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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179311
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】レンズミラーアレイ
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/028 20060101AFI20241219BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20241219BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20241219BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H04N1/028 Z
G02B5/00 Z
G02B3/00 A
G02B5/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098056
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 貴志
【テーマコード(参考)】
2H042
5C051
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA20
2H042AA24
2H042AA25
2H042DD04
5C051AA01
5C051BA03
5C051BA04
5C051DA02
5C051DB01
5C051DB04
5C051DB18
5C051DB24
5C051DB29
5C051DC04
5C051DC07
5C051EA01
5C051FA01
(57)【要約】
【課題】形状精度の高い反射面を有する光学エレメントを配列したレンズミラーアレイを提供することを課題とする。
【解決手段】レンズミラーアレイは、主走査方向に配列した複数の光学エレメントを有する。各光学エレメントは、入射面と、少なくとも1つの反射面と、出射面と、進行阻止部分と、反射率低下手段と、を有する。入射面は、入射する光を透過させて収束させる。反射面は、入射面を介して入射した光を反射して収束させる正の光学パワーを持つ。出射面は、反射面により反射された光を出射する。進行阻止部分は、反射面と主走査方向に隣接する別の光学エレメントの反射面の間に段差無く設ける。反射率低下手段は、進行阻止部分における光の反射率を反射面より小さくするように進行阻止部分に設ける。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に配列した複数の光学エレメントを有し、
前記光学エレメントが、
入射する光を透過させて収束させる入射面と、
前記入射面を介して入射した光を反射して収束させる正の光学パワーを持つ少なくとも1つの反射面と、
前記反射面により反射された光を出射する出射面と、
前記反射面と前記主走査方向に隣接する別の前記光学エレメントの前記反射面の間に段差無く設けた進行阻止部分と、
前記進行阻止部分における光の反射率を前記反射面より小さくするように前記進行阻止部分に設けた反射率低下手段と、
を有するレンズミラーアレイ。
【請求項2】
前記進行阻止部分は、前記反射面の前記主走査方向の端部に毛細管現象を生じさせる角部を含む、
請求項1に記載のレンズミラーアレイ。
【請求項3】
前記進行阻止部分は、前記主走査方向に隣接する一方の前記光学エレメントの前記反射面の前記角部ともう一方の前記光学エレメントの前記反射面の前記角部を介して2つの前記反射面とそれぞれ段差無く連続した1つの被加工面を含む、
請求項2に記載のレンズミラーアレイ。
【請求項4】
前記被加工面の前記主走査方向の幅は、1つの物点からの光が隣接する3~5つの前記光学エレメントを導光して1つの結像点に結像する幅である、
請求項3に記載のレンズミラーアレイ。
【請求項5】
前記進行阻止部分は、前記主走査方向に隣接する一方の前記光学エレメントの前記反射面ともう一方の前記光学エレメントの前記反射面が交差する部位に1つの前記角部を有する、
請求項2に記載のレンズミラーアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、ワークプレイスに設置する複写機やプリンタなどの画像形成装置のスキャナや露光装置に用いるレンズミラーアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、画像形成装置のスキャナは、原稿面で反射した光を屈折及び反射してCCDセンサなどに集光するためのレンズ、ミラー一体型アレイ(以下、レンズミラーアレイと称する)を有する。レンズミラーアレイは、例えば、主走査方向に配列した複数の光学エレメントを有する。レンズミラーアレイは、例えば透明な樹脂の一体成形により形成することができる。
【0003】
各光学エレメントは、原稿からの反射光を入射させる入射側レンズ面と、入射させた光をCCDセンサに向けて出射する出射側レンズ面と、入射側レンズ面を介して入射した光を出射側レンズ面に導光する少なくとも1つの反射面を有する。反射面は、主走査方向に光を絞るため、その主走査方向の両側に光の進行を阻止する進行阻止部分を備える場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-142449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、光学エレメントの一部を外側に突出させてその頂部に反射面を設けることで、突出部分の側面(反射面の主走査方向の両側に連続する面)に遮光膜を設けることができる。この場合、突出部分の側面に設けた遮光膜が進行阻止部分となる。しかし、光学エレメントにこのような突出部分を設けると、反射面の主走査方向の両側の段差が大きくなり、レンズミラーアレイを成形する際に、この段差により、樹脂の流れが乱されて、反射面の形状精度を確保することが難しい。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、形状精度の高い反射面を有する光学エレメントを配列したレンズミラーアレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のレンズミラーアレイは、主走査方向に配列した複数の光学エレメントを有する。各光学エレメントは、入射面と、少なくとも1つの反射面と、出射面と、進行阻止部分と、反射率低下手段と、を有する。入射面は、入射する光を透過させて収束させる。反射面は、入射面を介して入射した光を反射して収束させる正の光学パワーを持つ。出射面は、反射面により反射された光を出射する。進行阻止部分は、反射面と主走査方向に隣接する別の光学エレメントの反射面の間に段差無く設ける。反射率低下手段は、進行阻止部分における光の反射率を反射面より小さくするように進行阻止部分に設ける。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る画像形成装置を示す概略図である。
図2図2は、図1の画像形成装置の画像形成部を示す概略図である。
図3図3は、図1の画像形成装置のスキャナの読取モジュールを示す断面図である。
図4図4は、図3の読取モジュールに組み込まれた第1の実施形態に係るレンズミラーアレイを示す外観斜視図である。
図5図5は、図4のレンズミラーアレイの領域F5を部分的に拡大して示す部分拡大図である。
図6図6は、図4のレンズミラーアレイの作用・効果を説明するための図である。
図7図7は、図4のレンズミラーアレイの下流側反射面のピッチと進行阻止面の幅の適正値について説明するための図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るレンズミラーアレイを示す外観斜視図である。
図9図9は、図8のレンズミラーアレイの領域F9を部分的に拡大して示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、一実施形態に係る画像形成装置100について説明する。なお、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、各部の縮尺を適宜変更している場合がある。また、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、説明を分かり易くするため、構成を省略して示している場合がある。
本実施形態の画像形成装置100は、例えば、MFP(multifunction peripheral)である。画像形成装置100は、印刷機能、スキャン機能、コピー機能、消色機能、ファクシミリ機能などを備える。印刷機能は、用紙Pにトナー画像を形成する機能である。スキャン機能は、画像が形成された原稿などから画像を読み取る機能である。コピー機能は、例えば、スキャン機能を用いて原稿などから読み取った画像を、印刷機能を用いて用紙Pに印刷する機能である。消色機能は、用紙P上に消色可能な現像剤で形成した画像を消色する機能である。
【0010】
画像形成装置100は、プリンタ10と、スキャナ20と、操作パネル30を備える。
【0011】
プリンタ10は、複数の給紙カセット11と、手差しトレイ12と、複数の給紙ローラー13を備える。給紙カセット11は、印刷に用いる用紙Pを収容する。手差しトレイ12は、用紙Pを手差しするためのものである。給紙ローラー13は、回転することにより、給紙カセット11と手差しトレイ12のいずれかから選択的に用紙Pを取り出す。
【0012】
プリンタ10は、4つのトナーカートリッジ141、142、143、144と、4つの画像形成部151、152、153、154と、光走査装置16と、転写ベルト17と、2次転写ローラー18と、定着部19を備える。
【0013】
トナーカートリッジ141~144は、それぞれ、画像形成部151~154に供給するトナーを収容している。トナーカートリッジ141は、黄(Y)色のトナーを収容している。トナーカートリッジ142は、マゼンタ(M)色のトナーを収容している。トナーカートリッジ143は、シアン(C)色のトナーを収容している。トナーカートリッジ144は、黒(K)色のトナーを収容している。トナーの色の組み合わせは、YMCKに限らず、その他の色の組み合わせであってもよい。また、トナーは、所定の温度よりも高い温度で消色するトナーであってもよい。
【0014】
画像形成部151~154は、それぞれ、トナーカートリッジ141~144からトナーの供給を受け、異なる色のトナー像を形成する。画像形成部151は、黄(Y)色のトナー像を形成する。画像形成部152は、マゼンタ(M)色のトナー像を形成する。画像形成部153は、シアン(C)色のトナー像を形成する。画像形成部154は、黒(K)色のトナー像を形成する。
【0015】
画像形成部151~154は、トナーの違いを除けば、同じ構成である。よって、ここでは、図2を参照して、黄色用の画像形成部151について代表して説明し、他の色用の画像形成部152~154の説明を省略する。
【0016】
黄色用の画像形成部151は、感光体ドラム41と、帯電装置42と、現像装置43と、1次転写ローラー44と、クリーナー45と、除電ランプ46を備える。
【0017】
感光体ドラム41は、光走査装置16から照射される光ビームBYを受光する表面を有する。光走査装置16は、感光体ドラム41の表面に静電潜像を形成する。帯電装置42は、感光体ドラム41の表面に正電荷を帯電させる。現像装置43は、トナーカートリッジ141から供給される黄色のトナーDを用いて、感光体ドラム41の表面の静電潜像を現像する。つまり、現像装置43は、感光体ドラム41の表面に黄色のトナー像を形成する。
【0018】
また、画像形成部151は、転写ベルト17を間に挟んで、感光体ドラム41に対向する位置に、1次転写ローラー44を備える。1次転写ローラー44は、感光体ドラム41との間で転写電圧を生じさせる。これにより、1次転写ローラー44は、感光体ドラム41の表面のトナー像を、感光体ドラム41と接触している転写ベルト17の表面に転写(1次転写)する。
【0019】
クリーナー45は、感光体ドラム41の表面に残留したトナーを除去する。除電ランプ46は、感光体ドラム41の表面に残留した電荷を除去する。
【0020】
光走査装置16は、入力される画像データに応じて、画像形成部151、152、153、154の感光体ドラム41の表面に、それぞれ、光ビームBY、BM、BC、BKを照射する。光ビームBY、BM、BC、BKは、それぞれ、画像データをY、M、C、K色に色分解した各色の画像データに基づくものである。光走査装置16は、Y成分の画像データに応じて、光ビームBYを出射して画像形成部151の感光体ドラム41の表面に黄色用の静電潜像を形成する。同様に、光走査装置16は、M、C、K成分の画像データに応じて、光ビームBM、BC、BKを出射して画像形成部152、153、154の感光体ドラム41の表面に各色用の静電潜像を形成する。
【0021】
なお、光走査装置16に入力される画像データは、例えば、スキャナ20によって原稿などから読み取られる画像データである。或いは、光走査装置16に入力される画像データは、画像形成装置100とは別の装置から画像形成装置100に送信される画像データである。
【0022】
転写ベルト17は、無端状に張設されており、転写ベルト17を巻回した駆動ローラー171を回転することにより回転する。転写ベルト17は、回転することにより、画像形成部151~154によって転写ベルト17の表面上に重ねて形成した各色のトナー像を2次転写ローラー18が対向する転写領域へ搬送する。
【0023】
2次転写ローラー18は、転写ベルト17を間に挟んで駆動ローラー171に対向する。2次転写ローラー18は、転写ベルト17上に形成されたトナー像を、2次転写ローラー18との間を通過する用紙P上に転写(2次転写)する。
【0024】
定着部19は、用紙Pを加熱して加圧する。定着部19は、用紙Pの搬送路を間に挟んで互いに対向する加熱ローラー191と加圧ローラー192を備える。加熱ローラー191は、ヒーターなどの熱源を備える。熱源によって加熱された加熱ローラー191は、用紙Pを加熱する。加圧ローラー192は、加圧ローラー192と加熱ローラー191の間を通過する用紙Pを加圧する。よって、定着部19は、用紙P上に転写されているトナー像を定着させる。
【0025】
プリンタ10は、この他に、両面ユニット50と、排紙トレイ60を備える。両面ユニット50は、用紙Pを、裏面への印刷が可能な状態にする。両面ユニット50は、用紙Pをスイッチバックさせることによって用紙Pの表裏を反転させ、転写ベルト17と2次転写ローラー18の間の転写領域へ送り込む。排紙トレイ60は、印刷が終わった用紙Pを排出するためのものである。
【0026】
スキャナ20は、原稿などから画像を読み取る。スキャナ20は、読取モジュール70と原稿送り装置80を備える。
【0027】
読取モジュール70は、読取り対象の画像を有する原稿の面(以下、原稿面と称する)に照明光を当て、その反射光をイメージセンサ76(図3)によって受光してデジタル信号に変換する。これにより、読取モジュール70は、原稿面から画像を読み取る。読取モジュール70は、レンズミラーアレイ1を備える。
【0028】
原稿送り装置80は、例えば、ADF(auto document feeder)などである。原稿送り装置80は、原稿トレイ81に載せた原稿を原稿ガラス82を通して次々と搬送する。読取モジュール70は、原稿ガラス82に搬送された原稿から画像を読み取る。原稿送り装置80は、原稿の裏面から画像を読み取るための別の読取モジュールを備えていても良い。
【0029】
操作パネル30は、画像形成装置100と画像形成装置100の操作者との間で入出力を行うマンマシンインターフェースである。操作パネル30は、例えば、タッチパネル31や入力デバイス32などを備える。
【0030】
タッチパネル31は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのディスプレイとタッチ入力によるポインティングデバイスとを積層したものである。タッチパネル31のディスプレイは、画像形成装置100の操作者に各種情報を通知するための画面を表示する。また、タッチパネル31は、操作者によるタッチ操作を受け付ける。
【0031】
入力デバイス32は、画像形成装置100の操作者による操作を受け付ける。入力デバイス32は、例えば、キーボード、キーパッド、又はタッチパッドなどである。
【0032】
図3に示すように、読取モジュール70は、第1の実施形態に係るレンズミラーアレイ1と、2つの反射板72と、2つの導光体74と、イメージセンサ76と、ホルダ78を備える。ホルダ78は、レンズミラーアレイ1、反射板72、導光体74、及びイメージセンサ76(イメージセンサ76を実装した基板75)を位置決めして保持する。
【0033】
図4に示すように、レンズミラーアレイ1は、主走査方向(矢印方向)に延びた長尺な構造を有する。レンズミラーアレイ1は、原稿面の画像の正立像をイメージセンサ76に結像させる。このため、読取モジュール70を原稿ガラス82に沿って図1に矢印で示す副走査方向に移動させることにより、原稿面の全画像をイメージセンサ76で読み取ることができる。
【0034】
イメージセンサ76は、主走査方向に延びた長尺な構造を有する。イメージセンサ76は、光を電気信号に変換する撮像素子を主走査方向にライン状に複数個配列したラインセンサである。イメージセンサ76は、1本または複数本のラインセンサである。イメージセンサ76は、例えばCharge Coupled Device(CCD)、Complimentary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)、または他の撮像素子により構成することができる。
【0035】
ホルダ78は、主走査方向に延びた長尺な構造を有する。ホルダ78は、金型を用いた樹脂による一体成形によって形成することができる。ホルダ78は、主走査方向に沿って配置する一対の側壁781と、側壁781の長手方向の両端部に配置する一対の端壁782(図3では奥側のみ図示)と、一対の側壁781の上下方向の中間部の内面と一対の端壁782の上下方向の中間部の内面をつないだ隔壁783を有する。隔壁783の副走査方向(図示左右方向)の中間部は、上方に膨出した膨出部分784を形成している。膨出部分784は、主走査方向に延びた長尺な構造を有する。
【0036】
ホルダ78の膨出部分784は、副走査方向の略中央に、主走査方向に延びた矩形のスリット状の絞り開口785を有する。絞り開口785は、原稿面からの反射光を通過させて、反射光の副走査方向の幅を絞り、レンズミラーアレイ1へ導く。ホルダ78は、膨出部分784の内側、すなわち絞り開口785の図示下側にレンズミラーアレイ1を保持する。絞り開口785の副走査方向の幅は、絞り開口785を通過した原稿からの反射光がレンズミラーアレイ1の複数の入射側レンズ面2(図4)に入射する幅よりも小さい。絞り開口785は、入射側レンズ面2の副走査方向光軸が絞り開口785の副走査方向の中央を通るように配置する。
【0037】
ホルダ78は、副走査方向に沿って膨出部分784を間に挟んだ両側で、2つの側壁781の内側で且つ隔壁783の上方に反射板72と導光体74を保持している。反射板72及び導光体74の保持構造の図示及び説明は省略する。
【0038】
反射板72は、例えば、主走査方向に延びた長尺な矩形板状である。反射板72は、導光体74の、凹凸を設けた、或いは、白色インクを塗布した図示しない光拡散部に対向する反射面を有する。反射板72は、その反射面に白色インクを塗布、又は白色の樹脂を矩形板状に形成したものである。反射板72は、導光体74の光拡散部から漏れ出た光を導光体74に戻すように反射させる機能を有する。
【0039】
導光体74は、例えば、主走査方向に長い略円柱状の透明な樹脂であり、その表面の一部に長手方向に沿って上述した光拡散部を有する。導光体74は、その長手方向の一端に配置した図示しないLED光源などから出射した光を導光する。反射板72は、導光体74の光拡散部から漏れ出た光を反射して導光体74に戻す。
【0040】
2つの導光体74は、その間にホルダ78の隔壁783の膨出部分784があるため、膨出部分784が照明光の影を作らないように、副走査方向に互いに一定距離離間させて配置する必要がある。反面、2つの導光体74を副走査方向に離間させると、原稿面上の画像読取領域に当たる照明光の角度が大きくなり、原稿ガラス82と原稿面の間の距離が変化した場合の照度の変化が大きくなってしまう。このため、2つの導光体74は、できるだけ副走査方向に近付けて配置することが望ましい。
【0041】
ホルダ78は、隔壁783の図示下面から下方に突設した複数本のボス786を有する。ボス786は、例えば、隔壁783の主走査方向の両端及び中央の3か所で、膨出部分784の副走査方向の両側に設けてある。これら6本のボス786は、それぞれ、ビス787を用いて基板75をホルダ78に固定するためのものである。なお、ホルダ78は、基板75をホルダ78に位置決めするための複数のボス788を備える。
【0042】
以下、図3及び図4を参照して、レンズミラーアレイ1について説明する。レンズミラーアレイ1は、複数の略同じ形状の透明な光学エレメント90を主走査方向に並べて一体に配列した構造を有する。各光学エレメント90の有効面の形状は、光学エレメント90の主走査方向の中心を通り主走査方向と直交する架空の中心面に対し面対象となる形状を有する。図3において、紙面と直交する方向が主走査方向であり、読取モジュール70が移動する図示左右方向が副走査方向である。図4は、レンズミラーアレイ1の一部を図3と反対側から見た部分拡大斜視図であり、主走査方向を矢印で示す。
【0043】
レンズミラーアレイ1は、複数の光学エレメント90以外に、その長手方向の両端に、作業者がレンズミラーアレイ1を把持する際に接触することが可能な図示しない延長部分を有する。本実施形態のレンズミラーアレイ1は、透明な樹脂の一体成形により形成した。レンズミラーアレイ1は、透明なガラスにより形成することもできる。
【0044】
レンズミラーアレイ1の各光学エレメント90は、物点からの拡散光を像面にある結像点に結像させるように導光する。1つの光学エレメント90は、主走査方向に並んだ複数の物点からの光を像面で結像させる。例えば、1つの光学エレメント90は、光学エレメント90の主走査方向のピッチの2倍乃至5倍の幅の中に配置された物点からの光を像面に結像させる。レンズミラーアレイ1の各光学エレメント90は、それぞれ、入射した光を2回反射して出射して、結像点にて物点の正立像を形成する。
【0045】
レンズミラーアレイ1の各光学エレメント90は、その表面に、入射側レンズ面2(入射面)、上流側反射面3、下流側反射面4(少なくとも1つの反射面)、及び出射側レンズ面5(出射面)を有する。入射側レンズ面2、下流側反射面4、及び出射側レンズ面5は、外側に凸となる自由曲面である。上流側反射面3は、平らな面である。複数の光学エレメント90のその他の表面は、それぞれ、レンズミラーアレイ1の全長にわたって主走査方向につながった1つの平らな面を構成している。
【0046】
光学エレメント90の入射側レンズ面2は、ホルダ78の膨出部分784にある絞り開口785に対向する。言い換えると、レンズミラーアレイ1は、複数の光学エレメント90の入射側レンズ面2が絞り開口785に対向する図3に示す状態で、膨出部分784に固定する。入射側レンズ面2は、原稿面で反射されて絞り開口785を通過した入射光を屈折させて収束させる正の光学パワーを有する。
【0047】
上流側反射面3は、入射側レンズ面2に対して突出部分91の反対側に隣接している。つまり、上流側反射面3は、入射側レンズ面2を介して入射する入射光の光路上に位置している。上流側反射面3は、入射側レンズ面2を介して入射した光を下流側反射面4に向けて全反射する。上流側反射面3は、光学エレメント90の一部を外方へ突出させた突出部分の頂部にある。上流側反射面3の主走査方向の外側に連続した突出部分の側面と上流側反射面3の入射側レンズ面2から離間した端縁に連続した突出部分の側面には、遮光膜33を塗布してある。
【0048】
下流側反射面4は、入射側レンズ面2に対して突出部分92の反対側に連続している。下流側反射面4は、上流側反射面3で反射した反射光の光路上に位置している。下流側反射面4は、上流側反射面3により反射した反射光を出射側レンズ面5に向けて全反射する。下流側反射面4は、光を反射して収束させる正の光学パワーを持つ自由曲面である。下流側反射面4の主走査方向の幅は、光学エレメント90の幅より狭い。
【0049】
図5は、図4の一部の領域F5を拡大して示す部分拡大斜視図である。レンズミラーアレイ1は、複数の光学エレメント90の下流側反射面4の間に略矩形の複数の進行阻止面6(進行阻止部分、被加工面)を有する。進行阻止面6は、主走査方向に隣接する2つの光学エレメント90にまたがって設けられた略平らな面であり、光学エレメント90の中心面と直交する架空の面と進行阻止面6が交差する線を主走査方向と直交する方向に連続させた柱面、すなわち、レンズ幅が一定になるように、副走査方向の形状は自由曲面、主走査方向の形状は直線(主走査方向位置によって形状が変わらない)となる面であってもよい。複数の下流側反射面4の間に進行阻止面6を設けることで、下流側反射面4で反射する反射光の範囲を制限することができる。
【0050】
進行阻止面6は、光学エレメント90の下流側反射面4と主走査方向に隣接する他の光学エレメント90の下流側反射面4の間に段差無く配置され、その主走査方向の両側の下流側反射面4との間に微細な凹溝状のエッジ61(角部)を有する。進行阻止面6には、UV硬化型の遮光インクや熱硬化型の遮光インクを塗布して硬化させ、少なくとも下流側反射面4より光の反射率が小さい遮光膜62(反射率低下手段)を設けてある。遮光膜62の主走査方向の幅は、進行阻止面6の主走査方向の両端にあるエッジ61を覆う幅である。つまり、遮光膜62の主走査方向の幅は、進行阻止面6の幅よりわずかに大きい。
【0051】
エッジ61は、毛細管現象により遮光インクを吸引して進行阻止面6に濡れ拡がり易くするよう機能する。エッジ61は、下流側反射面4と進行阻止面6が交差する谷状の部位にある。このため、エッジ61の形状は、下流側反射面4と進行阻止面6を主走査方向に沿った面で切断した断面において略V字形状である。よって、エッジ61の長手方向の一端側から遮光インクを塗布すると、エッジ61に沿ってその他端側に向けて遮光インクが吸引され、2つのエッジ61の間にある進行阻止面6に良好に濡れ拡がる。
【0052】
出射側レンズ面5は、下流側反射面4で反射した反射光の光路上に位置している。出射側レンズ面5は、下流側反射面4で反射した反射光を透過させて収束する正の光学パワーを有する。
【0053】
なお、主走査方向に隣接する2つの光学エレメント90の間の架空の境界面(図4の断面)は、主走査方向と直交する面であり、光学エレメント90の上述した各面2、3、4、5、6と概ね直交する面である。
【0054】
以下、上述したレンズミラーアレイ1の機能について説明する。
【0055】
原稿面で反射された光は、複数の光学エレメント90の入射側レンズ面2に入射する。つまり、物点に置かれた原稿面からの反射光が入射側レンズ面2に入射する。入射側レンズ面2は、入射光を屈折して収束させ、中間倒立像を形成する。
【0056】
上流側反射面3は、入射側レンズ面2を介して入射した入射光を下流側反射面4に向けて反射する。下流側反射面4は、上流側反射面3で反射した光を出射側レンズ面5に向けてさらに反射する。
【0057】
出射側レンズ面5は、下流側反射面4で反射した光を結像点に配置したイメージセンサ76に向けて出射する。出射側レンズ面5は、下流側反射面4と協働して、入射側レンズ面2により形成された中間倒立像の倒立像である正立像を形成する。出射側レンズ面5から出射された出射光は、結像点に配置されたイメージセンサ76の受光面にて結像する。
【0058】
次に、本実施形態のように下流側反射面4の間に進行阻止面6を設けたことによる作用・効果について、図6及び図7を参照して説明する。図6(a)には、比較のため、下流側反射面4の間に進行阻止面6が無く下流側反射面4の間に遮光膜62を設けていないレンズミラーアレイ101を透過する光の光路を平面に展開して示す。図6(b)には、複数の下流側反射面4の間の進行阻止面6に遮光膜62を設けた第1の実施形態に係るレンズミラーアレイ1を透過する光の光路を平面に展開して示す。
【0059】
上述したように、レンズミラーアレイ1の1つの光学エレメント90は、主走査方向に並んだ複数の物点からの光を像面で結像させる。見方を変えると、1つの物点からの光は、図6に示すように、レンズミラーアレイ1の主走査方向に並んだ複数の光学エレメント90に入射して、1つの結像点に結像する。物点からの光は拡散光であり、レンズミラーアレイ1を導光して出射される光は結像点に向けて収束する光となる。レンズミラーアレイ1を通る光は、各光学エレメント90の上流側反射面3の周りにある遮光膜33や、下流側反射面4の主走査方向の両側にある進行阻止面6に設けた遮光膜62によって整形される。このため、1つの物点からの光が入射した複数の光学エレメント90のうち、主走査方向両側のいくつかの光学エレメント90を導光した光は、結像点に結像しない。
【0060】
例えば、図6(a)に示す比較例のレンズミラーアレイ101は、1つの物点からの光が主走査方向に並んだ9つの光学エレメントに入射し、中央の6つの光学エレメントから出射された光が結像点に結像する。これに対し、下流側反射面4の間に遮光膜62を有する第1の実施形態のレンズミラーアレイ1は、1つの物点からの光が主走査方向に並んだ9つの光学エレメント90に入射し、中央の4つの光学エレメント90から出射された光が結像点に結像する。つまり、本実施形態のレンズミラーアレイ1を用いた場合、進行阻止面6に設けた遮光膜62によって下流側反射面4の主走査方向の幅が狭められており、下流側反射面4で反射される反射光が主走査方向で制約されるため、像面に到達する入射光線の主走査方向の角度を小さくでき、NA(開口数)が小さくなった状態となって、被写界深度を大きくすることができる。
【0061】
本実施形態のレンズミラーアレイ1のように、進行阻止面6と遮光膜62を設けて下流側反射面4の主走査方向の幅を狭めると、1つの結像点に結像する光が通過する光学エレメント90の数を少なくすることができ、像面におけるベスト位置でのコントラストが増すとともに、被写界深度も大きくすることができる。しかし、遮光膜62を設ける進行阻止面6の幅を大きくし過ぎると光量が小さくなり過ぎてしまい、進行阻止面6の幅を小さくし過ぎると比較例と変わらなくなる。よって、進行阻止面6の幅には、適正値が存在する。
【0062】
適正値を調べるため、図7に示すように、複数の下流側反射面4の主走査方向のピッチをP[μm]とし、進行阻止面6の主走査方向の幅をW[μm]とし、PとWの比率を変えて像面に結像する光をモニターした。その結果、進行阻止面6の幅Wを下流側反射面4のピッチP(すなわち光学エレメント90のピッチ)の0.35倍~0.95倍にしたときに、良好な光学性能が得られることがわかった。本実施形態では、W/Pを0.35~0.95の範囲内に設計し、3~5つの光学エレメント90を導光した光が1つの結像点に結像するようにWとPの比率を設定した。
【0063】
本実施形態のレンズミラーアレイ1のように、下流側反射面4の間に段差を介さずに進行阻止面6を設けると、レンズミラーアレイ1の成形時に、エッジ61に相当する部分の樹脂の流れをスムーズにすることができ、下流側反射面4の形状精度を高くすることができる。また、本実施形態のレンズミラーアレイ1によると、下流側反射面4と進行阻止面6の間のエッジ61の毛細管現象を利用して、遮光インクを進行阻止面6に良好に濡れ拡がらせることができ、遮光膜62の形状も安定させることができる。このため、本実施形態によると、像面におけるベスト位置でのコントラストを増すことができ、被写界深度を大きくすることができ、良好な光学性能を得ることができる。
【0064】
図8は、第2の実施形態に係るレンズミラーアレイ200の一部を拡大して示す斜視図であり、図9は、図8のレンズミラーアレイ200の領域F9を部分的に拡大して示す拡大斜視図である。
【0065】
レンズミラーアレイ200は、複数の下流側反射面4の間に進行阻止面6を備える代わりにエッジ201(角部)を有しており、主走査方向に隣接する2つの光学エレメント90の下流側反射面4の間にエッジ201を覆う遮光膜202を設けた以外、上述した第1の実施形態のレンズミラーアレイ1と略同じ構造を有する。よって、ここでは、上述した第1の実施形態のレンズミラーアレイ1と異なる構成について説明し、第1の実施形態のレンズミラーアレイ1と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0066】
下流側反射面4は、上流側反射面3で反射された反射光を出射側レンズ面5に向けて反射して収束させる正の光学パワーを有する自由曲面であり、レンズミラーアレイ200の外方へ膨出した面である。主走査方向に隣接する2つの光学エレメント90の下流側反射面4同士はエッジ201を介して隣接している。つまり、本実施形態のレンズミラーアレイ200の下流側反射面4の主走査方向の幅は、光学エレメント90の主走査方向の幅と略同じである。
【0067】
エッジ201は、主走査方向に隣接した2つの下流側反射面4が交差する部位に設けられた凹状の溝であり、第1の実施形態のレンズミラーアレイ1のエッジ61と同様に、毛細管現象によって遮光インクを吸引するように機能する。本実施形態のレンズミラーアレイ200は、進行阻止面6を有していないため、遮光膜202は、主走査方向に所定幅を有してエッジ201を覆うように形成する。
【0068】
以上のように、第2の実施形態のレンズミラーアレイ200によると、上述した第1の実施形態と同様に、主走査方向に配列した複数の下流側反射面4同士がエッジ201を介して段差なく連続しているため、レンズミラーアレイ200の成型時に樹脂の流れが乱されることがなく、下流側反射面4の形状精度を高めることができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1、200…レンズミラーアレイ、2…入射側レンズ面、3…上流側反射面、4…下流側反射面、5…出射側レンズ面、6…進行阻止面、61、201…エッジ、62、202…遮光膜、70…読取モジュール、78…ホルダ、100…画像形成装置。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9