(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179323
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】リレー装置
(51)【国際特許分類】
H01H 45/14 20060101AFI20241219BHJP
H01H 50/12 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01H45/14 H
H01H50/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098073
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】設楽 修司
(57)【要約】
【課題】リレー構成を大きく変更することなく、氷結を原因とする接点不良を生じ難くすることができるリレー装置を提供する。
【解決手段】リレー装置13は、負荷4に接続されるc接点のリレー15の接点状態を切り替えることにより、負荷4に流す電流を制御する。リレー15の複数の端子20のうちの少なくとも2つの端子20は、リレー15が配置される第1空間25と温度差のある第2空間31に配置されたワイヤハーネス30に直接接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に接続されるc接点のリレーの接点状態を切り替えることにより、前記負荷に流す電流を制御するリレー装置であって、
前記リレーの複数の端子のうちの少なくとも2つの端子は、前記リレーが配置される第1空間と温度差のある第2空間に配置されたワイヤハーネスに直接接続されているリレー装置。
【請求項2】
前記ワイヤハーネスが配置される前記第2空間は、前記リレーが配置される前記第1空間よりも相対的に温度が低い、請求項1に記載のリレー装置。
【請求項3】
前記複数の端子と、前記複数の端子を実装する基板と、を収容するハウジングを備え、
前記第1空間は、前記ハウジングの内部空間であり、
前記第2空間は、前記ハウジングの外部空間である、請求項1に記載のリレー装置。
【請求項4】
前記ワイヤハーネスは、前記負荷を前記リレーに接続するのに用いる負荷接続ワイヤハーネスと、前記リレーの端子の熱引きのために専用に設けられた熱引き専用ワイヤハーネスと、を含む、請求項1に記載のリレー装置。
【請求項5】
前記複数の端子は、前記負荷に接続されるコモン端子と、通常時には前記コモン端子に接触せずリレーオン時に前記コモン端子に接触するノーマリオープン端子と、通常時には前記コモン端子に接触しリレーオン時に前記コモン端子に接触しないノーマリクローズ端子と、を含み、
少なくとも前記コモン端子及び前記ノーマリクローズ端子が前記ワイヤハーネスに直接接続されている、請求項1に記載のリレー装置。
【請求項6】
前記コモン端子、前記ノーマリオープン端子、及び前記ノーマリクローズ端子は、それぞれ異なる前記ワイヤハーネスに直接接続されている、請求項5に記載のリレー装置。
【請求項7】
前記コモン端子及び前記ノーマリクローズ端子は、1本の前記ワイヤハーネスに共通に直接接続されている、請求項5に記載のリレー装置。
【請求項8】
前記コモン端子及び前記ノーマリクローズ端子を、前記複数の端子を実装する基板において短絡することにより形成された短絡部を備え、
前記短絡部が前記共通のワイヤハーネスに接続されることにより、前記コモン端子及び前記ノーマリクローズ端子が前記共通のワイヤハーネスに直接接続されている、請求項7に記載のリレー装置。
【請求項9】
前記コモン端子及び前記ノーマリクローズ端子は、1本の前記ワイヤハーネスに共通に直接接続され、
前記ノーマリオープン端子は、前記コモン端子及び前記ノーマリクローズ端子が共通接続される前記ワイヤハーネスとは別のワイヤハーネスに直接接続されている、請求項5に記載のリレー装置。
【請求項10】
前記ワイヤハーネスが複数存在する場合、これらの少なくとも2本は、熱伝導性が異なるように構成されている、請求項1に記載のリレー装置。
【請求項11】
前記熱伝導性が異なるとは、前記ワイヤハーネスの径、長さ、素材、及び芯線編組の仕方の少なくとも1つの要素を変えることである、請求項10に記載のリレー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷への電流のオンオフを切り替えるリレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、リレー接点の氷結を抑制するリレーヒータを備えるメカニカルリレー装置が周知である。氷結は、例えば、外気温が氷点下であるときに、リレー接点が結露して接点不良を起こす現象を言う。特許文献1の場合、リレーヒータは、メカニカルリレーがオンしたときに電流が流れて発熱する。これにより、周囲の相対湿度が低くなることによって、リレー接点の結露の発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のメカニカルリレー装置は、リレー接点の結露抑制のためにリレーヒータを別途設ける必要がある。よって、メカニカルリレー装置のリレー構成を、リレーヒータを実装する仕様に設計変更する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するリレー装置は、負荷に接続されるc接点のリレーの接点状態を切り替えることにより、前記負荷に流す電流を制御する装置であって、前記リレーの複数の端子のうちの少なくとも2つの端子は、前記リレーが配置される第1空間と温度差のある第2空間に配置されたワイヤハーネスに直接接続されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、リレー装置のリレー構成を大きく変更することなく、氷結を原因とする接点不良を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るリレー装置の利用例を示すブロック図である。
【
図3】リレー装置がリレーオンしたときの回路図である。
【
図4】リレー装置の基板実装の構成を示す模式図である。
【
図5】(a)~(e)は従来品の氷結のメカニズムを示す説明図である。
【
図6】(a)~(e)は本発明の氷結のメカニズムを示す説明図である。
【
図7】第2実施形態に係るリレー装置の構成を示す回路図である。
【
図8】従来品と本発明との各温度測定結果を示すグラフである。
【
図9】第3実施形態に係るリレー装置の構成を示す回路図である。
【
図10】別例に係るリレー装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態を説明する。
(車両1)
図1に示すように、車両1は、電子キー2を無線通信によって認証する電子キーシステム3を備える。電子キーシステム3は、例えば、スマートシステム、及びワイヤレスキーシステムを含む。スマートシステムは、例えば、キー操作を伴わずに車両1からの通信に応答して電子キー2の認証を実行するシステムである。ワイヤレスキーシステムは、例えば、電子キー2からの通信によって電子キー2を認証して車両1を遠隔操作するシステムである。
【0009】
車両1は、モータ等の負荷4によって自動的に開閉が実行されるパワースライドドア5を有するパワースライドドア搭載車である。車両1は、電子キーシステム3で電子キー2の認証が成立した場合、パワースライドドア5の動作が許可又は実行される。よって、電子キー2の認証が成立する場合、電子キー2のパワースライドドア開閉ボタンを操作したり、パワースライドドア5のハンドルノブを操作したりすることにより、パワースライドドア5が開閉される。
【0010】
車両1は、例えば、電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、エンジン車、燃料電池車、水素自動車を含む。車両1は、自家用車、シェアリングカー、レンタカーを含む。車両1の走行駆動源は、例えば、ガソリンエンジン、モータ、水素エンジン、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0011】
(電子キーシステム3)
図1に示す通り、電子キーシステム3は、電子キー2を認証する認証装置7を備える。認証装置7は、例えば、車両1に設けられる。認証装置7は、例えば、電子キー2に登録されたID情報Didを照合する照合ECU(Electronic Control Unit)である。ID情報Didは、例えば、IDコードや暗号鍵を含む。
【0012】
認証装置7は、車両1に設けられた通信部8を介して、電子キー2と無線通信する。通信部8が用いる通信としては、例えば、LF(Low Frequency)帯の電波の通信、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波の通信、短距離無線通信、近距離無線通信、又は、これらの組み合わせなどが挙げられる。短距離無線通信は、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)通信が挙げられる。近距離無線通信は、例えば、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)通信、UWB(Ultra Wide Band)通信、Wi-Fi(登録商標)通信などが挙げられる。認証装置7は、通信部8を介して電子キー2と無線通信することにより、電子キー2を認証する。
【0013】
認証装置7は、ID情報Didの認証が成立した場合、車両1に設けられた機器9の動作を許可又は実行する。機器9は、前述のパワースライドドア5の他に、例えば、ヒンジドア、バックドア、空調装置、カーナビゲーション装置、パワーウィンドウ、走行駆動源などが挙げられる。
【0014】
車両1は、パワースライドドア搭載車の場合、パワースライドドア5の動作を制御するスライドドア制御装置10を備える。スライドドア制御装置10は、車両1に設けられた通信線11を介して認証装置7と接続されている。通信線11は、例えば、LIN(Local Interconnect Network)やCAN(Controller Area Network)が使用される。スライドドア制御装置10は、認証装置7の認証結果に基づいて負荷4を制御することにより、パワースライドドア5を開閉する。
【0015】
(リレー装置13)
図2に示すように、スライドドア制御装置10は、負荷4に対する電流のオンオフを切り替えるリレー装置13を備える。リレー装置13は、リレー装置13の動作を制御するリレー制御部14と、リレー制御部14によって接点状態が切り替えられるc接点のリレー15と、負荷4に流す電流の方向を変えるのに用いる第1駆動回路16及び第2駆動回路17と、リレー装置13の各種素子が実装される基板18と、を有する。リレー制御部14、リレー15、第1駆動回路16、及び第2駆動回路17は、基板18に実装されている。
【0016】
c接点のリレー15は、複数の端子20を有する。複数の端子20は、コモン端子20a、ノーマリオープン端子20b、及びノーマリクローズ端子20cを含む。本例のリレー15は、コモン端子20aが負荷4に繋がり、ノーマリオープン端子20bが第1駆動回路16を介してリレー制御部14に繋がり、ノーマリクローズ端子20cが開放されている。ノーマリオープン端子20bは、通常時にはコモン端子20aに接触せず、リレーオン時にコモン端子20aに接触する。ノーマリクローズ端子20cは、通常時にはコモン端子20aに接触するとともに、リレーオン時にコモン端子20aに接触しない。コモン端子20a、ノーマリオープン端子20b、及びノーマリクローズ端子20cは、基板18に設けられる。
【0017】
リレー15は、リレー切り替えのための磁場を発生するコイル22を有する。コイル22は、リレー制御部14に接続されることにより、リレー制御部14によって通電が制御される。
【0018】
図3に示すように、リレー制御部14は、パワースライドドア5の開閉操作時に入力するドア開閉指令Saに基づいて、コイル22の通電制御と、第1駆動回路16及び第2駆動回路17の駆動制御と、を実行する。例えば、ドア開閉指令Saとしてドア開指令を入力した場合、リレー制御部14は、コイル22をオンすることによってコモン端子20aをノーマリオープン端子20bに接続してリレー15をリレーオンするとともに、第1駆動回路16をオンして電源21の電力に基づく電流をリレー15に流す。これにより、図中の矢印Iaで示す電流経路が形成される。よって、負荷4がモータの場合、モータが正転することにより、パワースライドドア5の開動作が実行される。
【0019】
リレー制御部14は、例えば、パワースライドドア5の開動作の停止指令を入力した場合や、パワースライドドア5が全開位置に至った場合、第1駆動回路16に流す電流を停止する。これにより、負荷4が停止してパワースライドドア5の開動作が停止する。また、リレー制御部14は、負荷4を停止したとき、コモン端子20aをノーマリクローズ端子20cに接続することにより、リレー15をリレーオフの状態に戻す。
【0020】
一方、ドア開閉指令Saとしてドア閉指令を入力した場合、リレー制御部14は、コイル22をオンすることによってコモン端子20aをノーマリオープン端子20bに接続してリレー15をリレーオンするとともに、第2駆動回路17をオンして電源21の電力に基づく電流をリレー15に流す。これにより、図中の矢印Ibで示す電流経路が形成される。よって、負荷4がモータの場合、モータが逆転することにより、パワースライドドア5の閉動作が実行される。
【0021】
リレー制御部14は、例えば、パワースライドドア5が全閉位置に至った場合や、パワースライドドア5の閉動作の停止指令を入力した場合、第1駆動回路16に流す電流を停止する。これにより、負荷4が停止してパワースライドドア5の閉動作が停止する。また、リレー制御部14は、負荷4を停止したとき、コモン端子20aをノーマリクローズ端子20cに接続することにより、リレー15をリレーオフの状態に戻す。
【0022】
(リレー装置13のハウジング24)
図4に示すように、リレー装置13は、複数の端子20と、複数の端子20を実装する基板18と、を収容するハウジング24を備える。ハウジング24は、例えば、樹脂製である。ハウジング24の内部は、リレー15が配置される第1空間25を有する。第1空間25には、空気が存在する。ハウジング24は、例えば、ハウジング24の外壁に設けられたコネクタ26を介して外部と電気接続される。
【0023】
(リレー装置13のコネクタ26)
図2に示す通り、コネクタ26は、第1コネクタ端子部27a、第2コネクタ端子部27b、第3コネクタ端子部27c、及び第4コネクタ端子部27dを有する。第1コネクタ端子部27aは、コモン端子20aに接続されている。第2コネクタ端子部27bは、第2駆動回路17に接続されている。第3コネクタ端子部27cは、第1駆動回路16及びノーマリオープン端子20bの間の中点28に接続されている。第4コネクタ端子部27dは、ノーマリクローズ端子20cに接続されている。
【0024】
(リレー15の氷結)
この種のリレー15においては、例えば、周囲の温度が氷点下となった場合に、リレー15の端子20に氷が付着して接点不良を起こす「氷結」という現象が知られている。端子20に氷が付着した場合、端子20を相手端子に接触させたとき、その間に氷が介在してしまうため、接点導通が取れなくなってしまう。特に、氷の厚みが増すと、氷が直ぐに溶けないため、接点導通が取り難くなる。
【0025】
(リレー15の氷結対策の構成)
図2に示す通り、リレー15の複数の端子20の少なくとも2つの端子20は、リレー15が配置される第1空間25と温度差のある第2空間31に配置されたワイヤハーネス30に直接接続されている。本例においては、例えば、少なくともコモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cがワイヤハーネス30に直接接続されることが好ましい。なお、ワイヤハーネス30とは、例えば、単線又は複数の撚り線によって構成された電線である。なお、ワイヤハーネス30は、前述の電線の他に、例えば、配線、コード、ケーブル加工品等も含む。
【0026】
ワイヤハーネス30が配置される第2空間31は、リレー15が配置される第1空間25よりも相対的に温度が低くなっている。第1空間25は、ハウジング24の内部空間である。第1空間25は、密閉空間であるために、第2空間31よりも相対的に温度が高くなり易い。一方、第2空間31は、ハウジング24の外部空間である。第2空間31は、ハウジング24の外部であるため、第1空間25よりも温度が低くなり易い。このように、ワイヤハーネス30は、周囲環境の温度変化を受け易い場所に配置されている。
【0027】
本例の場合、ワイヤハーネス30は、負荷4をリレー15に接続するのに用いる負荷接続ワイヤハーネス32を含む。負荷接続ワイヤハーネス32は、電圧がプラス側の第1負荷接続ワイヤハーネス32aと、電圧がマイナス側の第2負荷接続ワイヤハーネス32bと、を含む。第1負荷接続ワイヤハーネス32aは、一端がコネクタ26の第1コネクタ端子部27aに接続され、他端が負荷4の+端子に接続されている。第2負荷接続ワイヤハーネス32bは、一端がコネクタ26の第2コネクタ端子部27bに接続され、他端が負荷4の-端子に接続されている。
【0028】
ワイヤハーネス30は、端子20の熱引きのために専用に設けられた熱引き専用ワイヤハーネス34を含む。熱引き専用ワイヤハーネス34は、ノーマリオープン端子20bに接続される第1熱引き専用ワイヤハーネス34aと、ノーマリクローズ端子20cに接続される第2熱引き専用ワイヤハーネス34bと、を含む。第1熱引き専用ワイヤハーネス34aは、一端が第3コネクタ端子部27cに接続され、他端が開放されている。第2熱引き専用ワイヤハーネス34bは、一端が第4コネクタ端子部27dに接続され、他端が開放されている。このため、リレー15がリレーオフのとき、リレー制御部14の電気回路と負荷4の電気回路とが電気的に分離される。熱引き専用ワイヤハーネス34において開放とは、何も接続されていない状態をいう。
【0029】
本例の場合、リレー装置13は、コモン端子20aが第1負荷接続ワイヤハーネス32aに接続され、ノーマリオープン端子20bが第1熱引き専用ワイヤハーネス34aに接続され、ノーマリクローズ端子20cが第2熱引き専用ワイヤハーネス34bに接続されている。このようにして、コモン端子20a、ノーマリオープン端子20b、及びノーマリクローズ端子20cは、それぞれ異なるワイヤハーネス30に直接接続されている。
【0030】
次に、第1実施形態のリレー装置13の作用について説明する。
(従来品36)
図5(a)に示すように、従来品36は、コモン端子20aがワイヤハーネス30に接続され、ノーマリオープン端子20bが基板18のパターンによって駆動電源(図示略)に接続され、ノーマリクローズ端子20cがオープン(接続無し)となっている。コモン端子20aがノーマリクローズ端子20cに接続される場合、リレー装置13がリレーオフの状態をとる。ハウジング24の内部の温度が安定している場合、ハウジング24の内部に存在する空気には、水分が水蒸気として含まれている。
【0031】
図5(b)に示すように、リレー装置13の使用環境が氷点下となった場合、ハウジング24の内部の水蒸気が水分となって、ワイヤハーネス30の熱引き効果によって冷え易いコモン端子20aに霜となって集中して付着する。すなわち、周囲環境が氷点下となった場合、リレー15の3つの端子20のうちのコモン端子20aに霜が多く付着する。
【0032】
図5(c)に示すように、コモン端子20aがノーマリオープン端子20bに接続された場合、リレー装置13がリレーオンの状態に切り替わる。コモン端子20aがノーマリオープン端子20bに接触して通電すると、コモン端子20a及びノーマリオープン端子20bの接点部37が発熱する。このとき、接点部37に付着する多めの霜が大きな水滴になる。
【0033】
図5(d)に示すように、コモン端子20aが元のようにノーマリクローズ端子20cに接触すると、リレー装置13がリレーオフの状態となる。このとき、コモン端子20aには、大きな水滴が付着した状態となっている。ところで、ノーマリオープン端子20bの熱はゆっくり逃げるのに対し、ワイヤハーネス30に接続されているコモン端子20aの熱は急速に逃げる。よって、周囲環境が氷点下のとき、コモン端子20aに付着した大きな水滴がワイヤハーネス30の熱引き効果によって凍る状態、いわゆる「氷結」が発生する。
【0034】
そして、
図5(e)に示すように、
図5(b)から
図5(d)の状態が繰り返されると、コモン端子20aに付着する氷の厚みが増す。よって、コモン端子20aに厚い氷が付着するため、これが接点不良の原因となる。
【0035】
(本例の氷結対策)
図6(a)に示すように、本例の場合、コモン端子20a、ノーマリオープン端子20b、及びノーマリクローズ端子20cの全てがワイヤハーネス30に各々接続されている。すなわち、コモン端子20a、ノーマリオープン端子20b、及びノーマリクローズ端子20cの熱引き効果が互いに同等である。
【0036】
図6(b)に示すように、リレー装置13の使用環境が氷点下となった場合、ハウジング24の内部の水蒸気が水分となって、コモン端子20a、ノーマリオープン端子20b、及びノーマリクローズ端子20cに各々付着する。すなわち、水分の付着は、リレー装置13の端子20の各々に分散される。これは、コモン端子20a、ノーマリオープン端子20b、及びノーマリクローズ端子20cの全てがワイヤハーネス30に接続されているので、コモン端子20a、ノーマリオープン端子20b、及びノーマリクローズ端子20cの熱引き効果が等しいからである。
【0037】
図6(c)に示すように、コモン端子20aがノーマリオープン端子20bに接続されて接点部37が発熱した場合、接点部37の霜は、小さな水滴になる。すなわち、コモン端子20a及びノーマリオープン端子20bに付着する霜が小さいため、接点部37に発生する水滴も小さくなる。
【0038】
図6(d)に示すように、コモン端子20aがノーマリクローズ端子20cに接触したリレーオフの場合に、ワイヤハーネス30の熱引き効果によって、コモン端子20aに付着した水分が氷結したとする。しかし、本例の場合、コモン端子20aに付着する霜が小さいので、コモン端子20aに生じる氷結も小さくなる。なお、付着する氷結が小さいという現象は、ノーマリオープン端子20b及びノーマリクローズ端子20cでも同様である。
【0039】
このため、
図6(e)に示すように、
図6(b)から
図6(d)の状態が繰り返されたとしても、各端子20に発生する氷の厚みが薄いため、接点不良が生じ難い。よって、本例の場合、使用環境が氷点下となっても、リレー15の接点導通が確保される。
【0040】
(第1実施形態の効果)
上記実施形態の構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1.1)リレー装置13は、負荷4に接続されるc接点のリレー15の接点状態を切り替えることにより、負荷4に流す電流を制御する。リレー15の複数の端子20のうちの少なくとも2つの端子20は、リレー15が配置される第1空間25と温度差のある第2空間31に配置されたワイヤハーネス30に直接接続されている。
【0041】
本構成によれば、リレー15の複数の端子20のうちの少なくとも2つが他の電子回路(例えば、他のリレー部材など)を介在することなく、ワイヤハーネス30に直接接続される。そのため、リレー15の複数の端子20において、熱引き効果がより効率的に得られる。これにより、使用環境が氷点下になった場合に、ワイヤハーネス30に直接接続された各端子20の着霜が抑制される。このため、ワイヤハーネス30に直接接続された各端子20が氷結しても、これら端子20に付着する氷が小さくなる。従って、リレー15のオンオフが繰り返されても、これら端子20に生じる氷の厚みが薄いため、接点不良を生じ難くすることが可能となる。このように、本構成の場合、単にワイヤハーネス30の数を増やして氷結による接点不良を抑制するので、リレー構成を大きく変更することがない。よって、リレー構成を変更することなく、氷結を原因とする接点不良を生じ難くできる。
【0042】
(1.2)ワイヤハーネス30が配置される第2空間31は、リレー15が配置される第1空間25よりも相対的に温度が低い。この構成によれば、リレー15が配置される第1空間25とワイヤハーネス30が配置される第2空間31とに温度差があると、周囲温度が低下した場合に、その温度差によって端子20に霜が付着し易くなる。本例の場合、このような前提を有するリレー装置13であっても、氷結を原因とする接点不良を生じ難くできる。
【0043】
(1.3)リレー装置13は、複数の端子20と、複数の端子20を実装する基板18と、を収容するハウジング24を備える。第1空間25は、ハウジング24の内部空間である。第2空間31は、ハウジング24の外部空間である。この構成によれば、ハウジング24の内部の空気には水分の水蒸気が含まれているので、周囲環境が氷点下になると、ハウジング24の内外の温度差によって、ハウジング24の内部の空気に含まれる水蒸気が霜となり、端子20に付着する可能性が高い。本例の場合、このような着霜が生じるリレー装置13であっても、氷結を原因とする接点不良を生じ難くできる。
【0044】
(1.4)ワイヤハーネス30は、負荷4をリレー15に接続するのに用いる負荷接続ワイヤハーネス32と、リレー15の端子20の熱引きのために専用に設けられた熱引き専用ワイヤハーネス34と、を含む。この構成によれば、リレー装置13に設けるワイヤハーネス30の組み合わせの自由度が増す。
【0045】
(1.5)複数の端子20は、負荷4に接続されるコモン端子20aと、通常時にはコモン端子20aに接触せずリレーオン時にコモン端子20aに接触するノーマリオープン端子20bと、通常時にはコモン端子20aに接触しリレーオン時にコモン端子20aに接触しないノーマリクローズ端子20cと、を含む。リレー装置13は、少なくともコモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cがワイヤハーネス30に直接接続されている。この構成によれば、例えば、コモン端子20aがノーマリクローズ端子20cに接触する状態がリレーオフの状態である場合には、通電の発熱がないため、これら端子20に温度低下に伴う着霜が生じ易い。本構成の場合、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cに、氷結を原因とする接点不良の対策が施されるので、この点で非常に効果が高いと言える。
【0046】
(1.6)コモン端子20a、ノーマリオープン端子20b、及びノーマリクローズ端子20cは、それぞれ異なるワイヤハーネス30に直接接続されている。この構成によれば、コモン端子20a、ノーマリオープン端子20b、及びノーマリクローズ端子20cの全てが同等の熱引き効果を有するので、霜が分散して各端子20に付着する。よって、氷結を原因とする接点不良の抑制に一層寄与する。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態のリレー構成を変更した実施例である。よって、第1実施形態と同一部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0048】
(リレー15の氷結対策の構成)
図7に示すように、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cは、共通のワイヤハーネス30に直接接続されている。本例の場合、リレー装置13は、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cを、複数の端子20を実装する基板18において短絡することにより形成された短絡部40を備える。そして、短絡部40が共通のワイヤハーネス30に接続されることにより、コモン端子20a及び前記ノーマリクローズ端子20cが1本のワイヤハーネス30に共通に直接接続されている。コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cが直接接続される共通のワイヤハーネス30は、第1負荷接続ワイヤハーネス32aである。
【0049】
(第2実施形態の作用)
図8は、本製品と従来品36との温度測定結果を示す。ここでは、コモン端子20a及びノーマリオープン端子20bの温度差を比較する。同図においては、本製品のコモン端子20aの温度波形を「S1」で示し、本例品のノーマリオープン端子20bの温度波形を「S2」で示す。また、従来品36のコモン端子20aの温度波形を「S3」で示し、従来品36のノーマリオープン端子20bの温度波形を「S4」で示す。
【0050】
本例の場合、コモン端子20aが「0℃」となったときを氷結の発生タイミングとし、このときのコモン端子20aとノーマリオープン端子20bとの温度差を検証する。本製品においてコモン端子20aの温度が「0℃」となったときのコモン端子20aとノーマリオープン端子20bとの温度差は、図中の「Ta」である。また、従来品36においてコモン端子20aの温度が「0℃」となったときのコモン端子20aとノーマリオープン端子20bとの温度差は、図中の「Tb」である。
【0051】
このように、「Ta」と「Tb」とを比較して分かる通り、従来品36よりも本製品の方が、温度差が低く抑えられている(Ta<Tb)。よって、このことからも、氷結を原因とする接点不良を生じ難くできることが分かる。
【0052】
(第2実施形態の効果)
上記実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0053】
(2.1)コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cは、1本のワイヤハーネス30に共通に直接接続されている。この構成によれば、1本のワイヤハーネス30を複数の端子20で共用するので、氷結を原因とする接点不良の抑制対策を効率的に行うことができる。
【0054】
(2.2)リレー装置13は、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cを、複数の端子20を実装する基板18において短絡することにより形成された短絡部40を備える。リレー装置13は、短絡部40が共通のワイヤハーネス30に接続されることにより、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cが共通のワイヤハーネス30に直接接続されている。この構成によれば、基板18上で端子20を短絡するという簡単な構成によって、1本のワイヤハーネス30を複数の端子20で共用できる。
【0055】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態も、第1実施形態及び第2実施形態に対して異なる部分についてのみ詳述する。
【0056】
(リレー15の氷結対策)
図9に示すように、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cは、共通のワイヤハーネス30に直接接続されている。本例の場合、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cは、これらを基板18上で短絡することにより構成された短絡部40が共通のワイヤハーネス30に接続されている。このように、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cは、第2実施形態と同様の構造によって、第1負荷接続ワイヤハーネス32aに直接接続されている。
【0057】
また、ノーマリオープン端子20bは、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cが共通接続されるワイヤハーネス30とは別のワイヤハーネス30に直接接続されている。本例の場合、ノーマリオープン端子20bが接続されるワイヤハーネス30は、第1熱引き専用ワイヤハーネス34aである。
【0058】
この構成の場合、第1負荷接続ワイヤハーネス32aに直接接続されたコモン端子20aとノーマリクローズ端子20cとだけでなく、第1熱引き専用ワイヤハーネス34aに直接接続されたノーマリオープン端子20bにも、高い熱引き効果を持たせることが可能となる。このため、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cの端子対と、ノーマリオープン端子20bとの間に、温度差を生じ難くすることが可能となるので、これらに霜を分散して付着させることが可能となる。よって、氷結を原因とする接点不良の抑制に一層寄与する。
【0059】
(熱伝導性の異なるワイヤハーネス30の利用)
図9に示す通り、ワイヤハーネス30が複数存在する場合、これらの少なくとも2本は、熱伝導性が異なるように構成されている。本例の場合、2つの端子20が直接接続されたワイヤハーネス30の熱伝導率と、1つの端子20のみが接続されたワイヤハーネス30の熱伝導率と、を異ならせている。具体的には、第1負荷接続ワイヤハーネス32aと第1熱引き専用ワイヤハーネス34aとの熱伝導性が異なるように構成されている。熱伝導性が異なるとは、例えば、ワイヤハーネス30の径、長さ、素材、芯線の編み方の少なくとも1つの要素を変えることである。
【0060】
ところで、2つの端子20が共通のワイヤハーネス30に接続される場合、1本のワイヤハーネス30によって、2つの端子20を熱引きしなくてはならない。そこで、2つの端子20が接続されるワイヤハーネス30については、熱伝導性を高めるために、例えば、線径を大きくしたり、線長を長くしたりする。これにより、1本のワイヤハーネス30で2つの端子20を熱引きする場合であっても、十分な熱引き効果を持たせることが可能となる。よって、氷結を原因とする接点不良の抑制に一層寄与する。
【0061】
(第3実施形態の効果)
上記実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0062】
(3.1)コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cは、共通のワイヤハーネス30に直接接続されている。ノーマリオープン端子20bは、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cが共通接続されるワイヤハーネス30とは別のワイヤハーネス30に直接接続されている。この構成によれば、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cだけでなく、ノーマリオープン端子20bもワイヤハーネス30に直接接続されるので、氷結を原因とする接点不良の抑制に一層寄与する。
【0063】
(3.2)ワイヤハーネス30が複数存在する場合、これらの少なくとも2本は、熱伝導性が異なるように構成されている。この構成によれば、複数の端子20を1本のワイヤハーネス30で熱引きする場合に、このワイヤハーネス30と別のワイヤハーネス30との熱伝導性を変えることにより、これらワイヤハーネス30の熱引き効果を同等とすることが可能となる。よって、氷結を原因とする接点不良の抑制に一層寄与する。
【0064】
(3.3)熱伝導性が異なるとは、ワイヤハーネス30の径、長さ、素材、及び芯線編組の仕方の少なくとも1つの要素を変えることである。この構成によれば、ワイヤハーネス30の径、ワイヤハーネス30の長さ、ワイヤハーネス30の素材、及び芯線編組の仕方の中から適切な要素を選んで、ワイヤハーネス30の熱伝導性を設定することができる。
【0065】
(他の実施形態)
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0066】
・
図10に示すように、リレー装置13は、負荷4に対して一方向にのみ電流を流す装置としてもよい。この場合、負荷4のマイナス側が接続される第2コネクタ端子部27bがノーマリクローズ端子20cに接続され、ノーマリオープン端子20bに繋がる第3コネクタ端子部27cがワイヤハーネス30(電源ワイヤハーネス42)を介して電源21に接続されている。リレーオンされてコモン端子20aがノーマリオープン端子20bに接続された場合、電源21から電源ワイヤハーネス42を介してリレー15に供給される電流が負荷4に流れる。このリレー装置13においても、氷結を原因とする接点不良を抑制できる。
【0067】
・各実施形態において、負荷4は、モータに限定されず、例えばシリンダなどの他の部材を用いてもよい。
・各実施形態において、第1空間25は、ハウジング24の内部空間に限らず、ワイヤハーネス30が配置される第2空間31よりも相対的に温度が高くなる空間であればよい。
【0068】
・各実施形態において、第2空間31は、ハウジング24の外部空間に限らず、リレー15が配置される第1空間25よりも相対的に温度が低くなる空間であればよい。
・各実施形態において、ワイヤハーネス30は、基板18に直接実装される構成でもよい。
【0069】
・各実施形態において、ワイヤハーネス30は、熱引き専用ワイヤハーネス34を備えていなくてもよい。すなわち、ワイヤハーネス30は、負荷4の回路の役割を担う部品のみで構成されてもよい。
【0070】
・第2実施形態及び第3実施形態において、基板18に短絡部40を設けて、1本のワイヤハーネス30を複数の端子20で共用する構成に限定されない。例えば、コモン端子20a及びノーマリクローズ端子20cを第1コネクタ端子部27aに接続することにより、1本のワイヤハーネス30を共通化してもよい。
【0071】
・第1実施形態及び第2実施形態において、少なくとも2本のワイヤハーネス30の熱伝導性を異ならせてもよい。
・各実施形態において、リレー15の端子20は、ワイヤハーネス30に全て直接接続されてもよいし、一部のみが直接接続されてもよい。また、ワイヤハーネス30に直接接続される端子20の組み合わせは、実施例以外の他の組み合わせに変更してもよい。
【0072】
・各実施形態において、ハウジング24は、樹脂製ではなく金属製としてもよい。
・各実施形態において、リレー装置13は、パワースライドドア5の開閉装置に使用されることに限らず、例えば、パワーウィンドウの開閉装置に使用されてもよい。
【0073】
・各実施形態において、リレー装置13は、車両1に限らず他の物品に使用されてもよい。
・本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0074】
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0075】
4…負荷、13…リレー装置、15…リレー、18…基板、20…端子、20a…コモン端子、20b…ノーマリオープン端子、20c…ノーマリクローズ端子、24…ハウジング、25…第1空間、30…ワイヤハーネス、31…第2空間、32…負荷接続ワイヤハーネス、34…熱引き専用ワイヤハーネス、40…短絡部。