(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179289
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】印刷装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 19/18 20060101AFI20241219BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B41J19/18 E
B41J19/18 Z
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098021
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】723005698
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 孝
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 崇
(72)【発明者】
【氏名】和田 充史
【テーマコード(参考)】
2C056
2C480
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB11
2C056EB29
2C056EC11
2C056FA10
2C480CA01
2C480CA09
2C480CA31
2C480CA53
2C480CB02
2C480CB35
2C480CB42
2C480DB02
(57)【要約】
【課題】エンコーダからエンコーダ信号が正常に出力されない場合であっても、印刷品質を維持することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置2は、ヘッド部4と、ヘッド部4を所定方向に移動させるキャリアモータ6と、エンコーダ信号を出力するリニアエンコーダ8と、リニアエンコーダ8からのエンコーダ信号をカウントするカウンタ20と、カウント値に基づいてエンコーダ信号における異常区間を検出する異常区間検出部22と、理論波形信号を生成する理論波形信号生成部24と、検出モードを実行し、検出モードの後に印刷モードを実行する印刷制御部28と、検出モードにおいて異常区間が検出された場合に、印刷モードにおいて、エンコーダ信号の異常区間の少なくとも一部を理論波形信号に置き換えてカウンタ20に出力するセレクタ14とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に印刷を施すための印刷装置であって、
前記記録媒体に向けてインクを吐出するヘッド部と、
前記記録媒体に対して前記ヘッド部を所定方向に移動させる駆動源と、
前記ヘッド部の前記所定方向における位置に応じたパルスを有するエンコーダ信号を出力するエンコーダと、
前記エンコーダからの前記エンコーダ信号をカウントするカウンタと、
前記カウンタによるカウント値に基づいて、前記エンコーダ信号における異常区間を検出する異常区間検出部と、
前記異常区間に対応する前記エンコーダ信号の理論波形信号を生成する理論波形信号生成部と、
(i)前記異常区間検出部により前記異常区間を検出するために、前記駆動源を制御する検出モードを実行し、(ii)前記検出モードの後に、前記記録媒体に印刷を施すために、前記カウント値に基づいて前記ヘッド部及び前記駆動源を制御する印刷モードを実行する印刷制御部と、
前記検出モードにおいて前記異常区間が検出された場合に、前記印刷モードにおいて、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号の前記異常区間の少なくとも一部を前記理論波形信号に置き換えて前記カウンタに出力する素子と、を備える
印刷装置。
【請求項2】
前記異常区間検出部は、前記エンコーダ信号のうち異常なパルスを含む異常箇所の前後の区間にそれぞれ1以上の正常なパルスを付加した区間を、前記異常区間として検出する
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記素子は、前記カウンタと前記理論波形信号生成部とを電気的に接続する第1の接続状態と、前記カウンタと前記エンコーダとを電気的に接続する第2の接続状態とに切り替え可能なスイッチであり、
前記印刷装置は、さらに、
前記印刷モードにおいて、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号のうち前記異常区間では前記素子を前記第1の接続状態に切り替え、前記エンコーダ信号のうち前記異常区間以外の他の区間では前記素子を前記第2の接続状態に切り替える切替制御部を備える
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記理論波形信号生成部は、前記印刷モードにおいて、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号のうち前記異常区間に対応する期間のみ前記理論波形信号を生成する
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記素子は、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号と、前記理論波形信号生成部からの前記理論波形信号とをAND合成して前記カウンタに出力する回路である
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記素子は、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号と、前記理論波形信号生成部からの前記理論波形信号とをOR合成して前記カウンタに出力する回路である
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項7】
記録媒体に印刷を施すための印刷装置の制御方法であって、
前記印刷装置は、
前記記録媒体に向けてインクを吐出するヘッド部と、
前記記録媒体に対して前記ヘッド部を所定方向に移動させる駆動源と、
前記ヘッド部の前記所定方向における位置に応じたパルスを有するエンコーダ信号を出力するエンコーダと、
前記エンコーダからの前記エンコーダ信号をカウントするカウンタと、を備え、
前記制御方法は、
(a)前記カウンタによるカウント値に基づいて前記エンコーダ信号における異常区間を検出するために、前記駆動源を制御する検出モードを実行するステップと、
(b)前記検出モードの後に、前記記録媒体に印刷を施すために、前記カウント値に基づいて前記ヘッド部及び前記駆動源を制御する印刷モードを実行するステップと、
(c)前記検出モードにおいて前記異常区間が検出された場合に、前記印刷モードにおいて、前記異常区間に対応する前記エンコーダ信号の理論波形信号を生成し、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号の前記異常区間の少なくとも一部を前記理論波形信号に置き換えて前記カウンタに出力するステップと、を含む
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に印刷を施すための印刷装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式により記録媒体に印刷を施すための印刷装置が知られている。この種の印刷装置は、記録媒体に向けてインクを吐出するヘッド部と、ヘッド部に対して記録媒体を副走査方向に搬送する搬送機構と、記録媒体に対してヘッド部を主走査方向に移動させるモータと、ヘッド部の主走査方向における位置に応じたパルス状のエンコーダ信号を出力するリニアエンコーダと、リニアエンコーダからのエンコーダ信号に基づいてヘッド部及びモータを制御する印刷制御部とを備えている。
【0003】
リニアエンコーダは、ヘッド部に搭載された検出部と、所定の間隔で複数のスリットが形成されたリニアスケールとを有している。検出部は、リニアスケールの複数のスリットにそれぞれ対応する複数のパルスを有するエンコーダ信号を出力する。
【0004】
上述した印刷装置では、リニアスケールがヘッド部から吐出されたインク等で汚れることにより、検出部からエンコーダ信号が正常に出力されない場合がある。そこで、特許文献1では、n番目のライン(スワス)の印刷時にエンコーダ信号の異常が検出された場合に、n+1番目のラインの印刷時におけるヘッド部の移動速度を変更する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示された技術では、n番目のラインの印刷時にエンコーダ信号の異常が検出された場合に、次のn+1番目のラインの印刷時におけるヘッド部の移動速度を変更することにより、n+1番目のラインの印刷品質が維持される。しかしながら、エンコーダ信号の異常が検出されたタイミングでは、n番目のラインの印刷時におけるヘッド部の移動速度を変更する制御が間に合わないため、n番目のラインの印刷品質が低下するという課題が生じる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決しようとするものであり、その目的は、エンコーダからエンコーダ信号が正常に出力されない場合であっても、印刷品質を維持することができる印刷装置及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る印刷装置は、記録媒体に印刷を施すための印刷装置であって、前記記録媒体に向けてインクを吐出するヘッド部と、前記記録媒体に対して前記ヘッド部を所定方向に移動させる駆動源と、前記ヘッド部の前記所定方向における位置に応じたパルスを有するエンコーダ信号を出力するエンコーダと、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号をカウントするカウンタと、前記カウンタによるカウント値に基づいて、前記エンコーダ信号における異常区間を検出する異常区間検出部と、前記異常区間に対応する前記エンコーダ信号の理論波形信号を生成する理論波形信号生成部と、(i)前記異常区間検出部により前記異常区間を検出するために、前記駆動源を制御する検出モードを実行し、(ii)前記検出モードの後に、前記記録媒体に印刷を施すために、前記カウント値に基づいて前記ヘッド部及び前記駆動源を制御する印刷モードを実行する印刷制御部と、前記検出モードにおいて前記異常区間が検出された場合に、前記印刷モードにおいて、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号の前記異常区間の少なくとも一部を前記理論波形信号に置き換えて前記カウンタに出力する素子と、を備える。
【0009】
本態様によれば、まず、異常区間検出部によりエンコーダ信号の異常区間を検出する検出モードが実行され、その後、記録媒体に印刷を施す印刷モードが実行される。これにより、印刷モードにおいて、記録媒体に1番目のライン(スワス)から最終番目のラインまでを印刷する間、エンコーダからのエンコーダ信号の異常区間の少なくとも一部を理論波形信号に置き換えてカウンタに出力することができる。その結果、記録媒体における1番目のラインから最終番目のラインの全てについて、印刷品質を維持することができる。
【0010】
例えば、本発明の第2の態様に係る印刷装置では、第1の態様において、前記異常区間検出部は、前記エンコーダ信号のうち異常なパルスを含む異常箇所の前後の区間にそれぞれ1以上の正常なパルスを付加した区間を、前記異常区間として検出するように構成してもよい。
【0011】
本態様によれば、異常区間の検出精度を高めることができる。
【0012】
例えば、本発明の第3の態様に係る印刷装置では、第1の態様又は第2の態様において、前記素子は、前記カウンタと前記理論波形信号生成部とを電気的に接続する第1の接続状態と、前記カウンタと前記エンコーダとを電気的に接続する第2の接続状態とに切り替え可能なスイッチであり、前記印刷装置は、さらに、前記印刷モードにおいて、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号のうち前記異常区間では前記素子を前記第1の接続状態に切り替え、前記エンコーダ信号のうち前記異常区間以外の他の区間では前記素子を前記第2の接続状態に切り替える切替制御部を備えるように構成してもよい。
【0013】
本態様によれば、エンコーダ信号が、異常なパルスとして、ブリッジした複数のパルス及び/又は欠落した1以上のパルスを含む異常区間を有している場合に、エンコーダからのエンコーダ信号の異常区間の少なくとも一部を理論波形信号に置き換えてカウンタに出力することができる。
【0014】
例えば、本発明の第4の態様に係る印刷装置では、第3の態様において、前記理論波形信号生成部は、前記印刷モードにおいて、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号のうち前記異常区間に対応する期間のみ前記理論波形信号を生成するように構成してもよい。
【0015】
本態様によれば、印刷モードにおいて、例えば、エンコーダからのエンコーダ信号のうち異常区間における最初の立ち上がりエッジ(又は最初の立ち下がりエッジ)と、理論波形信号の最初の立ち上がりエッジ(又は最初の立ち下がりエッジ)とを容易に同期させることができる。
【0016】
例えば、本発明の第5の態様に係る印刷装置では、第1の態様又は第2の態様において、前記素子は、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号と、前記理論波形信号生成部からの前記理論波形信号とをAND合成して前記カウンタに出力する回路であるように構成してもよい。
【0017】
本態様によれば、エンコーダ信号が、異常なパルスとして、ブリッジした複数のパルスを含む異常区間を有している場合に、エンコーダからのエンコーダ信号の異常区間の少なくとも一部を理論波形信号に置き換えてカウンタに出力することができる。
【0018】
例えば、本発明の第6の態様に係る印刷装置では、第1の態様又は第2の態様において、前記素子は、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号と、前記理論波形信号生成部からの前記理論波形信号とをOR合成して前記カウンタに出力する回路であるように構成してもよい。
【0019】
本態様によれば、エンコーダ信号が、異常なパルスとして、欠落した1以上のパルスを含む異常区間を有している場合に、エンコーダからのエンコーダ信号の異常区間の少なくとも一部を理論波形信号に置き換えてカウンタに出力することができる。
【0020】
また、本発明の第7の態様に係る制御方法は、記録媒体に印刷を施すための印刷装置の制御方法であって、前記印刷装置は、前記記録媒体に向けてインクを吐出するヘッド部と、前記記録媒体に対して前記ヘッド部を所定方向に移動させる駆動源と、前記ヘッド部の前記所定方向における位置に応じたパルスを有するエンコーダ信号を出力するエンコーダと、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号をカウントするカウンタと、を備え、前記制御方法は、(a)前記カウンタによるカウント値に基づいて前記エンコーダ信号における異常区間を検出するために、前記駆動源を制御する検出モードを実行するステップと、(b)前記検出モードの後に、前記記録媒体に印刷を施すために、前記カウント値に基づいて前記ヘッド部及び前記駆動源を制御する印刷モードを実行するステップと、(c)前記検出モードにおいて前記異常区間が検出された場合に、前記印刷モードにおいて、前記異常区間に対応する前記エンコーダ信号の理論波形信号を生成し、前記エンコーダからの前記エンコーダ信号の前記異常区間の少なくとも一部を前記理論波形信号に置き換えて前記カウンタに出力するステップと、を含む。
【0021】
本態様によれば、まず、エンコーダ信号の異常区間を検出する検出モードが実行され、その後、記録媒体に印刷を施す印刷モードが実行される。これにより、印刷モードにおいて、記録媒体に1番目のラインから最終番目のラインまでを印刷する間、エンコーダからのエンコーダ信号の異常区間の少なくとも一部を理論波形信号に置き換えてカウンタに出力することができる。その結果、記録媒体における1番目のラインから最終番目のラインの全てについて、印刷品質を維持することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様に係る印刷装置等によれば、エンコーダからエンコーダ信号が正常に出力されない場合であっても、印刷品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施の形態1に係る印刷装置の構成を示す図である。
【
図2】リニアスケールに異常が無い場合に、エンコーダ信号が正常に出力されることを説明するための図である。
【
図3】リニアスケールに異常がある場合に、エンコーダ信号が正常に出力されないことを説明するための図である。
【
図4】リニアスケールに異常がある場合に、エンコーダ信号が正常に出力されないことを説明するための図である。
【
図5】リニアスケールに異常がある場合に、エンコーダ信号が正常に出力されないことを説明するための図である。
【
図6】リニアスケールに異常がある場合に、エンコーダ信号が正常に出力されないことを説明するための図である。
【
図7】理論波形信号の生成方法の一例を説明するための図である。
【
図8】理論波形信号の生成方法の他の一例を説明するための図である。
【
図9】理論波形信号の生成方法の更に他の一例を説明するための図である。
【
図10】実施の形態1に係る印刷装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図10のフローチャートの検出モードの内容を具体的に示すフローチャートである。
【
図12】
図10のフローチャートの印刷モードの内容を具体的に示すフローチャートである。
【
図13】
図10のフローチャートの印刷モードの内容を説明するための図である。
【
図14】
図10のフローチャートの印刷モードの内容を説明するための図である。
【
図15】実施の形態2に係る印刷装置の構成を示す図である。
【
図16】実施の形態2に係る印刷装置における印刷モードの内容を具体的に示すフローチャートである。
【
図17】実施の形態2に係る印刷装置における印刷モードの内容を説明するための図である。
【
図18】実施の形態3に係る印刷装置の構成を示す図である。
【
図19】実施の形態3に係る印刷装置における印刷モードの内容を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0025】
(実施の形態1)
[1-1.印刷装置の構成]
まず、
図1~
図9を参照しながら、実施の形態1に係る印刷装置2の構成について説明する。
図1は、実施の形態1に係る印刷装置2の構成を示す図である。
図2は、リニアスケール16に異常が無い場合に、エンコーダ信号が正常に出力されることを説明するための図である。
図3~
図6は、リニアスケール16に異常がある場合に、エンコーダ信号が正常に出力されないことを説明するための図である。
図7は、理論波形信号の生成方法の一例を説明するための図である。
図8は、理論波形信号の生成方法の他の一例を説明するための図である。
図9は、理論波形信号の生成方法の更に他の一例を説明するための図である。
【0026】
図1に示すように、印刷装置2は、例えば、普通紙又は写真用紙等の記録媒体に印刷を施すためのインクジェットプリンタである。印刷装置2は、ヘッド部4と、キャリアモータ6(駆動源の一例)と、リニアエンコーダ8(エンコーダの一例)と、搬送モータ10と、コントロールユニット12と、セレクタ14(素子の一例)とを備えている。
【0027】
ヘッド部4は、記録媒体に向けてインクを吐出するためのユニットである。ヘッド部4によるインクの吐出方式は、ミスト状のインクを吐出するインクジェット方式である。ヘッド部4は、キャリッジと、キャリッジに着脱可能に取り付けられたインクタンクとを有している。インクタンクの内部には、例えばCMYK(C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロー、K:ブラック)の4種類のインクが充填されている。キャリッジの下面には、インクタンクから供給されたインクを記録媒体に向けて下方に吐出するノズル面が形成されている。キャリッジは、主走査方向(所定の方向の一例)に沿って長尺状に延在するガイドシャフト15に移動可能に支持されている。
【0028】
キャリアモータ6は、ヘッド部4のキャリッジを移動させるためのサーボモータである。キャリアモータ6の駆動力は、タイミングベルト(図示せず)を介してヘッド部4のキャリッジに伝達される。これにより、ヘッド部4のキャリッジは、記録媒体に対して、ガイドシャフト15に沿って主走査方向に往復移動する。すなわち、キャリアモータ6は、記録媒体に対してヘッド部4のキャリッジを主走査方向に移動させる。
【0029】
リニアエンコーダ8は、リニアスケール16と、光学ユニット18とを有している。リニアスケール16は、主走査方向に沿って長尺状に延在しており、ガイドシャフト15に対向するように配置されている。リニアスケール16は、複数の透光部16aと、複数の遮光部16bとを有している。透光部16aと遮光部16bとは、リニアスケール16の長手方向に沿って交互に並んで配置されている。複数の透光部16aの各々は、例えばスリットで形成されている。
【0030】
光学ユニット18は、ヘッド部4に搭載されており、ヘッド部4の主走査方向における位置に応じたパルスを有するエンコーダ信号を、セレクタ14を介してカウンタ20(後述する)に出力する。光学ユニット18は、発光部と、受光部とを有している。発光部及び受光部はそれぞれ、リニアスケール16を両側から挟むように配置されている。
【0031】
ヘッド部4がガイドシャフト15に沿って主走査方向に移動している間、発光部からの光がリニアスケール16の透光部16aを通して受光部で受光される状態と、発光部からの光がリニアスケール16の遮光部16bで遮光されることにより受光部で受光されない状態とが交互に繰り返される。
図2に示すように、受光部は、発光部からの光を受光している間はローレベル、発光部からの光を受光していない間はハイレベルとなるような、複数のパルスを有するエンコーダ信号を出力する。
【0032】
なお、上記とは反対に、受光部は、発光部からの光を受光している間はハイレベル、発光部からの光を受光していない間はローレベルとなるような、複数のパルスを有するエンコーダ信号を出力してもよい。また、受光部は、互いに90°の位相差を有するA相のエンコーダ信号及びB相のエンコーダ信号を出力してもよい。
【0033】
搬送モータ10は、ヘッド部4に対して記録媒体を副走査方向(主走査方向と直交する方向)に搬送するためのサーボモータである。
【0034】
セレクタ14は、第1の接続状態と第2の接続状態とを切り替え可能なスイッチである。第1の接続状態は、
図1において破線で示すように、コントロールユニット12のカウンタ20(後述する)と理論波形信号生成部24(後述する)とを電気的に接続する接続状態である。一方、第2の接続状態は、
図1において実線で示すように、カウンタ20とリニアエンコーダ8の光学ユニット18とを電気的に接続する接続状態である。セレクタ14が第1の接続状態に切り替えられた場合には、理論波形信号生成部24からの理論波形信号は、セレクタ14を介してカウンタ20に出力される。一方、セレクタ14が第2の接続状態に切り替えられた場合には、リニアエンコーダ8の光学ユニット18からのエンコーダ信号は、セレクタ14を介してカウンタ20に出力される。
【0035】
コントロールユニット12は、カウンタ20と、異常区間検出部22と、理論波形信号生成部24と、切替制御部26と、印刷制御部28とを有している。
【0036】
カウンタ20は、リニアエンコーダ8の光学ユニット18からのエンコーダ信号に含まれる複数のパルスを、カウント値としてカウントする。カウンタ20は、カウントしたカウント値を、異常区間検出部22、理論波形信号生成部24、切替制御部26及び印刷制御部28に出力する。
【0037】
異常区間検出部22は、検出モード(後述する)において、カウンタ20からのカウント値に基づいて、エンコーダ信号における異常区間を検出する。具体的には、異常区間検出部22は、ヘッド部4のキャリッジを一定速度で移動させた際における、エンコーダ信号の隣り合う2つの立ち上がりエッジの時間間隔と閾値との比較結果に基づいて、エンコーダ信号における異常区間を検出する。ここで、異常区間とは、エンコーダ信号の隣り合う2つの立ち上がりエッジの時間間隔が閾値を超える異常箇所を含む区間である。閾値は、ヘッド部4のキャリッジの速度から算出した、エンコーダ信号における2つの立ち上がりエッジの理論的な時間間隔に、キャリッジの移動で許容されるバラツキ範囲内の時間を加えた時間である。なお、異常区間検出部22は、エンコーダ信号の隣り合う2つの立ち下がりエッジの時間間隔と閾値との比較結果に基づいて、エンコーダ信号における異常区間を検出してもよい。
【0038】
図2に示すように、リニアスケール16に異常が無い場合には、エンコーダ信号は正常となる。具体的には、ヘッド部4のキャリッジを一定速度で移動させた際における、エンコーダ信号の隣り合う2つの立ち上がりエッジの時間間隔Wは、閾値以下となる。この場合、異常区間検出部22は、エンコーダ信号が正常であると判定し、エンコーダ信号における異常区間を検出しない。
【0039】
図3に示すように、リニアスケール16に異常がある、例えばインク等による汚れ36がリニアスケール16に付着して、1以上の透光部16aが汚れ36で塞がれている場合には、エンコーダ信号は異常となる。具体的には、ヘッド部4のキャリッジを一定速度で移動させた際に、エンコーダ信号のうち異常なパルス(ブリッジした複数のパルス)を含む異常箇所において、エンコーダ信号の隣り合う2つの立ち上がりエッジの時間間隔は閾値を超えるようになる。この場合、異常区間検出部22は、エンコーダ信号が異常であると判定し、エンコーダ信号のうち異常箇所の前後の区間にそれぞれ2つ(2周期分)の正常なパルスを付加した区間を、異常区間として検出する。なお、異常区間検出部22は、エンコーダ信号のうち異常なパルスを含む異常箇所の前後の区間にそれぞれ1つ又は3つ以上の正常なパルスを付加した区間を、異常区間として検出してもよい。
【0040】
また、
図4に示すように、リニアスケール16に異常がある、例えば1以上の遮光部16bが欠落している場合には、エンコーダ信号は異常となる。具体的には、ヘッド部4のキャリッジを一定速度で移動させた際に、エンコーダ信号のうち異常なパルス(欠落した1以上のパルス)を含む異常箇所において、エンコーダ信号の隣り合う2つの立ち上がりエッジの時間間隔は閾値を超えるようになる。この場合、異常区間検出部22は、エンコーダ信号が異常であると判定し、エンコーダ信号のうち異常箇所の前後の区間にそれぞれ2つの正常なパルスを付加した区間を、異常区間として検出する。なお、異常区間検出部22は、エンコーダ信号のうち異常なパルスを含む異常箇所の前後の区間にそれぞれ1つ又は3つ以上の正常なパルスを付加した区間を、異常区間として検出してもよい。
【0041】
また、
図5に示すように、リニアスケール16に異常がある、例えばインク等による2つの汚れ38,40がリニアスケール16に付着して、複数の透光部16aが汚れ38,40で塞がれている場合には、エンコーダ信号は異常となる。具体的には、ヘッド部4のキャリッジを一定速度で移動させた際に、エンコーダ信号のうち異常なパルス(ブリッジした複数のパルス)を含む、汚れ38に対応する異常箇所Aにおいて、エンコーダ信号の隣り合う2つの立ち上がりエッジの時間間隔が閾値を超えるようになる。また、ヘッド部4のキャリッジを一定速度で移動させた際に、エンコーダ信号のうち異常なパルス(ブリッジした複数のパルス)を含む、汚れ40に対応する異常箇所Bにおいて、エンコーダ信号の隣り合う2つの立ち上がりエッジの時間間隔が閾値を超えるようになる。この場合、異常区間検出部22は、エンコーダ信号が異常であると判定し、複数のエンコーダ信号のうち異常箇所Aの前後の区間にそれぞれ2つの正常なパルスを付加した区間を異常区間Aとして検出し、且つ、複数のエンコーダ信号のうち異常箇所Bの前後の区間にそれぞれ2つの正常なパルスを付加した区間を異常区間Bとして検出する。この時、異常区間Aの後ろの区間と異常区間Bの前の区間とが重複している場合には、異常区間検出部22は、異常区間Aと異常区間Bとを1つの異常区間としてまとめる。
【0042】
また、
図6に示すように、リニアスケール16に異常がある、例えばインク等による2つの汚れ42,44がリニアスケール16に付着して、複数の透光部16aが汚れ42,44で塞がれている場合には、エンコーダ信号は異常となる。この場合、
図5に示す場合と同様に、異常区間検出部22は、エンコーダ信号が異常であると判定し、複数のエンコーダ信号のうち異常箇所Cの前後の区間にそれぞれ2つの正常なパルスを付加した区間を異常区間Cとして検出し、且つ、複数のエンコーダ信号のうち異常箇所Dの前後の区間にそれぞれ2つの正常なパルスを付加した区間を異常区間Dとして検出する。この時、異常区間Cの後ろの区間と異常区間Dの前の区間とが重複している場合には、異常区間検出部22は、異常区間Cと異常区間Dとを1つの異常区間としてまとめる。さらに、まとめた1つの異常区間が所定の時間を超える場合には、異常区間検出部22は、エンコーダ信号がエラーであると判定し、印刷制御部28に対して印刷を実行しないように指示する。
【0043】
なお、リニアエンコーダ8の光学ユニット18が互いに90°の位相差を有するA相のエンコーダ信号及びB相のエンコーダ信号を出力する場合には、異常区間検出部22は、A相のエンコーダ信号における異常区間及びB相のエンコーダ信号における異常区間をそれぞれ検出するようになる。
【0044】
図1に戻り、理論波形信号生成部24は、検出モードの後に実行される印刷モード(後述する)において、リニアスケール16における透光部16a及び遮光部16bの配置密度、及び、ヘッド部4のキャリッジの目標速度に基づいて、異常区間に対応するエンコーダ信号の理論波形信号を生成する。ここで、理論波形信号とは、任意の隣り合う2つの立ち上がりエッジの時間間隔が閾値以下の一定値であるパルス波形を有する信号である。具体的には、
図7の(a)に示すように、例えばリニアスケール16における透光部16a及び遮光部16bの配置密度を150dpi、ヘッド部4のキャリッジの目標速度を30ipsとした場合、理論波形信号生成部24は、周期を1sec/(150dpi×30ips)=222.2μsecとする単位理論波形信号を生成する。次いで、
図7の(b)に示すように、理論波形信号生成部24は、異常区間検出部22により検出された異常区間に対応する時間分だけ、単位理論波形信号を繰り返しPWM(Pulse Width Modulation)で生成することにより、理論波形信号を生成する。なお、理論波形信号生成部24は、印刷モードにおいて、リニアエンコーダ8の光学ユニット18からのエンコーダ信号のうち異常区間に対応する期間のみ、理論波形信号を生成する。
【0045】
理論波形信号生成部24は、上述した理論波形信号の生成方法に代えて、例えば以下に示す方法で理論波形信号を生成してもよい。
図8の(a)に示すように、理論波形信号生成部24は、エンコーダ信号における異常区間よりも2周期前のパルス波形Pを、単位理論波形信号として生成する。次いで、
図8の(b)に示すように、理論波形信号生成部24は、異常区間検出部22により検出された異常区間に対応する時間分だけ、単位理論波形信号を繰り返しPWMで生成することにより、理論波形信号を生成する。
【0046】
あるいは、
図9の(a)に示すように、理論波形信号生成部24は、エンコーダ信号における異常区間よりも2周期前から6周期前までの5周期分のパルス波形の平均値を算出し、算出した平均値に基づいて単位理論波形信号を生成する。具体的には、理論波形信号生成部24は、5周期分のパルス波形の各ハイレベル期間H1,H2,H3,H4,H5の平均値Havr=(H1+H2+H3+H4+H5)/5を、単位理論波形信号のハイレベル期間とし、且つ、5周期分のパルス波形の各ローレベル期間L1,L2,L3,L4,L5の平均値Lavr=(L1+L2+L3+L4+L5)/5を、単位理論波形信号のローレベル期間とする単位理論波形信号を生成する。次いで、
図9の(b)に示すように、理論波形信号生成部24は、異常区間検出部22により検出された異常区間に対応する時間分だけ、単位理論波形信号を繰り返しPWMで生成することにより、理論波形信号を生成する。なお、理論波形信号生成部24は、エンコーダ信号における異常区間よりも2周期前から6周期前までの5周期分のパルス波形の平均値を算出したが、これに限定されず、例えば2周期分、3周期分、4周期分又は6周期分以上のパルス波形の平均値を算出してもよい。
【0047】
切替制御部26は、セレクタ14を第1の接続状態及び第2の接続状態の一方から他方に切り替える。具体的には、切替制御部26は、検出モードでは、セレクタ14を第2の接続状態に保持する。また、切替制御部26は、検出モードの後に実行される印刷モードにおいて、リニアエンコーダ8の光学ユニット18からのエンコーダ信号のうち異常区間ではセレクタ14を第1の接続状態に切り替え、エンコーダ信号のうち異常区間以外の他の区間(正常区間)ではセレクタ14を第2の接続状態に切り替える。
【0048】
印刷制御部28は、異常区間検出部22により異常区間を検出するために、キャリアモータ6の駆動を制御する検出モードを実行する。また、印刷制御部28は、検出モードの後に、記録媒体に印刷を施すために、カウンタ20からのカウント値に基づいて、ヘッド部4、キャリアモータ6及び搬送モータ10の各駆動を制御する印刷モードを実行する。印刷制御部28は、吐出制御部30と、キャリアモータ制御部32と、搬送モータ制御部34とを有している。
【0049】
吐出制御部30は、印刷モードにおいて、カウンタ20からのカウント値に基づいて、ヘッド部4からのインクの吐出動作を制御する。
【0050】
キャリアモータ制御部32は、検出モードにおいて、ヘッド部4のキャリッジがリニアスケール16の一端部に対応する位置から、リニアスケール16の他端部に対応する位置まで一定速度で移動するように、キャリアモータ6の駆動を制御する。また、キャリアモータ制御部32は、印刷モードにおいて、カウンタ20からのカウント値に基づいて、キャリアモータ6の駆動を制御する。
【0051】
搬送モータ制御部34は、印刷モードにおいて、カウンタ20からのカウント値に基づいて、搬送モータ10の駆動を制御する。
【0052】
[1-2.印刷装置の動作]
次に、
図10を参照しながら、実施の形態1に係る印刷装置2の動作について説明する。
図10は、実施の形態1に係る印刷装置2の動作の流れを示すフローチャートである。
【0053】
図10に示すように、ユーザが印刷装置2の電源をオンすると(S11)、異常区間検出部22により異常区間を検出する検出モードが実行される(S12)。なお、検出モードでは、記録媒体への印刷は実行されない。次いで、例えばユーザが印刷実行ボタン等を押下することにより、印刷を実行する場合には(S13でYES)、記録媒体に印刷を施す印刷モードが実行される(S14)。
【0054】
次いで、ユーザが印刷装置2の電源をオフした場合には(S15でYES)、
図10のフローチャートの処理を終了する。一方、ユーザが印刷装置2の電源をオフしない場合には(S15でNO)、上述したステップS13に戻る。
【0055】
また、ステップS13において、例えばユーザが印刷実行ボタン等を押下せず、印刷を実行しない場合には(S13でNO)、上述したステップS15に進む。
【0056】
次に、
図11を参照しながら、
図10のフローチャートの検出モード(ステップS12)の内容を具体的に説明する。
図11は、
図10のフローチャートの検出モードの内容を具体的に示すフローチャートである。
【0057】
図11に示すように、検出モードでは、まず、印刷制御部28のキャリアモータ制御部32は、ヘッド部4のキャリッジがリニアスケール16の一端部に対応する位置から、リニアスケール16の他端部に対応する位置まで一定速度で移動するように、キャリアモータ6の駆動を制御する。これにより、ヘッド部4のキャリッジの移動が開始する(S1201)。
【0058】
次いで、カウンタ20は、ヘッド部4のキャリッジが移動している間、リニアエンコーダ8の光学ユニット18からのエンコーダ信号に含まれる複数のパルスをカウントする。なお、検出モードでは、切替制御部26はセレクタ14を第2の接続状態に保持しているので、リニアエンコーダ8の光学ユニット18からのエンコーダ信号は、セレクタ14を介してカウンタ20に出力される。次いで、異常区間検出部22は、カウンタ20からのカウント値を取得する(S1202)。
【0059】
エンコーダ信号に異常がある場合には(S1203でYES)、異常区間検出部22は、カウンタ20からのカウント値に基づいて、エンコーダ信号における異常区間を検出する(S1204)。その後、ヘッド部4のキャリッジがリニアスケール16の他端部に対応する位置に到達した際には、印刷制御部28のキャリアモータ制御部32は、ヘッド部4のキャリッジの移動を停止するように、キャリアモータ6の駆動を制御する(S1205)。その後、
図10のフローチャートのステップS13に進む。
【0060】
ステップS1203に戻り、エンコーダ信号に異常が無い場合には(S1203でNO)、異常区間検出部22は、エンコーダ信号における異常区間を検出せず、上述したステップS1205に進む。
【0061】
次に、
図12~
図14を参照しながら、
図10のフローチャートの印刷モード(ステップS14)の内容を具体的に説明する。
図12は、
図10のフローチャートの印刷モードの内容を具体的に示すフローチャートである。
図13及び
図14は、
図10のフローチャートの印刷モードの内容を説明するための図である。
【0062】
本実施の形態では、印刷モードの前に実行された検出モードにおいて、異常区間検出部22が、
図13の(a)に示すような異常なパルス(ブリッジした複数のパルス)を含む異常区間、又は、
図14の(a)に示すような異常なパルス(欠落した1以上のパルス)を含む異常区間を検出した場合について説明する。また、印刷モードの開始時には、セレクタ14は、第2の接続状態に保持されている。
【0063】
図12に示すように、印刷モードでは、まず、印刷制御部28の搬送モータ制御部34は、ヘッド部4に対して記録媒体を副走査方向に搬送するように、搬送モータ10の駆動を制御する(S1401)。次いで、印刷制御部28のキャリアモータ制御部32は、ヘッド部4のキャリッジがリニアスケール16の一端部に対応する位置から、リニアスケール16の他端部に対応する位置まで一定速度で移動するように、キャリアモータ6の駆動を制御する。これにより、ヘッド部4のキャリッジの移動が開始するとともに(S1402)、ヘッド部4のキャリッジからインクが吐出される吐出区間が開始し(S1403)、記録媒体への1番目のライン(スワス)の印刷が開始される。
【0064】
カウンタ20は、ヘッド部4のキャリッジが移動している間、リニアエンコーダ8の光学ユニット18からのエンコーダ信号に含まれる複数のパルスをカウントする。次いで、切替制御部26は、カウンタ20からのカウント値を取得し(S1404)、取得したカウント値、及び、検出モードにおける異常区間検出部22の検出結果に基づいて、現時点でのエンコーダ信号が異常区間内であるか否かを判定する(S1405)。
【0065】
現時点でのエンコーダ信号が異常区間よりも前である場合であって(S1405でNO)、セレクタ14が第2の接続状態に保持されている場合には(S1406でNO)、ステップS1407に進む。記録媒体への1番目のラインの印刷が終了していない、すなわち吐出区間が終了していない場合には(S1407でNO)、上述したステップS1404に戻る。
【0066】
ステップS1404の後、現時点でのエンコーダ信号が異常区間内にある場合であって(S1405でYES)、セレクタ14が第2の接続状態に保持されている場合には(S1408でNO)、理論波形信号生成部24は、
図13の(b)又は
図14の(b)に示す理論波形信号を生成する(S1409)。この時、理論波形信号生成部24は、エンコーダ信号の異常区間における最初の立ち上がりエッジに同期した割り込み処理により、理論波形信号を生成する。これにより、エンコーダ信号の異常区間における最初の立ち上がりエッジと、理論波形信号の最初の立ち上がりエッジとが同期するようになる。
【0067】
なお、理論波形信号生成部24は、エンコーダ信号の異常区間の1周期前における最初の立ち上がりエッジから予め設定された遅延時間が経過したタイミングで、理論波形信号を生成してもよい。この場合でも、上述と同様に、エンコーダ信号の異常区間における最初の立ち上がりエッジと、理論波形信号の最初の立ち上がりエッジとが同期するようになる。
【0068】
次いで、切替制御部26は、セレクタ14を第2の接続状態から第1の接続状態に切り替える(S1410)。この時、切替制御部26は、エンコーダ信号の異常区間における最初の立ち上がりエッジに同期して、セレクタ14を第2の接続状態から第1の接続状態に切り替える。これにより、セレクタ14は、エンコーダ信号の異常区間を理論波形信号に置き換えた、
図13の(c)又は
図14の(c)に示す合成波形信号をカウンタ20に出力する。なお、切替制御部26は、エンコーダ信号の異常区間における最初の立ち上がりエッジから予め設定された遅延時間が経過したタイミングで、セレクタ14を第2の接続状態から第1の接続状態に切り替えてもよい。吐出区間が終了していない場合には(S1407でNO)、上述したステップS1404に戻る。
【0069】
ステップS1404の後、現時点でのエンコーダ信号が異常区間内にある場合であって(S1405でYES)、セレクタ14が第1の接続状態に切り替えられている場合には(S1408でYES)、ステップS1407に進む。吐出区間が終了していない場合には(S1407でNO)、上述したステップS1404に戻る。
【0070】
現時点でのエンコーダ信号が異常区間よりも後である場合であって(S1405でNO)、セレクタ14が第1の接続状態に切り替えられている場合には(S1406でYES)、切替制御部26は、セレクタ14を第1の接続状態から第2の接続状態に切り替える(S1411)。この時、切替制御部26は、エンコーダ信号の異常区間における最後の立ち上がりエッジに同期して、セレクタ14を第1の接続状態から第2の接続状態に切り替える。次いで、理論波形信号生成部24は、理論波形信号の生成を停止する(S1412)。この時、理論波形信号生成部24は、エンコーダ信号の異常区間における最後の立ち上がりエッジに同期した割り込み処理により、理論波形信号の生成を停止する。
【0071】
記録媒体への1番目のラインの印刷が終了した、すなわち吐出区間が終了した場合には(S1407でYES)、印刷制御部28のキャリアモータ制御部32は、キャリッジがリニアスケール16の他端部に対応する位置で停止するように、キャリアモータ6の駆動を制御する(S1413)。記録媒体への1番目のラインから最終番目のラインまでの全てのラインの印刷が終了していない場合には(S1414でNO)、上述したステップS1401に戻り、記録媒体への2番目のラインの印刷が開始される。
【0072】
上述したステップS1401~S1413を繰り返し実行することにより、記録媒体への1番目のラインから最終番目のラインまでの全てのラインの印刷が終了した場合には(S1414でYES)、
図10のフローチャートのステップS15に進む。
【0073】
[1-3.効果]
上述したように、実施の形態1に係る印刷装置2では、まず、異常区間検出部22によりエンコーダ信号の異常区間を検出する検出モードが実行され、その後、記録媒体に印刷を施す印刷モードが実行される。これにより、印刷モードにおいて、記録媒体に1番目のラインから最終番目のラインまでを印刷する間、リニアエンコーダ8の光学ユニット18からのエンコーダ信号の異常区間の少なくとも一部を理論波形信号に置き換えてカウンタ20に出力することができる。その結果、記録媒体における1番目のラインから最終番目のラインの全てについて、印刷品質を維持することができる。
【0074】
(実施の形態2)
[2-1.印刷装置の構成]
図15を参照しながら、実施の形態2に係る印刷装置2Aの構成について説明する。
図15は、実施の形態2に係る印刷装置2Aの構成を示す図である。以下に示す各実施の形態において、上記実施の形態1における構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0075】
図15に示すように、本実施の形態では、印刷装置2Aは、上記実施の形態1のセレクタ14に代えて、AND素子46(素子の一例)を備えている。AND素子46は、リニアエンコーダ8の光学ユニット18からのエンコーダ信号と、コントロールユニット12Aの理論波形信号生成部24Aからの理論波形信号とをAND合成し、AND合成した合成波形信号をカウンタ20に出力する回路である。
【0076】
理論波形信号生成部24Aは、後述する
図17の(b)に示すように、エンコーダ信号のうち異常区間では理論波形信号を生成し、エンコーダ信号のうち異常区間以外の他の区間ではハイレベル信号を生成する。
【0077】
本実施の形態では、検出モードにおいて、異常区間検出部22が、
図17の(a)に示すような異常なパルス(ブリッジした複数のパルス)を含む異常区間を検出した場合に、印刷モードにおいて、AND素子46は、
図17の(a)に示すエンコーダ信号と、
図17の(b)に示す理論波形信号又はハイレベル信号とをAND合成した、
図17の(c)に示す合成波形信号をカウンタ20に出力する。
【0078】
なお、本実施の形態では、コントロールユニット12Aは、上記実施の形態1で説明した切替制御部26を有していない。
【0079】
[2-2.印刷装置の動作]
図16及び
図17を参照しながら、実施の形態2に係る印刷装置2Aにおける印刷モードの内容を具体的に説明する。
図16は、実施の形態2に係る印刷装置2Aにおける印刷モードの内容を具体的に示すフローチャートである。
図17は、実施の形態2に係る印刷装置2Aにおける印刷モードの内容を説明するための図である。なお、
図16のフローチャートにおいて、
図12のフローチャートにおける処理と同一の処理には同一のステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0080】
本実施の形態では、印刷モードの前に実行された検出モードにおいて、異常区間検出部22が、
図17の(a)に示すような異常なパルス(ブリッジした複数のパルス)を含む異常区間を検出した場合について説明する。また、印刷モードの開始時には、理論波形信号生成部24Aは理論波形信号の生成を停止しており、
図17の(b)に示すように、理論波形信号生成部24Aからはハイレベル信号が出力されている。
【0081】
図16に示すように、上記実施の形態1と同様に、S1401~S1404が実行される。ステップS1404の後、現時点でのエンコーダ信号が異常区間よりも前である場合であって(S1405でNO)、理論波形信号生成部24Aが理論波形信号を出力していない場合には(S2401でNO)、ステップS1407に進む。この場合、AND素子46は、
図17の(a)に示すエンコーダ信号と、
図17の(b)に示すハイレベル信号とをAND合成した、
図17の(c)に示す合成波形信号をカウンタ20に出力する。吐出区間が終了していない場合には(S1407でNO)、上述したステップS1404に戻る。
【0082】
ステップS1404の後、現時点でのエンコーダ信号が異常区間内にある場合であって(S1405でYES)、理論波形信号生成部24Aが理論波形信号を出力していない場合には(S2402でNO)、理論波形信号生成部24Aは、
図17の(b)に示す理論波形信号を生成する(S2403)。この場合、AND素子46は、
図17の(a)に示すエンコーダ信号と、
図17の(b)に示す理論波形信号とをAND合成した、
図17の(c)に示す合成波形信号をカウンタ20に出力する。すなわち、AND素子46は、エンコーダ信号の異常区間の一部(異常なパルス)を理論波形信号に置き換えた、
図17の(c)に示す合成波形信号をカウンタ20に出力する。吐出区間が終了していない場合には(S1407でNO)、上述したステップS1404に戻る。
【0083】
ステップS1404の後、現時点でのエンコーダ信号が異常区間内にある場合であって(S1405でYES)、理論波形信号生成部24Aが理論波形信号を出力している場合には(S2402でYES)、ステップS1407に進む。吐出区間が終了していない場合には(S1407でNO)、上述したステップS1404に戻る。
【0084】
現時点でのエンコーダ信号が異常区間よりも後である場合であって(S1405でNO)、理論波形信号生成部24Aが理論波形信号を出力している場合には(S2401でYES)、理論波形信号生成部24Aは、理論波形信号の生成を停止する(S2404)。この場合、AND素子46は、
図17の(a)に示すエンコーダ信号と、
図17の(b)に示すハイレベル信号とをAND合成した、
図17の(c)に示す合成波形信号をカウンタ20に出力する。その後、ステップS1407に進み、上記実施の形態1と同様に、ステップS1413及びS1414が実行される。
【0085】
[2-3.効果]
本実施の形態では、エンコーダ信号が、異常なパルスとして、ブリッジした複数のパルスを含む異常区間を有している場合に、リニアエンコーダ8の光学ユニット18からのエンコーダ信号の異常区間の少なくとも一部を理論波形信号に置き換えてカウンタ20に出力することができる。
【0086】
(実施の形態3)
[3-1.印刷装置の構成]
図18及び
図19を参照しながら、実施の形態3に係る印刷装置2Bの構成について説明する。
図18は、実施の形態3に係る印刷装置2Bの構成を示す図である。
図19は、実施の形態3に係る印刷装置2Bにおける印刷モードの内容を説明するための図である。
【0087】
図18に示すように、本実施の形態では、印刷装置2Bは、上記実施の形態1のセレクタ14に代えて、OR素子48(素子の一例)を備えている。OR素子48は、リニアエンコーダ8の光学ユニット18からのエンコーダ信号と、コントロールユニット12Bの理論波形信号生成部24Bからの理論波形信号とをOR合成し、OR合成した合成波形信号をカウンタ20に出力する回路である。
【0088】
理論波形信号生成部24Bは、
図19の(b)に示すように、エンコーダ信号のうち異常区間では理論波形信号を生成し、エンコーダ信号のうち異常区間以外の他の区間ではローレベル信号を生成する。
【0089】
本実施の形態では、検出モードにおいて、異常区間検出部22が、
図19の(a)に示すような異常なパルス(欠落した1以上のパルス)を含む異常区間を検出した場合に、印刷モードにおいて、OR素子48は、
図19の(a)に示すエンコーダ信号と、
図19の(b)に示す理論波形信号又はローレベル信号とをOR合成した、
図19の(c)に示す合成波形信号をカウンタ20に出力する。
【0090】
なお、本実施の形態では、コントロールユニット12Bは、上記実施の形態1で説明した切替制御部26を有していない。
【0091】
また、実施の形態3に係る印刷装置2Bにおける印刷モードの処理の流れは、上記実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。
【0092】
[3-2.効果]
本実施の形態では、エンコーダ信号が、異常なパルスとして、欠落した1以上のパルスを含む異常区間を有している場合に、リニアエンコーダ8の光学ユニット18からのエンコーダ信号の異常区間の少なくとも一部を理論波形信号に置き換えてカウンタ20に出力することができる。
【0093】
(変形例)
以上、本発明の実施の形態に係る印刷装置について説明したが、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0094】
例えば、上記各実施の形態では、記録媒体を普通紙又は写真用紙としたが、これに限定されず、記録媒体を例えば人の手指の爪としてもよい。この場合、印刷装置2(2A,2B)は、インクジェット方式により人の手指の爪にマニキュアを施すためのネイルプリンタとして実現される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係る印刷装置は、例えばヘッド部から吐出されたインクによって印刷を行うインクジェットプリンタ等として適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
2,2A,2B 印刷装置
4 ヘッド部
6 キャリアモータ
8 リニアエンコーダ
10 搬送モータ
12,12A,12B コントロールユニット
14 セレクタ
15 ガイドシャフト
16 リニアスケール
16a 透光部
16b 遮光部
18 光学ユニット
20 カウンタ
22 異常区間検出部
24,24A,24B 理論波形信号生成部
26 切替制御部
28 印刷制御部
30 吐出制御部
32 キャリアモータ制御部
34 搬送モータ制御部
36,38,40,42,44 汚れ
46 AND素子
48 OR素子