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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017933
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】DC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H02M3/28 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120909
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 文哉
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB21
5H730BB61
5H730BB86
5H730ZZ16
(57)【要約】
【課題】低圧部から高圧部に至る経路中での絶縁を行いつつ、低圧部から高圧部に至る経路全体での電力変換損失を低減できるDC-DCコンバータを提供する。
【解決手段】DC-DCコンバータは、直流電圧を交流電圧に変換するスイッチング回路と、前段のトランスの2次側出力端子と後段のトランスの1次側入力端子とを多段に接続した複数のトランスと、トランスの最終段から出力される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を交流電圧に変換するスイッチング回路と、
前段のトランスの2次側出力端子と後段のトランスの1次側入力端子とを多段に接続した複数のトランスと、
前記トランスの最終段から出力される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、を備える、
DC-DCコンバータ。
【請求項2】
多段に接続された前記トランスのうち、入力段のトランスは降圧機能を有し、
出力段のトランスは昇圧機能を有し、
入力段のトランスの1次側の巻数と出力段のトランスの2次側の巻数とが等しく、中間段のトランスは巻数比が1:1である、
請求項1に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項3】
多段に接続された前記トランスの、入力段のトランスの1次側入力線と、出力段のトランスの2次側出力線と、トランス同士の接続線と、にそれぞれ直列に、前記トランスの漏れインダクタンスを打ち消す容量のコンデンサが接続される、
請求項1または請求項2に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項4】
多段に接続された前記トランスのうち、入力段と出力段のトランス以外のトランスは、入力段と出力段のトランスよりも結合係数が小さくされる、
請求項3に記載のDC-DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC-DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧部(例えば10kV超)にあるスイッチ(例えば、MOSFET等のトランジスタ)をオン/オフさせるためには、スイッチの駆動回路(例えばトランジスタのゲートの電圧を制御する回路)に対して、所定の電位差(例えば直流24V)の電圧制御信号を供給する必要がある。そのため、低圧部にある直流24Vの直流電圧源と高圧部にあるスイッチとの間には、一般的に絶縁型DC-DCコンバータが使用され、低圧部と高圧部との間を絶縁しつつ、高圧部において所定の電位差の電圧制御信号を出力している。しかし、一般に、絶縁型DC-DCコンバータの入出力端子間の耐圧は、高電圧用途であっても数kV程度であるので、単独(1つだけ)で使用すると、絶縁破壊が発生して故障してしまう。
【0003】
このような高電圧下で、絶縁型DC-DCコンバータを使用可能とするために、例えば、低圧部と高圧部との間に、高電圧用途の絶縁型DC-DCコンバータを多段に複数接続して使用することが考えられる(類似技術としては特許文献1がある。)。即ち、複数の絶縁型DC-DCコンバータで低圧部と高圧部との間にかかる電圧を分担負担し、各絶縁型DC-DCコンバータの入出力端子間にかかる電圧を耐圧以下にすることが考えられる。しかしながら、このような使用方法によると、各絶縁型DC-DCコンバータ内のコンバータでの電力変換損失が累積されるため、低圧部から高圧部に至る経路全体での電力変換効率が低下するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4‐58764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、低圧部から高圧部に至る経路中での絶縁を行いつつ、低圧部から高圧部に至る経路全体での電力変換損失を低減できるDC-DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るDC-DCコンバータにあっては、直流電圧を交流電圧に変換するスイッチング回路と、前段のトランスの2次側出力端子と後段のトランスの1次側入力端子とを多段に接続した複数のトランスと、前記トランスの最終段から出力される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低圧部から高圧部に至る経路中での絶縁を行いつつ、低圧部から高圧部に至る経路全体での電力変換損失を低減できるDC-DCコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一般的なDC-DCコンバータの構成の一例を示す回路ブロック図である。
図2図2は、実施形態のDC-DCコンバータの基本構成の一例を示す回路ブロック図である。
図3A図3Aは、4台のトランスを接続させた場合の巻線の巻数比の第1の設定例を示す図である。
図3B図3Bは、4台のトランスを接続させた場合の巻線の巻数比の第2の設定例を示す図である。
図4図4は、漏れインダクタンスを考慮し、共振用コンデンサを接続したDC-DCコンバータの構成の一例を示す回路ブロック図である。
図5図5は、トランスの結合係数を変化させることによって、電力変換効率を更に向上させたDC-DCコンバータの構成の一例を示す回路ブロック図である。
図6図6は、図5のトランスの別の実現形態の1例を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のDC-DCコンバータについて、図面を参照して説明する。
【0010】
(一般的なDC-DCコンバータの概略構成)
図1を用いて、一般的なDC-DCコンバータの概略構成を説明する。図1は、一般的なDC-DCコンバータの構成の一例を示す回路ブロック図である。
【0011】
DC-DCコンバータ10は、スイッチング回路12と、トランス14と、整流回路16とを備える。スイッチング回路12は、直流電圧E1をスイッチングすることによって交流電圧に変換する。トランス14は、入力側(1次側)のコイルに入力された電圧を、1次側のコイルの巻線の巻数と2次側のコイルの巻線の巻数との比率に応じて降圧または昇圧する変圧器である。なお、トランス14の入力側巻線と出力側巻線との間は電気的に絶縁されている。整流回路16は、トランス14が出力した交流電圧を整流して直流電圧E2を出力する。
【0012】
低圧部(例えば24V)と高圧部(例えば10kV超)との間で絶縁型DC-DCコンバータを使用する場合には、絶縁破壊を防止するために、上記構造のDC-DCコンバータ10を多段に接続する使用方法が想定される。しかし、DC-DCコンバータ10を多段に接続した場合には、スイッチング回路12と整流回路16とをそれぞれ複数回通過するため、直流を交流に変換して降圧または昇圧を行った後で直流に変換するという処理を複数回繰り返すことになる。したがって、電力変換損失が累積されるので、電力変換効率の低下を招いてしまう。また、接続されるDC-DCコンバータ10のそれぞれが、スイッチング回路12と整流回路16とを備えているため、回路の専有面積が増加してしまう。
【0013】
(実施形態のDC-DCコンバータの概略構成)
図2を用いて、本実施形態のDC-DCコンバータ20aの概略構成を説明する。図2は、実施形態のDC-DCコンバータの基本構成の一例を示す回路ブロック図である。
【0014】
DC-DCコンバータ20aは、スイッチング回路22と、複数のトランス24A(トランス24a、トランス24b,トランス24c)と、整流回路26とを備える。
【0015】
スイッチング回路22は、直流電圧E1を交流電圧に変換する。
【0016】
複数のトランス24Aは、前段のトランスの2次側出力端子と後段のトランスの1次側入力端子とを多段に接続した構成を有する。複数のトランス24Aを構成する各トランス(トランス24a、トランス24b,トランス24c)は、それぞれ、入力側巻線の巻数と、出力側巻線の巻数の比率に応じて、入力電圧を昇圧または降圧する。なお、トランス24Aを構成するトランスの個数は、少なくとも2個以上であるとする。
【0017】
整流回路26は、複数のトランス24Aのうち最終段のトランス24cから出力される交流電圧を直流電圧E2に変換する。
【0018】
スイッチング回路22は、非絶縁の昇圧コンバータ22aと、インバータ22bとを備える。
【0019】
昇圧コンバータ22aは、入力側の直流電圧E1を昇圧する。なお、昇圧コンバータ22aの出力電圧値は、調整機能により調整可能である。なお、昇圧コンバータ22aは非絶縁であるため、絶縁性能はない。また、昇圧コンバータ22aは、ドライブ電力が大きくなると、配線の寄生抵抗によって電圧降下が生じるため、出力電圧が、所望の電圧を下回る恐れがある。そのため、昇圧コンバータ22aは、入力電圧が低下した場合であっても出力電圧を一定に保つフィードバック回路を有する。
【0020】
インバータ22bは、スイッチング回路を有して、入力側の直流電圧をスイッチングすることによって交流電圧に変換する。なお、本実施形態では、インバータ22bの出力電圧を一定に保つフィードバック回路を有していないが、フィードバック回路を付加することもできる。
【0021】
DC-DCコンバータ20aは、上記のように、昇圧コンバータ22aとインバータ22bとを備えているので、電圧変換部の段数が2段(昇圧コンバータ22aとインバータ22b)となり、回路全体として部品点数削減および高効率動作を実現することができる。例えば、図1のDC-DCコンバータ10を4段構成にすると、電圧変換部の段数も4段となるが、DC-DCコンバータ20aでは2段で済む。
【0022】
また、複数のトランス24Aについて、当該複数のトランス24Aにおける電力損失を低減するために、1段目(トランス24a)の入力側(1次側)の巻線の巻数と、最終段(トランス24c)の出力側(2次側)の巻線の巻数とが等しく設定される。そして、それ以外のトランス(図2のトランス24b)の巻線の巻数は、より少ない値に設定される。
【0023】
なお、トランス24Aを、複数のトランス24a、トランス24b、トランス24cを多段に接続した構成とすることによって、個々のトランスの入出力端子間にかかる電圧を低減することができる。その結果、DC-DCコンバータ20aの入出力端子間にかかる電圧が高い場合(例えば10kV)であっても絶縁破壊を防止できる。言い換えると、複数のトランスを多段に接続することによって、DC-DCコンバータ20aの耐圧を稼ぐことができる。
【0024】
また、トランス24Aにおいて、中間部の巻線の巻数を低減できるため、低寄生キャパシタのトランスが実現できる。例えば、1段目の巻数比2:1のトランス24aの1次側励磁インダクタンスが10μHであり、2段目の巻数比1:1のトランス24bの1次側励磁インダクタンスが5μHであっても、2段目のトランス24bの励磁インダクタンスは、インバータ22bからは等価的に並列に20μHに見えるため、巻数を減らせる。なお、全てのトランスの巻線の巻数比を1:1とし、且つ、各トランスの1次側励磁インダクタンスを10μHにすることもできる。しかし、2段目のトランス24bの励磁インダクタンスは、インバータ22bからは等価的に並列に10μHに見えるため、巻数比2:1の場合よりもインバータ22bから見たインピーダンスが減少し、不必要に入力電流が大きくなる。これにより昇圧コンバータ22aとインバータ22bの損失が大きくなるため、効率の低下に繋がるため、望ましい構成ではない。
【0025】
(DC-DCコンバータが備える複数のトランスの巻線の巻数比の設定)
図3A図3Bを用いて、DC-DCコンバータ20aを構成する複数のトランス24Bの巻線の巻数比の設定方法を説明する。図3Aは、4台のトランスを接続させた場合の巻線の巻数比の第1の設定例を示す図である。図3Bは、4台のトランスを接続させた場合の巻線の巻数比の第2の設定例を示す図である。
【0026】
図3Aに示すトランス24Bは、4台の同性能のトランス(トランス24d、トランス24e、トランス24f、トランス24g)を多段に接続した構成になっている。なお、全てのトランスの巻線の巻数比は、全て1:1であり、各トランスの1次側励磁インダクタンスLmは10μHであるとする。このとき、インバータ22bから見たトランス24B全体の励磁インダクタンスは、各トランスの励磁インダクタが並列接続されていると見なしたときの合成インダクタンスとして算出できるので、2.5μHとなり、入力側から不必要に電流が流れ込む。
【0027】
これに対して、図3Bに示すトランス24Cは、4台のトランス(トランス24h、トランス24i、トランス24j、トランス24k)を多段に接続した構成になっている。トランス24Cを構成する中間部のトランス24iとトランス24jは、1次側励磁インダクタンスLmが5μHとされている。また、トランス24kの1次側励磁インダクタンスLmが2.5μHとされている。
【0028】
この場合、上記と同様に、インバータ22bから見たトランス24C全体の励磁インダクタンスは、各トランスの励磁インダクタが並列接続されていると見なしたときの合成インダクタンスとして算出できる。ここで、トランス24Cを構成する各トランスの励磁インダクタンスを1段目に換算すると、1段目のトランス24hの励磁インダクタンスは10μH(1段目なので1次側励磁インダクタンスLmである10μHと同じ)、2段目のトランス24iの励磁インダクタンスは20μH、3段目のトランス24jの励磁インダクタンスは20μH、4段目のトランス24kの励磁インダクタンスは10μHとなる。そのため、インバータ22bから見たトランス24C全体の励磁インダクタンスは、約3.3μHとなる。したがって、図3Aの構成と比較すると、巻線の巻数を減らしながら、入力側から流れ込む電流を低減することができる。このように、DC-DCコンバータ20aを構成する各トランスの巻線の巻数比を調整することによって、電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0029】
なお、4段目のトランス24kの1次側励磁インダクタンスLmを2.5μHにしているのは、励磁インダクタンスを1段目に換算したときに、1段目のトランス24hの励磁インダクタンスと同じ値にするためである。
【0030】
(DC-DCコンバータの効率向上)
図4を用いて、DC-DCコンバータ20aの効率を更に向上させる方法を説明する。図4は、漏れインダクタンスを考慮し、共振用コンデンサを接続したDC-DCコンバータの構成の一例を示す回路ブロック図である。
【0031】
図3Bで説明した構成によって、DC-DCコンバータ20aの効率を向上させることができるが、実際は、各トランスが漏れインダクタンスを有するため、図3Bの構成であると、漏れインダクタンスによって電圧降下が生じて、出力電圧が低下する。そのため、出力電圧の低下を補うために入力電圧を大きくしなければならない。入力電圧を大きくすることによって、回路電流が増加するため、効率が低下する。
【0032】
図4は、漏れインダクタンスを考慮し、共振用コンデンサCを接続したDC-DCコンバータ20bの構成例(共振インバータ以降を抜粋)である。漏れインダクタンスは、トランスを構成する入力側(1次側)のコイルに電流が流れることによって発生する磁束のうち、出力側(2次側)のコイルに到達しない磁束(漏れ磁束)によって発生する。漏れインダクタンスを有するトランスは、等価回路的には、当該トランスの1次巻線または2次巻線に対して、直列にチョークコイルが接続された回路構成を有する。一般に、1次側のコイルと2次側のコイルとの結合係数が低いトランスは、大きな漏れインダクタンスを有する。
【0033】
このような漏れインダクタンスの成分を打ち消すために、図4に示すトランス24Aを構成するトランス24a、トランス24b、トランス24cの各々の1次巻線および2次巻線に直列に、共振用コンデンサCを挿入する。共振用コンデンサCは、漏れインダクタンスによって擬似的に発生したチョークコイルとともに直列共振回路を構成する。したがって、スイッチング回路22(共振インバータ22c)のスイッチング周波数を、直列共振回路の共振周波数と一致させることによって、漏れインダクタンス成分を打ち消すことができる。挿入する共振用コンデンサCの容量値は、共振インバータ22cのスイッチング周波数と、共振用コンデンサCと漏れインダクタンスによって擬似的に発生したチョークコイルとで構成される直列共振回路の共振周波数と、が等しくなるように設定する。なお、本実施形態では、共振インバータ22cの出力電圧を一定に保つフィードバック回路を有していないが、フィードバック回路を付加することもできる。
【0034】
なお、図4に示すように、共振用コンデンサCは、トランス24a、トランス24b、トランス24cの1次巻線および2次巻線のそれぞれ両側に挿入される。これは、トランス24a、トランス24b、トランス24cの間を流れる交流電流が、DC-DCコンバータ20bの下流側から上流側へ逆流するのを防止するためである。
【0035】
このように、共振用コンデンサCと漏れインダクタンスとが構成する直列共振回路の共振周波数を、共振インバータ22cのスイッチング周波数を合わせることによって、トランスの結合係数が低い場合であっても、高い電力変換効率で電力を伝送することができる。
【0036】
なお、トランス1個の構成で、高い電力変換効率で電力を伝送することも可能である。即ち、共振用コンデンサとトランスの自己インダクタンスの共振周波数とを一致させることで、トランスの結合係数が低い場合でも電力を伝送できる。しかし、この構成によると、負荷電流は電流源動作となるため、負荷が変わっても入出力電流が変わらない。したがって、無負荷時には出力電圧が大電圧となってしまうため、固定負荷以外には適用するのには向いていない。そのため、ゲート駆動のような定電圧が要求される回路では、図4で説明したように、漏れインダクタとキャパシタを利用した共振方法を適用するのが望ましい。
【0037】
(DC-DCコンバータの更なる効率向上)
図5図6を用いて、電力変換効率を更に向上させるDC-DCコンバータの回路構成例を説明する。図5は、トランスの結合係数を変化させることによって、電力変換効率を更に向上させたDC-DCコンバータの構成の一例を示す回路ブロック図である。図6は、図5のトランスの別の実現形態の1例を示す回路ブロック図である。
【0038】
トランスの巻線には巻線間容量や巻線分布容量という回路図には現れない容量成分(寄生容量)が存在する。そして、結合係数が高いトランスにあっては、漏れインダクタンスは小さいが、寄生容量が大きくなる。逆に結合係数が低いトランスにあっては、漏れインダクタンスは大きいが、寄生容量が小さくなる。このように、寄生容量と漏れインダクタンスとは、トレードオフの関係を有する。
【0039】
トランスの寄生容量を低減させるためには、例えば、1次側巻線と2次側巻線との距離を離すことによって、結合係数を低くするのが効果的である。しかしながら、トランスの結合係数を低くすると、トランスへの入力電圧がそのまま励磁インダクタに印加されるため、励磁電流が大きくなって、電力変換効率が悪化してしまう。これを解決するためには、励磁インダクタンスを大きくして励磁電流を小さくするか、励磁インダクタンスによるインピーダンスを大きくみせるために共振インバータのスイッチング周波数を大きくする必要がある。
【0040】
図5に示すDC-DCコンバータ20cは、前記したDC-DCコンバータ20bが備える共振インバータ22c(図4参照)のスイッチング周波数を数MHzに高めた、共振インバータ22dを備える。なお、共振インバータ22dは、共振インバータ22cと同様に、本実施形態では出力電圧を一定に保つフィードバック回路を有していないが、フィードバック回路を付加することもできる。このように、スイッチング周波数を数MHzに高めた共振インバータ22dを用いることによって、励磁インダクタンスをより小さくしても、DC-DCコンバータ20cのトランス24Dの巻線を高インピーダンスとすることができる。
【0041】
更に、DC-DCコンバータ20cは、トランス24Dを構成する初段のトランス24lの巻数比をN:1、最終段のトランス24nの巻数比を1:Nとすることで、中段の巻数比が1:1のトランス24mに流れる電流を低減させる。
【0042】
ここで、トランス24Dを構成する複数のトランス(24l、24m、24n)について、初段のトランス24lと最終段のトランス24nとは、DC-DCコンバータ20cに流れる電流を低減させるのが主目的であるため、結合係数を可能な限り高くする。そして、中段のトランス24mは、寄生容量を小さくするために、1次側巻線と2次側巻線との距離を大きくとることによって、結合係数を小さくする。
【0043】
トランス24Dは、例えば、図6に示すトランス24Eのように、更に複数段で構成してもよい。図6は、トランス24Eを、6台のトランス、即ち、トランス24o、トランス24p、トランス24q、トランス24r、トランス24s、トランス24tで構成した例である。
【0044】
図6の構成によると、最終段のトランス24tの巻線の巻数比が1:Nとなっているため、2次巻線の巻数が1次巻線の巻数よりも多くなり、広範囲に巻線を巻くことができる。これによって、高電圧側の電界強度を緩和することができる。更に、最終段のトランス24tの巻線の導電部位を拡張して、後段の整流回路26の導電部とすることによって、電界強度を緩和することができる。
【0045】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態のDC-DCコンバータ20aは、直流電圧を交流電圧に変換するスイッチング回路22と、前段のトランスの2次側出力端子と後段のトランスの1次側入力端子とを多段に接続した複数のトランス24a、24b、24cと、トランスの最終段から出力される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路26と、を備える。このような構成にすると、個々のトランスの入出力端子間にかかる電圧を低減することができる。そのため、DC-DCコンバータ20aの入出力端子間にかかる電圧が高い場合(例えば10kV)であっても絶縁破壊を防止できる。また、従来DC-DCコンバータを単に多段に接続して使用する場合と比較すると、スイッチング回路と整流回路をそれぞれ1度しか通過しないため、高い電力変換効率を発揮させることができる。
【0046】
また、本実施形態のDC-DCコンバータ20bは、多段に接続されたトランス24Aのうち、入力段のトランス24aは降圧機能を有し、出力段のトランス24cは昇圧機能を有し、入力段のトランス24aの1次側の巻数と出力段のトランス24cの2次側の巻数とが等しく、中間段のトランス24bは巻数比が1:1である。したがって、中間段のトランス24bの巻線の巻数を低減することで、低寄生キャパシタのトランスを実現することができる。このように、巻線の巻数比を調整することによって、電力変換効率を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態のDC-DCコンバータ20bにおいて、多段に接続されたトランス24Aの、入力段のトランスの1次側入力線と、出力段のトランスの2次側出力線と、トランス同士の接続線と、にそれぞれ直列に、トランスの漏れインダクタンスを打ち消す容量の共振用コンデンサCが接続される。したがって、寄生容量が低減されることによって、DC-DCコンバータ20bの電力変換効率を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態のDC-DCコンバータ20cにおいて、多段に接続されたトランス24Dのうち、入力段のトランス24lと出力段のトランス24n以外のトランス24mは、入力段のトランス24lと出力段のトランス24nよりも結合係数が小さくされる。したがって、中段のトランス24mに流れる電流を低減することができるため、電力変換効率を更に向上させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示であり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
20a、20b、20c DC-DCコンバータ
22 スイッチング回路
22a 昇圧コンバータ
22b インバータ
22c、22d 共振インバータ
24A、24B、24C、24D、24E トランス
24a、24b、24c、24l、24m、24n トランス
26 整流回路
C 共振用コンデンサ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6