(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179319
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】シートカバー取付構造及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20241219BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20241219BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60N2/58
A47C31/02 B
B68G7/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098066
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利春
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】シートカバーのカバーリングのテンション調整が容易なシートカバー取付構造を得る。
【解決手段】シートカバー取付構造12では、シートバックフレーム20に支持されたシートバックパッド28にシートバックカバー36のカバー本体38が被せられている。このカバー本体38から延出された係止紐40は、シートバックフレーム20に取り付けられたブッシュ42のブッシュ42に係合しており、ブッシュ42がシートバックフレーム20に対して一方向に回転されることにより、ブッシュ42に巻き取られる。この巻き取りによって、係止紐40の余長を吸収し、カバー本体38のカバーリングのテンションを調整することができるので、当該テンション調整が容易になる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートの内部構造物に支持されたパッドに被せられるカバー本体及び前記カバー本体から延出された係止紐を有するシートカバーと、
前記内部構造物に取り付けられ、前記内部構造物に対して少なくとも一部が一方向に回転可能とされ、前記少なくとも一部に係合する前記係止紐が、前記少なくとも一部の前記一方向への回転により前記少なくとも一部に巻き取られる紐巻取部材と、
を備えたシートカバー取付構造。
【請求項2】
前記シートカバーは、複数の前記係止紐を有し、
前記紐巻取部材の前記少なくとも一部に係合する複数の前記係止紐が、前記少なくとも一部の前記一方向への回転により前記少なくとも一部に巻き取られる請求項1に記載のシートカバー取付構造。
【請求項3】
前記紐巻取部材の前記少なくとも一部には、前記係止紐が挿入される溝が形成されており、
前記内部構造物には、前記係止紐の先端部が係止される係止部が設けられている請求項1又は請求項2に記載のシートカバー取付構造。
【請求項4】
前記紐巻取部材の前記少なくとも一部は、前記少なくとも一部の回転軸線と同心状の周壁部を有し、
前記周壁部には、前記係止紐が挿入される溝が形成されており、
前記周壁部の内側で前記少なくとも一部には、前記係止紐の先端部が係止される係止部が設けられている請求項1又は請求項2に記載のシートカバー取付構造。
【請求項5】
前記シートカバーは、複数の前記係止紐を有し、
前記紐巻取部材の前記少なくとも一部には、複数の前記係止紐が挿入される複数の前記溝が形成されており、
複数の前記溝には、前記少なくとも一部の回転軸線に沿った深さが異なるものが含まれる請求項3に記載のシートカバー取付構造。
【請求項6】
前記シートカバーは、複数の前記係止紐を有し、
前記周壁部には、複数の前記係止紐が挿入される複数の前記溝が形成されており、
複数の前記溝には、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部の回転軸線に沿った深さが異なるものが含まれる請求項4に記載のシートカバー取付構造。
【請求項7】
前記紐巻取部材の前記少なくとも一部の前記一方向への回転を許容すると共に、前記少なくとも一部の他方向への回転を規制し又は前記少なくとも一部の他方向への回転に抗力を付与するラチェット機構を備える請求項1又は請求項2に記載のシートカバー取付構造。
【請求項8】
前記ラチェット機構は、
前記内部構造物に設けられた弾性変形可能なラチェット爪と、
前記紐巻取部材の前記少なくとも一部に設けられ、前記ラチェット爪に係合するラチェット歯と、
を有する請求項7に記載のシートカバー取付構造。
【請求項9】
前記ラチェット機構は、
前記内部構造物に取り付けられ、弾性変形可能なラチェット爪を有する弾性部材と、
前記紐巻取部材の前記少なくとも一部に設けられ、前記ラチェット爪に係合するラチェット歯と、
を有し、
弾性部材の弾性変形によって前記紐巻取部材の前記少なくとも一部の前記他方向への回転に抗力が付与される請求項7に記載のシートカバー取付構造。
【請求項10】
前記ラチェット歯は、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部に設けられた複数のリブの一部によって構成されている請求項8に記載のシートカバー取付構造。
【請求項11】
前記ラチェット歯は、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部に設けられた複数のリブの一部によって構成されている請求項9に記載のシートカバー取付構造。
【請求項12】
前記紐巻取部材は、前記紐巻取部材の一部と前記紐巻取部材の別の一部とが前記少なくとも一部の回転軸線方向に組み合わされて構成されており、
前記ラチェット機構は、
前記一部と前記別の一部との一方に設けられた弾性変形可能なラチェット爪と、
前記一部と前記別の一部との他方に設けられ、前記ラチェット爪に係合するラチェット歯と、
を有する請求項7に記載のシートカバー取付構造。
【請求項13】
前記紐巻取部材の前記少なくとも一部は、円錐台状の外周面を有し、当該外周面に複数の前記係止紐を巻き取る請求項5に記載のシートカバー取付構造。
【請求項14】
前記紐巻取部材の前記少なくとも一部は、段付き円筒状の外周面を有し、当該外周面に複数の前記係止紐を巻き取る請求項5に記載のシートカバー取付構造。
【請求項15】
前記紐巻取部材の前記少なくとも一部は、前記内部構造物に対して着脱可能とされている請求項1又は請求項2に記載のシートカバー取付構造。
【請求項16】
内部構造物と、
前記内部構造物に支持されたパッドと、
前記シートカバーの前記カバー本体が前記パッドに被せられ、前記紐巻取部材が前記内部構造物に取り付けられた請求項1又は請求項2に記載のシートカバー取付構造と、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特にシートカバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたシートカバーの係着構造では、シートカバーに取り付けられているゴム紐等の紐部材をパッドに貫通させてシートカバーをパッドにカバーリングし、このカバーリングしたシートカバーの紐部材をパッドの長手方向に沿って掛け留めると共に、シートカバーの側面下縁をシートフレームに掛け留める。上記のように紐部材を掛け留めることにより、シートカバーをパッドに係着させている場合でも、補強部材を別途に必要とすることなく係着させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術において、紐部材がゴム紐である場合、着座者からの荷重でゴム紐が伸びることにより、シートカバーがパッドに対して位置ずれしてしまう。一方、紐部材がゴム紐でない場合、シートカバーや紐部材の寸法のバラつきによって、シートカバーのカバーリングのテンション調整が困難になる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シートカバーのカバーリングのテンション調整が容易なシートカバー取付構造及び該シートカバー取付構造を備えた車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のシートカバー取付構造は、車両用シートの内部構造物に支持されたパッドに被せられるカバー本体及び前記カバー本体から延出された係止紐を有するシートカバーと、前記内部構造物に取り付けられ、前記内部構造物に対して少なくとも一部が一方向に回転可能とされ、前記少なくとも一部に係合する前記係止紐が、前記少なくとも一部の前記一方向への回転により前記少なくとも一部に巻き取られる紐巻取部材と、を備えている。
【0007】
第1の態様のシートカバー取付構造では、車両用シートの内部構造物(例えば、フレーム)に支持されたパッドにシートカバーのカバー本体が被せられる。このカバー本体から延出された係止紐は、上記の内部構造物に取り付けられた紐巻取部材の少なくとも一部に係合し、当該少なくとも一部が内部構造物に対して一方向に回転されることにより、当該少なくとも一部に巻き取られる。この巻き取りによって、カバー本体のカバーリングのテンションを調整することができるので、当該テンション調整が容易になる。
【0008】
第2の態様のシートカバー取付構造は、第1の態様において、前記シートカバーは、複数の前記係止紐を有し、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部に係合する複数の前記係止紐が、前記少なくとも一部の前記一方向への回転により前記少なくとも一部に巻き取られる。
【0009】
第2の態様のシートカバー取付構造では、カバー本体から延出された複数の係止紐が、紐巻取部材の少なくとも一部に巻き取られる。これにより、カバー本体において複数の係止紐が延出された各部のテンションを同時に調整することができる。
【0010】
第3の態様のシートカバー取付構造は、第1の態様又は第2の態様において、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部には、前記係止紐が挿入される溝が形成されており、前記内部構造物には、前記係止紐の先端部が係止される係止部が設けられている。
【0011】
第3の態様のシートカバー取付構造では、カバー本体から延出された係止紐は、紐巻取部材の少なくとも一部に形成された溝に挿入され、車両用シートの内部構造物に設けられた係止部に先端部が係止される。その状態で紐巻取部材を一方向へ回転することにより、係止紐を紐巻取部材に巻き取ることができる。
【0012】
第4の態様のシートカバー取付構造は、第1の態様又は第2の態様において、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部は、前記少なくとも一部の回転軸線と同心状の周壁部を有し、前記周壁部には、前記係止紐が挿入される溝が形成されており、前記周壁部の内側で前記少なくとも一部には、前記係止紐の先端部が係止される係止部が設けられている。
【0013】
第4の態様のシートカバー取付構造では、カバー本体から延出された係止紐は、紐巻取部材の少なくとも一部が有する周壁部に形成された溝に挿入され、周壁部の内側で前記少なくとも一部に設けられた係止部に先端部が係止される。その状態で紐巻取部材を一方向へ回転することにより、係止紐を紐巻取部材に巻き取ることができる。
【0014】
第5の態様のシートカバー取付構造は、第3の態様において、前記シートカバーは、複数の前記係止紐を有し、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部には、複数の前記係止紐が挿入される複数の前記溝が形成されており、複数の前記溝には、前記少なくとも一部の回転軸線に沿った深さが異なるものが含まれる。
【0015】
第5の態様のシートカバー取付構造では、カバー本体から延出された複数の係止紐は、紐巻取部材の少なくとも一部に形成された複数の溝に挿入され、車両用シートの内部構造物に設けられた係止部に先端部が係止される。上記複数の溝には、上記少なくとも一部の回転軸線に沿った深さが異なるものが含まれるので、紐巻取部材を一方向へ回転することにより、係止紐同士を前記少なくとも一部の回転軸線方向にずらして巻き取ることができ、係止紐同士が絡まることを防止できる。
【0016】
第6の態様のシートカバー取付構造は、第4の態様において、前記シートカバーは、複数の前記係止紐を有し、前記周壁部には、複数の前記係止紐が挿入される複数の前記溝が形成されており、複数の前記溝には、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部の回転軸線に沿った深さが異なるものが含まれる。
【0017】
第6の態様のシートカバー取付構造では、カバー本体から延出された複数の係止紐は、紐巻取部材の少なくとも一部が有する周壁部に形成された複数の溝に挿入され、周壁部の内側で前記少なくとも一部に設けられた係止部に先端部が係止される。上記複数の溝には、上記少なくとも一部の回転軸線に沿った深さが異なるものが含まれるので、紐巻取部材を一方向へ回転することにより、係止紐同士を前記少なくとも一部の回転軸線方向にずらして巻き取ることができ、係止紐同士が絡まることを防止できる。
【0018】
第7の態様のシートカバー取付構造は、第1の態様~第6の態様の何れか1つの態様において、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部の前記一方向への回転を許容すると共に、前記少なくとも一部の他方向への回転を規制し又は前記少なくとも一部の他方向への回転に抗力を付与するラチェット機構を備える。
【0019】
第7の態様のシートカバー取付構造では、ラチェット機構は、紐巻取部材の少なくとも一部の一方向への回転を許容するが、前記少なくとも一部の他方向への回転を規制し又は前記少なくとも一部の他方向への回転に抗力を付与する。これにより、紐巻取部材への係止紐の巻き取り状態を保持するための特別な作業が不要になる。
【0020】
第8の態様のシートカバー取付構造は、第7の態様において、前記ラチェット機構は、前記内部構造物に設けられた弾性変形可能なラチェット爪と、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部に設けられ、前記ラチェット爪に係合するラチェット歯と、を有する。
【0021】
第8の態様のシートカバー取付構造では、車両用シートの内部構造物に設けられた弾性変形可能なラチェット爪に、紐巻取部材の少なくとも一部に設けられたラチェット歯が係合することでラチェット機構が構成される。これにより、ラチェット機構を簡単な構成にすることができる。
【0022】
第9の態様のシートカバー取付構造は、第7の態様において、前記ラチェット機構は、前記内部構造物に取り付けられ、弾性変形可能なラチェット爪を有する弾性部材と、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部に設けられ、前記ラチェット爪に係合するラチェット歯と、を有し、弾性部材の弾性変形によって前記少なくとも一部の前記他方向への回転に抗力が付与される。
【0023】
第9の態様のシートカバー取付構造では、車両用シートの内部構造物に取り付けられた弾性部材が有する弾性変形可能なラチェット爪に、紐巻取部材の少なくとも一部に設けられたラチェット歯が係合することでラチェット機構が構成される。そして、上記の弾性部材の弾性変形によって上記少なくとも一部の他方向への回転に抗力が付与される。この他方向への回転により、上記少なくとも一部に巻き取られた係止紐のテンションを緩めることができる。その結果、例えば係止紐のテンションすなわちカバー本体のカバーリングのテンションが高くなり過ぎることを防止でき、着座者が異物感を感じないようにすることができる。
【0024】
第10の態様のシートカバー取付構造は、第8の態様において、前記ラチェット歯は、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部に設けられた複数のリブの一部によって構成されている。
【0025】
第10の態様のシートカバー取付構造では、紐巻取部材の少なくとも一部に設けられた複数のリブの一部によってラチェット歯が構成されているので、紐巻取部材の構成を簡素化することができる。
【0026】
第11の態様のシートカバー取付構造は、第9の態様において、前記ラチェット歯は、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部に設けられた複数のリブの一部によって構成されている。
【0027】
第11の態様のシートカバー取付構造では、紐巻取部材の少なくとも一部に設けられた複数のリブの一部によってラチェット歯が構成されているので、紐巻取部材の構成を簡素化することができる。
【0028】
第12の態様のシートカバー取付構造は、第7の態様において、前記紐巻取部材は、前記紐巻取部材の一部と前記紐巻取部材の別の一部とが前記少なくとも一部の回転軸線方向に組み合わされて構成されており、前記ラチェット機構は、前記一部と前記別の一部との一方に設けられた弾性変形可能なラチェット爪と、前記一部と前記別の一部との他方に設けられ、前記ラチェット爪に係合するラチェット歯と、を有する。
【0029】
第12の態様のシートカバー取付構造では、紐巻取部材の一部と紐巻取部材の別の一部とが紐巻取部材の少なくとも一部の回転軸線方向に組み合わされる。そして、上記一部と上記別の一部との一方に設けられた弾性変形可能なラチェット爪に、上記一部と上記別の一部との他方に設けられたラチェット歯が係合することでラチェット機構が構成される。これにより、ラチェット機構を簡単な構成にすることができる。
【0030】
第13の態様のシートカバー取付構造は、第5の態様において、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部は、円錐台状の外周面を有し、当該外周面に複数の前記係止紐を巻き取る。
【0031】
第13の態様のシートカバー取付構造では、第5の態様において説明したように、係止紐同士を紐巻取部材の少なくとも一部の回転軸線方向にずらして巻き取ることができる。しかも、上記少なくとも一部は、円錐台状の外周面に複数の係止紐を巻き取るので、係止紐同士の巻取量を変えることができる。
【0032】
第14の態様のシートカバー取付構造は、第5の態様において、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部は、段付き円筒状の外周面を有し、当該外周面に複数の前記係止紐を巻き取る。
【0033】
第14の態様のシートカバー取付構造では、第5の態様において説明したように、係止紐同士を紐巻取部材の少なくとも一部の回転軸線方向にずらして巻き取ることができる。しかも、上記少なくとも一部は、段付き円筒状の外周面に複数の係止紐を巻き取るので、係止紐同士の巻取量を変えることができる。
【0034】
第15の態様のシートカバー取付構造は、第1の態様又は第2の態様において、前記紐巻取部材の前記少なくとも一部は、前記内部構造物に対して着脱可能とされている。
【0035】
第15の態様のシートカバー取付構造では、紐巻取部材の少なくとも一部が車両用シートの内部構造物に対して着脱可能とされているので、車両用シートの解体時には、上記少なくとも一部を内部構造物から取り外すことで、内部構造物に対する係止紐の係止を解除することができる。しかも、この解除によってシートカバー及びパッドが内部構造物から取り外し可能となる。これにより、車両用シートの解体が容易になる。
【0036】
第16の態様の車両用シートは、内部構造物と、前記内部構造物に支持されたパッドと、前記シートカバーの前記カバー本体が前記パッドに被せられ、前記紐巻取部材が前記内部構造物に取り付けられた第1の態様~第15の態様の何れか1つの態様のシートカバー取付構造と、を備えている。
【0037】
第16の態様の車両用シートでは、内部構造物に支持されたパッドにシートカバーのカバー本体が被せられており、上記の内部構造物に紐巻取部材が取り付けられている。上記のシートカバー及び紐巻取部材は、第1の態様~第15の態様の何れか1つの態様のシートカバー取付構造のものであるため、前述した効果が得られる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、シートカバーのカバーリングのテンション調整が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る車両用シートを示す分解斜視図である。
【
図3】実施形態に係る車両用シートの主要部を示す背面図である。
【
図4】
図3に示される構成の一部を拡大して示す拡大背面図である。
【
図5】
図4に示される構成を
図4の下方側から見た状態で示す下面図である。
【
図6】実施形態に係る車両用シートが備える紐巻取部材であるブッシュを示す正面図である。
【
図7】実施形態に係る車両用シートのシートバックフレームに設けられた凸部を示す斜視図である。
【
図8】ブッシュが凸部に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図9】ブッシュが凸部に取り付けられた状態を示す正面図である。
【
図10】シートバックパッドの斜視図であり、係止紐を通すための孔について説明するための図である。
【
図11】第1変形例に係るブッシュ及び凸部を示す斜視図である。
【
図12】第1変形例に係るブッシュ及び凸部を示す側面図である。
【
図13】第2変形例に係るブッシュ及び凸部を示す斜視図である。
【
図14】第2変形例に係るブッシュ及び凸部を示す側面図である。
【
図15】第3変形例に係るブッシュを示す斜視図である。
【
図16】第3変形例に係るブッシュを示す側面図である。
【
図17】第3変形例に係るブッシュを示す背面図である。
【
図18】第3変形例に係るブッシュが備えるキャップを示す側面図である。
【
図19】第3変形例に係るブッシュが備えるカバーを示す側面図である。
【
図20】第3変形例に係るブッシュが備えるベースを示す側面図である。
【
図22】第4変形例に係るブッシュ及び凸部を示す正面図である。
【
図26】第4変形例に係るブッシュ及び凸部を示す背面図である。
【
図27】第4変形例に係るブッシュがラチェット爪を有する凸部に取り付けられた状態を示す正面図である。
【
図28】第4変形例に係るブッシュがラチェット爪を有する凸部に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図29】第5変形例に係るブッシュ及びシートバックフレームの一部を示す斜視図である。
【
図30】第5変形例に係るブッシュ及びシートバックフレームの一部を示す側面図である。
【
図31】第5変形例に係るブッシュが第1ブッシュと第2ブッシュとに分解された状態を示す側面図である。
【
図33】第1ブッシュ及び凸部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、
図1~
図9を参照して本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、LH及びUPは、車両用シート10の前方、左方及び上方をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0041】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション14と、乗員の背部を支持するシートバック16と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト18とを備えている。
【0042】
図2に示されるように、シートバック16は、骨格であるシートバックフレーム20と、クッション材であるシートバックパッド28と、背面板であるバックボード32と、表皮であるシートバックカバー36とを備えている。シートバックフレーム20は、本発明における「内部構造物」に相当し、シートバックパッド28は、本発明における「パッド」に相当し、シートバックカバー36は、本発明における「シートカバー」に相当する。
【0043】
シートバックフレーム20は、シートバック16の左右の側部において上下方向に延在する左右のサイドフレーム22と、左右のサイドフレーム22の上端部を左右方向に繋いだアッパフレーム24と、左右のサイドフレーム22の下端部を左右方向に繋いだロアフレーム26とを有している。左右のサイドフレーム22及びロアフレーム26は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、アッパフレーム24は、例えば曲げ加工された金属製のパイプ材によって構成されている。
【0044】
シートバックパッド28は、例えばウレタンフォーム等の発泡体によって構成されており、シートバックフレーム20に対して上方側かつ前方側から被せられている。
図3に示されるように、シートバックパッド28の背面には、後方側及び下方側が開放された開口30が形成されている。この開口30は、バックボード32によって塞がれている。
【0045】
バックボード32は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものであり、シートバック16の前後方向を厚さ方向とし、シートバック16の上下方向を長手方向とする長尺板状をなしている。このバックボード32は、例えば爪嵌合等の手段でシートバックフレーム20に取り付けられており、シートバックフレーム20に対して着脱可能とされている。このバックボード32は、シートバック16の背面の一部を形成している。
【0046】
シートバックカバー36は、シートバックパッド28に被せられたカバー本体38と、カバー本体38から延出された複数の係止紐40を有している。カバー本体38は、例えば布材、皮革又は合成皮革等からなる複数枚の表皮片が縫製されて袋状に形成されており、シートバックパッド28に対して上方側かつ前方側から被せられている。
【0047】
複数の係止紐40は、例えばカバー本体38に取り付けられた複数の紐部材の一部によって構成されている。カバー本体38の上端部における左右両側からは、2本の係止紐40が延出されており、カバー本体38の下端部における左右両側からは、2本の係止紐40が延出されている。
図3及び
図4に示されるように、複数の係止紐40は、紐巻取部材であるブッシュ42に係合すると共に、ロアフレーム26に設けられた係止ピン26Bに先端部が係止されている。この係止ピン26Bは、本発明における「係止部」に相当する。
【0048】
ブッシュ42は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものであり、
図4~
図6に示されるように、軸線方向の寸法が短い略円筒状をなしている。このブッシュ42は、シートバックカバー36と共に、本実施形態に係るシートカバー取付構造12を構成している。このブッシュ42は、その外周面を形成する円筒状の外壁部42Aと、その内周面を形成する円筒状の内壁部42Bと、外壁部42Aと内壁部42Bとの間に放射状に架け渡された複数のリブ42Cと、外壁部42Aの軸線方向一端部からブッシュ42の径方向内側へ延出され、内壁部42Bまでは至らない底壁部42Dとを有している。内壁部42Bは、外壁部42Aよりも軸線方向の寸法が短く設定されている。
【0049】
ロアフレーム26の左右方向中央部には、ブッシュ42をロアフレーム26に取り付けるための凸部26A(
図3~
図5及び
図7~
図9参照)が形成されている。凸部26Aは、例えば金属によって円筒状に形成されたものであり、溶接等の手段でロアフレーム26に固定されている。この凸部26Aは、シートバック16の前後方向を軸線方向とする姿勢で配置されており、ロアフレーム26から後方側へ突出している。この凸部26Aがブッシュ42の内壁部42Bの内側に挿入されることで、ブッシュ42がロアフレーム26に取り付けられている。このブッシュ42は、ロアフレーム26に対して着脱可能とされている。
【0050】
凸部26Aの基端部には、弾性変形可能なラチェット爪50が設けられている。このラチェット爪50は、例えば金属の板材によって形成されたものであり、凸部26Aの基端部の外周面に溶接等の手段で固定されている。このラチェット爪50は、複数のリブ42Cの一部によって構成されたラチェット歯と共にラチェット機構48を構成している。このラチェット歯は、複数のリブ42Cにおいて、ブッシュ42の径方向内側の端部によって構成されている。以下、このラチェット歯を「ラチェット歯42C」と称する。
【0051】
上記のラチェット機構48では、凸部26A回りの一方向(
図9の矢印R参照)へのブッシュ42の回転が許容されるが、凸部26A回りの他方向へのブッシュ42の回転が規制される。具体的には、ブッシュ42が上記一方向へ回転される際には、ラチェット爪50がラチェット歯42Cとの摺接によって弾性変形することでブッシュ42の回転が許容されるが、ブッシュ42が上記一方向へ回転される際には、ラチェット爪50がラチェット歯42Cに引っ掛かることでブッシュ42の回転が規制される。このラチェット機構48では、ブッシュ42が後方側へ引かれることで、ラチェット爪50に対するラチェット歯42Cの係合が解除される。これにより、上記の回転規制が解除されるように構成されている。
【0052】
このブッシュ42では、一例として2本の係止紐40の中間部をそれぞれ挿入するためのガイド溝44、46が、外壁部42Aの及び幾つかのリブ42Cに形成されている。これらのガイド溝44、46は、本発明における「溝」に相当する。1本の係止紐40はブッシュ42の径方向一側に配置され、もう1本の係止紐40はブッシュ42の径方向他側に配置される。これら2本の係止紐40においてブッシュ42に係合する部分は、互いに平行にブッシュ42の径方向に延在する。このブッシュ42において、1本の係止紐40を挿入するためのガイド溝44と、もう1本の係止紐40を挿入するためのガイド溝46とは、ブッシュ42の回転軸線に沿った深さが互いに異なっている。なお、ガイド溝44、46からの係止紐40の抜け出しを防止するため、ガイド溝44、46における係止紐40の入り口を狭くしてもよい。
【0053】
上記2本の係止紐40の先端部は、ブッシュ42の下方でロアフレーム26に設けられた係止ピン26Bに係止されている。係止ピン26Bは、例えば金属によって円筒状に形成されたものであり、溶接等の手段でロアフレーム26に固定されている。係止ピン26Bは、シートバック16の前後方向を軸線方向とする姿勢で配置されており、ロアフレーム26から後方側へ突出している。上記2本の係止紐40の先端部にはそれぞれ輪40Aが形成されており、各係止紐40の輪40Aの中に係止ピン26Bが挿入されることで、各係止紐40の先端部が係止ピン26Bに係止されている。
図5に示されるように、係止ピン26Bに係止される各係止紐40の輪40Aは、ガイド溝44、46よりもロアフレーム26側に配置される。これにより、輪40Aが係止ピン26Bから不用意に外れることを防止するようにしている。また、係止ピン26Bの先端部は、係止ピン26Bにおける先端部以外の部位よりも太くなっており、係止ピン26Bからの輪40Aの外れを防止するようにしている。
【0054】
上記構成のシートバック16が製造される際には、シートバックフレーム20にシートバックパッド28が被せられ、シートバックパッド28にシートバックカバー36のカバー本体38が被せられる。そして、シートバックカバー36の複数の係止紐40がブッシュ42のガイド溝44、46に挿入され、複数の係止紐40の先端部が係止ピン26Bに係止される。その状態でブッシュ42が一方向へ回転され、ブッシュ42の外周部に複数の係止紐40が巻き取られる。その後、バックボード32がシートバックフレーム20に取り付けられ、シートバックパッド28の背面の開口30がバックボード32によって塞がれる。
【0055】
上記構成の車両用シート10では、シートバックフレーム20に支持されたシートバックパッド28にシートバックカバー36のカバー本体38が被せられている。このカバー本体38から延出された係止紐40は、シートバックフレーム20に取り付けられたブッシュ42のブッシュ42に係合しており、ブッシュ42がシートバックフレーム20に対して一方向に回転されることにより、ブッシュ42に巻き取られる。この巻き取りによって、係止紐40の余長を吸収し、カバー本体38のカバーリングのテンションを調整することができるので、当該テンション調整が容易になる。また、カバー本体38の寸法がばらついた場合でも、カバー本体38のカバーリングのテンション調整によって、シートバック16の良好な外観を確保することができる。
【0056】
しかも、本実施形態では、カバー本体38から延出された複数の係止紐40がブッシュ42に巻き取られる。これにより、カバー本体38において複数の係止紐40が延出された各部のテンションを同時に調整することができる。
【0057】
また、本実施形態では、カバー本体38から延出された複数の係止紐40は、ブッシュ42に形成されたガイド溝44、46に挿入され、シートバックフレーム20に設けられた係止ピン26Bに先端部40Aが係止される。その状態でブッシュ42を一方向へ回転することにより、複数の係止紐40をブッシュ42に巻き取ることができる。このように、複数の係止紐40を単にブッシュ42のガイド溝44、46に挿入すればよいため、紐巻取部材であるブッシュ42に複数の係止紐40を係合させる作業が容易である。
【0058】
また、上記のガイド溝44、46は、ブッシュ42の回転軸線に沿った深さが互いに異なっているので、ブッシュ42を一方向へ回転することにより、係止紐40同士をブッシュ42の回転軸線方向にずらして巻き取ることができ、係止紐40同士が絡まることを防止できる。
【0059】
さらに、本実施形態では、シートバックフレーム20に対するブッシュ42の一方向への回転を許容すると共に、シートバックフレーム20に対するブッシュ42の他方向への回転を規制するラチェット機構48を備えている。これにより、ブッシュ42への係止紐40の巻き取り状態を保持するための特別な作業が不要になる。
【0060】
また、本実施形態では、シートバックフレーム20に設けられた弾性変形可能なラチェット爪50に、ブッシュ42に設けられたラチェット歯42Cが係合することでラチェット機構48が構成されているので、ラチェット機構48が簡単な構成とされている。しかも、このラチェット機構48では、ブッシュ42が後方側へ引かれることで、ラチェット爪50に対するラチェット歯42Cの係合が解除され、上記の回転規制が解除される。これにより、例えば係止紐40の誤組付があった場合にも、容易にする修正することができる。
【0061】
また、本実施形態では、ブッシュ42に設けられた複数のリブ42Cの一部によってラチェット歯42Cが構成されているので、複数のリブ42Cとは別にラチェット歯42Cが設けられる場合と比較して、ブッシュ42の構成を簡素化することができる。
【0062】
また、本実施形態では、ブッシュ42がシートバックフレーム20のロアフレーム26に対して着脱可能とされている。このため、車両用シート10の解体時には、ブッシュ42をロアフレーム26から取り外すことで、シートバックフレーム20に対する複数の係止紐40の係止を同時に解除することができる。しかも、この解除によってシートバックカバー36及びシートバックパッド28がシートバックフレーム20から取り外し可能となる。これにより、車両用シート10の解体が容易になる。
【0063】
なお、上記実施形態において、カバー本体38の前面(意匠面)をシートバックパッド28側に吊り込む場合、カバー本体38の前面の裏面から延出させた係止紐40を、シートバックパッド28に形成した挿通孔に挿通し、シートバックパッド28の裏面側でブッシュ42に係合させる構成となる。シートバックパッド28における上記挿通孔の形成箇所としては、例えば
図10において符号54を付した箇所が挙げられる。
【0064】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。なお、上記実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、上記実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0065】
<第1変形例>
図11及び
図12には、第1変形例に係るブッシュ42及び凸部26Aが斜視図及び側面図にて示されている。第1変形例に係るブッシュ42は、円錐台状の外周56面を有しており、当該外周面56に複数の係止紐40を巻き取る構成とされている。この第1変形例においても上記実施形態と基本的に同様の効果が得られる。しかも、この第1変形例では、係止紐40同士をブッシュ42のブッシュ42の回転軸線方向にずらして巻き取ることができ、係止紐40同士の巻取量を変えることができる。例えば寸法ばらつきが大きい係止紐40を深いガイド溝44に挿入し、寸法ばらつきが小さい係止紐40を浅いガイド溝46することにより、寸法ばらつきの差を吸収することができる。
【0066】
<第2変形例>
図13及び
図14には、第2変形例に係るブッシュ42及び凸部26Aが斜視図及び側面図にて示されている。第2変形例に係るブッシュ42は、段付き円筒状の外周面58を有し、当該外周面に複数の前記係止紐40を巻き取る。この第2変形例においても上記実施形態と基本的に同様の効果が得られる。しかも、この第2変形例では、第1変形例と同様に、係止紐40同士をブッシュ42のブッシュ42の回転軸線方向にずらして巻き取ることができ、係止紐40同士の巻取量を変えることができる。
【0067】
<第3変形例>
図15、
図16及び
図17には、第3変形例に係るブッシュ42が斜視図、側面図及び背面図にて示されている。第3変形例に係るブッシュ42は、
図18に示されるキャップ60と、
図19に示されるカバー62と、
図20及び
図21に示されるベース64とが組み合わされて構成されている。キャップ60、カバー62及びベース64は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものである。
【0068】
キャップ60は、複数段の段付きの略円柱状をなしている。カバー62は、二段の段付きの略円筒状をなしている。キャップ60は、カバー62の軸線方向一端側からカバー62の内側に同軸的に挿入されている。そして、カバー62に設けられた複数の弾性変形可能な係止爪66が、キャップ60に形成された複数の係止孔68に挿入されて各係止孔68の縁部に引っ掛かっている。これにより、キャップ60がカバー62に係止されている。カバー62には、複数の係止紐40の先端部が挿入される複数の係止溝70が形成されている。各挿入溝70に挿入された各係止紐40の先端部は、キャップ60とカバー62との間に挟まれることで、キャップ60及びカバー62に係止される。キャップ60は、係止紐40をブッシュ42に抜け止めするための蓋部材である。
【0069】
ベース64は、略円板状をなしており、キャップ60の軸線方向他端側からカバー62の内側に同軸的に挿入されている。そして、ベース64に設けられた複数の弾性変形可能な係止爪72が、カバー62に形成された複数の係止孔(図示省略)に挿入されて各係止孔の縁部に引っ掛かっている。これにより、カバー62がベース64に係止されている。
【0070】
ベース64は、カバー62とは反対側へ突出した複数の弾性変形可能な係止爪76及び複数の回止突起78を有している。複数の係止爪76は、ロアフレーム26(
図15~
図21では図示省略)に形成された複数の係止孔に挿入されて各係止孔の縁部に引っ掛かっている。複数の係止爪76の間には、キャップ60の先端部60Aが配置され、各係止爪76の弾性変形が規制される。これにより、ベース64がロアフレーム26に係止されている。複数の回止突起78は、ロアフレーム26に形成された複数の回止孔に挿入されている。これにより、ベース64がロアフレーム26に対して回り止めされている。
【0071】
カバー62の外周部には、弾性変形可能なラチェット爪82が形成されており、ベース64の外周部には、ラチェット爪82に係合するラチェット歯84が形成されている。これらのラチェット爪82及びラチェット歯84によってラチェット機構80が構成されている。このラチェット機構80では、ベース64回りの一方向へのカバー62及びキャップ60の回転が許容されるが、ベース64回りの他方向へのカバー62及びキャップ60の回転が規制されるように構成されている。そして、ベース64回りの一方向へのカバー62及びキャップ60の回転により、複数の係止紐40がカバー62の外周部に巻き取られるように構成されている。
【0072】
このように、第3変形例では、ブッシュ42の一部であるキャップ60及びカバー62と、ブッシュ42の別の一部であるベース64とがブッシュ42の回転軸線方向に組み合わされてブッシュ42が構成されている。そして、ラチェット機構80は、カバー62に設けられたラチェット爪82と、ベース64に設けられたラチェット歯84とによって構成されている。これにより、ラチェット機構80が簡単な構成とされている。
【0073】
この第3変形例では、車両用シート10が解体される際には、カバー62に対するキャップ60の係止を解除し、カバー62からキャップ60を取り外すことで、カバー62及びキャップ60に対する複数の係止紐40の係止を解除することができる。この第3変形例においても上記実施形態と基本的に同様の効果が得られる。
【0074】
<第4変形例>
図22には、第4変形例に係るブッシュ42及び凸部26Aが正面図にて示されている。
図23、
図24及び
図25には、凸部26A及び弾性部材であるぜんまいばね86が斜視図、側面図及び正面図にて示されている。第4変形例に係るブッシュ42では、外壁部42Aと内壁部42Bとの間に、複数(ここでは4つ)の係止ピン42Eが配置されている。各係止ピン42Eは、本発明における「係止部」に相当する。
【0075】
複数の係止ピン42Eは、ブッシュ42の軸線方向を軸線方向とする円柱状をなしており、底壁部42Dから一体に延出されている。複数の係止ピン42Eは、ブッシュ42の周方向に並んで配置されており、ブッシュ42の周方向に隣り合うリブ42Cの間に配置されている。外壁部42Aには、複数の係止ピン42Eと隣接する箇所に、それぞれ切込み状のガイド溝90が形成されている。外壁部42Aは、本発明における「周壁部」に相当しており、ブッシュ42の回転軸線と同心状に配置されている。ガイド溝90は、「本発明における「溝」に相当する。
【0076】
ブッシュ42の複数の係止ピン42Eには、複数の係止紐40の先端部に設けられた輪40Aがそれぞれ係止される。複数の係止紐40が複数の係止ピン42Eに係止される際には、複数の係止紐40の先端側がブッシュ42の複数のガイド溝44に挿入される。なお、係止ピン42Eの先端部を、係止ピン42Eにおける先端部以外の部位よりも太くすることにより、係止ピン42Eからの輪40Aの外れを防止するようにしてもよい。また、係止ピン42Eからの輪40Aの外れを防止するための蓋部材をブッシュ42に取り付ける構成にしてもよい。
【0077】
図23~
図25に示されるように、凸部26Aの基端部には、ぜんまいばね86が取り付けられている。このぜんまいばね86は、凸部26Aと同軸的に配置されている。このぜんまいばね86の周方向の外側端部は、弾性変形可能なラチェット爪86Aとされている。このラチェット爪86Aは、ブッシュ42に設けられた複数のリブ42Cの一部によって構成されたラチェット歯42Cに係合している。このラチェット歯42Cとラチェット爪86Aとによって、ラチェット機構88が構成されている。このラチェット機構88では、凸部26A回りの一方向へのブッシュ42の回転が許容されるが、凸部26A回りの他方向へのブッシュ42の回転には、ぜんまいばね86の弾性変形によって抗力が付与されるように構成されている。
【0078】
この第4変形例では、複数の係止紐40の先端部に形成された輪40Aがブッシュ42に設けられた複数の係止ピン42Eに引っ掛けられ、ブッシュ42の外壁部42Aに形成された複数のガイド溝90に複数の係止紐40が挿入される。その状態でブッシュ42を一方向へ回転することにより、複数の係止紐40をブッシュ42に巻き取ることができる。この第4変形例においても、上記実施形態と基本的に同様の効果が得られる。
【0079】
しかも、この第4変形例では、ぜんまいばね86を弾性変形させつつブッシュ42が他方向に回転することにより、ブッシュ42に巻き取られた係止紐40のテンションを緩めることができる。その結果、例えば係止紐40のテンションすなわちカバー本体38のカバーリングのテンションが高くなり過ぎることを防止できる。それにより、車両用シート10に着座した着座者が異物感を感じたり、係止紐40が破損したりすることを防止できる。着座者が車両から降車した際には、ぜんまいばね86の付勢力によってブッシュ42を元の位置に戻すことができる。また、例えば係止紐40の誤組付があった場合、ぜんまいばね86の幅の分だけブッシュ42を後方側へ引くことにより、ブッシュ42が他方向へ回転自在となるので、容易にする修正することができる。
【0080】
なお、上記第4変形例において、ブッシュ42の外壁部42Aに形成される複数のガイド溝90におけるブッシュ42の回転軸線に沿った深さを互いに異ならせる構成にしてもよい。それにより、係止紐40同士をブッシュ42の回転軸線方向にずらして巻き取ることが可能となり、係止紐40同士が絡まることを防止できる。また、なお、
図27及び
図28に示されるように、第4変形例に係るブッシュ42が、ラチェット爪50を有する凸部26Aに取り付けられる構成にしてもよい。
【0081】
<第5変形例>
図29及び
図30には、第5変形例に係るブッシュ42及びロアフレーム26の一部が斜視図及び側面図にて示されている。第5変形例に係るブッシュ42は、該ブッシュ42の一部である第1ブッシュ421と、該ブッシュ42の別の一部である第2ブッシュ422とが組み合わされて構成されている。このブッシュ42は、
図31に示されるように第1ブッシュ421と第2ブッシュ422とに分解可能とされている。
【0082】
第1ブッシュ421及び第2ブッシュ422は、第4変形例に係るブッシュ42と基本的に同様の構成とされており、ブッシュ42の回転軸線方向に組み合わされている。第1ブッシュ421及び第2ブッシュ422の各内壁部42Bの内側には、凸部26Aが挿入されている。第1ブッシュ421はロアフレーム26に接触して配置されており、第2ブッシュ422は、第1ブッシュ421に対してロアフレーム26とは反対側に配置されている。
【0083】
第1ブッシュ421における第2ブッシュ422側の端面には、ラチェット歯94が形成されており、第2ブッシュ422における第1ブッシュ421側の端面には、ラチェット歯94に係合する複数の弾性変形可能なラチェット爪96が形成されている。これらのラチェット歯94及びラチェット爪96によってラチェット機構92が構成されている。このラチェット機構92では、凸部26A回りの一方向への第2ブッシュ422の回転が許容されるが、凸部26A回りの他方向への第2ブッシュ422の回転が規制される。第1ブッシュ421は、第1実施形態に係るラチェット機構48と同様のラチェット機構48によって、一方向への回転を許容され、他方向への対向を規制される。
【0084】
この第5変形例では、第1ブッシュ421及び第2ブッシュ422に、それぞれ複数の係止紐40を巻き取ることができるので、狭いレイアウトでも多くの係止紐40のテンションを調整することができ、シートバック16の安定した外観を確保することができる。しかも、第1ブッシュ421に形成されたラチェット歯94と、第2ブッシュ422に形成された複数のラチェット爪96とによってラチェット機構92が構成されるため、ラチェット機構92を簡単な構成にすることができる。この第5変形例においても、上記実施形態と基本的に同様の効果が得られる。
【0085】
なお、上記実施形態及び各変形例では、シートバック16の表皮であるシートバックカバー36が本発明におけるシートカバーである場合について説明したが、これに限るものではない。例えばシートクッション14の表皮であるシートクッションカバーが本発明におけるシートカバーとされた構成にしてもよい。
【0086】
また、上記実施形態及び各変形例では、ラチェット機構48、80、88、92を備えた構成にしたが、これに限らず、ロアフレーム26に対するブッシュ42の回転を規制するための別部材を設ける構成にしてもよい。
【0087】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
10 車両用シート
12 シートカバー取付構造
20 シートバックフレーム(内部構造物)
26B 係止ピン(係止部)
28 シートバックパッド(パッド)
36 シートバックカバー(シートカバー)
38 カバー本体
40 係止紐
42 ブッシュ(紐巻取部材)
42A 外壁部(周壁部)
42C リブ(ラチェット歯)
42E 係止ピン(係止部)
44 ガイド溝(溝)
46 ガイド溝(溝)
48 ラチェット機構
50 ラチェット爪
56 円錐台状の外周面
58 段付き円筒状の外周面
80 ラチェット機構
82 ラチェット爪
84 ラチェット歯
86 ぜんまいばね(弾性部材)
86A ラチェット爪
88 ラチェット機構
90 ガイド溝(溝)
92 ラチェット機構
94 ラチェット歯
96 ラチェット爪
421 第1ブッシュ
422 第2ブッシュ