(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179327
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】端子およびコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/91 20110101AFI20241219BHJP
【FI】
H01R12/91
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098077
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 勇之介
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】田中 真二
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB26
5E223AB41
5E223BA01
5E223BA07
5E223CB24
5E223CB28
5E223CB29
5E223CD01
5E223CD04
5E223DA05
5E223DB08
5E223DB11
5E223DB25
5E223EA03
(57)【要約】
【課題】相手端子に対する接触圧を確保しつつも、相手端子の皮膜の剥がれを抑制可能にした端子を提供する。
【解決手段】板状の基材からプレス加工により成形される第1端子14は、板状の一対の弾性変位部30と、一対の弾性変位部30同士を繋ぐ連結部40と、を備える。一対の弾性変位部30の各々は、一対の弾性変位部30の間に挿入された相手端子に対し、各弾性変位部30の弾性力によって接触する接触部34を有する。一対の弾性変位部30の各々は、板面31と端面32とを有する板状をなしている。一対の弾性変位部30は、それらの端面32同士が対向するように並設されている。一対の弾性変位部30の各々は、端面32から延出するとともに折り曲げて形成されている折り曲げ部としての折り返し部33を有する。接触部34は、折り返し部33において板面31の一部によって形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基材からプレス加工により成形される端子であって、
一対の弾性変位部と、前記一対の弾性変位部同士を繋ぐ連結部と、を備え、
前記一対の弾性変位部の各々は、前記一対の弾性変位部の間に挿入される相手端子に対し、前記各弾性変位部の弾性力によって接触する接触部を有し、
前記一対の弾性変位部の各々は、板面と端面とを有する板状をなし、
前記一対の弾性変位部は、それらの前記端面同士が対向するように並設され、
前記一対の弾性変位部の各々は、前記端面から延出するとともに折り曲げて形成されている折り曲げ部を有し、
前記接触部は、前記折り曲げ部において前記板面の一部によって形成されている、
端子。
【請求項2】
前記折り曲げ部は、前記弾性変位部の板厚方向において重なるように折り返されている折り返し部であり、
前記接触部は、前記折り返し部の基端部と先端部との中間位置に形成される湾曲面である、
請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記折り曲げ部は、前記弾性変位部の板厚方向に沿って立ち上がるように折り曲げられており、
前記接触部は、前記折り曲げ部においてエンボス加工により形成された凸部である、
請求項1に記載の端子。
【請求項4】
前記連結部は、前記弾性変位部の板厚方向に突出するように折り曲げられて形成されている、
請求項1に記載の端子。
【請求項5】
前記相手端子は、前記弾性変位部の前記板面に沿った方向から一対の前記接触部同士の間に挿入され、
前記連結部は、前記相手端子の挿入方向から見て、前記接触部と重ならないように構成されている、
請求項1に記載の端子。
【請求項6】
前記一対の弾性変位部の各々は、オフセット部を有し、
前記オフセット部は、前記弾性変位部における前記オフセット部以外の部位に対して、前記弾性変位部の板厚方向にずれた位置にあり、
前記一対の弾性変位部の各々において、前記接触部は、前記オフセット部に設けられている、
請求項1に記載の端子。
【請求項7】
前記一対の弾性変位部の各々は、固定用の圧入凸部を有し、
前記圧入凸部は、前記連結部に対応する位置に設けられている、
請求項1に記載の端子。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の端子を有する第1コネクタ部と、
前記第1コネクタ部の前記端子に接続される相手端子を有する第2コネクタ部と、
を備える、
コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子およびコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のコネクタ装置における端子は、それぞれが板状に形成された一対の弾性変位部と、一対の弾性変位部同士を繋ぐ連結部とを備える。一対の弾性変位部の各々は、一対の弾性変位部の間に挿入される相手端子に対する接触部を有している。端子は、金属板等の板状の基材からプレス加工によって切り離すことで成形される。すなわち、端子は、各弾性変位部と連結部とを含めて全体が板状をなす。板状の弾性変位部は、主面となる板面と、端面とを有する。弾性変位部の板面は、板状の基材の表面の一部にて形成される。弾性変位部の端面は、端子を基材から切り離す際に生じる破断面によって形成される。
【0003】
特許文献1に記載の端子において、一対の弾性変位部は、それらの板面に沿った方向において並設されている。すなわち、一対の弾性変位部は、それらの端面同士が対向するように並設されている。また、各弾性変位部の接触部は、互いに対向する各弾性変位部の端面に形成されている。このような構成によれば、一対の弾性変位部を板面同士で対向させる構成と比較して、一対の弾性変位部が互いに接離する方向に変形しにくい。したがって、一対の弾性変位部における互いに接離する方向への弾性力を大きくすることが可能となる。これにより、相手端子に対する接触部の接触圧を確保しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の端子では、各弾性変位部の接触部は、弾性変位部の端面、すなわち、端子を基材から切り離す際に生じる破断面によって形成されている。このため、破断面にて形成された接触部が相手端子に接触することで、相手端子の表面におけるめっき等の皮膜が剥がれるおそれがあった。
【0006】
本開示の目的は、相手端子に対する接触圧を確保しつつも、相手端子の皮膜の剥がれを抑制可能にした端子およびコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の端子は、板状の基材からプレス加工により成形される端子であって、一対の弾性変位部と、前記一対の弾性変位部同士を繋ぐ連結部と、を備え、前記一対の弾性変位部の各々は、前記一対の弾性変位部の間に挿入される相手端子に対し、前記各弾性変位部の弾性力によって接触する接触部を有し、前記一対の弾性変位部の各々は、板面と端面とを有する板状をなし、前記一対の弾性変位部は、それらの前記端面同士が対向するように並設され、前記一対の弾性変位部の各々は、前記端面から延出するとともに折り曲げて形成されている折り曲げ部を有し、前記接触部は、前記折り曲げ部において前記板面の一部によって形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の端子およびコネクタによれば、相手端子に対する接触圧を確保しつつも、相手端子の皮膜の剥がれを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態のコネクタの概略構成図である。
【
図2】
図2は、同形態のコネクタにおける第1端子と第2端子を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、同形態における第1端子の一部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、同形態における第1端子の一部を示す平面図である。
【
図6】
図6は、変更例における第1端子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の端子は、
[1]板状の基材からプレス加工により成形される端子であって、一対の弾性変位部と、前記一対の弾性変位部同士を繋ぐ連結部と、を備え、前記一対の弾性変位部の各々は、前記一対の弾性変位部の間に挿入される相手端子に対し、前記各弾性変位部の弾性力によって接触する接触部を有し、前記一対の弾性変位部の各々は、板面と端面とを有する板状をなし、前記一対の弾性変位部は、それらの前記端面同士が対向するように並設され、前記一対の弾性変位部の各々は、前記端面から延出するとともに折り曲げて形成されている折り曲げ部を有し、前記接触部は、前記折り曲げ部において前記板面の一部によって形成されている。
【0011】
この構成によれば、一対の弾性変位部がそれらの端面同士が対向するように並設されるため、一対の弾性変位部を板面同士で対向させる構成と比較して、一対の弾性変位部が互いに接離する方向に変形しにくい。その結果、一対の弾性変位部における互いに接離する方向への弾性力を大きくすることが可能となる。これにより、相手端子に対する接触部の接触圧を確保しやすくなる。そして、各弾性変位部において、接触部は、弾性変位部の端面から延出して折り曲げ形成された折り曲げ部に形成されることで、接触部が弾性変位部の板面の一部によって形成される。したがって、弾性変位部の端面、すなわち、プレス加工によって生じる破断面が相手端子に接触しないように構成できるため、端子との接触により相手端子の皮膜が剥がれることを抑制することが可能となる。
【0012】
[2]上記[1]において、前記折り曲げ部は、前記弾性変位部の板厚方向において重なるように折り返されている折り返し部であり、前記接触部は、前記折り返し部の基端部と先端部との中間位置に形成される湾曲面であってもよい。
【0013】
この構成によれば、弾性変位部に折り返し部を形成することで、折り返し部において板面からなる接触部を形成することが可能となる。
[3]上記[1]または[2]において、前記折り曲げ部は、前記弾性変位部の板厚方向に沿って立ち上がるように折り曲げられており、前記接触部は、前記折り曲げ部においてエンボス加工により形成された凸部であってもよい。
【0014】
この構成によれば、弾性変位部の板厚方向に沿って立ち上がる折り曲げ部において、エンボス加工によって凸部を形成することで、弾性変位部の板面の一部からなる接触部を形成することが可能となる。
【0015】
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、前記連結部は、前記弾性変位部の板厚方向に突出するように折り曲げられて形成されていてもよい。
この構成によれば、一対の弾性変位部を繋ぐ連結部を、弾性変位部の板厚方向に突出するように折り曲げて形成することで、一対の弾性変位部の間の間隔が狭まり、その結果、各接触部同士の間隔が好適な寸法となるように形成できる。また、連結部が弾性変位部の板厚方向に突出するように折り曲げられて形成されていることで、相手端子を各接触部の間に挿入する際に、相手端子が連結部に干渉することを抑制することが可能となる。
【0016】
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、前記相手端子は、前記弾性変位部の前記板面に沿った方向から一対の前記接触部同士の間に挿入され、前記連結部は、前記相手端子の挿入方向から見て、前記接触部と重ならないように構成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、相手端子を各接触部の間に挿入する際に、相手端子が連結部に干渉することを抑制することが可能となる。
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、前記一対の弾性変位部の各々は、オフセット部を有し、前記オフセット部は、前記弾性変位部における前記オフセット部以外の部位に対して、前記弾性変位部の板厚方向にずれた位置にあり、前記一対の弾性変位部の各々において、前記接触部は、前記オフセット部に設けられていてもよい。
【0018】
この構成によれば、弾性変位部の板厚方向において、弾性変位部におけるオフセット部以外の部位に対する接触部のオフセット量(位置ずれ量)を小さくすることが可能となる。
【0019】
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、前記一対の弾性変位部の各々は、固定用の圧入凸部を有し、前記圧入凸部は、前記連結部に対応する位置に設けられていてもよい。
【0020】
この構成によれば、圧入凸部が一対の弾性変位部同士を繋ぐ連結部に対応する位置に設けられるため、圧入凸部を固定対象に対して好適に固定させることが可能となる。
[8]本開示のコネクタは、上記[1]から[7]のいずれかに記載の端子を有する第1コネクタ部と、前記第1コネクタ部の前記端子に接続される相手端子を有する第2コネクタ部と、を備える。
【0021】
この構成によれば、上記の端子と同様の作用効果を奏することができる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の端子およびコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。また、本明細書における「垂直」は、厳密に垂直の場合のみでなく、本実施形態における作用ならびに効果を奏する範囲内で概ね垂直の場合も含まれる。
【0022】
なお、本明細書における「対向」とは、面同士又は部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。
【0023】
(コネクタ10)
図1に示す本実施形態のコネクタ10は、例えば、第1基板S1と第2基板S2とを電気的に接続するフローティングコネクタである。コネクタ10は、第1基板S1に設けられた第1コネクタ部11と、第2基板S2に設けられた第2コネクタ部12とを備える。フローティングコネクタとしてのコネクタ10は、第1コネクタ部11と第2コネクタ部12との間の位置誤差を吸収可能な構成を有している。
【0024】
各図面では、互いに直交する三軸をX軸、Y軸、Z軸として図示している。以下の説明では、X軸に沿った方向を、X軸方向、または、コネクタ10の長手方向と呼称する場合がある。また、以下の説明では、Y軸に沿った方向を、Y軸方向、または、コネクタ10の幅方向と呼称する場合がある。また、以下の説明では、Z軸に沿った方向を、Z軸方向、または、コネクタ10の高さ方向と呼称する場合がある。
【0025】
第1コネクタ部11および第2コネクタ部12の各々は、Z軸方向から見て、X軸方向に長い略長方形をなしている。第1コネクタ部11と第2コネクタ部12とは、Z軸方向に沿って互いに組み付けられる。
【0026】
(第1コネクタ部11)
第1コネクタ部11は、第1ハウジング13と、第1ハウジング13に収容された第1端子14とを有する。第1端子14は、例えば、Y軸方向に並ぶ一対の組が、X軸方向に沿って複数組設けられている。各第1端子14は、導体よりなる板状の基材からプレス加工によって切り離すことで成形される。当該板状の基材は、例えば金属板である。各第1端子14は、例えば、互いに同一形状をなす。各第1端子14は、第1基板S1に接続される第1基板接続部15を有する。第1基板接続部15が第1基板S1に接続されることで、第1基板S1と第1端子14とが互いに電気的に接続される。
【0027】
(第2コネクタ部12)
第2コネクタ部12は、第2ハウジング16と、第2ハウジング16に収容された第2端子17とを有する。第2端子17は、例えば、複数の第1端子14にそれぞれ対応して複数設けられている。すなわち、第2端子17は、例えば、Y軸方向に並ぶ一対の組が、X軸方向に沿って複数組設けられている。各第2端子17は、例えば、金属板からプレス加工によって成形される。各第2端子17は、例えば、互いに同一形状をなす。各第2端子17は、第2基板S2に接続される第2基板接続部18を有する。第2基板接続部18が第2基板S2に接続されることで、第2基板S2と第2端子17とが互いに電気的に接続される。
【0028】
第1コネクタ部11と第2コネクタ部12とがZ軸方向に沿って互いに接続されることにより、第1端子14と第2端子17とが互いに電気的に接続される。したがって、第1端子14と第2端子17との電気的導通により、第1基板S1と第2基板S2とが互いに電気的に接続される。
【0029】
(第2端子17)
図1および
図2に示すように、第2端子17は、前記第2基板接続部18と、第2基板接続部18から延びる位置ずれ吸収部21と、位置ずれ吸収部21から延びる挿入部22と、を有する。第2端子17は、例えば、少なくとも第2基板接続部18を含む部位が第2ハウジング16に保持されて固定される。位置ずれ吸収部21は、第2基板接続部18と挿入部22とを繋いでいる。位置ずれ吸収部21は、第2基板接続部18に対して挿入部22をX軸方向およびY軸方向に変位させるべく、弾性変形可能な形状を有している。位置ずれ吸収部21の形状は、例えば、Y軸方向から見てZ軸方向の端部に開放端を有する略U字状をなす。挿入部22は、Z軸方向に沿って直線状に延びる形状をなしている。挿入部22は、第1端子14に対する接点となる。第1端子14と第2端子17の挿入部22との間に生じうるXY平面に沿った方向への相対的な位置ずれは、位置ずれ吸収部21の弾性変形によって吸収することが可能となっている。
【0030】
(第1端子14)
図2に示すように、第1端子14は、板状の一対の弾性変位部30と、一対の弾性変位部30同士を繋ぐ連結部40と、を備える。各弾性変位部30は、例えば、Z軸方向に沿って直線状に延びる長尺状をなしている。すなわち、各弾性変位部30において、Z軸方向の長さは、Y軸方向の長さよりも大きい。一対の弾性変位部30は、Y軸方向に沿って並んで設けられている。
【0031】
(弾性変位部30)
図3、
図4および
図5に示すように、各弾性変位部30は、主面となる板面31と、端面32とを有している。板面31は、第1端子14の元となる板状の基材の表面の一部にて形成される。すなわち、板面31は、弾性変位部30の板厚方向に対して垂直な面である。一対の弾性変位部30は、例えば、それぞれの板面31がYZ平面に沿った同一平面上に位置するように形成されている。各弾性変位部30の板面31は、X軸方向に対して垂直をなしている。
【0032】
各弾性変位部30の端面32は、板状の基材から第1端子14を切り離す際に生じる破断面によって形成される。端面32は、板面31に対して略直角をなす面である。端面32は、弾性変位部30におけるY軸方向の一端である。一対の弾性変位部30は、端面32同士がY軸方向に対向するように形成されている。以下の説明では、Y軸方向において一対の弾性変位部30における各端面32が互いに向かい合う方向を「Y軸方向の内側」とし、その反対方向を「Y軸方向の外側」と称する。
【0033】
第1基板接続部15は、例えば、弾性変位部30のZ軸方向の一端部からY軸方向に沿って延びている。以下では、説明の便宜上、第1端子14において第1基板接続部15が設けられている側を下側とし、その反対側を上側として説明する。
【0034】
(折り返し部33および接触部34)
一対の弾性変位部30の各々は、端面32から延出するとともに弾性変位部30の板厚方向(すなわちX軸方向)において重なるように折り返されている折り返し部33を有する。折り返し部33は、弾性変位部30の端面32からY軸方向の内側に一旦延出するとともに、180度反対側(すなわち、Y軸方向の外側)に向かって折り返されている。折り返し部33は、端面32よりもY軸方向の内側に突出するように形成されている。
【0035】
折り返し部33は、弾性変位部30の端面32に繋がる基端部33aと、基端部33aに対してX軸方向に重なる先端部33bとを有する(
図5参照)。先端部33bは、Y軸方向の外側を向いている。接触部34は、折り返し部33の基端部33aと先端部33bとの中間位置に形成される湾曲面である。接触部34は、折り返し部33におけるY軸方向の内側端部に形成されている。接触部34は、弾性変位部30の板面31の表面の一部によって形成されている。つまり、接触部34は、第1端子14の元となる板状の基材の表面の一部によって形成されている。また、折り返し部33の上端面には、Y軸方向の内側端部に向かって下側に傾斜する傾斜面35が形成されている。
【0036】
一対の弾性変位部30における折り返し部33は、Z軸方向において互いに同位置に設けられている。これにより、一対の弾性変位部30における各接触部34は、Y軸方向において互いに対向している。
【0037】
各弾性変位部30は、長手方向(Z軸方向)の一部において段差状のオフセット部36を有している。オフセット部36は、弾性変位部30の長手方向の一部において、X軸方向に位置をずらした部位である。前述の接触部34を含む折り返し部33は、オフセット部36に形成されている。そして、折り返し部33は、オフセット部36のオフセット方向(位置ずれ方向)とは反対側に折り重なるように形成されている。すなわち、オフセット部36のオフセット方向をX軸方向の奥側としたとき、折り返し部33は、X軸方向の手前側に折り重なるように形成されている。これにより、X軸方向において、弾性変位部30におけるオフセット部36以外の部位に対する接触部34のオフセット量(位置ずれ量)を小さくすることが可能となる。
【0038】
(連結部40)
図2に示すように、第1端子14は、例えば、一対の弾性変位部30を繋ぐ連結部40を複数有する。複数の連結部40は、例えば、第1連結部41と、第2連結部42と、第3連結部43とを含む。第1連結部41は、弾性変位部30におけるZ軸方向の上端位置に設けられ、一対の弾性変位部30におけるZ軸方向の上端部30aを繋ぐ。第2連結部42は、弾性変位部30におけるZ軸方向の下端位置に設けられ、一対の弾性変位部30におけるZ軸方向の下端部30bを繋ぐ。第3連結部43は、弾性変位部30におけるZ軸方向の中間位置に設けられている。接触部34を含む弾性変位部30は、Z軸方向において、第1連結部41と第3連結部43との間に設けられている。
【0039】
第1連結部41、第2連結部42および第3連結部43は、互いに同一の形状をなしている。以下には、第1連結部41、第2連結部42および第3連結部43の形状について、第1連結部41を例にとって説明する。
【0040】
図3および
図5に示すように、第1連結部41は、弾性変位部30の板厚方向に沿って突出するように折り曲げて形成されている。すなわち、第1連結部41は、弾性変位部30に対してX軸方向に突出している。また、第1連結部41は、Z軸方向から見て略U字状をなすようにX軸方向に突出している。詳しくは、第1連結部41は、各弾性変位部30の上端部30aにおいて、それぞれの端面32から延出するとともに略直角に折り曲げられてX軸方向に沿って延びる延出部44を有している。また、第1連結部41は、一対の延出部44におけるX軸方向の先端部同士を繋ぐ繋ぎ部45を有している。なお、第2連結部42および第3連結部43もそれぞれ、一対の延出部44および繋ぎ部45を有している。
【0041】
図5に示すように、第1連結部41は、弾性変位部30からX軸方向に突出するように折り曲げ成形されていることにより、Z軸方向から見て各接触部34と重ならないように構成される。各接触部34は、Z軸方向から見て、例えば、一対の延出部44の間に位置している。これにより、第2端子17の挿入部22をZ軸方向に沿って各接触部34の間に挿入するときに、挿入部22が第1連結部41に干渉することが防がれている。
【0042】
図3に示すように、一対の弾性変位部30の各々は、各弾性変位部30からY軸方向外側に突出する圧入凸部51を有している。各圧入凸部51は、各弾性変位部30におけるY軸方向外側の端面から突出している。第1端子14を第1ハウジング13に対して、各弾性変位部30の上端部30aからZ軸方向に沿って挿入して組み付ける際に、各圧入凸部51は、第1ハウジング13内の図示しない壁面に対して食い込むように圧入される。
【0043】
各圧入凸部51は、第3連結部43に対応する位置に設けられている。詳しくは、各圧入凸部51は、第3連結部43のY軸方向の外側に設けられている。換言すると、各圧入凸部51と第3連結部43とは、Z軸方向において同位置に設けられている。一対の弾性変位部30において、各連結部40が設けられた箇所は、各連結部40が設けられていない箇所よりもY軸方向に変位しにくい。したがって、各圧入凸部51が第3連結部43のY軸方向の外側に設けられることにより、各圧入凸部51を第1ハウジング13に対して好適に圧入させることが可能となる。
【0044】
次に、第1端子14の製造態様について説明する。
第1端子14は、金属板等の板状の基材からプレス加工によって切り離すことで成形される。すなわち、当該プレス加工によって、第1端子14の一対の弾性変位部30、接触部34を含む折り返し部33、および各連結部40が形成される。各連結部40は、弾性変位部30の板厚方向に突出するように折り曲げて形成される。これにより、端面32同士が対向する一対の弾性変位部30の間の間隔が狭まり、その結果、各接触部34同士の間隔が好適な寸法となるように形成できる。
【0045】
本実施形態の作用について説明する。
第1コネクタ部11と第2コネクタ部12とは、Z軸方向に沿って互いに接続される。このとき、第2端子17の挿入部22は、Z軸方向に沿って各上端部30aの間から一対の弾性変位部30の間に挿入される。そして、挿入部22は、一対の弾性変位部30の各接触部34の間に、各接触部34同士の間隔を拡げつつ挿入される。各接触部34は、一対の弾性変位部30がY軸方向に変形することで生じる弾性力によって、挿入部22に接触する。すなわち、一対の弾性変位部30のY軸方向の弾性力によって、挿入部22に対する各接触部34の接触圧が得られる。ここで、一対の弾性変位部30は、それらの端面32同士が対向するように並設されている。これにより、一対の弾性変位部30を板面31同士で対向させる構成と比較して、一対の弾性変位部30が互いに接離する方向(Y軸方向)に変形しにくい。したがって、一対の弾性変位部30における互いに接離する方向への弾性力を大きくすることが可能となっている。
【0046】
また、本実施形態の各接触部34は、弾性変位部30の板面31の一部、すなわち、第1端子14の元となる板状の基材の表面の一部によって形成されている。これにより、プレス加工によって生じる端子の破断面で第2端子17に接触する構成に比べて、第2端子17の皮膜への影響を小さく抑えることが可能となっている。
【0047】
本実施形態の効果について説明する。
(1)一対の弾性変位部30の各々は、板面31と端面32とを有する板状をなしている。一対の弾性変位部30は、それらの端面32同士が対向するように並設されている。一対の弾性変位部30の各々は、端面32から延出するとともに折り曲げて形成されている折り曲げ部としての折り返し部33を有する。接触部34は、折り返し部33において弾性変位部30の板面31の一部によって形成されている。この構成によれば、一対の弾性変位部30がそれらの端面32同士が対向するように並設されるため、一対の弾性変位部30を板面31同士で対向させる構成と比較して、一対の弾性変位部30が互いに接離する方向に変形しにくい。その結果、一対の弾性変位部30における互いに接離する方向への弾性力を大きくすることが可能となる。これにより、第2端子17に対する接触部34の接触圧を確保しやすくなる。そして、各弾性変位部30において、接触部34は、弾性変位部30の端面32から延出して折り曲げ形成された折り曲げ部に形成されることで、接触部34が弾性変位部30の板面31の一部によって形成される。したがって、弾性変位部30の端面32、すなわち、プレス加工によって生じる破断面が第2端子17に接触しないように構成できるため、端子との接触により第2端子17の皮膜が剥がれることを抑制することが可能となる。
【0048】
(2)折り返し部33は、弾性変位部30の板厚方向において重なるように折り返されている。そして、接触部34は、折り返し部33の基端部33aと先端部33bとの中間位置に形成される湾曲面である。この構成によれば、弾性変位部30に折り返し部33の中間位置を形成することで、折り返し部33において板面31の一部からなる接触部34を形成することが可能となる。
【0049】
(3)連結部40は、弾性変位部30の板厚方向に突出するように折り曲げられて形成されている。この構成によれば、一対の弾性変位部30を繋ぐ連結部40を、弾性変位部30の板厚方向に突出するように折り曲げて形成することで、一対の弾性変位部30の間の間隔が狭まり、その結果、各接触部34同士の間隔が好適な寸法となるように形成できる。また、連結部40が弾性変位部30の板厚方向に突出するように折り曲げられて形成されていることで、第2端子17を各接触部34の間に挿入する際に、第2端子17が連結部40に干渉することを抑制することが可能となる。
【0050】
(4)第1コネクタ部11と第2コネクタ部12との接続の際、第2端子17は、弾性変位部30の板面31に沿った方向(本実施形態においてZ軸方向)から接触部34同士の間に挿入される。連結部40は、第2端子17の挿入方向(Z軸方向)から見て、接触部34と重ならないように構成されている。この構成によれば、第2端子17を各接触部34の間に挿入する際に、第2端子17が連結部40に干渉することを抑制することが可能となる。
【0051】
(5)一対の弾性変位部30の各々は、オフセット部36を有する。オフセット部36は、弾性変位部30におけるオフセット部36以外の部位に対して、弾性変位部30の板厚方向(X軸方向)にずれた位置にある。一対の弾性変位部30の各々において、接触部34は、オフセット部36に設けられている。この構成によれば、オフセット部36の形状を適宜調整することによって、弾性変位部30の板厚方向において、弾性変位部30におけるオフセット部36以外の部位に対する接触部34のオフセット量(位置ずれ量)を小さくすることが可能となる。
【0052】
(6)一対の弾性変位部30の各々は、固定用の圧入凸部51を有している。各弾性変位部30において、圧入凸部51は、第3連結部43に対応する位置に設けられている。すなわち、圧入凸部51は、第3連結部43のY軸方向の外側に設けられている。一対の弾性変位部30において、各連結部40が設けられた箇所は、各連結部40が設けられていない箇所よりもY軸方向に変位しにくい。したがって、各圧入凸部51が第3連結部43のY軸方向の外側に設けられることにより、各圧入凸部51を固定対象としての第1ハウジング13に対して好適に圧入させることが可能となる。
【0053】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・上記実施形態の第1端子14における各接触部34の構成を、
図6に示すような構成に変更してもよい。
図6に示す構成では、各弾性変位部30は、端面32から延出するとともに折り曲げて形成されている折り曲げ部61を有している。各折り曲げ部61は、例えば、弾性変位部30の板厚方向(X軸方向)に沿って立ち上がるように折り曲げられている。各折り返し部33には、各弾性変位部30の弾性力によって第2端子17の挿入部22に接触する接触部62が形成されている。各接触部62は、各折り曲げ部61においてエンボス加工により形成された凸部である。すなわち、各接触部62は、プレス加工機の図示しないパンチにて折り曲げ部61の一部を板厚方向に押圧することで、折り曲げ部61の板厚方向に突出するように形成されている。このようにエンボス加工により形成された接触部62は、弾性変位部30の板面31の一部、すなわち、第1端子14の元となる板状の基材の表面の一部によって形成される。接触部62は、Y軸方向から見て例えば円形をなす。凸部である接触部62の表面は、Z軸方向から見て略円弧状の湾曲面をなす。また、凸部である接触部62の表面は、X軸方向から見ても略円弧状の湾曲面をなす。
【0055】
図6に示すような構成によっても、上記実施形態の効果(1)と同様の効果を得ることが可能となる。また、
図6に示すような構成によれば、弾性変位部30の板厚方向に沿って立ち上がる折り曲げ部61において、エンボス加工によって凸部を形成することで、弾性変位部30の板面31の一部からなる接触部62を形成することが可能となる。
【0056】
・上記実施形態において、各連結部40を各弾性変位部30と同一平面上に設定してもよい。
・第1端子14に設けられる連結部40の個数は、上記実施形態に限定されるものではなく、2つ以下または4つ以下であってもよい。なお、第1端子14のZ軸方向における長さや、必要とする一対の弾性変位部30の弾性力の大きさに応じて、連結部40の個数を設定してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、第1基板S1と第2基板S2とを電気的に接続するフローティングコネクタの端子に適用したが、これに特に限らず、フローティングコネクタ以外のコネクタの端子に適用してもよい。
【0058】
・今回開示された実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
10 コネクタ
11 第1コネクタ部
12 第2コネクタ部
13 第1ハウジング
14 第1端子(端子)
15 第1基板接続部
16 第2ハウジング
17 第2端子(相手端子)
18 第2基板接続部
21 吸収部
22 挿入部
30 弾性変位部
30a 上端部
30b 下端部
31 板面
32 端面
33 折り返し部(折り曲げ部)
33a 基端部
33b 先端部
34 接触部(湾曲面)
35 傾斜面
36 オフセット部
40 連結部
41 第1連結部(連結部)
42 第2連結部(連結部)
43 第3連結部(連結部)
44 延出部
45 繋ぎ部
51 圧入凸部
61 折り曲げ部
62 接触部(凸部)
S1 第1基板
S2 第2基板