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  • 特開-碍子及び碍子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017930
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】碍子及び碍子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/26 20060101AFI20240201BHJP
   H01B 17/06 20060101ALI20240201BHJP
   H01B 17/20 20060101ALI20240201BHJP
   H01B 17/24 20060101ALI20240201BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01B17/26 A
H01B17/06 A
H01B17/20 A
H01B17/24
H02G7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120900
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】高石 聡
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 裕明
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
【テーマコード(参考)】
5G331
5G367
【Fターム(参考)】
5G331AA01
5G331AA04
5G331BA01
5G331BA04
5G331BC16
5G331CB01
5G331DA01
5G367BB10
(57)【要約】
【課題】材料の種類数を削減することができる碍子及び碍子の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る碍子1は、挿入穴23が設けられた合成樹脂製の碍子本体2と、少なくとも軸長方向の一端部が前記挿入穴23に挿入されており、外周面が前記挿入穴23の内周面に直接的に接合されている筒状部材3とを備えることを特徴とする。故に、碍子本体2と筒状部材3との間に、碍子本体2を構成する材料とも筒状部材3を構成する材料とも異なる材料で構成された接着層が介在せずとも、筒状部材3を碍子本体2に固定することができる。即ち、碍子1を構成する材料の種類数を削減することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入穴が設けられた合成樹脂製の碍子本体と、
少なくとも軸長方向の一端部が前記挿入穴に挿入されており、外周面が前記挿入穴の内周面に直接的に接合されている筒状部材と
を備えることを特徴とする碍子。
【請求項2】
前記碍子本体は熱可塑性樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の碍子。
【請求項3】
前記碍子本体の表面に、耐候性を有する保護層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の碍子。
【請求項4】
前記筒状部材はインサートナットであり、
前記筒状部材の軸長方向の他端部は前記挿入穴の外側に位置し、
前記碍子本体は、前記筒状部材を周方向に回転させる場合に摘持されるつまみ部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の碍子。
【請求項5】
挿入穴が設けられた碍子本体と、
少なくとも軸長方向の一端部が前記挿入穴に挿入されている筒状部材と
を備える碍子を製造する方法であって、
前記碍子本体を構成する素材として熱可塑性樹脂を用い、
該熱可塑性樹脂が硬化する前に、該熱可塑性樹脂の前記挿入穴となるべき部分に前記筒状部材を押し込み、
前記熱可塑性樹脂を硬化させることによって、前記筒状部材の外周面を前記挿入穴の内周面に直接的に接合することを特徴とする碍子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、碍子及び碍子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電線と棒状の端子金具との接続部分を覆う碍子が記載されている。
この碍子は、貫通孔状の中空部が設けられた磁器製の碍子本体と、中空部に挿入された金属製のナット(筒状部材)と、ナットの外周面と中空部の内周面との間に介在しているセメント製の接着層とを備える。
【0003】
端子金具の先端部には、電線を受け入れるための中空部と、ナットの雌ネジに螺合する雄ネジとが設けられている。電線の一端部は、端子金具の中空部に挿入されることによって、端子金具の先端部に接続される。電線と端子金具とが接続された状態で、端子金具の雄ネジがナットの雌ネジに螺合する。この結果、電線と端子金具とを確実に接続すると共に、電線と端子金具との接続部分を、絶縁体である碍子本体で被覆することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6639944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の碍子は、3種類の材料(磁器、金属、及びセメント)で構成されているので、碍子を構成する材料の削減が望まれている。
【0006】
本開示の目的は、材料の種類数を削減することができる碍子及び碍子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る碍子は、挿入穴が設けられた合成樹脂製の碍子本体と、少なくとも軸長方向の一端部が前記挿入穴に挿入されており、外周面が前記挿入穴の内周面に直接的に接合されている筒状部材とを備えることを特徴とする。
【0008】
本開示にあっては、合成樹脂製の碍子本体に設けられた挿入穴に、筒状部材の少なくとも軸長方向の一端部が挿入されている。
筒状部材の外周面は挿入穴の内周面に直接的に接合されている。故に、碍子本体と筒状部材との間に、碍子本体を構成する材料とも筒状部材を構成する材料とも異なる材料で構成された接着層が介在せずとも、筒状部材を碍子本体に固定することができる。即ち、碍子を構成する材料の種類数を削減することができる。従って、材料の調達、及び、碍子の使用後に碍子をリサイクル又は廃棄する作業等が容易である。
合成樹脂製の碍子本体は、セメント製の接着層が付着している磁器製の碍子本体よりも軽量なので、碍子の軽量化を図ることができる。
【0009】
本開示に係る碍子は、前記碍子本体は熱可塑性樹脂製であることを特徴とする。
【0010】
本開示にあっては、碍子本体が熱可塑性樹脂製である。
リサイクル又は廃棄の際、加熱することによって碍子本体を軟化又は溶融させることができるので、碍子を容易に解体することができる。
【0011】
本開示に係る碍子は、前記碍子本体の表面に、耐候性を有する保護層が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本開示にあっては、耐候性を有する保護層が碍子本体の表面に設けられている。
故に、碍子本体の耐候性を強化することができるので、屋外であっても碍子を長期的に使用することができる。従って、碍子を頻繁に交換する必要がないので、環境負荷を軽減することができる。
【0013】
本開示に係る碍子は、前記筒状部材はインサートナットであり、前記筒状部材の軸長方向の他端部は前記挿入穴の外側に位置し、前記碍子本体は、前記筒状部材を周方向に回転させる場合に摘持されるつまみ部を有することを特徴とする。
【0014】
本開示にあっては、筒状部材がインサートナットである。
一般に、インサートナットの外周面には滑り止め用の凹凸が設けられているので、筒状部材の外周面と挿入穴の内周面とを互いに強固に接合することができる。故に、筒状部材の雌ネジに雄ネジを螺合させる際に、筒状部材の共回りを防止することができる。
筒状部材の軸長方向の一端部は挿入穴の内側に位置しているが、筒状部材の軸長方向の他端部は挿入穴の外側に位置しているので、作業者が筒状部材の位置、向き等を視覚又は触覚等で容易に把握することができる。
【0015】
碍子本体はつまみ部を有する。作業者がつまみ部を摘持して碍子本体ごと筒状部材を回転させることにより、例えば端子金具に設けられた雄ネジを筒状部材の雌ネジに容易に手動で螺合させることができる。
【0016】
本開示に係る碍子の製造方法は、挿入穴が設けられた碍子本体と、少なくとも軸長方向の一端部が前記挿入穴に挿入されている筒状部材とを備える碍子を製造する方法であって、前記碍子本体を構成する素材として熱可塑性樹脂を用い、該熱可塑性樹脂が硬化する前に、該熱可塑性樹脂の前記挿入穴となるべき部分に前記筒状部材を押し込み、前記熱可塑性樹脂を硬化させることによって、前記筒状部材の外周面を前記挿入穴の内周面に直接的に接合することを特徴とする。
【0017】
本開示にあっては、本開示に係る碍子の内、熱可塑性樹脂製の碍子本体を備えるものを製造することができる。
碍子本体と筒状部材との間に接着剤を注入する作業が不要なので、碍子の製造手順が簡易であり、熟練の製造者に依らず碍子の品質の向上及び碍子の量産等を図ることができる。
碍子を構成する材料として、練り上げてから短時間で硬化するセメントを使用する必要がないので、練り上げたセメントが使用前に硬化してしまう不都合が生じない。
【発明の効果】
【0018】
本開示の碍子及び碍子の製造方法によれば、碍子を構成する材料の種類数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態1に係る碍子の部分断面図である。
図2】碍子を備えるブッシングの断面図である。
図3】熱可塑性樹脂を用いる場合の碍子の製造手順の一例を説明するための模式図である。
図4】熱可塑性樹脂を用いる場合の碍子の製造手順の他の一例を説明するための模式図である。
図5】熱硬化性樹脂を用いる場合の碍子の製造手順の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施の形態について説明する。
【0021】
実施の形態 1.
図1は実施の形態1に係る碍子の部分断面図である。
図中1は碍子であり、碍子1は碍子本体2及び筒状部材3を備える。
碍子本体2は合成樹脂製(熱可塑性樹脂製又は熱硬化性樹脂製)の絶縁体である。碍子本体2はつまみ部21と突出部22とを一体に有する。つまみ部21は大径の円柱状をなす。突出部22は小径の円柱状をなし、つまみ部21の一面からつまみ部21に同軸に突出している。突出部22の先端面には挿入穴23が同軸に設けられている。挿入穴23は円形断面を有する非貫通孔であり、突出部22からつまみ部21にわたる。図1には碍子1の軸長方向が上下に向くようにして碍子1が示されている。
【0022】
なお、つまみ部21は有底円筒状でもよい。この場合、突出部22はつまみ部21の内底面からつまみ部21に同軸に、且つ突出部22の先端部分がつまみ部21の外側に位置するようにして突出する。突出部22は円筒状でもよい。突出部22が円筒状の場合、突出部22の内側が挿入穴23として機能する。突出部22の外周面とつまみ部21の内底面及び内面とにわたるようにして、補強用のリブが設けられることが望ましい。
【0023】
筒状部材3はインサートナットであり、軸長方向の一端部にフランジ31を有し、外周面に滑り止め用の凹凸(例えばローレット加工による綾目状又は平目状のもの。不図示)を有する。筒状部材3は例えば金属製であるが、これに限定されない。筒状部材3は、フランジ31が挿入穴23の外側に位置するようにして、挿入穴23に挿入されている。筒状部材3の外周面は、挿入穴23の内周面に直接的に接合されている。筒状部材3の挿入穴23に挿入されている部分の軸長方向の長さは挿入穴23の深さよりも小さい。挿入穴23の底部には筒状部材3が存在していない空間がある。
碍子1は、次に説明するブッシング4を構成する。
【0024】
図2は碍子1を備えるブッシング4の断面図である。
ブッシング4は、碍子1の他に碍管41及び端子金具42を備える。
碍管41は絶縁体であり、例えば不図示の変成器又は開閉器等が備えるケースの側壁を貫通しており、ケースの外側に碍管41の軸長方向の一端部41aが位置している。碍管41の一端部41aには切り欠き411が設けられている。図2にはブッシング4の一端部41a近傍が示されている。
碍管41の内径は突出部22の外形より大きい。
【0025】
端子金具42は棒状をなし、碍管41を貫通している。端子金具42の一端部においては、大径の円盤部420、小径円柱状の第1軸部421、大径円柱状のボルト部422、小径円柱状の第2軸部423,大径円柱状の接続部424が、一端側から他端側に向けてこの順に同軸に並設されている。円盤部420及び第1軸部421は碍管41の外側にある。ボルト部422は一端部41aの開口を通して碍管41の内外にわたる。第2軸部423及び接続部424は碍管41の内側にある。ボルト部422の周面には雄ネジが設けられており、この雄ネジは筒状部材3の雌ネジに対応している。第2軸部423には、第2軸部423の軸長方向に垂直な貫通孔425が設けられている。貫通孔425の一方の開口は碍管41の切り欠き411に向けられている。
【0026】
電線5は、導線51が絶縁体によって被覆された被覆電線である。電線5の一端部には導線51が露出している。電線5は導線51が貫通孔425を貫通するようにして碍管41の内側に挿入されており、切り欠き411を通して碍管41の外側に引き出されている。
【0027】
円盤部420及び第1軸部421が筒状部材3の内側を通って挿入穴23の底部に挿入され、筒状部材3にボルト部422が螺合する。これにより、導線51は筒状部材3のフランジ31と貫通孔425の内周面及び接続部424のボルト部422に近い方の端面とに挟まれる。この結果、導線51と第2軸部423及び接続部424とが接触するので、端子金具42と電線5とが互いに電気的に接続される。フランジ31と導線51との間にはバネ座金43及び平座金44(夫々図中二点鎖線参照)が介在することが望ましい。平座金44はバネ座金43と導線51との間に介在し、バネ座金43は平座金44を介して導線51を接続部424に押し付けるように付勢する。図の見易さのために、図2においては筒状部材3、接続部424、バネ座金43、平座金44、及び導線51が互いから離隔しているように示してある。
【0028】
碍子1は端子金具42に対して着脱可能である。碍子1の着脱は、作業者がつまみ部21を摘持して碍子1をつまみ部21の周方向に回転させることによって、手作業で簡単に行なうことができる。つまみ部21の周面には周方向に連なる凹凸が設けられていることが望ましい(図1参照)。つまみ部21の周面の凹凸は、作業者が作業者がつまみ部21を摘持する際の滑り止めとして機能する。
【0029】
筒状部材3とボルト部422とを互いに螺合させる際、作業者は、つまみ部21を回転させ、ネジ径に応じた荷重で締め付ける。このとき、突出部22が碍管41の一端部41aの開口から碍管41の内側に挿入される。
端子金具42と電線5との接続部分は、碍管41の周壁及び碍子1の碍子本体2とに覆われるので、端子金具42と電線5との接続部分を、異物との衝突、又は電気的な接続等から保護することができる。
【0030】
ブッシング4は、屋外で用いられる場合は特に、耐候性を有することが望ましい。碍子1に関し、碍子本体2は紫外線及び風雨等に晒されやすいので、碍子本体2の表面に、耐候性を有する保護層24(図1に二点鎖線にて模式的に図示)が設けられてもよい。なお、碍子本体2自体が耐候性を有する合成樹脂で構成されてもよい。碍子1が耐候性を有する場合、屋外であっても碍子1を長期的に使用することができる。従って、碍子1を頻繁に交換する必要がないので、環境負荷を軽減することができる。
【0031】
以上のような碍子1によれば、筒状部材3の外周面が挿入穴23の内周面に直接的に接合されている。故に、碍子本体2と筒状部材3との間に、碍子本体2を構成する材料とも筒状部材3を構成する材料とも異なる材料で構成された接着層が介在せずとも、筒状部材3を碍子本体2に固定することができる。即ち、碍子1を構成する材料の種類数を削減することができる。
従って、材料の調達、及び、碍子1の使用後に碍子1をリサイクル又は廃棄する作業等が容易である。特に、碍子本体2が熱可塑性樹脂製である場合、リサイクル又は廃棄の際、加熱することによって碍子本体2を軟化又は溶融させることができるので、碍子1を容易に解体することができる。
【0032】
合成樹脂製の碍子本体2は、セメント製の接着層が付着している磁器製の碍子本体よりも軽量なので、碍子1の軽量化を図ることができる。故に、碍子1を運搬する作業、及び碍子1を端子金具42に着脱する作業等が容易である。
なお、挿入穴23は貫通孔でもよい。この場合、挿入穴23の2つの開口の内、一方からブッシング4を構成する棒状の端子金具が挿入され、他方から電線5が挿入される(特許文献1参照)。
【0033】
筒状部材3はインサートナットでなくてもよい。しかしながら、滑り止め用の凹凸が設けられているインサートナットを筒状部材3として用いることにより、筒状部材3の外周面と挿入穴23の内周面とを互いに強固に接合することができる。故に、筒状部材3の雌ネジにボルト部422の雄ネジを螺合させる際に、筒状部材3の共回りを防止することができる。
【0034】
本実施の形態のように筒状部材3の一部が挿入穴23の外側に位置することにより、作業者が筒状部材3の位置、向き等を視覚又は触覚等で容易に把握することができる。
筒状部材3はフランジ31を有しない構成でもよい。筒状部材3は挿入穴23に全体的に挿入してあってもよい。この場合、導線51は、例えば挿入穴23の周縁部と接続部424とに挟まれる。
【0035】
以上のような碍子1を製造する場合、碍子本体2を構成する素材として熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂が硬化する前に、熱可塑性樹脂の挿入穴23となるべき部分に筒状部材3を押し込み、熱可塑性樹脂を硬化させることによって、筒状部材3の外周面を挿入穴23の内周面に直接的に接合することができる。
【0036】
図3は熱可塑性樹脂を用いる場合の碍子1の製造手順の一例を説明するための模式図である。
作業者は、碍子本体2を成型するための金型6に熱可塑性樹脂20を注入する(図3A参照)。金型6は、筒状部材3の内部空間に相当する第1部分61と、挿入穴23の底部における筒状部材3が存在しない空間に相当する第2部分62とを有する。第1部分61及び第2部分62は互いに一体に設けられている。
【0037】
次に、作業者は硬化前の熱可塑性樹脂20に筒状部材3のフランジ31を除く部分を押し込む(図3B参照)。このとき、金型6の第1部分61が筒状部材3の内側に挿入される。筒状部材3が第1部分61の周囲にある熱可塑性樹脂20を押しのけることにより、筒状部材3、第1部分61、及び第2部分62によって挿入穴23が形成される。
この後、熱可塑性樹脂20を硬化させることによって、筒状部材3の外周面が挿入穴23の内周面に直接的に接合された碍子1を得ることができる。
【0038】
図4は熱可塑性樹脂を用いる場合の碍子1の製造手順の他の一例を説明するための模式図である。
作業者は、不図示の金型又は3Dプリンタ等を用いて熱可塑性樹脂製の碍子本体2を形成する(図4A参照)。形成された碍子本体2はつまみ部21と突出部22とを一体に有する。また、挿入穴23が設けられている。ただし、挿入穴23の内径は筒状部材3の外形よりも僅かに小さい。
【0039】
次に、作業者は、碍子本体2を構成している熱可塑性樹脂が硬化する前に、筒状部材3のフランジ31を除く部分を挿入穴23に押し込む(図4B参照)。このとき、筒状部材3は挿入穴23を拡径させながら挿入穴23に挿入される。なお、碍子本体2を構成している熱可塑性樹脂が硬化した場合は、硬化した熱可塑性樹脂を加熱して軟化させてから、軟化した熱可塑性樹脂が硬化する前に、筒状部材3のフランジ31を除く部分を挿入穴23に押し込む。
筒状部材3の挿入穴23への挿入後、熱可塑性樹脂を硬化させることによって、筒状部材3の外周面が挿入穴23の内周面に直接的に接合された碍子1を得ることができる。
【0040】
図5は熱硬化性樹脂を用いる場合の碍子1の製造手順の一例を説明するための模式図である。
作業者は、碍子本体2を成型するための金型6に、筒状部材3のフランジ31を除く部分を挿入する(図5A参照)。このとき、金型6の第1部分61が筒状部材3の内側に挿入される。
【0041】
次に、作業者は金型6に熱硬化性樹脂200を注入する(図5B参照)。金型6に挿入されている筒状部材3は、第1部分61及び第2部分62と共に、挿入穴23を形成するための金型として機能する。
この後、熱硬化性樹脂200を硬化させることによって、筒状部材3の外周面が挿入穴23の内周面に直接的に接合された碍子1を得ることができる。
【0042】
以上のような碍子1の製造方法によれば、碍子本体2と筒状部材3との間に接着剤を注入する作業が不要である。故に、碍子1の製造手順は簡易である。従って、熟練の製造者に依らず碍子1の品質の向上及び碍子1の量産等を図ることができる。
碍子1を構成する材料として、練り上げてから短時間で硬化するセメントを使用する必要がないので、練り上げたセメントが使用前に硬化してしまう不都合が生じない。
図3図5に示す碍子1の製造手順の何れの場合でも、碍子本体2の硬化後に、碍子本体2の表面に対向性塗料を塗布することにより、碍子本体2の表面に保護層24を形成することができる。
【0043】
なお、碍子本体2を形成する際、挿入穴23を形成すべき位置に、挿入穴23よりも内径が大きい仮の穴が設けられてもよい。この場合、碍子本体2の硬化後に、仮の穴に筒状部材3が挿入される。筒状部材3の挿入後、筒状部材3の外周面と仮の穴の内周面との間に、碍子本体2を構成している合成樹脂と同じ合成樹脂を注入することによって、その内周面に筒状部材3の外周面が直接的に接合された挿入穴23を形成することができる。ただし、筒状部材3の外周面と仮の穴の内周面との間に合成樹脂を注入する作業は煩雑である。また、先に硬化した合成樹脂と、後から注入されて硬化した合成樹脂とが2層をなして碍子本体2の機械的強度を低下させることがないように注意する必要がある。
【0044】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。更に、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 碍子; 2 碍子本体; 20 熱可塑性樹脂; 200 熱硬化性樹脂; 21 つまみ部; 23 挿入穴; 24 保護層; 3 筒状部材(インサートナット)
図1
図2
図3
図4
図5