制御部の作動を制御するコントローラと、を有し、
前記排出制御部は、
前記排出通路に設けられ前記排出通路の圧力が所定の開弁圧に達すると開弁し、入力される電気信号によって前記開弁圧が可変となるように構成されるリリーフ弁と、
前記供給通路から前記排出通路に導かれ前記リリーフ弁を通過した作動流体の流れに抵抗を付与する抵抗部と、
前記抵抗部の前後差圧を取得するための圧力測定部と、を有し、
前記コントローラは、
前記抵抗部における圧力損失と通過流量との関係である圧力流量特性を予め記憶し、
前記抵抗部の前記圧力流量特性と前記圧力測定部によって取得した前記前後差圧とに基づいて前記抵抗部を通過する作動流体の流量を取得し、
前記抵抗部を通過する作動流体の流量に応じて前記ポンプの前記吐出容量及び前記リリーフ弁の前記開弁圧の少なくとも一方を変更することを特徴とする流体圧制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の流体圧制御システムであって、
前記制御弁は、前記供給通路と前記流体圧アクチュエータとを連通させる作動ポジションを有し、
前記作動ポジションにおいては、前記供給通路と前記タンクとの連通は遮断されることを特徴とする流体圧制御システム。
【請求項7】
供給通路を通じて流体圧アクチュエータに作動流体を吐出する可変容量型のポンプと、前記流体圧アクチュエータを駆動する作業者の操作入力に応じて前記流体圧アクチュエータに給排される作動流体の流れを制御する制御弁と、を備える流体圧制御システムにおける前記ポンプの吐出容量を制御するポンプ制御装置であって、
前記供給通路の作動流体をタンクに導く排出通路と、
前記排出通路を通じて前記タンクに排出される作動流体の流れを制御する排出制御部と、
作業者の前記操作入力に応じて前記ポンプの前記吐出容量及び前記排出制御部の作動を制御するコントローラと、を備え、
前記排出制御部は、
前記排出通路に設けられ前記排出通路の圧力が所定の開弁圧に達すると開弁し、入力される電気信号によって前記開弁圧が可変となるように構成されるリリーフ弁と、
前記排出通路に設けられ前記供給通路から前記リリーフ弁に向かう作動流体の流れに抵抗を付与する抵抗部と、
前記抵抗部の前後差圧を取得するための圧力測定部と、を有し、
前記コントローラは、
前記抵抗部における圧力と通過流量との関係である圧力流量特性を予め記憶し、
前記抵抗部の前記圧力流量特性と前記圧力測定部によって取得した前記前後差圧とに基づいて前記抵抗部を通過する作動流体の流量を取得し、
前記抵抗部を通過する作動流体の流量に応じて前記ポンプの前記吐出容量及び前記リリーフ弁の前記開弁圧の少なくとも一方を変更することを特徴とするポンプ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ制御装置及び流体圧制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設機械の流体圧制御装置では、作業者の操作レバー等の操作入力に応じてポンプから流体圧アクチュエータに導かれる作動流体の流れを制御弁によって制御すると共に、流体圧回路内の圧力信号を取得して当該圧力信号に基づいてポンプの吐出容量を制御するものが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の流体圧制御システムでは、流体圧アクチュエータに供給される作動流体の流量とポンプの吐出圧とは、それぞれ制御弁の開口面積とポンプの吐出容量とによって定められる。このため、制御弁の開口面積とポンプの吐出容量とのいずれかが変更されると、これに応じて流体圧アクチュエータに供給される作動流体の流量及びポンプの吐出圧がそれぞれ変更される。これに対し、流体圧制御システムにおいては、流体圧アクチュエータに供給される作動流体の流量とポンプの吐出圧とに対して多様な制御を実現したいとのニーズがある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、制御の多様性を向上させるポンプ制御装置及び流体圧制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体圧制御システムにおけるポンプの吐出容量を制御するポンプ制御装置であって、供給通路の作動流体をタンクに導く排出通路と、排出通路を通じてタンクに排出される作動流体の流れを制御する排出制御部と、作業者の操作入力に応じてポンプの吐出容量を制御するコントローラと、を備え、排出制御部は、排出通路に設けられ排出通路の圧力が所定の開弁圧に達すると開弁し、入力される電気信号によって開弁圧が可変となるように構成されるリリーフ弁と、供給通路から排出通路に導かれリリーフ弁を通過した作動流体の流れに抵抗を付与する抵抗部と、抵抗部の前後差圧を取得するための圧力測定部と、を有し、コントローラは、抵抗部における圧力と通過流量との関係である圧力流量特性を予め記憶し、抵抗部の圧力流量特性と圧力測定部によって取得した圧力とに基づいて抵抗部を通過する作動流体の流量を取得し、抵抗部を通過する作動流体の流量に応じてポンプの吐出容量及びリリーフ弁の開弁圧の少なくとも一方を変更することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、流体圧制御システムにおけるポンプの吐出容量を制御するポンプ制御装置であって、供給通路の作動流体をタンクに導く排出通路と、排出通路を通じてタンクに排出される作動流体の流れを制御する排出制御部と、作業者の操作入力に応じてポンプの吐出容量を制御するコントローラと、を備え、排出制御部は、排出通路に設けられ排出通路の圧力が所定の開弁圧に達すると開弁し、入力される電気信号によって開弁圧が可変となるように構成されるリリーフ弁と、排出通路に設けられ供給通路からリリーフ弁に向かう作動流体の流れに抵抗を付与する抵抗部と、抵抗部の前後差圧を取得するための圧力測定部と、を有し、コントローラは、抵抗部における圧力と通過流量との関係である圧力流量特性を予め記憶し、抵抗部の圧力流量特性と圧力測定部によって取得した前後差圧とに基づいて抵抗部を通過する作動流体の流量を取得し、抵抗部を通過する作動流体の流量に応じてポンプの吐出容量及びリリーフ弁の開弁圧を制御することを特徴とする。
【0008】
これらの発明では、排出制御部の抵抗部を通過する作動流体の流量に応じてリリーフ弁の開弁圧及びポンプの吐出容量の少なくとも一方が変更される。抵抗部の圧力流量特性に基づきリリーフ弁の開弁圧およびポンプの吐出容量を、独立または協調させて調整できる。このため、制御弁の開口面積と作業者による操作入力が同じ場合であっても、抵抗部を通過する流量増加に応じてリリーフ弁の開弁圧を高くすることで、アクチュエータへ導く作動油の圧力および流量を増加させることができる。また、リリーフ弁の開弁圧を増加させた分だけポンプの吐出容量を減少させて、流体圧アクチュエータへ導く作動流体の圧力および流量を維持し、抵抗部を通過する流量のみを減少させることもできる。このように、作業者による操作入力が同じ場合であっても、流体圧アクチュエータの作動に対して多様な制御を実現することができる。
【0009】
また、本発明は、排出制御部が、排出通路に設けられ供給通路からリリーフ弁に向かう作動流体の流れに抵抗を付与する追加抵抗部を有することを特徴とする。
【0010】
この発明では、排出制御部全体としての圧力流量特性は、追加抵抗部による圧力流量特性の影響を受ける。追加抵抗部の圧力流量特性を調整することで排出制御部全体としての圧力流量特性を調整できるため、排出制御部の圧力流量特性の設計自由度が向上する。
【0011】
また、本発明は、コントローラが、抵抗部を通過する作動流体の流量の増加に伴い、リリーフ弁の開弁圧を増加させると共にポンプの吐出容量を減少させることを特徴とする。
【0012】
この発明では、リリーフ弁の開弁圧を増加させることで排出通路を通じてタンクに排出される作動流体の流量を減少させることができる。また、排出通路を通じてタンクに排出される作動流体の流量を減少させることで、ポンプから流体圧アクチュエータに供給される作動流体の流量が増加するため、ポンプの吐出容量を減少させても流体圧アクチュエータに供給される流量を確保することができる。よって、ポンプによって行われる仕事量を維持しつつ消費されるエネルギーを減少させることができる。
【0013】
また、本発明は、圧力測定部が、リリーフ弁から抵抗部に導かれる作動流体の圧力を測定する上流圧測定部と、タンクの圧力を測定するタンク圧測定部をさらに備え、コントローラは、上流圧測定部が測定した圧力とタンク圧測定部が測定した圧力との差圧に基づいて抵抗部を通過する作動流体の流量を取得することを特徴とする。
【0014】
この発明では、タンク圧の実測値に基づいて抵抗部を通過する作動流体の流量が取得されるため、タンク圧が変動する場合であっても、流量を精度よく取得することができる。
【0015】
また、本発明は、流体圧アクチュエータの作動を制御する流体圧制御システムであって、供給通路を通じて作動流体を吐出する可変容量型のポンプと、作業者による操作入力がない中立時に前記ポンプから吐出される作動流体をタンクに導く中立ポジションを有し、操作入力に応じて流体圧アクチュエータに給排される作動流体の流れを制御する制御弁と、ポンプの吐出容量を制御するポンプ制御装置と、を備え、ポンプ制御装置は、供給通路の作動流体をタンクに導く排出通路と、排出通路を通じてタンクに排出される作動流体の流れを制御する排出制御部と、流体圧アクチュエータを作動させる作業者の操作入力に応じてポンプの容量を制御するコントローラと、を有し、排出制御部は、排出通路に設けられ排出通路の圧力が所定の開弁圧に達すると開弁し、入力される電気信号によって開弁圧が可変となるように構成されるリリーフ弁と、供給通路から排出通路に導かれリリーフ弁を通過した作動流体の流れに抵抗を付与する抵抗部と、抵抗部の前後差圧を取得するための圧力測定部と、を有し、コントローラは、抵抗部における圧力損失と通過流量との関係である圧力流量特性を予め記憶し、抵抗部の圧力流量特性と圧力測定部によって取得した前後差圧とに基づいて抵抗部を通過する作動流体の流量を取得し、抵抗部を通過する作動流体の流量に応じてポンプの吐出容量及びリリーフ弁の開弁圧を制御することを特徴とする。
【0016】
従来、ポンプの吐出容量を制御する方法として、制御弁の下流に設けられる絞りの前後差圧に応じてポンプの吐出容量を制御するネガコン制御が知られている。これに対し、この発明では、作業者の操作入力に応じてポンプの吐出容量を制御するため、ネガコン制御においてポンプの吐出容量を制御するために設けられる絞りを廃止することができる。よって、中立時にポンプから吐出される作動流体は、ネガコン制御のような制御弁の下流の絞りを通過することがないため、エネルギーロスを抑制することができる。また、排出制御部の抵抗部を通過する作動流体の流量に応じてリリーフ弁の開弁圧またはポンプの吐出容量が制御されることで、ポンプから吐出され排出通路を通じてタンクに排出される作動流体の流量を減少させることができる。
【0017】
また、本発明は、制御弁が、供給通路と流体圧アクチュエータとを連通させる一または複数の作動ポジションを有し、いずれの前記作動ポジションにおいても、供給通路とタンクとの連通は遮断されることを特徴とする。
【0018】
流体圧アクチュエータの作動を制御する制御弁には、作動ポジションにおいて供給通路とタンクとを絞り等によって抵抗を付与しながら連通させて流体圧アクチュエータへ供給される作動流体の流量を制御するものもある。このような従来の制御弁と比較して、本発明では、排出制御部のリリーフ弁の開弁圧を制御することで、流体圧アクチュエータに供給される作動流体の流量を制御できるため、作動ポジションでは供給通路とタンクとが遮断するように構成される。よって、作動ポジションにおいて供給通路からタンクに向かう流量を制御する絞り等を制御弁に設ける必要がなく、制御弁の構成を簡素化できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ポンプ制御装置及び流体圧制御システムによる多様な制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る流体圧制御システムの油圧回路図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る流体圧制御システムのブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るリリーフ弁の構成を示す油圧回路図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における下流絞りの圧力流量特性を示すグラフ図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における排出制御部の圧力流量特性を示すグラフ図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る制御方法を示すフローチャート図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る流体圧制御システムの油圧回路図である。
【
図8】本発明の比較例に係る流体圧システムの油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るポンプ制御装置30及びこれを備える流体圧制御システム100について説明する。以下では、建設機械(例えば油圧ショベル)に用いられるポンプ制御装置30及び流体圧制御システム100を例に説明する。
【0022】
流体圧制御システム100は、作業者によって操作される操作部としての操作レバー1と、駆動対象を駆動する流体圧アクチュエータとしての油圧シリンダ2と、作動流体としての作動油を吐出する可変容量型のポンプPと、作動油を貯留するタンクTと、油圧シリンダ2の作動を制御する流体圧制御装置10と、を備える。
【0023】
操作レバー1は、油圧シリンダ2を駆動するために作業者によって操作されるものであり、その操作方向及び操作量に応じた操作入力が電気信号(操作信号)として流体圧制御装置10に入力される。また、操作レバー1の操作方向及び操作量に応じて、後述する流体圧制御装置10の制御弁20にパイロット圧が供給される。
【0024】
ポンプPは、エンジン(図示省略)又はモータ(図示省略)によって駆動されて、作動油を吐出する。ポンプPは、例えば、斜板式の可変容量型ピストンポンプであり、レギュレータRにより斜板の傾きが変更されることで吐出容量が変化する。レギュレータRは、後述するポンプ制御装置30のコントローラ50から送信される制御信号に基づいて、ポンプPの斜板の傾きを制御する。ポンプPは、斜板の傾転角が最小となった状態でも、一定の流量を吐出するように構成される。つまり、ポンプPの最小吐出容量は、ゼロより大きい値(以下、「スタンバイ流量」と称する。)となる。ポンプP及びレギュレータRの構成は、公知の構成を採用できるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
油圧シリンダ2は、シリンダチューブ3の内部をロッド側室6とボトム側室7とに区画するピストン4を有する複動形シリンダである。ピストン4にはピストンロッド5が連結される。油圧シリンダ2のロッド側室6には、ロッド側通路13を通じて作動油が給排される。油圧シリンダ2のボトム側室7には、ボトム側通路14を通じて作動油が給排される。
【0026】
ボトム側室7に作動油が供給されロッド側室6から作動油が排出されることにより、油圧シリンダ2は伸長作動する。反対に、ロッド側室6に作動油が供給されボトム側室7から作動油が排出されることにより、油圧シリンダ2は収縮作動する。
【0027】
流体圧制御装置10は、ポンプPから吐出される作動油の流れを制御して、油圧シリンダ2の伸縮作動を制御する。油圧シリンダ2は、ポンプPから吐出される作動油が供給されることで、伸縮作動する。
【0028】
流体圧制御装置10は、ポンプPから吐出される作動油を導く供給通路11に設けられ油圧シリンダ2に給排される作動油の流れを制御する制御弁20と、供給通路11の圧力が所定の開弁圧(クラッキング圧)となると開弁して供給通路11の作動油をタンクTに排出する安全弁27と、供給通路11を通じてポンプPから制御弁20へ向かう作動油の流れを制御すると共にポンプPの吐出容量を制御するポンプ制御装置30と、を備える。
【0029】
制御弁20は、スプール(図示省略)を有し、スプールが移動することによってポジションが切り換わるスプール弁である。
【0030】
制御弁20は、一対のパイロット室21a,21bと、付勢部材としてのスプリング22a,22bと、を有し、一対のパイロット室21a,21bの圧力差に応じて作動する。
【0031】
制御弁20には、供給通路11、タンクTに連通するタンク通路12、供給通路11から分岐する分岐供給通路11a、タンク通路12から分岐する分岐タンク通路12a、ロッド側通路13、及びボトム側通路14が接続される。供給通路11及びタンク通路12によって、ポンプPから吐出される作動油をタンクTに導くセンターバイパス通路が構成される。分岐供給通路11aには、ポンプPから制御弁20へ向かう作動油の流れを許容し、その反対を規制する逆止弁25が設けられる。
【0032】
制御弁20は、供給通路11とタンク通路12とを連通してセンターバイパス通路を開放する中立ポジション20Aと、分岐供給通路11aとボトム側通路14とを連通すると共に分岐タンク通路12aとロッド側室6とを連通する作動ポジションとしての伸長ポジション20Bと、分岐供給通路11aとロッド側通路13とを連通すると共に分岐タンク通路12aとボトム側通路14とを連通する作動ポジションとしての収縮ポジション20Cと、を有する。
【0033】
作業者によって操作レバー1が操作されていない状態では、制御弁20の一対のパイロット室21a,21bにはパイロット圧が導かれず、制御弁20は、一対のスプリング22a,22bによって中立ポジション20Aに保持される。中立ポジション20Aでは、ロッド側通路13、ボトム側通路14、分岐供給通路11a、及び分岐タンク通路12aがそれぞれ遮断される。よって、油圧シリンダ2は、伸縮作動せず、負荷保持状態に維持される。また、ポンプPから吐出される作動油は、供給通路11から制御弁20を通じてタンク通路12に導かれてタンクTに導かれる。
【0034】
作業者によって操作レバー1が一方向に操作されると、その操作量に応じて制御弁20の一方のパイロット室21aにパイロット圧が導かれ、制御弁20は、伸長ポジション20Bに切り換わる。伸長ポジション20Bでは、供給通路11とタンク通路12との連通は遮断され、センターバイパス通路が閉じられる。制御弁20が伸長ポジション20Bに切り換わると、ポンプPから吐出された作動油が分岐供給通路11a及びボトム側通路14を通じてボトム側室7に供給される。ロッド側室6の作動油は、ロッド側通路13及び分岐タンク通路12aを通じてタンクTに排出される。これにより、油圧シリンダ2は伸長作動する。
【0035】
作業者によって操作レバー1が他方向に操作されると、その操作量に応じて制御弁20の他方のパイロット室21bにパイロット圧が導かれ、制御弁20は、収縮ポジション20Cに切り換わる。収縮ポジション20Cでは、供給通路11とタンク通路12との連通は遮断され、センターバイパス通路が閉じられる。制御弁20が収縮ポジション20Cに切り換わると、ポンプPから吐出された作動油が分岐供給通路11a及びロッド側通路13を通じてロッド側室6に供給される。ボトム側室7の作動油は、ボトム側通路14及び分岐タンク通路12aを通じてタンクTに排出される。これにより、油圧シリンダ2は収縮作動する。
【0036】
ポンプ制御装置30は、供給通路11の作動油をタンクTに導く排出通路15と、排出通路15を通じてタンクTに排出される作動流体の流れを制御する排出制御部31と、油圧シリンダ2を作動させる作業者の操作入力に応じてポンプPの吐出容量及び排出制御部31の作動を制御するコントローラ50と、を備える。
【0037】
排出制御部31は、排出通路15に設けられ排出通路15の圧力が所定の開弁圧に達すると開弁し、開弁圧が可変であるリリーフ弁40と、供給通路11から排出通路15に導かれリリーフ弁40を通過した作動油の流れに抵抗を付与する抵抗部としての下流絞り32と、排出通路15に設けられ供給通路11からリリーフ弁40に向かう作動油の流れに抵抗を付与する追加抵抗部としての上流絞り33と、下流絞り32の前後差圧を取得するための圧力測定部34と、を有する。
【0038】
リリーフ弁40は、開弁圧を設定するための付勢部材としてのセットスプリング40aと、通電によって電磁力を発生させるソレノイド40bと、を有する電磁リリーフ弁である。コントローラ50から入力される電気信号(開弁圧信号)に応じてソレノイド40bが発生する電磁力によりプランジャ(図示省略)が移動してセットスプリング40aが伸縮することで、リリーフ弁40の開弁圧が調整される。リリーフ弁40の開弁圧は、少なくともタンク圧より大きく設定される。リリーフ弁40には、上流絞り33を通過した作動油と下流絞り32を通過した作動油(タンク圧)とがそれぞれパイロット圧として導かれる。リリーフ弁40は、上流絞り33とリリーフ弁40との間の圧力(上流絞り33の下流圧、つまりリリーフ弁40の上流圧)とタンク圧の差圧(以下、リリーフ弁40の「前後差圧」と称する。)が開弁圧に達すると開弁して、排出通路15を開放する。なお、リリーフ弁40が閉じた状態では、リリーフ弁40の上流圧は、上流絞り33の上流圧(ひいては、供給通路11の圧力)と等しいため、リリーフ弁40は、実質的には上流絞り33の上流圧とタンク圧との差圧が開弁圧に達すると開弁する。リリーフ弁40が開いた状態では、上流絞り33の下流であってリリーフ弁40の上流の圧力とタンク圧の差圧をパイロット圧として作動する。
【0039】
図3を参照して、リリーフ弁40の構成を詳細に説明する。
図3に示すように、リリーフ弁40は、ハウジング41と、ハウジング41内に設けられるメインポペット42及びパイロットポペット46と、メインポペット42を閉弁方向に付勢する付勢部材としてメインスプリング44aと、パイロットポペット46を閉弁方向に付勢するセットスプリング40aと、セットスプリング40aを伸縮させるソレノイド40bと、を有する。
【0040】
メインポペット42は、第1上流室43a、第1下流室43b、及び第1パイロット室43cをハウジング41内に区画する。第1上流室43aは、上流絞り33の下流側において排出通路15に連通しており、上流絞り33を通過した排出通路15の作動油が導かれる。第1下流室43bは、下流絞り32の上流側において排出通路15に連通しており、第1下流室43bの作動油が下流絞り32に導かれる。メインポペット42が閉弁状態にあるときは、第1上流室43aと第1下流室43bとの連通がメインポペット42によって遮断され、メインポペット42が開弁すると第1上流室43aと第1下流室43bとが連通する。第1パイロット室43cは、ポペット絞り44bを通じて第1上流室43aと常時連通する。第1上流室43aに対するメインポペット42が閉弁しているときの受圧面積は、第1パイロット室43cに対する受圧面積と同じか小さく形成されている。
【0041】
パイロットポペット46は、第2上流室47a、第2下流室47b、及び第2パイロット室47cをハウジング41内に区画する。第2上流室47aは、メインポペット42が区画する第1パイロット室43cに常時連通する。第2下流室47bは、下流絞り32の下流側において排出通路15に連通しており、排出通路15を通じてタンクTに連通する。パイロットポペット46が閉弁状態にあるときは、第2上流室47aと第2下流室47bとの連通がパイロットポペット46によって遮断され、パイロットポペット46が開弁すると第2上流室47aと第2下流室47bとが連通する。第2パイロット室47cは、第2下流室47bと常時連通している。第2上流室47aに対するパイロットポペット46の受圧面積は、第2パイロット室47cに対するパイロットポペット46の受圧面積よりも小さく形成されている。第2パイロット室47cには、セットスプリング40a及びソレノイド40bが収容される。パイロットポペット46は、セットスプリング40aの付勢力及びソレノイド40bの推力によって閉弁方向に付勢されている。
【0042】
排出通路15の上流絞り33を通過した作動油は、ポペット絞り44bを通じて第2上流室47aに導かれる。第2下流室47bは、排出通路15を通じてタンクTに連通する。第2上流室47aに導かれる圧力によってパイロットポペット46に発揮される推力が、第2パイロット室47cの圧力(タンク圧)によって発揮される推力とソレノイド40b及びセットスプリング40aによって発揮される推力との合力以下であると、パイロットポペット46は閉弁する。パイロットポペット46が閉弁した状態であると、第1パイロット室43c内の作動油がタンクTに排出されないため、メインポペット42も閉弁した状態となる。
【0043】
第2上流室47aの圧力によりパイロットポペット46に発揮される推力が、第2パイロット室47cの圧力(タンク圧)によって発揮される推力とソレノイド40b及びセットスプリング40aによって発揮される推力との合力を上回ると、パイロットポペット46が開弁する。これにより、第1パイロット室43cの作動油が第2上流室47aから第2下流室47bに導かれ、排出通路15からタンクTに排出される。これに伴い、第1上流室43aの圧力によってメインポペット42(ひいてはリリーフ弁40)が開弁し、排出通路15の作動油が、リリーフ弁40を通じてタンクTに排出される。このようにして、リリーフ弁40は、排出通路15における上流絞り33の下流側の圧力と下流絞り32の下流側の圧力(タンク圧)との差圧(前後差圧)が所定の開弁圧に達すると開弁して、排出通路15の作動油をタンクTに排出する。
【0044】
以上のように、リリーフ弁40の開弁圧は、セットスプリング40a及びソレノイド40bの推力に加えて、メインポペット42に対する第1上流室43a及び第1パイロット室43cとの受圧面積差、パイロットポペット46に対する第2上流室47a及び第2パイロット室47cの受圧面積差、ポペット絞り44b、メインスプリング44a等に応じて定められる。
【0045】
なお、リリーフ弁40の構成は、
図3に示すものに限定されない。本明細書に記載のリリーフ弁40の機能を実現できるものであって、
図1に示すような回路記号であらわすことが可能な任意の構成をリリーフ弁40として採用することができる。
【0046】
上流絞り33及び下流絞り32は、例えば、オリフィス等によって構成される固定絞りである。上流絞り33及び下流絞り32は、固定絞りとして、排出通路15を構成する流路(配管)によって形成される流路抵抗(配管抵抗)であってもよい。
【0047】
圧力測定部34は、リリーフ弁40から下流絞り32に導かれる作動油の圧力を測定する上流圧測定部としての圧力センサ35aと、下流絞り32の下流側における排出通路15の圧力を測定するタンク圧測定部としてのタンク圧センサ35bと、を有する。圧力センサ35aは、排出通路15におけるリリーフ弁40と下流絞り32との間の圧力(言い換えると、下流絞り32の上流圧)を測定する。圧力センサ35aの測定結果は、コントローラ50に入力される。
【0048】
タンク圧センサ35bは、パイロット圧としてリリーフ弁40に導かれる下流絞り32の下流側の圧力を測定する。タンク圧センサ35bの測定結果は、コントローラ50に入力される。なお、タンク圧センサ35bは、タンク通路12またはタンクTの内部の圧力を測定するものでもよい。圧力センサ35aが測定する圧力とタンク圧センサ35bが測定する圧力との差分が、下流絞り32の前後差圧となる。
【0049】
また、供給通路11には、供給通路11の圧力を取得する第2圧力センサ26が設けられる。第2圧力センサ26の測定結果は、コントローラ50に入力される。
【0050】
コントローラ50は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ50は、少なくとも、本実施形態や変形例に係る制御を実行するために必要な処理を実行可能にプログラムされている。なお、コントローラ50は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。また、コントローラ50は、建設機械に備えられる他のコントローラと共通に使用されてもよい。
【0051】
コントローラ50は、
図2に示すように、ポンプPの吐出容量を制御するために必要な情報を予め記憶する記憶部51と、ポンプPの吐出容量を制御する処理を実行する処理部52と、を有する。
【0052】
記憶部51には、操作レバー1の操作量とポンプPの吐出容量との関係(図示省略)、下流絞り32単体の通過する作動油の圧力と流量との関係を示す圧力流量特性(
図4)、及び排出制御部31全体としての圧力流量特性(
図5)、が予め記憶される。通常、リリーフ弁40の圧力流量特性は、開弁圧に達すると通過流量が急激に増加する特性となる。これに対し、排出制御部31の圧力流量特性は、リリーフ弁40の上流及び下流に絞り(上流絞り33、下流絞り32)が設けられることで、
図5に示すように、リリーフ弁40の開弁圧以上の圧力領域においては、圧力増加に対して通過流量が徐々に増加するような特性となる。つまり、排出制御部31の圧力流量特性は、一般的なリリーフ弁の圧力流量特性よりも、圧力変化に対する流量変化の傾きが小さくなる。このように、排出制御部31の圧力流量特性は、リリーフ弁40、下流絞り32、及び上流絞り33のそれぞれの圧力流量特性に応じて定められる。操作レバー1の操作量とポンプPの吐出容量との関係、排出制御部31及び下流絞り32の圧力流量特性は、例えばマップ等の形式により記憶部51に記憶されている。
【0053】
コントローラ50には、作業者による操作レバー1の操作入力に応じて操作レバー1から送信される操作信号と、圧力センサ35a、タンク圧センサ35b、及び第2圧力センサ26から入力されるそれぞれの測定値を示す圧力信号と、が入力される。処理部52は、圧力センサ35a及びタンク圧センサ35bの圧力信号から、リリーフ弁40の前後差圧を算出する。また、処理部52は、操作レバー1の操作信号、圧力センサ35a、タンク圧センサ35b、及び第2圧力センサ26の圧力信号に基づいて、ポンプPの吐出容量及びリリーフ弁40の開弁圧を制御する。
【0054】
以下、本実施形態におけるポンプPの吐出容量の制御方法について説明する。
【0055】
以下では、
図6に示すフローチャートを参照して、本実施形態の制御方法について説明する。コントローラ50は、
図6に示す処理を所定の実行間隔によって実行する。
【0056】
ステップS10では、作業者による操作レバー1の操作信号を取得する。
【0057】
ステップS11では、排出制御部31の圧力センサ35a及びタンク圧センサ35bの測定結果である圧力信号を取得する。
【0058】
ここで、作業者によって操作レバー1が操作されず制御弁20が中立ポジション20Aにある状態では、ポンプPから吐出される作動油は、センターバイパス通路(供給通路11、タンク通路12)を通じてタンクTに導かれる。よって、排出通路15の圧力は、リリーフ弁40の開弁圧に達しないため、リリーフ弁40は閉じた状態となり、ポンプPから吐出される作動油は下流絞り32を通過しない。
【0059】
供給通路11の圧力は、油圧シリンダ2に必要な作動油の圧力(負荷圧)に応じて定められる。作業者によって操作レバー1が操作され、制御弁20が作動ポジション(伸長ポジション20B、収縮ポジション20C)に切り換わっても、油圧シリンダ2の負荷圧が比較的低い場合には、供給通路11の圧力は排出制御部31のリリーフ弁40の開弁圧に達しない。このため、リリーフ弁40は閉じた状態となり、ポンプPから吐出される作動油は下流絞り32を通過しない。
【0060】
よって、操作レバー1が非操作時である場合と油圧シリンダ2の必要圧が低い場合(必要圧がリリーフ弁40の開弁圧よりも低い場合)とでは、ステップS11において、タンク圧を示す圧力信号が圧力センサ35aからコントローラ50に入力される。
【0061】
作業者によって操作レバー1が操作されることでポンプPから油圧シリンダ2に作動油が供給されると、駆動対象から油圧シリンダ2に作用する負荷に応じた駆動圧で供給通路11の圧力が上昇する。供給通路11の圧力がリリーフ弁40の開弁圧に達すると、リリーフ弁40が開弁し、ポンプPから吐出される作動油の一部がリリーフ弁40から下流絞り32を通過して(余剰流量が生じて)タンクTに排出される。このようにして、油圧シリンダ2への余剰流量がタンクTに排出される。よって、この場合には、ステップS11では、余剰流量分の作動油の圧力を示す圧力信号が圧力センサ35aからコントローラ50に入力される。
【0062】
ステップS12では、ステップS11で取得した圧力信号に基づいて下流絞り32を通過する流量(余剰流量)を算出する。余剰流量は、ステップS11で取得した圧力センサ35a及びタンク圧センサ35bの圧力信号からリリーフ弁40の前後差圧P1を算出し、前後差圧P1における下流絞り32の通過流量L1を
図4に示す圧力流量特性から読み取ることで算出することができる。
【0063】
タンクTの内部の圧力は、油圧シリンダ2から排出される作動油がタンクTに導かれるため、ある程度の圧力変動が生じることがある。これに対し、本実施形態では、下流絞り32の下流側における排出通路15の圧力をタンク圧として測定し、測定したタンク圧からリリーフ弁40の前後差圧を算出して下流絞り32の通過流量を算出する。実際に測定したタンク圧に基づいて下流絞り32の通過流量を算出するため、算出精度を向上させることができる。なお、タンク圧センサ35bは必須の構成ではなく、タンク圧センサ35bを設けずに、予め把握されるタンク圧に基づいて下流絞り32の通過流量を算出してもよい。
【0064】
操作レバー1が非操作時である場合と油圧シリンダ2の必要圧が低い場合とでは、上述のようにリリーフ弁40は開弁せず、タンク圧に相当する圧力信号がコントローラ50に入力される。よって、これらの場合には、ステップS12では、余剰流量がゼロとして算出される。
【0065】
リリーフ弁40が開弁する場合には、タンク圧よりも大きい圧力を示す圧力信号が圧力センサ35aから入力される。このため、ステップS12では、当該圧力信号と下流絞り32の圧力流量特性に基づいて、下流絞り32を通過した作動油の流量(つまり、タンクTに排出される余剰流量)を算出する(
図4参照)。
【0066】
ステップS13では、リリーフ弁40に入力される開弁圧信号を、ステップS12で求めた余剰流量に応じて制御する。
【0067】
ステップS12で余剰流量がゼロと算出された場合には、ステップS13では、リリーフ弁40の開弁圧を維持する(変更しない)ような制御が行われる。
【0068】
ステップS12でゼロよりも大きい余剰流量が算出された場合には、ステップS13では、例えば
図5に示すように、リリーフ弁40の開弁圧を、余剰流量に応じた分だけPc1からPc2へと増加させる。
【0069】
ステップS14では、ステップS10で取得した操作信号とステップS12で算出した余剰流量に応じてポンプPの吐出容量を制御する。
【0070】
操作レバー1が操作されておらず、余剰流量がゼロである場合には、ステップS14では、ポンプPの吐出容量を最小となるように制御する。このように、制御弁20が中立ポジション20Aにある状態では、ポンプPからスタンバイ流量の作動油が吐出されセンターバイパス通路を通じてタンクTに導かれる。
【0071】
操作レバー1が操作されているもののステップS12で余剰流量がゼロと算出された場合には、ステップS14では操作レバー1の操作量のみに応じてポンプPの吐出容量が決定される。つまり、リリーフ弁40が閉弁している状態では、コントローラ50は、操作レバー1の操作入力が増加するにつれて、ポンプPの吐出容量を大きくするように制御する。
【0072】
操作レバー1が操作されゼロよりも大きい余剰流量が排出通路15を通じてタンクTに排出されると、ステップS14では、操作レバー1の操作量から算出されるポンプPの吐出容量を余剰流量に応じて補正する。そして、余剰流量に応じて補正した吐出容量となるようにポンプPを制御する。具体的には、現在の操作レバー1の操作量に対応するポンプPの吐出容量から、余剰流量に対応する分だけ吐出容量を減少させるようにポンプPを制御する。
【0073】
ステップS13ではリリーフ弁40の開弁圧を増加させ、ステップS14でポンプPの吐出流量を減少させることで、油圧シリンダ2に供給される作動油の流量を維持しつつ(供給される流量の変化を防止しつつ)排出通路15を通じて排出される余剰流量を減少させることができる。つまり、ポンプPの余剰流量を減少させつつ、油圧シリンダ2への供給流量を維持し、リリーフ弁40の開弁圧の増加に伴う油圧シリンダ2の作動状態の変化を防止することができる。
【0074】
より詳細に説明すると、例えば、
図5に示すように、本実施形態の制御が未実施の状態において、リリーフ弁40の開弁圧をPc1、ポンプPの吐出圧(供給通路11の圧力)をP2とすると、リリーフ弁40が開弁して流量L2だけ作動油が排出通路15を通じてタンクTに排出される。本実施形態の制御が実行され、ステップS13でリリーフ弁40の開弁圧をPc1からPc2に増加させると(Pc2>Pc1)、リリーフ弁40の圧力流量特性が破線の状態から実線の状態となる。この際、油圧シリンダ2の負荷が変化しないとすれば、ポンプPの吐出容量を維持したままだと、余剰流量分がL2からL3へと減少した分だけ、油圧シリンダ2へ供給される作動油の流量が増加する。その結果、操作レバー1の操作や油圧シリンダ2の負荷の変化がないにも関わらず、油圧シリンダ2の速度が上昇する。
【0075】
そこで、本実施形態では、リリーフ弁40の開弁圧を増加させるのに伴いポンプPの吐出容量を減少させることで、リリーフ弁40の開弁圧の増加に伴う油圧シリンダ2への作動油の供給流量の増加を抑制することが出来る。具体的には、ポンプPの吐出圧がP2である場合、制御実施前の流量L2と、制御実施後の流量L3との差分だけポンプPの吐出容量を減少させる(L2>L3)ことで、油圧シリンダ2への供給流量を維持することができる。このように、本実施形態による制御によれば、ポンプPによって行われる仕事量を維持しつつ排出通路15を通じて排出される余剰流量を削減してポンプPで消費されるエネルギーを減少させることができる。
【0076】
なお、発生した余剰流量に対してリリーフ弁40の開弁圧をどの程度増加させるかは、任意に設定することができる。例えば、リリーフ弁40の開弁圧を制御開始時の圧力(
図5の例でいうとP2)以上にしてリリーフ弁40が閉弁されるようにしてもよいし、
図5で説明したように、制御開始時の圧力P2よりも小さくして制御後でも所定の余剰流量(流量L3)が生じるようにしてもよい。
【0077】
以上のようにして、本実施形態では、操作レバー1の操作量に加えて、排出制御部31を通過する流量(余剰流量)に基づいて、リリーフ弁40の開弁圧とポンプPの吐出容量を制御する。
【0078】
なお、供給通路11の圧力がリリーフ弁40の開弁圧よりも高い安全弁27の開弁圧にまで達すると、安全弁27が開弁して供給通路11の作動油の一部をタンク通路12に排出する。これにより、リリーフ弁40の開弁圧に関わらず、システム全体を保護することができる。
【0079】
また、コントローラ50は、上記の制御に加えて、ポンプPを駆動するエンジン等の負荷が許容限度を超えないように、第2圧力センサ26の圧力信号に基づいてポンプPの吐出容量を制御する馬力制御を実行する。馬力制御は、公知の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0080】
ここで、本発明の理解を容易にするために、
図8を参照して、本発明の比較例について説明する。なお、比較例では、上記実施形態と同様の構成については、上記実施形態と同様の符号を付して説明を省略する。
【0081】
比較例に係る流体圧制御システム300は、いわゆるネガコン制御によってポンプPの吐出容量を制御するものである。流体圧制御システム300は、本実施形態の排出制御部31に代えて、制御弁220の下流に設けられるネガコン制御部210を有する。
【0082】
ネガコン制御部210は、制御弁220の下流のタンク通路12に設けられるネガコンリリーフ弁211と、ネガコンリリーフ弁211に対して並列に設けられるネガコン絞り212と、ネガコン絞り212の上流圧(制御弁220とネガコン絞り212との間の圧力)を測定する圧力センサ213と、を有する。
【0083】
また、比較例の流体圧制御システム300では、制御弁220の収縮ポジション220Cでは、センターバイパス通路は制御弁220によって遮断されず制御絞り214を通じて開放される。つまり、制御弁220が収縮ポジション220Cとなると、ポンプPから吐出される作動油の一部は、供給通路11から制御弁220の制御絞り214を通じてタンク通路12に導かれ、タンクTに排出される。なお、図示は省略するが、制御絞り214は、例えば、制御弁220のスプールのランド部の外周に溝状のノッチを加工することで形成される。
【0084】
制御弁220を収縮ポジション220Cとして油圧シリンダ2を作動させる場合、センターバイパス通路が遮断される伸長ポジション20Bと異なり、ポンプPの吐出流量の一部が制御弁220の制御絞り214を通過し、ネガコン制御部210に導かれる。このため、ネガコン絞り212の上流圧は高くなる。ここで、油圧シリンダ2の負荷が変化すると、制御絞り214の絞り量が一定であっても、油圧シリンダ2に供給される流量と、制御絞り214を通過する流量は変化し、ネガコン絞り212の上流圧も変化する。このように制御絞り214を通過する作動油の流量は、油圧シリンダ2の作動に使用されない流量であり、エネルギーロスの一部である。
【0085】
コントローラ50は、ネガコン制御部210の圧力センサ213から入力されるネガコン絞り212の上流圧に基づいて、ポンプPの吐出容量を制御する(ネガコン制御)。コントローラ50には、ネガコン絞り212の圧力流量特性が予め記憶されており、圧力センサ213の圧力とネガコン絞り212の圧力流量特性とからネガコン絞り212の通過流量を算出することができる。
【0086】
制御弁220が中立ポジション20Aにある状態では、ポンプPから吐出される作動油は、センターバイパス通路のネガコン絞り212を通じてタンクTに排出される。
【0087】
制御弁220が収縮ポジション220Cに切り換えられると、ポンプPから吐出される作動油の一部は、制御弁220を通じて油圧シリンダ2に供給される。これにより、ネガコン絞り212を通過する流量は低下する。よって、コントローラ50は、ネガコン絞り212を通過する流量の低下に応じて低下するネガコン絞り212の上流圧に基づいてポンプPの吐出容量を増加させる。
【0088】
また、ネガコン制御では、タンク通路12にネガコン制御部210が設けられることで、制御弁220が中立ポジション20Aにある状態でもポンプPから吐出される作動油はネガコン絞り212を通じてタンクTに排出される。よって、制御弁220が中立ポジション20Aの状態であってポンプPがスタンバイ流量分の作動油を吐出する状態であっても、スタンバイ流量分の作動油をネガコン絞り212に通過させるだけのエネルギーが消費される。
【0089】
これに対し、本実施形態では、ポンプ制御装置30のリリーフ弁40の開弁圧が調整可能であると共に、下流絞り32を通過する流量に応じてポンプPの吐出容量が制御可能である。このため、油圧シリンダ2の必要圧と操作レバー1の操作量とが同じ場合であっても、リリーフ弁40の開弁圧を調整することで、供給通路11の圧力と、排出通路15を通じてタンクTに排出される作動油の流量、ひいては油圧シリンダ2に供給される流量とを調整できる。したがって、油圧シリンダ2に対して多様な制御を実現することができる。
【0090】
また、本実施形態は、ネガコン制御を行わず、ポンプPの余剰流量は、制御弁20の上流で供給通路11から分岐する排出通路15を通じてタンクTに排出され、排出制御部31によって余剰流量を制御する。制御弁20が中立ポジション20Aの状態では、ポンプPから吐出される作動油は、ネガコン絞り212が設けられていないセンターバイパス通路を通じてタンクTに排出される。このため、本実施形態によれば、作動油がネガコン絞り212を通過することで生じるエネルギーロスを抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態では、制御弁20は、作動ポジション(伸長ポジション20B、収縮ポジション20C)においてセンターバイパス通路を遮断する構成であり、比較例のように、作動ポジションにおいて制御絞り214を通じてセンターバイパス通路を開放する構成ではない。本実施形態では、比較例のような制御弁220の制御絞り214に代えて、リリーフ弁40の開弁圧を制御することで、ポンプPから油圧シリンダ2に供給される作動油の急激な圧力変化を緩和することができる。よって、本実施形態では、制御弁20において制御絞り214を廃止することができるため、制御弁20の構造の簡素化、制御絞り214を形成する工数の削減、低コスト化をすることができる。
【0092】
なお、エネルギーロスを削減するという観点でいうと、中立ポジション20Aから作動ポジションに切り換わる過程では、供給通路11とタンク通路12とが遮断(センターバイパス通路が遮断)するタイミングは、分岐供給通路11aとロッド側通路13またはボトム側通路14とが連通するタイミングよりも先(早い)または同時であることが望ましい。これにより、安全弁27の開弁圧以下において、油圧シリンダ2の作動以外でポンプPからタンクTに排出される作動油の漏れ量を、制御弁20を介して制御(減少)することが可能となり、エネルギーロスを最大限削減できる。また、このような場合には、比較例の制御絞り214を形成するノッチ等の構成を、供給通路11とタンク通路12との連通を遮断する制御弁20のスプールのランド部に形成する必要がないため、制御弁20の構造の簡素化等を行うことができる。
【0093】
一方、供給通路11とタンク通路12とが、分岐供給通路11aとロッド側通路13またはボトム側通路14とが連通するタイミングよりも先または同時に遮断されると、瞬間的に供給通路11の圧力上昇が避けられない場合ある。このような供給通路11の圧力上昇を避けたい場合には、供給通路11とタンク通路12とが遮断されるタイミングは、分岐供給通路11aとロッド側通路13またはボトム側通路14とが連通するタイミングより後であってもよい。言い換えると、制御弁20が中立ポジション20Aであって供給通路11とタンク通路12とが連通する状態から、作動ポジションに切り換わって供給通路11とタンク通路12とが遮断された状態となる間の遷移状態として、供給通路11とタンク通路12とが連通し、分岐供給通路11aとロッド側通路13またはボトム側通路14とが連通する状態が一時的に生じてもよい。これによれば、油圧シリンダ2の作動状態においても、リリーフ弁40の開弁圧に関わらず供給通路11の急激な圧力上昇が抑制され、緩やかな圧力上昇とすることができる。遷移状態では、油圧シリンダ2は、作動せずに停止した状態か、わずかに作動した状態となる。そして、供給通路11とタンク通路12とが完全に遮断されると、供給通路11、ひいては油圧シリンダ2に導かれる作動油の圧力が上昇し、油圧シリンダ2が作動する。
【0094】
また、このような遷移状態では、供給通路11とタンク通路12とをノッチ等の絞り(以下、「連通絞り」と称する。)を介して連通させてもよい。このような連通絞りは、例えば、作動ポジションにおいて供給通路11とタンク通路12との連通を遮断する制御弁20のスプールのランド部に形成される。これによれば、供給通路11の急激な圧力上昇を抑制すると共に油圧シリンダ2に供給するための作動油のタンクTへの漏れを抑制することができる。
【0095】
連通絞りは、制御弁20のスプールにおいて形成される位置は、比較例の制御絞り214と同様の位置となるが、作動ポジションで供給通路11(分岐供給通路11a)とタンク通路12とを連通するものではなく、油圧シリンダ2の作動中にポンプPからタンクTに排出される作動油の流量を制御するものではない。このため、比較例の制御絞り214と比較して、スプールの加工範囲(ノッチの長さ、幅、深さ等)は小さく、加工量は少ない。よって、連通絞りを設けても、比較例と比較して、制御弁20の構成の簡素化や加工工数の削減をすることが可能である。
【0096】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0097】
上記実施形態では、コントローラ50は、排出制御部31全体及び下流絞り32の圧力流量特性を記憶する。これに対し、コントローラ50は、排出制御部31及び下流絞り32の圧力流量特性を所定の温度範囲ごとに記憶し、作動油の温度に応じた排出制御部31及び下流絞り32の圧力流量特性を使用するようにしてもよい。この場合、温度センサによって作動油の温度を測定し、コントローラ50に入力するように構成すればよい。作動油の温度に応じた圧力流量特性を利用することで、下流絞り32を通過する流量を精度良く算出することができる。
【0098】
また、上記実施形態では、コントローラ50は、排出制御部31を通過する余剰流量が多くなると、リリーフ弁40の開弁圧を増加させると共にポンプPの吐出容量を減少させる。これにより、油圧シリンダ2に必要な圧力を維持したまま余剰流量を減少させて省エネルギー化を図ることができる。これに対し、コントローラ50によるリリーフ弁40の開弁圧とポンプPの吐出容量の制御は、上記実施形態の構成に限定されない。コントローラ50は、余剰流量に応じてリリーフ弁40の開弁圧の変更とポンプPの吐出容量の変更とを同時に行う構成に限定されず、少なくとも一方を変更するように構成してもよい。
【0099】
つまり、本明細書では、リリーフ弁40の開弁圧(排出制御部31の作動)及びポンプPの吐出容量を制御するとは、リリーフ弁40の開弁圧及びポンプPの吐出容量を変更することに加えて、変化させずに維持することも含む意味である。さらにいえば、下流絞り32を通過する作動油の流量に応じてポンプPの吐出容量及びリリーフ弁40の開弁圧を制御するとは、下流絞り32を通過する作動油の流量に応じてポンプPの吐出容量またはリリーフ弁40の開弁圧を変更せずに維持することも含む意味である。
【0100】
例えば、コントローラ50は、排出制御部31を通過する余剰流量に応じてリリーフ弁40の開弁圧またはポンプPの吐出容量の一方を変更し、他方を維持するように制御するものでもよい。
【0101】
また、コントローラ50は、切り換え可能な複数の制御モードを実行可能に構成されてもよい。例えば、コントローラ50は、上記実施形態の制御を「省エネモード」として設定し、当該省エネモードに加えて、余剰流量に応じたリリーフ弁40の開弁圧及びポンプPの吐出容量の制御を行わない「高応答モード」を実行するように構成されてもよい。高応答モードでは、ポンプPの吐出容量は、余剰流量には依存せず、操作レバー1の操作量に応じて制御される。上記実施形態のような省エネモードは、余剰流量が増加すると余剰流量を減少させるようにリリーフ弁40の開弁圧及びポンプPの吐出容量が制御されるため、省エネルギー化することができる。これに対し、高応答モードは、余剰流量を減少させないため、油圧シリンダ2の負荷状態が変動して必要圧力(または必要流量)が増加した際には、余剰流量分を即座に油圧シリンダ2への供給に回すことができ、負荷変動に対する応答性に優れる。作業者によるボタン等の操作によって省エネモードと高応答モードとを切り換えられるように構成することで、状況に応じて適切な制御を行うことができる。
【0102】
また、上記実施形態では、追加抵抗部である上流絞り33は、リリーフ弁40とは別体として排出通路15に設けられる。これに対し、追加抵抗部は、例えば、リリーフ弁40のメインポペット42やメインポペット42が着座するシート部(図示省略)に形成されるスリット等によって構成されてもよい。つまり、追加抵抗部は、リリーフ弁40とは別体ではなく、リリーフ弁40の構成の一部に設けられ、リリーフ弁40に内蔵されるものでもよい。また、排出制御部31が所望の圧力流量特性を実現できる場合には、追加抵抗部を廃止することもできる。
【0103】
また、上記実施形態では、流体圧制御システム100は、操作レバー1の非操作時において、制御弁20が中立ポジション20Aとなってセンターバイパス通路が開放される、いわゆるオープンセンタ型のシステムであり、操作レバー1の操作量に応じてポンプPの吐出容量を制御するポジティブコントロールを実行するものである。これに対し、ポンプ制御装置30は、操作レバー1の非操作時に制御弁20によって供給通路11とタンク通路12とが連通されない、クローズドセンタ型のシステムに適用されてもよい。この場合であっても、排出通路15を通過する作動油の流量に基づいてリリーフ弁40の開弁圧とポンプPの吐出容量との少なくとも一方を制御することで、油圧シリンダ2に供給される作動油の制御において多様な制御を実現することができる。また、クローズドセンタ型の場合には、操作レバー1の非操作時(操作レバー1のレバー角が中立位置から所定の角度範囲内)には、リリーフ弁40への通電を遮断してリリーフ弁40の開弁圧を最小として、リリーフ弁40を介して供給通路11をタンクTに開放するようにしてもよい。
【0104】
また、ポンプ制御装置30は、流体圧制御装置10の内部に組み込まれるものでもよいし、ポンプPの内部に組み込まれるものでもよい。また、ポンプ制御装置30は、流体圧制御装置10及びポンプPのそれぞれに対して別体として設けられるものでもよい。
【0105】
次に、
図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る流体圧制御システム200及びポンプ制御装置130について説明する。
【0106】
上記第1実施形態では、抵抗部は、リリーフ弁40の下流に設けられる下流絞り32である。圧力測定部34は、圧力センサ35a及びタンク圧センサ35bを有し、下流絞り32の前後差圧を測定する。そして、コントローラ50は、下流絞り32の前後差圧から排出通路15を通過する作動油の流量を取得し、当該流量に基づいてポンプPの吐出容量及びリリーフ弁40の開弁圧を制御する。
【0107】
これに対し、第2実施形態では、抵抗部は、リリーフ弁40の上流側に設けられる上流絞り33である。第2実施形態は、第1実施形態における追加抵抗部である上流絞り33の機能と抵抗部である下流絞り32の機能とを互いに入れ換えたものである。これに伴い、圧力測定部134は、上流絞り33の前後差圧を測定するように構成される。以下、第2実施形態の具体的構成について説明する。
【0108】
第2実施形態では、下流絞り32は、リリーフ弁40の圧力流量特性を調整するための追加抵抗部として機能する。第2実施形態では、下流絞り32は必須の構成ではなく、設けられなくてもよい。
【0109】
第2実施形態の圧力測定部134は、第1実施形態の圧力センサ35a及びタンク圧センサ35bに代えて、上流絞り33の上流側の圧力を測定する上流圧測定部としての第2圧力センサ26と、上流絞り33の下流側の圧力(上流絞り33とリリーフ弁40との間の圧力)を測定する下流圧測定部としての第3圧力センサ35cと、を有する。第2圧力センサ26及び第3圧力センサ35cの測定結果は、コントローラ50に入力される。
【0110】
第2圧力センサ26は、上記第1実施形態の第2圧力センサと同一の構成であり、本実施形態では圧力測定部134の一部として設けられる。上流絞り33の上流側における排出通路15の圧力は、供給通路11と略同圧であるため、第2圧力センサ26によって上流絞り33の上流圧を測定することができる。なお、第2圧力センサ26は、上流絞り33の上流側における排出通路15の圧力を直接測定するように設けられてもよい。
【0111】
コントローラ50は、上流絞り33の圧力流量特性を予め記憶する。コントローラ50は、第2圧力センサ26と第3圧力センサ35cの測定結果から上流絞り33の前後差圧を取得し、当該前後差圧と上流絞り33の圧力流量特性とに基づいて排出通路15の通過流量(余剰流量)を取得する。
【0112】
このような第2実施形態においても、上流絞り33の前後差圧及び圧力流量特性から排出通路15を通じてタンクTに排出される余剰流量が取得できるため、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0113】
ここで、第1実施形態と第2実施形態とを比較して説明する。第1実施形態では、抵抗部はリリーフ弁40の下流側に設けられる下流絞り32である。よって、排出通路15を通過する流量が同じ場合であっても、上流絞り33及びリリーフ弁40での圧力損失が生じることにより、圧力センサ35aが測定する圧力は、第2実施形態の第3圧力センサ35cが測定する圧力よりも低くなる。このため、圧力センサ35aは、第3圧力センサ35cよりも測定レンジが低いセンサを利用できる。一般に、同じ値の圧力を測定する場合であっても、測定レンジが低いほうが測定の分解能を細かくできる。よって、第1実施形態は、第2実施形態と比較して、抵抗部の前後差圧の測定精度、ひいては、排出通路15を通過する余剰流量の算出精度を高くしやすい。また、第1実施形態では、リリーフ弁40の第2下流室47bは、下流絞り32の下流において排出通路15に接続されてタンクTに連通する。このため、例えば、リリーフ弁40に高いサージ圧が入力されたとしても、第2下流室47bの圧力は排出通路15を通じてタンクTに排出されて、第2下流室47b、ひいては第2パイロット室47cが高圧になることは抑制される。よって、第2パイロット室47cに収容されるソレノイド40bの耐久性を確保できるため、ソレノイド40bに対して高い耐圧性が要求されない。
【0114】
一方、第1実施形態では、
図3に示すように、圧力センサ35aは、リリーフ弁40のメインポペット42を開弁して第1上流室43aから下流絞り32に導かれる作動油の圧力を測定する。これに対し、リリーフ弁40が開弁する際には、第2上流室47aに導かれ、パイロットポペット46を開弁して下流絞り32を通過せずに排出通路15に導かれる作動油の流れも生じる。つまり、第1実施形態では、下流絞り32を通過する作動油の流量は、排出通路15を通過する作動油の全流量とは一致せず、パイロットポペット46(第2上流室47a)を通過する分だけわずかに少なくなる。通常、このような余剰流量の測定誤差は、ポンプPの吐出容量及びリリーフ弁40の開弁圧の制御に対して影響を及ぼす程度のものではないため、制御上の問題は生じない。
【0115】
第2実施形態では、リリーフ弁40の上流側の上流絞り33を抵抗部とするため、下流絞り32を抵抗部とする第1実施形態のように、パイロットポペット46を一部の作動油が通過することによる余剰流量の測定誤差は生じない。よって、第2実施形態は、ポンプPの吐出容量及びリリーフ弁40の開弁圧に対して余剰流量の測定誤差が影響するほど高精度の制御を行う場合には、好適である。
【0116】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0117】
本実施形態のポンプ制御装置30は、供給通路11の作動油をタンクTに導く排出通路15と、排出通路15を通じてタンクTに排出される作動油の流れを制御する排出制御部31と、油圧シリンダ2を作動させる作業者の操作入力に応じてポンプPの容量を制御するコントローラ50と、を備え、排出制御部31は、排出通路15に設けられ排出通路15の圧力が所定の開弁圧に達すると開弁し、入力される電気信号によって開弁圧が可変となるように構成されるリリーフ弁40と、供給通路11から排出通路15に導かれリリーフ弁40を通過した作動油の流れに抵抗を付与する下流絞り32と、下流絞り32の前後差圧を取得するための圧力測定部34と、を有し、コントローラ50は、操作入力の増加に伴ってポンプPの吐出流量を増加させ、下流絞り32における圧力と通過流量との関係である圧力流量特性を予め記憶し、下流絞り32の圧力流量特性と圧力測定部34が測定した前後差圧とに基づいて下流絞り32を通過する作動油の流量を取得し、下流絞り32を通過する作動油の流量に応じてポンプPの吐出容量及びリリーフ弁40の開弁圧の少なくとも一方を変更する。
【0118】
本実施形態のポンプ制御装置30は、供給通路11の作動油をタンクTに導く排出通路15と、排出通路15を通じてタンクTに排出される作動油の流れを制御する排出制御部31と、油圧シリンダ2を作動させる作業者の操作入力に応じてポンプPの容量を制御するコントローラ50と、を備え、排出制御部31は、排出通路15に設けられ排出通路15の圧力が所定の開弁圧に達すると開弁し、入力される電気信号によって開弁圧が可変となるように構成されるリリーフ弁40と、リリーフ弁40からタンクTに向かう作動油の流れに抵抗を付与する上流絞り33と、上流絞り33の前後差圧を取得するための圧力測定部134と、を有し、コントローラ50は、操作入力の増加に伴ってポンプPの吐出流量を増加させ、上流絞り33における圧力と通過流量との関係である圧力流量特性を予め記憶し、上流絞り33の圧力流量特性と圧力測定部134が測定した前後差圧とに基づいて上流絞り33を通過する作動油の流量を取得し、上流絞り33を通過する作動油の流量に応じてポンプPの吐出容量及びリリーフ弁40の開弁圧の少なくとも一方を変更する。
【0119】
これらの構成では、排出制御部31の下流絞り32または上流絞り33を通過する作動油の流量に応じてリリーフ弁40の開弁圧及びポンプPの吐出容量の少なくとも一方が変更される。下流絞り32または上流絞り33の圧力流量特性に基づきリリーフ弁40の開弁圧およびポンプPの吐出容量を、独立または協調させて調整できる。このため、制御弁20の開口面積と作業者による操作入力が同じ場合であっても、下流絞り32または上流絞り33を通過する流量増加に応じてリリーフ弁40の開弁圧を高くすることで、油圧シリンダ2へ導く作動油の圧力および流量を増加させることができる。また、リリーフ弁40の開弁圧を増加させた分だけポンプPの吐出容量を減少させて、油圧シリンダ2へ導く作動流体の圧力および流量を維持し、下流絞り32または上流絞り33を通過する流量のみを減少させることもできる。このように、作業者による操作入力が同じ場合であっても、油圧シリンダ2アクチュエータの作動に対して多様な制御を実現することができる。
【0120】
また、これらの構成では、コントローラ50は、ネガコン制御ではなく作業者の操作入力に応じてポンプPの吐出容量を制御するため、ネガコン制御においてポンプPの吐出容量を制御するために設けられる絞りを廃止することができる。よって、中立時にポンプPから吐出される作動油は、ネガコン制御のような制御弁20の下流の絞りを通過することがないため、エネルギーロスを抑制することができる。また、排出制御部31の下流絞り32を通過する作動油の流量に応じてリリーフ弁40の開弁圧またはポンプPの吐出容量が制御されることで、ポンプPから吐出され排出通路15を通じてタンクTに排出される作動油の流量を減少させることができる。
【0121】
また、ポンプ制御装置30では、排出制御部31が、排出通路15に設けられ供給通路11からリリーフ弁40に向かう作動油の流れに抵抗を付与する上流絞り33を有することを特徴とする。
【0122】
この構成では、排出制御部31全体としての圧力流量特性は、上流絞り33および下流絞り32による圧力流量特性の影響を受ける。上流絞り33および下流絞り32の圧力流量特性を調整することで排出制御部31全体としての圧力流量特性を調整できるため、排出制御部31の圧力流量特性の設計自由度が向上する。
【0123】
また、ポンプ制御装置30では、コントローラ50が、抵抗部を通過する作動油の流量の増加に伴い、リリーフ弁40の開弁圧を増加させると共にポンプPの吐出容量を減少させる。
【0124】
この構成では、リリーフ弁40の開弁圧を増加させることで排出通路15を通じてタンクTに排出される作動油の流量を減少させることができる。また、排出通路15を通じてタンクTに排出される作動油の流量を減少させることで、ポンプPから油圧シリンダ2に供給される作動油の流量が増加するため、ポンプPの吐出容量を減少させても油圧シリンダ2に供給される流量を確保することができる。よって、ポンプPによって行われる仕事量を維持しつつ消費されるエネルギーを減少させることができる。
【0125】
また、ポンプ制御装置30では、圧力測定部34は、リリーフ弁40から下流絞り32に導かれる作動油の圧力を測定する圧力センサ35aと、タンクTの圧力を測定するタンク圧センサ35bと、をさらに備え、コントローラ50は、圧力センサ35aが測定した圧力とタンク圧センサ35bが測定した圧力との差圧に基づいて下流絞り32を通過する作動油の流量を取得する。
【0126】
この構成では、タンク圧の実測値に基づいて下流絞り32を通過する作動油の流量が取得されるため、タンク圧が変動する場合であっても、流量を精度よく取得することができる。
【0127】
また、流体圧制御システム100では、制御弁20が、供給通路11と油圧シリンダ2とを連通させる二つの作動ポジション(伸長ポジション20B、収縮ポジション20C)を有し、いずれの作動ポジションにおいても、供給通路11とタンクTとの連通が遮断される。
【0128】
油圧シリンダの作動を制御する制御弁には、作動ポジションにおいて供給通路とタンクとを作動油の流れを絞り等によって抵抗を付与しながら連通させて油圧シリンダへ供給される作動油の流量を制御するものもある。このような従来の制御弁と比較して、上記構成では、排出制御部31のリリーフ弁40の開弁圧を制御することで、油圧シリンダ2に供給される作動油の流量を制御できるため、作動ポジションでは供給通路とタンクTとが遮断するように構成される。よって、作動ポジションにおいて供給通路11からタンクTに向かう流量を制御する絞り等を制御弁20に設ける必要がなく、制御弁20の構成を簡素化できる。
【0129】
また、本実施形態の流体圧制御システム100は、供給通路11を通じて作動油を吐出する可変容量型のポンプPと、ポンプPから吐出される作動油によって作動する油圧シリンダ2と、作業者による操作入力に応じて流体圧アクチュエータに給排される作動油の流れを制御する制御弁20と、ポンプPの吐出容量を制御するポンプ制御装置30と、を備え、ポンプ制御装置30は、供給通路11の作動油をタンクTに導く排出通路15と、排出通路15を通じてタンクTに排出される作動油の流れを制御する排出制御部31と、流体圧アクチュエータを作動させる作業者の操作入力に応じてポンプPの容量を制御するコントローラ50と、を有し、排出制御部31は、排出通路15に設けられ排出通路15の圧力が所定の開弁圧に達すると開弁し、入力される電気信号によって開弁圧が可変となるように構成されるリリーフ弁40と、供給通路11から排出通路15に導かれリリーフ弁40を通過した作動油の流れに抵抗を付与する下流絞り32と、下流絞り32の前後差圧を取得するための圧力測定部34と、を有し、コントローラ50は、操作入力の増加に伴ってポンプPの吐出流量を増加させ、下流絞り32における圧力損失と通過流量との関係である圧力流量特性を予め記憶し、下流絞り32の圧力流量特性と圧力測定部34が測定した圧力とに基づいて下流絞り32を通過する作動油の流量を取得し、下流絞り32を通過する作動油の流量に応じてポンプPの吐出容量及びリリーフ弁40の開弁圧の少なくとも一方を制御する。
【0130】
この構成では、作業者の操作入力に応じてポンプPの吐出容量を制御するため、ネガコン制御においてポンプPの吐出容量を制御するために設けられる絞りを廃止することができる。よって、制御弁20が中立時にポンプPから吐出される作動油は、ネガコン制御のような制御弁の下流の絞りを通過することがないため、エネルギーロスを抑制することができる。また、下流絞り32を通過する作動油の流量に応じてリリーフ弁40の開弁圧またはポンプPの吐出容量が変更されることで、ポンプPから吐出され排出通路15を通じてタンクTに排出される作動油の流量を減少させることができる。
【0131】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0132】
30,130…ポンプ制御装置、100,200…流体圧制御システム、2…油圧シリンダ(流体圧アクチュエータ)、11…供給通路、15…排出通路、20…制御弁、20A…中立ポジション、20B…伸長ポジション(作動ポジション)、20C…収縮ポジション(作動ポジション)、31…排出制御部、32…下流絞り(抵抗部、追加抵抗部)、33…上流絞り(追加抵抗部、抵抗部)、34,134…圧力測定部、35a…圧力センサ(上流圧測定部)、35b…タンク圧センサ(タンク圧測定部)、40…リリーフ弁、50…コントローラ、P…ポンプ、T…タンク