(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179332
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20241219BHJP
A41D 13/06 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A41B11/00 A
A41B11/00 B
A41B11/00 G
A41B11/00 101Z
A41D13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098087
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】514206983
【氏名又は名称】南 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121795
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴亀 國康
(72)【発明者】
【氏名】南 誠
(72)【発明者】
【氏名】新宅 光男
【テーマコード(参考)】
3B018
3B211
【Fターム(参考)】
3B018AA02
3B018AB04
3B018AB07
3B018AC01
3B018AD02
3B211AB11
3B211AC17
(57)【要約】
【課題】 左右の足のバランスがとりやすく、縦アーチの形成または適正な保持に好適な靴下を提供する。
【解決手段】 本発明に係る靴下は、編地からなる足袋型の靴下であって、高伸縮性の足甲部と低伸縮性の足底部を有し、前記足底部は、第1趾の付根部から踵部に至る内帯部、第2趾より第4趾の付根部から前記踵部に至る中帯部及び第5趾の付根部から前記踵部に至る外帯部が並行して設けられ、それぞれの伸縮性は外帯部から内帯部に向けて次第に小さくなり、前記足底部の伸縮性の平均値と足甲部の伸縮性の比が伸び率比で1:2.0~2.5になっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編地からなる足袋型の靴下であって、高伸縮性の足甲部と低伸縮性の足底部を有し、
前記足底部は、第1趾の付根部から踵部に至る内帯部、第2趾より第4趾の付根部から前記踵部に至る中帯部及び第5趾の付根部から前記踵部に至る外帯部が並行して設けられ、それぞれの伸縮性は外帯部から内帯部に向けて次第に小さくなり、
前記足底部の伸縮性の平均値と足甲部の伸縮性の比が伸び率比で1:2.0~2.5である靴下。
【請求項2】
足甲部は平編みにより編成され、
足底部は、タック編みにより編成され、その内帯部、中帯部及び外帯部はタック回数が調整されてなることを特徴とする請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
足底部の伸縮性は、内帯部に対し中帯部が15%、外帯部が20%ほど高い伸び率を有することを特徴とする請求項1に記載の靴下。
【請求項4】
足首部は、前面部及び後面部が内帯部の伸縮性から外帯部の伸縮性の範囲の低伸縮性を有し、両側面部がストレッチ性を有する編地からなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の靴下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足のアーチ構造において特に縦アーチの形成または適正な保持に好適な足袋型の靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
足のアーチ構造には、内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチがあり、これらのアーチを形成又は適正に保持することができる靴下に関する提案が種々されている。主として縦アーチの形成又は適正な保持に着目した靴下、あるいは主として横アーチの形成又は適正な保持に着目した靴下に関する提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に、靴下の所定の部位に締付力を付与するための締付部を表糸としてパイル糸を編み込んだ編地組織の編成により形成した靴下において、前記締付部は裏糸のみをタック編みすると共に、前記パイル糸を内側にループ状に突出させてなるパイル組織を構成する編地組織により形成されてなる靴下が提案されている。この靴下は、土踏まず部、ふくらはぎ部、足首部、甲側部その他の部位の少なくとも1つ又はそれらの組み合わせの部位に締付部を形成し、所望の着圧を加えることができるとされる。
【0004】
特許文献2には、土踏まずを含む足裏の形状を矯正する靴下であって、略拇指球部から略踵部まで連続して構成され、略拇指球部と略踵部の間に向かう方向に締め付ける締付部と、略拇指球部から略踵部まで連続して構成され、前記締付部より締付力が弱い弱締付部と、を有し、前記締付部と前記弱締付部は、略平行に隣り合うように配されている靴下が提案されている。この靴下において締付部は3列~9列、好ましくは5列~7列であるとされ、この靴下は、締付部10と弱締付部11が略平行に隣り合うように複数列配されているので、土踏まず部5を含む足裏長手方向の広範囲で均等に締め付けられ、足裏長手方向広範囲で足裏を縦アーチ形状にすることができるとされる。
【0005】
また、特許文献3には、足裏部で足指の付け根位置あるいは足指の付け根から所要寸法を隔てた位置から足裏中央部を越えて踵側へと向けて縦方向に延在する足裏高パワー部を設けると共に、少なくとも親指に連続して縦方向に延在する足裏低パワー部を前記足裏高パワー部と平行に設け、着用状態で土踏まずの部分が縦アーチと横アーチを形成する構成としている足コンディショニングウエアが提案されている。この足コンディショニングウエアは、足裏高パワー部と足裏低パワー部とにより、足裏の縦アーチと横アーチが同時に形成され、土踏まずのドーム形状を形成、維持することができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-237087号公報
【特許文献2】特開2019-189964号公報
【特許文献3】特開2007-277779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に提案の靴下のように土踏まず部分に締付部を設けて均等な着圧又は矯正力を一律に負荷する靴下よりも、特許文献2又は3に提案の靴下のように足裏の足指の付け根から踵にかけて足裏全体を交互に並行する数条の締付部と弱締付部を設けて着圧又は矯正力を負荷する靴下が、好ましい。特許文献1に提案の靴下は、土踏まず部分に負荷する均一な着圧又は矯正力により足本来の衝撃力の吸収機能、バランス機能等の発揮が妨げられる恐れがある。一方、特許文献2又は3に提案の靴下は、各足指に着目すると第1趾~第4趾までの負荷条件は同等になっており、なお足のバランス機能が害される恐れがある。また、ハイアーチになる恐れもある。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、左右の足全体としてバランスがとりやすく、縦アーチの形成または適正な保持に好適な靴下を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る靴下は、編地からなる足袋型の靴下であって、高伸縮性の足甲部と低伸縮性の足底部を有し、前記足底部は、第1趾の付根部から踵部に至る内帯部、第2趾より第4趾の付根部から前記踵部に至る中帯部及び第5趾の付根部から前記踵部に至る外帯部が並行して設けられ、それぞれの伸縮性は外帯部から内帯部に向けて次第に小さくなり、前記足底部の伸縮性の平均値と足甲部の伸縮性の比が伸び率比で1:2.0~2.5になっている。
【0010】
上記発明において、足甲部は平編みにより編成され、足底部は、タック編みにより編成され、その内帯部、中帯部又は外帯部はタック回数が調整されてなるものとすることができる。
【0011】
また、足底部の伸縮性は、内帯部に対し中帯部が15%、外帯部が20%ほど高い伸び率を有するものとすることができる。
【0012】
また、足首部は、前面部及び後面部が内帯部の伸縮性から外帯部の伸縮性の範囲の低伸縮性を有し、両側面部がストレッチ性を有する編地から編成されてなるのがよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る靴下は、足甲部が高伸縮性の編地から編成され、足底部に並列する足指付根部から踵部に至る内帯部、中帯部及び外帯部を形成する編地が低伸縮性の編地から編成されているが、それらの伸縮性が内帯部から外帯部に向かって次第に高くなるようになっている。このため本靴下は、左右の足また足全体としてバランスがとりやすく、縦アーチの形成または適正な保持に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る靴下の構成を示す説明図である。
【
図2】
図1に示す靴下の足底部分を示す説明図である。
【
図3】平編みにより編成された靴下のタック回数と伸び率比の関係を示すグラフである。
【
図4】丸編みにより編成された靴下のタック回数と着圧の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態について、図面を基に説明する。
図1及び
図2は、本発明に係る靴下の例を示す。本発明に係る靴下は、編地からなる足袋型の靴下10であって、高伸縮性の足甲部1と低伸縮性の足底部2を有している。すなわち、足指袋3は、第1趾が挿入される内指袋31と第2趾~第5趾が挿入される外指袋32から形成され、第1趾が独立して負荷を受けやすい構造になっている。このため、第1趾に力が入りやすく、第1趾と第2趾~第5趾が組になってバランスよく、足に作用する負荷を足全体が受けることができる構造になっている。また、足底部2が低伸縮性の編地から編成され、足甲部1が高伸縮性の編地から編成されているので、内側縦アーチが形成または適正に保持されやすい構造になっている。
【0016】
そして、足底部2の編地は、第1趾の付根部から踵部4に至る内帯部21、第2趾より第4趾を含む付根部から踵部4に至る中帯部22及び第5趾の付根部から踵部4に至る外帯部23が並行して設けられ、それぞれの伸縮性は外帯部23から内帯部21に向けて次第に小さくなっている。すなわち、足底部2は、長手方向に三部分に区分されており、足底部2の内側ほど編地が伸び難くなっている。このため、本発明に係る靴下10は、第1趾から第5趾までが同等の伸縮性を有する足底部構造の靴下と異なり、左右の足においてそれぞれに足底全体でバランスよく機能し得る構成になっている。このため、この靴下10は、衝撃力を吸収しやすく、また、ハイアーチの恐れも少ない。
【0017】
足底部2の伸縮性は、平編みで編成された靴下においてタック編みの回数(タック回数)により調整することができる。例えば、外帯部23は平編み1コース/タック編み3コース(タック編み3×1)、中帯部22はタック編み4×1、内帯部21はタック編み5×1とする。各部分の伸縮性を、
図3に示す。
図3のグラフは、内帯部21を基準とした伸び率比を表し、横軸がタック回数、縦軸が伸び率比を示す。
図3によると、伸び率比は、タック回数に比例していることが分かる。かかるタック回数と伸び率の関係、編地の種類又は編糸との組み合わせに基づいて、さらに広範な伸縮性の調整を行うことができる。
【0018】
なお、タック編みのタック回数に関し、特許文献1には丸編みにより編成された靴下についてタック編みのタック回数と着圧に関する記載がある。すなわち、パイル糸を編み込んで裏糸のみをタック編みし、前記パイル糸を内側にループ状に突出させたパイル組織からなる締付部の効果を調べた着圧試験結果が表1及び表2に記載されている。
図4は、上記試験結果をグラフ化したもので、横軸は、タック回数(裏糸タック回数(タック回数/1回)又は表裏同時タック回数(タック回数/1回))を示し、縦軸は着圧 hpa を示す。
図4によると、着圧はタック回数に比例していることが示されている。すなわち、タック回数を調整することにより、着圧、伸び率、締付力又は矯正力を調整することができる。
【0019】
本発明に係る靴下10は、歩行時の靴下の前ズレを防止することにより、さらに足甲部1及び足底部2の機能を発揮させることができる。すなわち、足首部5の前面部及び後面部が低伸縮性の編地からなり、足首部5の両側面部がストレッチ性のよい編地からなるのが好ましい。かかる足首部5の構成によれば、さらに足首部周囲の脛骨、距骨及び踵骨の安定性が確保され安定した歩行に資することができる。足首部5の前面部及び後面部はタック編みにより編成することができ、その伸縮性は、内帯部21の伸縮性から外帯部23の伸縮性の範囲の伸縮性にすることができる。
【0020】
本発明に係る靴下10において、上記記載の足甲部1、足底部2又は足首部51以外の他の部分については、足袋部3、踵部4及び口ゴム部6は、平編み又は畦編みにより編成することができる。
【実施例0021】
本発明に係る靴下を使用してもらい表1に示すコメントを得た。そのコメントによると、本発明に係る靴下の装着により、身体バランスがよくなっており、身体バランスの向上に伴って運動機能が向上していることが分かる。
【0022】