(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179324
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】建築物の軒先構造および屋根の改修方法
(51)【国際特許分類】
E04D 3/40 20060101AFI20241219BHJP
E04D 3/00 20060101ALI20241219BHJP
E04D 13/15 20060101ALI20241219BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
E04D3/40 H
E04D3/00 V
E04D13/15 G
E04G23/02 G
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098074
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中松 保二
(72)【発明者】
【氏名】竹山 忠司
【テーマコード(参考)】
2E108
2E176
【Fターム(参考)】
2E108AZ08
2E108BN01
2E108CC01
2E108CC15
2E108CV08
2E108DF14
2E108FG02
2E108GG20
2E108MM01
2E176AA23
2E176BB25
2E176BB27
(57)【要約】
【課題】軒先を改修できる、軒先カバー、建築物の軒先構造、および建築物の屋根の改修方法を提供する。
【解決手段】軒先カバー10は、建築物1の屋根100における軒先水切り6の少なくとも一部を覆うカバー本体12と、カバー本体12に設けられて建築物1の野地板4と屋根材5との間に配置される差し込み部11と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋根の軒先において軒先水切りを覆う軒先カバーであって、
前記軒先水切りの少なくとも一部を覆うカバー本体と、
前記カバー本体に設けられて、前記建築物の野地板と屋根材との間に配置される差し込み部と、を備える、
軒先カバー。
【請求項2】
前記屋根の軒先横架材に固定される固定部と、
前記屋根の前記軒先水切りの裏面を覆う裏カバー部と、
前記屋根の前記野地板の下面に沿うように設けられる連結部と、をさらに備える、
請求項1に記載の軒先カバー。
【請求項3】
前記差し込み部は、前記カバー本体の上端から突出するように設けられ、
前記裏カバー部は、前記カバー本体の下端から延び、
前記連結部は、前記裏カバー部の上端に繋がり、
前記固定部は、前記連結部の内端から下方に延びる、
請求項2に記載の軒先カバー。
【請求項4】
建築物の軒先構造であって、
野地板と、屋根材と、軒先に設けられる軒先水切りと、請求項1~3のいずれか一項に記載の軒先カバーと、を備える、
建築物の軒先構造。
【請求項5】
前記軒先カバーの前記差し込み部は、固定部材によって前記野地板に固定される、
請求項4に記載の建築物の軒先構造。
【請求項6】
前記野地板と前記屋根材との間に敷かれる防水シートをさらに備え、
前記防水シートは、前記差し込み部の上に重なるように敷かれる、
請求項4に記載の建築物の軒先構造。
【請求項7】
シール材をさらに備え、
前記シール材は、前記カバー本体と前記屋根材の下面との境界を封止するように設けられる
請求項4に記載の建築物の軒先構造。
【請求項8】
軒先カバーによって屋根を改修する屋根の改修方法であって、
前記屋根は、野地板と、屋根材と、軒先に設けられる軒先水切りと、を備えるものであり、
前記軒先カバーは、前記軒先水切りの少なくとも一部を覆うカバー本体と、前記カバー本体に設けられて前記野地板と前記屋根材との間に配置される差し込み部と、を備え、
前記軒先カバーの前記差し込み部を前記野地板と前記屋根材との間に差し込み、前記カバー本体によって前記軒先水切りを覆う差し込み工程を含む、
屋根の改修方法。
【請求項9】
固定部材によって前記差し込み部を前記野地板に固定する固定工程をさらに含み、
前記固定工程において、前記屋根材および前記差し込み部を貫通し、さらに前記野地板に突き刺さるように前記固定部材を打つ、
請求項8に記載の屋根の改修方法。
【請求項10】
前記屋根は、前記野地板と前記屋根材との間に敷かれる防水シートをさらに備え、
前記差し込み工程において、前記防水シートと前記野地板との間に前記差し込み部を差し込む、
請求項8に記載の屋根の改修方法。
【請求項11】
前記差し込み工程において、前記野地板と前記屋根材との間を開ける半開道具によって前記野地板と前記屋根材との間に隙間を設け、前記軒先カバーの前記差し込み部を差し込む、
請求項8~10のいずれか一項に記載の屋根の改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軒先カバー、建築物の軒先構造および屋根の改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の軒先には、外壁や軒天井等への雨水の浸入を防止する軒先水切りが設けられる。軒先水切りは、雨水に晒されるため、他の建材に比べて劣化し易い。劣化した軒先水切りを改修するために、軒先水切りを軒先カバーによって覆う軒先構造が知られている。
【0003】
特許文献1に示される例では、既設軒先水切りを覆う軒先カバー(特許文献1では新設軒先水切り)は、屋根材(特許文献1では既設屋根瓦)と接触する上端部を有する。上端部は、水下側へ折り曲げた折曲片を有する。折曲片は、既設の屋根材の上に新設される新設屋根瓦の軒先部に係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の軒先構造では、特許文献1のように、既設の屋根材とは別の新たな屋根材が設けられる。この場合、軒先水切りの改修において、新たな屋根材を施工する必要がある。軒先だけを改修できる技術は知られていない。軒先カバーによる軒先の改修に関して、軒先カバー、建築物の軒先構造および屋根の改修方法に改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決する軒先カバーは、建築物の屋根の軒先において軒先水切りを覆う軒先カバーであって、前記軒先水切りの少なくとも一部を覆うカバー本体と、前記カバー本体に設けられて、前記建築物の野地板と屋根材との間に配置される差し込み部と、を備える。この構成によれば、野地板と屋根材との間に差し込み部を配置できる。このため、新たな屋根材を必要とせず、軒先を改修できる。
【0007】
(2)上記(1)の軒先カバーにおいて、前記屋根の軒先横架材に固定される固定部と、前記屋根の前記軒先水切りの裏面を覆う裏カバー部と、前記屋根の前記野地板の下面に沿うように設けられる連結部と、をさらに備える。この構成によれば、軒先カバーの連結部が屋根の野地板の下面に沿うように設けられるため、改修後の軒先の外観を向上できる。
【0008】
(3)上記(2)の軒先カバーにおいて、前記差し込み部は、前記カバー本体の上端から突出するように設けられ、前記裏カバー部は、前記カバー本体の下端から延び、前記連結部は、前記裏カバー部の上端に繋がり、前記固定部は、前記連結部の内端から下方に延びる。この構成によれば、差し込み部、カバー本体、裏カバー部、連結部、および、固定部が、分岐部分のない連続体として構成される。このため、改修後の軒先の外観を向上できる。
【0009】
(4)上記課題を解決する建築物の軒先構造は、野地板と、屋根材と、軒先に設けられる軒先水切りと、上記(1)~上記(3)のいずれか1つに記載の軒先カバーと、を備える。この構成によれば、軒先カバーは、軒先カバーの差し込み部を野地板と屋根材との間に配置することによって軒先水切りを覆うことができる。
【0010】
(5)上記(4)の建築物の軒先構造において、前記軒先カバーの前記差し込み部は、固定部材によって前記野地板に固定される。この構成によれば、軒先における軒先カバーの軒先の改修の作業効率を向上させることができる。
【0011】
(6)上記(4)の建築物の軒先構造において、前記野地板と前記屋根材との間に敷かれる防水シートをさらに備え、前記防水シートは、前記差し込み部の上に重なるように敷かれる。この構成によれば、差し込み部の上に防水シートが重なるため、屋根の内部に雨水などが侵入し難くなる。このため、軒先における水の侵入を抑制できる。
【0012】
(7)上記(4)の建築物の軒先構造において、シール材をさらに備え、前記シール材は、前記カバー本体と前記屋根材の下面との境界を封止するように設けられる。この構成によれば、カバー本体と屋根材の下面との境界が、シール材によって封止される。これにより、屋根の内部に雨水などが侵入し難くなる。このため、軒先における水の侵入を抑制できる。
【0013】
(8)上記課題を解決する屋根の改修方法は、軒先カバーによって屋根を改修する屋根の改修方法であって、前記屋根は、野地板と、屋根材と、軒先に設けられる軒先水切りと、を備えるものであり、前記軒先カバーは、前記軒先水切りの少なくとも一部を覆うカバー本体と、前記カバー本体に設けられて前記野地板と前記屋根材との間に配置される差し込み部と、を備え、前記軒先カバーの前記差し込み部を前記野地板と前記屋根材との間に差し込み、前記カバー本体によって前記軒先水切りを覆う差し込み工程を含む。この構成によれば、軒先カバーの差し込み部を野地板と屋根材との間に差し込むことによって軒先水切りを覆うことができる。
【0014】
(9)上記(8)の屋根の改修方法において、固定部材によって前記差し込み部を前記野地板に固定する固定工程をさらに含み、前記固定工程において、前記屋根材および前記差し込み部を貫通し、さらに前記野地板に突き刺さるように前記固定部材を打つ。この構成によれば、固定部材は、屋根材、差し込み部および野地板を互いに結合させる。このため、軒先における軒先カバーの固定状態を向上させることができる。
【0015】
(10)上記(8)の屋根の改修方法において、前記屋根は、前記野地板と前記屋根材との間に敷かれる防水シートをさらに備え、前記差し込み工程において、前記防水シートと前記野地板との間に前記差し込み部を差し込む。この構成によれば、差し込み部の上に防水シートが重ねられるため、屋根の内部に雨水などが侵入し難くなる。このため、水の侵入を抑制するように軒先の改修ができる。
【0016】
(11)上記(8)~上記(10)のいずれか1つに記載の屋根の改修方法において、前記差し込み工程において、前記野地板と前記屋根材との間を開ける半開道具によって前記野地板と前記屋根材との間に隙間を設け、前記軒先カバーの前記差し込み部を差し込む。この構成によれば、野地板と屋根材との間に隙間を設けるため、軒先カバーの差し込み部を野地板と屋根材との間に差し込み易くなる。これによって、軒先の改修の作業効率を向上できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の軒先カバーによれば、屋根を改修し易い軒先カバーを提供できる。建築物の軒先構造によれば、軒先カバーによって水の侵入を抑制できる軒先構造を提供できる。屋根の改修方法によれば、屋根を改修し易い改修方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】第1実施形態について、
図1の2-2線に沿う屋根の断面図である。
【
図4】改修する前の屋根を示す、
図1の2-2線に沿う改修前の屋根の断面図である。
【
図5】屋根の改修方法の差し込み工程を示す、
図1の2-2線に沿う屋根の断面図である。
【
図6】屋根の改修方法の差し込み工程を示す、
図1の2-2線に沿う屋根の断面図である。
【
図7】屋根の改修方法の固定工程を示す、
図1の2-2線に沿う屋根の断面図である。
【
図8】第2実施形態について、
図1の2-2線に沿う屋根の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1~
図7を参照して、建築物1の軒先構造2、および軒先構造2において軒先水切り6を覆う軒先カバー10について説明する。
【0020】
図1および
図2に示されるように、建築物1の屋根100において、建築物1の軒先構造2は、軒先横架材3、野地板4と、屋根材5と、軒先に設けられる軒先水切り6と、防水シート7と、軒先カバー10と、を備える。軒先横架材3は、鼻隠しとも呼ばれる。建築物1として、戸建ての住宅、集合住宅、および、公共施設が挙げられる。第1実施形態における建築物1は、戸建ての住宅である。
【0021】
<軒先構造>
図2に示されるように、軒先構造2において、野地板4の端面4Cには、端面4Cを覆うようにして軒先水切り6が設けられている。軒先水切り6は、下板部6Aと取付部6Bとを有する。下板部6Aは、野地板4の下面4Aに設けられ、軒先に沿って水平方向に延びる。また、下面4Aには、下板部6Aを介して軒先横架材3が設けられる。軒先横架材3は、下板部6Aに接合されており、軒先に沿って延びている(
図1参照)。取付部6Bは、野地板4の上面4Bに設けられ、軒先に沿って水平方向に延びる。
【0022】
軒先カバー10は、軒先水切り6を覆うように軒先に設けられる。軒先カバー10は、軒先水切り6の少なくとも一部を覆うカバー本体12と、カバー本体12に設けられて、野地板4と屋根材5との間に配置される差し込み部11と、を備える。差し込み部11は野地板4に沿って延び、取付部6Bの上に重なるように配置される。防水シート7は、野地板4と屋根材5との間に敷かれる。また、本実施形態において、防水シート7は差し込み部11の上に重なるように敷かれる。屋根材5は、取付部6B、差し込み部11、および防水シート7を介して野地板4の上に設けられる。屋根材5として、瓦、スレート、および金属製屋根材が挙げられる。本実施形態における屋根材5は、スレート5Aである。
【0023】
なお、屋根材5は波状の瓦でもよい。屋根材5が波状の瓦の場合、固定部材20(後述参照)は、波状の瓦の山の部分に打たれてもよいし、波状の瓦の谷の部分に打たれてもよい。好ましくは、波状の瓦の谷の部分に打たれる。
【0024】
軒先カバー10の差し込み部11は、固定部材20によって野地板4に固定される。固定部材20には、ビスおよびボルトが挙げられる。本実施形態における固定部材20は、ビス20Aである。ビス20Aは、スレート5A、取付部6B、差し込み部11、および防水シート7を貫通して、野地板4に打ち付けられる。また、軒先カバー10の固定部13(後述参照)は、下部固定部材21によって、軒先横架材3に打ち付けられる。下部固定部材21は、固定部材20と同じでもよいし、異なる部材でもよい。一例として、下部固定部材21は、ビス21Aである。
【0025】
<軒先カバー>
図2および
図3を参照して、軒先カバー10の一例を説明する。軒先カバー10は、差し込み部11と、カバー本体12と、軒先横架材3に固定される固定部13と、軒先水切り6の裏面6Cを覆う裏カバー部14と、野地板4の下面4Aに沿うように設けられる連結部15と、を備える。軒先カバー10は、樹脂によって形成されてもよいし、金属板によって形成されてもよい。軒先カバー10が樹脂によって形成される場合、樹脂の材料として、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンが挙げられる。本実施形態において、軒先カバー10は、金属板を折り曲げて形成される。好ましくは、金属板は鉄板である。
【0026】
軒先カバー10の厚みは、0.3mm以上0.9mm以下の範囲に収まるように形成される。軒先カバー10の全体の厚さは、均一の厚さでもよいし、部分的に薄く、あるいは、部分的に厚くしてもよい。本実施形態の軒先カバー10の厚さは、0.4mmに形成される。別の軒先カバー10の例では、カバー本体12、裏カバー部14、および連結部15の厚さは、0.3mmになるように形成され、差し込み部11および固定部13の厚さは、0.8mmになるように形成される。また、別の例では、カバー本体12および裏カバー部14の厚さは、0.5mmになるように形成され、差し込み部11、連結部15、および固定部13の厚さは0.3mmになるように形成される。
【0027】
軒先カバー10は、弾性を有するように形成される。これにより、軒先カバー10の取り付けのときに、軒先カバー10を容易に開くことができる。具体的には、軒先カバー10が軒先水切り6の少なくとも一部を覆うように軒先カバー10を野地板4に取り付けるとき、軒先カバー10の差し込み部11と連結部15との間の開口部16を容易に開くことができる。このため、軒先カバー10の開口部16に軒先水切り6を容易に通すことができる。こうして、軒先カバー10の内側に軒先水切り6を位置させる軒先カバー10の取り付け作業が行い易くなる。
【0028】
図3に示されるように、差し込み部11は、カバー本体12の上端12Aから突出するように設けられる。カバー本体12は、軒先水切り6の表面6Dに沿って延び、表面6Dを覆う(
図2参照)。また、裏カバー部14は、カバー本体12の下端12Bから延びる。裏カバー部14は、軒先水切り6の裏面6Cに沿って延びる(
図2参照)。裏カバー部14の上端14Aは、軒先水切り6の下板部6Aと当接するように構成される(
図2参照)。連結部15は、裏カバー部14の上端14Aに繋がる。連結部15は、下板部6Aに沿って延びる(
図2参照)。連結部15の内端15Aは、軒先横架材3と接触する(
図2参照)。固定部13は、連結部15の内端15Aから下方に延びる。固定部13は、軒先横架材3に沿うように構成される(
図2参照)。
【0029】
<屋根の改修方法>
図4~
図7を参照して、軒先カバー10によって屋根100を改修する屋根の改修方法を説明する。屋根の改修方法は、屋根100の屋根材5を改修するまたは改修しないに関わらない改修方法である。例えば、本実施形態の屋根の改修方法は、重ね葺き、あるいは、葺き替えを含んだ改修においても行うことができるし、屋根100のスレート5Aを改修せずとも行うことができる。本実施形態において、屋根の改修方法は、軒先カバー10の差し込み部11を野地板4とスレート5Aとの間に差し込み、カバー本体12によって軒先水切り6を覆う差し込み工程と、ビス20Aによって差し込み部11を野地板4に固定する固定工程と、を含む。まず、
図4を参照して既設の軒先構造2について説明する。
【0030】
図4に示されるように、本実施形態の軒先構造2は、軒先横架材3と、野地板4と、スレート5Aと、軒先水切り6と、防水シート7と、屋根固定部材8と、を備える。屋根固定部材8は、本実施形態においてはビス8Aである。屋根固定部材8は、ボルトでもよい。まず、ビス8Aを取り外し、スレート5Aを動かせるようにする。その後、差し込み工程を行う。
【0031】
次に、
図5に示されるように、差し込み工程において、野地板4とスレート5Aとの間を開ける半開道具30によって野地板4とスレート5Aとの間に隙間40を設ける。本実施形態において、半開道具30はバール30Aである。バール30Aによってスレート5Aと野地板4との間に隙間40を設ける際、防水シート7と軒先水切り6との間にバール30Aの先端を入れ、防水シート7とともにスレート5Aを持ち上げる。
【0032】
そして、
図6に示されるように、差し込み工程において、防水シート7と野地板4との間に差し込み部11が配置されるように、隙間40に差し込み部11を差し込む。具体的には、まず、軒先カバー10の開口部16を開き、軒先水切り6を開口部16に通す。その後、軒先水切り6の裏面6Cを裏カバー部14が覆い、かつ、軒先水切り6の表面6Dをカバー本体12が覆った状態において、開口部16の開きを元に戻す。次に、固定部13を軒先横架材3に密着させ、かつ、連結部15を野地板4の下面4Aに沿うように配置する。そして、防水シート7の端部7Aが差し込み部11の上面11Aとスレート5Aの下面5Bとによって挟まれるように、スレート5Aを元の位置に戻す。
【0033】
最後に、
図7に示されるように、固定工程では、スレート5Aおよび差し込み部11を貫通し、さらに野地板4に突き刺さるようにビス20Aを打つ。これにより、軒先カバー10を軒先に固定する。
【0034】
さらに、本実施形態では、固定部13を貫通するように軒先横架材3にビス21Aを打つ。これにより、固定部13を軒先横架材3に固定する。また、屋根の改修方法において、ビス8Aを取り外した場合、屋根100に形成されたビス孔はシーリング材等を充填して塞いでもよい。本実施形態においては、ビス孔の図示は省略している。
【0035】
本実施形態の作用を説明する。
軒先カバー10のカバー本体12は、軒先水切り6の少なくとも一部を覆う。カバー本体12の上端12Aから突出するように差し込み部11が設けられる。差し込み部11は、野地板4と屋根材5との間に配置される。
【0036】
従来の屋根の改修方法では、軒先とともに屋根材を改修する。従来の屋根の改修方法では、軒先だけを改修するは難しい。この点、本実施形態によれば、上述のようにカバー本体12には、カバー本体12の上端12Aから突出するように差し込み部11が設けられる。差し込み部11は、野地板4と屋根材5との間に配置され、カバー本体12は、軒先水切り6の少なくとも一部を覆う。このため、新たな屋根材を必要とせず、軒先を改修できる。
【0037】
本実施形態の効果を説明する。
(1)軒先カバー10は、軒先水切り6を覆う。軒先カバー10は、軒先水切り6の少なくとも一部を覆うカバー本体12と、カバー本体12に設けられて、建築物1の野地板4と屋根材5との間に配置される差し込み部11と、を備える。この構成によれば、野地板4と屋根材5との間に差し込み部11を配置できる。このため、新たな屋根材を必要とせず、軒先を改修できる。
【0038】
(2)軒先カバー10において、軒先横架材3に固定される固定部13と、軒先水切り6の裏面6Cを覆う裏カバー部14と、野地板4の下面4Aに沿うように設けられる連結部15と、をさらに備える。この構成によれば、軒先カバー10の連結部15が屋根100の野地板4の下面4Aに沿うように設けられるため、改修後の軒先の外観を向上できる。
【0039】
(3)軒先カバー10において、差し込み部11は、カバー本体12の上端12Aから突出するように設けられる。裏カバー部14は、カバー本体12の下端12Bから延びる。連結部15は、裏カバー部14の上端14Aに繋がる。固定部13は、連結部15の内端15Aから下方に延びる。この構成によれば、差し込み部11、カバー本体12、裏カバー部14、連結部15、および、固定部13が、分岐部分のない連続体として構成される。このため、改修後の軒先の外観を向上できる。
【0040】
(4)軒先構造2は、野地板4と、屋根材5と、軒先に設けられる軒先水切り6と、上記(1)~上記(3)のいずれか1つに記載の軒先カバー10と、を備える。この構成によれば、軒先カバー10は、軒先カバー10の差し込み部11を野地板4と屋根材5との間に配置することによって軒先水切り6を覆うことができる。
【0041】
(5)軒先構造2において、軒先カバー10の差し込み部11は、固定部材20によって野地板4に固定される。この構成によれば、軒先における軒先カバー10の軒先の改修の作業効率を向上させることができる。また、簡単に軒先カバー10を野地板4に固定できる。
【0042】
(6)軒先構造2は、野地板4と屋根材5との間に敷かれる防水シート7をさらに備える。防水シート7は、差し込み部11の上に重なるように敷かれる。この構成によれば、差し込み部11の上に防水シート7が重なるため、屋根100の内部に雨水などが侵入し難くなる。このため、軒先における水の侵入を抑制できる。
【0043】
(7)屋根の改修方法において、屋根100は、野地板4と、屋根材5と、軒先水切り6と、を備える。軒先カバー10は、軒先水切り6の少なくとも一部を覆うカバー本体12と、カバー本体12に設けられて野地板4と屋根材5との間に配置される差し込み部11と、を備える。屋根の改修方法は、軒先カバー10の差し込み部11を野地板4と屋根材5との間に差し込み、カバー本体12によって軒先水切り6を覆う差し込み工程を含む。この構成によれば、軒先カバー10の差し込み部11を野地板4と屋根材5との間に差し込むことによって軒先水切り6を覆うことができる。
【0044】
(8)屋根の改修方法において、固定部材20によって差し込み部11を野地板4に固定する固定工程をさらに含む。固定工程において、屋根材5および差し込み部11を貫通し、さらに野地板4に突き刺さるように固定部材20を打つ。この構成によれば、固定部材20は、屋根材5、差し込み部11および野地板4を互いに結合させる。このため、軒先における軒先カバー10の固定状態を向上させることができる。
【0045】
(9)屋根の改修方法において、屋根100は、野地板4と屋根材5との間に敷かれる防水シート7をさらに備える。差し込み工程において、防水シート7と野地板4との間に差し込み部11を差し込む。この構成によれば、差し込み部11の上に防水シート7が重ねられるため、屋根100の内部に雨水などが侵入し難くなる。このため、水の侵入を抑制するように軒先の改修ができる。
【0046】
(10)上記(7)~上記(9)のいずれか1つに記載の屋根の改修方法において、差し込み工程において、半開道具30によって野地板4と屋根材5との間に隙間40を設ける。そして、隙間40に差し込み部11を差し込む。この構成によれば、野地板4と屋根材5との間に隙間40を設けるため、差し込み部11を野地板4と屋根材5との間に差し込み易くなる。これによって、軒先の改修の作業効率を向上できる。
【0047】
<第2実施形態>
図8を参照して、第2実施形態の建築物1の軒先構造2を説明する。本実施形態において、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態の構成と同一の符号を付し、重複する構成についてはその説明を省略する。
【0048】
図8に示されるように、本実施形態の建築物1の軒先構造2は、シール材50を備える。シール材50は、カバー本体12とスレート5Aの下面5Bとの境界60を封止するように設けられる。
【0049】
本実施形態の構成によれば、カバー本体12とスレート5Aの下面5Bとの境界60が、シール材50によって封止される。これにより、屋根100の内部に雨水などが侵入し難くなる。このため、軒先における水の侵入を抑制できる。
【0050】
<変形例>
上記各実施形態は、軒先カバー10、建築物1の軒先構造2、および屋根の改修方法が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。軒先カバー10、建築物1の軒先構造2、および屋根の改修方法は、上記各実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の一例を示す。
【0051】
(1)軒先カバー10は、複数の金属板または複数の樹脂を組み合わせて形成されてもよい。例えば、差し込み部11を金属板によって形成し、カバー本体12、固定部13、裏カバー部14、および連結部15を樹脂によって形成してもよい。この際、カバー本体12の上端12Aと差し込み部11とを一体成形してもよい。
【0052】
この構成によれば、必要に応じて、軒先カバー10を形成する材料を選択できる。これにより、軒先カバー10の耐水性および耐久性を向上させ易い。
【0053】
(2)軒先カバー10の裏カバー部14は、排水孔を有してもよい。この構成によれば、屋根100の内部に雨水が侵入した場合、雨水は排水孔から排水される。このため、軒先カバー10内にある軒先水切り6の腐食またはこの腐食にともなう軒先カバー10の劣化を抑制できる。
【0054】
(3)建築物1の軒先構造2は、軒先カバー10の差し込み部11と防水シート7との間に内部シール材を備えてもよい。内部シール材は、差し込み部11および防水シート7を密着するように設けられる。この構成によれば、差し込み部11と防水シート7との境界に内部シール材が設けられるため、屋根100の内部に雨水などが侵入し難くなる。
【符号の説明】
【0055】
1…建築物、2…軒先構造、3…軒先横架材、4…野地板、4A…下面、5…屋根材、5B…下面、6…軒先水切り、6C…裏面、7…防水シート、10…軒先カバー、11…差し込み部、12…カバー本体、12A…上端、12B…下端、13…固定部、14…裏カバー部、14A…上端、15…連結部、15A…内端、20…固定部材、30…半開道具、40…隙間、50…シール材、60…境界、100…屋根。
【手続補正書】
【提出日】2024-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の軒先構造であって、
既設の野地板と、既設の屋根材と、屋根の軒先に設けられる既設の軒先水切りと、軒先カバーと、を備え、
前記軒先カバーは、前記軒先水切りを覆うカバーであって、
前記軒先水切りの少なくとも一部を覆うカバー本体と、
前記カバー本体の上端から突出するように前記カバー本体に設けられて、前記野地板と前記屋根材との間に配置され、全体的にフラットに構成され、かつ、前記屋根材に沿うように延びる、差し込み部と、
前記カバー本体の下端から延びて、前記屋根の前記軒先水切りの裏面を覆う裏カバー部と、
前記裏カバー部の上端に繋がり、前記屋根の前記野地板の下面に沿うように設けられる連結部と、
前記連結部の内端から下方に延びて、前記屋根の軒先横架材に固定される固定部と、を備える、
建築物の軒先構造。
【請求項2】
前記軒先カバーの前記差し込み部は、固定部材によって前記野地板に固定される、
請求項1に記載の建築物の軒先構造。
【請求項3】
前記野地板と前記屋根材との間に敷かれる防水シートをさらに備え、
前記防水シートは、前記差し込み部の上に重なるように敷かれる、
請求項1に記載の建築物の軒先構造。
【請求項4】
シール材をさらに備え、
前記シール材は、前記カバー本体と前記屋根材の下面との境界を封止するように設けられる
請求項1に記載の建築物の軒先構造。
【請求項5】
軒先カバーによって屋根を改修する屋根の改修方法であって、
前記屋根は、既設の野地板と、既設の屋根材と、前記屋根の軒先に設けられる既設の軒先水切りと、を備えるものであり、
前記軒先カバーは、前記軒先水切りを覆うカバーであって、
前記軒先水切りの少なくとも一部を覆うカバー本体と、
前記カバー本体の上端から突出するように前記カバー本体に設けられて、前記野地板と前記屋根材との間に配置され、全体的にフラットに構成され、かつ、前記屋根材に沿うように延びる、差し込み部と、
前記カバー本体の下端から延びて、前記屋根の前記軒先水切りの裏面を覆う裏カバー部と、
前記裏カバー部の上端に繋がり、前記屋根の前記野地板の下面に沿うように設けられる連結部と、
前記連結部の内端から下方に延びて、前記屋根の軒先横架材に固定される固定部と、を備えるものであり、
前記軒先カバーの前記差し込み部を前記野地板と前記屋根材との間に差し込み、前記カバー本体によって前記軒先水切りを覆う差し込み工程を含む、
屋根の改修方法。
【請求項6】
固定部材によって前記差し込み部を前記野地板に固定する固定工程をさらに含み、
前記固定工程において、前記屋根材および前記差し込み部を貫通し、さらに前記野地板に突き刺さるように前記固定部材を打つ、
請求項5に記載の屋根の改修方法。
【請求項7】
前記屋根は、前記野地板と前記屋根材との間に敷かれる防水シートをさらに備え、
前記差し込み工程において、前記防水シートと前記野地板との間に前記差し込み部を差し込む、
請求項5に記載の屋根の改修方法。
【請求項8】
前記差し込み工程において、前記野地板と前記屋根材との間を開ける半開道具によって前記野地板と前記屋根材との間に隙間を設け、前記軒先カバーの前記差し込み部を差し込む、
請求項5~7のいずれか一項に記載の屋根の改修方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本開示は、建築物の軒先構造および屋根の改修方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
従来の軒先構造では、特許文献1のように、既設の屋根材とは別の新たな屋根材が設けられる。この場合、軒先水切りの改修において、新たな屋根材を施工する必要がある。軒先だけを改修できる技術は知られていない。軒先カバーによる軒先の改修に関して、建築物の軒先構造および屋根の改修方法に改善の余地がある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
(1)軒先カバーは、建築物の屋根の軒先において軒先水切りを覆う軒先カバーであって、前記軒先水切りの少なくとも一部を覆うカバー本体と、前記カバー本体に設けられて、前記建築物の野地板と屋根材との間に配置される差し込み部と、を備える。この構成によれば、野地板と屋根材との間に差し込み部を配置できる。このため、新たな屋根材を必要とせず、軒先を改修できる。