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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179318
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】アームレスト及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20241219BHJP
   B60N 2/427 20060101ALI20241219BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60N2/75
B60N2/427
A47C7/54 C
A47C7/54 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098065
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和人
(72)【発明者】
【氏名】清水 英司
(72)【発明者】
【氏名】毛 陽雲
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CD05
3B087DC02
(57)【要約】
【課題】乗員が手に持った携帯端末等が車両の衝突時に乗員の顔面等に当たることを防止する。
【解決手段】アームレスト20は、車両用シート10のシートバック14の側部14Aに基端部が連結され、乗員の肘を支持可能な第1アームレスト部22と、第1アームレスト部22の先端部に基端部が連結され、第1アームレスト部22の上面側に配置される格納位置と、第1アームレスト部22の先端部からシート前方斜め上方側で且つシート左右方向内側へ斜めに延びる展開位置との間で回転可能とされ、展開位置において乗員の手の甲を支持可能な第2アームレスト部24と、第1アームレスト部22の先端部に搭載され、作動することで乗員の頭部の前方にエアバッグ32を膨張展開させるエアバッグ装置30と、を備える。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバックの側部に基端部が連結され、乗員の肘を支持可能な第1アームレスト部と、
前記第1アームレスト部の先端部に基端部が連結され、前記第1アームレスト部の上面側に配置される格納位置と、前記第1アームレスト部の先端部からシート前方斜め上方側で且つシート左右方向内側へ斜めに延びる展開位置との間で回転可能とされ、前記展開位置において前記乗員の手の甲を支持可能な第2アームレスト部と、
前記第1アームレスト部の先端部に搭載され、作動することで前記乗員の頭部の前方にエアバッグを膨張展開させるエアバッグ装置と、
を備えたアームレスト。
【請求項2】
前記第1アームレスト部に対する前記第2アームレスト部の位置を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき前記第2アームレスト部が前記展開位置に位置すると判断している状態で車両の衝突が検知された場合、前記エアバッグ装置を作動させる制御部と、
を備えた請求項1に記載のアームレスト。
【請求項3】
前記シートバックの左側に設けられる前記第1アームレスト部、前記第2アームレスト部、前記エアバッグ装置及び前記検出部と、
前記シートバックの右側に設けられる前記第1アームレスト部、前記第2アームレスト部、前記エアバッグ装置及び前記検出部と、
を備え、
前記制御部は、左右の前記検出部の検出結果に基づき左右の前記第2アームレスト部の両方が前記展開位置に位置すると判断している状態で車両の衝突が検知された場合、左右の前記エアバッグ装置の何れか一方のみを作動させる請求項2に記載のアームレスト。
【請求項4】
前記制御部は、左右の前記検出部の検出結果に基づき左右の前記第2アームレスト部の一方が他方よりも先に前記展開位置へ回転されたと判断した場合、車両の衝突が検知された際に前記一方の前記第2アームレスト部が配置された側の前記エアバッグ装置のみを作動させる請求項3に記載のアームレスト。
【請求項5】
前記検出部は、前記第2アームレスト部の基端面が前記第1アームレスト部の先端面に接触することで、前記第2アームレスト部が前記展開位置に位置することを検出する請求項2又は請求項3に記載のアームレスト。
【請求項6】
前記エアバッグの膨張展開状態の形状は、シート前後方向視で略逆涙滴型をなし且つシート前後方向に扁平状をなすように設定されている請求項1又は請求項2に記載のアームレスト。
【請求項7】
乗員が着座するシートクッションと、
前記乗員の背部を支持するシートバックと、
前記シートバックの側部に前記第1アームレスト部の基端部が連結された請求項1又は請求項2に記載のアームレストと、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特にアームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された車両用シートのアームレストは、アームレスト本体の高さ及びアームレスト本体の上面の傾斜角度の双方を調整可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-226999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、スマートフォンやタブレット等の携帯端末が普及しているため、例えば車内において、乗員がアームレストに肘を置いた状態で、手に持った携帯端末の画面を見る機会が増えてきている。しかしながら、乗員が手に持った携帯端末等が車両の衝突時に乗員の顔面や頭部に当たる虞がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、乗員が手に持った携帯端末等が車両の衝突時に乗員の顔面等に当たることの防止に寄与するアームレスト及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のアームレストは、車両用シートのシートバックの側部に基端部が連結され、乗員の肘を支持可能な第1アームレスト部と、前記第1アームレスト部の先端部に基端部が連結され、前記第1アームレスト部の上面側に配置される格納位置と、前記第1アームレスト部の先端部からシート前方斜め上方側で且つシート左右方向内側へ斜めに延びる展開位置との間で回転可能とされ、前記展開位置において前記乗員の手の甲を支持可能な第2アームレスト部と、前記第1アームレスト部の先端部に搭載され、作動することで前記乗員の頭部の前方にエアバッグを膨張展開させるエアバッグ装置と、を備えている。
【0007】
第1の態様のアームレストでは、乗員の肘を支持可能な第1アームレスト部の基端部が、車両用シートのシートバックの側部に連結される。第1アームレスト部の先端部には、第2アームレスト部の基端部が連結されている。第2アームレスト部は、第1アームレスト部の上面側に配置される格納位置と、第1アームレスト部の先端部からシート前方斜め上方側で且つシート左右方向内側へ斜めに延びる展開位置との間で回転可能とされており、展開位置において乗員の手の甲を支持可能とされている。第1アームレスト部の先端部には、エアバッグ装置が搭載されている。このエアバッグ装置は、作動することで乗員の頭部の前方にエアバッグを膨張展開させる。このため、乗員が携帯端末等を持つ手を第2アームレスト部に支持させている状態で車両が衝突した場合に、上記のエアバッグ装置を作動させるようにすれば、上記の携帯端末等が乗員の顔面等に当たることを防止可能となる。
【0008】
第2の態様のアームレストは、第1の態様において、前記第1アームレスト部に対する前記第2アームレスト部の位置を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づき前記第2アームレスト部が前記展開位置に位置すると判断している状態で車両の衝突が検知された場合、前記エアバッグ装置を作動させる制御部と、を備えている。
【0009】
第2の態様のアームレストでは、検出部は、第1アームレスト部に対する第2アームレスト部の位置を検出する。制御部は、検出部の検出結果に基づき第2アームレスト部が展開位置に位置すると判断している状態で車両の衝突が検知された場合、エアバッグ装置を作動させる。つまり、第2アームレスト部が展開位置に位置する状態では、乗員が携帯端末等を持つ手を第2アームレスト部に支持させている蓋然性が高いため、車両の衝突が検知された場合に制御部によってエアバッグ装置が作動される。
【0010】
第3の態様のアームレストは、第2の態様において、前記シートバックの左側に設けられる前記第1アームレスト部、前記第2アームレスト部、前記エアバッグ装置及び前記検出部と、前記シートバックの右側に設けられる前記第1アームレスト部、前記第2アームレスト部、前記エアバッグ装置及び前記検出部と、を備え、前記制御部は、左右の前記検出部の検出結果に基づき左右の前記第2アームレスト部の両方が前記展開位置に位置すると判断している状態で車両の衝突が検知された場合、左右の前記エアバッグ装置の何れか一方のみを作動させる。
【0011】
第3の態様のアームレストでは、シートバックの左右両側にそれぞれ第1アームレスト部、第2アームレスト部、エアバッグ装置及び検出部が設けられる。制御部は、左右の検出部の検出結果に基づき左右の第2アームレスト部の両方が展開位置に位置すると判断している状態で車両の衝突が検知された場合、左右のエアバッグ装置の何れか一方のみを作動させる。これにより、左右のエアバッグ装置が膨張展開させる左右のエアバッグが互いに干渉することを防止できる。
【0012】
第4の態様のアームレストは、第3の態様において、前記制御部は、左右の前記検出部の検出結果に基づき左右の前記第2アームレスト部の一方が他方よりも先に前記展開位置へ回転されたと判断した場合、車両の衝突が検知された際に前記一方の前記第2アームレスト部が配置された側の前記エアバッグ装置のみを作動させる。
【0013】
第4の態様のアームレストでは、制御部は、左右の前記第2アームレスト部のどちらが先に展開位置へ回転されたかに基づいて、左右のエアバッグ装置のどちらを作動させるかを判断する。これにより、当該判断を行うための専用のセンサが不要になる。
【0014】
第5の態様のアームレストは、第2の態様~第4の態様の何れか1つの態様において、前記検出部は、前記第2アームレスト部の基端面が前記第1アームレスト部の先端面に接触することで、前記第2アームレスト部が前記展開位置に位置することを検出する。
【0015】
第5の態様のアームレストでは、上記のように構成されているので、第2アームレスト部が展開位置に位置することを正確に検出することができる。
【0016】
第6の態様のアームレストは、第1の態様~第5の態様の何れか1つの態様において、前記エアバッグの膨張展開状態の形状は、シート前後方向視で略逆涙滴型をなし且つシート前後方向に扁平状をなすように設定されている。
【0017】
第6の態様のアームレストでは、第1アームレスト部の先端部から膨張展開するエアバッグは、シート前後方向視で略逆涙滴型をなし且つシート前後方向に扁平状をなす。これにより、乗員の頭部の前方の狭いスペースにエアバッグを良好に展開させることができる。しかも、エアバッグの容量の増加を抑制しつつ、エアバッグの上部側の幅が広い部分で乗員の頭部や顔面を良好に保護することができる。
【0018】
第7の態様の車両用シートは、乗員が着座するシートクッションと、前記乗員の背部を支持するシートバックと、前記シートバックの側部に前記第1アームレスト部の基端部が連結された第1の態様~第6の態様の何れか1つの態様のアームレストと、を備えている。
【0019】
第7の態様の車両用シートでは、シートクッションに着座する乗員の背部がシートバックによって支持される。シートバックの側部には、アームレストが備える第1アームレスト部の基端部が連結されている。このアームレストは、第1の態様~第6の態様の何れか1つの態様のものであるため、前述した効果が得られる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係るアームレスト及び車両用シートによれば、乗員が手に持った携帯端末等が車両の衝突時に乗員の顔面等に当たることの防止に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
図2A】実施形態に係るアームレストにおける第2アームレスト部の格納状態を示す側面図である。
図2B】実施形態に係るアームレストにおける第2アームレスト部の展開状態を示す側面図である。
図3A】実施形態に係るアームレストにおける第2アームレスト部の格納状態を示す平面図である。
図3B】実施形態に係るアームレストにおける第2アームレスト部の展開状態を示す平面図である。
図4A】実施形態に係るアームレストにおける第2アームレスト部の格納状態を示す正面図である。
図4B】実施形態に係るアームレストにおける第2アームレスト部の展開状態を示す正面図である。
図5A】実施形態に係る車両用シートにおけるエアバッグの膨張展開状態を示す側面図である。
図5B】実施形態に係る車両用シートにおけるエアバッグの膨張展開状態を示す正面図である。
図6】実施形態に係るアームレストのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図7】実施形態に係るアームレストの制御ECUが実施する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1図7を参照して本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜示される矢印FR、UP及びRHは、車両用シート10の前方、上方及び右方をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、乗員が着座する(乗員の大腿部及び臀部を支持する)シートクッション12と、乗員の背部を支持するシートバック14と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト16と、乗員の前腕部(後述するように、肘から手の甲まで)を支持するアームレスト20と、を備えている。この車両用シート10の前後左右上下の方向は、この車両用シート10が搭載された車両の前後左右上下の方向と一致している。
【0024】
図1図4に示されるように、アームレスト20は、シートバック14の左側に設けられた第1アームレスト部22及び第2アームレスト部24と、シートバック14の右側に設けられた第1アームレスト部22及び第2アームレスト部24と、を備えている。第1アームレスト部22及び第2アームレスト部24は、直方体形状をなしている。左右の第1アームレスト部22は、シートバック14の左右の側部14A(図1参照)に連結されている。第2アームレスト部24は、第1アームレスト部22の上面側に折り畳み可能とされている。シートバック14の左側に設けられた第1アームレスト部22及び第2アームレスト部24と、シートバック14の右側に設けられた第1アームレスト部22及び第2アームレスト部24とは、左右対称に構成されている。
【0025】
第1アームレスト部22の長手方向一端部である基端部22Aは、シートバック14の側部14Aに左右方向を軸方向として設けられた支軸18により、所定の回転抵抗(摩擦)を有して回転可能に側部14Aに連結されている。そして、第1アームレスト部22は、シートバック14の側部14Aに沿って上方側へ延在するように配置される非使用位置と、その長手方向他端部である先端部22Bがシートバック14の側部14Aから前方側へ回転し、側部14Aの前方側へ延在するように配置される使用位置との間で回転可能とされている。
【0026】
第2アームレスト部24の長手方向一端部である基端部24Aは、第1アームレスト部22の先端部22Bとの間に設けられたヒンジ部23により、所定の回転抵抗(摩擦)を有して回転可能に先端部22Bに連結されている。そして、第2アームレスト部24は、第1アームレスト部22が使用位置に位置する状態(以下、「使用状態」と称する)において、第1アームレスト部22の上面側に配置される格納位置と、その長手方向他端部である先端部24Bが第1アームレスト部22の上面側から前方側へ回転し、第1アームレスト部22の先端部22Bから前方斜め上方側で且つ左右方向内側へ斜めに延びる展開位置との間で回転可能とされている。
【0027】
具体的に説明すると、第1アームレスト部22の使用状態において、第1アームレスト部22の先端部22Bの端面は、図2Aに示される側面視で上端部から前方下側へ向かって所定の角度(上下方向に対してα°/2)で傾斜し、かつ図3Aに示される平面視で左右方向内側端部から左右方向外側前方へ向かって所定の角度(左右方向に対してβ°/2)で傾斜する傾斜面22Cとされている。
【0028】
そして、第1アームレスト部22の使用状態で且つ第2アームレスト部24が格納位置に位置する状態(以下、「格納状態」と称する)において、第2アームレスト部24の基端部24Aの端面は、図2Aに示される側面視で下端部から前方上側へ向かって所定の角度(上下方向に対してα°/2)で傾斜し、かつ図3Aに示される平面視で左右方向内側端部から左右方向外側前方へ向かって所定の角度(左右方向に対してβ°/2)で傾斜する傾斜面24Cとされている。
【0029】
また、図4Aに示されるように、第1アームレスト部22の使用状態で且つ第2アームレスト部24の格納状態において、ヒンジ部23は、その回転軸23Aが、傾斜面22Cの上方側で且つ傾斜面24Cの下方側に、正面視で左右方向を軸方向として配置されるように、その傾斜面22Cと傾斜面24Cとの間に設けられている。
【0030】
第2アームレスト部24が回転軸23Aを中心に上方側から展開位置へ回転すると、傾斜面24Cが傾斜面22Cに当接する。この状態では、第2アームレスト部24が、第1アームレスト部22の延在方向に対して、図2Bに示される側面視で斜め上方側へ所定の角度(α°:例えばα°=40°~50°)で延在し、かつ図3Bに示される平面視で左右方向内側へ所定の角度(β°:例えばβ°=40°~50°)で斜めに延在するように配置される構成になっている。
【0031】
上記構成のアームレスト20では、図2A図3A図4Aに示されるように、第1アームレスト部22が、シートバック14の側部14Aから前方側へ回転して、側部14Aの前方側へ延在するように配置される使用状態において、第2アームレスト部24が、第1アームレスト部22の上面側から前方側へ回転することにより、図2B図3B図4Bに示されるように、展開状態となる。この展開状態では、第2アームレスト部24は、第1アームレスト部22の延在方向に対して、側面視で斜め上方側へ所定の角度(α°)で延在し、且つ平面視で左右方向内側へ所定の角度(β°)で斜めに延在するように配置される。
【0032】
この展開状態では、図5A及び図5Bに示されるように、第1アームレスト部22の上面から第2アームレスト部24の上面にかけて、車両用シート10に着座した乗員の肘から手の甲までを楽な姿勢で置くことができる。すなわち、アームレスト20の第1アームレスト部22及び第2アームレスト部24によって、車両用シート10に着座した乗員の肘から手の甲までを適切な角度で良好に支持することができる。
【0033】
これにより、車両の走行中において、乗員は、スマートフォン等の携帯端末を持った手を肘よりも高い位置である胸部付近の高さに楽に保持することができる。その結果、乗員が携帯端末を手に持って、その画面に表示されている動画、静止画、文章等を見ていても、車両走行時の振動により、手に持った携帯端末が揺れるのを抑制することができる。これにより、乗員が携帯端末の画面を見難くなったり、携帯端末に対する操作をし難くなったりすることを抑制することができる。
【0034】
また、携帯端末と乗員の視線との相対的な動きが低減されるため、乗員が長時間下を向いた姿勢で揺れる携帯端末の画面を注視することによる車酔いの発生を抑制することができる。また、携帯端末の保持位置が高い位置に安定的に維持されるため、乗員が長時間下を向いた姿勢を維持することによる首部痛の発生も抑制することができる。更に、乗員の視野が高い位置に維持されるため、乗員の視覚による車両周辺情報の取得が容易になる。
【0035】
また、このアームレスト20は、第1アームレスト部22と第2アームレスト部24とで構成された折り畳み式とされているため、省スペース性に優れるとともに、車両用シート10のシートバック14に対する搭載性も大幅に向上させることができる。
【0036】
さらに、このアームレスト20は、乗員が手に持った携帯端末等が車両の衝突時に乗員の顔面等に当たることを防止するためのエアバッグ装置30(図1参照;図2A図4Bでは図示省略)を備えている。エアバッグ装置30は、エアバッグ32(図5A及び図5B参照)及びインフレータ34(図6参照)を有するエアバッグモジュールであり、左右の第1アームレスト部22の先端部22Bにそれぞれ搭載されている。エアバッグ32は、例えばナイロン系又はポリエステル系の布材によって袋状に構成されており、通常時には折り畳まれた状態で第1アームレスト部22の先端部22B内に収納されている。
【0037】
インフレータ34は、例えば燃焼式又はコールドガス式であり、作動することでエアバッグ32内にガスを発生させる。これにより、図5A及び図5Bに示されるように、エアバッグ32が第1アームレスト部22の先端部22Bから乗員の頭部の前方側へ向けて膨張展開する。このエアバッグ32は一例として、膨張展開状態の形状が、前後方向視で略逆涙滴型をなし且つ前後方向に扁平状をなすように設定されている。膨張展開状態のエアバッグ32は、上部側が下部側よりも左右方向に幅広となる。なお、図5A及び図5Bでは、左側のエアバッグ32が膨張展開した状態が図示されているが、左右のエアバッグ32の膨張展開状態の形状は、左右対称に設定されている。
【0038】
図1に示されるように、左右の第1アームレスト部22の先端部22Bには、それぞれセンサ本体36が設けられており、第2アームレスト部24の基端部24Aには、それぞれセンサアクチュエータ38が設けられている。なお図2A図4Bでは、センサ本体36及びセンサアクチュエータ38の図示を省略している。センサ本体36は、先端部22Bの端面(すなわち傾斜面22C)に設けられており、センサアクチュエータ38は、基端部24Bの端面(すなわち傾斜面24C)に設けられている。センサ本体36及びセンサアクチュエータ38は、第1アームレスト部22に対する第2アームレスト部24の位置を検出するための検出部を構成している。具体的には、第2アームレスト部24が展開位置へ回転し、第2アームレスト部24の基端面である傾斜面24Cが第1アームレスト部22の先端面である傾斜面22Cに接触することで、センサアクチュエータ38がセンサ本体36に接近すると、センサ本体36から信号が出力される(すなわち、第2アームレスト部24が展開位置に位置することをセンサ本体36が検出する)ように構成されている。
【0039】
左右のエアバッグ装置30のインフレータ34及び左右のセンサ本体36はそれぞれ、制御部である制御ECU40に電気的に接続されている。制御ECU40は、CPU(Central Processing Unit)40A、ROM(Read Only Memory)40B、RAM(Random Access Memory)40C、ストレージ40D及び入出力インターフェース(I/F)40Eを含んで構成されている。CPU40A、ROM40B、RAM40C、ストレージ40D及び入出力インターフェース40Eは、バス40Fを介して相互に通信可能に接続されている。
【0040】
CPU40Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU40Aは、ROM40Bからプログラムを読み出し、RAM40Cを作業領域としてプログラムを実行する。本実施形態では、ROM40Bにプログラムが記憶されている。入出力インターフェース40Eには、左右のエアバッグ装置30のインフレータ34及び左右のセンサ本体36が電気的に接続されると共に、衝突センサ42が電気的に接続されている。衝突センサ42は、例えば車両の前面衝突又は前面衝突の不可避を検出すると、信号を出力するように構成されている。
【0041】
制御ECU40のCPU40A(以下、単に「制御ECU40」と称する)は、センサ本体36から信号が出力されている状態では、第2アームレスト部24が展開位置に位置すると判断し、センサ本体36から信号が出力されていない状態では、第2アームレスト部24が使用位置に位置すると判断する。この制御ECU40は、左右のセンサ本体36からの信号に基づき、左右の第2アームレスト部24の一方が展開位置に位置すると判断している状態で衝突センサ42から信号が出力された場合、上記一方の第2アームレスト部24が配置された側のエアバッグ装置30のインフレータ34を作動させるように構成されている。インフレータ34の作動によって膨張展開するエアバッグ32は、第2アームレスト部24に支持されている乗員の前腕部より後側で乗員の頭部の前方に膨張展開する。
【0042】
また、制御ECU40は、左右のセンサ本体36からの信号(本実施形態における「検出部の検出結果」に相当)に基づき、左右の第2アームレスト部24の両方が展開位置に位置すると判断している状態で衝突センサ42から信号が出力された場合、左右のエアバッグ装置30の何れか一方のみを作動させるように構成されている。具体的には、制御ECU40は、左右のセンサ本体36からの信号に基づき、左右の第2アームレスト部24の一方が他方よりも先に展開位置へ回転されたと判断した場合、衝突センサ42から信号が出力された際に、上記一方の第2アームレスト部24が配置された側のエアバッグ装置30のインフレータ34のみを作動させるように構成されている。
【0043】
以下、図7を参照して、制御ECU40が実施する制御処理の一例について説明する。制御ECU40は、例えば車両のイグニッションスイッチがオンにされると、図7に示される制御処理を開始する。制御ECU40は、先ずステップS1において、左側のセンサ本体36からの信号に基づき、左側の第2アームレスト部24が展開位置に位置するか否かを判断する。この判断が肯定された場合、ステップS2に移行し、この判断が否定された場合、ステップS6に移行する。
【0044】
ステップS2に移行した場合、制御ECU40は、右側のセンサ本体36からの信号に基づき、右側の第2アームレスト部24が展開位置に位置するか否かを判断する。この判断が肯定された場合、ステップS3に移行し、この判断が否定された場合、ステップS4に移行する。
【0045】
ステップS3に移行した場合、制御ECU40は、左右のセンサ本体36から信号が出力されたタイミングに基づき、左側の第2アームレスト部24が右側の第1アームレスト部22よりも先に展開位置へ回転されたか否かを判断する。この判断が肯定された場合、ステップS4に移行し、この判断が否定された場合、ステップS7に移行する。
【0046】
ステップS4に移行した場合、制御ECU40は、衝突センサ42からの信号に基づいて、車両の衝突又は衝突の不可避が検出されたか否かを判断する。この判断が肯定された場合、ステップS5に移行し、この判断が否定された場合、ステップS1に戻って前述した処理を行う。
【0047】
ステップS5に移行した場合、すなわち車両の衝突又は衝突の不可避が検出されたと判断された場合、制御ECU40は、左側のエアバッグ装置30のインフレータ34を作動させ、左側のエアバッグ32を乗員の頭部の前方へ膨張展開させる。このステップS5での処理が完了すると、制御ECU40の制御処理が終了される。
【0048】
一方、ステップS1での判断が否定されてステップS6に移行した場合、制御ECU40は、右側のセンサ本体36からの信号に基づき、右側の第2アームレスト部24が展開位置に位置するか否かを判断する。この判断が肯定された場合、ステップS7に移行し、この判断が否定された場合、ステップS1に戻って前述した処理を行う。
【0049】
ステップS7に移行した場合、制御ECU40は、衝突センサ42からの信号に基づいて、車両の衝突又は衝突の不可避が検出されたか否かを判断する。この判断が肯定された場合、ステップS8に移行し、この判断が否定された場合、ステップS1に戻って前述した処理を行う。
【0050】
ステップS8に移行した場合、すなわち車両の衝突又は衝突の不可避が検出されたと判断された場合、制御ECU40は、右側のエアバッグ装置30のインフレータ34を作動させ、右側のエアバッグ32を乗員の頭部の前方へ膨張展開させる。このステップS8での処理が完了すると、制御ECU40の制御処理が終了される。
【0051】
(本実施形態のまとめ)
上記構成の車両用シート10では、シートクッション12に着座する乗員の背部がシートバック14によって支持される。シートバック14の左右の側部14Aには、アームレスト20が備える第1アームレスト部22、第2アームレスト部24、エアバッグ装置30、センサ本体36及びセンサアクチュエータ38がそれぞれ設けられている。
【0052】
このアームレスト20では、乗員の肘を支持可能な第1アームレスト部22の基端部が、シートバック14の側部14Aに連結されている。第1アームレスト部22の先端部には、第2アームレスト部24の基端部が連結されている。第2アームレスト部24は、第1アームレスト部22の上面側に配置される格納位置と、第1アームレスト20の先端部からシート前方斜め上方側で且つシート左右方向内側へ斜めに延びる展開位置との間で回転可能とされており、展開位置において乗員の手の甲を支持可能とされている。
【0053】
第1アームレスト部22の先端部には、エアバッグ装置30と、センサ本体36及びセンサアクチュエータ38とが搭載されている。エアバッグ装置30は、作動することで乗員の頭部の前方にエアバッグ32を膨張展開させる。センサ本体36は、センサ本体36に対するセンサアクチュエータ38の位置に基づいて、第1アームレスト部22に対する第2アームレスト部24の位置を検出する。
【0054】
センサ本体36及びエアバッグ装置30が電気的に接続された制御ECU40は、センサ本体36からの信号に基づき第2アームレスト部24が展開位置に位置すると判断している状態で車両の衝突が検知された場合、エアバッグ装置30を作動させる。つまり、第2アームレスト部24が展開位置に位置する状態では、乗員が携帯端末等を持つ手を第2アームレスト部24に支持させている蓋然性が高いため、車両の衝突が検知された場合に制御ECU40によってエアバッグ装置30が作動される。これにより、上記の携帯端末等が乗員の顔面や頭部に当たることを防止可能となる。
【0055】
また、このアームレスト20では、制御ECU40は、左右のセンサ本体36からの信号に基づき左右の第2アームレスト部24の両方が展開位置に位置すると判断している状態で車両の衝突が検知された場合、左右のエアバッグ装置30の何れか一方のみを作動させる。これにより、左右のエアバッグ装置30が膨張展開させる左右のエアバッグ32が互いに干渉することを防止できる。
【0056】
具体的には、制御ECU40は、左右のセンサ本体36からの信号に基づき左右の第2アームレスト部24の一方が他方よりも先に前記展開位置へ回転されたと判断した場合、車両の衝突が検知された際に上記一方の第2アームレスト部24が配置された側のエアバッグ装置30のみを作動させる。このように、左右の第2アームレスト部24のどちらが先に展開位置へ回転されたかに基づいて、左右のエアバッグ装置30のどちらを作動させるかが判断されるため、当該判断を行うための専用のセンサが不要になる。
【0057】
また、このアームレスト20では、センサ本体36は、第2アームレスト部24の基端面である傾斜面24Cが第1アームレスト部22の先端面である傾斜面22Cに接触することで、第2アームレスト部24が展開位置に位置することを検出する。このように構成されているので、第2アームレスト部24が展開位置に位置することを正確に検出することができる。
【0058】
また、このアームレスト20では、第1アームレスト部22の先端部から膨張展開するエアバッグ32は、前後方向視で略逆涙滴型をなし且つ前後方向に扁平状をなす。これにより、乗員の頭部の前方の狭いスペースにエアバッグ32を良好に展開させることができる。しかも、エアバッグ32の容量の増加を抑制しつつ、エアバッグ32の上部側の幅が広い部分で乗員の頭部や顔面を良好に保護することができる。
【0059】
なお、上記実施形態では、第1アームレスト部22の先端部22Bの端面に設けられたセンサ本体36と、第2アームレスト部24の基端部24Bの端面に設けられたセンサアクチュエータ38とによって検出部が構成された場合について説明したが、これに限るものではない。検出部は、例えば乗員やアームレストを撮像する車内カメラであってもよい。
【0060】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
14A 側部
20 アームレスト
22 第1アームレスト部
24 第2アームレスト部
30 エアバッグ装置
32 エアバッグ
36 センサ本体(検出部)
38 センサアクチュエータ(検出部)
40 制御ECU(制御部)
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7